政宗の指が、顎にかかる。なんだ、と思う間もなく唇をふさがれた。
「っ!」
それは一瞬、掠るようにぶつかり、そしてゆっくりと離れる。
「Hey、気をやっちまうのは早すぎる」
「、な、な、今ッ、」
「なかなかsweetだったぜ?」
顎にかかったままの指を、首を振って解く。
「な、なにが、なにがっ……なにを、なにっ」
何をするのか、何が起こるのか、誰も明瞭に説明しなかったこととは何なのか。
それが今から、自分の身に降りかかろうとしているのか。
それとももう起こったのか。
聞こうと思っても、本当に呂律が回らない。
抱き寄せられたままでいることを今更思い出し、幸村は体までを硬直させた。
「おい、――…幸村」
真っ白になった頭の中、視界だけは明瞭だった。
その視界の中、政宗が面白そうだった表情を居心地悪げに(失敗でもしたように)し、髪をがりがりとかいていた。
無理だったか、と唇が僅かに動く。
何故だかその目が寂しそうに見えた。
錯覚かもしれない。そうでなかったとしても、錯覚にしておこう。
政宗の顔に浮かぶ笑みは、見栄を張る笑み。
「っ!」
それは一瞬、掠るようにぶつかり、そしてゆっくりと離れる。
「Hey、気をやっちまうのは早すぎる」
「、な、な、今ッ、」
「なかなかsweetだったぜ?」
顎にかかったままの指を、首を振って解く。
「な、なにが、なにがっ……なにを、なにっ」
何をするのか、何が起こるのか、誰も明瞭に説明しなかったこととは何なのか。
それが今から、自分の身に降りかかろうとしているのか。
それとももう起こったのか。
聞こうと思っても、本当に呂律が回らない。
抱き寄せられたままでいることを今更思い出し、幸村は体までを硬直させた。
「おい、――…幸村」
真っ白になった頭の中、視界だけは明瞭だった。
その視界の中、政宗が面白そうだった表情を居心地悪げに(失敗でもしたように)し、髪をがりがりとかいていた。
無理だったか、と唇が僅かに動く。
何故だかその目が寂しそうに見えた。
錯覚かもしれない。そうでなかったとしても、錯覚にしておこう。
政宗の顔に浮かぶ笑みは、見栄を張る笑み。
以前小十郎が言っていた、気づかれるのが嫌な性質という言葉。
甦って記憶の鼓膜をたたく。
ああ、大人びた包容力がある人に惹かれるというのは、
あれは、敬愛のことばではないのか。親しみの言葉か。
――政宗殿にとってのそれは、小十郎殿のような方のことか。
そういう信頼の形なら、我がことのようにわかる。
できるなら、女中になってでも来てほしかった。
甦って記憶の鼓膜をたたく。
ああ、大人びた包容力がある人に惹かれるというのは、
あれは、敬愛のことばではないのか。親しみの言葉か。
――政宗殿にとってのそれは、小十郎殿のような方のことか。
そういう信頼の形なら、我がことのようにわかる。
できるなら、女中になってでも来てほしかった。
何の、見栄の何が悪いものか。
弱音を吐くより、弱さもろさをさらけ出す柔弱さより、どれほど立派なことか。
気づけばいくらか落ち着いた。
「い、いきなりされるとお、おどろっ…」
が、やはり噛んだ。
体を丸め、額を政宗の胸板に預ける。
何度も何度も深い呼吸を繰り返した。
大きな手のひらが、幸村の背をなでる。何度も、何度も。
気持ちが徐々に穏やかになる。
「夜、とはこういうことを指す言葉でござるか」
「ああ。あんたには、早かったかもな」
政宗の声も、普段のものを取り戻していた。
「取り乱し、見苦しかったでござろう」
謝罪をこめて言うと、もう一度抱き寄せられた。
ああ。あたたかい。
「謝るなよ、幸村」
言う声があきれていた。
「契りを交わすとは、触れることでござるか」
もう一度確認を取る。
「まあ、そんなもんだ。…破廉恥か?」
「それは、破廉恥でござろうに。……が、悪いことでもないと」
幼いころは頭をなでて、ほめてもらったのがうれしかった。
手をつなぐのがうれしかった。
弱音を吐くより、弱さもろさをさらけ出す柔弱さより、どれほど立派なことか。
気づけばいくらか落ち着いた。
「い、いきなりされるとお、おどろっ…」
が、やはり噛んだ。
体を丸め、額を政宗の胸板に預ける。
何度も何度も深い呼吸を繰り返した。
大きな手のひらが、幸村の背をなでる。何度も、何度も。
気持ちが徐々に穏やかになる。
「夜、とはこういうことを指す言葉でござるか」
「ああ。あんたには、早かったかもな」
政宗の声も、普段のものを取り戻していた。
「取り乱し、見苦しかったでござろう」
謝罪をこめて言うと、もう一度抱き寄せられた。
ああ。あたたかい。
「謝るなよ、幸村」
言う声があきれていた。
「契りを交わすとは、触れることでござるか」
もう一度確認を取る。
「まあ、そんなもんだ。…破廉恥か?」
「それは、破廉恥でござろうに。……が、悪いことでもないと」
幼いころは頭をなでて、ほめてもらったのがうれしかった。
手をつなぐのがうれしかった。
今はこうして、背中に腕を回して、抱き寄せられて、暖かいのがとてもとても嬉しい。
「思うのでござるよ」
幼かったころの喜びとは、種類が違う気もするのだけれど。
「女は、強ぇな」
幼かったころの喜びとは、種類が違う気もするのだけれど。
「女は、強ぇな」




