anko3284 今日からちぇんを飼う貴方へ - ふたば系ゆっくりいじめＳＳ@ ＷＩＫＩミラー

『今日からちぇんを飼う貴方へ』 14KB
考証 ペットショップ 9作目

　ゆっくりちぇん。
　現在日本では数多くのゆっくりがペットとして可愛がられていますが、この本ではゆっくりちぇんの飼い方についてお伝えしたいと思います。

　まず、ゆっくりちぇんの外見的な特徴から見て行きましょう。
　ちぇん種は他の種のゆっくりに比べて体格が小さく、通常の成体ゆっくりが概ねサッカーボールからバスケットボールサイズに成長するのに対し、ちぇん種はバレーボールからサッカーボールサイズに収まります。
　しかし生まれたばかりの頃は特に他の種と大きさに差異があることは少ないので、他種のゆっくりと比べて成長不全に陥っているのではないか、という不安を抱く声が時折挙げられますが、食事の量を増やしては肥満の元となるため、食事量はきちんと規定通りにしましょう。

　ちぇん種の大きな特徴として、猫のような立て耳と二本の尻尾があります。
　まず耳についてですが、ちぇん種は左側の耳に金色の耳輪のようなものを嵌めた状態で誕生します。
　この耳輪は飴細工でできており、あまりに高温の環境に晒されていると溶けてくることがあるので注意しましょう。
　ゆっくりにとっておぼうしやおりぼんといったおかざりは命の次に大切なもの。目に留まらない程度の小さな耳輪もその一つに変わりありません。耳輪を失ったちぇんは本来活発なはずの性格がとても内気なものになり、自信がなく些細な事で怯える臆病なものとなり、とても不安定な精神状態になってしまいます。

　また、二本の尻尾は個体にもよりますが、生まれたばかりの状態ですと長い紐状の尻尾ではなく、まるっとした毛玉のような尻尾であることがあります。
　これは幼体時、親姉妹に踏まれないための抑制と考えられ、成長するにつれて紐状の尻尾へと変わってゆくので心配はいりません。
　逆に言えば、幼体時においても成体になってからもこの尻尾の扱いについては常々注意しなければいけないということでもあります！
　ちぇん種を飼ううえでのトラブルの実に8割以上が尻尾に関するもので、うっかり踏みつけたり押し潰してしまう事故が絶えません。
　家の中を歩く時はちぇんが周りにいないか注意を怠らないようにし、またちぇん自身にも家族の気配を感じたら尻尾を踏まれないように自分の存在をアピールするようしつけましょう。
　万が一尻尾を踏んだりしてしまった場合は、慌てず焦らず行きつけのゆん医に電話をし、怪我の状況を詳しく説明してからお医者様の所へ連れて行きましょう。
　怪我の具合、適切な処置次第ではちぎれてしまった尻尾も元通りになることがあります。ちぇん自身は激しくパニックを起こしますが、飼い主さんは決してそれに釣られず冷静な心を持ったまま対処してあげてください。

　次に、行動的な特徴とそれに対する注意点も述べていきましょう。
　ちぇん種はゆっくりの中でも特に素早く、活発的です。部屋中を駆け回るような遊び方をすることも珍しくありません。
　また猫じゃらしやヒモなどちょこまか動くものを追おうとする猫のような習性があり、熱中すると周りが見えなくなってしまうので注意してあげましょう。
　何せ猫と違ってゆっくりなので鈍感です。一匹でピンポン玉を追い掛け回して遊んでいると、周りの状況に気づかず家具に顔面から体当たりしてしまったり、人間の通る場所に飛び込んできたりするので、踏み潰してしまう危険があります。
　元気よく遊ぶのは健康な証拠であり、健康の維持にも大切です。定期的にストレスが溜まらないように遊んであげることが事故を未然に防ぎ、ちぇんの心身の健康を保つことにもなります。

　反面、遊びたくない気分の時は徹底的に遊ばないので飼い主さんとの時間のタイミングが合わない時があります。
　こういう時は無理に誘っても機嫌を損ねるだけなので諦めて次の機会に遊んであげましょう。
　ただし、ちぇんの遊びたい欲求は内に溜まったままなので、長期間遊べない場合は前述の注意を日常生活で怠らないようにすることが大切です。

　また一人遊びが上手なため、時折飼い主さんの予想もしない形でいたずらをしてしまうことがあります。
　貯金箱に溜めていた小銭をばら撒いて追いかけっこしたり、ティッシュペーパーを空になるまで出して遊んだり、トイレットペーパーを転がして追い掛け回したり、靴下を片方だけくわえてどこかへやったり……。
　いたずらの現場を見かけたら、すぐさまちぇんを掴まえて叱りましょう。

　しかし、ただ闇雲に叱ってもちぇんはなぜ叱られたのか理解できません。
　幸いちぇんは「わからないよー」と言うので、なぜ飼い主さんが怒り、それをしてはいけなかったのか「わかるよー」と言うまで根気よく言い聞かせてあげてください。
　この時、体罰はできるだけ控えてあげてください。
　なぜならちぇんは体罰の痛み、恐怖でその場を切り抜けるためだけに「わかるよー」と言うだけで、根本的になぜ自分が叱られたのか理解できないからです。その場合、また同じいたずらをして叱られるという悪循環に陥り、ちぇんにとっても飼い主さんにとってもストレスになるだけだからです。
　現場を抑えられなかった場合はそのいたずらの状況をちぇんに見させ、なぜこんなことをしたのかと問い詰め、その時の状況を思い出させてから叱りましょう。
　この場合はちぇんも当時の記憶が薄れているため、しつけの効果も弱いです。それでも積み重ねることで覚えていくので、決して諦めたり短気を起こして手を挙げたりすることは控えてください。

　次に言動的な特徴と性格的な特徴を述べていきましょう。
　ちぇんの口癖といえば「わかるよー」です。
　これは本当に理解しているわけではなく、ただ漠然と肯定の意を示しているだけなので過度な期待は抱かないようにしましょう。
　その逆に「わからないよー」は否定的な意を示すために用います。ただし、これも本来の意味で「理解できない」という意味で使うことも多いのでそのあたりを見極めるのは付き合っていったうえでの経験でフィーリングするしかありません。

　注意してほしいことですが、ちぇんの「わかるよー」からちぇん種を素直で言うことをよく聞く善良なゆっくりだと勘違いする人が多いことです。
　ゆっくりはゆっくりするために生きている不思議生物です。ちぇんもその一種であることに変わりはなく、特例だと思ってはいけません。
　ちぇん種は確かに表向きは「わかるよー」と肯定的な姿勢を取りますが、根本的に理解していないうえにゆっくり特有の忘れっぽい頭のせいで同じ過ちを何度も繰り返し、反省するということがありません。
　さらに悪いことにちぇん種の「わかるよー」とは強い者に擦り寄るための本能でしかなく、人間風に悪く言えばイエスマンでしかないということです。

　これはちぇん種が自分より小さく弱い虫などは簡単に捕食することができ、食糧を集める行為は得意なかわりに体力や体格を求める仕事が不得意なため、単独で生存する能力が低いことに起因します。
　概ねバランスの取れた能力を持つまりさ種やありす種などと違い、ちぇん種の能力は狩り一辺倒に偏っているため、それ以外の分野においては群れに著しく依存しているので、本能的に群れの大多数の意思に従おうとする性格を持っているのです。
　このため周囲の空気を読むのが得意で、その場を切り抜けるのにもっとも最適な「わかるよー」を言うことにおいては人間ですら驚くレベルの能力を発揮することがありますが、長期的に状況を見抜く視野は持っていないため、群れと共に滅びることも珍しくありません。
　また、こういった性格のためより強いものに従おう、長いものには巻かれろ的な思考をするため、時として家族の中でちぇんが従う人間が偏ることがあります。
　お母さんの言うことだけはよく聞くのに、お父さんの言うことはまるで耳にせず、これみよがしにいたずらばかりする……そんなちぇんも中にはいます。
　その家庭内の力関係を絶妙に見抜いたちぇんの生き残り戦略ではありますが、これについてちぇんを責めても仕方がありません。

　ちぇんの「わかるよー」は基本的に何もわかっていませんが、時として人間の歪みを無自覚に見抜いていることがあります。ちぇんをしつける前に、我が身の周囲を見直すことも場合によっては必要です。

　最後に、らん種との兼ね合いについて注意を述べていきたいと思います。
　ゆっくりらんはゆっくりちぇんと本能的に強い結びつきを持っています。
　これについて理由はよくわかっていませんが、この本能の絆は人間の作った決まりや枠組みを平気で越えてしまうので十分な注意が必要です。
　野良や野生のらんと番になり、子供を作ってしまうというのはまだ良い方です。
　他の飼いらんとの間に子供を作ってしまったり、逆に他の飼いらんにまだ幼体のちぇんがすっきりされてしまったり、幼体のらんをすっきりさせてしまったり……。
　ちぇんとらんを遭遇させる場合、そこには必ず大なり小なりのトラブルが起きることは覚悟してください。

　それは一緒に飼うことでも例外ではありません。
　らんとちぇんを一緒に飼えばらんがちぇんをしつけてくれる……そういった声もありますが、これはらんにしっかりとした教育が既に行われている場合に限ります。
　先住ゆっくりがちぇんで後かららんが来た場合、せっかく教えたちぇんのしつけがらんの三分ばかりの説得で崩壊し、飼い主の言う事を全く聞かなくなることも珍しくないのです。
　また、らんとゆっくりするためならばちぇん特有の素直さ（という仮面ですが）も全く消え失せ、飼い主を自分たちにとって都合の良い道具にしか見なくなってしまうこともあります。
　こうなった場合、らんとちぇんを一度完全に引き剥がしてお互いを再教育するしかありません。
　再教育の手間は一度目の教育の何倍も手間がかかります。ちぇんにとってらんが全てであり、その後からどのようなことを言われても聞き入れることなどほとんどないからです。
　これについてはほぼ万能の高い能力を持つらん種に寄りかかればちぇん種は苦労することがないからという意見もありますが、実際のところは全くわかっていません。そもそも、らん種もなぜちぇん種に固執するかということすらわかっていないからです。

　また、飼い主の言うことを聞くことがあってもらんとちぇんを一緒にするとお互いの愛情を表現するために「ちぇーん」「らんしゃまー」と十分でも一時間でも一日中でも呼びかけ続けます。
　夜中に突然始まることもあるので、大変近所迷惑になります。あなたが良くても周りはよくないこともあるのです。

　飼い主とも近所とも上手くやっている飼いらんとちぇんの番がいた場合、それはまず間違いなくらんの忠誠心をがっちりと飼い主さんが掴んでいる証拠です。
　ちぇんはらんの言うことならば無条件で必ず聞きいれ、従います。そのためらんの手綱を飼い主さんが握っていればちぇんは普通に飼うよりずっと飼いやすく、お互いに気分良く過ごすことができるでしょう。
　ただし、この状況を実現するためにはらんのちぇんへと想う本能を越える飼い主さんへの忠誠心を育む必要があるので、決して楽なことではありません。
　それでもらん種は頭が良く、利害関係をわかりやすく説明し飼い主さんの理想とらんの理想がすり合えばきっとわかりあえるでしょう。

　それでは、ちぇんとの良いゆっくりライフを過ごせるよう……。

　メモ用紙ほどの大きさのカラーコピー紙をホチキスで留めただけの小冊子を店長はテーブルの上に投げ出し、首を振った。

「ダメだな。これじゃ使えん」
「そうですか。どこがダメだったんですか。添削しようと思ってるんですけど」
「いや、お前にテキスト任せること自体がダメだ」

　俺はさすがに眉根を寄せた。
　どこか甘ったるい匂いと生物の放つ異臭が混じった独特の芳香空間。ここはゆっくり専門のペットショップである。そして俺はここのバイト店員だ。
　店長は俺が昨夜一晩で仕上げた「今日からちぇんを飼う貴方へ」というコピー本を指でつっついた。

「まず、ゆっくりを飼う基礎知識について書いていないのが問題だ」
「ああ、確かにそれは紙幅を割くのでさっぴいちゃいましたが……。一応、ちぇん種特有の注意点だけを書き纏めてみたものなので」
「それだけでも色々問題点がある。えーとだな。まずは『体罰を控えろ』ってところかな。叱るとこで」
「は？　いや、でも人間でもぶっ叩いてもの覚える奴は覚えますけど、ゆっくりの餡子脳じゃ意味ないですよ」
「いいんだよ。ちぇんは殴ればその場は絶対に謝って『わかるよー』って言うんだから。その後同じ間違いをやるのは目に見えているが、そんなもん覚えないその個体が悪い」
「それは銀バッジクラスなら難しいですよ。人間の子供だって何が悪くて叱られたのか殴られたのかわからなけりゃ理不尽に思うだけですって」
「それじゃいちいち飼い主は餡子脳に付き合って視点下げなきゃいけないだろう」

　いやそういうものだろう教育とは。教育される側と同じ視点に立たなければ、物事を正しく理解させるなんて無理な話じゃないのか？　俺間違ったこと考えている？
　怒りと戸惑いを覚えて心の声が言葉にならない俺に向かって、店長は続ける。

「それと、言動と性格の特徴の部分。これ全部ダメだ」
「いやいやいやいや。そこ一番大事な部分なんですけど」
「なんでだ？」
「いやなんでって」
「あのな。ちぇんが人気な理由わかってるかお前？」
「外見が猫っぽいところと外っ面だけは素直なところでしょう」
「違う。外見が猫っぽいところと素直なところだ。ちぇんを買う客は、ちぇんの顔色を伺いたくなんて無いんだよ。自分の顔色を伺って辛いことも悲しいことも『わかるよー』って言ってほしいだけだ。そのちぇんが何考えているかなんてどうでもいいんだよ」
「それじゃ人工無脳に話しかけていた方がまだ建設的じゃないですか」
「姉歯設計でも見た目が良けりゃそれでいいの。そもそも、ウチの顧客層自体が既存のペット産業の顧客と微妙に違うんだ。ゆっくりは生物じゃない。性格だって見た目だって似たり寄ったりだし一匹一匹が安い。悪い製品は取り替えて良い製品を買い替える。一、二年ですぐダメになる。そういう商品なの」
「ゆっくりだってきちんとしつければ十年二十年は生きますしヘタな人間よりずっと人間の心を汲み取る個体に育ちますよ！」
「かもしれんが、そんなゆっくりを育てられる人間自体が『金バッジ』さんだわな」

　いやプラチナかも、と店長は零した。
　俺は脱力感を覚え、椅子に深くもたれかかった。
　店長は続ける。

「このらんとの項もな。らんと一緒にちぇんを抱き合わせ販売しにくいからほとんど使えない」
「……はぁ。それで、らんとちぇんがバカな飼い主のアホな躾のせいで『ゲス化』してクレームつけてきたらどうしたらいいんですか。『うちのちぇんとらんしゃまは金バッジだったのにー』って」
「そういう時は商品交換だな」
「それ、交換っていうのは表向きで引き取った個体を虐待同然の『躾』で表向きは『善良』な個体に仕立てて元の飼い主に戻すっていう方法ですか」
「そうそれ。いくら餡子脳でもほとんど虐待の教育を受けて同じ環境に再度放り込まれてまた同じバカやらかす個体は、らん種レベルなら少ない。基本種ならいくらでもやるけどな」
「けどそういった教育をされたらんは、ストレスで寿命が一年と持たないはずですよね」
「回転が速くて助かるじゃないか」
「……わかりました。テキストできあがったら自分が刷りますんで」
「変に添削するなよ。ちゃんとチェックするからな」

　そう言った店長の目はどこか優しげですらあった。
　席を立ち、店内に戻る。すると銅バッジの生後一ヵ月半のちぇんの前でしゃがみこむ中学生くらいの女の子が俺の顔を見上げた。
　先々週このちぇんを入荷してきてから、常連として通ってきていた女の子だ。もっとも、今まで一円足りとて店に金は落としていないのだが。
　女の子は立ち上がり、俺に話しかけてきた。

「すみません。このちぇんください」
「はいわかりました。ケージやフードなどは必要ではありませんか？」
「え？　そんなのいるの？　ちぇんはなんでも食べるしわたしのおうちに行けるならどんなとこでだってしあわせだって言ってるよ？」

　そりゃそうだろうな。そう言うようにしか教育されてねーんだから。
　俺は内心の不安や怒りを押し殺し、ケージから出した子ちぇんを持ち帰り用の段ボール箱へと入れてやる。
　その時、子ちぇんが俺を見上げて勝ち誇ったかのように笑顔を浮かべた。

「わかるよー！」

　そうか。俺にもわかっているぞ。お前はロクでもない飼われ方をして数ヶ月もしないうちに飽きられて捨てられるか死ぬかという将来をな。
　何せ中学生の小遣いでも買えるんだ。保護者の承認や連絡先の確認も必要なし。どれだけお前らの命が安いかって話だ。
　何一つとしてわかっていないちぇんは、女の子に引き渡された後も幸せそうに何度も「わかるよー！」と叫び続けていた。

あたいあきのゆっくり教材シリーズに感化。

anko2009 anko2010 足りないらんと足りすぎるちぇん（前後）
anko2227 anko2228 保母らん（前後）
anko2295 ブリーダーお兄さんの一日
anko2356 anko2357 浮気（前後）
anko2402 飛び魚のアーチをくぐって
anko2422 anko2423 ねこっかぶりと太陽に向く花（前後）
anko2645 野良ゆ生活はゆっくりできるね！！！
anko2646 anko2647　らんしゃまとちぇんの楽園（繁栄編）（衰退編）