本命の佐助を伴って、若い衆が再度やって来たのだ。
脇には花魁と初会の祝言を交わす為の杯台やらも用意されていた。
ほっと胸を撫で下ろす、がその腹の奥底に、なにかもやもやしたものを感じる。
自分のお役目もここまで。政宗殿の敵娼(あいかた)は佐助となる。
お役御免、結構ではないか。この無礼で破廉恥な御仁の相手を、もうしなくても済む。
初めての名代を、立派に務め上げきれなかったのが心残りなだけだ。
「ちっ…Time upか」
苛立たしげに舌打ちをして政宗殿は、両手を静かに放し、ゆっくりとした所作で立ち上がった。
そのまま席に戻るのかと思いきや、なぜか上着を纏って帰り支度を始めている。
「い、いかが致された政宗殿!?」
まさかこの幸村が失礼を働いてばかりだったがゆえに、怒って帰ってしまわれるのだろうか。
それでは佐助の面目も潰した事になる。某の面子も立たない。
慌てて立ち上がり、政宗殿を引き止めようとしたところ、彼は片手でそれを制して穏やかに微笑んだ。
「充分楽しませてもらったからな、今日はもう屋敷に帰るぜ」
呆けた顔の俺達を尻目に、政宗殿は若い衆に舟を呼ぶよう頼みながら、心付けを幾枚か渡していた。
若い衆は、二、三度頷きながら、すぐに舟宿へ向かった。
後を追うようにして、政宗殿も廊下に出る。佐助が、数歩下がって進路を譲った。
一寸だけ視線を交わしたようだが、言葉は交わさない。
花魁の初会とは元来そういうものだが、この二人は殊更に堂に入った雰囲気がした。
「あ、あの…」
取り残された気がして声を掛ければ、政宗殿がゆっくりと振り返る。
「またすぐ来るから、いい子にしてろよ」
幸村、と最後に小さく名を呼んだ。
意味ありげな不適な笑みが、脳裏に焼き付いた。
脇には花魁と初会の祝言を交わす為の杯台やらも用意されていた。
ほっと胸を撫で下ろす、がその腹の奥底に、なにかもやもやしたものを感じる。
自分のお役目もここまで。政宗殿の敵娼(あいかた)は佐助となる。
お役御免、結構ではないか。この無礼で破廉恥な御仁の相手を、もうしなくても済む。
初めての名代を、立派に務め上げきれなかったのが心残りなだけだ。
「ちっ…Time upか」
苛立たしげに舌打ちをして政宗殿は、両手を静かに放し、ゆっくりとした所作で立ち上がった。
そのまま席に戻るのかと思いきや、なぜか上着を纏って帰り支度を始めている。
「い、いかが致された政宗殿!?」
まさかこの幸村が失礼を働いてばかりだったがゆえに、怒って帰ってしまわれるのだろうか。
それでは佐助の面目も潰した事になる。某の面子も立たない。
慌てて立ち上がり、政宗殿を引き止めようとしたところ、彼は片手でそれを制して穏やかに微笑んだ。
「充分楽しませてもらったからな、今日はもう屋敷に帰るぜ」
呆けた顔の俺達を尻目に、政宗殿は若い衆に舟を呼ぶよう頼みながら、心付けを幾枚か渡していた。
若い衆は、二、三度頷きながら、すぐに舟宿へ向かった。
後を追うようにして、政宗殿も廊下に出る。佐助が、数歩下がって進路を譲った。
一寸だけ視線を交わしたようだが、言葉は交わさない。
花魁の初会とは元来そういうものだが、この二人は殊更に堂に入った雰囲気がした。
「あ、あの…」
取り残された気がして声を掛ければ、政宗殿がゆっくりと振り返る。
「またすぐ来るから、いい子にしてろよ」
幸村、と最後に小さく名を呼んだ。
意味ありげな不適な笑みが、脳裏に焼き付いた。




