政宗は目を開けた。
「……行ったか」
隣で眠ることに耐えきれずに、あの幸村が逃げ出した。
最初は政宗が目を閉じてから潜り込んだ。
そのうち共に布団にくるまることに、何の疑問も抵抗も見せなくなった。
あたたかな布団にくるまって、バカ話をするのが楽しげだった。
自分と同じように。
「明日は、来ねぇだろうな………ha、それもいい」
「……行ったか」
隣で眠ることに耐えきれずに、あの幸村が逃げ出した。
最初は政宗が目を閉じてから潜り込んだ。
そのうち共に布団にくるまることに、何の疑問も抵抗も見せなくなった。
あたたかな布団にくるまって、バカ話をするのが楽しげだった。
自分と同じように。
「明日は、来ねぇだろうな………ha、それもいい」
一人で使う布団は、やけにひんやりと広いような気がした。
翌朝、幸村は寝不足丸出しの真っ赤な目で、二槍を携えて政宗の元に駆け寄ってきた。
昨日の悩みも何のその、すっきりと燃えまくっている。
「政宗どの!決着ではなく、試合って頂きたく!」
政宗の背後に控えた小十郎が少し怒っている。見なくとも解った。
「あのな……その寝不足でオレとヤろうってかい?」
「睡眠不足など!もののふの魂の前には無いも同じ!」
ああこりゃあ、睡眠不足でhighになってんだなと嘆息した。
小十郎はやはり無言で怒っていた。
そりゃあ普段の状態でボヤを起こしかねない幸村が、
ムダにhighになっていれば心配もするだろうが。
「悪いがこれから仕事だ。午後なら時間をとってやる。
それまで寝とけ、頼むから寝ろ、城燃やすな寝ろッ」
「………」
幸村が拗ねている。
あまりやりたくなかったが、政宗は息を吸い込んで腹の底から声を上げた。
「ゆきむるぁぁぁっ!いーからてめえは、とっとと寝ろおおぉぉぉっ」
「むぁさむねどのぉぉぉっ」
至極嬉しそうに叫び返され、政宗はどっと脱力した。
どうして絶叫しあうのが楽しいんだ。
午後にござるなー、と確認しつつ、軽い足取りで幸村が廊下の奥に消えていく。
「政宗様。……何をなさったので」
「惚れたってな。少しばかり遠回しに言っただけだ」
つり上がった眉がぴくりと反応する。
心配しているような眼で一度政宗を睨み、次いで幸村の姿が消えた廊下の奥を見た。
「遠回しでは、解りますまい」
おいおい、ばれまくりだな幸村、と口元をゆがめる。
「少しだ。普通だったら気づく」
幸村ではどうか解らないが。
小十郎は跳ね上げた眉を戻した。
どれだけ小十郎が心配しようが、正室の居室に確たる名目もなく出入りは出来ない。
だから、助言できるのは幸村が奥から抜け出してふらふらとしている時のみ。
今はどうにもできねーから苛立ってんだろうな、
と同情混じりにちらりと小十郎の眉間を見る。
小十郎は視線に気づいたのか折り目正しく向き直って、感慨深げに政宗を見つめた。
「政宗様も、ついに初恋をされましたか……遅くきた恋は、深い物になると言います。
政宗様、改めて、末永くお幸せに」
「ha!痒いこと言うなよ小十郎」
遅いとかも言うな小十郎、と続けて口に出さずに呟いた。
小十郎は目で笑う。
「初恋……何もかもが懐かしいもので、つい」
「ah?涸れるには早ぇだろ?……いつきが泣くぜ?」
最北端一揆を鎮めてからこちら、いつきと小十郎はやけに仲がいい。
野菜作りのコツを、時折とはいえ手ずから教えているとも聞く。
いつきも当初は”こわい顔のおさむらい”と怯えていたようだが、協力して土を耕す間に、小十郎の名前を覚えたらしい。
ふと思い出し水を向けたが、小十郎は笑顔で流した。
「あれこそ初恋も知らぬ子供でございましょう」
「さあ、な」
初恋、なんとむず痒い響きだろう。
だが、確かにそうかも知れない。
一夜の恋、行きずりの愛なら幾度もかわした。
戦場の熱狂にはほど遠い、生理現象じみたものを。
昨日の悩みも何のその、すっきりと燃えまくっている。
「政宗どの!決着ではなく、試合って頂きたく!」
政宗の背後に控えた小十郎が少し怒っている。見なくとも解った。
「あのな……その寝不足でオレとヤろうってかい?」
「睡眠不足など!もののふの魂の前には無いも同じ!」
ああこりゃあ、睡眠不足でhighになってんだなと嘆息した。
小十郎はやはり無言で怒っていた。
そりゃあ普段の状態でボヤを起こしかねない幸村が、
ムダにhighになっていれば心配もするだろうが。
「悪いがこれから仕事だ。午後なら時間をとってやる。
それまで寝とけ、頼むから寝ろ、城燃やすな寝ろッ」
「………」
幸村が拗ねている。
あまりやりたくなかったが、政宗は息を吸い込んで腹の底から声を上げた。
「ゆきむるぁぁぁっ!いーからてめえは、とっとと寝ろおおぉぉぉっ」
「むぁさむねどのぉぉぉっ」
至極嬉しそうに叫び返され、政宗はどっと脱力した。
どうして絶叫しあうのが楽しいんだ。
午後にござるなー、と確認しつつ、軽い足取りで幸村が廊下の奥に消えていく。
「政宗様。……何をなさったので」
「惚れたってな。少しばかり遠回しに言っただけだ」
つり上がった眉がぴくりと反応する。
心配しているような眼で一度政宗を睨み、次いで幸村の姿が消えた廊下の奥を見た。
「遠回しでは、解りますまい」
おいおい、ばれまくりだな幸村、と口元をゆがめる。
「少しだ。普通だったら気づく」
幸村ではどうか解らないが。
小十郎は跳ね上げた眉を戻した。
どれだけ小十郎が心配しようが、正室の居室に確たる名目もなく出入りは出来ない。
だから、助言できるのは幸村が奥から抜け出してふらふらとしている時のみ。
今はどうにもできねーから苛立ってんだろうな、
と同情混じりにちらりと小十郎の眉間を見る。
小十郎は視線に気づいたのか折り目正しく向き直って、感慨深げに政宗を見つめた。
「政宗様も、ついに初恋をされましたか……遅くきた恋は、深い物になると言います。
政宗様、改めて、末永くお幸せに」
「ha!痒いこと言うなよ小十郎」
遅いとかも言うな小十郎、と続けて口に出さずに呟いた。
小十郎は目で笑う。
「初恋……何もかもが懐かしいもので、つい」
「ah?涸れるには早ぇだろ?……いつきが泣くぜ?」
最北端一揆を鎮めてからこちら、いつきと小十郎はやけに仲がいい。
野菜作りのコツを、時折とはいえ手ずから教えているとも聞く。
いつきも当初は”こわい顔のおさむらい”と怯えていたようだが、協力して土を耕す間に、小十郎の名前を覚えたらしい。
ふと思い出し水を向けたが、小十郎は笑顔で流した。
「あれこそ初恋も知らぬ子供でございましょう」
「さあ、な」
初恋、なんとむず痒い響きだろう。
だが、確かにそうかも知れない。
一夜の恋、行きずりの愛なら幾度もかわした。
戦場の熱狂にはほど遠い、生理現象じみたものを。




