コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

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 殺し合いが行われる地のどこかで、一人の少女が佇んでいた。
 彼女の表情は、どこか困惑しているようで、震えながら自身の両手をじっと見つめている。
 こんな状況に置かれれば誰だって困惑するだろうが、少女が困惑している理由は他の者とは違っていた。

「わたし……生きてる?」

 少女は、自分が生きていることに何よりも驚いていた。
 それも仕方がないだろう、彼女はどう足掻こうと最終的に死ぬ不退転の戦いに巻き込まれ、そして死んだ。死んだはずなのだ。
 少女の名は、本田千鶴。あだ名はチズ。人間の生命を動力に駆動するロボット『ジアース』のパイロットに選ばれた子供たちの一人。
 勝利しても敗北しても逃げ出しても免れない『死』と向き合うことになった、子供たちの一人。

「どう、して……?どうしてっ!?」

 千鶴は虚空に向かって叫ぶ。

「どうして『わたし』なの……?」

 千鶴の他にも、死にたくない奴はいたはずだ。パイロットとして戦い、先に散っていったワク、コダマ、ダイチ、ナカマ。自分の後にパイロットに選ばれるであろう、モジ、キリエ、マチ、マキ、コモ、アンコ、カンジ、ウシロ。そして……チズが自ら殺めてしまった、カコ。
 なのになぜ……『汚れてしまった』私が生かされてるの?

「ここで殺されて……わたしにこの子を二度殺せっていうの!?」

 千鶴は声を震わせながら、自身のお腹を抱く。自分の子供が宿ったお腹を。
 そう、千鶴は彼女の子宮に子を宿している。通っていた中学の教師である畑飼守弘とまぐわい、授かった子。

「それとも生きてこの子を産んで……この子に人殺しの子になれっていうの……?」

 千鶴は二度汚れている。一度目は畑飼によって知らない男達に売られた時。滅茶苦茶にされて、その様子を撮影され口止めされた上で、汚された。二度目は……文字通り人を殺した時。殺したのはカコだけではない。ジアースの力で、自分を汚してきた男達を抹殺した。その周囲の人々を巻き込んで。

「ずっと死ぬってことを考えてきたのに……今更、生きろ、なんて……」

 自然と、目から涙が込み上げてくる。
 コエムシによってジアースと契約した時点で、死が確約される。
 だから、殺せたのに。

『人を恨んだら、その途端に自分も不幸になるよ』

 畑飼を殺そうとした時に、尊敬していた姉から言われた言葉が何度も千鶴の脳裏で反復する。
 畑飼を殺して自分も死ぬつもりだったのに。そこにいた姉の言葉で千鶴は殺すことができなかった。

「お姉ちゃんの、言う通りだったね。今のわたしって、すごく惨め」

 今の千鶴は、最も恨んでいた相手を殺せなかったのに、人を殺したことのある母親になってしまった。
 復讐者にも綺麗な母親にもなれない中途半端な存在。
 千鶴は、四次元ランドセルの中にある支給品を確認し、その中にあったナイフを取り出す。

「もう、いっそ……」

 そのまま、その刃を首に当てて目を閉じた。

「――やめろっ!!」

 その瞬間、岩陰から大きな影が飛び出し、千鶴の手首を掴み上げた。

「誰……!?」

 千鶴は目を見開いて、手首を持つ人物を見上げる。
 そこには、殺し合いに集められた少年少女とは程遠い外見をした、まるで仮面をかぶった特撮ヒーロー然とした風体の男が千鶴を見下ろしていた。

「お前に何があったかは知らないよ。けど……それだけはやっちゃダメだ」

 千鶴の手を掴んだ、どこか虫を彷彿とさせるフォルムの男を見て、マキが好みそうな外見だなと思った。
 だが、そんなことよりも。

「……どこから聞いていたんですか?」
「子供がいるってところから……かな」

 男は、頭を掻きながら言った。

「……あなたは?」
「ボクはギャブロ。怪しい者じゃない」
「そんな格好で怪しいと思わない人っているんですか?」
「そっそれは……そうかもしれないけど……それよりも!」

 男――ギャブロは千鶴の手を掴んだまま続ける。

「子供がいるのなら自分から死のうなんて考えちゃダメだ!ママが死んだら……子供が独りぼっちになっちまうじゃないか!」
「……」
「パパもママもいないってな……すごく寂しいんだぞ。心細くって、苦しくって、心に穴が空いたみたいで……そのくせどんなに欲しがっても、どんなに泣いても手に入らない」
「……」
「だから、子供にはママであるお前が必要なんだ。大丈夫、ボクがお前を死なせはしない!だから――」
「――放っておいて」

 ギャブロが話している隙を見て、千鶴はギャブロから自身の手を引き剝がす。

「わたしとこの子のことは、放っておいて」
「お、おい!」

 ギャブロが止めるのを待たず、千鶴はナイフとは別の、杖の形状をした支給品を振るう。
 それは、『バシルーラの杖』。
 その効果は――他者を別の場所に飛ばす呪文『バシルーラ』と同様の効果を振った相手に及ぼすというもの。

「待て――」
「あなたって……言葉を話せる赤ちゃんみたいなこと言うのね」

 ギャブロが千鶴の目の前から消える寸前に、そんな言葉を千鶴はかけた。




§




「変な人。わたしが死ねばこの子も死ぬっていうのに」

 ギャブロが目の前から消えた後、千鶴は言う。
 盗み聞きしていた挙句、こちらもあわや自害していたとはいえ詳しく聞かずに「死ぬな」か。直情が過ぎる。正直、同学年か、あるいはそのさらに下の男子のような”臭い”がして、あまり一緒にいたいと思えるタイプではなかった。
 ただ……彼の言葉には、まるで自分が経験してきたかのような現実味はあったが。
 千鶴の姉であれば、この気持ちも受け止めてくれたのだろうか。

「――分からないよ」

 千鶴は虚空に向かって呟く。
 千鶴だって、お腹の子のことは愛おしく思っている。
 このままジアースとの契約が解け、生き残れる可能性があるというのならこの子のことを守りたい。

 だが、生きるとしてこの殺し合いでどうやって生き残ればいい?殺し合いを否定して綺麗なまま生き残るか?しかし、千鶴は既に同年代を一人、大人を数人手にかけている。
 ならばいっそのこと殺人鬼と化して、参加者を殺していくか?しかし、今の千鶴にはジアースの武力はなく、コエムシを呼んでも出てこない。そこいらの子供と身体能力は変わらない。
 そもそも、この殺し合いで、こんな自分は生きようとしていいのか?それとも惨めに殺されるべきなのか?

 一度は死んだ命。たとえ殺し合いで死のうと、残された人にとっては自分が死んだことには変わりない。
 でも、もし生き残ることができるとしたら?この子が生まれる姿を見れる日が来るとしたら……?
 しかし、生きてお腹の子を産むとして、こんな汚れた自分を親にしてしまってこの子は幸せなのだろうか。
 分からない。分からない。分からない。

「分からないよ……こんな時、私はどうしたらいいの……お姉ちゃん……」

 千鶴は宛てもなく歩き出した。その後ろ姿は魂の抜けた人形のようだった。

§




 本田千鶴には、二つ失念していたことがあった。
 一つは千鶴の子供もまた、ジアースの契約者に含まれていたこと。
 もう一つは先ほど支給品を確認した際に、明らかに一参加者としては過剰な量の、まるで2人分ともいえる支給品が千鶴の四次元ランドセルに入っていたこと。
 千鶴と彼女の子供は一心同体とはいえ、命としては別カウントだ。
 ならば、この殺し合いにおいてもそれが適用されて不思議ではないのだ。
 そのことを千鶴は、参加者名簿を見たときに知ることになる。



【本田千鶴@ぼくらの(漫画版)】
[状態]:苦悩、妊娠中
[装備]:普段着
[道具]:基本支給品、ナイフ@不明、バシルーラの杖@トルネコの大冒険 不思議のダンジョン(残り回数:2回)、ランダム支給品0~1(確認済み)、本田千鶴の胎児の分の基本支給品、本田千鶴の胎児の分のランダム支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]基本方針:分からない。殺し合いに乗るか乗らないか、生きるべきか死ぬべきかも分からない。
1:わたしは生きてこの子を産むべきなの?こんな私が親になっていいの?
[備考]
  • 原作でジアースのパイロットとして戦い、死亡した後の参戦です。


【本田千鶴の胎児@ぼくらの(漫画版)】
[状態]:胎児、全裸
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:……。
1:……。
[備考]
  • 参加者名簿には、『本田千鶴の胎児』と本田千鶴が妊娠していることが分かる形で書かれています。
  • 本田千鶴の胎児の支給品は、本田千鶴の四次元ランドセルに含まれています。
  • 妊娠何週目かは後続の書き手にお任せします。少なくともつわりが出て、お腹が膨れていない時期です。


  • 支給品説明

【ナイフ@不明】
千鶴が自害未遂の時に用いたナイフ。現実出典のなんの変哲もないナイフかもしれないし、どこかの世界の特殊な効果の宿ったナイフかもしれない。

【バシルーラの杖@トルネコの大冒険 不思議のダンジョン】
振るった相手を別の部屋へと飛ばす『バシルーラ』の効果の宿った杖。この殺し合いにおいては、会場内のランダムな場所に転移させる効果として現れている。使用回数は3回。


§





 ギャブロは、こんな悪辣な催しを行う海馬乃亜に対して激怒していた。
 罪のない人々を殺し合わせることもそうだが、何より幼い少年少女たちにそれをさせるということが何よりも許せなかったのだ。
 参加させられた子供たちには家族がいるはずだろう。
 そんな子供たちを家族と離れ離れにさせて殺し合わせるなど、残酷にも程がある。
 ここで死んでしまった子供たちは永遠に家族と離れ離れになってしまう。
 それがどれほど辛いことかは、同じ悲しみを味わったギャブロにはよくわかる。

 そして、ギャブロは海馬乃亜と同じような過ちを犯していた。
 かつて暗黒魔術師ダークが暗黒魔法で生み出した、六魔将の一人だった頃のギャブロは、副官のソニアと共にいる時を除けばずっと独りぼっちだった。自分だけ家族がいないことの理不尽を呪うあまり、家族のいる人間から子供だけを引き離し、自身の拠点に連れ去っていたのだ。
 だから猶更、過去の自分を重ねてしまい、子供だけを連れ去った海馬乃亜を許すことができなかった。

「クソッ、油断した……!」

 ギャブロはバシルーラの杖によって転移させられた先で、焦っていた。
 言うまでもなく、先ほど出会った少女、本田千鶴のことである。
 この殺し合いに参加させられた子供たちを家族のもとに返す、と決意した矢先のこれである。

「まさか、子供だけでなく親子まで来ているなんてな……!」

 ギャブロは千鶴のことを案じながら、持ち前の身体能力で殺し合いの会場を駆ける。
 千鶴が死んでしまえば、彼女の子供はどうなる?親がいない状態で生まれるなんてかつての自分と同じではないか。
 その子には絶対に同じ悲しみを背負ってほしくない。千鶴というお母さんがいる暖かさの中で、育ってほしい。

「絶対に、絶対に親と子を離れ離れになんてさせてたまるか!」

 かつての自分に家族がいなかったからこそ、同じ苦しみを味わう人が出るのは絶対に嫌だ。

「ボクは一度死んだ……けど、ここに呼ばれて生きていることには絶対に意味がある」

 そしてギャブロもまた、本田千鶴と同じく死んだ身であった。
 殺し合いに呼ばれたのは、暴走するダークの魔力を封じ込めるために自らの身を犠牲にして、仲間を、世界を救った直後のことだった。
 ギャブロの命を呼び寄せた場所が、子供たちを殺し合わせる蟲毒だからこそ、ギャブロの心は燃え上がる。

「待ってろよみんな、それにあの子も……ボクと同じ思いはさせないからな!」

 幼き正義の味方は、征く。

 ……余談ではあるが、ギャブロは人間はお腹の中で子を宿し、宿主である親が死ねば子も死ぬことを、実は知らない。
 ギャブロは元々、魔王ギャブ・ファーの卵から生まれた上、生まれてから時間も経っていない。言動から分かるように、身体こそ急成長しているが精神の根の部分は子供のままである。つまるところ、人間とは違う種の子供でしかないギャブロに、人間の性についての知識はなかったのである。




【ギャブロ@大貝獣物語2】
[状態]:健康、焦り
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]基本方針:殺し合いに巻き込まれた子供たちを家族の元へ返す。
1:子供たちを家族の元へ返すために死なせない。
2:あの子(本田千鶴)とあの子の子供(本田千鶴の胎児)のことが心配
[備考]
  • 原作のラストで死亡した後の参戦です。
  • 人間についての性知識は乏しいです。

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