atwiki-logo
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • ページ操作履歴
  • ページ一覧
    • ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このウィキの更新情報RSS
    • このウィキ新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡(不具合、障害など)
ページ検索 メニュー
チェンジ・ロワイアル@ ウィキ
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
チェンジ・ロワイアル@ ウィキ
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
チェンジ・ロワイアル@ ウィキ
ページ検索 メニュー
  • 新規作成
  • 編集する
  • 登録/ログイン
  • 管理メニュー
管理メニュー
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • ページ操作履歴
  • ページ一覧
    • このウィキの全ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ一覧(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このwikiの更新情報RSS
    • このwikiの新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡する(不具合、障害など)
  • atwiki
  • チェンジ・ロワイアル@ ウィキ
  • 嘘つきな世界 -Wish in the dark-

チェンジ・ロワイアル@ ウィキ

嘘つきな世界 -Wish in the dark-

最終更新:2022年02月11日 23:28

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
朝起きて階段を降りると、両親、それから兄と姉が笑顔で挨拶してくれた。
この人達を私は知らない。
私の両親とはまるっきり別人の男女、私の家族構成には存在しない二人。
何よりも愛しいあの娘、妹の姿は影も形も見当たらない。
当たり前だ。だってこの人達は、環いろはの家族ではないのだから。

我が家を出発して学校へ行く途中、友だちと出会った。
この人達を私は知らない。
もうずっと前からの親友のように接して来る彼女達は、私の記憶に誰一人として存在しない。
みかづき荘で共に過ごし、共に戦った彼女達の姿は影も形も見当たらない。
当たり前だ。だってこの人達は、環いろはの友だちではないのだから。

こちらを尊敬する上司として慕う人達がいた。
ショートカットの少女は元気いっぱいに挨拶をして、それをツインテールの少女が呆れながらも同じく頭を下げる。
この人達を私は知らない。

敵として、立ち塞がった人達がいた。
ある女の人は我が子を生き返らせようという執念に憑りつかれ、4人の騎士は主の為に己の手を汚し続け、狂気を孕んだ科学者は12体の娘を引き連れ己の欲望を満たそうとする。
私が戦って来た相手はいない。
魔女も、ウワサも、マギウスの翼の魔法少女達すら何処にもいなかった。

これらは全部、私のものじゃない記憶。
本当だったら一生知る機会の無かった、別人の辿って来た軌跡。
それが私の中へと入り込んでくる。
まるで私の記憶を『彼女』の記憶で上書きするかの如き勢いで、私の頭は別人の記憶でいっぱいになっていく。

『なのは』
『なのはちゃん』
『なのはさん』
『高町教導管』
『高町さん』

やめて。
私は環いろは。高町なのはじゃない。
そう懇願しても、私じゃない『彼女』を呼ぶ声は鳴りやまない。
洪水のように襲い来る記憶に、私の意識が飲み込まれていく。
必死に藻掻いても記憶の濁流は止められなかった。

私の大切な人達が、別の人間に書き換えられていく。

やちよさんが、金髪の女の人になった。
鶴乃ちゃんが、関西弁を使う女の人になった。
フェリシアちゃんが、赤毛の小さな女の子になった。
さなちゃんが、どこか見覚えのある男の人になった。

そして、ういが、たった一人の妹が――


『なのはママ!』


○○○


「――ッ!!!」

目を見開き、いろはの意識は覚醒した。

心臓が気持ち悪いくらいに鼓動を早めている。
管理局の制服の下、素肌にはベットリと汗が流れていた。
率直に言って最悪の夢見だ。
ただでさえこの身体になってから、自分が自分じゃ無くなるような得体の知れなさを味わっていたというのに、夢のせいで恐怖は更に加速した。

いろはは夢に余り良い思い入れは無い。
神浜市を訪れる前、夢の中で繰り返し同じ少女が現れるのを見た。
少女の正体が、魔法少女となる代わりに病気の治療を願った妹だと思い出した時の瞬間が思い起こされる。
一時とはいえういを忘れてしまった事への恐怖と後悔。
もう二度とあんな思いはしたくないというのに、まるでいろはを嘲笑うかのように同じような、下手をすればあの時以上の恐怖が襲い掛かった。

あれはただの夢。
なのはの肉体に精神が入って、不安になったから見てしまっただけの悪い夢に過ぎない。
現に自分はういの事も、やちよ達の事だってちゃんと覚えている。

思い出したくも無い悪夢を振り払うように、意識を失うまでの経緯を思い返す。
そういえば自分は刀を持った少年との戦いで、気絶してしまったのだった。
あれからどうなったのだろう。リトは、黎斗は無事だろうか。
襲って来た少年はどうなったのか。

確かめようと視線を動かそうとした時、頬に熱い何かが降り掛かった。

「えっ」

瞬間、いろはの目に飛び込んだのは、夢であって欲しい光景。
直前まで夢から覚めて安堵していたというのに、今度は現実ではないと願ってしまう。


いろはの瞳には、刀で斬られたリトの姿がハッキリと写し出されていた。


○


数十分前、風都タワーを後にしたリト達は、少し離れた場所にある民家に身を潜めていた。

ギニューとの派手な戦闘があった以上、騒ぎを聞きつけた参加者がやって来るかもしれない。
殺し合いに乗っていない者なら何も問題は無いが、反対に危険な者であったら少々マズい事となる。
いろはは重傷を負い気絶中、リトもまた軽くない傷を抱え、まともに戦えるのは黎斗のみ。
元々ゲンムとしてそれなりに戦闘経験を積んでいる黎斗と言えど、未だ完璧に慣れてはいないベルデで、負傷した少年少女にも気を配りながら戦うのは難しい。
いろは達の事は単なる駒としか見ていない彼だが、情報交換もしない内に見殺しにしてはわざわざ生かしておいた意味が無い。
故にもう暫くは殺し合いには反対の善人の仮面を被り続ける気でいた。

「環さん……」

リビングに置かれたベンチソファーの上に寝かせたいろはを、心配気に見つめるリト。
息はあるが未だ意識は無く、衣服の所々に滲んだ血が酷く痛々しい。
最初に自分を庇った時に負った傷、あれのせいで苦戦する羽目になった。
悔やんでも悔やみきれない。

(クソッ…!何してんだよ俺……)

過ぎた事で己を責めても何も解決しない。
そう分かっていても、自分への苛立ちは拭い切れなかった。

現在、黎斗は救急箱か何かを探して来ると言って席を立っている。
その間、ただ待っているだけなのがもどかしい。
自分も探すのを手伝うと申し出たが、一人で問題無いから休んでいるよう言われた。
実際問題、いろはと同じく戦闘での傷が深いリトが動き回った所で余り役に立つとは言えないだろう。

(けど、もしもの時はまた魔法を使って…)

フェレットに変身するだけでなく、先の戦闘では拘束系魔法も使用できた。
更にはいろはと協力して放った砲撃、コネクトでギニューに深手を負わせたのだ。
完全に使いこなせている訳では無いが、いざという時にはまたユーノの魔法を使って戦う必要がある。

(あれ?そういや確か……)

ユーノの魔法、それで一つ思い出した。
変身魔法や拘束系の魔法、まだ使えていないが防御系の魔法もユーノは使用できるらしい。
他にも一つ、回復魔法も得意とプロフィールに記載されていた。
傷を治せる魔法、今まさに必要な力だ。

「よし…」

早速いろはへと手を翳し、試してみる。
フェレットへの変身もチェーンバインドも、効果は違うが発動する瞬間の感覚は似ている。
変身魔法は自分の体が小動物へと変わる様をイメージし、チェーンバインドは鎖鎌を見て脳裏にピンと来た。
故に今回は傷が徐々に塞がる光景を思い浮かべながら、集中する。
ユーノの魔法を使うのはこれが三度目だ。
体が覚えているとでも言うのか、何となくコツは掴めている気がする。

(集中、集中…)

自分を庇ったせいで斬られ、命懸けで戦ってくれた少女。
今はリトより年上の体になっているが、本来は年下である中学生の女の子。
そんないろはの傷を少しでも癒してあげたい。
純粋な想いに応えるかのように、リトの掌から淡い光が放たれた。

「やった…!」

光に当てられたいろはの体にも変化が起こる。
痛々しい傷は少しずつだが塞がっているのが分かった。
無事発動出来た事に安堵しつつ、しかし集中を切らしてはいけないと魔法の行使を続けた。

「すまない、探すのに少々手間取っ――結城君?」
「あっ、黎斗さん」

救急箱を片手にリビングへ戻って来たのは黎斗。
リトの手から光が発せられている光景に、目を丸くした。

「それは…君の体の少年が使う魔法、か?」
「あ、はい。幾つか使えるようになって……っ」

黎斗と言葉を交わしながらも、いろはの治療は続ける。
しかし急に呼吸が荒くなり、自分の体が重くなったような感覚が襲い掛かった。
当たり前だ。今のリトは重傷を負い、魔力も大分消費している。
その状態で魔法を使えば、相応の負担が体に圧し掛かる。
ましてユーノの身体はまだ9歳の少年のもの。
スクライア一族として地球に来る前から発掘作業に携わっていたのもあり、同年代の子どもより体力がある彼とて限界がある。

それでも再び回復魔法を使おうとするが、様子を見兼ねた黎斗により制止される。

「無理はしない方が良い。君だって傷は浅くないんだ」
「でも……」
「環さんを治したい気持ちは分かるが、それで倒れてしまうのを彼女は望まないだろう?
 幸い傷の治療に使えそうなものはあった。君自身の傷も含めて、後は私に任せてくれ」

ぐうの音も出ない程の正論を返され、渋々リトは引き下がる。
ただせめて、包帯を巻いたり等の処置はいろはを優先してくれとだけ頼んだ。

管理局の制服を脱がし、斬られた箇所への処置を行う。
元より仮面ライダークロニクルを始めとしたゲーム開発を最優先するような男だ、下着姿の女性に動揺する事も無く淡々と包帯を巻く。
医療に携わる人間ならばもっと手際よく手当てが可能だったろうが、自分ではこれが精一杯だ。
情報交換の内容次第ではリト諸共ここで始末する事になるかもしれない。
そう考えると真面目に手当てするのは何とも無駄な労力な気がしないでもない。
しかし直ぐ近くにリトがいる手前、手を抜くような素振りは見せないようにしている。
当のリトは治療行為とはいえ衣服を脱がされたいろはを直視するのは憚れるのか、終わるまであらぬ方向を向いていた。

(フッ、私がこんな事をしているなど、CRの連中が知ったら何と言うやら)

最高のモルモットである研修医に、恋人を失った甘党の外科医。
ついでに元CRの闇医者と、そいつに付いて回っている小娘。
黎斗が死んだと思って安心し切っているのかもしれないが、だとすれば甘い。
優勝し帰還した際には憎きパラドに借りを返し、永夢達にも真の仮面ライダークロニクルを味合わせてやろう。
リトには見えない位置で口の端を吊り上げた。

が、不意に真顔へと戻る。

CRのメンバーには『彼女』もいる。
実の母が宿主だったバグスター、この手で生み出した命。
自分の死後どうなったかは不明だが、永夢達といるなら当然『彼女』も――

(……フン)

一瞬浮かんだ、自分らしくない考えを振り払う。
神の才能を持つゲームマスターが、こんな下らん事に気を回すなど有り得ない。
気を取り直しいろはの手当てを終えると、手早く衣服を着せた。

「よし、取り敢えず環さんは大丈夫だろう。次は結城君の手当てをしなくてはな」
「ありがとうございます、黎斗さん」

礼を言う少年へ気にしなくて良いと返し、再度救急箱から包帯と消毒液を取り出す。

CRのドクターたちの事を思い浮かべたからか、黎斗の脳裏には会場のとある施設が浮かんできた。
聖都大学附属病院。黎斗にとっても馴染み深い施設。
定時放送の説明通りなら、地図に載っている以上既に誰かが訪れた後という事になる。
それが何者にせよ、いずれは自分もあの場所を調査しておきたい所だ。

そのタイミングで、キーキーと鳴きながらナニカが黎斗の元へと飛んできた。
突然現れたのは蝙蝠だ。
青い体をした機械仕掛けの蝙蝠が黎斗の周囲を飛び回っている。

呆気に取られるリトを尻目に、黎斗は一転して険しい顔付きとなった。
念の為、参加者が近づいてきたら知らせるようバットショットを放っておいて正解だった。
懐からカードデッキを取り出すと、リトへ警戒を促す。

「結城君、どうやら何者かが近くに――っ!?」

最後まで言い切らず、弾かれたように飛び退く。
ガラス窓を突き破って、侵入者が刀を振るったのは直後の事だ。
ほんの1秒前まで黎斗が立っていた場所を刃が通過し、空気を切り裂く。
速さと言い力強さと言い、変身もしていない天津の肉体で耐えられるものではない。
肝を冷やしつつ襲撃者を睨みつける。

「チィッ!」

奇襲が失敗に終わり舌を打つのは、額の痣と耳飾りが特徴の少年。
リトにも黎斗にも見覚えのある者だった。
風都タワーにて一戦交えた危険人物。
ボディーチェンジにより竈門炭治郎の肉体を得た、ギニューである。

いろは達を仕留めるか、それとも宇宙船へ向かうか。
ギニューが選んだのは前者であった。
こちらへダメージを与えた事への雪辱を晴らす以外にも、理由はある。
敵は3人であるが、その内二人はどちらも傷は深い。数ではギニューが不利であっても、賢者の石により回復が済んだ分戦力としてはこちらが有利。
緑の鎧を纏った男の力は未知数ではあるものの、仕留めるならば仲間二人が負傷している今がチャンスと見た。
ギニュー自身が手を下さずとも、他の殺し合いに積極的な参加者が殺す可能性もある。
だが反対に殺し合いに乗っていない連中、放送前に戦った炎を操る少女と徒党を組まれる危険性も捨て置けない。
故に、殺せる内に一人でも殺す方を取ったのだ。

宇宙船に置いてあるかもしれない装備や、回復ポッド等設備の確認も重要だとは理解している。
モタモタしていたら、葛飾署の時と同じく使える道具を持ち去れるかもしれない。
しかし、装備を集めるのはわざわざ宇宙船まで赴かずとも、参加者を殺して奪う手だってある。

加えて、ギニューはこれまでただの一人も殺せていない。
別に自分一人だけで参加者全員を殺せると思っているのではないし、これまでもケロロの体であったりとか、心身のコンディションの問題があった。
が、地球人の身体になっているとはいえ流石に一人も手に掛けていないというのは、プライド的にも納得のいかない所はある。

以上、諸々の理由によりいろは達の殺害を優先。
魔力の砲撃でボロキレ同然となった羽織と隊服を脱ぎ捨てると、代わりに支給品の赤いコートを羽織り、匂いを頼りに追跡して来たのだった。

そんな相手の心情など露知らず、これから情報交換を行おうとしていた黎斗は不快感を露わにした表情を作る。
良く見れば相手は風都タワーで付けられた傷がほとんど消え失せているではないか。
支給品を使ったのかもしれないが、いずれにせよ少々面倒な相手に思えた。
だからと言って負ける気は微塵も無いが。

(まぁいい。ベルデの力を試すには丁度良いだろう)

手に持ったままのデッキを、地面に落ちたガラス片に翳す。
鏡面にデッキを翳すのは、神崎士郎の開発したライダーシステムに必要不可欠な動作である。
一瞬の内に、黎斗の腰へバックルが出現した。
普段手にするガシャットとも、天津が使うプログライズキーとも違う感触に少々違和感を覚えながらデッキを装填した。

「変身!」

数秒と経たず黎斗の姿が変わった。
カメレオンに似た頭部、緑色の装甲という異質な騎士のような外見。
ミラーワールドにおけるライダーバトルの参加者。
13人の仮面ライダーが一人、ベルデである。

「く、黎斗さん…」
「結城君は環さんの傍にいてくれ。怪我人を戦いに引っ張り出す気は無いからね」

仲間の身を案じ己一人で戦いを引き受ける。
そんな善人の仮面で背中越しに声を掛けつつ、敵を正面から見据える。

「フン…。そこで寝ている女に比べたら、地味な変身だな」

姿が変わった事への驚きは無く、されど油断せずに刀を構える。
風都タワーでは無視できないダメージを負っていた為、撤退を選択したが今度は別。
鎧ごと叩っ斬るまで。

「きええええいっ!!」

気合一閃。大きく踏み込んで刀を振り下ろす。
元の肉体では武器に頼らない戦法を好んだギニューだが、今は別。
炭治郎の身体は素手や拳銃よりも、刀を振るった方がしっくりくる。
一番良い結末としては、この一刀のみで鎧をかち割り中の体を両断すること。

そう簡単に終わらない事くらい、分かり切っているが。

金属音が響き、日輪刀はベルデへの到達を阻まれた。
刃を押し留めているのは、ベルデがデイパックより取り出した武器。
ただ見た目が余りにもおかしい。
クリスマス用の装飾をあしらった赤いキャンドルという、戦闘に用いるには不釣り合いな代物だ。
にも関わらず現実に刃を防いでいるのは、まっこと奇妙な光景である。

「ふざけているのか貴様はっ!」
「武器の外見の事なら、全く同感だ」

言葉の応酬は、直ぐに剣の応酬へと変化する。
日輪刀と着火剛焦、どちらの得物も狙うは敵の急所。
首を斬り落とすべく幾度も剣が振るわれ、されど両者共に到達は叶わず武器同士がぶつかり合う。

リーチで言えば着火剛焦に分がある。
ギニューが後退し躱そうとも、ベルデはほんの少し前進して腕を伸ばせば簡単に届く。
ではそれだけでベルデが有利かと聞かれたら、否である。

「そこだっ!」
「チッ…!」

突き出した着火剛焦を身を捩って避け、反対にギニューが斬り掛かる。
伸ばし切った腕を戻すより、相手の刀が鎧を走る方が速い。
咄嗟に左腕を翳して腹部への攻撃を防ぐ。
その結果として腕に痺れと痛みが襲い来るも、戦闘続行に支障は一切無し。
着火剛焦を振り下ろせば、頭部への致命的なダメージは日輪刀で防御された。

「ヌゥンッ!!」

日輪刀越しに上部から押しかかるベルデの力。
腹に目一杯力を入れ押し返してやれば、ベルデはよろけ隙を晒す。
見逃す愚行は犯さず、胸部装甲目掛けて日輪刀を振り上げた。
今度は阻む物は何一つとしてなく、吸い込まれるように命中した。
血は流れず、代わりに火花が散る。
思わず後退するベルデへ振るった一撃は、どうにか動かした着火剛焦に防がれる。

拮抗する刃と刃。
先に力負けしたのはギニューの方だ。
押し返され体勢が崩れた瞬間に、着火剛焦が首を狙って迫る。
ここでギニューは防御では無く回避を選択、不安定な体勢ながらも跳躍し、着火剛焦は靴底の数ミリ下を通過した。
跳び上がったままギニューは、ベルデの胸部へ脚を突き出す。
硬い靴底が命中し、生身の人間のものとは思えぬ威力にベルデは外へと蹴り飛ばされた。

地面を転がるも素早く立ち上がる。
今すぐ動けなくなるほどのダメージは皆無。
それでも仮面の下の顔は自然と険しさを増した。

仮面ライダーとは各々スペックや固有能力に差は有れど、共通して人間が出せる限界以上の能力を変身者に齎す。
腕力、瞬発力、反射神経等全てが超人と言っても差し支えないくらいに強化され、生半可な攻撃では掠り傷すら与えられない耐久力を得る。
黎斗の変身したベルデもその例に漏れず、ただの人間では到達できない能力を発揮可能だ。
ミラーモンスターと、同じくデッキ所有者が変身するライダーと渡り合い、殺せるだけの力が無くてはライダーバトルは成り立たない。

だが黎斗が相手をしている男、ギニューの肉体である少年もまた只者ではない。
人間以上の生命力と身体能力を持つ化け物、鬼を殺す為に結成された組織の剣士である。
ただの人間には手に負えない化け物を殺す為には、当然ただの人間以上の力を得る為に鍛えねばならない。
鱗滝左近次の与えた課題の達成、藤襲山での最終試練突破、蝶屋敷での機能回復訓練、隊士の基礎能力強化を目的とした柱稽古。
以上をこなし、数々の任務での実戦にて経験を積み、上弦の鬼との死闘をも制した。
それら全てが糧となった竈門炭治郎の肉体は、仮面ライダー相手でも渡り合えるだけの力を発揮している。

といった詳しい経歴など知らぬ黎斗にとっては、ただの厄介な敵以上の感情は抱かない。
仮に知ったとしても、新しいゲーム開発のアイデアに使える程度の関心であろうが。

追撃するべくギニューも外へと出る。
だがこのまま敵の好きにさせる気はベルデに無い。
支給品の説明書に記載されていた能力を試させてもらおう。
デッキから引き抜いた一枚のカードを、流れるように太腿に装着された召喚機へベントする。

『HOLD VENT』

カードを読み込んだ際の電子音声が流れるや否や、ベルデの手には新たな武器が握られていた。
シルバーのリングとワイヤーで結ばれた、巨大なヨーヨー。
カメレオン型契約モンスター、バイオグリーザの目を模した専用武器、バイオワンダーである。

ギニューに近付かせまいとバイオワンダーを放つ。
玩具のヨーヨーとは重量も速度も桁違い、直撃すれば人体など豆腐の様に砕け散る。
顔面を叩き潰さんと迫るヨーヨーへ、日輪刀を叩きつける事で防御。
傷は無くとも衝撃までは殺せない、両手にビリビリと痺れが走る。

一息つく間もなく再度バイオワンダーが放たれた。
ヨーヨーの形状をしている通り、相手へ放ったならば一旦手元に戻すという動作が必要となる。
それが余りにも速い。
防いだと思ったらまたすぐ目の前にバイオワンダーが迫っているのだ。
手元に戻す瞬間は間違いなく恰好の隙となるだろうに、そこを狙うより先に次の攻撃が放たれる。

「おのれ…!」

攻め入る隙を与えない猛攻に、ギニューの顔が忌々し気に歪む。
このままどちらかの体力が切れるまで、変わり映えのしない攻防を続ける。そんな状況に持ち込む気は無い。
そう思っても現実には防戦一方から抜け出せずにいる。

バイオワンダーを防いだ回数が20に到達するかといった時、唐突に不可思議な現象がギニューへ起きた。
現在の状況にどこか既視感を覚えている自分がいるのだ。
ギニューは目の前にいる鎧の男と戦ったのはこれが初めて。
フリーザ一味の戦士として数多の惑星を支配下に置いて来たが、このような者と出会った覚えは無い。
ひょっとしたら似たような姿の種族と遭遇した事はあるかもしれないが、強く記憶に焼き付く程のものではないはず。
だというのにギニューはこの鎧男、いや、この戦闘と似たような状況を経験したかのような気がしてならないのだ。

縦横無尽に飛来する敵の武器。
時にはワイヤーをしならせ、軌道を読み辛くしている。
炭治郎本人ならばこう思ったかもしれない。
遊郭で帯を操る上弦と戦った時と、少し似ている気がすると。

(何だ、これは)

前触れも無く奇妙な感覚に陥り、困惑を隠せない。
だが不思議と、この感覚は悪い物ではなく、むしろ戦闘を有利に動かせるような気がした。
これは確か、風都タワーでいろはと戦った時の現象にどこか似ている。
苛烈に攻め立てる中で急速に力が上がり、刀を振るう動作のキレが増した。
ならば、この感覚に逆らわず、身を任せてみる。

丁度25撃目の攻撃を防ぐと同時に前方へと転がる。
頭上をバイオワンダーが掻っ切り、髪の毛が数本落ちた。
正面を見据えるより早く駆けだすと、顔の真横の空気が切り裂かれ、頬に一筋の赤い線が引かれる。
そして見た。ベルデがバイオワンダーを手元に戻す瞬間を。
僅かな動作の間に生まれた、隙が出来た事を知らせる「糸」を。

――水の呼吸 壱ノ型 水面斬り

勢いを付け水平に刀を振るう、いろはに重傷を負わせた技。
此度は体へ刃を届かせる事は叶わず、バイオワンダーを持つのとは反対の手に持つ着火剛焦に防がれる。
が、その一撃はこれまで振るって来たものよりもずっと重い。
単に刀を振るうのではなく、鬼の頸を斬り落とす技へと昇華させた一撃だ。
着火剛焦越しに伝わる衝撃に、ベルデの動きが硬直する。

バイオワンダーによる連続攻撃が崩れたこの機会を逃す手は無い。
知らない筈なのに知っている動き、知っている名前。
ギニュー本人のではなく、肉体の記憶とも言うべきそれに従い日輪刀を振るった。

――水の呼吸 壱ノ型 水面斬り

先程と同じ型を、今度は跳躍し放つ。
上空からの攻撃に、ベルデは地面を転がって躱す。
防御したとしても腕への痺れで隙を晒すのを恐れての事だ。
攻撃が空振りし、地面へ降り立ったギニューへバイオワンダーを放った。

――水の呼吸 参ノ型 流流舞い

対するギニューもまた防御では無く回避を選択。
但しその足運びは、攻撃を紙一重で躱しながらもベルデへ接近し、刀を振るう。
が、刀が当たる寸前で攻撃を中断し頭を下げる。
急ぎ戻したバイオワンダーが頭部スレスレの所を通過。
危うく頭が果実を割ったかの如き末路を迎える所だった。

――水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦

ギニューはただ回避のみを行ったのではない。
頭部を下げた瞬間に、体を可能な限り捩じって次の型へと繋げた。
水中でこそ本領を発揮するこの技は、地上戦においても確かな威力を発揮する。
勢いを伴って繰り出された斬撃が、ベルデの上半身と下半身を真っ二つにせんと奔る。

「クッ…!!」

これをベルデは両手を腹部へ翳し防御の姿勢を取った。
右手にはバイオワンダー、左手には着火剛焦。
共に並以上の耐久性を持つ武器だ。
ベルデが危惧するのは自身へのダメージもそうだが、デッキを破壊される事だ。
貴重な戦闘手段をここで失っては、今後の立ち回りにも悪影響が出る。
少々焦りつつも防御は間に合い、デッキへの攻撃はどうにか凌いだ。

デッキの破壊だけは、だ。

「グゥッ!」

名前に違わず渦に巻き込まれたかのような勢いでベルデは吹き飛ばされた。
背中から地面へと叩きつけられ、呻く間もなくギニューが接近する。
このまま無様に転がり続ける気は毛頭ない。
バイオワンダーを惜しげも無く投げ捨てると、新たなカードを抜き取り召喚機へと読み込ませた。

『CLEAR VENT』

「何だと…!?」

ギューの口から驚愕の声が漏れるのも無理はない。
カードを読み込ませた途端、ベルデの姿は幻の様に消え失せたのだ。
周囲を見回しても、あのカメレオンに似た鎧は影も形も見当たらない。

警戒度を高めるギニューの背後から、ベルデは着火剛焦を振り下ろす。
クリアーベントという名のカード効果は、その名の通りベルデを無色透明へと変化させる。
風都タワーでの戦闘に介入した際にも使ったカードの効果である。
正々堂々とは程遠い戦法だが、殺し合いにルールなど無用。
中々梃子摺らせて貰ったが、これで終わりと自分の勝利を確信した。

確かに殺せたかもしれない。
ギニューの体が、竈門炭治郎でなければ。

――水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き

弾かれたように振り返り刀を突き出す。
姿は見えないが、手応えはあった。日輪刀の切っ先から火花が散り、次いで短い呻き声と共に仮面の騎士が姿を現した。
斬るのではなく突く攻撃故に鬼は殺せないが、水の呼吸の中でも最速の技。
間近に迫った着火剛焦をその身に受けるよりも速く、刃を届かせるのに成功した。

「何故……!?」
「恨むのならオレじゃなく、鼻の良すぎるこのガキを恨むんだな」

ベルデの疑問にギニューは嘲笑で返す。
クリアーベントは姿こそ消せるが、臭いや気配までは消せない。
杉元との戦闘時にも活用した炭治郎の嗅覚は、ベルデの放つこちらへの殺意の臭いを的確に嗅ぎ取った。
風都タワーでの時は重症で乱入者が現れる可能性に気を回す余裕が無くなっていた為、攻撃を食らう羽目になったが今は違う。
奇襲や不意打ちといった戦法に打ってつけのカードを持つベルデだが、今回は相性が悪かったと言えるだろう。

加えて、ギニューはこれで攻撃を終わらせるつもりは無い。
成功すると思っていた奇襲失敗による動揺と、胸部への痛み。
「糸」を見ずとも分かる。これまでで一番の隙だ。

――水の呼吸 捌ノ型 滝壷

「ぬええええええええいいいいいいっ!!!!!」

両腕の筋肉が盛り上がるくらいに力を込めての斬り上げ。
ベルデの体が上空へと打ち上げられると、それを追い越すようにして跳躍。
見下ろす形となった獲物を、地面に叩きつけるように打ち下ろす。
それでも咄嗟に着火剛焦で防御できたのは、見事な反応だった。
威力を幾らか殺し、されど殺し切れない分の力がベルデへ容赦なく襲い掛かる。

「ぐああああああああああああああっ!!!」

再び背中を地面に強打する。
余程勢いがあったのだろう、アスファルトの地面が砕け散った。

「お…のれぇぇぇ…!!」

変身こそ解除されてはいないが、ダメージにより緩慢な動きしか出来ない。
神の才能を持つゲームマスターたる自分へ何たる仕打ちか。
必ずやこの不敬を後悔させてやると怒りを燃やすが、体は思うように動いてくれない。
若作りしていようと、実年齢45歳である天津の肉体には堪える痛みだ。

「成程、これが呼吸というやつか」

血液が沸騰したかのように体が熱くなり、細胞の一本一本に力が漲るかのような現象。
ギニュー自身が取得したのではない、炭治郎の肉体に刻まれた記憶により使えるようになった力。
戦闘力を上昇させ、剣技へ繋ぐ。理解した。

(喜べ炭治郎。フリーザ様復活の為に、貴様の力はオレが存分に使ってやる)

炭治郎本人からしたら、決して望まない言葉を胸中で投げかける。

「黎斗さん!」

戦いを見守っていたリトも、黎斗の危機に焦燥感を覚える。
このまま黙って見ている真っ平御免、しかし今の自分が出てどうにかなるのだろうか。
魔法を使おうにも消耗が激しく、まともに発動できるかどうか。

(けど、だからってじっとしてられるかよ…!)

自分といろはを守る為に、黎斗はたった一人で戦ってくれたのだ。
そんな人のピンチに何もしないままでいて良い訳があろうはずがない。
戦う為の力は魔法以外にもある。
逸る心のままに、ポケットから取り出したガシャットを起動させた。

『Enter The GAME!Riding The END!』

茶色と黒の装甲を纏った、ライドプレイヤーへと変身する。
エグゼイドを始めとしたライダー達には遠く及ばず、西馬ニコのような凄腕のゲーマーでもない限りバグスターにも苦戦する程度のスペック。
しかし生身でいるよりはずっとマシだ。
先程は剣で斬り掛かったが、ライドウェポンは銃にもなる。
変形させるとトリガーに指を掛け、ギニュー目掛けて光弾を放った。

「ふん!素人がつまらん真似をする!」

リトの必死の足掻きを鼻で笑い、ギニューは光弾をヒョイヒョイと軽く躱す。
いろはの時もそうだったが、エネルギー弾などギニューにとっては見飽きた戦法だ。
ケロロの体のままならまだしも、炭治郎の体だったら対処も容易い。
おまけにギニューは黎斗との戦闘に集中しつつ、リトといろはにも警戒をしていた。
油断できない破壊力のエネルギー波を放つ女、奇怪な光る鎖で身動きを封じた小僧。
ベルデとの戦い中に横槍を入れられては厄介な能力の持ち主だ。気を張っておくのは当然である。

「同じ玩具でも、使い方がなっとらんなぁ!」

光弾を避けながらギニューは懐から銃を取り出す。
いろはから奪ったデイパックに入っていた、ニューナンブだ。
引き金を引くと、銃弾はライドウェポンに見事命中。
突然の衝撃にリトは武器を落としてしまう。
拾い上げる隙をわざわざくれてやる気はない。またあの奇妙な鎖で拘束されては面倒だと、リトへ急接近する。
慌てて避けようとするがもう遅い。一撃で変身解除へ持って行く。

「うわっ!?」
「むっ!?」

そのつもりだったが、寸での所でリトに躱された。

「悪足掻きを!」

運良く躱せたから何だと言うのか。
即座に二度目の斬撃が迫るが、これもまたギリギリの所で避けられた。
ならば今度こそと三撃目、四撃目の刃も同様に回避されてしまう。

「ちょこまかと…!!」

苛立ち交じりに刀を振るい続けるが、その全てが当たらない。
情けない悲鳴を上げながら、寸での所で回避するのだ。

ここまで来ると怒りより先に困惑が浮かぶ。
相手が放送前に戦った炎使いの女のように戦い慣れた者ならば、躱され続けるのにも納得はいく。
しかしこの少年は明らかに素人。気を失っている女や、鎧の男に比べて圧倒的に弱い。
なのに不格好な動きながらも、攻撃は全て回避に成功している。
酷くチグハグな印象をここに来て抱いた。

ギニューが考えた通り、リトは戦闘に関しては全くの素人だ。
運動能力は非常に高い方だが、宇宙生物や殺し屋と戦える程の力など無い。
が、常日頃からヤミこと金色の闇の怒りを買い攻撃を仕掛けられている。
(主な原因は"突発性ハレンチ症候群という、いろは相手にも引き起こした体質なのだが詳細は省く)
変身能力により幾度となく攻撃され、必死に逃げるという日常を繰り返した結果、瞬発力や反射神経が劇的に成長したのだ。
つまり回避能力だけに絞れば、今のギニュー相手でも十分通用するのである。

但しそれはリトが万全の状態であればの話。

「ハァ…ハァ……うぐっ…!」

風都タワーでの戦いにおける傷と疲労は抜けきっていない。
本当ならば戦いに出るような状態では無いのだ。
必然的に回避動作にも影響が出て、徐々に鈍り出す。
こうなってしまえば、ギニューにとって最早何の脅威にもならない。
肉体の記憶から引き出した技で、さっさと終わらせてやる。

――水の呼吸 弐ノ型 改 横水車

「うわあああああああああああああっ!!?!」

元々は縦方向に回転し斬る型の応用と言える技。
横方向に全身を大きく回転させて標的を斬り付ける。
大木をも両断する威力にライドプレイヤーの装甲から盛大に火花が散り、大きく吹き飛ばされた。
受け身も取れずに地面を転がると、変身はあっさり解除され傷だらけとなったユーノの姿を晒す。

「貴様は後だ。そこで大人しく見ていろ」

取るに足らない少年へ吐き捨て、眠り続けるいろはへと近付く。
気絶しているとはいえ、自分へ甚大な傷を負わせた相手だ。
真っ先に殺しておくべきとギニューは見ている。

「くそ…っ。環…さん……!!」

いろはの命が奪われようとしている。
なのに自分は無様に倒れ伏し、黎斗もダメージから復帰できていない。
ギニューの言う通り、このまま黙っていろはが殺されるのを見ているしかないのか。
もう駄目だと諦める他ないのか。
悔し気に唇を噛むリトの視線の先で、とうとうギニューの刀がいろはへ振り下ろされようとした。

「や…め…ろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

勝算も策も無い、ただじっとしていられず動き出す。
殺し合いが始まって直ぐの時には扱いきれなかった、ジェットシューズを起動。
深手を負った身にどれだけの負荷が掛かるかも、今は考えている余裕が無い。
爆発的な加速力を得て、いろはの元へと到達した。

そして、至極当然の如く刃が体へと食い込む。
本来ならば鬼から人々を守る為に鍛え直された、炭治郎の日輪刀。
使い手の心を踏み躙るかのように、守るべき人間の命を奪う凶器としてリトを切り裂いた。
バリアジャケットもなければ、ライドプレイヤーにも変身していない、齢十歳にも満たない少年の身体から血が噴き出る。

「えっ」

そんな光景が、起きたばかりのいろはの目に飛び込んで来たのだった。


○


何が起きたのかを直ぐには理解できなかった。
悪夢から目を覚ましたと思ったら、リトが血を流して倒れたのだ。
一瞬、まだ自分は夢の中にいるのかとさえ思ってしまう。
だがこれは紛れも無い現実。
頬に掛かった血の熱さ、むせ返るような鉄の臭い、五感に伝わる情報は夢ではあり得ないくらいに鮮明なのだから。

5秒にも満たない時間で状況を理解すると、即座に起き上がって駆け寄ろうとする。
体の痛みや未だ圧し掛かる疲労など捨て置く。
しかしいろはが事態を把握する僅か数秒も、ギニューが動くには十分過ぎた。

「――っ!?結城さ――あぐっ!?」
「貴様はそのまま寝ていろ。順番が狂ったが…まぁいい」

起き上がりかけたいろはの腹部に足を乗せ、身動きを封じる。
リトが自らを盾にしたのには少しだけ驚いたが、所詮は無駄な足掻き。
自分が死ぬのを早めただけだと嗤う。
目覚めたいろはに余計な抵抗をさせる気も皆無。

「貴様の変身は中々良いものだった。それだけは覚えておいてやるから、安心して死ね!!」

今度こそこいつらも終わりだと、いろはの頸を斬り落とそうとし――


「ラウン……ド…シールド……」


振り下ろした刃は、光を放つ盾に防がれた。

「何ぃいいいっ!?」

突如刀が弾かれ、いろはを仕留め損なった。
誰がやったのかは考えるまでも無い。
風都タワーでの戦闘の時と同じだ。あの時もいろはを仕留めようとしたタイミングで、奇妙な鎖が絡みつき邪魔をされた。

「結城さん!?」
「小僧…!貴様まだ…!!」

二人分の驚愕を浴びせられるのは、夥しい量の血を流しながらも立ち上がったリト。
発動したのはユーノが得意とする結界魔法。
自分の命が失われようという場面でさえも、いろはを守らねばという想いが実ったのか、土壇場での使用に成功した。

「環さんから……離れろ……!」

立っているだけで気絶しそうな痛みに苛まれ、それでもそれを口にする。
勝てる可能性はゼロ、だけど諦められない。
無理だと潔く投げ捨てる程合理的にはなれず、せめて自分だけでも助けてくれと命乞いするような卑怯者にはなれない。
何より、襲われそうになっている女の子を見捨てるような男にだけは、死んでもなりたくなかった。
そんな傍から見たら馬鹿げているような、けれどリトにとっては譲れない意地で死に体の身を動かす。

少し前、ネメシスが殺されそうになった時と同じだ。
デビルーク王の言葉は星を治める立場の者としての重みがあり、ネメシス自身も己の死を受け入れていた。
今思うと、地球の一般男子高校生に過ぎない自分が異を唱える等、とんでもない事をしでかしたものだ。
傍らにいたザスティンが焦るのも無理はない。
だけどもしあの場面で何もしなかったら、自分は一生後悔すると感じた。
ネメシスが殺されるのを指を咥えて見ている、その選択だけはどうしても取れなかった。

今だってそう。
もしもここで何もしなければ、いろはが殺されるのに何の行動にも移せないのなら、
きっと自分は、この先二度と家族に、父と妹に顔向けできない。
こんな自分を好きだと言ってくれた少女達にだって、顔向けできない。
だから立ち上がるのだ。

(このガキ……)

想像以上のリトのタフさに、内心ではギニューも舌を巻く。
この小僧は紛れも無く弱い。
同じ子どもでも、ナメック星で戦ったおかっぱ頭の地球人のガキよりも遥かに雑魚。
だが全くの腑抜けではない。
あの傷で女一人の為に立ち上がる根性、それだけは確かに存在する。
フリーザの蘇生という己の目的に比べたらちっぽけなものだが、譲れないものくらいはあるという事か。

「…良いだろう。そうまでして立ち上がるのなら、今度こそ確実にオレの手で殺してやるわ!」

いろはから足をどかすと、宣言通りにリトへトドメを刺そうと迫る。
それをいろはは止められない。
レイジングハートの起動よりも、ギニューが刀を振るう方が速い。
自分が呑気に気を失っていたせいで、一人の少年の命が失われる。

「結城さん…!だめっ…!!」

「死ねぃっ!!」

二人の声がやけに遠くに聞こえる。
魔法もライドプレイヤーへの変身も間に合わない。
指一本動かすだけでも、酷く緩慢な動きしか出来ないのだ。
そもそも立ち上がれた事自体が奇跡と言って良い。
せめてもの抵抗として、刀を振るう少年を睨み続ける。
やれる事といったらそれだけだった。意地で立ち上がったというのに、結局自分は何も――




















「月閃光!!」

→

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
タグの更新に失敗しました
エラーが発生しました。ページを更新してください。
ページを更新
「嘘つきな世界 -Wish in the dark-」をウィキ内検索
LINE
シェア
Tweet
チェンジ・ロワイアル@ ウィキ
記事メニュー

メニュー

  • トップページ
  • プラグイン紹介
  • メニュー
  • 右メニュー


SS

本編

  • OP
  • 投下順
 ・【0~50】
 ・【51~100】
 ・【101~150】
 ・【151~200】
  • 時系列順
 ・【第一回放送までのSS】
 ・【第二回放送までのSS】
 ・【第三回放送までのSS】
 ・【第四回放送までのSS】
  • 追跡表
  • 書き手紹介

登場話

  • 【登場話候補作】
  • 【登場話候補作】(採用)

番外編

  • 没SSまとめ

資料

  • ルール
  • 地図
  • 現在位置
 ・定期放送時の参加者現在地図(身体)
  • 参加者名簿
 ・参加者名簿(組み合わせ)
 ・参加者名簿(参加者向け)
 ・参加者名簿(ネタバレ)
  • 死亡者情報
 ・第一回放送までの死亡者
 ・第二回放送までの死亡者
 ・第三回放送までの死亡者
 ・第四回放送までの死亡者
  • 死亡者名鑑
  • 支給品情報
 ・支給品一覧
 ・支給品解説
 ・支給品経過
  • タイトル元ネタ
 ・タイトル元ネタ【0~50】
 ・タイトル元ネタ【51~100】
 ・タイトル元ネタ【101~150】
 ・タイトル元ネタ(候補作)


関連リンク

  • 俺ロワ・トキワ荘:http://jbbs.shitaraba.net/otaku/12648/
  • 本スレ①:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1615384066/
  • 本スレ②:https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1633849195/l30
  • 本スレ③:https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1664632643/l30
  • 本スレ④:https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1706338338/l30
  • したらば掲示板:https://jbbs.shitaraba.net/otaku/18420/
  • 2chパロロワ事典@wiki:https://w.atwiki.jp/wiki11_row/


リンク

  • @wiki
  • @wikiご利用ガイド




ここを編集
記事メニュー2

更新履歴

取得中です。


ここを編集
人気記事ランキング
  1. 【151~200】
  2. 第二回放送までの死亡者
  3. 第三回放送までの死亡者
  4. 第一回放送までの死亡者
  5. 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul―
  6. 早すぎるΨ会?
  7. 支給品経過
  8. 【第四回放送までのSS】
  9. 【鬼滅の刃】の追跡表
  10. 【御城プロジェクト:Re】【仮面ライダーエグゼイド】【仮面ライダークウガ】【仮面ライダーSPIRITS】の追跡表
もっと見る
最近更新されたページ
  • 11日前

    自由の代償(中編)
  • 60日前

    Eにさよなら/流れ星が消えるまでのジャーニー
  • 60日前

    閑話:サバイバー
  • 60日前

    Awake
  • 60日前

    早すぎるΨ会?
  • 60日前

    【クレヨンしんちゃん】【ゴールデンカムイ】【斉木楠雄のΨ難】の追跡表
  • 60日前

    【鬼滅の刃】の追跡表
  • 60日前

    【鋼の錬金術師】【ポケットモンスターシリーズ】【無能なナナ】の追跡表
  • 60日前

    ◆5IjCIYVjCc
  • 60日前

    書き手紹介
もっと見る
人気記事ランキング
  1. 【151~200】
  2. 第二回放送までの死亡者
  3. 第三回放送までの死亡者
  4. 第一回放送までの死亡者
  5. 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul―
  6. 早すぎるΨ会?
  7. 支給品経過
  8. 【第四回放送までのSS】
  9. 【鬼滅の刃】の追跡表
  10. 【御城プロジェクト:Re】【仮面ライダーエグゼイド】【仮面ライダークウガ】【仮面ライダーSPIRITS】の追跡表
もっと見る
最近更新されたページ
  • 11日前

    自由の代償(中編)
  • 60日前

    Eにさよなら/流れ星が消えるまでのジャーニー
  • 60日前

    閑話:サバイバー
  • 60日前

    Awake
  • 60日前

    早すぎるΨ会?
  • 60日前

    【クレヨンしんちゃん】【ゴールデンカムイ】【斉木楠雄のΨ難】の追跡表
  • 60日前

    【鬼滅の刃】の追跡表
  • 60日前

    【鋼の錬金術師】【ポケットモンスターシリーズ】【無能なナナ】の追跡表
  • 60日前

    ◆5IjCIYVjCc
  • 60日前

    書き手紹介
もっと見る
ウィキ募集バナー
急上昇Wikiランキング

急上昇中のWikiランキングです。今注目を集めている話題をチェックしてみよう!

  1. 機動戦士ガンダム バトルオペレーション2攻略Wiki 3rd Season
もっと見る
人気Wikiランキング

atwikiでよく見られているWikiのランキングです。新しい情報を発見してみよう!

  1. アニヲタWiki(仮)
  2. ストグラ まとめ @ウィキ
  3. ゲームカタログ@Wiki ~名作からクソゲーまで~
  4. 初音ミク Wiki
  5. 発車メロディーwiki
  6. 機動戦士ガンダム バトルオペレーション2攻略Wiki 3rd Season
  7. モンスター烈伝オレカバトル2@wiki
  8. オレカバトル アプリ版 @ ウィキ
  9. 検索してはいけない言葉 @ ウィキ
  10. Grand Theft Auto V(グランドセフトオート5)GTA5 & GTAオンライン 情報・攻略wiki
もっと見る
新規Wikiランキング

最近作成されたWikiのアクセスランキングです。見るだけでなく加筆してみよう!

  1. MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  2. シュガードール情報まとめウィキ
  3. まどドラ攻略wiki
  4. 戦国ダイナスティ攻略@ウィキ
  5. SurrounDead 攻略 (非公式wiki)
  6. ちいぽけ攻略
  7. シミュグラ2Wiki(Simulation Of Grand2)GTARP
  8. Dark War Survival攻略
  9. 魔法少女ノ魔女裁判 攻略・考察Wiki
  10. 杖と剣の伝説
もっと見る
全体ページランキング

最近アクセスの多かったページランキングです。話題のページを見に行こう!

  1. 参加者一覧 - ストグラ まとめ @ウィキ
  2. 魔獣トゲイラ - バトルロイヤルR+α ファンフィクション(二次創作など)総合wiki
  3. サーヴァント/一覧/クラス別 - Fate/Grand Order @wiki 【FGO】
  4. 全人類転送ミッション - ストグラ まとめ @ウィキ
  5. 河上彦斎 - Fate/Grand Order @wiki 【FGO】
  6. マキマ(チェンソーマン) - アニヲタWiki(仮)
  7. 鬼レンチャン(レベル順) - 鬼レンチャンWiki
  8. モンスター一覧_第3章 - モンスター烈伝オレカバトル2@wiki
  9. 868 - ストグラ まとめ @ウィキ
  10. コメント/雑談・質問 - マージマンション@wiki
もっと見る

  • このWikiのTOPへ
  • 全ページ一覧
  • アットウィキTOP
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー

2019 AtWiki, Inc.