勝手にコンサルティング福井
座・タイムリーふくい(20080712)
最終更新:
c291
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定点観測
観測対象
- 座・タイムリーふくい(2008年7月12日放送分)
テーマ
- IN高松!これが街づくりの成功例
スタジオを飛び出し香川県高松市の丸亀町商店街を訪ねる。ここは再開発による街づくりの成功事例として全国から注目されている商店街。まず気がつくのはゆったりした空間。聞けば各商店が所有していた土地をすべて共同の運営会社が借り上げテナントと定期借地契約を結ぶため街全体のトータルなレイアウトが可能になった。さらに私有地を歩道に差し出し店をセットバックして建てているため歩いて楽しめる空間ができたとのこと。成功事例から福井の駅前に何が足りないのか、県都の顔をどうすべきかヒントを探る。
出演
司会
- 松枝隆一(福井テレビアナウンサー)
- 名越涼子(福井テレビアナウンサー)
ゲスト
- 高松丸亀町商店街 理事長 古川康造
- 福井県立大学 教授 中沢孝夫
観測結果
疑いも無い成功例として番組まるごと丸亀町商店街が紹介されていたが、画面に映し出されていた店舗は「LOUIS VUITTON」「COACH」「GAP」。さらに成功のポイントとして紹介されていたのが「土地の一括借り上げ」「テナントの一括管理」「ルールの徹底」。
この、郊外開発デベロッパーと同階層で真っ向勝負して負けてないぜ!的な話って、裏を返せば過剰サービスの殴り合いの末路って印象が拭えない。
買い物客へのインタビューからもサービスに満足している様子こそうかがえたが、「人情」や「愛着」みたいなものは伝わって来なかった。
この、郊外開発デベロッパーと同階層で真っ向勝負して負けてないぜ!的な話って、裏を返せば過剰サービスの殴り合いの末路って印象が拭えない。
買い物客へのインタビューからもサービスに満足している様子こそうかがえたが、「人情」や「愛着」みたいなものは伝わって来なかった。
グローバル化と規制緩和と自己責任が大流行中の現代日本では、このやり方が最も合理的かつ優秀で賞賛されるべき「がんばり」なのかもしれないが、「ダメなものも込みで集合体」だと思っているダメ人間のオレとしては耐え難いほど殺伐とした戦国未来図を見せつけられたような後味だ。
ついでに古川氏の話をニコニコ笑顔で後押しし解説する「ダメなヤツは去れ」論者の中沢教授からも、いわゆるひとつの小泉・竹中的恐怖を感じた。
ついでに古川氏の話をニコニコ笑顔で後押しし解説する「ダメなヤツは去れ」論者の中沢教授からも、いわゆるひとつの小泉・竹中的恐怖を感じた。
別に古川氏や丸亀町商店街の成果に難癖をつけるつもりは無いのだが、グローバルブランドを中心に配置し、敗者の烙印を押された店主が否応無く排除され、全体が一括管理された店舗集合体のことを福井テレビ目線で「目指すべき街づくり」と定義するのであれば、少なくとも公共の電波で「街づくり」なんてやる意味無いんじゃないかと思う。
これってもはや、やってるのが商店街の人ってだけで、やってる内容はデベロッパーと同じって話なのでは?
丸亀商店街の手法を見た感想
まず蟹も書いていることだけど、成功と繁栄を「LOUIS VUITTON」「COACH」「GAP」の出店によって象徴する表現手法はどうなの?とは思った。というか、「藻谷さんから聞いた話、忘れちゃったの?」って感じ。世界ブランドの進出が悪いわけじゃないけど、俺としては昔からある果物屋とか名物食い物屋が、街づくりによってどう進化したのかを見ながら、例えば「フルーツのウメダ」や「今川焼」が、どういう風に変わっていくのかといった可能性を想像させてもらえるものだと思っていたので、地元の店が全然紹介されない構成には、正直違和感を覚えた。
※「フルーツのウメダ」や「今川焼」を引き合いに出したのは、超有名店ってだけでそれ以上の意図はないです。念のため。
「時代の要求に合わせて変更することを前提に計画を立てる」とか「どデカイ再開発にこだわらず、出来るところから始め、小さい成功を積み重ねる」などの納得できる内容もあったけど、今回の取材の核である商店街の運営については正直微妙な感じだった。
成功の処方箋として語られた内容を俺なりに整理すると…
- 一商店主では時代が要求するサービス提供は難しいのだから、一国一城の主みたいな立場にすがるのはやめて、サラリーマンやフランチャイズ店の店長みたいな立場になること!
- サラリーマンやフランチャイズ店の店長化した商店主を、デキル人がキッチリ管理して、勝手気ままなことはさせないこと!
- 商店主にはキッチリとノルマを課して、達成できなければ最終的には追い出すことも含めて、厳しく対応すること!
と言う感じ。まあエルパを平屋建てにして屋根をはずして駅前に配置するイメージかなあ。経営手法の一つとしての有効性はもちろん認めるけれど、基本的にそんな奴隷的サラリーマン生活から逃れられるのが個人商店主の魅力なんだし、ましてや外野であり且つ勝ち組サラリーマン代表である福井テレビが主導して、この手法を個人商店主の集合体に導入するのは至難の業だと思う。
西口再開発ビルとの関係とか
番組終盤には高松駅前の再開発ビルである「サンポート高松」がお役所主導で再開発ビルを建ててはみたものの、にぎわい創出には失敗した例みたいに紹介されていた。商業施設も併設した高層ビルってことで「福井の西口再開発ビル計画」とリンクさせたい番組の意図は明らか。
でも番組内ではオフィスは埋まっているって言ってたし、ということは再開発ビルの収支自体に大問題があるわけじゃないんだろう。例えば東京駅前丸の内オフィス街や新宿西口ビル群にしたって、巨大都市東京の心臓部って割には、朝夕以外はそんなに人でごった返しているわけじゃない。にぎわいはあるに越したこと無いけれど、別に失敗例として取り上げるほどの問題施設なのかは疑問の余地がある。
でもでも、それよりもっと大きな問題は、福井でいう「西口再開発ビル」的存在である「サンポート高松」が存在していても、丸亀商店街は自力で街づくりを成功させているというところ。これを福井の現状に当てはめると、「駅前の活性化と西口再開発ビルの問題は直接リンクしない」ということになる訳で、「西口再開発ビル」がにぎわい創出に失敗しても、街づくりの観点からは大勢に影響無しってことになるのでは?福井テレビは「高層ビルを中心とした福井駅西口再開発にNO!」だと思っていたんだけど、それに反して今回の番組は結局、役所が何をやろうが、重要なのは商店街の自助努力。駅前商店街が自覚をもって頑張れば何とかなるって感じになってる気がする。
そしてそして、もっと根本的な話としては、そもそもメディアとして監視する対象は、一義的には役所をはじめとした公権力のはずなのに、いくら駅前にあるとは言え商店街の運営や商店主の雇用形態や身分という極めて私的重要事項について、そこまで首をつっこむのはどうなんだろう・・・。と言うわけで、成功の処方箋のひとつを紹介するという番組の趣旨自体は良いんだけど、切り口の悪さが目立った内容だった。
(以上越080714)
(以上越080714)