コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

i'm a dreamer

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「日番谷君…刀、借して」
「乾?」
「元太君の首、切らなきゃいけないんでしょ。今の日番谷君……疲れているわ。私が……」

ウォルフガング・シュライバー、美遊・エーデルフェルトの襲撃から十数分が経った。
それは小嶋元太が、この世に亡くなってから刻まれた経過時間でもある。
日番谷君にとっては守り保護すべき無辜の子供、それを目の前で死なせたことに深い後悔を残すが、同時に好機でもあった。
この殺し合いの全参加者に科せられた枷である首輪、それを解析する為のサンプルが、今、元太の遺体には巻かれている。
生きた参加者の首輪で解析を行うより、死者の首輪であれば暴発しても死には直結しない。

「首輪を…外さなきゃいけないんだもの……私がやるわ」

首を落とせば、首輪の回収は行えるだろう。
それこそ、虚なぞ容易く両断せしめる斬魄刀の切れ味なら、紗寿叶のように刀の素人でも簡単に首を切断できる。
戦闘の疲弊から膝を着き、体力を回復させていた日番谷、その目の前に突き刺さった氷輪丸を手にし、紗寿叶は震えた腕とおぼつかない構えで刀を振り上げる。

「馬鹿、やめろ! よせ!」

元太の遺体の首元に刃が振り下ろされる寸前、日番谷が紗寿叶の腕を掴み止めた。
疲弊しているとはいえ、死神の膂力で抑えつけられれば、紗寿叶の力ではどうにもならない。

「俺がやるから、お前は……」
「でも…わたし……元太君……私のせいで、殺されちゃって……どうしたらいいか、わからないの……どう、したら……」

瞳から涙が溢れ、頬を伝う。声にはしゃっくりが混じり、聞き取りづらい。
日番谷に抑えられた腕も、そこからは抵抗する力も伝わらず、刀の切っ先が地面に触れた。

「あの時……不用意に……」

紗寿叶一人が死んだのなら、それはまだ自業自得で済んだ。けれども、現実は違う。事実はより残酷だ。
死なせたのは、全く無関係の男の子だ。自分よりも何歳も年下の子供だ。
紗寿叶が憧れた、魔法少女が殺した。
彼女が焦がれ、好み、見惚れ、憧れた本物の魔法少女が殺した。
紗寿叶が死なせてしまった。
彼女の夢が、一人の少年の命を奪い去ってしまった。


「私が、あの娘に近づいたから……元太君は死んだのよ。だから……私が……」

「もういい。やめろ……あとは俺がやる」


膝から崩れ落ち、地べたに座り込んでしまった紗寿叶に、頭から羽織を被せる。
簡易的に視界を塞ぐ為に。
効果は思いの外効いたらしく、こんな布切れ一枚すら紗寿叶は拭おうとしない。小さく嗚咽が布越しに聞こえてきた。

(元太の霊は見えねえ……尸魂界に行ったのか? いや……)

この空間が特殊過ぎる。霊の有無に関しても、乃亜に何かの干渉がされ、霊自体が発生しないようにされているのだろうか。

(……もしかして、乃亜のせいというより、なんだこの違和感……?)

もっと根本的な部分から、日番谷は違和感を覚えるが、それを論理的に形にする術がなかった。

「……元太、すまない」

一太刀で呆気なく首は切断される。
それから、氷輪丸を解号し氷塊を生成し、地面に打ち付ける。人が、一人入る程の大きさのクレーターが刻まれた。
そこに遺体を安置し、刀を何度か振るい霊圧で土を巻き上げて、遺体へと被せていった。
埋葬と呼ぶには、あまりにも簡素で呆気ない。それでいて、とても死者への敬意も感じられない、効率の良い手際だ。
それは、仮にも死神である日番谷自身がよく分かっていた。だが、あまりにも死者に時間を割ける余裕がない。
いつまた、あのシュライバーが引き返すか、あの魔法少女が奇襲を仕掛けるのかも分からない。
あの二人以外の、乃亜の言う所のマーダーも居るのだろう。そんな連中とまた交戦すれば、日番谷でも捌ききれるかは分からない。
当然、紗寿叶の安全も保障できなかった。

元太の血が付いた首輪を、無造作にランドセルに放り込む。血を拭くだとか、中の物に血が付着するような事は考える余裕はなかった。
そして、元太が所持していたランドセルも回収した。
全ての事を終えて、紗寿叶に被せた羽織を引き剥がし肩に掛ける。氷輪丸を背の鞘に納刀し、タブレットを点けて近くの施設を確認する。

「……一番近いのは小学校か、少しそこで休むぞ」

こんな野ざらしな場所よりは、きっと屋内の方が休むにも適しているだろう。




―――



「14人……か」

「本当に、そんなに死んじゃったんですか……名簿もまだ見れないし……どうして、こんなことするの」

放送で呼ばれた14人の死亡者、いくつか不可解な名があったとはいえ、それは平穏な世界で日常生活送っていたさくらにとっては受け入れがたい事だった。
不幸中の幸いと言ってしまうのも憚られるが、知り合いの名前がなかったことには安堵するも、
乃亜の言う参加者の選定条件を考えると、さくらの友人である大道寺知世や、恋人である李小狼も巻き込まれている可能性は高い。
他にもクロウカード絡みでは無関係とはいえ、佐々木利佳を始めとしたクラスメイトの友人達や、今は帰国したがさくらにとっては大事な友人の李苺鈴だって、巻き込まれているかもしれない。
早く、誰が来て誰が居ないのか確認したいが、参加者名簿を用意しながら、それを数時間後まで解禁しない念の入った嫌がらせには、とても温和なさくらでさえ乃亜に苛立ちを感じさせる程だった。

(多すぎだろ、いくらなんでも)

ルーデウスもまた、死と隣り合わせの世界に転生した為に、人死にの類には慣れていたが、それでも現状の犠牲者の多さには眩暈がしそうだった。
さくらとの会話や、乃亜がルフィ兄弟たちを爆殺した現場に居た子供たちや乃亜自身の服装、この島の施設から恐らくはルーデウスの転生前の日本から多くの参加者を放り込んだのは察しが付く。
その上で、1時間でこんな死人が出るのは異常だ。北野武が主催をしてた映画でも、こんなペースで死ななかっただろと内心で思う。

(銃なんか支給しても、1時間で日本の普通の子供が14人も死なすなんて、考え辛い……)

少し前に遭遇した、あのカニパンの馬鹿みたいな造形をした生き物を思い出す。
容姿のコミカルさに反し、あれの邪悪さはルーデウスが見てきた中でもピカ一の存在だった。
命令しようがしまいが、平気で人を殺し食らい楽しむ和解などできない、別種の生物なのだろう。
首から下は肥満体系の子供のものだが、あれを一応子供に定義するのなら、戦えない無力な子供達に紛れて、あんな化け物を何体もねじ込んでいるのかもしれない。
ルーデウスも、エリスとの旅で培った実戦と経験値がなければ、いくら魔術が使えても、あのカニパンの2人目のおやつになっていてもおかしくなかった。

(……見た目が子供なだけで、中身がオルステッドみたいな化け物も居るんじゃ。それに、ロキシーも乃亜の言う子供の共通点に当て嵌まってないか?)

眩暈を通り越して、頭がパンクを起こして破裂しそうだった。
エリスと合流し守るのは最優先事項だが、ロキシーも居るのなら彼女とも早期に合流したい。
なんなら、ルーデウスの妹達やシルフィエットだって、この殺し合いの参加条件を満たすのだ。知り合いの有無で、不安に陥っているさくらは他人事じゃない。
何より、勘弁してほしいのが見た目だけ子供で、その実力がかつてルーデウスが遭遇したオルステッドに匹敵するような実力者が居た場合、とてもルーデウスだけでは対処しきれない。
幼い容姿のロキシーが、あれだけ優れた魔術師であるのなら、子供の見た目で恐ろしい力を持つ、殺戮者が居ても驚きはない。

「さくらさん、更新されたマップの中で、さくらさん個人に関する施設はありましたか? 桜田ジュンの家とか、個人に関係する施設が多いようなんですが」
「いえ、わたしは……病院とか図書館とかの、公共の施設は分かりますけど……」
「もし良かったら、このボレアス・グレイラット邸に向かっても良いでしょうか? あのカニパンの化け物とも、多分そう鉢合わせないと思いますし、それに……」
「エリスさんが、そこに向かってるかもしれないからですか? ……うん、それなら急いで行きましょう! ロキシーさんって人も、もしかしたら来てるかもしれないですよ!」

ニコっと太陽のような眩しい笑顔を浮かべて、さくらは快諾してくれた。
その笑顔にルーデウスもドキッとしてしまう。

(なんて…なんて良い娘なんだ……さくらちゃん。それに動く度、いい匂いする……げっへっへ……)




―――


「―――シュライバーと、喋る杖を操る女の子…ですか」

ボレアス・グレイラット邸に向かう道中、近くにあった施設である小学校にルーデウスたちは寄ることにした。
人を探しているのはルーデウスだけではなく、さくらもであり、彼女の知人で共通して馴染が深い施設といえば、小学校だったからだ。 
結果として、二人の知人は居なかったものの、同じく殺し合いに巻き込まれながらも、それに反抗する別参加者に出会えたのは、幸いだったのだろう。

「ああ、特にシュライバーの奴は見掛けたら、可能なら逃げろ。あいつは危険すぎる」

日番谷冬獅郎と乾紗寿叶の2人の男女、やはり乃亜の言うように外見は幼いが、日番谷からはルイジェルドやルーデウスの父親のパウロのような、歴戦の戦士のような雰囲気を感じさせられた。

(ただ……ジュジュ様は大分辛そうだな……)

もう一人のロリっ娘クール美少女に目が行くが、いつものセクハラ思考が入る前に、その陰の掛かった落ち込んだ表情が印象に残った。
ここに来るまでの敬意は話に聞いたが、同行者を目の前で殺されたのであれば、普通の女子高生であれば精神的な負担にもなるだろう。ルーデウスも最初はそうだった。
勝手に名付けた渾名が、偶然にも彼女がコスプレイヤーとして活動する際に使用していたものだったが、そんなことも知る由もなく、ルーデウスは少し同情気味な視線を送る。

「……え、と、冬獅郎君は…死神…なんだよね……あの、幽霊とか……」

「その霊圧で、幽霊が苦手なのか? 普段から見えてないとおかしいだろ」

「ほえええええ!?」

(なんだ、霊圧って……魔力じゃなくて? ……剣の流派みたいに、力の使い方も色々な方法や考え方が異なるのだろうか?)

日番谷の語る尸魂界や死神、虚の話等はルーデウスでもすぐには受け入れがたいものだった。
だが、元居た異世界から、更に別の謎の島に拉致られている以上、尸魂界という異世界もまた何処かに存在しているのだろうと納得させるしかなかった。

「ねえ、日番谷君…木之本さんの探してる杖やカード……もしかして、元太君のランドセルに入ってるんじゃないかしら?
 あの子、日番谷君と会う前に支給品の事聞いたら、ソフトクリームとあとは使い物にならない、変なカードの玩具が、どうとか言ってたのよ。
 ……私、てっきり何とか王カードとか、そういうゲームのカードだと思ってしまって……」

「あいつ、食い物以外にも、何か支給されてたのか? なんでそれを―――」

「……」

「いや……すまねえ」

そこまで言いかけて、紗寿叶の顔が俯いているのに気付き、日番谷は最後まで口にはしなかった。
もし、この支給品が身を守るものであったのなら、それを使えていれば元太は死なずに済んだかもしれない。
逆に言えば、支給品の有用さに気付けなかった紗寿叶に、更に元太の死の原因があることにもなる。
責める気はない。それを言い出せば、全員の所有物を確認しなかった日番谷にも非はある。
決して、紗寿叶だけの責任ではない。

「―――これ、そうだ……さくらカードと星の杖……私のです!」

「……そう、良かったわ……」

元太のランドセルを開いた瞬間、強い霊圧を感じるカードと、星を模した可愛らしいデザインのキーホルダーのようなものが、収納されていた。

「封印解除(レリーズ)」

掌に収まる程だった星の杖の柄がステッキ大の長さへと伸び、杖の先の星の装飾もそれに伴い膨張する。
一瞬にして、玩具のようだった玩具が魔法の杖へと変身してしまった。

(……見た目だけじゃ、ただの玩具にしか見えねぇ。元太が見て、使い物にならないと判断しちまうのも当然だ。
 乃亜のやつ、こんなもん説明抜きで使える訳がねえだろ……!)

さくらが手にすることで、星のキーホルダーは杖の姿を取り戻す。恐らくは有益な武器ではあるのだろう。
だが、敢えてかは知らないが、説明書の類が一切付与されていない。そこに乃亜の悪辣さが伺えた。

「ありがとうございます! 杖と少しだけだけど、カードさん達が戻ってきて、安心しました。……まだ、皆探してあげなきゃいけないけど」
「……良いのよ。私が持っていても、しょうがないもの……そうだ、あと……衣装も入っていたわ」
「ほえ?」

もう一つ、元太のランドセルに入っていた支給品にピンクを基調とした、バトルコスチュームも支給されていた。

「知世ちゃんが作ってくれた衣装だ……」

「もしかして、友達が作ってくれたの?」

「はい! 私の友達に知世ちゃんって娘が居て、クロウカードを集める時も一緒に着いてきて支えてくれて……いつも、素敵なコスチュームを作ってくれてたんです。
 ちょっと、着るの恥ずかしい時もあったけど……」

「これを…小学生が? 材料だけでも、とんでもない額…しかも、いつも……? ど…どんな頻度で?」

「ほとんど、毎週……?」

「嘘でしょ!? ……ヤバい娘じゃない」

様々なアニメキャラの衣装を再現し、コスプレイヤーとして着こなしてきた紗寿叶の審美眼をも唸らせるほどだった。
コストパフォーマンス等を考えると、一概に優れているとも言い難いが、先ずは秀でているのは質感だ。
服として、肌触りが非常に良い。さくらの戦闘時の激しさを考え、肌に負担の少ない材料を選んでいるのだろう。通気性も高い。
デザインも星の杖に合わせている色調で、二つ合わさる事でさくらの可憐さを更に際立たせている。それぞれが、別に作成されたとは思えない程だ。
木之本桜という少女の長所も短所も全てを知り尽くし、それら全てを昇華し表現しきった完成されたデザイン。
コスプレという、服に携わった活動をしてきた紗寿叶だからこそ分かる。
コストを差し引いたとしても、こんなものを一つ作り上げるだけでも、燃え尽きる程の情熱が必要な筈なのに、それを毎週作りなど常軌を逸している。

「すごく……想われているのね」

話を聞けば、さくらの友人である大道寺知世は財力のある家柄の娘らしく、コストに関しては実質ほぼ無尽蔵に使えるようだ。
それでも、これだけの衣装を毎回さくらの為に自作するなんて、通常のモチベーションではありえないことだ。
手を抜いている? 否、ありえない。これだけのコスチュームを作る人物が、一着たりとも手など抜くはずがない。絶対に妥協などない。
今、手元にあるこのコスチュームには文字通り、命を懸けた職人としての信念が伝わってくる。
しかも、作り手にありがちな自分の作った衣装を、見せびらかしたいというエゴも一切ない。
デザインも服の生地も、このコスチュームの全てが、ただ一人の少女を彩る為だけに集約されている。


「これは、あなたが持っていた方が良いわ」


これは、さくらという一人の少女を何よりも想い、そして決して届かなくても良い。
ただ、彼女を幸せであるならば、それだけで構わない程の覚悟と愛情を持って作り上げた愛の結晶だ。



「……とても、素敵な―――」



『ごめんなさい。死んで』



「……っ!?」



きっと、とても大切で大事な、そして何よりも尊く奇麗だと思えた衣装を、さくらに手渡そうとして急に金縛りにあったように、動けなくなった。
本当に奇麗で、こんな衣装を作り上げる知世という少女に敬意すら抱く程に、だからちゃんと本来の着用者に返却しなくてはと、そう思っていたのに。


とても、素敵な衣装だと思っていたのに。


手から、衣装が零れ落ちた。


「ぁっ…ち、が……」


さっきまで、輝いて見えた衣装が、自分を庇ってくれた少年の血塗れの姿と重なる。そして、その先に居るさくらが、自分達を本気で殺しに来ていた少女に見えた。
こんな素敵な衣装を土足で踏み歩く床に落とすなんて、早く拾って、埃を払って、謝って……慌てて手を伸ばして、指先が触れる前にまた動けなくなった。
手が届かない。拾えない。触れない。熱くもないのに、良く分からない汗が背筋を伝った気がする。
ただ、純粋な拒否感が、目の前の存在を拒もうとする。


「だ……大丈夫―――」
「やめて……!」


衣装を落とした事なんて、気にもせず。紗寿叶の様子が深刻そうで、心配になったさくらは彼女の肩に手を置こうとした。
でも、その手が、もう片方の腕で大事そうに抱えている星の杖が、今は人を刺し殺す刃のように見える。
さくらにとって親友が作ってくれた大切な衣装に、失礼なことをしたのに。それでも、太陽のような暖かい優しさで接してくれたさくらを強い言葉で拒絶してしまった。

「ごめんなさい……! わたし、放っておいて―――」

「あの……」

こんなこと、言いたい筈じゃないのに。泣き出しそうな声で強く怒鳴り、紗寿叶は近くの教室のドアを開けて、逃げるように飛び込んだ。

(何やってるのよ…私、あの娘の大事な服を……ちゃんと、謝らないと……)

酷いことをしてしまった。あんなにも、大切に相手を想って作ってくれた衣装を無造作に扱ってしまった。
ちゃんと、もう一度謝らないといけない。

(…………だ、駄目……怖い……)

そんなことしないと分かっているのに、あの杖を一振りするだけで次の瞬間には自分が殺される光景が幻視される。
こんなものは妄想だって理解しても、得体のしれない恐怖が自分から離れて行かない。

あんなに、素晴らしい衣装を着たさくらの姿はきっととても素敵な筈なのに。

素敵だと思えば思う程、その足元であの魔法少女に殺された元太の姿が頭に焼き付けられる。

(あんなに……あんなに、素敵な衣装だったのに……今は、凄く…怖い……)

それは、まるで呪いのように。



――――



『私もね、魔法少女になりたかったの……強くてキラキラしてカッコよくて、フリフリの可愛い服を着てて……』

『好きなものになろうとする気持ちは否定しないわ。私も、無理をしてでも作り物でも、夢を叶えようとコスプレをしてるから』



「……俺には良く分からないが、元太を殺した奴が…多分、乾の好きなモノに似てたのかもしれねえ。
 現世で女児が見る、魔法少女って言うのか? そんな感じの服装をした子供だったからな」

「それを、さくらさんに重ねてしまったんですか?」

「どうだろうな……でも、憧れてたものに裏切られた奴を、俺は嫌ってほど間近で見たことがある。……あいつもそうなのかもしれないと思っただけだ」

口では疑問形で尋ねたルーデウスだが、前世は歴戦のエロゲキモオタヒキニートだった男だ。
既に、紗寿叶が魔法少女に対するガチ勢である事は察することができた。
そして察したからこそ、掛ける言葉が見つからない。
架空の存在に夢を見て憧れる気持ちは、形は違うがルーデウスも少なからず共感できる。それが原因で命を脅かされ、同行者が殺されたのであればなおさらだろう。

「紗寿叶さん……」
「……さくらさんのせいじゃありませんよ」

紗寿叶もだが、あんなにも怖がられ、強く拒絶されたさくらも辛いだろうなとルーデウスは思う。

「僕達はこのままボレアス・グレイラット邸に向かいます」

「そうか。……木之本も悪かったな」

今、ここに解決策は存在しない。気にはなるが、長く滞在しない方が良いだろう。
ルーデウスも日番谷も同じ考えで、短く素っ気ないやり取りで済ませた。

「ルーデウスさん……少しだけ待ってて貰えますか?」

さくらは床に落ちた衣装を拾い上げて、それだけ言い残す。
ルーデウスが言葉を返す間もなく、紗寿叶の入っていった教室とは別の方向へ進み、別の教室に入る。
呆気に取られている間に布が擦れる音がして、一瞬ルーデウスの脳内に邪な考えが流れた後、教室の戸が開けた。

「……お待たせしました。ルーデウスさん」

「その、恰好……」

私服をランドセルに仕舞い、さくらは支給品だったバトルコスチュームに身を包んでいた。

「今は……私のこと怖いかもしれないけど……いつかは、きっとまた好きになってくれるかもしれないから……この服で戦おうと思うんです」

この衣装を見ていた時の紗寿叶はとても楽しそうだった。

「だって、知世ちゃんの作ってくれた衣装を、あんなに楽しそうに見てくれた人、初めてだった……。
 きっと衣装を見るのも、作るのも好きなのに……嫌いになっちゃうなんて、そんなの悲し過ぎるよ」

好きという想いを失くしてしまう怖さや悲しさをさくらは知っている。
結果的には丸く収まったが、月(ユエ)との戦いや、「無」のカードを巡る騒動でも、好きという想いを犠牲にしなくてはいけなくなった時は凄く悲しかった。

「もしまた、魔法少女(わたし)を好きになってくれた時、今度はちゃんと仲良しになってほしいから……」

きっと、この先の殺し合いの中でも、そんな辛い出来事が数多くあるのかもしれない。いくら杖と数枚のカードが戻ったからと言って、さくらが全てどうにか出来るなんて事もない。

「魔法は誰かを不幸にする為じゃなくて、幸せにするものだって私、信じてるもん!」

でも、目の前でそんな苦しい思いをしている人が居るのなら、今は届かなくてもやれる限り、手を伸ばし続けてみたいから。



――――



(……情けねえな俺は)



学校を発った二人の子供の背中を見つめながら、自分の未熟さを痛感させられる。
子供一人ろくに守れず、殺し合いを止める目途も立たない不甲斐なさに。



(こういう時、俺よりも松本や志波隊長のが、乾に気の利いたことでも言えたんだろうけどな……)


トラウマを抱えた女の子に、掛けてあげる言葉すら浮かばなかった。

【G-5 小学校/1日目/黎明】

【ルーデウス・グレイラット@無職転生 ~異世界行ったら本気だす~】
[状態]:健康
[装備]:傲慢なる水竜王(アクアハーティア)@無職転生 ~異世界行ったら本気だす~
[道具]:基本支給品一式、石毛の首輪、ランダム品0~2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出する
1:さくらに同行してエリスを探す。(身内の中で、エリスが一番殺し合いに呼ばれた可能性が高いと推測したので)
2:首輪の解析をする。
3:カニパン野郎(ハンディ・ハンディ)を警戒。
4:ボレアス・グレイラット邸に行く。
5:ロキシーや滅茶苦茶強いロリババア、ショタジジイの居る可能性も考慮する。
[備考]
※アニメ版21話終了後、22話以前からの参戦です



【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:健康、封印されたカードのバトルコスチューム
[装備]:星の杖&さくらカード×8枚(「風」「翔」「跳」「剣」「盾」は確定)@カードキャプターさくら
[道具]:基本支給品一式、ランダム品1~3(さくらカードなし)、さくらの私服
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしたくない
1:ルーデウスに同行して小狼君、知世ちゃん、友達や知り合いを探す。
2:紗寿叶さんにはもう一度、魔法少女を好きになって欲しい。その時にちゃんと仲良しになりたい。
[備考]
※さくらカード編終了後からの参戦です。


【星の杖&さくらカード×8枚(「風」「翔」「跳」「剣」「盾」は確定)@カードキャプターさくら】
杖とカードで1セット。元太に支給。
さくらの星の力を秘めた杖で、さくらカードを使用できる。
説明書は付いていないので、パッと見ただの玩具にしか見えない。

「風」
風を操る能力で主に拘束技に使われる。

「翔」
背中から翼を生やして空を飛べる。長時間の飛行は制限により不可能

「跳」
かかとに小さな羽を生やしジャンプ力を高める。

「剣」
杖を剣に変え、使い手の意思次第で切れ味を変えられる。
ただし、制限により切れ味の上限は決まっているものとする。(ようは何でも切れるような万能さではなくなっている)
更に強力なカードな為、制限を課し一度の使用で24時間再使用不可能。

「盾」
使用者の意思により防御力を増すドーム状の結界を作り出す。
制限により、結界の長時間の持続は不可、更に一度の使用で12時間再使用不可能。



【乾紗寿叶@その着せ替え人形は恋をする】
[状態]:健康、殺し合いに対する恐怖(大)、元太を死なせてしまった罪悪感(大)、魔法少女に対する恐怖(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
1:……。
2:妹(178㎝)は居ないと思うけど……。
3:さくらさんにはちゃんと謝らないと。
[備考]
原作4巻終了以降からの参戦です。



【日番谷冬獅郎@BLEACH】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(中)、卍解不可(日中まで)
[装備]:氷輪丸@BLEACH
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2、元太の首輪、ソフトクリーム
[思考・状況]基本方針:殺し合いを潰し乃亜を倒す。
0:小学校でしばらく休む。
1:巻き込まれた子供は保護し、殺し合いに乗った奴は倒す。
2:海馬コーポレーションに向かい、乃亜の手がかりを探す。
3:美遊、シュライバーを警戒。次は殺す。
4:紗寿叶が気掛かりだが……。
[備考]
ユーハバッハ撃破以降、最終話以前からの参戦です。
人間の参加者相手でも戦闘が成り立つように制限されています。
卍解は一度の使用で12時間使用不可。


【全員共通の備考】
※ハンディ・ハンディ、シュライバー、美遊が危険人物であると情報交換しました

032:君がいてくれるなら 投下順に読む 034:救いの……
時系列順に読む
001:壊れた幻想 日番谷冬獅郎 054:為す術のない僕に芽吹いた焦燥が膨らんでいく
乾紗寿叶
195(候補作採用話):さくらと不思議なお手々 ルーデウス・グレイラット 070:ターニングポイント
木之本桜
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