コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

ラフ・メイカー

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だれでも歓迎! 編集
機関銃の様に繰り出される、凍てついた氷の弾丸。
氷点下の殺意の弾幕を前に、少女は蝶のように宙を飛翔した。
体中が痛い。視線を落として自身の身体を確認すれば、紅く染まっていない場所の方が希少な程だ。



「がはッ!!」



どろりと鉄臭い液体を吐き出す。
ここ三時間足らずに起きた連戦に依る疲労と、クロエ・フォン・アインツベルンとの断絶によって。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは心身ともに疲労困憊だった。
いま彼女が命を繋げているのは魔法少女として備えた飛行能力故だ。
もし地上にいれば、とっくに氷の礫の餌食になっていたに違いない。
まぁ、とは言え。それも後何時まで続くかという話になりつつあったが。



(痛い……苦しい……でも………まだ………あと少しで………)



まだ墜ちる訳にはいかない。
まだ負ける訳にはいかない。
今ここで諦めれば、俊國と呼ばれていた少年はディオ達を追うだろう。
だから、自分がこうしてあの俊國を引き付けなければならない。
俊國が自分に狙いを定め、今も苛烈な攻撃を続けているのはある意味幸運だった。
そう感じながらイリヤは眼下で氷の砲弾を放ち続ける敵手を確認し、目が合う。
粘ついた粘着質な視線。会話は出来ても話は通じない。そう確信させる眼差しと目が合った。
その瞬間、イリヤは俊國の攻撃の意図を悟る。



(嬲ってるんだ……遊ぶみたいに………私が………墜ちるまで………)



無機質と言えるほど冷淡であるのに、ドス黒いクレバスの様な混じり気のない悪意。
交わした視線から直感的にそれを感じ取り、イリヤの全身に怖気が走る。
急に全身を冷たい水風呂に漬けられた錯覚さえ感じ、膝から下の皮膚が震えだす。
今、自分が相対しているのは人の痛苦こそ悦びである怪物。純粋なる”魔”。
その事実をこれでもかと突き付けられ、ほんの僅かな間、思考と動作に空白が生まれてしまった。
そして、その隙を俊國は見逃さなかった。



『────イリヤ様!!』



サファイアの叫びにも似た呼びかけが耳朶を打つ。
発せられた愉快型魔術礼装の音声に籠められた感情は警告。
しかし、それをイリヤが耳にした時には既に遅く。
直後、イリヤを取り巻く世界は無音となり。
ゴッ!という無機質な激突音が木霊した。




「────あ、ぐ………ぁッ………!」



カレイドステッキの展開する物理保護を突き破り。
竦んだ瞬間に食い込む様に一際早く射出された氷の矢が、イリヤの額を直撃したのだ。
ドロリと鉄臭い体液が割れた額から流れ、世界に火花が散る。
自分は今上昇しているのか下降しているのかすら覚束ない。
揺れる世界の中でサファイアの悲痛な声が響くが、聞いている余裕はない。



「ク……ロ………!」



完全に脳震盪を起こし、それに抗う術は今のイリヤにはなく。
ただ成すすべなく墜落する事だけが、今の彼女に唯一可能な行動だった。






口ほどにもない。
依然俊國の姿を取った魔神王は今しがた撃墜した魔術師の少女をそう評価した。
恐らくは下らぬ仲間を逃がす為だろう。時間稼ぎをしようと必死の様子であったが。
結局地上から氷矢の釣瓶撃ちで撃ち落とし、逃走劇はそう時間をかけず終わった。
それはいい。だが、魔神王にとって俄かに煩わしかったのは乃亜のハンデだ。
魔神王本来の姿つまりはリィーナ姫の姿であれば飛行する事は造作も無かったが。
しかし俊國の姿を形どっていては、本来の姿の飛行能力が発揮できなかった。
もし変身能力が平時のコンディションであれば、もっと早く決着が着いていただろう。



「……くだらぬ」



先ほど金髪の小僧といた地点からはそれなりに引き離されたが。
それでも魔神王の身体能力ならこの程度の距離は他愛もない。
あの小娘を喰らってから追撃を行ったとしても十分追いつける。
今は俊國の姿を取っているが、あのイリヤとかいう小娘の姿で襲うのも面白いだろう。
ロードスを欺き、災禍をもたらしてきた魔神王の常套手段。
慣れ親しんだその方法で新たに人間どもに絶望を与える瞬間を想起し、魔神王は嗤う。



「贄の時間だ」



俊國本人が浮かべるであろう笑みとはまた違った邪悪な笑みを満面に貼り付け。
翼を奪った小鳥の命を収奪せんと、魔神王は歩を進める。
相互理解など不可能。交渉の余地など何処にもない。
彼或いは彼女は存在し続ける限り、人類の敵対者であり続けるのだ。







………ったく、つくづく呪いのアイテムだな。この仮面。
建物と建物の間の裏路地で、ぼうっと嫌んなるくらい青い空を眺めて愚痴る。
正直、もう暫く寝てたかった。しんどすぎる。
ジミナ村旅立ってからも、ここまでしんどい思いはしなかった。
バトル展開続きすぎなんだよ、衛藤ヒロユキが作画なら卒倒してるっつーの。



『ちっ、起きたかクソガキ。俺は今度こそ死ぬ方に賭けてたんだがな』



こいつもこいつで憎まれ口は変わらんなぁ。
そう思いながらも、俺の身体を操ってここまで連れてきてくれたアヌビスに礼を言う。
そのあと、俺がどれくらい寝てたか尋ねると、十分くらいだと返事が返って来る。



『オラ、起きたならDIO様を助けに行くぞ、さっさと立て』
「お前使い手に対する気遣いとかないのかよ」
『テメーの様なフニャチン野郎に力を貸してやってるだけで崇め奉って欲しい位だぜ』
「そうか、じゃあお礼に玉ねぎのみじん切りにでも使ってやるよっ!」
『なッ!テ、テメーそんなもんどっから出した!やッ!やめろッ!目が染みるッ!』



カカカカカカとまな板の上に乗った玉ねぎを素早くみじん切りにして。
そしてみじん切りになった玉ねぎをアヌビスの刀身の上にのせてやった。
火の王が言ってたんだよ。こうすりゃ食材の臭みが抜けるってなァ!



「あ………っ」



けどそれが達成される前に、俺の手はアヌビスをからんと取りこぼして。
そして、全力で走りきってバテた時みたいにばたっと後ろに倒れる。
まだ体が回復しきってないみたいだ。口の中も体の調子も兎に角しょっぱい。
乃亜はチート能力くれるのはこの際いいからギャグマンガ補正だけは返せよ。
不味いな。今マーダーに襲われたら一巻の終わりだぜ。
そう、クロ達みてーな…………





────私は……………グレーテルだけの味方になる




…………………………はぁ。
なんで今、思い出しちまうかね。
もう俺の手じゃどうにもならんってハッキリしたのにさ。
あいつらはこれからも……多分殺すのを辞められない。
俺じゃ止められなかった。これ以上どうしろってんだよ。
もうさァッ!無理だよッ!ギャグマンガのキャラなんだからさァッ!
そう叫びたかった。だけど。




────また私を、冒険に誘ってくれますか?勇者様。




あぁ、クソ。どうしようもなく、おれはククリに会いたい。
あの子が勇者様って俺をそう呼んだら。
ダメダメでも、だらしなくても、場違いなシリアス展開でも。
ちゃんとした勇者様にはなれなくても、今みたいに”ザコキャラニケ”じゃなくて。
ククリの言う”ゆーしゃ様”にはなれる気がした。




「………何か、不思議なもんだな」



もー無理だって、三十秒前までそう思ってたのに。
瀕死も瀕死で、勇者と言うよりスペランカーみてーな状態なのに。
ククリの顔が浮かんだら──どうすればいいのか未だに分かんないけど、
それでも寝てる訳にもいかない。そんな気分になったんだから。
きっと半人前の勇者ニケには、魔法使いククリが一番のグルグルなんだ。




『ま、格好つけても体は動かんわけだが』




感動的に奮い立たせようとしてるのに、人の心を読むなよ呪いのアイテム一号。
とは言っても、アヌビスの言ってる事はもっともだった。
どんだけ気持ちを奮い立たせても、体は動いてくれない。
こういう時、バトル漫画のキャラならメンタルがフィジカルを凌駕したとか何とか。
無理くり理由を付けて動かせるんだろうけど…俺にはどうにも無縁みたいだ。
となれば、後取れる手段は一つしかない。



「なぁ、アヌビス……」
『やだね。死にてぇなら勝手にしろと言いたいが、今お前が死んだら下手すりゃ俺までとばっちりだ」



ぐ、と言葉に詰まる。
確かにこいつからしたら今俺が無茶をして死なれたら契約書の呪いをおっ被るかもしれない。
だから俺を無理やり動かしたくないのは俺にも分かっちまった。なんせ俺でも多分断る。
でも、今はそんな事を言ってる場合じゃないんだ。イリヤやエリスやナルト、後ついでにディオの奴が危ねーかもなんだ。



『ディオ様は心配だが、お前と心中なんてごめんだね』
「そうは言ってもなお前……仮にここに寝っ転がってても、マーダーが来たら────」



今シュライバーみたいな奴が来たら描写なしで死亡って文字が出てもおかしくない。
俺自身の安全の為にも、エリスやナルト達とは早く合流しないといけないんだ。
そうでなくてもさっきから嫌な予感がひしひしと───




「よう、ルパート・パプキン。元気そうだな?」




ほら来た。
誰だよルパートって。
心の中でツッコみながら、恐る恐る目だけ動かして頭の上を見てみる。
そうしたら、青コートにディオみたいな金髪が俺を見下ろしていた。
うーん、どう見ても愛や平和とかとは無縁の雰囲気出してるなぁ。
ま、物は試し。媚びを売ってみるか。




「……へへっ、イカした旦那ァ…ちょいと助けてくれねぇですかい?」





ゆうしゃ は ぜんりょく で ゴマ を すった !



「………いいぜ。言ってみな、兄弟」
「しかし なにも ───えっマジ?」



まさか乗って来るとは思わなくて、思わず素っ頓狂な声が出ちまう。
でも事実青コートは動けない俺に手出しをする様子は無い。
ただ薄ら笑いを浮かべて、こっちを覗き込んでくるだけだ。
どうにも薄気味悪いけど、人は見かけに寄らないもんだなぁ。ラッキー!
そう考えながら俺は青コートに仲間の所に運んでもらえるよう頼む。
取り合えず回復液を持ってるナルト達と合流したい。
仮面の力にあの不味そうなスムージーがあれば、取り合えず動けるようにはなる筈だ。
待ってろよみん────ぼきっ───な……?



「………ん?」



何か、小枝を折るような音が響いて。
それに合わせた様に、俺の左手の小指に痛みが走った。
猛烈に嫌な予感がして、ゆっくりと左手に目を向けてみる。
そしたら、俺の左手の小指は、あらぬ方向を向いていた。
気づいた瞬間、めちゃくちゃな痛みが腕から頭まで昇ってくる。



「………あ、うわあああああああああああッ!?!?」
『お、おいニケ!?』



驚いたアヌビスの声も耳に入らない。
堪らず俺は悲鳴を上げる。
くそっ!う……裏切られた!
ボロボロの奴も冷徹非常にぶちのめすメンタルこそ強さだと思ってるタイプの奴に声かけ───ぼきっ。



「うぎゃああああああああッ!!!」



マジで痛い。
シュライバーに散々やられた傷もまだ完全に治った訳じゃ……ねーんだぞ。
逃げようとしても身体が動かん。これはダメージじゃなくて、押さえつけられてる。
このままじゃ嬲り殺される。くそ、何で……




「理由?特に理由なんてねぇよ」




悪魔かよこいつ。



「いやぁ悪い悪い───けど、さ。俺は自分が対主催だなんて、一言もいってないぜ?」



そりゃそうだろうな。いきなり人の指へし折る対主催がいるかよ。
出会った時から予想できた事だけど、やっぱりマーダーかこいつ!
一体俺が何したってんだよ!親父とかの役回りだろこういうの!
しかも……逃げなきゃいけねぇのに、身体……動かねぇ。
くそ……死ぬのかよ。ククリにもまた会えないで、こんな所でゲームオーバーか。





────私は…グレーテルだけの味方になる。




あぁ、畜生。
こんな時に何で思い出すんだ。
もう俺じゃどうにもならないって分かっただろ。
ギャグマンガの人間にシリアス期待する方が間違いってモンだろ。
それなのに────何でこんなにムカつくんだろうな。



「どいつも、こいつも……!!そんなに乃亜が怖いってのか」



戦わなきゃ生き残れないのかもしれないけど。
殺さなきゃ生きていけないのかもしれないけど。
でも、それを命令した乃亜がそんな大層な神様にでもこいつらには見えるのか?
本当に勝ち残ったら願いを叶えてくれる様に見えるのか?
これで終わりかもしれないんなら、言いたい放題言ってやるぜ。



「あんなの、単なる捻くれた根暗なガキじゃねーか。
大方この殺し合いも漫画か映画でも見て影響されただけだろ」



モニターの前でカカカ……!これぞ人間の本性……!とか吹いてそうだもんな。
影響されるなら1000万部超えの大人気ファンタジーギャグ漫画とかにしろっての。
っと、話が逸れた。俺が言いたいのはつまり────



「知ってるか?世界の半分を選んで部下になってもロクな事にならないんだぜ」
「……そうか、ならお前ならどう答える?聞かせてくれよラフメイカー」
「そんなもん決まってる」



見ただけで何となく分かる。アンタ、絶対強いだろ。
勇者と言うより大魔王の方が似合うけど、まぁとにかく。
アンタも、何ならクロやグレーテルも。
いう通りに殺しまわりますから願いを叶えて下さいなんかじゃなくて
云うべきことは一つしかないだろ。





「───お前を倒して……残りの地上もいただく………!」




え?それ単に「いいえ」を選ぶのと変わらないだろって?
こっちの方がこの勝負に負い目は一切ないって感じで自信と勝ち目を生むんだ。多分。
とにかく、味を占めた『2』なんてもんを作られず。
ビシッとハッピーエンドを目指すならこれっきゃないだろ。
クッソ痛い痛みの中で、涙目になりながら俺は言い切った。
それを聞いた青コートは少しの間ぽかんとした顔で、その後にまた薄笑いに戻って。




「────そのザマで、まだそんな事が言えるのは大したもんだな」




青コートがそう呟くと同時に、身体からフッと圧迫感が消える。
そして、目の前の青コートはブラックって名乗った。
ヤケクソで言った滅茶苦茶が何か上手く転んだのか?
俺はよく分からず、呆然と「助けてくれんの?」と尋ねてみた。
するとやっぱり何を考えてるのか分からん態度で、ブラックは言う。
ナチュラルに俺の質問は無視された。




「教えてくれ、いい加減お前はこの島を知ったと思うが───
何時までコメディアンを続けるつもりなんだ?」
「無論死ぬまで。
ギャグマンガのキャラはな、笑いを忘れたら死んじゃう悲しい生き物なんだよ」




あとついでに言えば、死ぬ前に何となく(多分)で指折られた復讐もしたいよ。









不可解だと思った。
撃ち落とした羽虫は<逆感知>によってそう時間を掛けず発見した。
我の攻撃を受けたのだろう。小娘の片腕は千切れかけていた。
鮮血を蕾の開いた花の様に開かせ、動く事もできず。
死に体の身体を、見すぼらしく見慣れぬ建築の壁に預けている。
それだけならば、何も疑念を抱く所はない。
だが、娘の瞳は違った。
精魂尽き果てかけている身で、瞳だけは焔が燃えている。




「面白い。まだ動くか、その身で」




我の姿を認めると、娘はずるずると這いずり距離を取ろうとする。
最早戦う力が無い事はおろか、生存すらままならぬ醜態。
放って置いても失血で息絶えるだろう。この魔術礼装を抑えている限り。
ランドセルとやらも凍りつけにしたため、開く事はできない。



『くっ……イリヤ……様!』



宙を浮かんでいた礼装を凍りつけにして捕え、主が死に絶える様を見せつけてやる。
その後、あの娘を喰らい、あの娘の姿で殺戮を行うというのもまた一興。
だが、まだだ。まだそれだけでは足りぬ。



「もう…少し……あと、少しで…………」



うわ言を呟きながら、地を舐め必死に逃げようとしている。
無様そのものの有様であるのに、どこへ行こうというのか。。
失血死寸前の最早単なる人間の小娘が、何の光を見ているのか。
その希望をかき消したいと、そう思った。



「あ、ぎ……ッ!?ああああああああああああ!!!!」



放った氷矢を娘の掌に命中させ、串刺しにする。
這いずる事すら禁じられ、地蟲の様に這いずる事すらできない。
喰らった中島の知識で言えば、王手と言った所か。
これで娘の瞳の光は消える。その確信があった。




「……………………!」




だが、
娘の瞳から、光が消えない。
この期に及んで、まだ足掻こうとしている。
武器は奪われ、致命傷を負い、その身を磔にされて。
それでもまだ瞳だけは───星の様に瞬いている。
不可解だった。不愉快ですらあった。
娘は我に目もくれる事無く、獣が如き吐息を漏らしながら歯を食いしばり。
そして。




「う────がぎぐぃいいいいぁぁあああああああああッ!!!!」





────ブチブチブチブチブチッ!!
戒めを受けていた自分の掌を引き裂き。
ぶよぶよとした筋戦意を露わにして、逃れて見せた。
全くもって度し難い。何故そうまで藻掻き、生きるのか。
この娘の導(ひかり)は、何処なりや。或いは、現実を理解できぬ狂人であったか。
そう考えながら、ゆっくりと歩を進める。
まぁいい。喰らえばこの娘が何を考えていたか、暴き立てることは容易だ。
絶望王との戦争に備える必要もある。ここで殺し、次へ駒を進めるとする。




「あと、少し……あと、少し、で………げほっ!がほっ!う、げぇ…っ!」




我の瘴気の影響か、娘が血反吐と吐しゃ物を同時に吐き出し崩れ落ちる。
自らが吐き出した汚物に溺れる様は、憐れな程に滑稽で、見苦しい。
これにて幕引きにしてやろうと、娘を喰らおうとした時だった。
聴覚が、娘のうわ言の様な小さな呟きを捕える。



「違う、よ。私は何処かへ逃げようとしていたんじゃない────」



娘の身体が、輝きを放つ。
娘の身体の下から、何かが光を放っているのだ。
理解する。娘の瞳から光が消えなかった裏付けを。
つまりこの人間は、言葉の通り逃げようとしていたのではなく。
ただひたすらに待っていたのだ。恐らくは何某かの支給品が使用可能となる刻を。
己の血肉を引き裂く事すら、この瞬間を迎えるための布石でしかなかったという事だ。





────夢幻召喚!!





その手に握っていた娘の杖の形状が変貌を遂げる。
トドメを刺すために我が近づく所までが娘の狙い。
斧剣と化した杖は大幅に重量と長大さを増し、娘が先ほどまで杖であった斧剣を掴む。
自己の強化と武装の奪還、一挙両得の妙手。
だが、甘い。



「かっ………!?」



ぴしぴし、と氷柱が発生する音が響く。
この瞬間に至るまで、細工をする時間は幾らでもあった。
万が一小娘が逃げおおせたとしても、逃げ延びた先で凍り付き、凍死に追いやる為の罠は当に完了している。
故に、小娘の死は覆ることのない確定した結末。





「終わりだ」




一瞬にして、娘の総身を凍り付かせる。<逆感知>を使うまでもない。
娘の死は確定した。確かに死んでいる。絶対に凍死している。後は氷漬けになった娘の脳を食らうのみ。
その筈だった。




「────何?」




ガラァアアアアアアアンッ!!
氷塊が砕ける音と共に、氷柱の中から娘が姿を現す。
肌を晒し、獣の腰巻を巻いた姿の娘が、此方へと手を伸ばし、今度こそ掴む。



『イリヤ様!!』
「サファイアを───返して!」




成るほど。何か蘇生効果のある秘蹟か魔術を有していたか。
ナシェルより幼く、リィーナ姫と変わらぬ齢で。
まったくよくぞここまで捨て身の策に全てを賭けたものだ。
凄まじい豪打の衝撃に総身を虚空へと躍らせながら、僅かな賞賛の感情を娘へと送った。








別次元の変貌だと、魔神王をしてそう評価せざるを得ない。
それ程までにイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの攻勢は劇的だった。
奪い返した斧剣を嵐の日の風雨の様に振るい、全霊を持って魔神王を打ち据える。



「あぁあああぁああああああああああッ!!!」



人間であれば、一発一発が即死に至る猛攻。
それを容赦なく、目の前の襲撃者に対してぶつける。
彼女らしからぬ容赦のない戦闘。だが、それを成すに足る理由があった。
まずサファイアから俊國は人外であり、生半可な攻撃ではダメージすら与えられないと聞いている。
加えて、狂化が使用者に付与されるバーサーカーのクラスカードの全力稼働。
そして何より───全力で攻勢を成さなければ、詰まされるという危機感。



───十二の試練の耐性を得てなお……この凍結能力……!




イリヤの手のサファイアが言葉にしないまま戦慄する。
十二の試練(ゴッド・ハンド)の耐性を貫通して、俊國の凍結能力はイリヤを殺害したが。
その後に発動した蘇生効果で虚を突き、更には凍結能力の耐性を得ることすら成功した。
だが耐性を得てなお、戦闘の天秤はイリヤに傾かない。
凍結能力の耐性も、凍り付き凍死する恐れが無くなっただけで凍り付く事が無くなった訳ではない。
そして俊國の力は膂力だけでもAランクに匹敵するそれだ。
十二の試練のストックは残り一つ、これが尽きればイリヤに後はない。




(不味い……!)




それに加えて、バーサーカーのクラスカードは消耗が大きい諸刃の剣だ。
もし、俊國を打倒するまでにイリヤが限界を迎え、カードが排出されれば。
もうイリヤに打つ手はない。にも拘わらず、戦況は既に消耗戦の様相を呈していた。
手ごたえが弱い。勝てる気がしない。
攻め立てているのはイリヤの側であるのに、一撃を与える度に目の前が暗くなっていくのを感じる。



(もう……時間が………!)



もう時間がない。
狂化は着々と進行している。
今この時点で理性を失ってしまえば、イリヤの勝ち目は完全になくなる。
消耗戦に持ち込まれれば圧倒的に不利なこの状況で。
完全に理性無き狂戦士と化せば撤退と言う選択すら封じられてしまう。
イリヤの魔術回路が限界を迎えるまで暴れまわり燃料切れで殺されるか。
或いは、カードの強制排出がハンデとして仕掛けられていれば。
元の姿に戻った後、耐性を失った肉体を氷漬けにされれば今度こそ死ぬ。
何方にしても、持久戦に入ってしまえばイリヤに望みは無くなるだろう。




(その前に、退くしか────)



バーサーカーのクラスカードを切ってなお、このまま闘っても勝機は限りなく薄い。
となれば、後残る選択肢は撤退しかない。
凍結耐性を得た今の肉体であれば、逃げ切るのは不可能では無いだろう。
ディオ達ももう逃げのびた筈、となれば逃げても問題はない。
魔神王を打ち据え数メートル吹き飛ばし、両足に力を籠める。



しかし───その選択は一手遅かった。



「な……ッ」




キィィンという、鳥の嘶きに似た旋律が周囲に広がり。
イリヤと、吹き飛ばされ仰向きに寝転がる魔神王を中心として氷壁が現れたからだ。
銃弾どころか砲弾すら跳ね返してしまうのではないかと言う程、分厚い氷壁。
デモンズエキスの力によって作られた、イリヤのための牢獄であり棺桶。
魔神王の妨害を掻い潜り、時間切れまでにこれを破壊して逃げ延びる。
壁の破壊を試みている間は必然的に無防備となるだろう。そんな条件で。
直感的に理解してしまう。これを破壊して逃げるのは不可能に等しい。



にげられるとでも?



仰向けで首だけ起こして此方に向けて笑いかける不死身の怪物。
数十発はヘラクレスの剛力で打ち込んでいるのに、まるで堪えた様子は無く。
その笑みは今のイリヤの心胆ですら凍り付かせかねない程、恐ろしい物だった。
寒さと怯え、その二つで震えそうになる手を抑え込んで。



「行くよ、サファイア」
『イリヤ様、無茶です!』



サファイアが悲鳴にも似た制止の声をあげる。
だが、撤退が絶望的になった以上、これしかない。
魔神王が暫しの間──数十秒だけでも行動不能になるダメージを与え。
その回復の間に氷壁を破壊し、撤退しか選択肢はない。
それがどれほど実現可能性に乏しい試みかは、イリヤ自身理解していた。



「だけど───未来は前にしかない!!」



覚悟を決めて、起き上がり悠然と佇む魔神王の元へと吶喊する。
魔神王はそれを、無感情に見つめた。
イリヤの手持ちのカードが尽きた事を悟ったからだ。
周囲にイリヤ以外の気配は無く、妨害があっとしても氷壁の存在がそれを阻むだろう。
故にここから先は見えた勝負でしかない。
後は時間切れまで目の前の人間と泥仕合に興じ、限界を迎えた敵手を殺すだけ。
事の他、つまらない幕切れとなる予感を魔神王は感じていた。
とはいっても、見逃すつもりは毛頭ない。
地縛神の力を手にするためには贄が必要なのだから。
無感情に、淡々と、蛮勇の星を誇り高き肉片に変えるべく構えを執る。





「う、ああああああああああああッ!!!」




対する少女は勇ましい咆哮を轟かせるものの、目の前の闇は晴れない。
根本的な負け戦を覆せる手札は、今の独りであるイリヤにはない。
そう、今の彼女は独りだった。
守らなければならない弱者も、肩を並べて戦う仲間も今の彼女はいない。
ここまで恐れを知らぬ戦士の様に戦いに身を投じてきた彼女の胸に、初めて怖気が渦巻く。


怖い。痛い。いやだ。何で私が。クロ。


生と死の狭間、絶望的な消耗戦が始まろうとしている最中に、目の前が黒く染まる。
きっとそれは、バーサーカーの狂化の影響だけによるモノではないだろう。
月すら見えぬ夜の闇の中でも瞬く星は、しかし闇夜を照らすことはできはしない。
どれだけ煌めこうと、所詮は一つの小さな星でしかないのだから。







「氷の壁がジャマで他のモンが届かなくてもよぉ~~~~~!」







だけれど、それでも星が輝くことに意味はあった。
闇の中でも輝いていたからこそ、見つけられる事もある。
そして、闇を照らせないならもっと強い光を持ってくればいいだけの話だ。



まさか。



魔神王の心中にその三文字の言葉が去来する。
分厚い氷の壁に阻まれて、本来ならば聞こえるはずのないその声。
以上発達した魔神王の聴覚はそれを正確に聞き取ってしまう。







「光なら届くよなぁ~~~~~っ!!!」






突如として背後に現れた二つの気配。
一つは間違いない。絶望王の物だ。
あの男の瞬間移動能力でない限り、ここまでの力の持ち主の接近を気づけぬ筈がない。
そしてもう一つ、もう一つも魔神王の知っている気配であった。
何より、背後より体を貫き完全に固定するこの光を浴びれば疑いようがない。
不味いと、そう思った。あの光を浴びている間は物質界に実体を持たない魔神(デーモン)すら。
やはりあの時に感じた危惧は正しかった。あの道化の勇者は、我(まおう)の天敵だ。





「どッ──────」




かっとばせ。
逆光で殆どあのふざけたポーズを取る顔は見えないし、氷壁に阻まれて声も聞こえないけれど。
それでもイリヤにはその時、勇者があの気の抜ける顔でそう言っているように思えた。
だからこそ斧剣を両手に持ち替えて、大きく振りかぶる。
片足を振り上げ、一本足強打法。ホームラン王の構えだ。




「────せぇええええええええいッッッ!!!」




気合一閃と共にスイングされる斧剣。
それは勇者の放つ光によって身動きの取れない魔神王を真っ芯に捉え。
両手持ちに持ち替え、ホームラン王の構えを取った剛力はミサイルを超える破壊力を生んだ。
0.1秒後、ガラァアアンという鐘が響くような音が大気に木霊する。
氷の天蓋を突き破り、魔神王に対する一旦の勝利を示す号砲だった。








不覚を取った。
魔神王は痛打を受けた腹部を摩りながら、その事実を認めた。
前に勇者のあの光を受けた時は単独だったため、知る由も無かったが。
徒党を組んで戦えば、あの能力は紛れもなく魔神王にとって天敵に等しい脅威に他ならない。
あの光を浴びた瞬間の魔神王は、確かに魔界から物質界へと魂魄を固定されていたからだ。
偶々娘の一撃が剛腕だが雑な物だったため、痛打で済ませる事ができたが。
もし相手が絶望王であれば、魔神王はここにいなかったかもしれない。



「……やはり、必要だな」



欲するのは、乃亜から与えられた鬼札。
地縛神の力が、この殺し合いを勝ち抜くには必要だ。
その為には、もっと多くの人間を殺し、藤木も喰らい、ドミノを稼がなければならない。
幸いにして、この島は戦場には事欠かない。
魔神王の眼前に見える小学校で巻き起こっている様子の戦乱が、それを証明している。




「………次だ」



先の戦いの損傷はあるが、戦闘には支障がないと判断。
であれば、闘争を避ける選択は彼或いは彼女には存在しない。
機構(システム)めいた無機質な声を漏らすと、魔神王は次なる戦場へとその身を投じる。




【一日目/午後/G-5 小学校】

【魔神王@ロードス島伝説】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、魔力消費(極大)、無惨(俊國)の姿
[装備]:魔神顕現デモンズエキス(3/5)@アカメが斬る!
[道具]:賢者の石@ハリーポッターシリーズ(半分消費)
[思考・状況]基本方針:乃亜込みで皆殺し
0:小学校で起きている戦いに乱入し、殺す。
1:絶望王は理解不能、次に出会う事があれば必ず殺す。
2:魂砕き(ソウルクラッシュ)を手に入れたい
3:変身できる姿を増やす
4:覗き見をしていた者を殺すまでは、本来の姿では行動しない。
5:本来の姿は出来うる限り秘匿する。
6:藤木は見付け次第食らう。
7:真なる地縛神を手にする。報酬システムを使い乃亜に打診する価値はある。
8:より強い力を手にする。これではまだ足りぬ。
[備考]
※自身の再生能力が落ちている事と、魔力消費が激しくなっている事に気付きました。
※中島弘の脳を食べた事により、中島弘の記憶と知識と技能を獲得。中島弘の姿になっている時に、中島弘の技能を使用できる様になりました。
※中島の記憶により永沢君男及び城ヶ崎姫子の姿を把握しました。城ヶ崎姫子に関しては名前を知りません。
※鬼舞辻無惨の脳を食べた事により、鬼舞辻無惨の記憶を獲得。無惨の不死身の秘密と、課せられた制限について把握しました。
※鬼舞辻無惨の姿に変身することや、鬼舞辻無惨の技能を使う為には、頭蓋骨に収まっている脳を食べる必要が有ります。
※右天の脳を食べた事により、右天の記憶を獲得しました。バミューダアスポートは脳が半分しか無かった為に使用できません。
※野原しんのすけの脳を食べた事により、野原しんのすけの記憶と知識と技能を獲得。野原しんのすけの姿になっている時に、野原しんのすけの技能を使用できるようになりました。
※野原しんのすけの記憶により、フランドール・スカーレット及び佐藤マサオの存在を認識しました
※変身能力は脳を食べた者にしか変身できません。記憶解析能力は完全に使用不能です。
※幻術は一分間しか効果を発揮せず。単に幻像を見せるだけにとどまります。








「もー入院してお粥でも啜っておきてー気分だけど、イリヤが助かってよかったよ」




戦いが終わって。
ニケくんと私は背中合わせで座り込んでしまう。
お互いボロボロで、もう逆さに振っても何も出てこない。
本当はジュジュさん達の所に行かないといけないけど、流石に限界だった。



「ニケ君も……無事……ではないね、うん」
「あぁ、まぁ……さっきのかっこいいポーズも介護が無けりゃ無理だったな。ひっでぇ有様だよ全く」



そう言って軽い調子で言うニケ君の格好は、血塗れだった。
話を聞くと大部分をやったのがシュライバーと言う人みたいだけど…
クロと、あのグレーテルと言う子の事を聞くと、彼は言葉に詰まって。
クロ達にもやられた事は、言わなくても分かった。



「……その、ごめん。クロが………」
「いやホント、パンツ見る位じゃ全然足りなくなって来たのは確かだな」



一々幻滅させに来るのはやめて欲しい。



「俺の方こそごめん。俺一人じゃ、クロ達を止めるのはどうにもならんかった。
…………クロの奴言ってたよ、グレーテルだけの味方になるって」



背中合わせで顔は見えないけど、それでもニケくんは申し訳なさそうに私に謝った。
それからお互い何と言っていいのか分からなくて、私達は押し黙ってしまう。
クロに啖呵を切った時の熱は、とうに何処かに行ってしまっていて。
どうすればいいのか分からない。どうすれば、クロの目を醒まさせることができるのか。
思えば何時も私が悩んで迷った時に、いつもどうすればいいか道を示してくれたのはクロだった気がする。
そんな私に、ニケ君は尋ねてきた。




「これは確認だけど…イリヤはさ、今もクロと仲直りしたいと思うか?
こう言っちゃなんだけどクロの奴、もうグレーテルと行く所まで行くって感じだったよ」



ニケ君の言葉は、声の調子自体はこれまでと変わらない軽い物だったけど。
話す雰囲気と内容は、私に重くのしかかる物だった。
それでももう、決めた事だから。私の答えは変わらない。




「……うん。それでも仲直りしたいかな」



クロにも、あのグレーテルって子にも教えてあげたかった。
そんな事をしなくても生きられるんだよって。
そんな事をしなくても、幸せになれるし、なっていいんだよって。
カビが生えそうな湿った世界なんて、ギラギラの太陽で照らし付けてあげる。
少し前にそう言った言葉を、曲げるつもりは無い。
例え、ニケ君が無理だって言ったとしても────



「─────そっか。いやぁ、気が合うな。俺も丁度そう思ってたんだ」



今迄みたいに何も考えてなさそうなあっけらかんとした声で、ニケ君はそう言った。
え?今までのやり取りの意味は?



「いや俺もさ、どうしようかと思ってたんだよ。何しろ俺一人じゃクロの奴話聞かないし。
でも俺もやっぱ、あいつらが乃亜の言いなりになるのは嫌だわ。クロがグレーテルの事大事ならなおさらな」



だって、とニケ君はそこで言葉を区切ってから続けた。



「乃亜はさ、ずっと言ってたじゃん。生き残れるのは一人だけだって。
それじゃあどっちが生き残るにしても、あいつらにとっちゃ叶えたいと思ったエンディングにはならないと思うんだ」





そうだ。
最後の二人になれたとしても、何方が生き残るかクロ達は決めないといけない。
優勝する人の席は、一つしかないから。
そして、グレーテルという子の味方になるとクロが言ったのなら。
多分クロは、グレーテルに優勝を………



「俺が勇者になるって決めた理由にククリって子がいるんだけど……
そのククリを今の旅が終わって、もっかい冒険に誘うまで……俺はゆーしゃ様でいとかないと何だよね」



だから、そんな乃亜のバカくらいしか喜ばないエンディングなんて御免こうむる。
俺はクロのことかわいー子だって事くらいしか知らないけど。
理由がククリの為って話ならまぁ最後までやってもいいかなって、そう思うんだ。
そう言うニケ君の声は、今迄で一番真面目そうな声をしていた。




「俺にはシリアスがよー分からんし、正直こんなシリアスは分かりたくも無いけどさ。
誰もあいつらに言ってやらないなら、偶には誰かがデカい声で言ってやってもいいだろ」





殺さなきゃ生きられないなんて、心配ばっかするなよって。
この島の外の世界はもっとバカバカしくて、力の抜ける場所だからって。
そう、ニケ君は言い切った。
その後、彼は私に頼んでくる。手伝ってくれって。



「俺一人じゃグレーテルかクロか、どっちかだけで手一杯だからさ。
イリヤが諦めないっていうなら丁度良かったよ」
「…………………」



クロを助けたいなら、一緒にやろう。
ニケ君が言いたいのはつまり、そう言う事だった。
その言葉は有難かったけど、同時に本当にいいのかな、とそう考えてしまう。
だって、ニケ君はクロとはこの島で出会っただけで。それなのに命懸けで私達の事情に巻き込んじゃってる。
ニケ君はククリさんと自分の為だって言うだろうけど、それでも私達からは何もニケ君に返せそうにない。



「あ、言っておくけど好きになっちゃ困るぞ?いやお近づきにはなりたいけども。
ククリの奴がまた悪魔化したら宥めるのスゲー大変だから」
「あぁうん、それは大丈夫。ニケ君全然タイプじゃないから」
「おいアヌビス、お前イリヤの言葉に切れ味負けてないか?」
『斬り捨て方がうっかり触った虫と同レベルだな』



また気の抜けたやり取り。
疲れ切ってて、ボロボロで、不安な事だらけだけど。
それでもそんな今の私でも、ふふっと笑う事が出来た。
そして、数秒後に私の中で答えが決まる。
一緒にやろうって、そう伝える事ができた。



「………あぁ、そっか。ほんじゃあ……悪いけど…………
少しの間……すぐ起きるから、15分だけ、休ませてくれっと………」
「うん……大丈夫、ちゃんと……ニケくんが起きる、まで………」



返事を返した瞬間、私の中で何かの糸が切れたのか。
ふっと意識が薄れていく。
駄目……ニケ君に頼まれたのに。
ちゃんと……起きて、何ならディオ君たちの所にニケ君を運んでおかないと……
だから…寝ちゃダメ………………………………………………………………………、
……………………………………………………………、
………………………………………………、
………………………、









ふよふよと気を失った二人の身体を宙に浮かべて。
絶望王は、心配そうに同じく宙を漂う杖に命令を発する。
杖は禍々しい魔力を放つ絶望王の素性が分からず逡巡していたが、折れるのにそう時間はかからなかった。
今は目の前のこの少年以外、頼れる存在はいなかったのだから。




「さて、くたばってるこいつらをツレの所に連れて行くから案内しろ」
『あの……貴女様は………』
「気にすんな、ただの通りすがりだよ。こっちも予定が立て込んでるからさっさとしろ」




にっこりと、親しみを抱く笑みを返し。その実有無を言わせず案内を促す。
始めは魔神王と決着をつけるつもりで標的を逃がさぬためにロクに動けぬニケに無理やりかっこいいポーズをさせたのだが。
イリヤという少女の決着の付け方が豪快に過ぎたせいでお手付きに終わった。
だが、まぁ……これはこれで悪くない結果と言えただろう。
絶望の王にとって、希望とは幾らあっても困らない物だからだ。




「希望ってのは多ければ多い程いい。一つや二つ消えても惜しくないからな」




そんな事を嘯きながら、再び少年は口笛を吹き。
どこまでも自由に。法も倫理も誰も彼を縛る事はできず。
ただ希望達との決定的な断絶を。世界の破滅を目指して。
希望の対峙者は、未だ現世を彷徨う。



【一日目/午後/D-7】

【絶望王(ブラック)@血界戦線(アニメ版)】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、空腹、高揚感(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(フラン、ジャック)、神々の義眼の視界を奪える道具@血界戦線(アニメ版)
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗る。
0:シカマル達を探しに行く。
1:気ままに殺す。
2:魔神王とは“四度目”はない。
3:気ままに生かす。つまりは好きにやる。
4:シカマル達が、結果を出せば───、
5:江戸川コナンは出会うまで生き伸びてたら、な。
6:シカマルと逸れたが…さて、どうしたもんかね。
7:道具も手に入ったし、頃合いを見て梨沙(メスガキ)からフランの目玉を取り立てる。
[備考]
※ゲームが破綻しない程度に制限がかけられています。
※参戦時期はアニメ四話。
※エリアの境界線に認識阻害の結界が展開されているのに気づきました。

【勇者ニケ@魔法陣グルグル】
[状態]:ダメージ(極大)、疲労(極大)、仮面の者(アクルトゥルカ)、
キタキタ踊りを見たい欲(極大)、塩化加速、精神疲労(極大)気絶(悪夢)、左手小指、薬指骨折(治癒中)
[装備]:アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険、ヴライの仮面@うたわれるもの 二人の白皇、風死@BLEACH、ひらりマント@ドラえもん
[道具]:基本支給品、丸太@彼岸島 48日後…、シャベル@現地調達、約束された勝利の剣@Fate/Grand Order、龍亞のD・ボード@遊戯王5D's、沙耶香の首輪
クラスカード(キャスター)Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
バスター・ブレイダー、真紅眼の黒龍@遊戯王デュエルモンスターズ
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗っちゃダメだろ常識的に考えて…
0:と…取り合えず……少しは休ませてくれマジで。
1:とりあえず仲間を集める。ナルトとエリスに同行する。
2:マヤ、おじゃる、銀ちゃん………
3:DBの事は俺の考えが間違ってるとは思わないけど、あんまり後ろ向きになっても仕方ないか。
4:取り合えずアヌビスの奴は大人しくさせられそうだな……
5:フランはあいつ本当に大丈夫なのか?
6:クロとグレーテルは……。
※四大精霊王と契約後より参戦です。
※アヌビス神と支給品の自己強制証明により契約を交わしました。条件は以上です。
ニケに協力する。
ニケが許可を出さない限り攻撃は峰打ちに留める。
契約有効期間はニケが生存している間。
※アヌビス神は能力が制限されており、原作のような肉体を支配する場合は使用者の同意が必要です。支配された場合も、その使用者の精神が拒否すれば解除されます。
『強さの学習』『斬るものの選別』は問題なく使用可能です。
※アヌビス神は所有者以外にも、スタンドとしてのヴィジョンが視認可能で、会話も可能です。
※仮面(アクルカ)を装着した事で仮面の者となりました。仮面はもう外れません。


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:全身にダメージ(大)、疲労(大)、気絶、決意と覚悟
[装備]:カレイドステッキ・サファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1、雪華綺晶の支給品×1、クラスカード『バーサーカー』『アサシン』、『セイバー』(夕方まで使用不能)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、
タイム風呂敷(残り四回、夕方まで使用不能)@ドラえもん
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出して───
0:ナルト君たちと合流したい。
1:雪華綺晶ちゃん……。
2:美遊、クロ…一体どうなってるの……ワケ分かんないよぉ……
3:殺し合いを止める。まず紗寿叶さん達を助けに行きたい。
4:サファイアを守る。
5:美遊、ほんとうに……
6:次会ったら、クロを止める。
[備考]
※ドライ!!!四巻以降から参戦です。
※雪華綺晶と媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。

※クラスカードは一度使用すると二時間使用不能となります。
※バーサーカー夢幻召喚時の十二の試練のストックは残り2つです。これは回復しません。
のび太、ニンフ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました。



137:殺人考察 投下順に読む 139:終わりの始まり
時系列順に読む
129:SYSTEM イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 000:[[]]
135:Someday I want to run away 勇者ニケ 000:[[]]
130:終末論 絶望王 000:[[]]
129:SYSTEM 魔神王 140:この儚くも美しい絶望の世界で(前編)

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