一時は、光秀様の鎌に脳天叩き割られる事を覚悟しておりました。
ちなみに「瀬戸内~」とは、まったく別物の話です。
ちなみに「瀬戸内~」とは、まったく別物の話です。
長曾我部の船が、伊達所有の港に着いたとの連絡を受けた政宗は、急ぎ馬を走らせた。
港の直前で一旦馬を止めると、常時携帯している柘植の櫛で乱れた髪を整え直す。
「…よし!」
船から長曾我部の一行が下りてくるのを確認すると、政宗は今度は悠然と馬を歩かせ
ながら、彼女達の元へと向かった。
船から政宗の姿を見止めた元親は、瞬時に眉根を寄せる。
港の直前で一旦馬を止めると、常時携帯している柘植の櫛で乱れた髪を整え直す。
「…よし!」
船から長曾我部の一行が下りてくるのを確認すると、政宗は今度は悠然と馬を歩かせ
ながら、彼女達の元へと向かった。
船から政宗の姿を見止めた元親は、瞬時に眉根を寄せる。
「…これはこれは、筆頭自らお出迎えかよ。余程伊達は暇人の集まりなんだな」
「テメェがあんまり遅いだけだ。待ちくたびれたぜ」
「……そいつは悪かったな。何せ、奥州付近の潮はひねくれててよ。まるで誰かさん
そのものってヤツだな」
「……海神(わだつみ)に愛されてる女とは思えねぇセリフだなぁ、おい?操舵のヘ
ボさをヒトのせいにすんなよ」
「テメェがあんまり遅いだけだ。待ちくたびれたぜ」
「……そいつは悪かったな。何せ、奥州付近の潮はひねくれててよ。まるで誰かさん
そのものってヤツだな」
「……海神(わだつみ)に愛されてる女とは思えねぇセリフだなぁ、おい?操舵のヘ
ボさをヒトのせいにすんなよ」
早くも火花が散り始めた東西姉貴のガンの飛ばし合いに、周囲は遠巻きに見守る事
しか出来ない。
しかし、牽制の言葉を投げ掛けている一方で、彼女達の頭の中では、互いの装いそ
の他に対する感想ばかりが渦巻いていた。
しか出来ない。
しかし、牽制の言葉を投げ掛けている一方で、彼女達の頭の中では、互いの装いそ
の他に対する感想ばかりが渦巻いていた。
(やっぱり、新しい着物と陣羽織誂えてやがったコイツ…うわ、生地もそうだけど
あの水玉の刺繍、かなり高級な絹糸使ってやがる。それも五色……)
(あのhairstyle、俺が何度tryしても出来なかったarrangementじゃねぇかよ……そ
れに、sandalsに巻かれた組み紐…アイツが前に巻いてた帯の糸だ。芸が細けぇ……)
あの水玉の刺繍、かなり高級な絹糸使ってやがる。それも五色……)
(あのhairstyle、俺が何度tryしても出来なかったarrangementじゃねぇかよ……そ
れに、sandalsに巻かれた組み紐…アイツが前に巻いてた帯の糸だ。芸が細けぇ……)
元親と政宗は、暫し微動だにせずに観察を続けていたが、やがて頭の中で「今日の
所も引き分けか…」と結論をつけると、弾かれたようにそっぽを向き合った。
「ま、まあ立ち話もなんだし、屋敷まで案内するぜ。海の荒くれどもには、陸は窮
屈かもしんねぇがな。暴れて部屋壊すんじゃねぇぞ?」
「……ざけんな。招かれた先でまで、粗野な真似するヤツなんざ、俺の部下には
ひとりもいやしねぇ!」
ついつい、政宗の挑発的な物言いに触発されてしまった元親は、いきり立つと歩
幅を広げる。
だが、感情とは違って身体は思うように働かなかったようで、均衡を崩した元親
は大きく前方につんのめった。
「あ…うわっ!」
「お嬢!」
「──元親!?」
思わぬ悲鳴を耳にした海賊達と政宗は、声を上げる。
受け身を取る暇もなく、このまま転倒する事を覚悟した元親は、目をつぶると身
体を硬くさせた。
だが、
「…?」
その時、不意に何処からか伸ばされた腕が、元親の腰に回された。
がくり、と僅かな衝撃が訪れた後で、自分を助けてくれた者がいた事に気付いた
元親は、顔を動かすと自分の身体に巻き付けられた腕の持ち主を見た。
照りつける日差しを避ける為か、編み笠を深く被った海賊姿の男に礼を言う。
「す、すまねえ。アリガトな…」
「……」
だが、男は無言で元親の身体を起こすと、編み笠を更に深く被りつつ、人の波に
紛れてしまった。
大丈夫か、と駆け寄ってきた政宗に頷きを返しながら、元親は男が去っていった
方向を、もう一度ちらりとだけ見る。
所も引き分けか…」と結論をつけると、弾かれたようにそっぽを向き合った。
「ま、まあ立ち話もなんだし、屋敷まで案内するぜ。海の荒くれどもには、陸は窮
屈かもしんねぇがな。暴れて部屋壊すんじゃねぇぞ?」
「……ざけんな。招かれた先でまで、粗野な真似するヤツなんざ、俺の部下には
ひとりもいやしねぇ!」
ついつい、政宗の挑発的な物言いに触発されてしまった元親は、いきり立つと歩
幅を広げる。
だが、感情とは違って身体は思うように働かなかったようで、均衡を崩した元親
は大きく前方につんのめった。
「あ…うわっ!」
「お嬢!」
「──元親!?」
思わぬ悲鳴を耳にした海賊達と政宗は、声を上げる。
受け身を取る暇もなく、このまま転倒する事を覚悟した元親は、目をつぶると身
体を硬くさせた。
だが、
「…?」
その時、不意に何処からか伸ばされた腕が、元親の腰に回された。
がくり、と僅かな衝撃が訪れた後で、自分を助けてくれた者がいた事に気付いた
元親は、顔を動かすと自分の身体に巻き付けられた腕の持ち主を見た。
照りつける日差しを避ける為か、編み笠を深く被った海賊姿の男に礼を言う。
「す、すまねえ。アリガトな…」
「……」
だが、男は無言で元親の身体を起こすと、編み笠を更に深く被りつつ、人の波に
紛れてしまった。
大丈夫か、と駆け寄ってきた政宗に頷きを返しながら、元親は男が去っていった
方向を、もう一度ちらりとだけ見る。
(笠で顔が判んなかったのもあるけど…ウチにあんなヤツいたっけ……?)
仄かな疑問を抱えたまま、元親は政宗に先導されて再び歩き始めた。




