(知ってる名前は……ない)
ミルドラースの放送が終わり、名簿を確認した佐藤アカネは、知っている名前がないことを確認する。
(なんか…変な感じ)
知り合いの名前が呼ばれなかったことは、喜ばしいことだ。
その感情に…ウソなんてないはずだ。
なのに、心の中では不安が大きくなっていく。
まるで、知り合いの名前があって欲しかったかのように。
その感情に…ウソなんてないはずだ。
なのに、心の中では不安が大きくなっていく。
まるで、知り合いの名前があって欲しかったかのように。
(一人の方が気楽…そう、思ってたはずなのに)
アカネの脳裏に浮かぶのは、一人の少女の姿。
大橋ミツキ。
あの少女と出会い、妙に懐かれてしまったことで、全てが狂ってしまった。
大橋ミツキ。
あの少女と出会い、妙に懐かれてしまったことで、全てが狂ってしまった。
『アカネちゃん…』
小動物のような泣き顔で自分を呼ぶミツキの姿を、幻視して…
(何考えてんだか)
前言もとい前考撤回。
知り合いがいなくて不安だなんて、大ウソだ。
いなくて、本当によかった。
だって、あの子がこんなとこに呼ばれたとして。
口下手で、鈍くさいあの子が生き残れるわけがない。
知り合いがいなくて不安だなんて、大ウソだ。
いなくて、本当によかった。
だって、あの子がこんなとこに呼ばれたとして。
口下手で、鈍くさいあの子が生き残れるわけがない。
(たとえ一人だって…知り合いがいなくたって、私は生き残る)
決意を固めると、アカネは同行者の方へ顔を向ける。
同行者である女性、とがめは未だに名簿を見ていたが、しばらくすると口を開いた。
同行者である女性、とがめは未だに名簿を見ていたが、しばらくすると口を開いた。
「…七花の奴はおらんか。全く、わたしの刀だというのにそばにいないとは、なんたることだ」
とがめの反応は、アカネのそれとは全く違っていた。
知り合いがいないことにホッとするわけでもなければ、不安に思うわけでもなく、ぶつくさと不満を口にしていた。
自分とは住む世界が違うんだな、とアカネは思った。
知り合いがいないことにホッとするわけでもなければ、不安に思うわけでもなく、ぶつくさと不満を口にしていた。
自分とは住む世界が違うんだな、とアカネは思った。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「さて、名簿の確認を終えたことだし、出発したいところだが、その前にアカネ、一つ決めなければならないことがあるが、分かるか?」
「決めないといけないこと?」
「ああ、非力なわたし達が生き残るために必要なことだ」
「決めないといけないこと?」
「ああ、非力なわたし達が生き残るために必要なことだ」
そういえばとがめは、生き残るための奇策を授けると言っていたか。
彼女の言う通り自分たちは非力であり、現状頼れるのは彼女の頭脳だ。
彼女の言う通り自分たちは非力であり、現状頼れるのは彼女の頭脳だ。
「降参。もったいぶらないで、教えなさいよ」
そういうとアカネは、真剣な面持ちでとがめの次の言葉を待つ。
「わたし達が決めなければならないこと…それは」
「それは…?」
「決め台詞だ!」
「……………は?」
「それは…?」
「決め台詞だ!」
「……………は?」
「例えばこの殺し合いの舞台がどこぞの物書きが作った物語としてだ。アカネ、作者はどういう者を生き残らせると思う?」
「どういうって…強い人とか?」
「半分正解だ。しかし、ただ強いだけでは、作者もつまらんし読者を満足させることができん。作者が、読者が求めるもの…それは強烈な個性を持つ者だ」
「…それで決め台詞?」
「ああ、決め台詞は読者に大きな印象を残し、作者にも書きたいと思わせられる。すなわち、この殺し合いでも生き残れるということだ」
「……………」
「どういうって…強い人とか?」
「半分正解だ。しかし、ただ強いだけでは、作者もつまらんし読者を満足させることができん。作者が、読者が求めるもの…それは強烈な個性を持つ者だ」
「…それで決め台詞?」
「ああ、決め台詞は読者に大きな印象を残し、作者にも書きたいと思わせられる。すなわち、この殺し合いでも生き残れるということだ」
「……………」
そんなフィクションのお約束みたいなものを現実に当てはめられても、困るのだが。
「…本当に決めるの?決め台詞」
「当然。生き残るためだ」
「当然。生き残るためだ」
電流は来ない。
どうやらこの女、本気で言っているらしい。
どうやらこの女、本気で言っているらしい。
「…分かった。じゃあ、歩きながら考えるから出発しましょう」
「なに、安心しろ。実はそなたのためにいくつか決め台詞を考えておいた」
「…一応聞くけど、どんなのかしら」
「なに、安心しろ。実はそなたのためにいくつか決め台詞を考えておいた」
「…一応聞くけど、どんなのかしら」
うんざりしながらも、アカネは聞いてみる。
「ふむ…一番の自信作はこれだな」
「『お前のウソは全部まるっとお見通しだ!』」
「……………」
「どうだ、これはそなたのウソを見抜く能力から着想を得たものなのだが…」
「なしで」
「ふむ、気に入らぬか?数百年未来にも通じる冴えた台詞だと思ったのだが」
「どうだ、これはそなたのウソを見抜く能力から着想を得たものなのだが…」
「なしで」
「ふむ、気に入らぬか?数百年未来にも通じる冴えた台詞だと思ったのだが」
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「そ、それよりも。そういえば、結局あんたの名前はなんていうの?」
いつまでもこんな不毛な会話はしてられないと考えたアカネは、強引に話題を切り替えた。
「む?なんだ突然。名前はとがめと名乗ったであろう」
「それ嘘なんでしょ」
「ああ、そういえばそうであったな。…とはいえ、とがめとしか名乗りようがない。名簿にもそうあるしな」
「私の下にあるこれが、あんたを指し示す名前だっていうの?」
「ああ、そうだ。…すまんが、この殺し合いに幕府の手の者が関わっていないともかぎらないのでな。わたしの命と目的に関わることゆえ、本名を名乗ることはできん」
「…分かった」
「それ嘘なんでしょ」
「ああ、そういえばそうであったな。…とはいえ、とがめとしか名乗りようがない。名簿にもそうあるしな」
「私の下にあるこれが、あんたを指し示す名前だっていうの?」
「ああ、そうだ。…すまんが、この殺し合いに幕府の手の者が関わっていないともかぎらないのでな。わたしの命と目的に関わることゆえ、本名を名乗ることはできん」
「…分かった」
電流は来ない。
命に関わるというのは、本当のことらしい。
それならば、これ以上聞くつもりはなかった。
命に関わるというのは、本当のことらしい。
それならば、これ以上聞くつもりはなかった。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「…って、ちょっと待って。今、幕府って言った?」
「ああ、それがどうした?」
「どうしたって…幕府って、あの幕府?征夷大将軍とか、そういう…」
「ああ…言ってなかったか?わたしは、尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所軍所総監督。尾張幕府の将軍、家鳴公の下につくれっきとした幕臣だ」
「おわり、ばくふ?」
「ああ、それがどうした?」
「どうしたって…幕府って、あの幕府?征夷大将軍とか、そういう…」
「ああ…言ってなかったか?わたしは、尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所軍所総監督。尾張幕府の将軍、家鳴公の下につくれっきとした幕臣だ」
「おわり、ばくふ?」
もし自分が普通の少女だったならば、今の話を嘘だと断じていただろう。
しかし、電流は流れない。
彼女が語った肩書に、ウソはない。
しかし、電流は流れない。
彼女が語った肩書に、ウソはない。
(えっと…おわりって『尾張』よね。それって確か、織田信長の国じゃなかったっけ?家鳴ってなに?幕府?将軍?)
「どうしたというのだ。言っておくが、ウソはついておらんぞ」
「ええ、分かってるわよ。分かってるからこそ混乱してるのよ」
「どういうことだ?」
「ええ、分かってるわよ。分かってるからこそ混乱してるのよ」
「どういうことだ?」
アカネは語った。
自分が、おそらくとがめより何百年も未来の者であるだろうということを。
しかし、自分が知る歴史と、あまりにもかけ離れているということを。
自分が、おそらくとがめより何百年も未来の者であるだろうということを。
しかし、自分が知る歴史と、あまりにもかけ離れているということを。
(織田?徳川?いったいどういうことだ)
アカネの話を聞いたとがめもまた、情報の整理に手間取っていた。
アカネの語る歴史は、自分が知るそれとはまるで違う。
基本的な流れは似ているのだが、全然違うのだ。
アカネの語る歴史は、自分が知るそれとはまるで違う。
基本的な流れは似ているのだが、全然違うのだ。
(まさかこれは…アカネの知る歴史は)
思い出すのは父の言葉。
父、飛騨鷹比等は言っていた。
この歴史は本来あるべき姿とはまるで違うと。
もしや、アカネが今語った歴史が、父の言っていたそれなのではないか。
父、飛騨鷹比等は言っていた。
この歴史は本来あるべき姿とはまるで違うと。
もしや、アカネが今語った歴史が、父の言っていたそれなのではないか。
(…まあ、今はこんなことに思考を費やしている場合ではないか。ともかく、まずは生き残るために動かねばならぬ)
「というわけでアカネ、そなたの決め台詞だが…」
「それはもういい」
「それはもういい」
結局、アカネの「こんな話してる暇があったらさっさと動こう」という至極真っ当な提案に、とがめが渋々ながら折れ、話はこれで終わり。
二人はようやく歩き始めるのだった
二人はようやく歩き始めるのだった
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
(そういえば…)
歩き始めてしばらくして、アカネはふと、先ほども思い浮かべた友人について考えていた。
といっても、考えていたのは彼女自身のことでなく、彼女の能力についてだが。
大橋ミツキには、とある能力がある。
それは、目が合った人の未来が見えるというものだ。
それは、すぐ先の未来であることもあれば、何年も先の未来だったりする。
おそらく彼女がこの場に呼ばれてたら、何人もの死の光景を見せられていたことだろう。
それはあまりにも、酷すぎる。
といっても、考えていたのは彼女自身のことでなく、彼女の能力についてだが。
大橋ミツキには、とある能力がある。
それは、目が合った人の未来が見えるというものだ。
それは、すぐ先の未来であることもあれば、何年も先の未来だったりする。
おそらく彼女がこの場に呼ばれてたら、何人もの死の光景を見せられていたことだろう。
それはあまりにも、酷すぎる。
(未来を知るって、やっぱり怖いことよね。この殺し合いの場では、特に)
アカネは知らない。
自分たちが、未来を見ることのできる悪魔に、近づきつつあることを。
自分たちが、未来を見ることのできる悪魔に、近づきつつあることを。
【F-5 北部/黎明】(北上中)
【佐藤アカネ@そんな未来はウソである】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:基本行動方針:死にたくも殺したくもない
0:殺し合いなんて、笑えない冗談だわ。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:基本行動方針:死にたくも殺したくもない
0:殺し合いなんて、笑えない冗談だわ。
※殺し合いが行われることや、優勝者の願いをひとつ叶えるといった主催者の言葉に対してウソの感知は行われておらず、それを信じています。しかし、その時に限って能力を制限されていた可能性もあります。
※とがめが自分の知るものと違う過去の人間だと認識しましたが、どういうことなのかは深く考えていません。
※とがめが自分の知るものと違う過去の人間だと認識しましたが、どういうことなのかは深く考えていません。
【とがめ@刀語】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(武器の類は無し)
[思考・状況]:基本行動方針:自分だけは生き残る
0:佐藤アカネの命は自分の次に優先する。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(武器の類は無し)
[思考・状況]:基本行動方針:自分だけは生き残る
0:佐藤アカネの命は自分の次に優先する。
※鑢七実に髪を切られる前からの参戦です。
※アカネが自分が知るものとは違う歴史の、未来の人間だと認識しました。
アカネの語る歴史が、飛騨鷹比等が言っていた『本来あるべき姿』の歴史なのではと考えています。
※アカネが自分が知るものとは違う歴史の、未来の人間だと認識しました。
アカネの語る歴史が、飛騨鷹比等が言っていた『本来あるべき姿』の歴史なのではと考えています。
042:暖かい時間 | 投下順 | 044:この両手に魔剣を! |
ウソつき達の物騙り | 佐藤アカネ | 058:消えない 消えない 炎の影 |
とがめ |