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痛みと苦しみと愛の欲望

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匿名ユーザー

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「やってくれたね、海馬乃亜……!」

黄色い制服を着た小柄な少年が強い憎悪を込めた声を放つ。
少年の名は、肉体は加納マルタンという。その精神はユベルと呼ばれる精霊に乗っ取られていた。
現にその左腕は人ではなく、龍の鱗に包まれ鋭い爪を持つ歪な物へと変貌している。

「確か、僕は十代とのデュエルをしていた……。愛し合っていたんだ。
 だが途中から、ヨハンとかいう泥棒猫が割り込んできた……」

この殺し合いに呼ばれる直前、ユベルは遊城十代とのデュエルに臨んでいた筈だった。
その後、ヨハン・アンデルセンの乱入もあり2VS1の変則デュエルへと移行し、ヨハンにレインボー・ドラゴンを召喚された。
そこまでの記憶ははっきりしている。

「異世界から、どうやって僕を呼び寄せたんだい……? そう易々と、次元の壁は超えられるものではない筈だけどね。
 でも、流石は海馬コーポレーションといったところかな? あの会社なら、次元を超えるテクノロジーを保有してもおかしくはない、か」

幼少期の十代に憑りつき、そのデュエルの対戦相手を次々に意識不明の重体に追い込んだことが原因で、ユベルの媒体でもあるカードを海馬コーポレーションのロケットに搭載され宇宙に打ち上げられた過去がフラッシュバックする。
その首謀者たる海馬瀬人曰く、カードに宇宙の波動を当てるといった馬鹿みたいな計画だったらしいが、肝心のユベルの乗ったロケットは地球に墜落した。
当然ながら、いくら鉄の塊といえど大気圏の突破に墜落したロケットが完璧に耐えきれる訳がない。それに搭載されたユベルも灼熱の中で苦しみ、肉体を失ってしまった。
そして次は、海馬という姓を名乗る乃亜からの殺し合いの強制だ。ユベルに対しこうも毎度阻んで来るのであれば、嫌でも意識するしかない。

「どうやら、あの会社は余程僕と十代を引き離したいと見えるね……。こうなった以上、乃亜も海馬瀬人も……永遠の闇に葬り去ってやるよ」

方針が決まったとして、問題はそこに至るまでの過程だった。
殺し合いに乗ることは構わない。この場を痛みと苦しみで満たし、そしてその屍を愛しい十代に見せ付ければ赤の他人とはいえ、十代もそれなりには苦しんで、胸を痛めてくれる。愛を与えることが出来る。
そして、十代はユベルに同じように痛みと苦しみを与えてくれるだろう。それが愛し合うということ、ユベルはそう考えていた。

「優勝しても良いんだけど……でも、首輪(こいつ)を外された方がキミも屈辱だろう?」

優勝は最後の手段として、殺し合いに逆らわれたといって今すぐ首輪を爆破する程、極端な事には走らないだろう。大人びてみせているとはいえ、根っこは子供である為、思い通りに行かず癇癪を引き起こす可能性もなくはないが。

「……屈辱、それはキミにとっても苦痛だよね。良いよ、キミにも愛を与えてあげるよ。痛みを味合わせてあげる。そして、心の闇を頂くよ。十代と愛し合う前の腹ごしらえ位にはなって貰わないとねぇ」

より苦痛を与えられるのなら、それを選ぶ方がより愛が深まる。心の闇もより上質で良質な物へと変貌するだろう。
優勝にしても殺し合いに打破にしても、相応に消耗するのが想定される。それならば、乃亜の心の闇を深める事で消耗したユベルの体力を回復出来るよう、敢えて逆らうのも一興だ。

「随分、物騒なことを言うのねぇ? 痛みだとか苦痛だとか……」
「……誰だ」

独り言が過ぎてしまったらしい。一人の少女が腕を組みながら近寄ってきていた。


「メズールよ。見ての通り、殺し合いに巻き込まれた参加者ね」

青い服を着た、中学生程の女の子だった。だが容姿とは裏腹に口調は艶めかしく、その外見には見合っていない。
恐らくはユベルと同じように、真の姿ではないのだろう。それが他者への憑依が解けない為なのか、あるいは容姿そのものを変化させているのかユベルには判断が付かない。
だが、間違いなく目の前の少女は人ではない別の存在の気配を感じた。

「おや、すんなり名乗ってくれるとはね。じゃあ、僕も名乗らせてもらおうか……肉体はマルタン、精神はユベルという」

「その言い方、体と心がまるで別人みたいじゃない」

「生憎と、どこかの狂った独裁者が立ち上げたふざけた計画のせいで、僕自身の肉体は大きく欠損してしまっている。だから他人の体を拝借しているんだ。
 ある程度再生は済んだけど、どうやらこの場ではマルタンの体から僕が離れる事は出来ないらしくてね。だから、マルタンかユベルか名乗るのに迷ったという訳さ」

「それは災難ね、ユベルの坊や。ところで貴方の支給品でこんなメダルはないかしら?」

メズールの手には一枚の青いメダルがあった。金色の縁に、サファイアのような蒼い円状のクリスタルのようなものが収まった、シンプルなデザイン。
一目で特異な力が宿っているのが見て取れる。

「……もし、それを持っていて、でも譲らないよ……と、言ったら?」
「そうねぇ。考える時間をあげるから、口で解決する間に改めた方が良いんじゃない?」
「慈悲深いじゃないか、その優しさに報いてあげたいけど……残念ながら、そのメダルは持っていないんだ。力づくで確認して貰っても良いけど、時間と労力の無駄さ」

メズールは内心で舌打ちする。
グリードは9枚のメダルを揃える事で完全体となる。よって、人が生命活動を維持するのに食事を必要とするように、グリードもまた己のメダルを集めることを優先する。
乃亜がそれを把握した上で、メズールを殺し合いに放り込んだのなら、当然メズールのメダルを参加者に支給するはずだ。何故なら、そのメダルを奪うという理由が生まれ、メズールが別参加者と交戦するきっかけにもなる。
殺し合いを促進させるという点では、グリードはこれ以上ない適任者ではあるだろう。
当のメズールからすれば冗談ではないし、幼い容姿を利用しているとはいえ小学生扱いも気に入らないが。

「……飢えているんだね」
「なんですって?」
「飢えている。欲に……そのコインは欲の証のようなものかな。分かるんだよ。キミの欲する欲望がさ。
 でも、満たされないんだね。表面をなぞってはいていても、それは本物の欲の渇きを潤わさない。真似事をしているだけさ、子供のままごとと同じだよ」
「……言うじゃない、坊や」

ユベルは不遜に笑い、ランドセルに手を伸ばした。その先にあるのは乃亜から支給された物、恐らくは武器だ。

「貴方……!」

メズールは即座に身構え、姿を人間の擬態から本来の怪人のものへと変化させる。
魚のような魚類系の姿でありながら、人と同じ二本の足と腕を持ち、この地球上の海の生物の特徴を持ちながら、地球上のどの生物にも分類されない異形の存在。

「坊や、それ以上は正当防衛としてこっちも抵抗するわよ」
「落ち着きなよ。その青いメダルは知らないけど、これもキミの良く知った物じゃないかな?」

ランドセルから引き摺りだされた一つのガジェット。
中央に丸いガチャガチャのカプセルのような物が付けられたベルト、仮面ライダーバースへ変身できるベルトだ。それと無骨なミルクタンク、その中からは大量の金属が触れ合う音が鳴り響く。


「この玩具はキミが持っていた方が有効に使えるんじゃないかな? あげるよ」

ユベルはベルトをメズールに投げた後、タンクを横に倒し蹴り飛ばす。

「……」

メズールはベルトを掴み、タンクを足で踏み受け止める。

(セルメダル……少なくはない量ね。これを取り込めば、それなりには戦えるわ。それにバースのベルトも悪くない)

怪人の姿から、擬態の人間の容姿へと切り替える。
乃亜に殺し合いの宣言を聞かされたあの場に集められた時に居たのは大多数が子供、そして支給されたこのランドセル、悪趣味な話だが参加者の選定条件は子供だ。年齢も問わず、恐らくは容姿が幼ければ子供として判断されている。
その為に、元の怪人の姿で長時間いることが出来ない。ただ姿を変えただけだというのに、異常な程に消耗してしまう。先ほども交戦の予感がし姿を変えたが、それだけでもかなりの負担であった。
バースのベルトがあれば、グリードの力がなくともある程度は戦う事も出来る。

「ユベルの坊や、一つ確認しても良いかしら」

タンクを立て、蓋を開けそこから一枚のセルメダルを取り出す。

「……」

もしも、ヤミーを生み出せれば手駒としては有用だ。特に殺し合いという場では死にたくないという欲を利用し、セルメダルも大量に稼げることだろう。

「……何かな?」

「いえ……いいわ」

だが、今ユベルからヤミーを生もうとしても何の反応もない。人間ではないからか? いや、それ以前に力そのものが発動しない。無効化されていると考えるのが妥当だ。

「青いメダルも探しといてあげるよ。きみはきみで好きに動くといいさ」

「何を狙っているの? 私にしかメリットがなくて不気味なくらいよ」

「恩を売っておこうと思ってね。殺し合いを破綻させ、乃亜に苦痛を与えられるならそれでも良し、もしそれが不可能なら優勝してこの場の参加者達を血祭りにあげて生還するも良し。
 きみが殺し合いに乗るかどうかは分からないけど、どっちに転んでも僕には損はないじゃないか。それにきみの飢え方は、とても見ていて不憫だったからね。僕としても、何か恵んであげなくちゃと思ってしまったんだ」

ユベルの脳裏を過るのは非常食という言葉。
満たされぬ欲望を満たすために藻掻く怪人、これ以上ないほどに心の闇を深めてくれそうではないか。それは本人もさることながら、その欲を満たすために犠牲にされた人間の闇も。、
だから、ここで支給品を消費して仕込んでおくのも悪くはない。

「……良いわ。何を企んでいるか分からないけど、乗ってあげる」

バースのベルトを強く握り締め、罠であることも覚悟しながらユベルの思惑ごと利用することを決意する。現状、そこまで選択肢もない以上、このベルトを捨てる理由もない。


―――――キミにも愛を与えてあげるよ。痛みを味合わせてあげる。


ふと、ユベルがメズールに気付く前に呟いていた事を思い出した。



「ねえ、貴方は誰かを愛しているの?」

「……藪から棒だねぇ。もしかして、きみが欲している欲望というのは愛なのかな?」

「気紛れよ。でも、愛というのは痛みとは反対のものでしょう? 貴方の独り言を聞いて気になったのよ」

「なるほど、人でない故に人の愛を理解できないんだね。可哀そうに……良いよ、教えてあげる……愛は痛みなんだ……」

反論が出来なかった。知識としてメズールは愛を知っている。そして、愛のグリードであるが為にそれを求めてもいる。だが、求めるが故にメズールには本当の意味で愛が分からない。
子供のようなガメルに母親のように振舞い、女慣れしてない真木清人にそれっぽく翻弄してみせてもいるが、全ては真似事、ユベルの言っていたようにままごとでしかない。
だから、愛が分からない。愛という欲望を満たすためにメダルを集め、完全復活を果たしたとしても……愛し合っている親子を襲い、幽閉し愛を感じながらもやはり満たされぬまま、世界を欲望のまま食い尽くし全てを破壊する。
人間にとって、何よりも身近で、考えるまでもない愛を理解することは永遠に叶わない。

「僕はずっと苦しんできたんだ。十代にロケットに幽閉され宇宙に飛ばされ、そこから更に地球に突入した時……逃げ場のない鉄の檻の中で、全身を焼き尽くす灼熱と苦痛の中でずっと問いかけていたんだ。
 どうしてこんなことをするのって? でも、気付いたんだ。十代は僕が好きなんだよ。だって、僕は苦しんでいる間ずっと十代を忘れる事はなかった。絶対に忘れる事のない痛み、それは愛なんだって……」

「痛みは……愛の形……?」

「ねえ、メズール……きみには居るのかな? 胸が張り裂けそうなほど恋焦がれ、そして同じような苦しみをくれる相手が……居るなら名前を言ってごらんよ。僕には居るよ」

「……」

「遊城十代……誰よりも愛していこの世界で、全宇宙で……何よりも最も愛おしい人……。
 メズール、愛というものは一人では成立しないんだ。愛し合う事こそが、痛みを与え与えられる事、傷つけあう事こそが……愛なんじゃないかな?
 きみも探すと良いよ。きみが愛し、そして愛し返してくれる人を……愛とは二人で作り築き上げていくものなんだから」

これまで、愛という概念を考えてこなかった日はメズールにはきっとなかったことだろう。
だからこそ、メズールは改めて聞かされた愛の解釈に驚嘆もした。
自分一人では成立しない愛という欲望に、グリードは如何な末路を辿ろうとその身が滅ぶか滅ぼされるか、最期は所詮一人でしかない。

「……そう、面白い話を聞けたわ。愛の多様性についても考えなくちゃね。マゾヒストの同性愛者のホモだなんて……グリードよりも欲張りじゃない」

「フフフ……きみも愛を見付けられる日が来ると良いね。……さよなら、また機会があれば会おうよ」

メズールは踵を翻し、背を向け段々と遠くなるユベルの後姿を見つめ続ける。

一人では成立しない愛という解釈、それはまるでグリードである己を否定されているようだった。






【ユベル(加納マルタン)@遊戯王デュエルモンスターズGX】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:十代、愛してるよ。
1:まずは乃亜に反抗する方針で動く。乃亜に屈辱を与え、心の闇を深める。無理そうなら優勝狙いに切り替える。
[備考]
参戦時期は130話内でレインボードラゴンが召喚されて以降、ユベルがマルタンから離れる以前。
制限によりユベルはマルタンから離れられず、肉体が死ねばユベルも死にます。当然、ユベルの精神が死んだ場合、肉体も死にます。
ユベルのダメージ反射は、一定ダメージ以上で反射しきれず無効化されます。能力行使だけでも負担は大きいです。


【メズール@仮面ライダーオーズ】
[状態]:健康
[装備]:バースドライバー&セルメダルの入ったタンク(容量100%)@仮面ライダーオーズ、青のコアメダル(シャチ、ウナギ、タコ各種×2、計6枚)@仮面ライダーオーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]基本方針:欲望を満たす。
1:自分のメダルを探す。殺し合いに乗るかはまだ保留中。
[備考]
参戦時期は45話の完全復活直前。
怪人態への変身は、負担が大きくなっています。ヤミーの生成も不可能です。
コアメダルも一度没収され、再支給されました。支給品一つ分の扱いです。




【バースドライバー&セルメダルの入ったタンク@仮面ライダーオーズ】
仮面ライダーバースに変身可能となるベルト、一度の使用で12時間使用不可能。
セルメダルは消耗品の為、手持ちのセルメダルを使い切った場合も使用不可能となる。

【青のコアメダル】
シャチ、ウナギ、タコ 各種3枚、合計9枚集める事で完全体へと変身可能。ただし完全体になっても液状化して首輪を外すのは不可。

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