無言で向かい合った。
重苦しい沈黙を破ろうにも、どうしていいのか分からない。
火を、焚かねばならない。風は冷たく、月が冴えている。
一夜を明かす以上、体を冷やさぬように温める必要がある。
先に動いたのは幸村だった。
囲炉裏に薪を放り込む。
「っ!」
痛みに顔をしかめる。
薪の棘が幸村の指に刺さっていた。棘を抜くと、血が膨れる。
「大丈夫か?」
「あー、大事にはいたらぬゆえ」
口に持っていこうとする手を取り、顔が寄せて政宗が指を口に含んだ。
じわり体の熱が上がっていく。
指を動かし、血を舐めとろうとする政宗の舌から逃れた。
「政宗殿……」
「あ、つい」
政宗が顔をそらす。
逃げられないよう、幸村は腕を取って顎を抑えた。
怯えている。けれど頬に手を添えても逃げる気配はない。
唇を寄せ、そっと重ねた。甘く、熱い。
唇を離すと、政宗と目があった。濡れた色をした、怯えたような媚びるような目。
幸村の中で何かが鎌首を持ち上げ、体内を駆け巡る。それを政宗にもうつしたくなった。
体が熱い。
政宗の手が動いた。
嫌われたか、と幸村は頭を下げようとして――政宗の頭がすぐ傍にあることに気がついた。
伏せられた頭。さらりと髪が落ち、白いうなじが現れた。
「どうか――どうか、後生だから」
凛とした女の言葉。聞いたことがない。
「ただ一度の願いでございます。どうか――どうか、お情けをくださりませ」
情け。
それは佐助と信玄が言っていた。女が男の種を頂戴するときに言う言葉だと。
まさか。何故。
「政宗殿?」
政宗は震えていた。
まるで肌を合わせることを本意としないように、顔を隠すように伏せたままがちがちと歯を鳴らしていた。
寄せられた手を取れば、凍えるように冷たくなっている。
「奥州を、統一する。明日、死ぬかもしれない。後悔したくない。こういうの、女から言うの、どうかと思う。でも――来月、俺はここにいられないかもしれない」
奥州の情勢は緊張に満ちている。そう、聞いた。
「だから」
「言うな」
顔を上げた政宗を夢中で抱きしめた。柔らかくしなる細い体。甘い匂いがする。
頭の奥が痺れ、物を考えることができなくなる。
「何も言われるな……!」
ああやはり攫っておけばよかった。閉じ込めて着飾らせて。
普通の女としての幸せを用意すればよかった。
政宗の髪が床に散らばる。哀しいくらい短い髪。まるで尼御前のような。
幸村は呆然と見開かれた政宗の双眸を見つめ返し、火種を落とすように口付けた。
重苦しい沈黙を破ろうにも、どうしていいのか分からない。
火を、焚かねばならない。風は冷たく、月が冴えている。
一夜を明かす以上、体を冷やさぬように温める必要がある。
先に動いたのは幸村だった。
囲炉裏に薪を放り込む。
「っ!」
痛みに顔をしかめる。
薪の棘が幸村の指に刺さっていた。棘を抜くと、血が膨れる。
「大丈夫か?」
「あー、大事にはいたらぬゆえ」
口に持っていこうとする手を取り、顔が寄せて政宗が指を口に含んだ。
じわり体の熱が上がっていく。
指を動かし、血を舐めとろうとする政宗の舌から逃れた。
「政宗殿……」
「あ、つい」
政宗が顔をそらす。
逃げられないよう、幸村は腕を取って顎を抑えた。
怯えている。けれど頬に手を添えても逃げる気配はない。
唇を寄せ、そっと重ねた。甘く、熱い。
唇を離すと、政宗と目があった。濡れた色をした、怯えたような媚びるような目。
幸村の中で何かが鎌首を持ち上げ、体内を駆け巡る。それを政宗にもうつしたくなった。
体が熱い。
政宗の手が動いた。
嫌われたか、と幸村は頭を下げようとして――政宗の頭がすぐ傍にあることに気がついた。
伏せられた頭。さらりと髪が落ち、白いうなじが現れた。
「どうか――どうか、後生だから」
凛とした女の言葉。聞いたことがない。
「ただ一度の願いでございます。どうか――どうか、お情けをくださりませ」
情け。
それは佐助と信玄が言っていた。女が男の種を頂戴するときに言う言葉だと。
まさか。何故。
「政宗殿?」
政宗は震えていた。
まるで肌を合わせることを本意としないように、顔を隠すように伏せたままがちがちと歯を鳴らしていた。
寄せられた手を取れば、凍えるように冷たくなっている。
「奥州を、統一する。明日、死ぬかもしれない。後悔したくない。こういうの、女から言うの、どうかと思う。でも――来月、俺はここにいられないかもしれない」
奥州の情勢は緊張に満ちている。そう、聞いた。
「だから」
「言うな」
顔を上げた政宗を夢中で抱きしめた。柔らかくしなる細い体。甘い匂いがする。
頭の奥が痺れ、物を考えることができなくなる。
「何も言われるな……!」
ああやはり攫っておけばよかった。閉じ込めて着飾らせて。
普通の女としての幸せを用意すればよかった。
政宗の髪が床に散らばる。哀しいくらい短い髪。まるで尼御前のような。
幸村は呆然と見開かれた政宗の双眸を見つめ返し、火種を落とすように口付けた。




