「Ha!説教は聞き飽きてる。幸村は小十郎の手に負える、その辺の女と同じだと思うなよ」
眼が、夕刻の赤光を映してぎらぎらと輝いていた。
小十郎はその言葉よりは、目を見て頷いた風だった。
だが、その顔がこちらに向けられたとき、その顔はどこか柔らかに笑んでいた。
「元気になったようだな」
幸村は力強く頷く。
「政宗殿には迷惑をかけどおしてござったが、この通り!いつでもこの幸村が力、政宗殿のために役立てましょうぞ!」
なつっこい笑みが不敵な、見慣れたそれに変わる。
ただ、どこか面はゆそうな笑みでもあった。
「いーい子だ、Baby?体力余ってるんだろ?今日は早めに湯を使いな。
オレも早めにアンタのとこに行く。……あんたがどんなDanceを見せてくれるか、期待してるぜ」
よく解らないまま頷くと、小十郎はよくよく解った顔をして控えているのが目に入った。
なぜだか悔しい。
政宗はそのまま背を向け、さっさとどこかに行ってしまう。
小十郎は気の毒そうな、どことなし嬉しそうな目で幸村を見ていた。
「……奥方さん」
「何でござろう」
ぽつりと呼ぶ声に答えて頷く。
「この間の決着……納得がいっていないのはよく解っております」
相づちは求めていない風だった。
「しかし、うちの若いもんは詳細がわかっちゃぁいない。奥方さんが倒れた、ならば政宗様が勝ったのだと、思いこんでいる」
「その通りでござる。体調など言い訳になるわけもなし。戦場であればこうして話すこともなかったでござろう。某、小十郎殿が用意された決戦の場を汚しただけの、未熟者にござった」
幸村には、小十郎の気持ちがどうにも解らずに思うままを答えた。
頭を下げると、拒むように小十郎が膝をつき頭を垂れる。
「そうですか。……お二人の考えはともあれ、若いもんは政宗様が勝った、と思うことで奥方さんへのあたりが柔くなった。
ケジメ付けさすのは簡単ですが、政宗様びいきは今更どうにかなることでも、どうにかして良いことでもねえ」
全く持って意味が分からない。
「これから口にするのは、独り言です」
そう言った小十郎の横顔は、きびしかった。
ひとたらしの悪意を混ぜ込めば凶悪な面相になるほど。
「独り言にござるか」
なんと、寂しい言葉か。
「奥方さんが伏せっていらしたころ、城内は揉めておりました。女の病も篤ければ嫡子が望めるか解らない、と。そうでなくとも契りを拒むという噂がある。
なれば一刻も早くに側室が必要、武田を刺激しないよう伊達の身内からとの声が強かった」
幸村は声を出さずに頷いた。
嫁したとはこういう事か。
我が身が我が身一つのことに留まらず、家を揺るがす騒動になると言うことか。
まるで、戦場のようだ。
身のうちが奮い立つ。血が滾る。受けて立って見せようぞ。
「政宗様は一言で拒まれました。側室は要らない、権力が欲しいならば娘に頼らず、己で勲功をあげよ、と」
独り言を続ける小十郎は、静かな目で幸村を見た。
それも短い間のこと、またもまっすぐ前を見やる。
視線の先には、伊達領が広がり、更にその先は海へと繋がる。
「自分の正室は戦場で名をあげ、互角に渡り合った兵。
女の性のみを利用する了見は、幸村と比べることもならず、ただただ、人として劣った性根の持ち主。これ以降、その話を禁じると。
……声を荒げられはしなかったが、怒っていなさった。
倒れた正室の身を案じるのはほんの一握りかと」
独り言に答えるわけにも行かず、ただ正面に回って首を振った。
何を言いたいのかよく解らなかったから、声に出さないほうが似つかわしい気もした。
眼が、夕刻の赤光を映してぎらぎらと輝いていた。
小十郎はその言葉よりは、目を見て頷いた風だった。
だが、その顔がこちらに向けられたとき、その顔はどこか柔らかに笑んでいた。
「元気になったようだな」
幸村は力強く頷く。
「政宗殿には迷惑をかけどおしてござったが、この通り!いつでもこの幸村が力、政宗殿のために役立てましょうぞ!」
なつっこい笑みが不敵な、見慣れたそれに変わる。
ただ、どこか面はゆそうな笑みでもあった。
「いーい子だ、Baby?体力余ってるんだろ?今日は早めに湯を使いな。
オレも早めにアンタのとこに行く。……あんたがどんなDanceを見せてくれるか、期待してるぜ」
よく解らないまま頷くと、小十郎はよくよく解った顔をして控えているのが目に入った。
なぜだか悔しい。
政宗はそのまま背を向け、さっさとどこかに行ってしまう。
小十郎は気の毒そうな、どことなし嬉しそうな目で幸村を見ていた。
「……奥方さん」
「何でござろう」
ぽつりと呼ぶ声に答えて頷く。
「この間の決着……納得がいっていないのはよく解っております」
相づちは求めていない風だった。
「しかし、うちの若いもんは詳細がわかっちゃぁいない。奥方さんが倒れた、ならば政宗様が勝ったのだと、思いこんでいる」
「その通りでござる。体調など言い訳になるわけもなし。戦場であればこうして話すこともなかったでござろう。某、小十郎殿が用意された決戦の場を汚しただけの、未熟者にござった」
幸村には、小十郎の気持ちがどうにも解らずに思うままを答えた。
頭を下げると、拒むように小十郎が膝をつき頭を垂れる。
「そうですか。……お二人の考えはともあれ、若いもんは政宗様が勝った、と思うことで奥方さんへのあたりが柔くなった。
ケジメ付けさすのは簡単ですが、政宗様びいきは今更どうにかなることでも、どうにかして良いことでもねえ」
全く持って意味が分からない。
「これから口にするのは、独り言です」
そう言った小十郎の横顔は、きびしかった。
ひとたらしの悪意を混ぜ込めば凶悪な面相になるほど。
「独り言にござるか」
なんと、寂しい言葉か。
「奥方さんが伏せっていらしたころ、城内は揉めておりました。女の病も篤ければ嫡子が望めるか解らない、と。そうでなくとも契りを拒むという噂がある。
なれば一刻も早くに側室が必要、武田を刺激しないよう伊達の身内からとの声が強かった」
幸村は声を出さずに頷いた。
嫁したとはこういう事か。
我が身が我が身一つのことに留まらず、家を揺るがす騒動になると言うことか。
まるで、戦場のようだ。
身のうちが奮い立つ。血が滾る。受けて立って見せようぞ。
「政宗様は一言で拒まれました。側室は要らない、権力が欲しいならば娘に頼らず、己で勲功をあげよ、と」
独り言を続ける小十郎は、静かな目で幸村を見た。
それも短い間のこと、またもまっすぐ前を見やる。
視線の先には、伊達領が広がり、更にその先は海へと繋がる。
「自分の正室は戦場で名をあげ、互角に渡り合った兵。
女の性のみを利用する了見は、幸村と比べることもならず、ただただ、人として劣った性根の持ち主。これ以降、その話を禁じると。
……声を荒げられはしなかったが、怒っていなさった。
倒れた正室の身を案じるのはほんの一握りかと」
独り言に答えるわけにも行かず、ただ正面に回って首を振った。
何を言いたいのかよく解らなかったから、声に出さないほうが似つかわしい気もした。




