静かな空間だった。
それこそつい先刻までの乱闘が嘘のように、シンと静まり返っている。
音があるとすれば、一人の男が支給品袋を確認するゴソゴソという音くらいだった。
それこそつい先刻までの乱闘が嘘のように、シンと静まり返っている。
音があるとすれば、一人の男が支給品袋を確認するゴソゴソという音くらいだった。
「湯はねえのか……。」
自分デイパックの中身を完全に探り終わると、男、ホル・ホースは少し残念そうな顔をする。
パンのようなシンプルな食料ではなく、インスタントラーメンのような回りくどい食べ物を支給しているのなら、湯もより簡単に調達させて欲しかった。
自分デイパックの中身を完全に探り終わると、男、ホル・ホースは少し残念そうな顔をする。
パンのようなシンプルな食料ではなく、インスタントラーメンのような回りくどい食べ物を支給しているのなら、湯もより簡単に調達させて欲しかった。
(それこそ、湯を放出するスタンド……なんてな。)
そんな微妙なスタンドなんて本当にあるのかと、自分の妄想を勝手に笑う。
そんな微妙なスタンドなんて本当にあるのかと、自分の妄想を勝手に笑う。
(まあ、食いモノは見つかったから、文句はねえけどな。)
デイパックからは、蒸かした芋が見つかった。
この鞄の保温状態はどうなのかサッパリだが、ホカホカと湯気を放っている。
デイパックからは、蒸かした芋が見つかった。
この鞄の保温状態はどうなのかサッパリだが、ホカホカと湯気を放っている。
芋は一人で食べるには少し大きいサイズで、誰かに分け与えれば、丁度食べごろの大きさになると思った。
とはいえ、現在相手はハサミだけ。
彼はモノを食べないし、仮に食べるとしても、一緒に食べていて楽しい相手だとも思わなかった。
とはいえ、現在相手はハサミだけ。
彼はモノを食べないし、仮に食べるとしても、一緒に食べていて楽しい相手だとも思わなかった。
流石に湯を入れずにインスタントラーメンを食べるほど追い詰められている状況ではないし、ハサミから貰った方なんて毒でも入っているかもしれない。
そんなわけで、彼は切り株に腰掛け、その芋を食べることにした。
そんなわけで、彼は切り株に腰掛け、その芋を食べることにした。
(………。)
いまひとつ味気ねえな、と思いながらそれを齧る。
決してまずいものではないが、他のことなど忘れてしまうほど旨いものでもなかった
そんな時に耳を澄ませると、僅かながら音が聞こえてくる。
先程ハサミが、殺害した相手を連れて行った場所のあたりからだ。
いまひとつ味気ねえな、と思いながらそれを齧る。
決してまずいものではないが、他のことなど忘れてしまうほど旨いものでもなかった
そんな時に耳を澄ませると、僅かながら音が聞こえてくる。
先程ハサミが、殺害した相手を連れて行った場所のあたりからだ。
それはジャキ、ジャキと、ハサミが動くときの音だ。
(まあ、何にせよ、飯中に見るモンじゃねえだろうな。)
同行者の行動を意に関せず、食事を続ける。
同行者の行動を意に関せず、食事を続ける。
丁度芋の尻尾だけが残った辺りで、辺りから別の音が聞こえてきた。
(おいでなすったか。)
澄んだ緑色の茂みから、濁った緑色の小鬼が2匹現れる。
澄んだ緑色の茂みから、濁った緑色の小鬼が2匹現れる。
(メシ中に邪魔するとはねえ、ま、そこまで旨い飯でもねえからいいけど。)
芋が無くなって空いた掌から、再び銃を出し、ゴブリンを狙撃する。
頭を打ち抜かれて一匹は倒れるが、同時にもう一匹は無傷でホル・ホースに飛び掛かろうとする。
芋が無くなって空いた掌から、再び銃を出し、ゴブリンを狙撃する。
頭を打ち抜かれて一匹は倒れるが、同時にもう一匹は無傷でホル・ホースに飛び掛かろうとする。
(弾だってスタンドなんだよ。)
しかし、伊達男の整った顔に爪で傷を入れる前に、戻ってきた弾が2匹目の頭を突き抜けた。
しかし、伊達男の整った顔に爪で傷を入れる前に、戻ってきた弾が2匹目の頭を突き抜けた。
「ソイツらが誰なのか分からないけど、殺さずに適度に傷つけてくれない?」
茂みの声から既に聴きなれた同行者の声がした。
茂みの声から既に聴きなれた同行者の声がした。
もう遅いぜ、と言いたい所だったが、都合よく新手のゴブリンが木の上から飛び掛かってくる。
「アイ、アイ、サー!」
ハサミに何の意図があるのかガンマンには知ったことじゃないが、取りあえず言われた通りにすることにした。
ハサミに何の意図があるのかガンマンには知ったことじゃないが、取りあえず言われた通りにすることにした。
降ってくるゴブリン達の手や体が、地面やホル・ホースに届く前に、脚だけを打ち抜いていく。
不時着して、動けないまま手をばたつかせている哀れな小鬼を、ハサミがいる辺りまでボールのように一匹ずつ蹴飛ばす。
ゴブリンの脂肪の適度な弾力が、ホル・ホースに申し訳程度の快楽を与えた。
ゴブリンの脂肪の適度な弾力が、ホル・ホースに申し訳程度の快楽を与えた。
「ありがとう!これでさっきの失態はナシにしてあげるよ!!」
まるで質の悪い大人のような上から目線の態度と、無邪気な子供のような口調で、彼に感謝を告げる。
まるで質の悪い大人のような上から目線の態度と、無邪気な子供のような口調で、彼に感謝を告げる。
ハサミが刃を動かす音に加え、ゴブリンの甲高いが濁った悲鳴が何度か聞こえてくる。
「なむあみだぶつ……と。」
恐らく普通に死ぬより哀れな目に遭っているであろうゴブリンに、心にもない念仏を唱えた。
ゴブリンの悲鳴が聞こえなくなった頃に、ひと際大きな足音が聞こえたと思うと、今度はそれまでの3倍はある大きさの、ボブゴブリンがホル・ホースの目の前に立ちはだかった。
恐らく普通に死ぬより哀れな目に遭っているであろうゴブリンに、心にもない念仏を唱えた。
ゴブリンの悲鳴が聞こえなくなった頃に、ひと際大きな足音が聞こえたと思うと、今度はそれまでの3倍はある大きさの、ボブゴブリンがホル・ホースの目の前に立ちはだかった。
「デカけりゃいいってモンじゃないぜ。杓子は耳かきにならずって言葉、知ってるかい?」
その図体を恐れもせずに、銃を構える。
「お待たせーー!!」
さっさとデカブツを撃ち殺そうと思った所で、甲高い声が響いた。
そこにいるのは、ゴブリンの青い血で汚れたハサミ。
そして、隣には、異様な存在が鎮座していた。
さっさとデカブツを撃ち殺そうと思った所で、甲高い声が響いた。
そこにいるのは、ゴブリンの青い血で汚れたハサミ。
そして、隣には、異様な存在が鎮座していた。
「おい……それって……。」
「ああ、待って待って。コイツは敵じゃない、ぼくの作った玩具さ。」
「ああ、待って待って。コイツは敵じゃない、ぼくの作った玩具さ。」
見た目は、ゴブリンを象った人形だった。
そのゴブリンが、剣士であったかのように、剣を構えている。
しかし、そんなものは全く問題ではない。
人形の周囲に、恐怖と痛み、血で歪んだゴブリンの顔面や肉片がこびり付いているのだ。
名づけるなら、ヒャクメンハリボテゴブリン、とでも言うべきだろうか。
そのゴブリンが、剣士であったかのように、剣を構えている。
しかし、そんなものは全く問題ではない。
人形の周囲に、恐怖と痛み、血で歪んだゴブリンの顔面や肉片がこびり付いているのだ。
名づけるなら、ヒャクメンハリボテゴブリン、とでも言うべきだろうか。
森の木の枝で骨組みを造り、そして支給品の折り紙で、ゴブリンの形を模した人形を作る。
そして、ゴブリンの肉片や顔面をそれらの体に張り付けて、仕上げとばかりに手の部分に兼定の指を張り付けたのだ。
そして、ゴブリンの肉片や顔面をそれらの体に張り付けて、仕上げとばかりに手の部分に兼定の指を張り付けたのだ。
「スゴイだろ?支給品の剣と、折り紙を一つ使ったけど、それでも良いオモチャが出来たよ!!
ここの世界のイキモノは、肉厚だけどチやニクが接着剤代わりになりやすくてね!!」
ここの世界のイキモノは、肉厚だけどチやニクが接着剤代わりになりやすくてね!!」
「あ、ああ。」
その姿は、ホル・ホースはもちろん、ボブゴブリンでさえ顔に恐怖を見せていた。
だが、首輪の持ち主を見つけたら襲う命令には逆らえず、太った怪獣は顔を引き攣らせて、二人に突撃する。
だが、首輪の持ち主を見つけたら襲う命令には逆らえず、太った怪獣は顔を引き攣らせて、二人に突撃する。
しかし、二人への攻撃が当たる前に、ヒャクメンハリボテゴブリンが振りかざす剣によってボブゴブリンは両断される。
「おい……それって……。」
よく見れば、その振りは先ほど戦った兼定のそれと酷似していた。
勿論、人形である以上、動きこそはぎごちなく、例えるなら「超一流の剣士の型のみを真似た二流の剣士」と言ったところだが。
勿論、人形である以上、動きこそはぎごちなく、例えるなら「超一流の剣士の型のみを真似た二流の剣士」と言ったところだが。
「このために、指はあの剣士のものを使ったんだ。やっぱり、剣士の力は素晴らしいね。」
刃物にとって、血糊で汚れるのは一大事だろう。
だが、オリー王の力を貰ったハサミの刃は、錆びず、鈍らない。
そして、もし彼に人間の顔が付いていれば、さぞかし良い笑顔を浮かべていただろう。
だが、オリー王の力を貰ったハサミの刃は、錆びず、鈍らない。
そして、もし彼に人間の顔が付いていれば、さぞかし良い笑顔を浮かべていただろう。
上っ面だけの同盟に、新たなメンバーが参加した。
それが持たらすものは、見栄えだけの結果か、それとも本当の惨劇か、まだ誰も知らない。
それが持たらすものは、見栄えだけの結果か、それとも本当の惨劇か、まだ誰も知らない。
「さあ、行こうか。体も洗いたいし、どうやらこの世界にいるらしい僕を殺した奴の復讐もしたいしね。」
「お、おう。」
「お、おう。」
自分を殺した相手、という言葉を今一つ捉えられなかった。
実は彼、ホル・ホースはここへ来る前に、主であるDIOを殺害しようとしていた。
その時にエンペラーの引き金を引こうとした瞬間、この世界に飛ばされた。
実は彼、ホル・ホースはここへ来る前に、主であるDIOを殺害しようとしていた。
その時にエンペラーの引き金を引こうとした瞬間、この世界に飛ばされた。
(もしかすると、この世界は死者の集まり……?)
反抗に失敗し、気づかぬ間に殺されてこの世界に飛ばされた。
反抗に失敗し、気づかぬ間に殺されてこの世界に飛ばされた。
自分が生きているか、その問いには余程頭がおかしくない限り、はいと答えるだろう。
しかし、その根拠を提示しろと言われれば、困ってしまう。
しかし、その根拠を提示しろと言われれば、困ってしまう。
(まあ、そうじゃねえことにしておくか。)
自分が想像しうる最悪の状況を、頭の片隅に置いて、人ならざる者達と先へ進むことにした。
自分が想像しうる最悪の状況を、頭の片隅に置いて、人ならざる者達と先へ進むことにした。
【F-7 ソルティ・スプリングス/3:30 黎明】
【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ】
[状態]:健康 空条徐倫への不安(中)
[装備]:手にとり望遠鏡(『引き寄せる』『引き寄せられる』ともに現在使用不可)@ドラえもん
[道具]:基本支給品×2(自分とハサミの分)、ランダム支給品0~1(確認済み?)
[思考]基本行動方針:とりあえず生き延びるが、今はハサミの旦那に従う。
1:空条って、まさか…?
2:今はハサミの旦那に協力。ハサミの旦那がやられたら…どうすっか。
3:女に手を出さないのも、此処では考え直すべきか、
[備考]
※最低でもエンヤ婆戦後からの参戦です。
※なんとなく参加者は多くが異なる世界から来ているとは思ってますが、まだ確証はありません。
※空条徐倫を承太郎の関係者と言う可能性を考察してますが、
上の異なる世界がより多いと考えた場合解消されるかも…本人に出会うまでは。
[状態]:健康 空条徐倫への不安(中)
[装備]:手にとり望遠鏡(『引き寄せる』『引き寄せられる』ともに現在使用不可)@ドラえもん
[道具]:基本支給品×2(自分とハサミの分)、ランダム支給品0~1(確認済み?)
[思考]基本行動方針:とりあえず生き延びるが、今はハサミの旦那に従う。
1:空条って、まさか…?
2:今はハサミの旦那に協力。ハサミの旦那がやられたら…どうすっか。
3:女に手を出さないのも、此処では考え直すべきか、
[備考]
※最低でもエンヤ婆戦後からの参戦です。
※なんとなく参加者は多くが異なる世界から来ているとは思ってますが、まだ確証はありません。
※空条徐倫を承太郎の関係者と言う可能性を考察してますが、
上の異なる世界がより多いと考えた場合解消されるかも…本人に出会うまでは。
【ハサミ@ペーパーマリオ オリガミキング】
[状態]:ダメージ(小)、ホル・ホースへの不満(小)、良いオモチャを造れてハイ ゴブリンの血で汚れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、折り紙セット(2/5 黒、黄、青使用済み)、睡眠薬入りアイスティー
[思考]基本行動方針:この世界で新しいオモチャを作る。
1:ヒャクメンハリボテゴブリンを使ってみる
2: 体を洗いに行く
3:ホル・ホースと協力し、会場を荒らし回る。
4:自分を殺した相手(マリオ)に復讐する。
5:ちょっと不満…まあ隙を見てホル・ホースも殺すけどね。
6:最終的には優勝。
[状態]:ダメージ(小)、ホル・ホースへの不満(小)、良いオモチャを造れてハイ ゴブリンの血で汚れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、折り紙セット(2/5 黒、黄、青使用済み)、睡眠薬入りアイスティー
[思考]基本行動方針:この世界で新しいオモチャを作る。
1:ヒャクメンハリボテゴブリンを使ってみる
2: 体を洗いに行く
3:ホル・ホースと協力し、会場を荒らし回る。
4:自分を殺した相手(マリオ)に復讐する。
5:ちょっと不満…まあ隙を見てホル・ホースも殺すけどね。
6:最終的には優勝。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※ハサミの支点になるネジの鉸めが、首輪代わりになっています。
※本編死亡後からの参戦です。
※ハサミの支点になるネジの鉸めが、首輪代わりになっています。
支給品紹介
【蒸かした芋@進撃の巨人】
ホル・ホースに支給されていた食べ物。
原作では登場人物の一人が、調査兵団の入団式の最中に食べていた。
そこそこ大きいサイズで、半分こして食べることもできる。
ホル・ホースに支給されていた食べ物。
原作では登場人物の一人が、調査兵団の入団式の最中に食べていた。
そこそこ大きいサイズで、半分こして食べることもできる。
【幸運と勇気の剣(ラックとプラックのけん)@ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド】
ハサミに支給された武器。
原作の敵の一体である、黒騎士ブラフォードが愛用していた。
剣には「Luck!(幸運を)」の言葉と、自らの血で書き足した「PLUCK(勇気をッ!)」の文字が刻まれている。
しかし、本作ではゴブリンの血で、【Unluck(不運を)】という文字になっている。
現在はヒャクメンハリボテゴブリンが持っている。
ハサミに支給された武器。
原作の敵の一体である、黒騎士ブラフォードが愛用していた。
剣には「Luck!(幸運を)」の言葉と、自らの血で書き足した「PLUCK(勇気をッ!)」の文字が刻まれている。
しかし、本作ではゴブリンの血で、【Unluck(不運を)】という文字になっている。
現在はヒャクメンハリボテゴブリンが持っている。
【ヒャクメンハリボテゴブリン+幸運と勇気の剣】
ハサミが創った玩具。
ゴブリンを模した巨大な人形だが、その周りにゴブリンの顔が張り付けられている悪趣味極まりないもの
指は兼定の者が使われているためか、兼定によく似た剣術を使うことが出来る。
ただし、あくまで型を真似ただけであるため、兼定に比べるとその技術ははるかに劣る。
全体図がイメージしにくかったら、「ヒャクメンハリボテメット」に似た姿だと考えてよい。
ハサミが創った玩具。
ゴブリンを模した巨大な人形だが、その周りにゴブリンの顔が張り付けられている悪趣味極まりないもの
指は兼定の者が使われているためか、兼定によく似た剣術を使うことが出来る。
ただし、あくまで型を真似ただけであるため、兼定に比べるとその技術ははるかに劣る。
全体図がイメージしにくかったら、「ヒャクメンハリボテメット」に似た姿だと考えてよい。
033:紫さんは異変解決がしたい | 投下順 | 035:前触れなく始まるボス戦は大体みんなのトラウマ |
025:皇帝×時間 | ハサミ | 046:盤上に放たれた怪物 |
ホル・ホース |