「お姉さんさー……故郷は?」
これ以上ないほど異国人そのものの容姿。でも、達者な言葉。
「海。この顔だの髪だの、どっから来たのか良くしらねえんだ、だが海が俺の故郷だ」
そっか。
俺も俺がどこから来たのか知らないよ。
「名前も聞いて良い?」
「……変なヤツだな。さっきまで何も聞こうとしなかったじゃねえかよ?」
少しがっかりしたその顔の前で、親指だけで布団を指し示した。
「ま、礼儀……なんてね。嫌なんでしょそいつに最初持ってかれんの」
お姉さんはぱあっと笑った。やっぱり最初、だったらしい。
これ以上ないほど異国人そのものの容姿。でも、達者な言葉。
「海。この顔だの髪だの、どっから来たのか良くしらねえんだ、だが海が俺の故郷だ」
そっか。
俺も俺がどこから来たのか知らないよ。
「名前も聞いて良い?」
「……変なヤツだな。さっきまで何も聞こうとしなかったじゃねえかよ?」
少しがっかりしたその顔の前で、親指だけで布団を指し示した。
「ま、礼儀……なんてね。嫌なんでしょそいつに最初持ってかれんの」
お姉さんはぱあっと笑った。やっぱり最初、だったらしい。
そのまんま名前を名乗るわけにはいかねえよな。ドン引かれる。
体を引き寄せられるまま預けながら考え、元親はうん、と頷く。
「マダム・バタフライと呼んでくれや」
ちょう、そかべ。──蝶。いい思いつきだと思ったが、兄さんはうにゃうにゃと口の中で何度か繰り返した。
たいぶん言いにくいらしい。
「はっ?異国の名前だろうとは思ったけどさ……無駄、じゃない、まだ。まだ六ー端風来ちゃん?」
まだで区切るなってんだ。
「やっぱ駄目か。蝶々だよ、お蝶夫人」
「ちょうちょちゃん?」
ほっとした言葉にもう一度首を振る。
「いいづらいなら止めっか。つっか蝶々ちゃんは止してくれよ兄さん……ええと」
もとちか。男のような名前、嫌だったことは一度もない。
「んじゃちーちゃんとかチカちゃんとか」
「ちか?千の……花?香り?」
綺麗な字を当てはめるもんだなあ、と驚いた。結構学のある行商人だ。
身ごなしはしなやかでバネがあって、きっと腕もそれなりのモンなのだろうとは思っていたが。
「はっは!適当だ。漢字当てはめなくたっていいだろ」
だねえ、と兄さんは緩く笑って、んじゃあ俺のことはさすけ、とでも呼んでくれるかなと言った。
なんかありがちな名前。
「佐助、な。なあ、好きだぜ佐助」
あそー、と適当な相づち。異国の衣装に戸惑っているのが解って、腕から身を離してくるりと回った。
腕輪が擦れ合ってしゃらりと鳴る。
回りながら布を取り去る。そのまま布を背後に放る。
佐助は一連の動きに見入っていたようで、それがやたらと嬉しくてにやにや笑う。
もう、臍まで出るぴっちりした服と腰巻きだけだ。
「な。言ってくれよ佐助も」
「あいにく、愛だの恋だの、良く分かんない人でね。……愛してるよ、ちかちゃん」
真面目な顔でほらを吹く。いいねえ大好きだ。
「なあなあ、後は脱がせてくれるか?背中、ほら……」
背中に並ぶ珊瑚の釦を指し示すと、つっと背を撫でられた。それだけがなぜかぞくりと来る。
姫親が行く!6
体を引き寄せられるまま預けながら考え、元親はうん、と頷く。
「マダム・バタフライと呼んでくれや」
ちょう、そかべ。──蝶。いい思いつきだと思ったが、兄さんはうにゃうにゃと口の中で何度か繰り返した。
たいぶん言いにくいらしい。
「はっ?異国の名前だろうとは思ったけどさ……無駄、じゃない、まだ。まだ六ー端風来ちゃん?」
まだで区切るなってんだ。
「やっぱ駄目か。蝶々だよ、お蝶夫人」
「ちょうちょちゃん?」
ほっとした言葉にもう一度首を振る。
「いいづらいなら止めっか。つっか蝶々ちゃんは止してくれよ兄さん……ええと」
もとちか。男のような名前、嫌だったことは一度もない。
「んじゃちーちゃんとかチカちゃんとか」
「ちか?千の……花?香り?」
綺麗な字を当てはめるもんだなあ、と驚いた。結構学のある行商人だ。
身ごなしはしなやかでバネがあって、きっと腕もそれなりのモンなのだろうとは思っていたが。
「はっは!適当だ。漢字当てはめなくたっていいだろ」
だねえ、と兄さんは緩く笑って、んじゃあ俺のことはさすけ、とでも呼んでくれるかなと言った。
なんかありがちな名前。
「佐助、な。なあ、好きだぜ佐助」
あそー、と適当な相づち。異国の衣装に戸惑っているのが解って、腕から身を離してくるりと回った。
腕輪が擦れ合ってしゃらりと鳴る。
回りながら布を取り去る。そのまま布を背後に放る。
佐助は一連の動きに見入っていたようで、それがやたらと嬉しくてにやにや笑う。
もう、臍まで出るぴっちりした服と腰巻きだけだ。
「な。言ってくれよ佐助も」
「あいにく、愛だの恋だの、良く分かんない人でね。……愛してるよ、ちかちゃん」
真面目な顔でほらを吹く。いいねえ大好きだ。
「なあなあ、後は脱がせてくれるか?背中、ほら……」
背中に並ぶ珊瑚の釦を指し示すと、つっと背を撫でられた。それだけがなぜかぞくりと来る。
姫親が行く!6




