幸村は、とその襟元をくつろげながら思う。
大概ぼけたヤツだが、時折、針のように鋭く政宗を理解する。
まだよく知ってはいないが、元々頭は良い方ではないかと思う。
それでも安易な同意は見せず、ただ幸村なりの考えに基づいて行動するだけ。
それで良い。いいや、それが良い。
「左様にござるか」
「ああ。…タメで喋れよ、幸村。ここじゃ他に誰もいない」
くつろげた襟元に手を差し入れて、肩まであらわにする。
「ため?」
「対等にしゃべりな。その方が、ゾクゾクする」
肩口から滑り落ちる手のひらに口づけ、指先を舐めた。
短く切りそろえられた爪、節の経った長い指。
小さい悲鳴が耳を打ち、慌てたように指が逃げる。
またか、と小さく笑って肘の内側を甘がみした。
幸村の息はとうに上がっている。
撫でるのでさえ厭がった胸に、静かに顔を埋めた。
幸村がよくやる、本人はどうとも思っていないらしい姿勢。
吸うのでも嬲るのでもなく、ただ額を押しつける。
結構恥ずかしいな、と言うのが感想だった。
「幸村。辛いか?」
顔を上げて尋ねた時、幸村は思いきり唇をかみしめていた。
迷いなく唇をあわせ、舐めあげて口を開かせる。
「はっ、その、た、たた、たいしたことは」
「…唇に歯形残ってるぜ?」
言いざまもう一度口づけると、寝巻の肩を強く握られた。
唇から、血の味がする。何度も舐め回すと、握りしめた指から力が緩く抜けた。
ふ、と離れると、また力がこもる。
「勇敢なのか、緊張してんのか、わかんねーな」
喉奥で笑うと、幸村もくつりと笑った。
「考えるのも、待つことも、生来苦手で……」
ござる、と言いかけて止めたのか、微妙な言葉の切り方をした。
kissだけされている間なら、それに集中していればいい。
しかし、途切れれば次は何が起こるのかと身構える?
それが噛みしめる唇や、握りしめる拳に出るのか。
一昨日は、呆然としていただけだった。
「なら、考えなくても良い。来いよ、幸村」
軽く言い放つと、幸村は一度大きく目を見張った。
確かめるように政宗を窺い、困ったような目の色に決意が宿る。
どうするのだろうかと見守る政宗の中には、期待しかない。
幸村、どうして怖い?痛かったからか、女だからなのか。
幸村は着乱れた衣をふと見下ろし、帯をといた。衣が肩から滑り落ちる。
上半身が露わになる。
眉根がきつく寄っている。
戦場で見る顔にどこか似ていて、しかし泣きそうな顔にも見えた。
「無理すんなよ」
自分で脱がせたかった。
「無理なのか、考えるのを止めたゆえに解らぬ、……某は、」
幸村は暫し言いあぐねると、政宗の帯もといた。
「胸の奥が苦しいような、気が……」
結び目を解く以上のことはせず、両手で政宗の右手を包むようにとった。
「苦しい?」
幸村は頷くと、政宗がしたように手のひらに口づけた。
「触れられた場所が苦しい。嫌か、と聞かれれば違うと答えるしかない。あ、あまりに破廉恥なことながら……某、おそらくは……嬉しいと、幸せだと……っ」
うつむき加減で言い切ると、人差し指をぱくりとくわえた。
幸村。アンタはどうなんだって答えを、ずっと考えていたのか。
触れられながら、嫌ではない、だが苦しい、と。
大概ぼけたヤツだが、時折、針のように鋭く政宗を理解する。
まだよく知ってはいないが、元々頭は良い方ではないかと思う。
それでも安易な同意は見せず、ただ幸村なりの考えに基づいて行動するだけ。
それで良い。いいや、それが良い。
「左様にござるか」
「ああ。…タメで喋れよ、幸村。ここじゃ他に誰もいない」
くつろげた襟元に手を差し入れて、肩まであらわにする。
「ため?」
「対等にしゃべりな。その方が、ゾクゾクする」
肩口から滑り落ちる手のひらに口づけ、指先を舐めた。
短く切りそろえられた爪、節の経った長い指。
小さい悲鳴が耳を打ち、慌てたように指が逃げる。
またか、と小さく笑って肘の内側を甘がみした。
幸村の息はとうに上がっている。
撫でるのでさえ厭がった胸に、静かに顔を埋めた。
幸村がよくやる、本人はどうとも思っていないらしい姿勢。
吸うのでも嬲るのでもなく、ただ額を押しつける。
結構恥ずかしいな、と言うのが感想だった。
「幸村。辛いか?」
顔を上げて尋ねた時、幸村は思いきり唇をかみしめていた。
迷いなく唇をあわせ、舐めあげて口を開かせる。
「はっ、その、た、たた、たいしたことは」
「…唇に歯形残ってるぜ?」
言いざまもう一度口づけると、寝巻の肩を強く握られた。
唇から、血の味がする。何度も舐め回すと、握りしめた指から力が緩く抜けた。
ふ、と離れると、また力がこもる。
「勇敢なのか、緊張してんのか、わかんねーな」
喉奥で笑うと、幸村もくつりと笑った。
「考えるのも、待つことも、生来苦手で……」
ござる、と言いかけて止めたのか、微妙な言葉の切り方をした。
kissだけされている間なら、それに集中していればいい。
しかし、途切れれば次は何が起こるのかと身構える?
それが噛みしめる唇や、握りしめる拳に出るのか。
一昨日は、呆然としていただけだった。
「なら、考えなくても良い。来いよ、幸村」
軽く言い放つと、幸村は一度大きく目を見張った。
確かめるように政宗を窺い、困ったような目の色に決意が宿る。
どうするのだろうかと見守る政宗の中には、期待しかない。
幸村、どうして怖い?痛かったからか、女だからなのか。
幸村は着乱れた衣をふと見下ろし、帯をといた。衣が肩から滑り落ちる。
上半身が露わになる。
眉根がきつく寄っている。
戦場で見る顔にどこか似ていて、しかし泣きそうな顔にも見えた。
「無理すんなよ」
自分で脱がせたかった。
「無理なのか、考えるのを止めたゆえに解らぬ、……某は、」
幸村は暫し言いあぐねると、政宗の帯もといた。
「胸の奥が苦しいような、気が……」
結び目を解く以上のことはせず、両手で政宗の右手を包むようにとった。
「苦しい?」
幸村は頷くと、政宗がしたように手のひらに口づけた。
「触れられた場所が苦しい。嫌か、と聞かれれば違うと答えるしかない。あ、あまりに破廉恥なことながら……某、おそらくは……嬉しいと、幸せだと……っ」
うつむき加減で言い切ると、人差し指をぱくりとくわえた。
幸村。アンタはどうなんだって答えを、ずっと考えていたのか。
触れられながら、嫌ではない、だが苦しい、と。




