我慢に我慢を重ねた体は、一度冷えたくらいで萎えたりはしない。
すぐに熱を取り戻した幸村は、夕餉もそこそこに政宗の閨を訪れた。
政宗はすでに準備を整え、白い夜着を纏っていた。髪は元の長さに戻り、化粧も紅だけ。
いつもの政宗の姿に安堵のため息をついた。
「……なんだよ」
褥の横に座ったまま幸村を見上げる姿も出陣前に見たそのままで、
幸村は子犬のようにはしゃぎ回りたいのを我慢して政宗の前に座った。
引き寄せて抱きしめる。政宗の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
ほんの少し伸びた政宗の髪を梳く。硬質な輝きが強くなる。
「……背、伸びたな」
「少し。まだまだ伸びますぞ」
「悪いjokeはよせよ。ただでさえ俺よりでかいんだから、俺より三寸以上でかくなるな」
「三寸にござるか。それは難しい」
体がまだ伸びようとしているらしく、戦の最中はずっと膝が痛かった。どうやら戦の間に
一寸ほど伸びたらしい。
「手も勝てねぇ、足も勝てねぇ。体力も勝てねぇし、脚の速さも敵わねぇ。……今戦ったら負けるな」
冗談じゃねぇぜ、と政宗は呟いた。悲しげな響きの声に、幸村はすまない気持ちになった。
政宗の立場は弱い。
武将としての強さも為政者としての能力も必要ない。伊達の血すらよすがにならない。
子を産む胎。それ以外のものはいらないのだから笑わせる。
昔、子供が欲しいとねだられた。けれどあれは、伊達の跡継ぎが欲しいという意味だった。
今必要なのは真田の跡継ぎ。
「政宗殿。今でも、俺の子が欲しいか?」
「sure。当たり前だろ」
見詰め合う。黒い瞳に吸い込まれそうになる。眼光の鋭さは失われていない。天下を睨み、
幸村を睨んでいたころと少しも変わらない。
「……まことに?」
「疑り深いな。閨で嘘ついてどうするんだよ。丈夫な体持ってて、月のものが順調で、
好きな男と一緒になった。そんな女が、なんで子供を望まないって思うんだよ」
手が髪に差し込まれ、首を傾けることを強制される。触れるだけの口付けを交わし、政宗は笑う。
腕を絡めて手を取った。家事仕事と武芸に慣れた手。佐助の手に似てる。
手に顔を押し当てる。掌の筋に沿って舌を這わせた。
「な……んだよ、くすぐってぇ」
「よい匂いがするので」
「糠じゃねぇの? 風呂行く前に白菜漬けたし」
「そうか。……どうりで食べたくなる匂いだと思った」
指を一つ一つ口に含む。逃げようとする体を抑え込み、褥の上に押し倒す。
襟元を寛げ胸に顔を埋める。横になって肉が広がっているせいで、手に余るほど豊かな胸が
ひどく卑猥な形をしていた。
「また大きゅうなられた」
「お前が揉むから……、ぁ」
胸をやわやわと揉みながら、桜色の尖端をそっとかじった。音を立てて舐めれば尖端が
ぷっくりと立ち上がる。
それに満足すると、すぐに顔を下に移動させる。
鼻を押し当てて政宗の匂いを吸い込めば、それだけで熱が形をなす。
欲望のままに襲いかかって貪りたいが、そんなことをしたら泣かれるかそれとも殺されるか。
どちらも避けたい。
「焦るなよ」
手を首に絡め、政宗は体を起こした。
顔が近づき、口付けられる。唇を開ければ舌を差し込まれ、絡め取られる。
いつになく積極的な政宗の舌を受け入れると、幸村は政宗を見た。
「我慢したのは、お前だけじゃないんだぜ?」
ちろ、と赤い舌で唇を舐められると、紅を刷いた唇がまた迫ってくる。暗い色の紅が、
誘うように挑むように微笑みを形作る。
舌を絡め、口腔を嬲り、主導権を奪い合う。技巧も手管も用いず、ひたすら舌を奪い合った。
「……ふっ……」
政宗の息が上がる。肺活量の勝利だ。
幸村は政宗の体を強く抱き締め、夜着を取り払った。
醜い傷跡が散った白い肌。まだ冷えている皮膚の下にどんな熱い情欲と血潮を持っているのか
想像するだけで、幸村の体内に宿った熱は更に温度を上げていく。
花影ワヤン8
すぐに熱を取り戻した幸村は、夕餉もそこそこに政宗の閨を訪れた。
政宗はすでに準備を整え、白い夜着を纏っていた。髪は元の長さに戻り、化粧も紅だけ。
いつもの政宗の姿に安堵のため息をついた。
「……なんだよ」
褥の横に座ったまま幸村を見上げる姿も出陣前に見たそのままで、
幸村は子犬のようにはしゃぎ回りたいのを我慢して政宗の前に座った。
引き寄せて抱きしめる。政宗の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
ほんの少し伸びた政宗の髪を梳く。硬質な輝きが強くなる。
「……背、伸びたな」
「少し。まだまだ伸びますぞ」
「悪いjokeはよせよ。ただでさえ俺よりでかいんだから、俺より三寸以上でかくなるな」
「三寸にござるか。それは難しい」
体がまだ伸びようとしているらしく、戦の最中はずっと膝が痛かった。どうやら戦の間に
一寸ほど伸びたらしい。
「手も勝てねぇ、足も勝てねぇ。体力も勝てねぇし、脚の速さも敵わねぇ。……今戦ったら負けるな」
冗談じゃねぇぜ、と政宗は呟いた。悲しげな響きの声に、幸村はすまない気持ちになった。
政宗の立場は弱い。
武将としての強さも為政者としての能力も必要ない。伊達の血すらよすがにならない。
子を産む胎。それ以外のものはいらないのだから笑わせる。
昔、子供が欲しいとねだられた。けれどあれは、伊達の跡継ぎが欲しいという意味だった。
今必要なのは真田の跡継ぎ。
「政宗殿。今でも、俺の子が欲しいか?」
「sure。当たり前だろ」
見詰め合う。黒い瞳に吸い込まれそうになる。眼光の鋭さは失われていない。天下を睨み、
幸村を睨んでいたころと少しも変わらない。
「……まことに?」
「疑り深いな。閨で嘘ついてどうするんだよ。丈夫な体持ってて、月のものが順調で、
好きな男と一緒になった。そんな女が、なんで子供を望まないって思うんだよ」
手が髪に差し込まれ、首を傾けることを強制される。触れるだけの口付けを交わし、政宗は笑う。
腕を絡めて手を取った。家事仕事と武芸に慣れた手。佐助の手に似てる。
手に顔を押し当てる。掌の筋に沿って舌を這わせた。
「な……んだよ、くすぐってぇ」
「よい匂いがするので」
「糠じゃねぇの? 風呂行く前に白菜漬けたし」
「そうか。……どうりで食べたくなる匂いだと思った」
指を一つ一つ口に含む。逃げようとする体を抑え込み、褥の上に押し倒す。
襟元を寛げ胸に顔を埋める。横になって肉が広がっているせいで、手に余るほど豊かな胸が
ひどく卑猥な形をしていた。
「また大きゅうなられた」
「お前が揉むから……、ぁ」
胸をやわやわと揉みながら、桜色の尖端をそっとかじった。音を立てて舐めれば尖端が
ぷっくりと立ち上がる。
それに満足すると、すぐに顔を下に移動させる。
鼻を押し当てて政宗の匂いを吸い込めば、それだけで熱が形をなす。
欲望のままに襲いかかって貪りたいが、そんなことをしたら泣かれるかそれとも殺されるか。
どちらも避けたい。
「焦るなよ」
手を首に絡め、政宗は体を起こした。
顔が近づき、口付けられる。唇を開ければ舌を差し込まれ、絡め取られる。
いつになく積極的な政宗の舌を受け入れると、幸村は政宗を見た。
「我慢したのは、お前だけじゃないんだぜ?」
ちろ、と赤い舌で唇を舐められると、紅を刷いた唇がまた迫ってくる。暗い色の紅が、
誘うように挑むように微笑みを形作る。
舌を絡め、口腔を嬲り、主導権を奪い合う。技巧も手管も用いず、ひたすら舌を奪い合った。
「……ふっ……」
政宗の息が上がる。肺活量の勝利だ。
幸村は政宗の体を強く抱き締め、夜着を取り払った。
醜い傷跡が散った白い肌。まだ冷えている皮膚の下にどんな熱い情欲と血潮を持っているのか
想像するだけで、幸村の体内に宿った熱は更に温度を上げていく。
花影ワヤン8




