コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

為す術のない僕に芽吹いた焦燥が膨らんでいく

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「さくらさんに、謝らないと」

 薄暗い教室の隅で、乾紗寿叶は小さく呟いた。
 つい数時間前、自分に好意的に接してくれた温かく優しい女の子。
 そんな彼女に失礼な事をしてしまった。
 さくらだけではなく、その友達の知世という少女にも。
 あんな素敵なコスチュームを、紗寿叶はぞんざいに扱ってしまったのだから。
 同じ、衣装に触れてきたコスプレイヤーとしてあるまじきことだ。

「……っ」

 深呼吸し震える肩を掴みながら、意を決してドアを開ける。

「乾か」
「日番谷君……」
「あいつらは先に行った」
「……そう、なの」

 当然の話だ。紗寿叶とさくら達が出会ってから、一時間近く経っている。
 二人は人を探しているのだから、ここに長く留まる筈はない。それくらい、普通なら分かることだろうに。

「馬鹿ね。私」

 そんな長い時間、ずっと無意味に引きこもっていた自分に苛立ちすら覚えていた。

「ごめんなさい、日番谷君」

 こんな自分を、ずっと守ってくれるように教室の前に静かに居てくれた日番谷冬獅郎にも、申し訳がなかった。

「別に気にしちゃいねえよ。俺も休みたかったし丁度いい」

 きっと、自分はこの殺し合いの中では運のいい方なのだと、紗寿叶は思う。
 会って数時間程度なのに、こんなに気を遣ってくれる頼もしい参加者に出会えたのだから。


「…しっかりしないといけないわね」

 だからこそ、このまま日番谷に頼り切ってはいけないのだろう。
 戦いこそ、どうあっても助けにはなれないが、それ以外の事で少しでも役立てるようになりたい。

 どんなに辛くても、絶対に負けずに生意気に笑うシオンのように。

(今は…あまり考えたくないわ)

 ふと頭を過った女児向けアニメの登場キャラを思い浮かべ、それが元太を殺害した魔法少女と被って見えてしまった。
 以前なら、紗寿叶の心の拠り所になった魔法少女(シオン)の姿が、恐怖に塗り替えられてしまっていた。

「なあ、乾」

「どうしたの?」

「元太の事で気を病むな、なんて言ったところで割り切れねえのは分かってる。
 でも、お前はまだ生きてんだ。自分の夢を捨てちまう必要はないんじゃねえか」

「でも…元太君を死なせて……」

「あいつは、何人も夢の途中で死んじまった奴等を見てきたんだと思う」

 ほぼ毎週のペースで、殺人事件を見てきたと語っていた元太。
 眉唾な話だったが、今になって思い返せばそれは本当だったのだろうと、日番谷は考えていた。
 そうでなければ、紗寿叶の窮地に割り込むような真似を小学1年生で取れる訳がない。

「俺も死神だからな。死んだ奴等は沢山見てきた。
 まだまだ、やりたいことがある。未練を残してきた死者は少なくない」

 人の死には日番谷も数え切れぬほど触れてきた。
 天寿を全うした老人であれば、本人も納得し尸魂界へ逝く事も多い。
 だが若者や子供、強い未練を残す者は違ってくる。この世に留まり、それが時として虚として変異し現世の人間を襲い食らいだす。
 それら虚を狩り、尸魂界へと送るのが死神の務めだ。
 そんな死に近い仕事をしてきている以上、思う所も多くある。

「そんなツラをさせる為に、あいつは死んだわけじゃねえだろ」

 元太も子供ながらに、江戸川コナンという少年が解決した殺人事件に立ち会い、人の未練に触れてきたのだろう。
 紗寿叶にそんな風になって欲しくなく、だから庇うような真似にも出たのかもしれない。
 ここでは死者の姿は見えない為に、日番谷にその意図を聞き出す術はない。
 だから日番谷の願望込みの、推測からくみ上げたものになってしまうが。

「ありがとう…日番谷君」

 紗寿叶は笑ってくれていた。
 もしかしたら、元太が内心では紗寿叶を恨んでいるとも限らない。そんなことはあり得ないと考えたいが、人間の内面を完全に読み取るのは難しい。
 けれども、彼女の今の表情があの少年の本望であればいいと、日番谷は心の内で願っていた。
 紗寿叶も日番谷が自分の為に、憶測を絡めて自分を励ましてくれているのは分かっていた。
 死神で紗寿叶よりも、ずっと歳を重ねた大人なのだろうと。面倒を掛けてしまっていると思う。

「ええ…コスはやめないわ」

 美遊(あこがれ)への恐怖はまだあるけれど。
 一人の男の子が助けてくれた命と、目の前の死神がそれを捨てるなと背中を押してくれたから。

「それに、ちゃんとさくらさんに謝らないといけないわね」

「ああ…」

 日番谷は心底安心したような笑みを零した。
 憧れは理解から、最も遠い感情だと否定されたこともあった。確かに日番谷が護ろうとした雛森桃は、藍染惣右介に憧れを抱き、彼を何一つ理解しないまま何度も殺されかけた。
 憧れは、その人の目を曇らせるのは否定のしようはないだろう。そして、その曇った目が真実という光に眩む、残酷な光景も目にしてきた。
だから紗寿叶にも雛森のようにはなってほしくなかった。
 だが、少しは自分の言葉で立ち直ってくれるのなら。


「日番谷君…この刀、見て貰えないかしら」

 恐怖はまだある。日番谷が傍に居なければ平静さも保てない程、精神も弱りきっている。
 それでも、今出来ることを紗寿叶なりに考えて、自分達の武器になりそうなものを日番谷に見せてその判断に委ねる。
 これが現状の紗寿叶のやれるだけの行動だった。

「説明書を読むと、飛梅という刀みたいなんだけれど……日番谷君の氷輪丸というのよね? その刀と一緒で名前を呼ぶと―――」

「とび…うめ…だと?」

 ―――どういうことだ?

 日番谷の耳には、紗寿叶の声はもう届かなかった。
 己の斬魄刀があるのは分かる。不覚を取って拉致されたのだから、帯刀していた氷輪丸も一緒だろう。
 だが、飛梅があるということは。その所持者にして使い手の雛森も、殺し合いの場に呼ばれたのか?

(もし雛森が…斬魄刀もなしにシュライバーとやり合えば……勝ち目はねえ)

 最悪の想定だが、副隊長とはいえあの白の狂獣を前にして命を繋ぎとめられるのは、それこそ卍解を取得した隊長格や、黒崎一護などの規格外染みた強者以外はありえない。
 いや、仮にシュライバーでなくとも位置も距離も分からず漠然と感じ取るだけだが、この島には強大な霊圧を放つ存在が無数にいた。
 決して雛森が弱いわけではないが、一人でこれらの猛者を相手にするのは絶望的だ。
 それでも、まだ殺し合いに呼ばれていた方が希望は持てていたかもしれない。
 隊長格にも匹敵するような強者が対主催に居て、雛森と合流して協力関係を築いてくれるのなら、戦闘の補助であれば飛梅がなくとも鬼道の天才的な腕前がある。そう易々とは殺されることはないだろう。


(最悪なのは…乃亜が支給品として飛梅を回収した時に、雛森を―――)

 ありえない話ではない。雛森が名簿に記載されていなかったとして、それは単に参加者としての選別から外れただけなのか、あるいは殺し合いの開幕以前に、乃亜が葬ってしまったからではないのか。
 用があるのは武器だけで、所有者が目障りであればそれを殺さない理由はない。

(雛森ッ……!!)

 殺し合いなんかを開き、高笑いする子供だ。その時、抵抗してきた雛森を嬲り殺しにしたかもしれない。

「日番谷君? どうしたの…」

「……悪い、何でもねえ」

 紗寿叶の説明によれば、解号さえ口にすれば誰でも始解を使用できるらしい。
 試しに紗寿叶が詠唱し、飛梅の形状が変化していた。
 刀から対話もせず、名前を聞き出さず、説明書に従った手順に沿い始解を解放する。通常の斬魄刀では考えられないが、これが飛梅を模したレプリカの可能性もある。
 それでも、乃亜が未知数な技術を使い改造を施したかもしれない。
 涅マユリは自分の斬魄刀に改造を施し、剣技では遥かに劣る日番谷と切り結んでみせた。前例がある以上、否定はしきれない。

「……日番谷君、私は戦いだと何の役にも立てないけど、不安なことがあるなら…話くらいなら聞けるわ」

 露骨に話を逸らされた。
 間違いなく、一瞬焦燥した表情を見せていた日番谷の不安を、少しは和らげてあげたかった。
 紗寿叶が日番谷に掛けられた言葉で、少しでも前向きさを取り戻せたように。
 もしかしたら、何か彼に言ってあげられたかもしれないから。

「俺なら大丈夫だ。
とにかく、お前ももう少し休んどけ、寝る子は育つって話だ」

 急に心を開けなんて言うつもりもない。
 たまたま会って数時間の仲だ。友達なんて、とても言える間柄でもないし、当然恋愛感情だって存在しない。

(この刀の本当の持ち主の娘…とても大切に想われているのね)

 それだけ大切な人、家族とかだろうか。
 そんな人物の武器だけがこの場にあるということに、不安を覚えないわけがない。
 ただの所有物なら盗まれたくらいで考えられるが、武器となれば基本的には常に所持している。乃亜がそれを無理やり奪ったとしたら、その後の事くらいは紗寿叶でも想像が付いた。
 もしも、紗寿叶が日番谷の立場なら、もっと取り乱していた。自分の大事な妹、家族にまで乃亜の手が及ぶなんて考えもしたくない。
少しくらい、不安を口にしても罰なんて当たらないだろうに。

(私を不安にさせないように…そういうことよね)

 この島の中では、それなりに年長の方なのに。まったく頼りない自分を情けなく思った。



【G-5 小学校/1日目/早朝】

【乾紗寿叶@その着せ替え人形は恋をする】
[状態]:健康、殺し合いに対する恐怖(大)、元太を死なせてしまった罪悪感(大)、魔法少女に対する恐怖(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2、飛梅@BLEACH
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
1:魔法少女はまだ怖いけど、コスはやめない。
2:妹(178㎝)は居ないと思うけど……。
3:さくらさんにはちゃんと謝らないと。
4:日番谷君、不安そうだけど大丈夫かしら。
[備考]
原作4巻終了以降からの参戦です。



【日番谷冬獅郎@BLEACH】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、卍解不可(日中まで)、雛森の安否に対する不安(極大)
[装備]:氷輪丸@BLEACH
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2、元太の首輪、ソフトクリーム
[思考・状況]基本方針:殺し合いを潰し乃亜を倒す。
0:小学校でしばらく休む。
1:巻き込まれた子供は保護し、殺し合いに乗った奴は倒す。
2:海馬コーポレーションに向かい、乃亜の手がかりを探す。
3:美遊、シュライバーを警戒。次は殺す。
4:紗寿叶が気掛かりだが……。
5:雛森は無事なのか?
[備考]
ユーハバッハ撃破以降、最終話以前からの参戦です。
人間の参加者相手でも戦闘が成り立つように制限されています。
卍解は一度の使用で12時間使用不可。


【飛梅@BLEACH】
解号は弾け飛梅。
始解状態では七支刀の形状に変化し、火の玉を放つことが出来る。
以外に威力は高い。

053:KC Sleep 投下順に読む 055:愛を示す術を失いかけても
051:藤木、友達を失くす」の巻 時系列順に読む
033:i'm a dreamer 日番谷冬獅郎 090:嘘吐き
乾紗寿叶

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