「……それで、ロンったら本当にしょうがないんだから。比べて、ハリーはとても勇敢でね」
「ふふふ…分かった。ハーマイオニーはハリーが好きなんだね」
「なっ!? ど…どうしてそうなるのよ!! 違うわ。ハリーとはただの友達で……」
ボレアス・グレイラット邸の脱出から一時間ほどして。
未だ不安の拭えない子供達の為に、フリーレンがヒンメル達や現在旅を共にしているフェルン達の話をした。
釣られて櫻井桃華が活動しているアイドルのあるある話を始め、そこから話が広がっていきハーマイオニーがホグワーツと、それに関わる冒険の話をした。
それを聞いていたフリーレンは、ハリー・ポッターの武勇伝を意気揚々と話すハーマイオニーを見て、疑念を確信へと変えた。
未だ不安の拭えない子供達の為に、フリーレンがヒンメル達や現在旅を共にしているフェルン達の話をした。
釣られて櫻井桃華が活動しているアイドルのあるある話を始め、そこから話が広がっていきハーマイオニーがホグワーツと、それに関わる冒険の話をした。
それを聞いていたフリーレンは、ハリー・ポッターの武勇伝を意気揚々と話すハーマイオニーを見て、疑念を確信へと変えた。
「隠さなくても良いんだよ。そっか、そうかー…」
「もう…! 違うわよ!!」
「もう…! 違うわよ!!」
むふーとしながら、勝ち誇った笑みを浮かべるフリーレンに顔を真っ赤にするハーマイオニー。
その二人のやり取りを眺めながら、桃華は少し首を傾げていた。
その二人のやり取りを眺めながら、桃華は少し首を傾げていた。
「ハーマイオニーさんが好きなのは…ロンさんという方では?」
「僕もそんな感じがしたけど」
「僕もそんな感じがしたけど」
桃華に同意するように、美山写影も頷いた。
それを見て、フリーレンは思う。この二人、逆張り大好きなんだなと。
普通に考えて、ハーマイオニーが好きなのはハリーでしょと。
変な賭け事をして、危ない目に合わなければいいが。
それを見て、フリーレンは思う。この二人、逆張り大好きなんだなと。
普通に考えて、ハーマイオニーが好きなのはハリーでしょと。
変な賭け事をして、危ない目に合わなければいいが。
「二人とも、無謀な賭けをして借金とか背負わないようにね?」
「えぇ……?」
「だから、ロンのことなんて…どうでもいいじゃない…そんなんじゃ」
「えぇ……?」
「だから、ロンのことなんて…どうでもいいじゃない…そんなんじゃ」
ハリーの時より意識してるような口ぶりだった。
―――凄く、分かりやすい反応してるのに気付かないんだ。
桃華と写影が同じことを思っているのにも気づかず、フリーレンはその確信を揺らがす事はなかった。
「もう私の話は良いでしょう!」
「……そうだね。そろそろ朝だ。明るくなったら、辺りを少し調べてみようか」
「……そうだね。そろそろ朝だ。明るくなったら、辺りを少し調べてみようか」
楽しい時間ではあるけれど、それがずっと続くわけではない。
ここは殺し合いの場で、その真っただ中に居るのだから。先程、顔も知らぬ襲撃者から非難し、移動してきたばかりだ。
殺し合いからの脱出のための調査も、行わなければならない。
ここは殺し合いの場で、その真っただ中に居るのだから。先程、顔も知らぬ襲撃者から非難し、移動してきたばかりだ。
殺し合いからの脱出のための調査も、行わなければならない。
「そう…ですわね」
桃華の顔に陰が差した。
必要であることは分かっていても、例えば首輪のサンプルを回収するのなら、それは既に死んだ参加者から取らなくてはならない。参加者の死の容認にもなる。
この島の中を出歩けば、殺し合いに乗った参加者との接触も起こり得る。この家でじっとしていても、事態の好転にはならないのは分かってはいるが、感情としては気が滅入る。
必要であることは分かっていても、例えば首輪のサンプルを回収するのなら、それは既に死んだ参加者から取らなくてはならない。参加者の死の容認にもなる。
この島の中を出歩けば、殺し合いに乗った参加者との接触も起こり得る。この家でじっとしていても、事態の好転にはならないのは分かってはいるが、感情としては気が滅入る。
「大丈夫、暗い顔はしなくていいよ。私が居るんだから」
グレイラット邸から脱した時のように。フリーレンは断言してみせた。
自分が居る限り、ここの子供達には手は出させないと。そう暗に示すように。
ヒンメルがここに居て、不安に駆られた子供達を見たならば、きっとそう言うだろうと。
自分が居る限り、ここの子供達には手は出させないと。そう暗に示すように。
ヒンメルがここに居て、不安に駆られた子供達を見たならば、きっとそう言うだろうと。
「フリーレン」
「―――!」
この場に響くはずのない声が、フリーレンの耳に届いた。
それは既に死したはずの英雄のもの。
容姿は人間換算で70以上までに老いたそれとは違い、髪が奇麗に抜け落ちた頭皮にはサラサラとした髪が生い茂り、背丈も高いまま若さを保ち続けている。
偽物だろうと、フリーレンは瞬時に見破った。
それは既に死したはずの英雄のもの。
容姿は人間換算で70以上までに老いたそれとは違い、髪が奇麗に抜け落ちた頭皮にはサラサラとした髪が生い茂り、背丈も高いまま若さを保ち続けている。
偽物だろうと、フリーレンは瞬時に見破った。
「ヒンメル?
……攻撃を受けたのか」
……攻撃を受けたのか」
グレイラット邸の時と同じように結界を張っていた。
侵入者があれば即座に気付けるはずだったが、相手はそれを易々と破ってきている。
結界に気付いた上で、フリーレンに悟られぬよう逆に結界を改変し、攻撃の当たる距離まで接近してきた。
フリーレンも結界を過信していた訳ではないが、完全に裏をかかれた事になる。
恐るべき強敵だろう。
侵入者があれば即座に気付けるはずだったが、相手はそれを易々と破ってきている。
結界に気付いた上で、フリーレンに悟られぬよう逆に結界を改変し、攻撃の当たる距離まで接近してきた。
フリーレンも結界を過信していた訳ではないが、完全に裏をかかれた事になる。
恐るべき強敵だろう。
「どうしたんだい。そんな顔をして」
―――幻影鬼(アインザーム)に近いか。
目の前のヒンメルの形をしたものには一切返事をせず、過去に交戦した魔物を思い返す。
人を捕食する偏食家の魔物で、相手の記憶を読み取り、大切な人の幻影を作り隙を誘い殺す。
人を捕食する偏食家の魔物で、相手の記憶を読み取り、大切な人の幻影を作り隙を誘い殺す。
「フリーレン」
ヒンメルの手が触れた。
姿形だけではない。物理的な触感すらも再現している。
人の手の柔らかさと、温かみが手を通してフリーレンにも感じ取れた。
記憶を読み取るだけではない。これは、五感にすら干渉されている。
姿形だけではない。物理的な触感すらも再現している。
人の手の柔らかさと、温かみが手を通してフリーレンにも感じ取れた。
記憶を読み取るだけではない。これは、五感にすら干渉されている。
「厄介な―――ッ!?」
腹部に熱い感触が奔る。
それが痛みであると実感した時、目の前のヒンメルが剣を抜いていた。
確かに魔王を倒した勇者ヒンメルならば、これだけの神速を以てフリーレンを殺める事は可能だろう。
激痛に苛まれながら、この不覚を事実として受け止めフリーレンは分析をやめる事はしない。
それが痛みであると実感した時、目の前のヒンメルが剣を抜いていた。
確かに魔王を倒した勇者ヒンメルならば、これだけの神速を以てフリーレンを殺める事は可能だろう。
激痛に苛まれながら、この不覚を事実として受け止めフリーレンは分析をやめる事はしない。
(痛覚まで、かなり忠実に再現しているのか)
先ず目の前のヒンメルは襲撃者が化けたのか、あるいは同行していた写影達をそう見せているのか?
下手に攻撃を仕掛けて、同士討ちを狙うのなら更に面倒な事になってくる。
下手に攻撃を仕掛けて、同士討ちを狙うのなら更に面倒な事になってくる。
(凄い痛いけど、我慢してかなり集中すれば、手に杖の感触が戻ってくる…)
強く意識すれば、手には杖の感触が蘇ってくる。視界には写らないが、間違いなく王の杖はフリーレンの手にある。
強力な幻覚だが、反面強く精神を保ち続けていれば幻覚は幻覚であると、見破る事は難しくはない。
強力な幻覚だが、反面強く精神を保ち続けていれば幻覚は幻覚であると、見破る事は難しくはない。
(王の杖が使えれば話は早かったんだけど)
魔法を打ち消すこの杖が本領を発揮さえすれば、既にこの魔法を解除していたところだ。
初戦から、これを使わざるを得ないシャルティアという最上位の強さを持つ相手と出くわしたことを、心底災難に想う。
初戦から、これを使わざるを得ないシャルティアという最上位の強さを持つ相手と出くわしたことを、心底災難に想う。
(現実にある杖の感触……これはイメージとしては悪くない。試してみるか)
魔法はイメージの世界だ。
僅かだが、杖の感触はフリーレンにとっては大きな現実との?がりだ。これを辿る事で、現実の世界に戻るイメージを構築しやすい。
僅かだが、杖の感触はフリーレンにとっては大きな現実との?がりだ。これを辿る事で、現実の世界に戻るイメージを構築しやすい。
「きみは僕に会いに来てくれなかったね」
どんな窮地に陥ろうと、決して冷静さを損なわないフリーレンの思考が止まった。
「50年だ」
この手の魔族や魔物の搦手は散々知り尽くしている。
ただ、言葉を模倣しているだけだ。それが人の隙になると、分かっていれば獣の鳴き声となんら変わらない。
それでも言葉である限り、人はそれを脳で理解しようとしてしまう。フリーレンとて、長寿故に表に出す事は少ないが、感情はある。
だが同時に魔族の言動など、取り合う必要などないと完全に割り切ってもいる。その為、感情を揺さぶられようと、それが致命的な動揺や隙に繋がる事はない。
ただ、言葉を模倣しているだけだ。それが人の隙になると、分かっていれば獣の鳴き声となんら変わらない。
それでも言葉である限り、人はそれを脳で理解しようとしてしまう。フリーレンとて、長寿故に表に出す事は少ないが、感情はある。
だが同時に魔族の言動など、取り合う必要などないと完全に割り切ってもいる。その為、感情を揺さぶられようと、それが致命的な動揺や隙に繋がる事はない。
「僕はきみをずっと、待ち続けていたというのに。
もっと、話したいこともあったんだ」
もっと、話したいこともあったんだ」
「……」
だがこれは違う。
この魔法の使い手は魔族ではない。人だ。心を理解し、そして弄び嬲る事に特化した人間だ。
この魔法の使い手は魔族ではない。人だ。心を理解し、そして弄び嬲る事に特化した人間だ。
「きみに比べて、僕達の寿命が短いことぐらい分かっていたんだろう」
これは幻覚に過ぎない。
全ては、偽りのまぼろしだ。
全ては、偽りのまぼろしだ。
「本当に薄情だな」
頭では理解している。それなのに、フリーレンの大きな悔いを抉るようにヒンメルの口から、恨みの籠ったような声が漏れる。
ただの声が。魔族の言葉なぞに、惑わされることもなくなったはずのフリーレンにとって、それは剣に刺された激痛よりも尚も鋭く、その身を貫くようだった。
ただの模倣なら、言葉を習い人を学習し動揺を誘う魔族の典型的な手法であれば。
フリーレンが怒りこそ覚えても、その心にまで傷を刻み込まれるはずはないのに。
ただの声が。魔族の言葉なぞに、惑わされることもなくなったはずのフリーレンにとって、それは剣に刺された激痛よりも尚も鋭く、その身を貫くようだった。
ただの模倣なら、言葉を習い人を学習し動揺を誘う魔族の典型的な手法であれば。
フリーレンが怒りこそ覚えても、その心にまで傷を刻み込まれるはずはないのに。
「…思いの他、堪えるな」
呟き、そのままフリーレンは目を閉じた。
―――
(高度な結界を張る術師ではあったけれど、思いのほか楽に仕留められたわね)
幻惑の中に囚われた子供達とフリーレンを眺めながら、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターは退屈そうにしていた。
最初にこの民家の周囲に結界を察知した時点で、少なくとも数時間前に矛を交えた魔術師ロキシー・ミグルティアに匹敵か、更にそれ以上の使い手が居ると予測できた。
丁度いいタイミングだ。幻燈結界の制限の確認も行いたく、相手も相応の実力者であるなら実験動物としても丁度いい。
効果範囲が絞られている為、適用範囲にまで近づけるよう結界に細工し気付かれずに接敵するまでに、些か手を焼いたが、結果としてこちらに気取られずに幻燈結界の発動に成功した。
最初にこの民家の周囲に結界を察知した時点で、少なくとも数時間前に矛を交えた魔術師ロキシー・ミグルティアに匹敵か、更にそれ以上の使い手が居ると予測できた。
丁度いいタイミングだ。幻燈結界の制限の確認も行いたく、相手も相応の実力者であるなら実験動物としても丁度いい。
効果範囲が絞られている為、適用範囲にまで近づけるよう結界に細工し気付かれずに接敵するまでに、些か手を焼いたが、結果としてこちらに気取られずに幻燈結界の発動に成功した。
(あとは…維持の時間も短くなっているか)
これも予想はしていたが、常時発動させることは叶わず、時間の経過で強制解除されるようだ。
発動までに多量の魔力と溜めが要るとはいえ、それを維持し続けれることが可能であれば、ゲームバランスを崩壊させるおそれがあるからだろう。
そう易々と制限を重ねる乃亜の力に、最早呆れすらしてきたものだ。どのような手段を用いたのだろうか。
発動までに多量の魔力と溜めが要るとはいえ、それを維持し続けれることが可能であれば、ゲームバランスを崩壊させるおそれがあるからだろう。
そう易々と制限を重ねる乃亜の力に、最早呆れすらしてきたものだ。どのような手段を用いたのだろうか。
(さっさと、始末して終わりにしましょうか)
普段ならもう少し甚振り、相手の苦悶の表情を嘲りながら惨たらしく殺していたが、時間の制約がある以上は遊んでいる暇もない。のび太や羽蛾と違い、個人的にも特に何の感情も抱いていないのだから。
だから、ある意味幸運なのだろう。
これ以上、悪夢の中で親しい人や大切な思い出を汚され蹂躙され尽くされる前に、リーゼロッテの炎に包まれて焼き死ねることは。
魔女の惨殺方法の中では、まだ楽な死に方だ。
だから、ある意味幸運なのだろう。
これ以上、悪夢の中で親しい人や大切な思い出を汚され蹂躙され尽くされる前に、リーゼロッテの炎に包まれて焼き死ねることは。
魔女の惨殺方法の中では、まだ楽な死に方だ。
「さあ、お休みなさい」
軽い動作で手を翳し、そこから黒い炎が広がっていく。
炎は民家全体を包み込むほどの大きさにまで増大し―――。
炎は民家全体を包み込むほどの大きさにまで増大し―――。
―――地獄の業火を放つ魔法(ヴォルザンベル)
ほぼ同じ規模の炎が放たれ、黒炎が相殺された。
「粗悪な魔法だ。幻覚の出来も悪い。お前の悪趣味さが滲み過ぎだ」
衝突した炎同士が消失し、その中心に立っている少女。
「本物との遜色のなさだけでいえば、幻影鬼のほうが優れていた」
フリーレンは黒魔術の最高峰たる幻燈結界を貶してみせた。
「あの炎、面白い魔術ね。私の知るそれとは体系も異なる。
強いイメージの具現化かしら」
強いイメージの具現化かしら」
(地獄の業火を放つ魔法を見ただけで、そこまで見破ったのか。やり辛いな)
「幻燈結界をどう破ったの?」
「魔法はイメージの世界だ。幻覚の中でも、私の手には杖の感触が残されていた。
現実世界に戻るには、十分な想像材料になる」
現実世界に戻るには、十分な想像材料になる」
これは大きな失態だと、リーゼロッテは受け入れた。
幻燈結界の行使下において、フリーレンが杖の感触を取り戻したこと。
それが唯一にして、そして最大の抜け穴となったのだろう。リーゼロッテの収めた魔術とは別の体系で発展した魔法であるが為に、その致命的な隙に気付けなかった。
幻燈結界の行使下において、フリーレンが杖の感触を取り戻したこと。
それが唯一にして、そして最大の抜け穴となったのだろう。リーゼロッテの収めた魔術とは別の体系で発展した魔法であるが為に、その致命的な隙に気付けなかった。
「だとしても…そんなものをイメージさせられるほど、温い幻覚ではなかったはずだけれど」
「……種族の違いで人よりも、エルフには効き目が薄かったんだろう」
幻燈結界はあくまで心を殺す魔術。人であれば耐えられないその責め苦も、人類ではあるが人ではないエルフならば耐えられる。
感情が希薄であるエルフだからこそ、人間であれば精神を崩壊させる幻燈結界内にて常に冷静さを維持し続けられた。
感情が希薄であるエルフだからこそ、人間であれば精神を崩壊させる幻燈結界内にて常に冷静さを維持し続けられた。
(まあ、本当は魔法の解除自体は支給品を使ったんだけど…流石に初めて見た、これだけの大魔法を数分で解析は無理だし。
私の言っている事を真に受けて、私には幻覚が効かないとイメージしてくれれば、大分楽になるんだけど)
私の言っている事を真に受けて、私には幻覚が効かないとイメージしてくれれば、大分楽になるんだけど)
より正確には、フリーレンは杖の感触から懐に忍ばせていたもう一つの支給品を強くイメージし、幻覚世界の中でそれを取り出し発動することに成功させた。
フリーレンに支給された玩具のような複数枚のカードの内の一つ。
そのまんま、イラストと共に魔法解除と描かれたカード。効果も名の通り、あらゆる魔法を打ち消す強力なものだ。
王の杖といい、乃亜のフリーレンに期待する立ち回りを察することが出来る。その通りに動かざるを得ないことに、あまり良い気もしない。
フリーレンに支給された玩具のような複数枚のカードの内の一つ。
そのまんま、イラストと共に魔法解除と描かれたカード。効果も名の通り、あらゆる魔法を打ち消す強力なものだ。
王の杖といい、乃亜のフリーレンに期待する立ち回りを察することが出来る。その通りに動かざるを得ないことに、あまり良い気もしない。
「所詮は人外(エルフ)か。
人の心などありはしないというわけね」
人の心などありはしないというわけね」
後に辿る正史では、皐月駆により同じく幻燈結界を突破された際には激しく動揺したものの、今のリーゼロッテは制限下にある為、これも想定内であった。
「あのヒンメルとかいう勇者の坊やも可哀そうに。
貴女なんかの為に50年も無駄にして、こんな、心を持たない―――」
貴女なんかの為に50年も無駄にして、こんな、心を持たない―――」
―――地獄の業火を放つ魔法(ヴォルザンベル)
業火を放ち、その先の言葉を紡がせはしなかった。
リーゼロッテは魔法陣の障壁を張りながら、その黒のドレスに僅かな焦げ目を付けた以外は無傷で立っている。
フリーレンもこの一撃でが有効だとは思わない。だが、聞いていて勘に触った。
リーゼロッテは魔法陣の障壁を張りながら、その黒のドレスに僅かな焦げ目を付けた以外は無傷で立っている。
フリーレンもこの一撃でが有効だとは思わない。だが、聞いていて勘に触った。
「お前がヒンメルを語るな」
気に入らない。
あんなもので、ヒンメルを知った気でいることに腹が立つ。
あんなもので、ヒンメルを知った気でいることに腹が立つ。
『撃て』
本物かそれを忠実に再現したヒンメルなら、そう言うとフリーレンは知っていたからだ。
「貴女こそ、何年も共にいたのに、あの坊やを語れないでしょう?」
魔族以上に悪意と嘲りを込めて、魔女は微笑を返した。
同じ人類だからこそ、より急所を突いてくる。
同じ人類だからこそ、より急所を突いてくる。
「魔族より、質の悪い女だ」
全く、酷く不快だ。フリーレンは心中で舌打ちをしていた。
冷静さは損なわず、だが心には明確な怒りを。それは魔族の動揺を誘う、表面をなぞっただけの言葉ではなく、生きた人間が人の心も感情も理解しているからこその、純粋な言葉の暴力だ。
あの魔女はそれを繰り返してきたのだろう。魔族ですら、基本的には捕食という目的があり、その為に策を弄する。生きて行く為の手段の一つでしかない。
けれども、リーゼロッテは違う。ただ愉しみと暇つぶしの為だけに、平然と人を貶め傷付け殺めている。まさしく生きた災厄だ。
冷静さは損なわず、だが心には明確な怒りを。それは魔族の動揺を誘う、表面をなぞっただけの言葉ではなく、生きた人間が人の心も感情も理解しているからこその、純粋な言葉の暴力だ。
あの魔女はそれを繰り返してきたのだろう。魔族ですら、基本的には捕食という目的があり、その為に策を弄する。生きて行く為の手段の一つでしかない。
けれども、リーゼロッテは違う。ただ愉しみと暇つぶしの為だけに、平然と人を貶め傷付け殺めている。まさしく生きた災厄だ。
「みんな、目は覚めた?」
僅かに後ろを見る。
幻覚から覚め写影達が頭を抑えながら、現実の世界へと帰還してきていた。
貶しこそしたが、幻燈結界はおぞましくも恐ろしい魔法だ。
乃亜が課した制限下にあった為に、その拘束力が低下していた。さらにフリーレンが通常の人間ではない為に、効き目が落ちていたのはあるだろうが。
もしも、万全の状態で行使されれば、フリーレンも突破に手間取るか下手をすれば幻覚に囚われたまま、写影達は幻覚の中で苦痛を味合わせられながら、悲惨な死を遂げていたに違いない。
幻覚から覚め写影達が頭を抑えながら、現実の世界へと帰還してきていた。
貶しこそしたが、幻燈結界はおぞましくも恐ろしい魔法だ。
乃亜が課した制限下にあった為に、その拘束力が低下していた。さらにフリーレンが通常の人間ではない為に、効き目が落ちていたのはあるだろうが。
もしも、万全の状態で行使されれば、フリーレンも突破に手間取るか下手をすれば幻覚に囚われたまま、写影達は幻覚の中で苦痛を味合わせられながら、悲惨な死を遂げていたに違いない。
「……いまの、なんでしたの…バンジーの紐が切れて、落下していくのが」
「桃華、今のはきっと悪い夢なんだ。映画館のあのマジシャンの時みたいに」
「冷静ね…貴方、あんなもの見て……私…ロンに磔の呪文を……」
「二度目だから、少し慣れたんだよ。……少しフリーレンから離れよう」
「桃華、今のはきっと悪い夢なんだ。映画館のあのマジシャンの時みたいに」
「冷静ね…貴方、あんなもの見て……私…ロンに磔の呪文を……」
「二度目だから、少し慣れたんだよ。……少しフリーレンから離れよう」
写影もここに来て、こんな短時間に二度も幻覚を食らわされるとは思いもよらなかった。
だが二度目だけあって、写影はこの手の悪夢に耐性のようなものが出来たのか、すぐに受け入れ、目が覚めてから意識を切り替えるのは誰よりも早い。
現実に引き戻されても狼狽えていた二人を落ち着かせ、それでいてフリーレンの邪魔にならないよう距離を空けた。
だが二度目だけあって、写影はこの手の悪夢に耐性のようなものが出来たのか、すぐに受け入れ、目が覚めてから意識を切り替えるのは誰よりも早い。
現実に引き戻されても狼狽えていた二人を落ち着かせ、それでいてフリーレンの邪魔にならないよう距離を空けた。
「良い判断だ。
絶対に今は手を出さないで」
絶対に今は手を出さないで」
「わ…分かったわ…フリーレン」
動揺したハーマイオニーだが、その意味をすぐに理解した。
(なんなの…この人達……)
二人の魔法使いを前にして、頭から冷水を掛けられたように寒気がする。
一目で格の違いを思い知らされたのだ。例えれば、ダンブルドアが二人いてこれから殺し合うかのような。そんな緊張感を覚えた。
写影や桃華は支給品の力で特殊な力を得て、歳の割に機転も利いて高い頭脳も度胸もある。
ハーマイオニーだって、追い込まれこそしたが単独でヘンゼルに対処してここまで一人で生き残れるほど、子供としては高い魔法の才覚がある。
けれども、そんなものでは一切太刀打ちできない程に。
この二人は、自分達とは遥かに次元が違うところにいるのだ。それをこの中で誰よりもはっきりと明確に、ハーマイオニーは理解してしまった。
一目で格の違いを思い知らされたのだ。例えれば、ダンブルドアが二人いてこれから殺し合うかのような。そんな緊張感を覚えた。
写影や桃華は支給品の力で特殊な力を得て、歳の割に機転も利いて高い頭脳も度胸もある。
ハーマイオニーだって、追い込まれこそしたが単独でヘンゼルに対処してここまで一人で生き残れるほど、子供としては高い魔法の才覚がある。
けれども、そんなものでは一切太刀打ちできない程に。
この二人は、自分達とは遥かに次元が違うところにいるのだ。それをこの中で誰よりもはっきりと明確に、ハーマイオニーは理解してしまった。
「四人掛かりでも構わないわよ?」
「お前は、とても悪辣だ。存在し息をするだけで意味もなく害をなす」
リーゼロッテの意識が、全てフリーレンに向けられている事を確認する。
この挑発と煽りを込めた言葉にリーゼロッテは思いの外、その心に刺さったようだ。
これで、交戦中に写影達にヘイトが向く可能性は低くなった。懸念すべき対象が減る事で、フリーレンも戦いやすくなる。
この挑発と煽りを込めた言葉にリーゼロッテは思いの外、その心に刺さったようだ。
これで、交戦中に写影達にヘイトが向く可能性は低くなった。懸念すべき対象が減る事で、フリーレンも戦いやすくなる。
「お前は私が葬送する」
最後のダメ出しとして、敢えて自らの二つ名を口にし眼前の魔女へと宣戦布告する。
敵は自分一人であると、宣言するように。
敵は自分一人であると、宣言するように。
「私を葬るか、面白いわ。貴女―――とても面白いわよ」
乗ってきたと、フリーレンは確信をより強めた。今の眼中には自分しか写っていないと。
同時にここからが修羅場だと、フリーレンはより強く身構えた。
同時にここからが修羅場だと、フリーレンはより強く身構えた。
「教えてあげるわ。私はリーゼロッテ・ヴェルクマイスター、人類鏖殺を願うバビロンの魔女。
世界を救った勇者の仲間が、世界を滅ぼさんとする魔女を葬る……。
良い皮肉よ。少しは、愉しませなさい」
世界を救った勇者の仲間が、世界を滅ぼさんとする魔女を葬る……。
良い皮肉よ。少しは、愉しませなさい」
「……そうか、馬鹿げた願いだ」
魔王を倒した勇者一行の一人にして、歴史上最も多くの魔族を葬り去った魔法使い。
神を呪い、世界に災厄を振り撒いた不老不死にして、欧州最強最古の魔女。
それぞれの世界において、間違いなく伝説として謳われた魔道の高みへと昇りついた二者が対峙し、二つの獄炎が世界を染め上げるように迸り、激突した。
神を呪い、世界に災厄を振り撒いた不老不死にして、欧州最強最古の魔女。
それぞれの世界において、間違いなく伝説として謳われた魔道の高みへと昇りついた二者が対峙し、二つの獄炎が世界を染め上げるように迸り、激突した。
―――
(こいつの魔力…)
数十の炎を放ち、その全てを相殺されながらリーゼロッテは、訝しげにフリーレンを見つめる。
交戦の中で僅かな魔力の揺らめきがリーゼロッテに違和感を覚えさせた。
非常に自然な魔力の流れだが、本当に注視しなければ分からぬほどに、僅かな揺らめきが見える。
様子見にいくつかの炎を放ってみたが、フリーレンは容易に対処してみせていた。
交戦の中で僅かな魔力の揺らめきがリーゼロッテに違和感を覚えさせた。
非常に自然な魔力の流れだが、本当に注視しなければ分からぬほどに、僅かな揺らめきが見える。
様子見にいくつかの炎を放ってみたが、フリーレンは容易に対処してみせていた。
「変わった技術を体得したのね。魔力を誤認させるだなんて」
「なんのことだか」
「とぼけなくていいわ。それに貴女、見た目以上に年増でしょう」
魔王のように一目でないとはいえ、片手で数えるだけの魔法の応酬を見ただけで、フリーレンの魔力制御を見破ってきた。
これだけで、かつて戦ってきた魔法使いの中でも最上位に位置する使い手だと認めざるを得ない。
それにフリーレンの技量から、研鑽した年数も逆算までしてきた。豊富な魔法の知識と、高い技術と分析力を持つことに他ならない。
これだけで、かつて戦ってきた魔法使いの中でも最上位に位置する使い手だと認めざるを得ない。
それにフリーレンの技量から、研鑽した年数も逆算までしてきた。豊富な魔法の知識と、高い技術と分析力を持つことに他ならない。
(あの女、魔法の使い方から見て800歳といったところか、私より200以上歳は若いけど…腕は良い)
心の奥底でシュタルクのババア呼びに対して刻んだのと同じように、リーゼロッテにも密かにカウントを一つ加算しながらフリーレンも分析を続ける。
「ッ!?」
自らに迫る炎を、防御魔法で生成したガラスのような障壁を展開し防ぐ。だが、その中の一つの火球がフリーレンの足元へと飛び、爆散する。
火球が弾けた勢いに乗り、砕けた床の破片が防御魔法を貫通した。
火球が弾けた勢いに乗り、砕けた床の破片が防御魔法を貫通した。
(防御魔法の弱点に気付かれたか)
フリーレンの頬に一筋のかすり傷が付く。
彼女の世界の防御魔法は、魔法に対しては鉄壁の防御だが反面物理攻撃には脆弱だ。
彼女の世界の防御魔法は、魔法に対しては鉄壁の防御だが反面物理攻撃には脆弱だ。
(それでも、並の戦士や魔物の物理攻撃位なら防げるのに。余波だけで、とんでもない威力だ。
魔力量も規格外で、出鱈目過ぎる)
魔力量も規格外で、出鱈目過ぎる)
魔力の流れを視認する内に、リーゼロッテの胎内に特殊な魔力の源があるのが確認できた。
何かの特殊なアイテムを埋め込んだのだろう。そこから、無尽蔵の魔力が供給されている。
フリーレンも膨大な魔力を持つが、上限は有限だ。必ず限界が来る。
だがリーゼロッテは無限の魔力を自在に行使可能だ。制限もあってか出力は大分下げられているようだが、高い火力という優位性は損なっていない。
何かの特殊なアイテムを埋め込んだのだろう。そこから、無尽蔵の魔力が供給されている。
フリーレンも膨大な魔力を持つが、上限は有限だ。必ず限界が来る。
だがリーゼロッテは無限の魔力を自在に行使可能だ。制限もあってか出力は大分下げられているようだが、高い火力という優位性は損なっていない。
(早めにケリを着けないと、不味い)
時間はあまり掛けられない。有限(フリーレン)が無限(リーゼロッテ)と戦い続ければ、いずれ魔力切れを起こすのはどちらかは自明の理。
より的確により精密に、攻防の中の僅かな隙を見出し即座に仕留める。
より的確により精密に、攻防の中の僅かな隙を見出し即座に仕留める。
―――人を殺す魔法(ゾルトラーク)
余波で巻き上げられた破片を避けつつ、杖を一振りし光線を射出する。
かつて、魔王軍の魔法使い腐敗の賢老クヴァールが開発した貫通魔法。
今でこそ一般魔法として解析、解明され尽くされ魔法使いの間で浸透したものの、あらゆる防御を無視し、数多の人間を屠り去った凶悪な魔法であることに変わりはない。
それもあくまで、フリーレンの世界においての話であり、一切の対応策もない初見であるならばその脅威性が揺らぐこともない。
今でこそ一般魔法として解析、解明され尽くされ魔法使いの間で浸透したものの、あらゆる防御を無視し、数多の人間を屠り去った凶悪な魔法であることに変わりはない。
それもあくまで、フリーレンの世界においての話であり、一切の対応策もない初見であるならばその脅威性が揺らぐこともない。
リーゼロッテが魔法陣の障壁を展開し、それを光線が貫通し胸を光線が貫いた。
「素晴らしい魔術ね。
速さ、防御の貫通、優れた汎用性……これほど洗練された、美しい魔術を私は知らないわ。
貴女が作ったの?」
速さ、防御の貫通、優れた汎用性……これほど洗練された、美しい魔術を私は知らないわ。
貴女が作ったの?」
リーゼロッテは胸に風穴を開けながら、心底興味深そうに尋ねてきた。
胸の傷が修復を始めているのを見て、フリーレンは相手が数百年歳を重ねた理由を理解した。
胎内にあるアイテムが彼女に魔力と、そして不老不死の肉体を与えている。
胸の傷が修復を始めているのを見て、フリーレンは相手が数百年歳を重ねた理由を理解した。
胎内にあるアイテムが彼女に魔力と、そして不老不死の肉体を与えている。
(不死身か…)
如何な負傷も再生する為、急所を貫こうが、生半可な攻撃だけでは殺し切れない。
「きっと、それを作った奴も地獄の底で喜んでいるだろうね」
「そう、死んだのね…一目会ってみたかったけれど」
―――私の記憶を何処まで、読んでいる?
リーゼロッテの会話の節々で、フリーレンが注視したのはそれだった。
ヒンメルを幻覚で再現した以上、自分が勇者の一行として魔王を撃破した事は知られているのは確実。
では、フリーレンが使用する魔法は? 重要なのは、フリーレンの手札がどれだけ筒抜けになっているか。
ヒンメルを幻覚で再現した以上、自分が勇者の一行として魔王を撃破した事は知られているのは確実。
では、フリーレンが使用する魔法は? 重要なのは、フリーレンの手札がどれだけ筒抜けになっているか。
(現実の時間と幻覚世界がリンクしているかは分からないが、まだ日は昇り切っていない。
そう長い時間掛かっていたわけじゃないな)
そう長い時間掛かっていたわけじゃないな)
人を殺す魔法やそれを開発したクヴァールに触れた言い様からして、それらを知っている様子はなかった。
あくまで悪夢を見せる為にフリーレンの名前と、ヒンメル絡みの記憶を僅かに引き出したのだろう。
記憶を見たとしても、数分ほどの短時間でフリーレンの千年以上の人生を全て把握するのは現実的とも思えない。
リーゼロッテの幻覚の使い方から考えても、対象のトラウマなどをピンポイントで引き出し、心の傷を抉るのを好んでいる。
それらに必要がない情報は然程知られていないと、考えても良いだろう。
あくまで悪夢を見せる為にフリーレンの名前と、ヒンメル絡みの記憶を僅かに引き出したのだろう。
記憶を見たとしても、数分ほどの短時間でフリーレンの千年以上の人生を全て把握するのは現実的とも思えない。
リーゼロッテの幻覚の使い方から考えても、対象のトラウマなどをピンポイントで引き出し、心の傷を抉るのを好んでいる。
それらに必要がない情報は然程知られていないと、考えても良いだろう。
(私の使う魔法が全て読まれていないのなら、少しは付け入る隙もあるか)
無論、リーゼロッテが全てを知った上でわざとフリーレンをそう誘導した可能性もある。
だがそれも考慮した検証も重ねた結果、その可能性は低いと結論を出す。
だがそれも考慮した検証も重ねた結果、その可能性は低いと結論を出す。
―――地獄の業火を放つ魔法(ヴォルザンベル)
「またそれなの? もっと別の魔術を見せなさいな!!」
高い威力だ。規模も大きいの炎の魔術だが、火の魔術を得手とする彼女にとっては
小火にも等しい。
人を殺す魔法に比べ速度も遥かに劣っている。
避けるのも当然、防ぐのも容易だがリーゼロッテは敢えて何の処置も施さないまま、生身を晒し自ら炎へと突っ込む。
全身を炎が蝕み、高熱が肌を溶かす激痛を味わいながら、その足は止まる事はせず炎を突き破りフリーレンへと肉薄する。
再生を終えた顔面に笑みを浮かべ、右手から伸びた黒の爪を振り下ろす。
小火にも等しい。
人を殺す魔法に比べ速度も遥かに劣っている。
避けるのも当然、防ぐのも容易だがリーゼロッテは敢えて何の処置も施さないまま、生身を晒し自ら炎へと突っ込む。
全身を炎が蝕み、高熱が肌を溶かす激痛を味わいながら、その足は止まる事はせず炎を突き破りフリーレンへと肉薄する。
再生を終えた顔面に笑みを浮かべ、右手から伸びた黒の爪を振り下ろす。
(前衛もこなせるのか)
杖を構えその斬撃を受け切り、続く追撃を後方に飛び退き回避する。
背後の壁を魔法で粉砕し、フリーレンは屋外へと飛び出す。
同じく後を追い、リーゼロッテが振るった爪の斬撃を飛行魔法で上昇し避ける。そのまま、フリーレンは上空から、複数の人を殺す魔法の光線を放った。
それは左肩を貫き、右の膝を砕き、リーゼロッテを僅かに跪かせる。一瞬垂れた首を狙い、無数の光線が迸る。
残された右手を翳し、炎の波を拡散するように空へと打ち上げる。光線の軌道は炎との接触により僅かに逸れ、リーゼロッテの首の真横をすり抜けた。
背後の壁を魔法で粉砕し、フリーレンは屋外へと飛び出す。
同じく後を追い、リーゼロッテが振るった爪の斬撃を飛行魔法で上昇し避ける。そのまま、フリーレンは上空から、複数の人を殺す魔法の光線を放った。
それは左肩を貫き、右の膝を砕き、リーゼロッテを僅かに跪かせる。一瞬垂れた首を狙い、無数の光線が迸る。
残された右手を翳し、炎の波を拡散するように空へと打ち上げる。光線の軌道は炎との接触により僅かに逸れ、リーゼロッテの首の真横をすり抜けた。
「貫通するのなら、逸らすのも有効のようね」
その刹那、違和感に気付き首を傾け、光線が横切る。そして腹部に焼けるような痛みを覚える。
もう一つの光線がリーゼロッテの腹部を貫通していた。
もう一つの光線がリーゼロッテの腹部を貫通していた。
「……なるほど」
避けた光線が軌道を修正し、追尾してきている。
担い手の意識のまま、その動きを反映するのだろう。
縦横無尽に展開した光線が、相手を狙い定め着弾までお追い続ける。まるで呪いの魔弾のように。
担い手の意識のまま、その動きを反映するのだろう。
縦横無尽に展開した光線が、相手を狙い定め着弾までお追い続ける。まるで呪いの魔弾のように。
「避け続けるのも面倒だし」
再生された左手と右手を翳し、魔法陣を形成する。そこから面で攻めるよう範囲を大きくした黒炎を放出した。
「貫通など出来ない程、圧縮した魔力で飲み込んでくれるわ」
より濃密に魔力を圧縮させた炎は光線を飲み込み、瞬く間に消失させていく。
ゾルトラークに対する単純にして明快で最善の回答だ。
その身に埋め込まれた虚無(クリフォト)の魔石の膨大な魔力を存分に発揮し、攻撃魔術を行使しゾルトラークが貫通する前に多量の魔力の塊で圧殺する。
ゾルトラークに対する単純にして明快で最善の回答だ。
その身に埋め込まれた虚無(クリフォト)の魔石の膨大な魔力を存分に発揮し、攻撃魔術を行使しゾルトラークが貫通する前に多量の魔力の塊で圧殺する。
(魔力切れを無視して攻撃されるのが、これだけ厄介とは)
魔法の論理的解明を放棄した、もっとも原始的な解決策。
貫通しきれない程の強大な魔力で理不尽捻じ伏せる。
ただ、そんな芸当が出来るのは無限の魔力を持つ、リーゼロッテくらいのもの。
貫通しきれない程の強大な魔力で理不尽捻じ伏せる。
ただ、そんな芸当が出来るのは無限の魔力を持つ、リーゼロッテくらいのもの。
……あるいは、全知全能の女神に最も近いとされる神話の大魔法使いゼーリエならば、可能かもしれないが。
(本当に嫌な相手だ)
フリーレンの魔法を全て炎で薙ぎ払いながら、リーゼロッテはその侵攻を緩めない。
同じく空を舞い上がり、じわじわと距離を詰め逃げ場を潰し、フリーレンを追い込む。
同じく空を舞い上がり、じわじわと距離を詰め逃げ場を潰し、フリーレンを追い込む。
(でも、こいつ攻撃には長けてるが、防御は下手だ)
ここまで三度、人を殺す魔法を当てている。
一度目は胸という急所を、二度目は肩を三度目は膝を。
あまりにも迂闊過ぎだ。魔法使いに限らず、死地で戦いに身を置く者であれば、決してありえない。
それら全てが死に直結することを、長年の戦いを経験した猛者であればあるほど、知っている。
魔族も人も例外なく、必ず避けなければならないと頭に体に技に本能に刻み込む。
一度目は胸という急所を、二度目は肩を三度目は膝を。
あまりにも迂闊過ぎだ。魔法使いに限らず、死地で戦いに身を置く者であれば、決してありえない。
それら全てが死に直結することを、長年の戦いを経験した猛者であればあるほど、知っている。
魔族も人も例外なく、必ず避けなければならないと頭に体に技に本能に刻み込む。
だが不死身の体ならば別だ。
如何なる傷も癒すのであれば、避ける必要も防ぐ必要もない。
その為、防御という概念が欠落している。
その為、防御という概念が欠落している。
(だが、膝を潰した時、首を狙った攻撃だけは避けようとしていた。やはり、首輪周りは再生力を強く制限されているのかもしれない。そうでなければ、乃亜が首輪の爆破で奴を殺す事も出来ない)
明確な欠点と弱点が明らかになれば、勝ち筋もいくつか見えてきた。
「ッ!?」
お互いの魔法を打ち合いながら距離を詰め、リーゼロッテの振るう爪を杖でいなす。
「小競り合いも飽きたわ。そろそろ、貴女の中にある臓腑を見せて貰おうかしら」
数度の打ち合いで、フリーレンの杖が爪に跳ね除けられた。
杖はフリーレンから離れ、虚空を舞う。
手元から杖を離した事で、盾とする杖を失ったフリーレンにリーゼロッテはその爪を突き立て―――。
杖はフリーレンから離れ、虚空を舞う。
手元から杖を離した事で、盾とする杖を失ったフリーレンにリーゼロッテはその爪を突き立て―――。
「ヴェラード……?」
フリーレンに触れる寸前、その姿が変わった。
世界で唯一、愛を誓った筈の男が目の前にいた。
生前と変わらぬ険しい目つきと、使い込んだ鎧を纏って。
そしてそれが偽りであることは分かっていた。同じだからだ。自らも同じ、幻覚を見せ惑わせていたのだから。
世界で唯一、愛を誓った筈の男が目の前にいた。
生前と変わらぬ険しい目つきと、使い込んだ鎧を纏って。
そしてそれが偽りであることは分かっていた。同じだからだ。自らも同じ、幻覚を見せ惑わせていたのだから。
「ぐ…っ」
上空のフリーレンとリーゼロッテの下、写影が鼻血を手で止めながら帝具の力を解放していた。
五視万能『スペクテッド』の奥の手、それは対象が最も愛する者を見せる能力。
例えそれがバビロンの魔女であろうと、人である以上は、悠久の時の中から最も愛した者を白日の下に晒す事となる。
それこそが、リーゼロッテが人類鏖殺を引き継いだ宿願の主、金眼の魔王ヴェラード。
五視万能『スペクテッド』の奥の手、それは対象が最も愛する者を見せる能力。
例えそれがバビロンの魔女であろうと、人である以上は、悠久の時の中から最も愛した者を白日の下に晒す事となる。
それこそが、リーゼロッテが人類鏖殺を引き継いだ宿願の主、金眼の魔王ヴェラード。
「―――」
分かっている。姿形だけを似せただけだ。これは、あのフリーレンに他ならない。
あの下に居る少年が奇妙な道具に力を借りて、自分に見せた幻覚に過ぎない。分かっている。
あの下に居る少年が奇妙な道具に力を借りて、自分に見せた幻覚に過ぎない。分かっている。
先にフリーレンを引き裂けばいい。この場の脅威はこの女だけだ。
その後に、子供達を嬲り殺しにして痰飲を下げればいい。
その後に、子供達を嬲り殺しにして痰飲を下げればいい。
だが、リーゼロッテの手は写影へと向けられていた。
魔法陣が形成され、ただの子度を殺すにはあまりにも多量の魔力を込め、黒炎が練り上げられる。
この瞬間、彼女は合理性よりその激情に身を任せてしまった。
魔法陣が形成され、ただの子度を殺すにはあまりにも多量の魔力を込め、黒炎が練り上げられる。
この瞬間、彼女は合理性よりその激情に身を任せてしまった。
「ハーマイオニー!!」
そして、その未来を写影は予知していた。
名を呼ばれたハーマイオニーもそれが分かっていたかのように、手際よく杖を振るう。
名を呼ばれたハーマイオニーもそれが分かっていたかのように、手際よく杖を振るう。
「イモビラス(動くな)!」
「!?」
「!?」
リーゼロッテの体が硬直する。
対象の動きを止め、その場で動けなくするチャーム。
対象の動きを止め、その場で動けなくするチャーム。
「……これも別世界の発展した魔術みたいね。興味深い。
それに、見習いにしては悪くないわ。お嬢さん…20年歳を重ねていれば、別だったかもね?」
それに、見習いにしては悪くないわ。お嬢さん…20年歳を重ねていれば、別だったかもね?」
使いようによっては強力で頼もしい呪文だが、使い手とその対象の格の差があまりにも大きすぎた。
リーゼロッテが軽く魔力を体外に開放するだけで、そのチャームはあっさりと強制的に解除される。
それこそ、最高峰の魔法使いであるダンブルドアか闇の帝王。
または、その闇の帝王との戦いを終えて、後に魔法大臣へと昇進し、別人のようにまで成長したハーマイオニーであれば、あるいはバビロンの魔女にすら届き得たかもしれない。
だが、今この場に居るのは未だ未熟で、その才を完全に開花させていない幼少期のハーマイオニーだ。
リーゼロッテが軽く魔力を体外に開放するだけで、そのチャームはあっさりと強制的に解除される。
それこそ、最高峰の魔法使いであるダンブルドアか闇の帝王。
または、その闇の帝王との戦いを終えて、後に魔法大臣へと昇進し、別人のようにまで成長したハーマイオニーであれば、あるいはバビロンの魔女にすら届き得たかもしれない。
だが、今この場に居るのは未だ未熟で、その才を完全に開花させていない幼少期のハーマイオニーだ。
「フリーレンさん!!」
だから、通じるのはほんのコンマ1秒ほど。
「上出来だ。三人共」
その僅かな時間のなかで、桃華はウェザー・リポートを呼び出し天候を操作する。
疾風がフリーレンに向かい、その手に導かれるように王の杖が吸い寄せられた。
疾風がフリーレンに向かい、その手に導かれるように王の杖が吸い寄せられた。
「チッ―――」
写影に向けていた激情を抑え、武器を再度手にしたフリーレンへと向き直る。
既に幻覚は解け、その姿はフリーレンのまま、杖の矛先はリーゼロッテへと向けられていた。
既に幻覚は解け、その姿はフリーレンのまま、杖の矛先はリーゼロッテへと向けられていた。
『絶対に”今”は手を出さないで』
思い返せば、あれは今ではない後に、必要な事を為せというメッセージだ。
あの三人の子供達もその意図に気付き、虎視眈々とお互いの役割を分担し打合せ、機を狙っていたに違いない。
あの三人の子供達もその意図に気付き、虎視眈々とお互いの役割を分担し打合せ、機を狙っていたに違いない。
『お前は私が葬送する』
あの大それた言動も、子供達から意識を逸らせ連携を取りやすくする為の布石か。
(ゾルトラークか)
杖の先から放たれた光は、先の攻防で何度か見た魔術だ。
狙いは首元、首輪の誘爆か首輪の解除対策に再生力の制限を見越し、首そのものを破壊しリーゼロッテの殺害を目論んでいるのだろう。
狙いは首元、首輪の誘爆か首輪の解除対策に再生力の制限を見越し、首そのものを破壊しリーゼロッテの殺害を目論んでいるのだろう。
そして、やはり速い。
避ける? いや―――。
リーゼロッテ自身、ゾルトラークは賞賛に値する魔術だと認めている。
だが、既にその対処法も見出していた。
写影に放つはずだった黒炎に、より魔力を込めゾルトラークへと翳す。
これで、莫大な魔力の炎の前にゾルトラークは無力化され―――
だが、既にその対処法も見出していた。
写影に放つはずだった黒炎に、より魔力を込めゾルトラークへと翳す。
これで、莫大な魔力の炎の前にゾルトラークは無力化され―――
―――違う。これは。
人を殺す魔法ではない。
これは―――。
炎を解き放ち、そして飲み込まれた光が炎を貫通してきた。
「馬鹿な!?」
人を殺す魔法にはない貫通能力。
これは今までにフリーレンが放ったそれ以上に、改良されている。
これは今までにフリーレンが放ったそれ以上に、改良されている。
魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)。
魔族を殺す為に特化し、改良が施された人を殺す魔法。
魔族を殺す為に特化し、改良が施された人を殺す魔法。
フリーレンは、あえて改良以前の方を使用することで、それをリーゼロッテに刷り込んでいた。
彼女が、人を殺す魔法の対処を即座に見出すと予見し、咄嗟の場面で防御に移った時、無意識にその防御手段を実行するように。
ゾルトラークはこの程度で防げると、欺く為に。
彼女が、人を殺す魔法の対処を即座に見出すと予見し、咄嗟の場面で防御に移った時、無意識にその防御手段を実行するように。
ゾルトラークはこの程度で防げると、欺く為に。
この一撃は、避けるべきだった。
高い身体能力、攻撃に長けた魔法、更にはフリーレンの魔力制限を見破る聡明さ。
どれも非常に高水準の魔法使いでありながら、危機意識や防御があまりにも疎か過ぎた。
それを証明するように、光線はリーゼロッテの首へと迸る。
避けるには既に遅く、ゾルトラークを防ぐ防御魔法をリーゼロッテは知らない。
だが次があればリーゼロッテは対処法を見付け、対応してみせただろう。
だが、乃亜に科せられた不死の魔女の唯一の急所である首輪周りを破壊されれば、制限によリーゼロッテは死を迎える。
どれも非常に高水準の魔法使いでありながら、危機意識や防御があまりにも疎か過ぎた。
それを証明するように、光線はリーゼロッテの首へと迸る。
避けるには既に遅く、ゾルトラークを防ぐ防御魔法をリーゼロッテは知らない。
だが次があればリーゼロッテは対処法を見付け、対応してみせただろう。
だが、乃亜に科せられた不死の魔女の唯一の急所である首輪周りを破壊されれば、制限によリーゼロッテは死を迎える。
次など、永劫やってくることはない。
「始原の炎(オムニウム・プリンキビア)ッッ!!!」
本来であれば詠唱を必要とし、溜めが要る発動までに時間を有する大規模な暗黒魔術だが、リーゼロッテは即興で詠唱を破棄し、不完全なままそれを解き放った。
完全な発動であれば、触れたあらゆるものを闇精霊(ラルヴァ)へと変質させ、取り込む防御不可の究極の暗黒魔術。
もっとも、今放ったそれは溜めも詠唱も省いた歪なもの。完全な性能には程遠い。それでも―――。
完全な発動であれば、触れたあらゆるものを闇精霊(ラルヴァ)へと変質させ、取り込む防御不可の究極の暗黒魔術。
もっとも、今放ったそれは溜めも詠唱も省いた歪なもの。完全な性能には程遠い。それでも―――。
(ゾルトラークが打ち消される。いや、別の性質に変換されているのか)
魔族を殺す魔法が炎を突き抜ける寸前、その勢いが落ちた。
白の光はその先から黒く染まり、黒炎へと変換する。
始原の炎の完全発動は間に合わないと判断したリーゼロッテはゾルトラークが、自らの世界における如何な存在に分類されるかを即座に解析し、それのみを闇精霊へと変換するように機能を敢えて劣化(とっか)させた。
機能を絞る事により、それはイメージをより強く反映させることにも繋がる。
白の光はその先から黒く染まり、黒炎へと変換する。
始原の炎の完全発動は間に合わないと判断したリーゼロッテはゾルトラークが、自らの世界における如何な存在に分類されるかを即座に解析し、それのみを闇精霊へと変換するように機能を敢えて劣化(とっか)させた。
機能を絞る事により、それはイメージをより強く反映させることにも繋がる。
(イメージか…中々面白いアプローチね)
フリーレンの世界の魔法は、イメージが何よりの骨子となる。
如何なる攻撃をも通さぬ衣があったとしても、衣は切れるものだと強くイメージさえすればそれは現実として起き得る。
その魔法体系を、リーゼロッテは独自にアレンジをして取り込んだ。
ゾルトラークを打ち消す光景を強くイメージすることで術式を安定させ、始原の炎の詠唱破棄と発動までの溜めの時間を大幅に短縮させることに成功させたのだ。
如何なる攻撃をも通さぬ衣があったとしても、衣は切れるものだと強くイメージさえすればそれは現実として起き得る。
その魔法体系を、リーゼロッテは独自にアレンジをして取り込んだ。
ゾルトラークを打ち消す光景を強くイメージすることで術式を安定させ、始原の炎の詠唱破棄と発動までの溜めの時間を大幅に短縮させることに成功させたのだ。
「―――ッ!!」
ゾルトラークが消失し、リーゼロッテの炎がフリーレンを飲み込む。
上空を飛行していたフリーレンはそのまま墜落し炎に包まれていった。
上空を飛行していたフリーレンはそのまま墜落し炎に包まれていった。
「その程度で終わりではないでしょう?」
一瞬、突風に吹かれたかのように炎が揺れる。
「魔力を解放して炎を消したか」
フリーレンを避けるように炎が割れ始めた。
炎の中から、僅かに腕に火傷をおったフリーレンが姿を見せる。
炎の中から、僅かに腕に火傷をおったフリーレンが姿を見せる。
「……本当に嫌な相手だ。戦っても骨が折れるだけだし、お前の魔法は攻撃用ばかりで面白味がない」
溜息を吐きながら、うんざりした口調でフリーレンは呟いた。
「殺傷を目的として、魔道を納めたのは貴女もでしょう?
魔力の制御…実力を誤認させ、その誤差で敵を欺き殺す。
間違いなく、殺める事を前提として、数百年は費やして磨き上げた研鑽の賜物。
それだけの執念を抱かせる存在が、貴女にはあったということ」
魔力の制御…実力を誤認させ、その誤差で敵を欺き殺す。
間違いなく、殺める事を前提として、数百年は費やして磨き上げた研鑽の賜物。
それだけの執念を抱かせる存在が、貴女にはあったということ」
「……」
「ねえ、聞かせて? 貴女は復讐を果たしたの」
彼女の顔に張り付いた嘲るような笑みは健在のまま、それまでの冷酷な魔女の他に同類を見付けたかのような喜びも含まれていた。
この場に数刻前に交戦した野比のび太が居たのなら、その時と比べて、きっとリーゼロッテを嬉しそうだと口にしていたかもしれない。
この場に数刻前に交戦した野比のび太が居たのなら、その時と比べて、きっとリーゼロッテを嬉しそうだと口にしていたかもしれない。
「そうか、お前は……」
リーゼロッテは恐らく人間から、特異な力を得て不死の体となった。
元が人間であれば、その報復対象は人間であるのだろう。
人間が復讐などと口にする時、大体の相手は同族だ。フリーレンの世界では、魔族の割合も低くないが。
だが、人の命の儚さはフリーレンも良く知っている。
不死となり魔女として技量を高め、復讐を果たすだけの力を手にした時には、もう―――。
長寿な種族にとっては、珍しくもない話だ。
復讐かは別として、約束や再会を果たそうと思った人間が、既に死んでいた事など。
元が人間であれば、その報復対象は人間であるのだろう。
人間が復讐などと口にする時、大体の相手は同族だ。フリーレンの世界では、魔族の割合も低くないが。
だが、人の命の儚さはフリーレンも良く知っている。
不死となり魔女として技量を高め、復讐を果たすだけの力を手にした時には、もう―――。
長寿な種族にとっては、珍しくもない話だ。
復讐かは別として、約束や再会を果たそうと思った人間が、既に死んでいた事など。
「……気持ちは理解するし、同情もしよう」
「……」
魔族と違って、同じ人ではあるからこそ分かってしまう。
何をされたかまでは知らないが、強い憎しみはフリーレンにもある。
何をされたかまでは知らないが、強い憎しみはフリーレンにもある。
「だからこそ、お前はやはり生かしてはおけない」
手にした刃を振るうべき者が消え、残されたその刃で大勢を殺める。
痛い程気持ちは理解できる。だがその為に、八つ当たりを黙認してやる程、お人好しでもない。
痛い程気持ちは理解できる。だがその為に、八つ当たりを黙認してやる程、お人好しでもない。
「お前の言う人類鏖殺も止める。これでも、私は元勇者パーティの魔法使いだ。
そんな蛮行を、黙って見過ごす訳にもいかない」
そんな蛮行を、黙って見過ごす訳にもいかない」
他所の世界まで救う義理もないけれど。
勇者(ヒンメル)ならば、必ず止めるはずだから。
勇者(ヒンメル)ならば、必ず止めるはずだから。
「そう…なら、やってみなさい。
貴女が一度は世界を救った勇者の仲間であったというのなら。
―――もう一度ここで世界を救ってみせろ。葬送のフリーレン!!」
貴女が一度は世界を救った勇者の仲間であったというのなら。
―――もう一度ここで世界を救ってみせろ。葬送のフリーレン!!」
「さっきも言った筈だ。
お前は私が葬送すると―――」
お前は私が葬送すると―――」
対立を決定的なものとして、問答が終わる。
次の瞬間、魔を極めた二者の使い手は、己に刻まれた術式を展開した。
フリーレンの放つ光の放流とリーゼロッテの操る逆巻く黒炎の渦が激突し、白と黒の閃光が炸裂し二人の視界を包み込んだ。
―――
(去っていったか)
閃光が消え失せ、視界が明けた時にはリーゼロッテの姿は消えていた。
魔力を探知しても気配を感じない。
しばらく周囲を警戒してみたが、襲ってくる様子もない。まだ潜伏している可能性も高いが、戦いを中断し何処かへ消え去ったのが妥当だろう。
魔力を探知しても気配を感じない。
しばらく周囲を警戒してみたが、襲ってくる様子もない。まだ潜伏している可能性も高いが、戦いを中断し何処かへ消え去ったのが妥当だろう。
(正直あれ以上戦ってたら、みんなを巻き込まない自信はなかったし、どっか行ってくれたのは好都合だった)
口調と態度は余裕を崩さずにいたが、内心では幾重にも戦闘をシュミレーションし、全員の安全を確保する最善策を模索していた。
(ただ、逃げた訳じゃない……温存を優先して後回しにしたのか)
バトルロワイアルというサバイバル形式の殺し合いだ。
手間の掛かる相手との戦闘を避けて、力を温存し終盤で疲弊した獲物を狩るのも戦術の一つになる。
それもあるのだろうが、リーゼロッテが好んで選ぶような戦術とも思えない。
手間の掛かる相手との戦闘を避けて、力を温存し終盤で疲弊した獲物を狩るのも戦術の一つになる。
それもあるのだろうが、リーゼロッテが好んで選ぶような戦術とも思えない。
(それか、目を付けられたか…後で時間を掛けて、苦しめて殺すってとこかな)
ヒンメル達やフェルンとシュタルクとの触れ合っていくなかで、改善されたとはいえまだ人の気持ちには鈍感なフリーレンでも、リーゼロッテが特異な目を自分に向けていたのは分かっていた。
戦いに身を置けば、一方的に因縁を付けられるなどよくある事だ。
戦いに身を置けば、一方的に因縁を付けられるなどよくある事だ。
(何にしても傍迷惑過ぎる話だ)
いずれ、お互い生き延びたのなら、何処かでケリを着けることになるかもしれない。
(本音を言うと…関係ないとこで、あの魔族と潰し合って共倒れしていて欲しいけど。
…あの二人、私の魔力制御のことも知られてるから、出来れば早期に脱落して欲しいし)
…あの二人、私の魔力制御のことも知られてるから、出来れば早期に脱落して欲しいし)
ガッシュ・ベルと共に退けた魔族シャルティア・ブラッドフォールン。
彼女も、何処かの世界では上位に位置するだろう強者だ。
フリーレンがシャルティアからも恨みを買われていそうなのを思うと、まとめて二人で相打ちしてくれると面倒が少なくて済む。
そう都合よく行かなそうなのは重々承知しているが、そう思わずはいられない。
彼女も、何処かの世界では上位に位置するだろう強者だ。
フリーレンがシャルティアからも恨みを買われていそうなのを思うと、まとめて二人で相打ちしてくれると面倒が少なくて済む。
そう都合よく行かなそうなのは重々承知しているが、そう思わずはいられない。
「みんなは…大丈夫?」
警戒は解かないまま、振り返る。
フリーレンの顔を見て、戦いが終わったのだと緊張の糸が切れたのか、写影と桃華は安堵の息を吐く。
フリーレンの顔を見て、戦いが終わったのだと緊張の糸が切れたのか、写影と桃華は安堵の息を吐く。
「終わったのね……」
ハーマイオニーに至っては、三人の中で一番魔法に造詣が深く、戦いの経験にあったからか戦いの規模を最も的確に把握していた為に腰を抜かし、へたり込んでしまっていた。
「ごめん、三人共…無理をさせたね。みんなが居なかったら危なかった」
「……!」
自分より遥かに強いフリーレンに頼られていると、喜びたいところだが、聡明な写影にはそうは思えなかった。
むしろ逆だ。
むしろ逆だ。
『残念だけど、ハッキリ言って付け焼刃の力じゃ戦い慣れている相手には勝てない』
『見習い魔法使いの実戦での死亡率、聞きたい?』
『見習い魔法使いの実戦での死亡率、聞きたい?』
フリーレンに以前言われたことだ。
何度も未熟な戦士や魔法使いが、理不尽に命を奪われる光景を目にしてきたのだろう。
そんな彼女が、自分達を頼って戦力に換算した。頼らざるを得なかった。
僅かな時間接しただけだが、俗ではあるがフリーレンは非常に聡明で合理的。
曖昧な要素ならば、初めから自らの戦力からは度外視する性分だと感じた。
それなのに、例え微弱な誤差程度の戦力でも、加えなければ凌げなかったほどの相手ということだ。
最初に遭遇したドロテアですら、本来ならば抗いようのない脅威であるのに、映画館で遭遇した雷帝や先ほどの魔女に比べれば、外見通り可愛く見えてしまう。
何度も未熟な戦士や魔法使いが、理不尽に命を奪われる光景を目にしてきたのだろう。
そんな彼女が、自分達を頼って戦力に換算した。頼らざるを得なかった。
僅かな時間接しただけだが、俗ではあるがフリーレンは非常に聡明で合理的。
曖昧な要素ならば、初めから自らの戦力からは度外視する性分だと感じた。
それなのに、例え微弱な誤差程度の戦力でも、加えなければ凌げなかったほどの相手ということだ。
最初に遭遇したドロテアですら、本来ならば抗いようのない脅威であるのに、映画館で遭遇した雷帝や先ほどの魔女に比べれば、外見通り可愛く見えてしまう。
(乃亜は…本当に公平な殺し合いなんて、させる気があるのか……)
この先、自分にやれることはどれだけあるのだろうか。
(フリーレンだけに負担を強いては、いずれ何処かで限界が来るかもしれないし…でも、僕には何が出来るんだ?)
やれるだけのことはやっているが、参加者間の戦力差を目の当りにしたら、生き残れるとは思えなくなる。
ここで一人離れて、フリーレンの負担を僅かにでも減らすのが、最もこのチームに貢献するのでは。
そんな考えにまで及んでしまう。
ここで一人離れて、フリーレンの負担を僅かにでも減らすのが、最もこのチームに貢献するのでは。
そんな考えにまで及んでしまう。
「な、ひゃっ…!?」
耳元に風が吹いて、こすばゆく擽ってくる。
横を見るとウェザー・リポートが召喚され、微小な風を生成しているのが見えた。
横を見るとウェザー・リポートが召喚され、微小な風を生成しているのが見えた。
「ふふ…少しは肩の力は抜けましたの?」
「も、桃華、急に何を……」
「やっぱり、写影さんの悪い癖ですわ。すぐに根を詰めたり、思い悩むのは」
「……ごめん。顔に出てたかな」
「ええ、とても」
「も、桃華、急に何を……」
「やっぱり、写影さんの悪い癖ですわ。すぐに根を詰めたり、思い悩むのは」
「……ごめん。顔に出てたかな」
「ええ、とても」
不安にさせてしまったと、写影は強く反省した。
写影はあまり愛嬌のある方ではない。自分でも自覚していたし、生意気な子供だろうとも自覚はしていた。
表情も良く言えばポーカーフェイス、悪く言えば無愛想だ。
そんな自分が表に悪感情を出せば、周りはあんまり良い気もしないだろう。
写影はあまり愛嬌のある方ではない。自分でも自覚していたし、生意気な子供だろうとも自覚はしていた。
表情も良く言えばポーカーフェイス、悪く言えば無愛想だ。
そんな自分が表に悪感情を出せば、周りはあんまり良い気もしないだろう。
「だから、その度…私が笑顔にしてさしあげますわ」
その桃華の笑顔に釣られるように、写影は少しだけ口許を緩ませた。
「ああ―――そうして貰えると…助かるよ」
次の瞬間、二人の周りに花畑が広がる。
「フリーレン?」
「良いムードだったからね」
花畑を出す魔法。
名の通り、ただ花畑を出す。ただそれだけの魔法だ。
名の通り、ただ花畑を出す。ただそれだけの魔法だ。
「アヴィフォース(鳥になれ)」
更にハーマイオニーが杖を振り呪文を紡ぐ。
花弁のいくつかが宙を舞い、それらが小さな鳥となって桃華と写影の肩に乗った。
花弁のいくつかが宙を舞い、それらが小さな鳥となって桃華と写影の肩に乗った。
「まあ…!」
「無機物を鳥に変える魔法か。中々習得が難しそうだ。
やるね、ハーマイオニー」
やるね、ハーマイオニー」
「貴女ほどの偉大な魔法使いに褒めて貰えるなら、きっとそれは光栄なことね。フリーレン」
「写影もそんなに悲観的になることはないと思うよ。
我ながら、私達悪くないパーティだと思うから」
我ながら、私達悪くないパーティだと思うから」
「……ありがとう。みんな」
悩みが解決した訳ではないけれど、不思議と不安が軽くなるようだった。
【H-5/1日目/早朝】
【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]精神疲労(小)、疲労(小)あちこちに擦り傷や切り傷(小)
[装備]五視万能『スペクテッド』
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:ドロテアの様な危険人物との対峙は避けつつ、脱出の方法を探す。
1:桃華を守る。…そう言いきれれば良かったんだけどね。
2:……あの赤ちゃん、どうにも怪しいけれど
3:桃華には助けられてばかりだ…。
[備考]
※参戦時期はペロを救出してから。
※マサオ達がどこに落下したかを知りません。
※フリーレンから魔法の知識をある程度知りました。
[状態]精神疲労(小)、疲労(小)あちこちに擦り傷や切り傷(小)
[装備]五視万能『スペクテッド』
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:ドロテアの様な危険人物との対峙は避けつつ、脱出の方法を探す。
1:桃華を守る。…そう言いきれれば良かったんだけどね。
2:……あの赤ちゃん、どうにも怪しいけれど
3:桃華には助けられてばかりだ…。
[備考]
※参戦時期はペロを救出してから。
※マサオ達がどこに落下したかを知りません。
※フリーレンから魔法の知識をある程度知りました。
【櫻井桃華@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]疲労(小)
[装備]ウェザー・リポートのスタンドDISC
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:写影さんや他の方と協力して、誰も犠牲にならなくていい方法を探しますわ。
1:写影さんを守る。
2:この場所でも、アイドルの桜井桃華として。
3:……マサオさん
4:マサオさんが心配ですけど、今はガッシュさん達に任せる。
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降。
※失意の庭を通してウェザー・リポートの記憶を追体験しました。それによりスタンドの熟練度が向上しています。
※マサオ達がどこに落下したかを知りません。
[状態]疲労(小)
[装備]ウェザー・リポートのスタンドDISC
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:写影さんや他の方と協力して、誰も犠牲にならなくていい方法を探しますわ。
1:写影さんを守る。
2:この場所でも、アイドルの桜井桃華として。
3:……マサオさん
4:マサオさんが心配ですけど、今はガッシュさん達に任せる。
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降。
※失意の庭を通してウェザー・リポートの記憶を追体験しました。それによりスタンドの熟練度が向上しています。
※マサオ達がどこに落下したかを知りません。
【ハーマイオニー・グレンジャー@ハリー・ポッター シリーズ】
[状態]:背中にダメージ(小)
[装備]:ハーマイオニーの杖@ハリー・ポッター
[道具]:基本支給品×1、ロウソク×4、ランダム支給品0~1(確認済)
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない。
1:朝の放送と名簿の開示を待った後、ホグワーツ魔法魔術学校へと向かう。
2:当面の間はフリーレン達と行動したい。
3:ハリーやロンがいるなら合流したい。
4:殺し合いするしかないとは思いたくない。
[備考]
※参戦時期は秘密の部屋でバジリスクに石にされた直後です。
※写影、桃華、フリーレン世界の基本知識と危険人物の情報を交換しています。
[状態]:背中にダメージ(小)
[装備]:ハーマイオニーの杖@ハリー・ポッター
[道具]:基本支給品×1、ロウソク×4、ランダム支給品0~1(確認済)
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない。
1:朝の放送と名簿の開示を待った後、ホグワーツ魔法魔術学校へと向かう。
2:当面の間はフリーレン達と行動したい。
3:ハリーやロンがいるなら合流したい。
4:殺し合いするしかないとは思いたくない。
[備考]
※参戦時期は秘密の部屋でバジリスクに石にされた直後です。
※写影、桃華、フリーレン世界の基本知識と危険人物の情報を交換しています。
『ヴェラード……?』
写影が見せた幻覚が何なのかは分からないが、その名を読んだリーゼロッテの声に困惑と僅かな温かみがあった。
人類鏖殺という悲願も、先立たれた友の願いを叶えようとしているのかもしれない。
だから、死にたくても死ねない。死ぬ訳にはいかない。
己の矛盾をぶつけられるのは他者しかおらず。故に大勢を殺してしまう。
人類鏖殺という悲願も、先立たれた友の願いを叶えようとしているのかもしれない。
だから、死にたくても死ねない。死ぬ訳にはいかない。
己の矛盾をぶつけられるのは他者しかおらず。故に大勢を殺してしまう。
(あの女にも、先立たれた仲間くらいはいたんだろうか)
ただ一人、フリーレンは誰にも言うことなく、そう思った。
【フリーレン@葬送のフリーレン】
[状態]魔力消費(中)、疲労(大)、ダメージ(小)
[装備]王杖@金色のガッシュ!
[道具]基本支給品、魔法解除&不明カード×3枚@遊戯王デュエルモンスターズ&遊戯王5D's、ランダム支給品0~1、戦士の1kgハンバーグ
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:首輪の解析に必要なサンプル、機材、情報を集めに向かう。
2:ガッシュについては、自分の世界とは別の別世界の魔族と認識はしたが……。
3:シャルティアは次に会ったら恐らく殺すことになる。
4:1回放送後、H-5の一番大きな民家(現在居る場所)にて、ガッシュ達と再合流する。
5:北条沙都子をシャルティアと同レベルで強く警戒、話がすべて本当なら、精神が既に人類の物ではないと推測。
6:リーゼロッテは必ず止める。ヒンメルなら、必ずそうするから。
[備考]
※断頭台のアウラ討伐後より参戦です
※一部の魔法が制限により使用不能となっています。
※風見一姫、美山写影目線での、科学の知識をある程度知りました。
※グレイラッド邸が襲撃を受けた場合の措置として隣接するエリアであるH-5の一番大きな民家で落ち合う約束をしています。
[状態]魔力消費(中)、疲労(大)、ダメージ(小)
[装備]王杖@金色のガッシュ!
[道具]基本支給品、魔法解除&不明カード×3枚@遊戯王デュエルモンスターズ&遊戯王5D's、ランダム支給品0~1、戦士の1kgハンバーグ
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:首輪の解析に必要なサンプル、機材、情報を集めに向かう。
2:ガッシュについては、自分の世界とは別の別世界の魔族と認識はしたが……。
3:シャルティアは次に会ったら恐らく殺すことになる。
4:1回放送後、H-5の一番大きな民家(現在居る場所)にて、ガッシュ達と再合流する。
5:北条沙都子をシャルティアと同レベルで強く警戒、話がすべて本当なら、精神が既に人類の物ではないと推測。
6:リーゼロッテは必ず止める。ヒンメルなら、必ずそうするから。
[備考]
※断頭台のアウラ討伐後より参戦です
※一部の魔法が制限により使用不能となっています。
※風見一姫、美山写影目線での、科学の知識をある程度知りました。
※グレイラッド邸が襲撃を受けた場合の措置として隣接するエリアであるH-5の一番大きな民家で落ち合う約束をしています。
【魔法解除@遊戯王デュエルモンスターズ】
使用者以外の全ての魔法の類を解除する。
一度の使用で24時間使用不可。
使用者以外の全ての魔法の類を解除する。
一度の使用で24時間使用不可。
「本当に、とても面白い催しに招いてくれたものね。海馬乃亜」
フリーレンとの交戦を打ち切り離脱したリーゼロッテは語り掛けるように呟いた。
『……でも、何だか早く楽になりたいって顔してそうな気がするんだ』
『お前は私が葬送する』
『お前は私が葬送する』
「フフ…アハハハハハハハハハハハハハ!!」
野比のび太、葬送のフリーレンも…今すぐ、ただ殺すだけでは済まさない。
この殺し合いの中で苦痛を味わった後、さらに絶望を味合わせて殺してやる。
だから、まだ殺さずには済ませておく。
この殺し合いの中で苦痛を味わった後、さらに絶望を味合わせて殺してやる。
だから、まだ殺さずには済ませておく。
かつて、世界の終焉を阻止する為、対峙した使徒共。虹のゲオルギウスと草壁操にこそ不覚を取ったが、他の連中は全員凄惨に嬲り殺してやった。
同じように、戯言をほざいたあの二人も、ついでに癪に障る羽蛾も殺してやろう。
そう決意した嗜虐的な笑いは、だが長くは続かなかった。
―――皐月駆と、ヴェラードの名において―――
―――リーゼロッテ、お前を斬る……!!
―――リーゼロッテ、お前を斬る……!!
人類の歴史の終止符を打つ寸前、乃亜によりこの島の呼ばれる少し前。
劫の眼を持ち、ヴェラードの魂を引き継いだ皐月駆という少年と戦闘が始まる、その直前の問答。
あの少年は、いやヴェラードはかつてリーゼロッテに語った理想を、二人が目指した世界を、否定してきた。
劫の眼を持ち、ヴェラードの魂を引き継いだ皐月駆という少年と戦闘が始まる、その直前の問答。
あの少年は、いやヴェラードはかつてリーゼロッテに語った理想を、二人が目指した世界を、否定してきた。
あんなものは、ヴェラードではない。リーゼロッテが愛した男では断じてありえない。
だが、リーゼロッテにはそれが断言できなかった。
『お前がヒンメルを語るな』
あの時のフリーレンのように。
間違っていたというのか? ヴェラードを亡くした後、悲願を成就するまでに重ねた数百年間が。
どんな月日が流れても、ヴェラードが自分を否定することなど、ありえない。
どんな月日が流れても、ヴェラードが自分を否定することなど、ありえない。
「……なんで、なんで…今なのよ。数百年もあったのに…どうして、ヴェラード……」
間違っていたというのか。
数百年間、味わった絶望も悲哀も苦痛も、そして滅ぼした全ての敵も。
それらすべてが間違いであっただなんて。
数百年間、味わった絶望も悲哀も苦痛も、そして滅ぼした全ての敵も。
それらすべてが間違いであっただなんて。
「認めない。私は…そんなもの、認める訳には…いかない……!」
【H-5/1日目/早朝】
【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:ダメージ(大、再生中)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、羽蛾のランドセルと基本支給品、寄生虫パラサイド@遊戯王デュエルモンスターズ(使用不可)
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:羽蛾は見つけ次第殺す。
2:野比のび太、フリーレンは必ず苦しめて殺す。
3:ヴェラード、私は……。
[備考]
※参戦時期は皐月駆との交戦直前です。
※不死性及び、能力に制限が掛かっています。
※幻燈結界の制限について。
発動までに多量の魔力消費と長時間の溜めが必要、更に効果範囲も縮小されています(本人確認済み)。実質、連発不可。
発動後、一定時間の経過で強制解除されます(本人確認済)。
[状態]:ダメージ(大、再生中)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、羽蛾のランドセルと基本支給品、寄生虫パラサイド@遊戯王デュエルモンスターズ(使用不可)
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:羽蛾は見つけ次第殺す。
2:野比のび太、フリーレンは必ず苦しめて殺す。
3:ヴェラード、私は……。
[備考]
※参戦時期は皐月駆との交戦直前です。
※不死性及び、能力に制限が掛かっています。
※幻燈結界の制限について。
発動までに多量の魔力消費と長時間の溜めが必要、更に効果範囲も縮小されています(本人確認済み)。実質、連発不可。
発動後、一定時間の経過で強制解除されます(本人確認済)。
054:為す術のない僕に芽吹いた焦燥が膨らんでいく | 投下順に読む | 056:BATTLE ROYALE 命尽き果てるまで戦い続ける者たち |
時系列順に読む | ||
045:厨房のフリーレン | 美山写影 | 080:暴発 |
櫻井桃華 | ||
フリーレン | ||
ハーマイオニー・グレンジャー | ||
040:不安の種 | リーゼロッテ・ヴェルクマイスター | 092:さすらいの卑怯者 |