21世紀の船(船体)


こちらはオランダのバーク船Europa。
窓が丸いのは四角よりマルの方ががネジレに強いから。波で船体がネジレるそうです。ジェフリー!ビセンテ!マル、マル!
wikipedia

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デッキ(船首) ギャレー
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デッキ(船尾) 船室
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船の各部名称


サー・フランシス・ドレイクの【船】ゴールデン・ハインド号と比べるとずいぶん大きいガレオン船です。
吃水線 は船腹が水面に接する分界線。
喫水 (船底から吃水線までの距離)が深くなると沈没、浅くなると船が転倒する危険が増えます。これを調整するのが バラスト (重石)。


上甲板(露天甲板)
1 Forecastle 船首楼 2 Gun Deck 砲列甲板 3 Captain's Cabin 船尾楼(船長室)
最下甲板
4 Orlop Deck 最下層甲板 5 Galley ギャレー 6 Cannonball Store 砲弾庫
7 Sail Locker 帆布置き場
船底
8 Bilge/ballast ビルジ/バラスト 9 Bilge Pump ビルジポンプ 10 Hold 船倉
アンカー(錨)
a1 Anchor Cable Bitts ケーブル繋柱 a2 Anchor Capstan アンカー引き上げ装置 a3 Anchor Cable Locker ケーブル置き場
b1 Whipstaff 舵棒 b2 Tiller 舵柄 b3 Rudder


船体(Hull)


船体の骨格は「 竜骨/キール 」「 肋骨/フレーム 」「梁/ビーム(longitudinal stringer)」を組んでます。人間の体に似てるっぽい。
骨格は外板(planking)と内張り板(ceiling)でカバー。
流線がとっても綺麗。船体は「浮く」は勿論のこと「強い(頑丈)」「速い」「動きやすい」…16世紀の叡智が詰まってます。
wikipedia

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Commerce de Marseille号 (1788年:フランス)

+ 船はなんで浮くの?
船は木製も鉄製も 浮力 (浮く力)で浮きます。
水面下の物体は「船体が押しのけた水の重さ(重量)と同じ大きさの上向き浮力」を受ける( アルキメデスの原理 )ってヤツ。
湯船に浸かった アルキメデス (紀元前287–212年)はお湯がザバーっと溢れて発見しました。

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お湯がザバーっと溢れても「もったいない」としか思わないけど、確かに荷物をドンドン積むと船はドンドン沈みます。
ただし積み過ぎると④みたいに沈むのでご注意。
浮いてるっぽい①と③も風が吹いたり波を被ったら沈んじゃいます。荷物はホドホドがいいのね。

船はどれくらい荷物を積んでイイの?

ってことで、船は舷側に「積んでる荷物はホドホドかしら?」が一目で分かる 喫水線マーク が付いてます。
満載喫水線マーク は「安全に航行するにはココまで荷物を積んでオケ」の線。
同じ荷物でも「海水」より比重が軽い「淡水」は船が深く沈む。「夏の海」より荒れる「冬の海」は荷物が少なめでどうぞ。

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21世紀

16世紀の喫水線マークがどんなだったかは分かりませんでした。いくつか画をチェックしたら船底の色が違うっぽい。
これが喫水線マークでしょか?
とりあえずイングランドやスペインも加盟する ハンザ同盟 には「船に満載喫水線マークを付けるコト」の決まりがあります。

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Golden Hinde号 (1577年:ロンドン)

船はどれくらい傾いてイイの?

船は旋回したり風が吹いたり横波を受けたら傾いちゃいます。傾いても元の姿勢に戻るから大丈夫( 復原力 )。
ただし激しく傾いたら④みたいに転覆するのでご注意。
傾きはホドホドまでならオケ。もし不幸にも嵐に出会ったら帆を閉じて シーアンカー で横波を受けないようにしてね♥

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世の中は「 重心 の低い船は倒れにくい」「重心の高い船は倒れやすい」です。
帆船は帆が重い(トップヘビー)から倒れやすいんだって。
だからナイジェルやビセンテは荷物を積むときすごーく考えます。重心が低くならないときは バラスト (重石)を使ってね♥


+ 船体の構造
船体の構造は横式構造(Transverse Framing)、 縦式構造 (Longitudinal Framing)、縦横混合方式の3種類です。
16世紀は横式構造。
縦式構造は1906年船舶工学者 Joseph Isherwood (イギリス)が実用化。Isherwoodの前らアイディアだけはあったみたいです。
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乾ドック

「横式構造」と「縦式構造」

横式構造は一般的な工法です。竜骨から2-3ft(60-90cm)間隔で垂直に肋骨(フレーム)を配置した簡単な構造。
倉内の凹凸が少ないのから広くご使用。
縦の力( サギングやホギング )に対して竜骨、 内竜骨 (keelson)、縦材(intercostal)、甲板(deck)が頑張ります。

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横式構造

縦式構造は大型船(コンテナ船、鉄鉱石運搬、…)のための工法です。縦強度部材をいっぱい配置した複雑な構造。
倉内の凹凸が多いから一般貨物には不向き。
縦の力(サギングやホギング)に対して縦隔壁、縦材が頑張ります。大型船は横式構造だと縦の力に負けちゃうんだって。

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21世紀


+ 船体の装飾
アルマダ海戦(1588年)を描いた絵画はいっぱいあるけど船の描き方は皆さんバラバラです。
こちらは船体の装飾がハデハデな絵画。
真ん中の船はオールと帆を備えた ガレアス船 (たぶんスペイン艦隊:ウーゴ・デ・モンカーダのガレアス小戦隊)です。

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作者不明「English Ships and the Spanish Armada, August 1588」(16世紀:イングランド)

色とりどりの顔料でハデハデ装飾

こちらは Vasa号 (1627年:スウェーデン)のハデハデ装飾です。色とりどりの 顔料 や金箔をご使用。
船嘴 、舷檣(Bulwark)、 船尾展望台 船尾梁 は赤色。
1600年頃からヨーロッパのアチコチで「ハデハデはサイコー!」の バロックスタイル が誕生してハデハデ装飾になりました。

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左側:Vasa号を忠実に再現した1/10モデル
右側:海軍工廠で使用した顔料のレプリカ

帆船時代の船体は防水や防腐のために タール (石炭、木材、石油、 泥炭 から作った液体)を塗ってます。
その上からハデハデにしてるのかしら?
タールは真っ黒。江戸時代末期の「きゃー!黒船が来たー!」もタールを塗ってたからだそうです(1853年: 黒船来航 )。

航海の安全を願う船首像

船首像は16-20世紀に船首に飾られた航海の安全を願う像です。海軍の船は「所有者の富と力」を象徴。
バロックスタイルになると巨大化。
あまりに巨大化して航海に悪影響を及ぼすようになっちゃいます。ってことで、18世紀になるとコンパクト化。
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Friedrich van Hulsen 画「The capture of the Cacafuego, the Spanish treasure-ship, by Sir Francis Drake」(1626年)

こちらは1579年ゴールデン・ハインド号に襲撃されるスペイン商船 ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・コンセプシオン です。
船嘴の先っぽに付いてる船首像はライオン?
ゴールデン・ハインド号の船首像は出資者 クリストファー・ハットン クレスト 「金色の雌鹿」と言われてます。

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Golden Hinde号(1577年:ロンドン)

ゴールデン・ハインド号も舵の上にライオンの像が乗っかってます。これも何かのお守りなのかしら?
ライオンの由来も舵の上の理由もちんぷんかんぷん。
とりあえず12世紀からイングランドの 王室紋章 にはライオンが登場します。あと バーバリライオン はイングランドの 国獣



船首楼(Forecastle)と船尾楼(Aftercastle/Poop)


船首楼 船尾楼 の役割は
  • 外洋の荒波をブロックする。(船首が波に飲み込まれると倉口から船内に水が入っちゃう!)
  • 海戦で敵の攻撃を防ぐ、敵の船に乗り移りやすくする。
  • 船室スペースを確保する。
船が進化してくると船尾楼はただの 船尾甲板 に変わります。キャプテンは船尾甲板に立って皆さんにアレコレ命令。

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Golden Hinde号 のCG(1577年:イングランド)

+ イングランドとスペインの違い
イングランドはスペインに比べて「より速い、より動きやすい」の新型ガレオン船 レイジー を開発します。
最初の成功は Dreadnought号 (1573年)。
トップヘビーを解消( 船首楼 船尾楼 を小さく)して「滑らかな船」になったそうです。詳細は小難しい 船舶工学 をどうぞ。

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こちらは従来型ガレオン船 サン・マルティン号 (スペイン)と新型ガレオン船 リヴェンジ号 (イングランド)です。
どちらもアルマダ海戦で戦った船。
サン・マルティン号は メディナ・シドーニア公爵 、リヴェンジ号は フランシス・ドレイク が乗船してます。



船嘴/トイレ(Beakhead)


船嘴(せんし)は16~18世紀船首に取り付けられた 斜檣 斜桁帆 を取り付ける棒)を動かす踊り場です。
17世紀になると飾りがハデハデ化。
両サイドにも動物や神話の 船首像 (航海の安全を願う像)を装飾。船嘴は船の中でも装飾に凝った1つになります。
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Vasa号(1627年:スウェーデン)

甲板から隠れた踊り場の船嘴は「水夫の ヘッド(トイレ) 」としてもご使用します。嵐の時は命がけなんじゃないかしら?
いくつか画をチェックしたら便座は2つっぽい。
Vasa号はスウェーデン海軍の 軍艦 で全長69m、船幅11.7m、高さ52.5m。水夫145名、戦士300名が乗船します。足りるの!?

+ 急にお腹が痛くなっちゃったら大変!
帆船時代の船は後から風を受けるので船嘴は風下。出したアレは格子の隙間から海へ直下して風で飛んで行きます。
風で飛んで行けば船が汚れない。
16世紀の トイレットペーパー はボロ布、かんな屑、草、石、海水、貝殻…など。お金持ちは羊毛、レース、麻でフキフキします。

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Vasa号の船嘴(1627年:スウェーデン)

士官のトイレ「チェンバーポット(おまる)」

こちらはVasa号の士官がご使用の スズ チェンバーポット です。棒と砂ビンはフキフキの道具でしょか?
チェンバーポットは少なくともBC6世紀 古代ギリシア の頃からご使用。
ヴィクトリア朝 (1837-1901年)になると蓋付きキャビネットに入れたチェンバーポットが登場します。

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Vasa号のチェンバーポット(1627年:スウェーデン)

士官のトイレ「船尾展望台」

船尾展望台 は16-19世紀 船尾楼 の周囲に付いてるバルコニーです。士官の個室トイレにご使用。
狙撃手が敵を撃つ狙撃ポイントにもご使用。
ゴールデン・ハインド号の船尾展望台が格子床なのかは分かりませんでした。ここでチェンバーポットを使うんでしょか?

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Golden Hinde号(1577年:ロンドン)



船底(hull's bottom?)


船底はずーっと海に浸かってる部分。大航海時代は船底に付く フジツボ や海草にメチャクチャ苦労してます。
取らないと船の速度が出なくなっちゃうし、船体壊しちゃうし、増えちゃうし…。
ってことで、船乗りは「 Fouling :むかつくほど嫌な汚れ」と命名。赤ちゃんフジツボは海中をプカプカ泳いで船にくっつくそうです。
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Vasa号(1627年:スウェーデン)

+ むかつくほど嫌な汚れは「船底焼き」で除去
船は定期的に 乾ドック に入れてむかつくほど嫌な汚れを「船底焼き(Breaming)」で除去します。
船底のフジツボ達をハリエニシダや葦で焼いて除去。
最後に鯨油・松脂・硫黄を混ぜたモノ(White stuff)を塗ってカバー。たまにタール・樹脂を混ぜたモノ(Black stuff)でカバー。
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Gabriel Bray画「A ship hove down and burning off」(18世紀)

どうやって船を倒す(Hove down)の?

船は ハリヤード (帆を上げ下げするロープ)を キャプスタン (ロープの巻上げ装置)や人力で引っ張って倒します。
倒れたらハリヤードを岩や木にくくりつけて固定。
航海中で乾ドックが近所にないときは湾内の浜辺でもオケ。満潮時に浅瀬へ入れておけば干潮で船底が登場します。
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Reinier Nooms 画「Reparaties aan de romp van een koopvaardijschip」(1652-1714年)

船を倒すには満潮の周期情報も必要だし、それなりの水位差も必要だし、いつでもどこでもってワケにはいきません。
F&B時代に人気だった場所の1つがIslas Marías(カリブ海)。
サー・フランシス・ドレイクが1579年利用したのが始まり。あっという間に私掠船の人気スポットになりました。


+ 船体はコーキングで水漏れ防止♥
水漏れが宿命の船体はコーキング(水漏れ防止)しなくちゃいけません。
板と板の隙間へ 木槌 (Caulking mallet)と たがね (Caulking iron)で オーカム 松ヤニ に浸したヘンプ)を打ち込むの。
最後に上から松ヤニを塗ってカバー(Paying/Calefaction)します。
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船体の「悪魔」

竜骨と 竜骨翼板 (garboard strake:竜骨に隣接した底板)の継ぎ目はどんなに頑張っても水漏れしちゃう宿命です。
ってことで、船乗りはこの継ぎ目を「悪魔」と命名。
カバー(Paying)と合わせて「 The devil to pay (待ち受けている災い)」なんで言葉もあります。

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HMS Victory号 (1765年:イギリス)

「悪魔」からジワジワ染み込んだ海水や船体に入り込んだ雨水は船底の最下部 ビルジ 内竜骨 の両サイド)に貯まります。
ビルジの汚水(bilge water)は船酔いしそうな衝撃のにおい。
定期的に ビルジポンプ (船底の汚水を排出するポンプ)をシュポシュポして船外へ出さなくちゃいけません。



竜骨(Keel)


竜骨は1本の棒でできた「船の背骨」で船体の強度が上がります。竜骨がないとナメクジみたいにフニャフニャしちゃうのかしら?
ここがハデに壊れると修復不能。
船が荒波に遭遇したとき船を乾ドックに入れたとき竜骨は「ストレス=縦の力(サギングやホギング)」と戦って頑張ります。
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San Salvador号(16世紀: Maritime Museum of San Diego

こちらは1542年 サンディエゴ湾 (アメリカ)を発見したスペインのガレオン船 サン・サルバドール号 (レプリカ)です。
アルマダ海戦で爆発した サン・サルバドール号 とは別モノ。
忠実に復元したレプリカで2011年 起工 、2015年 進水 。もう海にプカプカしてるからこの画の骨組みは見れません。

+ 船の人生の始まり「起工(竜骨を横たえる)」
船の人生は「 起工 (Keel laying)」「 進水 (launching)」「 竣工 (commissioning)」「退役(decommissioning)」です。
造船 の第一歩は「竜骨を横たえる」。
ここから彼女の人生が始まります。21世紀は起工式で「彼女が無事に完成しますよーに♥」と祈るんだって。
wikipedia

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ヴァイキング船 の造船

船の人生の終わり「Broken its back:背骨が折れる」

船が荒波に遭遇したとき船を乾ドックに入れたとき竜骨が「ストレス」に負けると船体は維持できなくなります。
竜骨が折れて船体を完全に維持できない状態は「Broken its back」。
こうなると修理はムリ。1から船を造り直す必要があるので21世紀の保険会社は確実に「彼女の 価値ナシ 」と査定します。

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San Salvador号(16世紀:Maritime Museum of San Diego)

「Broken its back」になると船はこんな感じになって沈没します。
こちらは2012年 環太平洋合同演習 で潜水艦 HMAS Farncomb USNS Kilauea (2008年:退役)を魚雷Mark 48を撃ったの。
21世紀の船は荒波だけじゃなく潜水艦にも注意しなくちゃいけないんですね。大変だなあ。

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USNS Kilauea

キャラベル船 ゴーイングメリー号とのお別れ

竜骨を調べてたら尾田栄一郎著「ONE PIECE」に竜骨の大切さがすごーく分かるお話しがありました。
セリフはネットからの拾いモノ。
読んだコトないから突然のクルッポーとか意味が全然ワカンナイけど本気で泣いちゃったよぉ…切なすぎです。

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永遠の眠りにつくゴーイングメリー号

ルフィ「メリー号が直せねェって何でだ?おめェらすげェ船大工なんじゃねェのかよ!金ならほら、いくらでもあるのに!」
カク「金は関係ないわい。いくら出そうともうあの船は元には戻らんのじゃ。よくもまァ…あの状態でここへ辿り着けたもんじゃとむしろ感心する程のもんでな」
ナミ「どういう事!?メリー号に何が起こってるの!?」
パウリー「『竜骨』って分かるかハレンチ娘」
ナミ「船底にある…」
パウリー「そう船首から船尾までを貫き支える船において最も重要な木材だ。船造りは先ずそいつを据える事から始まり船首材、船尾材、肋根材、肋骨、肘材、甲板梁…全ての木材をその竜骨を中心に緻密に組み上げていく。それが『船』だ。船の全骨格の土台『竜骨』は『船の命』。そいつがひどく損傷したからといって挿げ替えるなんて事ァできねェってわけさ。それじゃあ船を一から造るのと同じ事だからな。だからもう誰にも直せねェ。お前らの船はもう死を待つだけのただの組み木だ」
ナミ「ちょっと!そんな言い方ないじゃない!」
パウリー「知った事か。事実だ」
ルフィ「…じゃあ!だったらよ!もう一回一から船を造ってくれよっ!ゴーイングメリー号を造ってくれ!」
ルッチ(ハットリ)「それも無理だ。クルッポー」
ルフィ「何で!」
ルッチ「『似た船』なら造ってやれるが厳密に言って同じ船はもう誰にも造れねェ。この世に全く同じ船は2つと存在し得ねェのさ」
ナミ「どういう事!?」
ルッチ「世界中に全く同じ成長をする『木』があるか?帆船はほぼ木材でできているから船の大きさも曲線も全て木の形に左右される同じ設計図を使っても全く同じ船は二度と造れねェのさ。例えばそんな船を造ったとしてそれが全く別の船であると最も強く感じてしまうのは…きっとお前達自身だクルッポー」
ナミ「…そんな…じゃあ本当にもうゴーイングメリー号では二度と航海できないの!?」
カク「そうなるのう。このまま沈むのを待つか…さっさと解体してしまうかじゃ」


+ 他にもアレコレの「竜骨」
竜骨は英語「Keel(キール)」です。語源は古英語「cēol:船の突出部」と古高ドイツ語「kiel:船」の合わせ技。
ちなみにスペイン語「Quilla(キジャ)」。
どっちも 竜(ドラゴン) とは関係ナシっぽい。日本語「竜骨」は中国語「龙骨(lónggǔ)」からの流れなのかしら?

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Vittore Carpaccio 画「 St. George and the Dragon 」(1502年:イタリア)

東洋の竜 西洋のドラゴン は別の生き物。最初のドラゴンは ホメーロス 著「 イーリアス 」(紀元前1260年頃)です。
こちらは 聖ジョージ の伝説「 ドラゴン退治 」。
聖ジョージはイングランドの守護聖人で鬨の声「セント・ジョージ!」の人です。

とってもコワイ処罰「竜骨くぐり」

「竜骨くぐり」は悪いコトをした水夫に与える処罰の1つです。ロープでくくった水夫を海へ落として竜骨を潜らせるの。
船首から船尾へでもオケ。
船体にはフジツボがびっしり。もしロープを思いっきり引っ張ったら水夫の体がフジツボに擦れて大怪我します。
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竜骨くぐり(1485–1603年:イングランド)

「竜骨くぐり」はギリシア人の ロード海法 (紀元前800年)にも「海賊行為への処罰」として書かれてます。
1560年 オランダ海軍 も採用。
理由は分からなかったけど1853年頃に廃止。21世紀も「軽い違反で重い処罰を受けちゃった」という意味で使ってます。

夜空に輝く星座「りゅうこつ座」

こちらは南半球の夜空に輝く アルゴ船座 プトレマイオス (100– 170年頃)が定義した「トレミーの48星座」の1つです。
アルゴ船 ギリシア神話 に登場する巨大な船。
ちょっとデカいね。ってことで、1752年「 りゅうこつ座 (竜骨)」「 ほ座 (帆)」「 とも座 (船尾)」に分割されました。

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アルゴ船座

アルゴ船座のご近所には天の南極を測る「 みなみじゅうじ座 (Southern Cross)」があります。
世界一周した フランシス・ドレイク もこの星座を眺めたのね。
実はアルゴ船座の中に「ニセ十字(False Cross):アスピディスケ、δ星、マルカブ、アヴィオール」があるのでご注意です。



上甲板



船長室(Captain's Cabin)


キャビンは船長や士官達の個室です。甲板の上にある部屋は別名「Deckhouse」、船尾にある船長室は別名「Great cabin」。
ゴールデン・ハインド号の個室はフランシス・ドレイクの寝室と会議室兼食堂。
ちなみに船で1番揺れるのは船首、2番目は船尾、1番揺れないのは船底の中央です。ナイジェル!船庫!船庫!
wikipedia

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Golden Hinde号(1577年:ロンドン)

+ ゴールデン・ハインド号の寝室と会議室兼食堂
こちらはゴールデン・ハインド号のフランシス・ドレイクの寝室と会議室兼食堂。部屋は船のサイズに見合った広さです。
帆船時代に個室で窓まであるのはとーっても贅沢。
いくつか画をチェックしたら窓は嵌め殺し窓と開閉可能窓があるっぽい。あっ!16世紀はガラスも贅沢品でございます。

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Golden Hinde号(1577年:ロンドン)

ついでにフランシス・ドレイクのシーチェスト

こちらは バークレイ城 (イギリス)に展示中のサー・フランシス・ドレイクが使ってたと思われるシーチェストです。
サー・フランシス・ドレイクと トーマス・バークレイ卿 は仲良し。
左奥はサー・フランシス・ドレイクがよくお泊まりしてた専用の寝室。21世紀は私達もお城を見学できます♥
Berkeley Castle さんより~

蓋の裏は帆船

トーマス・バークレイ卿は第3代ノーフォーク公 トマス・ハワード のひ孫(母親がサリー伯 ヘンリー・ハワード の娘)です。
1596年ハンズドン卿 ヘンリー・ケアリー の孫 エリザベス・ケアリー と結婚。
ウィリアム・シェイクスピア著「 夏の夜の夢 」(1590-1597年)は結婚式で上演するために書かれたという説があります。




舷縁(Gunwale/Gunnel/Gun ridge)


舷縁(げんえん)は上甲板をぐるーっと囲む板。もともとは人間を守るというより、大砲を守るための 補強板 らしいです。
ちょびっと低くなってる 舷門 は船の玄関。
乗船するときは舷門に 縄はしご (Rope ladder)、 綱ばしご タラップ/道板 (Gangway ladder)を掛けて登ります。
wikipedia

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倉口(Hatch)/昇降口(Hatchway)


倉口は下の甲板への荷物の出し入れ、甲板と下の甲板を行き来する穴です。明かり取り、空気穴にも大活躍。
穴はカバー(Hatch cover)して落下防止。
周囲は水が入り込まないように コーミング (Coaming)されてます。なんかショボそうな高さだけど嵐でも大丈夫なのかしら?

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Vasa号(1627年:スウェーデン)

+ たかが穴、されど穴
16世紀の船はそれぞれの甲板に穴(倉口/昇降口)が空いてます。人間も荷物もこの穴を通って上下の甲板へ移動。
フェリーみたいに船体の横からの方が楽チンだと思うけど…。
横穴を開けたら船体の強度が下がっちゃうのかしら?それにタダでさえ水漏れしちゃうのに横穴はヤバイのかもしれませんね。

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Roger Morris画「loaded a Spanish galleon」

上下の甲板は梯子で昇り降り

上下の甲板は梯子(階段?)で昇り降りします。こちらの梯子はけっこう傾斜がきついし手すりもナシ。
梯子は取り外しオケっぽい。
船が揺れたらちょびっと危なそうだけどアレコレと狭い空間を有効利用できるように工夫してるんだと思います。

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HMS Victory号(1765年:イギリス)

いろいろなカバー

倉口や昇降口にはめるカバーは覆い蓋(Hatch board?/Hatch deck?)と格子蓋(Hatch grating)があるっぽいです。
覆い蓋は嵐のときにご使用かしら?。
コーミングごとカパッとかぶせた方が水が入らないと思うけど…詳細はぜーんぜん分かりませんでした。

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倉口と昇降口のCG

格子蓋は明かり取りや空気穴にもなります。こちらは格子蓋から光が差した上甲板の下にある砲列甲板。
16世紀は大砲を撃つと煙がスゴイ!
おまけに火薬の爆発で砲列甲板はとっても熱い!たぶん熱の上昇気流で煙も格子蓋から排気できるんだと思います。

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映画のセット



ボート


ボートはちょっとお出かけするとき、船に荷物を運ぶとき、抜錨するとき、船が沈んじゃうときに大活躍の手漕ぎボートです。
フランシス・ドレイクの航海日誌に「水補給のためにthe Pegasus jollyで上陸-」って記録アリ。
jollyがどんなボートかは分かりませんでした。とりあえず1495-97年はjollyvatt、1727-1741年は Jolly boat と呼んでるみたい。
wikipedia

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Götheborg号 (1745年:スウェーデン)

+ いろいろなボート
ボートは launch 、barge、 pinnace cutter 、…大きさや用途によっていろいろな種類があります。
例えば船長が乗るボートは Captain's gig
でも大きい船じゃないとそんな贅沢はムリ。いくつか画をチェックしたらゴールデン・ハインド号のボートは1艇だけっぽいです。

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HMS Victory号のボート(1765年:イギリス)

ボートの各部名称

艇指揮(指揮する)と艇長(舵を握る)は艇尾席に座るっぽいです。艇指揮がいないときは艇長が指揮も兼任。
漕手(Crew)が座る漕手座(Thwart)は二人掛け。
後ろ向きに座ったら櫂座に(オール)を置いてガコガコ漕ぐ。船にボートを載せるときはマストも櫂も取り外します。

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Mayflower号 long boat とshallop(1609年より前:イングランド)

たぶん手前のボートがshallopです。shallopは スループ型 のボートで帆走用漕手座にマストを刺して帆を張ってもオケ。
舷外板 (Leeboard)はボートが風下側に流されるのを防ぐ板。
もともとは中国の ジャンク船 がご使用してた板で、1570年頃ポルトガルとオランダが採用してます。

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Pirates Ashore - a reenactment of the 1646 visit of English privateers to Plymouth(2016年: プリマス郡



ビレイピン(Belaying Pin)


ビレイピンは索止め座(Pinrail)や 帆索止め座 に刺してハリヤード、シート…の 動索ロープ を止める(巻き取る)短い棒です。
船はロープだらけだからビレイピンもそこらじゅうにアリ。
ピンチ!のときは取り外して臨時の武器に変身。ちなみに劇場も Hemp rigging system でビレイピンをご使用してます。
wikipedia

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Götheborg号(1745年:スウェーデン)

+ ついでにビレイピンの使い方
ロープとビレイピンは一対。いくつか画をチェックしたら「動索ロープがあるトコにビレイピンあり」って感じです。
お陰様でロープだらけの甲板もスッキリ。
こちらの詳細は Välkomna till Jan´s Sajt ! (Belaying Positions of the Running Rigging)さんをどうぞ。

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Götheborg号(1745年:スウェーデン)

ロープの止め方

ロープはビレイピンに8の字に巻き付けます。結んじゃうと風を受けた帆に引っ張られて固結びになるからダメダメ!
3回以上巻き付けると勝手に解けない。
余ったロープはコイル状にして引っかけておきます。詳細は How to Belay and Coil a Sailing Ship's Rigging Line をどうぞ。

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ピンチ!のときもビレイピン

索止め座や帆索止め座に刺さってるビレイピンはスポンと抜けます。手ぶらで敵に襲われたらご近所のビレイピンをどうぞ。
ロープとロープを繋ぐときもビレイピンをどうぞ。
臨時の道具でも固い棒だから働きはバッチリ。ロープが巻き付いてるときもスポンと抜けるのかは分かりませんでした。

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左側: Howard Pyle 画「Howard Pyle's Book of Pirates - Captain Scarfield」(1921年:アメリカ)
右側: Alpheus Hyatt Verrill 著「Knots, Splices and Rope Work - Belaying pin splice」(1944年:アメリカ)



キャプスタン(Anchor capstan)


キャプスタンは アンカー/錨 (Anchor)のロープ(Anchor rope)を巻き上げる木製 垂直軸 巻き上げ機 (Windlass)です。
スペインが発明して14世紀頃イングランドも導入したっぽい。
キャプスタン・バーをグルグル回してアンカーロープを巻き上げます。船によってキャプスタンの場所は上甲板や中甲板とイロイロ。
wikipedia

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Vasa号(1627年:スウェーデン)

+ アンカーはとっても大切
アンカーは風や波で船が流されないようにロープや鎖で繋げて海底に沈める道具です。錨爪が海底にガシッと刺さる。
ほとんどはとーっても重い金属製アンカー。
探検家 John Smith 著「A Sea Grammar」(1627年:イングランド)によると排水量500tの船で理想の重さは907kgです。
wikipedia

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左側: Batavia のストック・アンカー(1628年:オランダ)
右側:護衛艦 こんごう のストックレス・アンカー(1993年:日本)

海上でアンカーを使って停泊することを「錨泊」と言います。車だと「 サイドブレーキ を引いた」って感じになるの。
港で係留索を使って停泊するのは「 係留 」。
船の係留索(Mooring cable)を陸地の ボラード に括り付けて固定します。係留はアンカーを使わなくてもオケ。

16世紀のアンカーはガシッと刺さらない(ストック・アンカー)

船首には1番大きい「主錨(Bower anchor/旧名:Sheet anchor)」が付いてます。嵐とか超ヤバイときも大活躍。
Sheet anchorには「頼みの綱」って意味もアリ。
ゴールデン・ハインド号の主錨は「左舷錨(Pport anchor)」と「右舷錨(Starboard anchor)」があるっぽいです。
wikipedia

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Golden Hinde号(1577年:Golden Hind Museum Ship Brixham)

残念ながら16世紀のアンカーはガシッと刺さりません。鋳鉄や溶接の技術がイマイチで単純なアンカーしか作れなかったの。
ってことで、錨銲でアンカーの姿勢を安定(ストック・アンカー)。
1813年プリマス造船所の従業員Peringは錨冠をV字型からU字型に変えます。ちょっとガシッになってきたぜ!

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ストック・アンカー

19世紀になると技術の進歩でガシッと刺さる複雑なアンカー(錨爪がカクカク動く)を作れるようになります。
もう錨銲に頼らなくてもオケ(ストックレス・アンカー)。
イギリス海軍は1903年採用してます。でも21世紀も完璧な「錨爪が海底にガシッと刺さる」は誕生してないんだって。

「錨爪が海底にガシッと刺さる」ってなに?

アンカーを降ろした船は風や海流で流されて、アンカーロープの引っ張る力で錨爪が海底にガシッと刺さります(錨かき)。
錨と底質の間に生まれる抵抗力で船が止まるの(把駐力:Holding power)。
とっても分かりやすい詳細はこちら Ultra Anchor animation showing the setting characteristics Anchor Drop をどうぞ。

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船が強風や強潮でガーッと流されると、把駐力の小さいアンカーはガーッの力に負けて一緒に流されちゃいます(走錨)。
走錨したアンカーは自力で元に戻れないから投錨し直してね。
中村技研工業 さんによるとストック・アンカーの把駐力は5、イギリス海軍のストックレス・アンカーAC-14型は9です。

走錨は超ヤバイ!

船が強風や強潮でガーッと流されて走錨が始まると、アンカーは自分で元に戻れなから投錨し直さなくちゃいけません。
でも悪天候の最中に投錨し直しなんてムリ。
ってことで、主錨だけじゃなく予備の中錨(Stream anchor)や小錨(Kedge anchor)も使えば安心です。

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予備を使った投錨

ちなみに アルマダ海戦 でイングランドに負けたスペイン艦隊は アイルランド沖 で嵐に遭って多くの船が難破します。
アンカーをいっぱい使えば難破しなかった?
ちょびっと調べてみたら「アンカーはとーっても重い」から船に何個も載せられないんだそうです。そうなのか…。

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風や海流の向きが変わると船のお約束で船首は風下へ流されます。アンカーは一緒に方向転換するから走錨しないんだって。
ご近所との衝突にはご注意。
あと方向転換すると言ってもガーッガーッしすぎるとアンカーがひっくり返えって走錨するから安心しちゃダメです。


+ 抜錨(Weighing Anchor)のやり方
抜錨はキャプスタンをグルグル廻してアンカーロープを巻き上げます。ちなみに21世紀は機械 ウィンドラス で自動巻き上げ。
巻き上げるのに1時間以上かかったらしい。
アルマダ海戦で火船に襲われたスペイン艦隊は抜錨する暇がなくてアンカーロープを切って逃げてます(カレー沖の海戦)。

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1
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補助索(Messenger)とアンカーロープをニッパー(Nipper)で結ぶ

※ニッパーを結んだり外したりする少年の呼称も「ニッパー(Nipper)」
2
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キャプスタンを時計回りにグルグル廻して補助索を動かす
補助索に結んでるアンカーロープが引き上がる

※このキャプスタンはキャプスタン・バーを取ってる状態です
※四角の穴(Pigeon hole)にキャプスタン・バーを刺して廻します
3
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ニッパーを外す
補助索はキャプスタンへ
アンカーロープは倉口から下のケーブル置き場(Anchor rope locker)へ
4
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ケーブル置き場のアンカーロープは渦巻きみたいに綺麗に巻いてね!

※グチャグチャだと投錨するときロープが絡まっちゃうの

海はよ~♪でっかい海はよ~♪

抜錨は長時間キャプスタンをグルグル廻さなくちゃいけないし、アンカーがとーっても重いから重労働です。
ってことで、労働歌 シーシャンティ を唄いながらグルグル。
「帆を張るときの歌」「休憩のときの歌」…いろいろな歌があったそうです。音頭を取る人の呼称は「Shantyman」。

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Frank Hurley 画「Raising one of the foreyards on the foredeck. The shantyman is providing the working rhythm」(20世紀:オーストラリア)

A-Roving 」はイングランドやフランスの水夫に人気のシーシャンティです。いろんなバージョンがアリ。
こちらはプリマス版。
イングランドの脚本家 Thomas Heywood 著「The Tragedy of the Rape of Lucrece」 (1608年)でも使われてます。

In Plymouth town there lived a maid, プリマスに1人の女が住んでた
Mark well what I do say, いいか、俺の話を聞け
In Plymouth town there lived a maid, あいつはいい女だった
And she was a mistress of the trade. でも誰かの囲われ女だったんだ
I'll go no more a-roving with you, fair maid. ちょっとした出来心で手を出したら
A-roving, a-roving, since roving's been my ru-i-in, とんでもない目に遭っちまった
I'll go no more a-roving with you, fair maid.… もう二度と手は出さねぇ…

訳は超テキトー。maidは「結婚してる女性」って意味で省略した歌詞も未練タラタラな感じです。
曲は伝わってないらしい。
21世紀に歌われてる曲はこちら Sea Chantey - A-Roving - Revels をどうぞ。


+ 投錨(Let go anchor/cast anchor/drop anchor)のやり方
投錨のやり方はぜーんぜん分かりませんでした。とりあえずアンカーを海へドッボーンと投げるのはダメっぽい。
たぶん抜錨の逆じゃないかしら?
投錨の前は水深と海底の地質を測って「錨爪が海底にガシッと刺さる」かどうかチェックします。

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Pieter Brueghel the Younger ?画「Four-Master and Two Three-Masters Anchored near a Fortified Island with a Lighthouse from The Sailing Vessels」(1561年頃:ネーデルラント)

とりあえずこんなコトするっぽい

ストック・アンカーは アンカー・ダビット (Anchor davit/ Cathead )にぶら下げてから投錨します(錨吊)。
そうしないと錨銲や錨爪が船体に当たっちゃうの。
アンカー・ダビットはクレーンのような装置だそうです。使い方はぜーんぜん分かりませんでした。

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Kalmar Nyckel号 (1625年頃:スウェーデン)

錨銲や錨爪が船体に当たって傷ついたら大変!ってことで、船体は錨床(Billboard)でカバーしておきます。
錨床は頑丈な厚い板。
19世紀後半から鉄の板。いくつか画をチェックしたらゴールデン・ハインド号に錨床はナシっぽいです。

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なんやかんやで投錨が終わったらアンカーロープは係柱(Riding bitt)に結んでおきます。
ペアの双係柱(Riding bitts)もアリ。
アンカーロープと係柱は「錨結び(Fisherman's bend)」で結わくぽいです。いろいろな結びは List of bend knots をどうぞ。



中甲板



水夫達の寝室


水夫達の寝室は甲板にぶら下げたハンモックです。ハンモックは波や風でプカプカ揺れる船と一緒に揺れて安眠と安全を保証。
英国海軍は1597年キャンバス・ハンモックを正式採用。
それまで使っていた段ベッド(Berth)は嵐になると落っこちたり、よろけてぶつかったり怪我人や死亡者が出だそうです。
wikipedia

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Kronan (1668年:Kalmar County Museum)

+ 海軍はハンモック大好き♥
ハンモックはベットと違ってクルクル巻けば空間が生まれるし、ドコだってぶら下げちゃえば寝室に変身します。
アチコチの海軍が20世紀までご使用。
英国海軍をお手本にした 日本海軍 も「釣床(つりどこ)」をご使用してました。

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ORP Piorun号 (1940年:ポーランド)

猫水夫もハンモック大好き♥

こちらは古代から乗組員の一員 猫水夫 の皆さん。任務は食料、索具、木材、電気配線をかじるネズミ退治です。
ネズミは病原菌も持ってるから退治しないとね!
任務がないときは乗組員たちに癒しと友情も与えてくれます。殺伐とした戦場で猫水夫の癒しはとーっても重要。

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1段目:Convoy(1941年: HMS Hermione )、Warspite(1944年:?)
2段目:?(1941年: HMAS Nizam )、?(1956-57年:HMS Eagle)
3段目:?(?年:HMS ACHILLES?)、?(WW2:HMAS Kanimbla)
4段目:?(1944年:HMCS Iroquois)、Saipan(WW2: USS New Mexico


+ 船はハンモックだらけ
16世紀はぜーんぜん分かりませんでした。ってことで、こちらは1805年 トラファルガーの海戦 の旗艦 HMS Victory号
乗組員は821名、 排水量 (船の大きさ)は3,500t。
ちなみにゴールデン・ハインド号の乗組員は約85名、排水量は約150tです。ちょっとスケールが違いすぎたか…。
HMS Victory (History:The Crew)さんより~

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HMS Victory号(1765年:イギリス)

ネルソン提督もハンモック

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上砲列甲板(Upper gun deck)

500名以上の水夫と142名の海兵隊は砲列甲板で生活しながら戦います。下士官(Petty officer)もココかしら?

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HMS Victory号(1765年:イギリス)

中砲列甲板(Middle gun deck)


下砲列甲板(Lower gun deck)




舵(Rudder)と舵柄(Tiller)


舵は船を回頭するための板で 舵柄 をガコガコ動かして操作します。 取舵(とりかじ)と面舵(おもかじ) のアレ。
こちらはシンプルな仕組みの舵と舵柄。
キャラベル船 La Niña は1492年新大陸を発見した クリストファー・コロンブス に随伴した船です。船長と18名の水夫が乗船。
wikipedia

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La Niña号(1492年頃: Wharf of the Caravels

+ 舵輪はドラえもんくらい未来のお話し
中世の舵は船尾横にあるクォーター・ラダー(Quarter-rudder)です。でも船が大きくなってくると船尾横じゃ扱いづらい…。
ってことで、14世紀に中国の ピントル (ちょうつがい)を採用。
大航海時代 がスタートした要因の1つは「舵が船尾にお引っ越し」です。映画でお馴染みの 舵輪 は18世紀までお待ち下さい。

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舵柄と舵輪で「取舵」「面舵」

船は左折=取舵(英語:Port、西: Babor )、右折=面舵(英語:Starboard、西: Estribor )です。
舵柄で回頭するときは舵柄と船の方向は逆。
舵輪で回頭するときは舵輪と船の方向は同じです。ああ、ややこしい…とりあえず舵輪は車のハンドルと一緒ってことで。
wikipedia

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+ 16世紀は「ホイップスタッフ」
ホイップスタッフ(舵棒)は16-17世紀ご使用の操舵装置です。船がより大きくより高くなると舵柄が下甲板になっちゃう。
下甲板だと 操舵手 は船長の「面舵いっぱーい」が聞こえない。
ってことで、舵柄にホイップスタッフを繋げて上甲板でガコガコ動かせるようにしてます。これでバッチリ聞こえるぜ!
wikipedia

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Susan Constant号 (1607年頃:Jamestown Settlement

ホイップスタッフの構造

ホイップスタッフは舵柄の端っこと繋がってます。操舵手がホイップスタッフを左右に動かすと舵柄がガコガコ動くの。
ただし舵柄を片舷20°しか動かせないのでご注意。
船長の「面舵いっぱーい」のときホイップスタッフだけじゃ船を思いっきり回頭できないから一緒に帆も使ってね♥

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Susan Constant号(1607年頃:Jamestown Settlement)

ホイップスタッフはローレ(Rowle)で支えてWhipstaff sweep( カム みたいなヤツ)で舵柄の端っこと繋がってます。
舵柄はTiller sweepで補助。
Whipstaff sweepとTiller sweepは油や石鹸を塗ってるからホイップスタッフは左右にスイスイ動きます。

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ホイップスタッフのおかげで操舵手は上甲板でガコガコ動かせます。でもより大きい船は中甲板までの延長が精一杯。
中甲板だと操舵手は船長の「面舵いっぱーい」が聞こえない。
ってことで、上甲板に天窓(Companion)を開けて船長の「面舵いっぱーい」が聞こえるようにしてます。

ホイップスタッフで「取舵」「面舵」

船は左折=取舵(英語:Port、西: Babor )、右折=面舵(英語:Starboard、西: Estribor )です。
ホイップスタッフで回頭するときはホイップスタッフと船の方向は同じっぽい。
でもwikipediaには「To move the ship to port, the helmsman pushed the pole down and to the right; to move it to starboard, down and to the left. 」って書いてるの。うーん、ちょっと意味が分からないですorz
wikipedia

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最下甲板



ギャレー(Galley)


ギャレーは船が揺れても安全に、限られた狭いスペースで効率的にお料理できるように工夫されたキッチンです。
こちらは砲列甲板にあるギャレー。
大砲の火もここで起こすのかしら?いくつか画をチェックしたら16-17世紀の大きい船のギャレーは吃水線より下が多いっぽいです。
wikipedia

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Elizabeth II号(16世紀: Roanoke Island Festival Park

+ 船は火の取り扱いに超ご注意!
ストーブ(Galley stove)は周囲を壁で囲んで船体や床に熱が伝わらないようにしてます。
大釜(cauldron)は棒にぶら下げてるから船が揺れてもオケ。
こちらは船で1番揺れない船底中央にあるギャレー。火事になってもお隣に置いてある水樽で消火できるから安心ね♥

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Vasa号(1627年:スウェーデン)

換気どうしてるんでしょね?

お魚や 塩漬け肉 を焼いたら煙が出るじゃないですか!窓も換気扇もない船底のギャレーは換気どうしてるんでしょね?
こちらは背中に風よけ板が付いた携帯ストーブ(古スペイン語?:Fogon)。
足つきじゃない携帯ストーブは底に木材を敷いてご使用。16世紀も使ってるかは分かりませんでした。

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Santa María号 (1460年: Wharf of the Caravels

こちらは船で1番揺れる船首楼のギャレー。
天井が空気穴(倉口?)だから換気もバッチリ。左側はたぶん料理長のベットだと思います。

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Susan Constant号(1607年頃:Jamestown Settlement)




ヤギの寝室(Goat locker)


世界各地に補給港が確立してない16世紀の航海は十分な食料を準備しとかなくちゃいけません。でも船に冷蔵庫なんてナイ!
ってことで、お魚やお肉は塩漬けにして保存。
野菜は ピクルス にして保存。ヤギ・豚・鶏・子羊を乗せて新鮮なお肉・タマゴ・ミルクを提供して貰う場合もあります。
Golden Hind first English ship to sail around the world (Education:Food)さんより~

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海賊船(21世紀:Pirates of Nassau Interactive Museum)

ヤギの寝室「 Goat locker 」には海軍スラング「ラウンジ、 上等兵曹 の寝室、ギャレー」って意味もあります。
伝統的に部屋に入るとき許可が必要なの。
21世紀は「乗船/下船した上等兵曹のたまり場」って意味。ヤギの寝室がドコなのかはビシッとは分かりませんでした。


船底



船庫(Hold)と隔壁(Bulkhead/Partition)


船庫は 最下甲板 の下にある荷物を置くスペースです。荷物の出し入れは倉口(Hatch)からどうぞ。
16世紀は樽やシーチェストを置いてるぽい。
中身はなんでしょね?21世紀の中身は標準化した コンテナ (積み重ねられるから船庫を無駄なく使える)に収納してます。
wikipedia

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Golden Hinde号(1577年:ロンドン)

+ 重い荷物は滑車装置で出し入れ
担げる荷物は歩み板(Gangboard)から、重い荷物は 滑車装置 (Block and tackle)を使って船庫へ運び込みます。
滑車装置は複数の 滑車 とロープを組み合わせた装置。
重い荷物だってホイホイ釣り上げて船庫へスルスル運び込められちゃいます。21世紀の クレーン も滑車装置をご使用。

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スペイン商船

馬だってホイホイ釣り上げちゃう♥

滑車装置は「滑車を使えばロープを引く力はオモリの半分でオケ(滑車の原理:中学理科で習います)」のアレです。
帆船の滑車装置を調べるとやたらと馬が…。
馬は16世紀の自動車。そういえば映画「 エリザベス:ゴールデン・エイジ 」(2007年)もスペイン船に馬が乗ってます。

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左側:Embarkation of Artillery Horses at Woolwich (1854年: The Illustrated London News
右側:馬を釣り上げるスペイン船( Kentucky Horse Park

ちなみに右側の馬は アンダルシア馬 です。 レコンキスタ (710-1492年)で誕生した アラブ種 バルブ種 の自然交配種。
16世紀大人気のスペイン馬でほとんどのヨーロッパ馬のご先祖様。
スペインは 新大陸 (アメリカ)へアンダルシア馬をホイホイ運んでガンガン征服しました( コンキスタドール )。
Premier online guide for useful information about Andalucia (Andalucian Horse History)さんより~

クレーンでもホイホイ釣り上げちゃうっぽい♥

16世紀は重い荷物を船庫へ運び込むとき港湾クレーンHavenkraan(Haven:港+Kraan:クレーン)も使ってます。
コンテナクレーン って感じ?
元ネタがオランダ語なので詳細はさっぱり分かりませんでした。イングランドやスペインがご利用してるかも不明。

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左側:港湾クレーンHavenkraan(1574年頃:ネーデルラント)
右側: Pieter Bruegel the Elder 画「 The Tower of Babel 」(1563年:ネーデルラント)

港湾クレーンは 中世 に誕生した人力で動かす木製 足踏み回転車クレーン です。元はお城や大聖堂でご使用の建設クレーン。
車軸の両サイドに4mの回転車を付けて高速化。
2-3tの荷物を釣り上げられます。14世紀には自由に移動できる 浮きクレーン (floating crane)も誕生。



ヨーロッパに「黄金の国ジパング」と誤報したマルコ・ポーロ(1254-1324)は元(中国)の帆船についてこんな紹介をしてます。
  • 竜骨で船体は高い強度を保っている。
  • 隔壁構造の船体で浸水しても沈没を免れる。
  • 羅針盤で正確な遠洋航行が可能。
ヨーロッパの帆船も15世紀には「航海中に壁(walls)があったら荷物動かないんじゃね?」っと隔壁を造っていた。 ←東方見聞録のおかげかどうかは分かりませんでした。

隔壁


火薬庫(Powder magazine)


火薬庫は大砲やマスケット銃で使う 火薬樽 の置き場です。 HMSヴァンガード号 戦艦陸奥 …は火薬庫が爆発して沈没。
鉄の船でも壊れちゃうくらいだから爆発したらヤバイ!
ってことで、火薬庫は喫水線より下でとーぜん火気厳禁。壁は静電気と湿気防止に銅板(静電気を帯電しない)を張ってます。
wikipedia

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HMS Victory号(1765年:イギリス)

アルマダ海戦もスペイン艦隊 サン・サルバドール号 の火薬庫が爆発しました(1588年:プリマス沖海戦)。
16世紀の火薬は爆発するとすさまじい白煙を出す 黒色火薬
摩擦、静電気、衝撃ですぐ爆発しちゃう。吸湿性が高いくせに水分を含むと爆発しないそうです。ビセンテ!銅板、銅板!

+ 火薬庫は隔離!とにかく隔離!(残酷な画があるのでご注意下さい)
火薬は粉だから薬包(Fabric Bag/Cartridge bag)に詰めて使います。薬包の使い方は【海戦】武器と防具をどうぞ。
こちらは火薬庫の隣にある薬包庫。
薬包を作って保存しておく部屋で灯りはガッチリ隔離されてます。16世紀も火薬庫と薬包庫に分かれてるかは分かりませんでした。

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HMS Victory号(1765年:イギリス)

HMS Victory号の場合、火薬樽の火薬は大箱(Powder bin)に移して計量スコップ(Gunpowder scoop)で薬包に詰めます。
計量スコップは火花がでない胴製スコップ。
大箱は鉛で覆われたオーク製箱。天井の貯水槽と水道管で繋がってるからヤバイ!ときは大箱に水がドバーっと入ります。

疾走するパウダー・モンキー

火を使う砲列甲板は摩擦、静電気、衝撃だらけでヤバイ!ってことで、火薬庫は砲列甲板から離れた場所にあります。
海戦中は素早く動ける少年達 パウダー・モンキー が薬包を運搬。
火薬庫から砲列甲板へ安全に運べるように薬包を皮製の火薬筒(Cordite Bucket?)に入れて運びます。
A Sailor's Life for Me! (Educator Resources:The Magazine in Battle)さんより~

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海戦中の USS Constitution (1797年:アメリカ)

火薬庫や薬包庫に入れるのは決まった人だけ。静電気と湿気の防止になめ皮やフェルトのスリッパを履いてお仕事します。
もっちろん鉄製の持ち込みなんて絶対ダメダメ。
あと理由は分からなかったけど薬包は作りすぎて余ってもダメダメなんだそうです。

火薬庫が爆発したらどうなっちゃうの?

こちらは第二次世界大戦中にドイツ潜水艦 U-331 に魚雷を撃たれた HMS Barham (1914年:イギリス)です。
魚雷を撃たれた40分後に火薬庫が爆発。
火薬庫が爆発した4分後に沈没しました。爆発の様子は HMS Barham Explodes and Sinks (1941) をどうぞ。

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爆発するHMS Barham(1941年11月25日)

避難する時間も無い程あっという間の沈没で862/1,184名の乗組員が亡くなってます(その後救出した2名も死傷)。
火薬庫の爆発ってコワイ…。
ちなみに外が見えない潜水艦は音で判断します。U-331は「 クイーン・エリザベス級戦艦 の何かを攻撃した」とだけ報告。



ビルジ(Bilge)とビルジポンプ(Bilge Pump)


船底からジワジワ染み込んだ海水や船体に入り込んだ雨水は船底の最下部 ビルジ 内竜骨 の両サイド)に貯まります。
ビルジの汚水(bilge water)は船酔いしそうな衝撃のにおい。
汚水が貯まりすぎると船が沈没するので定期的に ビルジポンプ をシュポシュポして船外へ出さなくちゃいけません。
wikipedia

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ビルジポンプをシュポシュポすると汚水はビルジからリンバーパッセージ(Limber passage)を通って甲板へ汲み上がります。
あと予備の携帯ポンプも重要。
ビルジポンプが壊れたときや船が火事になったとき携帯ポンプは大活躍です。

+ ビルジポンプのシュポシュポ
帆船時代のビルジポンプは「 鎖ポンプ (鎖に付いてるお椀で汚水を汲み上げる)」の画が多かったです。
鎖ポンプは古代からヨーロッパ、中東、エジプト、中国でご使用。
携帯ポンプは「 ピストンポンプ (Force pump: 手押しポンプ みたいなヤツで海水を吸い上げる)」っぽいです。

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左側:鎖ポンプ(18世紀: Bernard Forest de Bélidor 著「L'architecture hydraulique」)
右側:ピストンポンプ(1765年:John Smeaton著「Hand pump for ship」)

汲み上げた汚水はどうするの?

16世紀はビルジポンプで汲み上げた汚水をどうやって船体の外にドボドボ捨てるのかぜーんぜん分からなかったです。
バケツで受けて捨てるのかしら?
船酔いしそうな衝撃のにおいじゃ体に悪いと思うんだけど…とりあえずこちらは17世紀のビルジポンプです。

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左側:Vasa号(1627年:スウェーデン)
右側: El Galeón Andalucía号 (17世紀:スペイン)

17世紀はビルジポンプで汲み上げた汚水を甲板の下にある「Pump dale」経由で船体の穴からドボドボ排出するっぽいです。
バケツよりぜーんぜん健康的♥
残念ながら「Pump dale」は17世紀初めに誕生した言葉です(Oxford dictionary)。

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HMS Victory号(1765年:イギリス)

こちらの画には2つのビルジポンプと2つの消火ポンプ(Elm tree pump:ELM型液封式真空ポンプ?)が登場してます。
消火ポンプは海水を吸い上げるポンプ。
竜骨の両サイドの穴からリンバーパッセージが延びてます。こんな大きな船だと携帯ポンプじゃ短すぎるのかも。

アルキメデスの螺旋

作家 アテナイオス によると アルキメデス (紀元前287–212年)は 王ヒエロン2世 から Syracusia号 の設計を依頼されます。
乗員600人で庭園や ギュムナシオン もある巨大船。
ってことで、巨大船のビルジに大量に貯まる汚水を排出するために「 アルキメデスの螺旋 」を開発したそうです。

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アルキメデスの螺旋

紋別市の観光船「ガリンコ号(1996年:退役)」「ガリンコ号II」はアルキメデスの螺旋を利用した流氷砕氷船です。
氷を割りながら進んじゃう。
船首を流氷に乗り上げてグルグル回転するアルキメデスの螺旋を船の重さで押付けて氷を割るそうです。



バラスト(ballast)


船底のバラストはマストや帆の重さでトップヘビー(上側が重い)な帆船を安定さるための重石(土砂・丸太・石)です。
バラストを積めば船の喫水線が上がって(=船が沈んで)グラグラしない。
21世紀は荷物を降ろした貨物船に海水を入れると聞いたことが…コンピュータの自動制御で勝手に海水が入るそうです。
wikipedia

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HMS Victory号(1765年:イギリス)

+ バラストでグラグラ防止
船は「荷物を積んだ状態」を基準に造られてます。荷物がカラッポだと船の喫水線が下がって(=船が浮いて)グラグラ。
長い航海で積んでた水や食料が減ってもグラグラ。
グラグラだと船が転覆しちゃう。ってことで、バラストを積んで程良い喫水線にします。

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エクアドル(南米)でスペイン船を襲撃したゴールデン・ハインド号にはこんな逸話があります。
  • 6tの戦利品(横綱の白鵬39人くらい)を載せるために
  • 6tのバラストを捨てて
  • 詰め込むのに6日かかった
逆に略奪されたスペイン船はバラストを積まなくちゃいけませんよね。ゴールデン・ハインド号から貰うのかしら?




最終更新:2016年08月18日 18:03