他愛もない用事を言いつけられては奥州まで走った。
出発は大抵夜中で、いつも俺は月を見上げながら走っていた。
休みなしで、急がなくてもいいんだけど何でか休めなくて、埃で薄汚れたままの格好で屋根裏から忍びこんで。
どんなに早くついても俺は必ず屋根裏であの人が一人になるのを何刻でも待っていた。
あの人は俺に気付いても人払いする事もなく、きっちりと仕事を果たしてから背中で俺を呼ぶんだ。
ぎゃあって、お前うるさいよ。そんな事訊いて無いでしょ。
この背中に、竜を背負っているんだ。
本当に俺の入る場所はこの人の中の何処にもないんだって思うと何だか息苦しくなって、ぺったりと背中に張り付いた。
『仕方ねえやつだな、こんなに冷えて』
馬鹿かお前は、とか言いながら逞しい腕にすっぽりと抱かれて、罵られて。
「…ははっ…俺って、変態…?」
部下に気付かれないように、そっと腰を捻り、吐息を飲み下した。
ぷん、と血の匂いが気持ち悪いのに甘く感じられて、また俺は腰を動かした。
じゅく…と音がしそうなほどに濡れてきてる。
酔っているんだ。
こういう仕事は久しぶりだから、『忍び』の俺が喜んでいるんだ。
足の裏に半分埋めた釘を勢いよく叩いた。
侍は涙とか鼻血とかで顔中ベタベタにしながら叫んでて、見苦しいなあほんと。
あの人だったらこんな風にはならない。
痛みに慣れ始める前に、釘を引き抜いた。
海老反りに縛られた男の顔を覗きこんで、さて次はどうしようか。
「歯を抜いてやろうかなあ…鼻穴に錐でも突っ込んでやろうかな…あ、でも汚くなるから使いたくないなあ……いっそ肉を千切るか?確か裏の術の方にそんなのがあったような…」
ここで縛られてるのがあの人だったら。
きっと縛られてる癖に縛ってる方が負けてる気になるんだろうな…痛めつけてもいつものふてぶてしい顔で、『もう終いか?軟弱な野郎だ』って無駄に煽りまくるに決まってるよな…。
「長、口に出てますよ」
「あれ、ごめん。あんたもごめんね?俺ってば新婚だから早く帰りたいんだよねー」
懐からまきびしを出して、丁寧に軟膏を塗り付ける。
「じゃあ取りあえず脱がしてよ」
「ま、まさか…」
「長!それは…!!」
「なによ。忍びに情けは無用でしょうが」
「見てる方が痛いんです」
落ち着かない動きで尻を押さえる部下を見て、侍も何されるか気付いたみたいだ。
出発は大抵夜中で、いつも俺は月を見上げながら走っていた。
休みなしで、急がなくてもいいんだけど何でか休めなくて、埃で薄汚れたままの格好で屋根裏から忍びこんで。
どんなに早くついても俺は必ず屋根裏であの人が一人になるのを何刻でも待っていた。
あの人は俺に気付いても人払いする事もなく、きっちりと仕事を果たしてから背中で俺を呼ぶんだ。
ぎゃあって、お前うるさいよ。そんな事訊いて無いでしょ。
この背中に、竜を背負っているんだ。
本当に俺の入る場所はこの人の中の何処にもないんだって思うと何だか息苦しくなって、ぺったりと背中に張り付いた。
『仕方ねえやつだな、こんなに冷えて』
馬鹿かお前は、とか言いながら逞しい腕にすっぽりと抱かれて、罵られて。
「…ははっ…俺って、変態…?」
部下に気付かれないように、そっと腰を捻り、吐息を飲み下した。
ぷん、と血の匂いが気持ち悪いのに甘く感じられて、また俺は腰を動かした。
じゅく…と音がしそうなほどに濡れてきてる。
酔っているんだ。
こういう仕事は久しぶりだから、『忍び』の俺が喜んでいるんだ。
足の裏に半分埋めた釘を勢いよく叩いた。
侍は涙とか鼻血とかで顔中ベタベタにしながら叫んでて、見苦しいなあほんと。
あの人だったらこんな風にはならない。
痛みに慣れ始める前に、釘を引き抜いた。
海老反りに縛られた男の顔を覗きこんで、さて次はどうしようか。
「歯を抜いてやろうかなあ…鼻穴に錐でも突っ込んでやろうかな…あ、でも汚くなるから使いたくないなあ……いっそ肉を千切るか?確か裏の術の方にそんなのがあったような…」
ここで縛られてるのがあの人だったら。
きっと縛られてる癖に縛ってる方が負けてる気になるんだろうな…痛めつけてもいつものふてぶてしい顔で、『もう終いか?軟弱な野郎だ』って無駄に煽りまくるに決まってるよな…。
「長、口に出てますよ」
「あれ、ごめん。あんたもごめんね?俺ってば新婚だから早く帰りたいんだよねー」
懐からまきびしを出して、丁寧に軟膏を塗り付ける。
「じゃあ取りあえず脱がしてよ」
「ま、まさか…」
「長!それは…!!」
「なによ。忍びに情けは無用でしょうが」
「見てる方が痛いんです」
落ち着かない動きで尻を押さえる部下を見て、侍も何されるか気付いたみたいだ。




