藤木茂は今もずっと、怖くて怖くて仕方がなかった。
デパートでの戦いで、ネモ達は自分を完全に殺すつもりだった。
一度は圧倒する事ができたけど、結局は逆転されてしまったし。
次はもう、向こうも本気で殺しに来るはずだ。
卑怯者の癖に、自分達が正しい側だと思い込んで、悟空を唆して。
もしネモに悟空と合流されれば、さも自分が悪者であるかのように吹き込むのだろう。
殺そうとしていたのは、ネモだって同じなのに。
デパートでの戦いで、ネモ達は自分を完全に殺すつもりだった。
一度は圧倒する事ができたけど、結局は逆転されてしまったし。
次はもう、向こうも本気で殺しに来るはずだ。
卑怯者の癖に、自分達が正しい側だと思い込んで、悟空を唆して。
もしネモに悟空と合流されれば、さも自分が悪者であるかのように吹き込むのだろう。
殺そうとしていたのは、ネモだって同じなのに。
それに、俊國の事も怖い。
デパートの戦いでは彼からの教えに助けられたけれど。
それでも先ほど突き付けられた話が、何度も脳裏を過る。
曰く、俊國は自分を利用しているだけだと。
頃合いを見て自分を食い殺し、折角手に入れた雷の力を奪うつもりだと。
そんなことは無い、彼は自分の味方だ。そう言いたかった、否定したかった。
でも、最後に言われた問いかけのせいで否定できない。
デパートの戦いでは彼からの教えに助けられたけれど。
それでも先ほど突き付けられた話が、何度も脳裏を過る。
曰く、俊國は自分を利用しているだけだと。
頃合いを見て自分を食い殺し、折角手に入れた雷の力を奪うつもりだと。
そんなことは無い、彼は自分の味方だ。そう言いたかった、否定したかった。
でも、最後に言われた問いかけのせいで否定できない。
乃亜は、願いを叶えて生きて返すのは一人だけだと言っていた。
そして、俊國も明らかにこのゲームに乗っていた。
それが意味する所は、つまり。
彼もいずれ自分を殺すつもりだということ。
そして、俊國も明らかにこのゲームに乗っていた。
それが意味する所は、つまり。
彼もいずれ自分を殺すつもりだということ。
誰も、信用できない。
彼にはお世話になったけど、食い殺されるなんて御免だ。
殺される位なら殺してやる。自分一人の力では無理かもしれないけど。
ネモ達の様な奴らと俊國を潰し合わせた後なら、きっと勝てる。
なんせ、今の自分はもう──────“殺せる”側の人間なのだから。
彼にはお世話になったけど、食い殺されるなんて御免だ。
殺される位なら殺してやる。自分一人の力では無理かもしれないけど。
ネモ達の様な奴らと俊國を潰し合わせた後なら、きっと勝てる。
なんせ、今の自分はもう──────“殺せる”側の人間なのだから。
「お兄さん、眼の傷は大丈夫?」
「ピィカ?」
「藤木君、大変だったんだね……怖い人たち相手に………」
「ふ…ふふ、大丈夫。ま、まぁ運が良かったのもあるけどね………」
「ピィカ?」
「藤木君、大変だったんだね……怖い人たち相手に………」
「ふ…ふふ、大丈夫。ま、まぁ運が良かったのもあるけどね………」
小学校を後にしてから、十五分ほど後に出会った一団。
今の同行者達…眼鏡の年下の子と、変な黄色の動物から心配されて、少し嬉しい。
更に城ケ崎さんより可愛い子に褒められ、ネモの悪口もブチ撒けられて気分がよかった。
今しがた出会った四人はここまで生き残って来ただけあって、それなりに強そうだ。
これなら、俊國と潰し合わせる“生贄”として丁度いいだろう。
今の同行者達…眼鏡の年下の子と、変な黄色の動物から心配されて、少し嬉しい。
更に城ケ崎さんより可愛い子に褒められ、ネモの悪口もブチ撒けられて気分がよかった。
今しがた出会った四人はここまで生き残って来ただけあって、それなりに強そうだ。
これなら、俊國と潰し合わせる“生贄”として丁度いいだろう。
「───ウム!これからは私が藤木を守るから安心するのだぞ!」
金髪の子供が無駄に暑苦しく、息巻いて言葉を掛けてくる。
自分を全く疑っていないその瞳を見て、心中で藤木はほくそ笑む。
あぁ、言う通り役に立っておくれよガッシュ君。僕が勝ち残る為に。
できれば、君が俊國君に勝ってくれた方が嬉しいんだから。
俊國君より、俊國君との戦いで傷ついた君を殺す方がずっと楽そうだしね。
その時は容赦はしないよ。どうせ君だって、僕がやった事を知ったら───
ネモみたいに怒って僕を殺そうとするんだから。だから、僕は悪くない。
自分を全く疑っていないその瞳を見て、心中で藤木はほくそ笑む。
あぁ、言う通り役に立っておくれよガッシュ君。僕が勝ち残る為に。
できれば、君が俊國君に勝ってくれた方が嬉しいんだから。
俊國君より、俊國君との戦いで傷ついた君を殺す方がずっと楽そうだしね。
その時は容赦はしないよ。どうせ君だって、僕がやった事を知ったら───
ネモみたいに怒って僕を殺そうとするんだから。だから、僕は悪くない。
───デパートで言ってた永沢って人、きみの友達だよね。
───なら、どうして皆に言ってくれなかったんだ。
───シカマルもネモも…きっと、助けてくれたよ。
───なら、どうして皆に言ってくれなかったんだ。
───シカマルもネモも…きっと、助けてくれたよ。
これ以上、僕を否定するな。
そう心の中で呟き、頭の中にまた浮かび上がった言葉を、嘲笑って切り捨てる。
そんな事言われた所で、もうすべて遅いのだから。
今更自分が悪いって現実に向き合えるほど、自分は強くない。
欲しいのは、そんな言葉じゃない。
そう心の中で呟き、頭の中にまた浮かび上がった言葉を、嘲笑って切り捨てる。
そんな事言われた所で、もうすべて遅いのだから。
今更自分が悪いって現実に向き合えるほど、自分は強くない。
欲しいのは、そんな言葉じゃない。
だから、これから俊國と出会ったガッシュたちを潰し合わせる。
俊國が勝てば、弱った俊國に真意を確かめ、もし本当に自分を殺すつもりなら逃げる。
逃げて、また別の参加者をけしかけて、弱り切った所を殺す。
もしガッシュたちが勝っても消耗しているだろうから、纏めて殺せるかもしれない。
実に暗殺者らしくて格好いいし、今の自分にはそれができる自信がある。
何しろ今の自分はもう“殺せる”神───シン・神・フジキングなのだから。
そう考えながら、藤木はガッシュたちに出会う少し前の事を想起し、再びほくそ笑んだ。
彼の背後で眼鏡の少年と、銀髪の少女が訝し気な視線を向けているのにも気づかずに。
俊國が勝てば、弱った俊國に真意を確かめ、もし本当に自分を殺すつもりなら逃げる。
逃げて、また別の参加者をけしかけて、弱り切った所を殺す。
もしガッシュたちが勝っても消耗しているだろうから、纏めて殺せるかもしれない。
実に暗殺者らしくて格好いいし、今の自分にはそれができる自信がある。
何しろ今の自分はもう“殺せる”神───シン・神・フジキングなのだから。
そう考えながら、藤木はガッシュたちに出会う少し前の事を想起し、再びほくそ笑んだ。
彼の背後で眼鏡の少年と、銀髪の少女が訝し気な視線を向けているのにも気づかずに。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼
将棋で言えば、飛車角どころか六枚落ちの状況だな。
そんな弱音めいた考えが、シカマルの脳裏を過った。
タブレットのディスプレイに表示される地図を検め、何処へ向かうか思い悩む。
まず、思い当たるのはモチノキデパートだが。
ネモ達も含めバラバラに会場の各地に飛ばされたのなら、既にデパートはもぬけの殻。
それどころか、迂闊に近づけば襲撃してきたマーダーと鉢合わせる恐れすら存在する。
そんな弱音めいた考えが、シカマルの脳裏を過った。
タブレットのディスプレイに表示される地図を検め、何処へ向かうか思い悩む。
まず、思い当たるのはモチノキデパートだが。
ネモ達も含めバラバラに会場の各地に飛ばされたのなら、既にデパートはもぬけの殻。
それどころか、迂闊に近づけば襲撃してきたマーダーと鉢合わせる恐れすら存在する。
「シカマル……」
傍らでは龍亞が小さく声を掛けてくる。彼も不安なのだろう。
赤き竜のシグナーとして、命を賭けた決闘は何度か経験していると言っていたし、
実際メリュジーヌとの戦いで最も奮戦してくれたのは龍亞だが、それでも。
それでも彼はこんな血なまぐさい命のやり取りを経験したことは無いはずだ。
使用するカードの時間制限も考えれば、安定した戦力とは見込めない。
だから中忍として小隊を率いる訓練を受けた自分が何とかせばならないが……
現在シカマル達が置かれている状況は、ブラックと出会う前の状況に等しい。
ネモも、フランも、ブラックも、無惨も。
およそ戦力として見込める協力者とは全員引き離されてしまったからだ。
状況は一言で言って最悪。そんな中で、シカマルは掌を軽く開いた状態で指を重ねる。
思考を整えるルーティーンを行い、現状の最善手を導く。
赤き竜のシグナーとして、命を賭けた決闘は何度か経験していると言っていたし、
実際メリュジーヌとの戦いで最も奮戦してくれたのは龍亞だが、それでも。
それでも彼はこんな血なまぐさい命のやり取りを経験したことは無いはずだ。
使用するカードの時間制限も考えれば、安定した戦力とは見込めない。
だから中忍として小隊を率いる訓練を受けた自分が何とかせばならないが……
現在シカマル達が置かれている状況は、ブラックと出会う前の状況に等しい。
ネモも、フランも、ブラックも、無惨も。
およそ戦力として見込める協力者とは全員引き離されてしまったからだ。
状況は一言で言って最悪。そんな中で、シカマルは掌を軽く開いた状態で指を重ねる。
思考を整えるルーティーンを行い、現状の最善手を導く。
(落ち着け…少なくともネモの奴が向かう場所は共有されてんだ。
だったら、梨沙も生きてたらそっちへ向かう可能性が高いはず………)
だったら、梨沙も生きてたらそっちへ向かう可能性が高いはず………)
各々が今現在どこにいるのかは分からない。
だが、デパートの中に集った脱出派達が目指す場所にはおおよその見当がつく。
それは即ち、人理継続保証機関フィニス・カルデアだ。
脱出のキーパーソンであるネモは、そこで何を行うのかは伏せていたが。
だが少なくとも放送後にそこへ向かうと言う情報はあの場にいた参加者に共有されていた。
だが、デパートの中に集った脱出派達が目指す場所にはおおよその見当がつく。
それは即ち、人理継続保証機関フィニス・カルデアだ。
脱出のキーパーソンであるネモは、そこで何を行うのかは伏せていたが。
だが少なくとも放送後にそこへ向かうと言う情報はあの場にいた参加者に共有されていた。
「…龍亞、これから俺達は梨沙が行きそうな場所
ライブ会場やデパートに寄りながらカルデアを目指す」
「そっか!梨沙もカルデアに行くって事は知ってたもんね!」
ライブ会場やデパートに寄りながらカルデアを目指す」
「そっか!梨沙もカルデアに行くって事は知ってたもんね!」
シカマルが冷静に方針を提示した事でいくらか緊張が紛れたのか。
納得の感情が籠った声をあげる龍亞だったが、その直後に懸念も口にする。
もし、梨沙が第三芸能課とかを目指していたら、と。
カルデアと言う目的地は共有している以上、それは無いと信じたかったが。
でも、それでももし一人で飛ばされたのなら、心細さで正しい判断ができるかどうか。
そんな彼の懸念に、シカマルは沈痛な面持ちで首を横に振った。
納得の感情が籠った声をあげる龍亞だったが、その直後に懸念も口にする。
もし、梨沙が第三芸能課とかを目指していたら、と。
カルデアと言う目的地は共有している以上、それは無いと信じたかったが。
でも、それでももし一人で飛ばされたのなら、心細さで正しい判断ができるかどうか。
そんな彼の懸念に、シカマルは沈痛な面持ちで首を横に振った。
「悪いが、これから俺達が寄る場所に梨沙がいなければ…
とてもじゃねぇが、梨沙の奴を探す余裕はねぇ。ネモ達との合流を優先する」
「……そんな、それじゃ、梨沙は………」
「頼む、分かってくれ龍亞。今の俺達は、テメェの身を護る事さえ危ういんだ」
とてもじゃねぇが、梨沙の奴を探す余裕はねぇ。ネモ達との合流を優先する」
「……そんな、それじゃ、梨沙は………」
「頼む、分かってくれ龍亞。今の俺達は、テメェの身を護る事さえ危ういんだ」
青褪めた表情でシカマルの言葉に反論しようとする龍亞の言葉を遮り。
シカマルは、眉根に皺を作りながら頭を下げ頼んだ。
納得できないのは分かっている。それでも、今は飲み込んでもらわなければいけない。
そうでなければ、梨沙も自分達も共倒れになる可能性が高いのだから。
ナルトならば小隊長として、上司として命令する事もできたが。
龍亞はこの場で出会ったばかりの忍でもない一般人だ。
シカマルの言う事を聞く義理はない以上、ただ頭を下げる事しかできない。
シカマルは、眉根に皺を作りながら頭を下げ頼んだ。
納得できないのは分かっている。それでも、今は飲み込んでもらわなければいけない。
そうでなければ、梨沙も自分達も共倒れになる可能性が高いのだから。
ナルトならば小隊長として、上司として命令する事もできたが。
龍亞はこの場で出会ったばかりの忍でもない一般人だ。
シカマルの言う事を聞く義理はない以上、ただ頭を下げる事しかできない。
「……分かった。頭何て下げなくても大丈夫、俺はシカマルの言う通りにするから。
シカマルは頭が良いし、これまでずっと俺達のために色々考えてくれたじゃないか」
シカマルは頭が良いし、これまでずっと俺達のために色々考えてくれたじゃないか」
思いは、伝わった。
顔を上げた先の龍亞は、複雑な感情を抱いた顔をしていたが。
それでもシカマルに対する疑心や他責の感情は一切向けていないのが見て取れた。
そう言った類の感情があるとすれば、ただ己への無力感だけで。
だから龍亞は、迷うことなくシカマルに信頼の言葉を口にすることができた。
顔を上げた先の龍亞は、複雑な感情を抱いた顔をしていたが。
それでもシカマルに対する疑心や他責の感情は一切向けていないのが見て取れた。
そう言った類の感情があるとすれば、ただ己への無力感だけで。
だから龍亞は、迷うことなくシカマルに信頼の言葉を口にすることができた。
「………悪いな」
木の葉の忍でないにも関わらず、信頼の言葉と感情を向けてくれる龍亞に対して。
シカマルもただそれに応えねばと言う強い思いを抱く。
龍亞や梨沙の“これまで”について知っている事は殆どないし。
深い間柄かと問われれば否定するだろう。
当然、里が受理した正式な依頼という訳でもないけれど。
でも、それでも二人は仲間だった。
シカマルの言葉を信じ、シカマルについて来てくれた。
ならば生かして家に帰してやるのが、“火の意志“で、この葉隠れの里の忍者だ。
シカマルもただそれに応えねばと言う強い思いを抱く。
龍亞や梨沙の“これまで”について知っている事は殆どないし。
深い間柄かと問われれば否定するだろう。
当然、里が受理した正式な依頼という訳でもないけれど。
でも、それでも二人は仲間だった。
シカマルの言葉を信じ、シカマルについて来てくれた。
ならば生かして家に帰してやるのが、“火の意志“で、この葉隠れの里の忍者だ。
「……よし、まずはライブ会場に寄って、それからデパートに向かうぞ。
交戦は可能な限り避ける。マーダーと会っても基本は逃げの一手だ。いいな」
「うん!」
交戦は可能な限り避ける。マーダーと会っても基本は逃げの一手だ。いいな」
「うん!」
力強く頷く龍亞を見て、己の中の使命感を必死に鼓舞する。
面倒くさいとは口にしなかった。面倒だと感じる余裕すら今はないからだ。
ともかく一刻も早く、ブラック達と合流しなければならない。
生き残るべくその一心で、二人の少年は駆けだした。
面倒くさいとは口にしなかった。面倒だと感じる余裕すら今はないからだ。
ともかく一刻も早く、ブラック達と合流しなければならない。
生き残るべくその一心で、二人の少年は駆けだした。
─────その、矢先の事だった。
二人の後方で何かが光り。
ズバチイ!という、火花が散るような音がシカマルの耳に届いたのは。
それを皮切りに、二人にとって状況は最悪の推移を見せる。
ズバチイ!という、火花が散るような音がシカマルの耳に届いたのは。
それを皮切りに、二人にとって状況は最悪の推移を見せる。
「う、ぁあああッ!!」
肉の焦げるジュッという音と匂いが、シカマルの鼻孔を擽る。
まさか、と言う思いと共に傍らを見れば、悲鳴を上げて龍亞が崩れ落ちていた。
龍亞の名を叫びながら、シカマルは地に伏した彼の身体を担ぎあげる。
アカデミーの時に教わった生死の確認方法が活きた。
致命傷ではない、意識もかろうじてだが保っている。これもシグナーとやらの恩恵か。
だが、危機はまだ始まったばかり。というよりむしろこれからだ。
雷光が瞬き、シカマル達へ死線の到来が知らしめられたのは直後の事だった。
まさか、と言う思いと共に傍らを見れば、悲鳴を上げて龍亞が崩れ落ちていた。
龍亞の名を叫びながら、シカマルは地に伏した彼の身体を担ぎあげる。
アカデミーの時に教わった生死の確認方法が活きた。
致命傷ではない、意識もかろうじてだが保っている。これもシグナーとやらの恩恵か。
だが、危機はまだ始まったばかり。というよりむしろこれからだ。
雷光が瞬き、シカマル達へ死線の到来が知らしめられたのは直後の事だった。
「ち、くしょうがァあああああああああッ!!!」
咆哮を上げ、眼を血走らせて決死の疾走を開始する。
だが、龍亞という足かせがいる以上、大したスピードは出せない。
そんなシカマルの背後で、バリバリィッという大気を引き裂く雷音が響き。
情け容赦なく、彼の視界を光が塗りつぶした。
だが、龍亞という足かせがいる以上、大したスピードは出せない。
そんなシカマルの背後で、バリバリィッという大気を引き裂く雷音が響き。
情け容赦なく、彼の視界を光が塗りつぶした。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼
考えておくべきだった。
あの黒い渦で飲み込んできた敵とグルだったのかは定かではないが。
それでも自分達が飛ばされた近辺に、奴もまた飛ばされている可能性を危惧すべきだった。
奴に偽無惨という協力者がいたのはネモに聞いている。
黒い渦の効果であの小心者もまた飛ばされたのなら。
当然、頼りにしている偽無惨との合流を目指すだろう。
例え自分達の方が目的地に近い配置で飛ばされていたとしても。
雷に姿を変えて移動できる相手なら僅かな距離の優位など何の意味もない。
むしろ、自分達が遠かった方が、やり過ごせた可能性が高く。
くそったれと、シカマルは逃げ込んだ小学校の校舎の玄関口で毒を吐いた。
あの黒い渦で飲み込んできた敵とグルだったのかは定かではないが。
それでも自分達が飛ばされた近辺に、奴もまた飛ばされている可能性を危惧すべきだった。
奴に偽無惨という協力者がいたのはネモに聞いている。
黒い渦の効果であの小心者もまた飛ばされたのなら。
当然、頼りにしている偽無惨との合流を目指すだろう。
例え自分達の方が目的地に近い配置で飛ばされていたとしても。
雷に姿を変えて移動できる相手なら僅かな距離の優位など何の意味もない。
むしろ、自分達が遠かった方が、やり過ごせた可能性が高く。
くそったれと、シカマルは逃げ込んだ小学校の校舎の玄関口で毒を吐いた。
「シカマル……大丈夫だよ、オレ………」
隣には電撃を受けてぐったりとした龍亞がへたり込んでいる。
ここまで何とか連れてこられたが、限界なのは一目で分かる状態だった。
これ以上は動かせない。恐らく、痺れのせいで立ち上がる事すら厳しいだろう。
それはつまり、自力での逃走が不可能になったことを意味する。
恐怖で恐慌に陥ってもおかしくない状況。
しかし、それでも龍亞は懐からカードを取り出し、シカマルへと笑いかけた。
ここまで何とか連れてこられたが、限界なのは一目で分かる状態だった。
これ以上は動かせない。恐らく、痺れのせいで立ち上がる事すら厳しいだろう。
それはつまり、自力での逃走が不可能になったことを意味する。
恐怖で恐慌に陥ってもおかしくない状況。
しかし、それでも龍亞は懐からカードを取り出し、シカマルへと笑いかけた。
「へへ…ラッキ。スターダスト…ちょっと焦げたけど、ちゃんと無事だ。
大丈夫だよ、シカマル……スターダストさえ呼び出せば。あんな奴………」
「……………………」
大丈夫だよ、シカマル……スターダストさえ呼び出せば。あんな奴………」
「……………………」
得意げに、シカマルを気遣う様に。
龍亞はスターダストを呼び出し、襲撃者を追い払う意志を見せる。
だが、対するシカマルの返答は沈黙だった。
無言でIQ200超えの頭脳をフル回転させ、客観的な事実を精査する。
確かに、メリュジーヌとすら渡り合ったあのドラゴンであれば。
あの小心者は追い払える可能性は、高い。しかし、絶対ではない。
龍亞が動けない事を考えれば、相打ちや此方が敗れる可能性も十分にある。
そして、もし首尾よく追い払えたとして、その後は?
もし敵手がスターダストの消えた後に引き返して来たら?
もし現状の危機を脱した後に、直ぐに別のマーダーに襲われたら?
龍亞はスターダストを呼び出し、襲撃者を追い払う意志を見せる。
だが、対するシカマルの返答は沈黙だった。
無言でIQ200超えの頭脳をフル回転させ、客観的な事実を精査する。
確かに、メリュジーヌとすら渡り合ったあのドラゴンであれば。
あの小心者は追い払える可能性は、高い。しかし、絶対ではない。
龍亞が動けない事を考えれば、相打ちや此方が敗れる可能性も十分にある。
そして、もし首尾よく追い払えたとして、その後は?
もし敵手がスターダストの消えた後に引き返して来たら?
もし現状の危機を脱した後に、直ぐに別のマーダーに襲われたら?
「…………………………………………………………………いや」
長い沈黙の後に、シカマルは無言で首を横に振った。
カードを介してのモンスターの口寄せは融通が利かない。
一度呼び出せばまた半日は使えなくなってしまう。
そうなれば、“独り”の龍亞が身を護る術はなくなり、無防備になってしまう。
それに、メリュジーヌすら追い返せる戦力を奴に割くのは収支が合わない。
龍亞が信頼し、切り札と見ている流星の龍を切るべき時は、今ではない。
その方が、きっと多くの人を守れるはずだから……
シカマルはカードゲーム何てロクにやったことは無かったけど。
将棋は父親とこの年までずっとやってきた為、駒の動かし方は分かっているつもりだ。
だから、彼は厳然と決断を下す。
カードを介してのモンスターの口寄せは融通が利かない。
一度呼び出せばまた半日は使えなくなってしまう。
そうなれば、“独り”の龍亞が身を護る術はなくなり、無防備になってしまう。
それに、メリュジーヌすら追い返せる戦力を奴に割くのは収支が合わない。
龍亞が信頼し、切り札と見ている流星の龍を切るべき時は、今ではない。
その方が、きっと多くの人を守れるはずだから……
シカマルはカードゲーム何てロクにやったことは無かったけど。
将棋は父親とこの年までずっとやってきた為、駒の動かし方は分かっているつもりだ。
だから、彼は厳然と決断を下す。
「お前はここまでだ、龍亞。後は俺に任せろ」
「…………え?」
「…………え?」
予想していなかった答えに、龍亞が呆けた声を漏らす。
表情も何を言っているのかわからない、そんな顔で。
だが、残念ながら彼の理解を待っている時間は、シカマルにない。
必要な物を自分のランドセルから取り出し、残りを龍亞へと押し付ける。
そして、龍亞のランドセルに入っていた一枚のカードを掲げた。
それを阻む手段は痺れで満足に動けない龍亞にはなかった。
表情も何を言っているのかわからない、そんな顔で。
だが、残念ながら彼の理解を待っている時間は、シカマルにない。
必要な物を自分のランドセルから取り出し、残りを龍亞へと押し付ける。
そして、龍亞のランドセルに入っていた一枚のカードを掲げた。
それを阻む手段は痺れで満足に動けない龍亞にはなかった。
「………ッ!?そんな…ダメだ。ダメだよシカマル。待って………っ!」
シカマルがカードを掲げて数秒後、龍亞のカードが光に包まれ浮かび上がる。
その時に、彼は見た。シカマルの背中と、彼の浮かべた表情を。
彼の背中は龍亞を庇ったのか、焼け焦げており。
皮膚が引き裂け、緑のベストが赤黒く染まるほど血に染まっていた。
それに気づき、視線を自分の胸や腹部の辺りに向けてみる。
すると今迄は自身も受けた電撃のダメージと、肉の焦げる匂いで気づかなかったが。
背負われ運ばれる際についたと思わしきシカマルの血が、べったりとこびり付いていた。
致命傷という三文字が、龍亞の脳裏に浮かび上がる。
そして、その頭に浮かんだ文字を裏付ける様に、垣間見たシカマルの表情は。
同じものだった。割戦隊と戦った時に浮かべていた、勝次の表情と。
その時に、彼は見た。シカマルの背中と、彼の浮かべた表情を。
彼の背中は龍亞を庇ったのか、焼け焦げており。
皮膚が引き裂け、緑のベストが赤黒く染まるほど血に染まっていた。
それに気づき、視線を自分の胸や腹部の辺りに向けてみる。
すると今迄は自身も受けた電撃のダメージと、肉の焦げる匂いで気づかなかったが。
背負われ運ばれる際についたと思わしきシカマルの血が、べったりとこびり付いていた。
致命傷という三文字が、龍亞の脳裏に浮かび上がる。
そして、その頭に浮かんだ文字を裏付ける様に、垣間見たシカマルの表情は。
同じものだった。割戦隊と戦った時に浮かべていた、勝次の表情と。
「嫌だ!待って!何で……何でなんだよ、シカマル!!!」
「俺はもう助かねぇ…ここで全滅するわけにはいかねーんだ。
それに、そのカードの効果は、一人分らしいからよ」
「俺はもう助かねぇ…ここで全滅するわけにはいかねーんだ。
それに、そのカードの効果は、一人分らしいからよ」
敵一人飛ばせればそれが一番だったんだがな、乃亜の野郎…余計な真似しやがる。
毒づきながらごふり、と。内臓も損傷したのか、口の端から血を垂らして。
何処か皮肉気に、シカマルは龍亞に対して笑いかけた。
そんなシカマルに向かって、右手を伸ばそうとするが、届かない。
今の彼にできる事は、叫ぶことだけだった。
毒づきながらごふり、と。内臓も損傷したのか、口の端から血を垂らして。
何処か皮肉気に、シカマルは龍亞に対して笑いかけた。
そんなシカマルに向かって、右手を伸ばそうとするが、届かない。
今の彼にできる事は、叫ぶことだけだった。
「くそ!待ってくれ!待ってくれよシカマル!!シカマル──────ッ!!!!」
龍亞の身体は何かの機械に包まれて…そしてシカマルの姿が、彼の前から消え失せる。
その刹那、龍亞は確かに聞いた。自分に向けられた、シカマルの最後の言葉を。
彼は煙草を咥えくたびれた顔を浮かべながら、それでも最後まで笑い。
その刹那、龍亞は確かに聞いた。自分に向けられた、シカマルの最後の言葉を。
彼は煙草を咥えくたびれた顔を浮かべながら、それでも最後まで笑い。
生き残れよ。
それが、最後だった。
海岸線が見える場所、恐らくはエリアの端の辺りへと転送されて。
痺れという戒めに苛まれながら、龍亞は大地に両拳を叩き付け打ちひしがれる。
海岸線が見える場所、恐らくはエリアの端の辺りへと転送されて。
痺れという戒めに苛まれながら、龍亞は大地に両拳を叩き付け打ちひしがれる。
「なんで…何で何だよ…勝次も、シカマルも……何で俺一人、生き残らせようと……」
泣くなと自分に言い聞かせる。
泣いていられる時間はない、自分はシカマル達に託されたのだから。
一刻も早く、あの雷の脅威を他の対主催に伝えないといけない。
梨沙も探して見つけてやらないといけない。体の痺れも抜けてきている。
動けるようになり次第行動開始しなければならない。
理解していても涙は一向に止まらず。立ち上がる事はまだ叶いそうにない。
───たった独り生き残ってしまう絶望は、幼きシグナーにとって余りにも重かった。
泣いていられる時間はない、自分はシカマル達に託されたのだから。
一刻も早く、あの雷の脅威を他の対主催に伝えないといけない。
梨沙も探して見つけてやらないといけない。体の痺れも抜けてきている。
動けるようになり次第行動開始しなければならない。
理解していても涙は一向に止まらず。立ち上がる事はまだ叶いそうにない。
───たった独り生き残ってしまう絶望は、幼きシグナーにとって余りにも重かった。
【一日目/日中/G-8】
【龍亞@遊戯王5D's】
[状態]ダメージ(小)、体に痺れ(中)、疲労(大)、悲しみ(大)、右肩に切り傷と銃傷(シカマルの処置済み)、
全身に軽度の火傷、殺人へのショック(極大)
[装備]パワー・ツール・ドラゴン&スターダスト・ドラゴン&フォーミュラ・シンクロン(日中まで使用不可)
シューティング・スター・ドラゴン&シンクロ・ヘイロー(2日目黎明まで使用不可)
龍亞のデュエルディスク(くず鉄のかかしセット中)@遊戯王5D's、亜空間物質転送装置(夕方まで使用不可)@遊戯王DM
[道具]基本支給品×3(龍亞、シカマル、勝次)、DMカード1枚@遊戯王、
フラッシュバン×5@現実、気化爆弾イグニス×3@とある科学の超電磁砲、首輪×3
シカマルの不明支給品×1、モチノキデパートで回収した大量のガラクタ
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
0:なんでだよ…勝次も、シカマルも……
1:梨沙と首輪を外せる参加者を探す。
2:沙都子とメリュジーヌを警戒
3:モクバを探す。羽蛾は信用できなさそう。
4:龍可がいなくて良かった……。
5:ブラックの事は許せないが、自分の勝手でこれ以上引っ掻き回さない。
6:藤木は許せない……
7:誰が地縛神を召喚したんだ?
[備考]
少なくともアーククレイドルでアポリアを撃破して以降からの参戦です。
彼岸島、当時のかな目線の【推しの子】世界について、大まかに把握しました。
[状態]ダメージ(小)、体に痺れ(中)、疲労(大)、悲しみ(大)、右肩に切り傷と銃傷(シカマルの処置済み)、
全身に軽度の火傷、殺人へのショック(極大)
[装備]パワー・ツール・ドラゴン&スターダスト・ドラゴン&フォーミュラ・シンクロン(日中まで使用不可)
シューティング・スター・ドラゴン&シンクロ・ヘイロー(2日目黎明まで使用不可)
龍亞のデュエルディスク(くず鉄のかかしセット中)@遊戯王5D's、亜空間物質転送装置(夕方まで使用不可)@遊戯王DM
[道具]基本支給品×3(龍亞、シカマル、勝次)、DMカード1枚@遊戯王、
フラッシュバン×5@現実、気化爆弾イグニス×3@とある科学の超電磁砲、首輪×3
シカマルの不明支給品×1、モチノキデパートで回収した大量のガラクタ
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
0:なんでだよ…勝次も、シカマルも……
1:梨沙と首輪を外せる参加者を探す。
2:沙都子とメリュジーヌを警戒
3:モクバを探す。羽蛾は信用できなさそう。
4:龍可がいなくて良かった……。
5:ブラックの事は許せないが、自分の勝手でこれ以上引っ掻き回さない。
6:藤木は許せない……
7:誰が地縛神を召喚したんだ?
[備考]
少なくともアーククレイドルでアポリアを撃破して以降からの参戦です。
彼岸島、当時のかな目線の【推しの子】世界について、大まかに把握しました。
締め切った教室の一室で。
煙草に火をつけて、煙を吸い込み吐き出す。
多分これが、人生最後の一服になるだろう。
もしかすれば、もう一度くらいは可能性はあるかもしれないがな。
そう独り言ちながら、並列的に思考を巡らせる。
龍亞は、ちゃんと安全な場所に辿り着けただろうか。
彼には、酷い事をしたと思っている。
直前に参加者にも適用される効果を持つカードがある事を知らなければ。
もしかしたら龍亞とは今も一緒にいたかもしれないが、詮無い話だ。
今のシカマルが龍亞にしてやれることはもう、彼の幸運を祈ることだけなのだから。
煙草に火をつけて、煙を吸い込み吐き出す。
多分これが、人生最後の一服になるだろう。
もしかすれば、もう一度くらいは可能性はあるかもしれないがな。
そう独り言ちながら、並列的に思考を巡らせる。
龍亞は、ちゃんと安全な場所に辿り着けただろうか。
彼には、酷い事をしたと思っている。
直前に参加者にも適用される効果を持つカードがある事を知らなければ。
もしかしたら龍亞とは今も一緒にいたかもしれないが、詮無い話だ。
今のシカマルが龍亞にしてやれることはもう、彼の幸運を祈ることだけなのだから。
何しろ他人より多少頭が回ったとしても、運に見放されればこの通り。
結局の所、このバトルロワイアルで一番必要とされるものは。
武勇でも智謀でもなく、運なのかもしれない。
自嘲しながらも、“失敗した場合”の仕込みに勤しむ。
支給された救命装置、AEDと言う名のそれを起動状態にして。
電撃を放たれた時に累が及ばぬ様に、自分の立つ場所とは反対の地点にそっと滑らせた。
これでよし。これで、“証拠”と、上手く行けば敵の能力すら暴露が可能となる。
結局の所、このバトルロワイアルで一番必要とされるものは。
武勇でも智謀でもなく、運なのかもしれない。
自嘲しながらも、“失敗した場合”の仕込みに勤しむ。
支給された救命装置、AEDと言う名のそれを起動状態にして。
電撃を放たれた時に累が及ばぬ様に、自分の立つ場所とは反対の地点にそっと滑らせた。
これでよし。これで、“証拠”と、上手く行けば敵の能力すら暴露が可能となる。
「こればっかりは、面倒くせーとか言ってられねぇよな……」
視界が霞む。手足の先から冷たくなっていくのが分かる。
だが、まだ倒れる訳にはいかない。まだ、やるべき仕事が残っているのだから。
それを終えるまでは斃れる事は許されないと、全身に残った身体エネルギーを振り絞り。
先に死んでいった勝次と言う戦友の顔を思い浮かべながら、煙草の火を消す。
そして、そのタイミングを計った様に、バチバチと雷に変えた身体で扉を透過し。
彼の前に、ニタニタと笑みを浮かべた下劣な死神が姿を現す。
だが、まだ倒れる訳にはいかない。まだ、やるべき仕事が残っているのだから。
それを終えるまでは斃れる事は許されないと、全身に残った身体エネルギーを振り絞り。
先に死んでいった勝次と言う戦友の顔を思い浮かべながら、煙草の火を消す。
そして、そのタイミングを計った様に、バチバチと雷に変えた身体で扉を透過し。
彼の前に、ニタニタと笑みを浮かべた下劣な死神が姿を現す。
「フフフフ……やっとみつけたぁ…!」
ボロボロの姿で立つシカマルの姿を認めて、藤木茂が快哉を上げる。
見つけたのは、偶然だった。
俊國と合流しなければとデパートに戻ろうと、雷に姿を変えて移動していた矢先。
同じくデパートに向かおうとしていた二人の背中を発見する事が出来たのだ。
襲おうかどうしようか迷ったが、自分は今暗殺者になろうとしているという時に。
あの二人に悪口を言いふらされたら、台無しになってしまう。
そうなる事を想像したら、酷く怖くなって。どきんどきんと鼓動が五月蠅くなり。
見つけたのは、偶然だった。
俊國と合流しなければとデパートに戻ろうと、雷に姿を変えて移動していた矢先。
同じくデパートに向かおうとしていた二人の背中を発見する事が出来たのだ。
襲おうかどうしようか迷ったが、自分は今暗殺者になろうとしているという時に。
あの二人に悪口を言いふらされたら、台無しになってしまう。
そうなる事を想像したら、酷く怖くなって。どきんどきんと鼓動が五月蠅くなり。
気が付いたら電撃を撃っていた。
自分に偉そうに物を言ってきた緑の髪の男の子も、シカマルも。
電撃が当たったら、拍子抜けするほどあっけなく追い詰める事ができた。
今近くにネモもフランも存在せず、好きに嬲れると気づいたのは直後のこと。
龍亞と呼ばれていた子もシカマルも、今の藤木にとっては獲物にしかならない。
さっきまで感じていた良心の呵責何て、圧倒的優位の優越感の前に吹き飛んだ。
電撃を放ちながら追い立てると、ちょこまかと必死に逃げていたが遂に追い詰めた。
どうやら連れていたもう一人は逃がした様だが、元々狙いはシカマルだ。
この島に連れてこられた自分に初めて屈辱を味合わせた相手。
漸く仕返しができる。シカマルをやっつけてこそ、自分は真のヒーローになれるのだ。
自分に偉そうに物を言ってきた緑の髪の男の子も、シカマルも。
電撃が当たったら、拍子抜けするほどあっけなく追い詰める事ができた。
今近くにネモもフランも存在せず、好きに嬲れると気づいたのは直後のこと。
龍亞と呼ばれていた子もシカマルも、今の藤木にとっては獲物にしかならない。
さっきまで感じていた良心の呵責何て、圧倒的優位の優越感の前に吹き飛んだ。
電撃を放ちながら追い立てると、ちょこまかと必死に逃げていたが遂に追い詰めた。
どうやら連れていたもう一人は逃がした様だが、元々狙いはシカマルだ。
この島に連れてこられた自分に初めて屈辱を味合わせた相手。
漸く仕返しができる。シカマルをやっつけてこそ、自分は真のヒーローになれるのだ。
「も、もう一人は逃げちゃったのかい?見捨てられちゃったんだろ?」
手の届く範囲まで迫った勝利の二文字に、高揚感を抑えきれない。
もう少しだ。もう少しで敗北の雪辱を晴らし、この劣等感を拭う事ができる。
それを考えれば、獲物を一人逃がしてしまった事さえ些事でしかない。
むしろ、反撃される恐れが減って有難い位だ。
ほくそ笑みながら、藤木はシカマルに対し龍亞への愚弄を口にする。
しかし、シカマルの返答は藤木の期待とは大きくかけ離れた物で。
同行者に対する嘲りの言葉に対し、シカマルが返した返答は、嘲笑。
藤木は自身への侮蔑に対して人一倍敏感だった。
何が可笑しい!と怒りを露わにした態度でシカマルに喋る事を促す。
何時でも獲物へと向かって雷を発射できる態勢で。命乞いを始める事を期待して。
だが、やはりシカマルが藤木の期待通りに動くことは無く。
もう少しだ。もう少しで敗北の雪辱を晴らし、この劣等感を拭う事ができる。
それを考えれば、獲物を一人逃がしてしまった事さえ些事でしかない。
むしろ、反撃される恐れが減って有難い位だ。
ほくそ笑みながら、藤木はシカマルに対し龍亞への愚弄を口にする。
しかし、シカマルの返答は藤木の期待とは大きくかけ離れた物で。
同行者に対する嘲りの言葉に対し、シカマルが返した返答は、嘲笑。
藤木は自身への侮蔑に対して人一倍敏感だった。
何が可笑しい!と怒りを露わにした態度でシカマルに喋る事を促す。
何時でも獲物へと向かって雷を発射できる態勢で。命乞いを始める事を期待して。
だが、やはりシカマルが藤木の期待通りに動くことは無く。
「………お前、ちょっとホッとしただろ」
「……な、何だって?」
「龍亞が此処にいなくて、ほっとしただろって言ってんだよ。
お前、俺はともかく龍亞を殺すのは怖気づいてただろうが」
「……な、何だって?」
「龍亞が此処にいなくて、ほっとしただろって言ってんだよ。
お前、俺はともかく龍亞を殺すのは怖気づいてただろうが」
───デパートで言ってた永沢って人、きみの友達だよね。
───なら、どうして皆に言ってくれなかったんだ。
───シカマルもネモも…きっと、助けてくれたよ。
───なら、どうして皆に言ってくれなかったんだ。
───シカマルもネモも…きっと、助けてくれたよ。
シカマルの言葉によって残響の様に脳裏に響く、龍亞からかけられた言葉。
自分が最初から間違っていたことを突き付けてくる言葉。
条件づけられた犬の様に、龍亞の名前が出ると同時に、彼の言葉が思い起こされて。
自分が、怖気づいている?あの、シカマルよりも自分に対し何もできなかった男の子に?
違うと否定しようとしたが、言葉は直ぐに出てこず。
シカマルが藤木の心境を読んだかのように「違わないね」と先んじて言葉を突き付けた。
自分が最初から間違っていたことを突き付けてくる言葉。
条件づけられた犬の様に、龍亞の名前が出ると同時に、彼の言葉が思い起こされて。
自分が、怖気づいている?あの、シカマルよりも自分に対し何もできなかった男の子に?
違うと否定しようとしたが、言葉は直ぐに出てこず。
シカマルが藤木の心境を読んだかのように「違わないね」と先んじて言葉を突き付けた。
「お前は龍亞に一番後ろめたい部分を言い当てられて、怖気づいたのさ。
でなけりゃ、龍亞が受けた電撃の損傷があんなに軽いはずはねぇ」
でなけりゃ、龍亞が受けた電撃の損傷があんなに軽いはずはねぇ」
シカマルが外傷を確認した所、龍亞のダメージは目に見えて軽かった。
藤木が龍亞を気遣って…と言う可能性はない。断じてない。
すぐ後に自分が遥かに強力な電撃を浴びせられたからこそ断言できる。
では、何故龍亞のダメージだけが軽かったのか。簡単な話だ。
藤木が龍亞を気遣って…と言う可能性はない。断じてない。
すぐ後に自分が遥かに強力な電撃を浴びせられたからこそ断言できる。
では、何故龍亞のダメージだけが軽かったのか。簡単な話だ。
「龍亞に言われた事が後ろめたかったんだろ?」
「そ、それは………」
「そ、それは………」
図星だった。
最初に奇襲をかけた時にも、龍亞に言われたことが蘇って。
だから殺すよりも足手纏いを作った方が逃げられないと、無理やり言い訳して。
本当は、龍亞にまた「何でこんなことするんだ」と哀しい目で見られるのが嫌だったから。
自分が全部悪いって、何度も突き付けられるのが怖かったから。
だからシカマルを倒す前に、龍亞の意識を奪おうとした。
それを見抜かれて、呆然と立ち尽くす。続くシカマルの話に耳を傾けてしまう。
最初に奇襲をかけた時にも、龍亞に言われたことが蘇って。
だから殺すよりも足手纏いを作った方が逃げられないと、無理やり言い訳して。
本当は、龍亞にまた「何でこんなことするんだ」と哀しい目で見られるのが嫌だったから。
自分が全部悪いって、何度も突き付けられるのが怖かったから。
だからシカマルを倒す前に、龍亞の意識を奪おうとした。
それを見抜かれて、呆然と立ち尽くす。続くシカマルの話に耳を傾けてしまう。
「考えて見りゃ、お前は最初に梨沙と俺を襲った時からそうだった。
臆病なくせに、手に入れた借り物の力に酔いしれずにゃいられねぇ…一貫してるよ」
臆病なくせに、手に入れた借り物の力に酔いしれずにゃいられねぇ…一貫してるよ」
奈良シカマルから見た藤木茂は、悪人では無かった。
ただひたすらに、愚かで弱いのだ。
想像力も思考力も無いから、悪人でもやらないような合理性を欠いた真似に手を染め。
自分の弱さを認める事ができず、常に他人に責任を擦り付ける。
そして、自分の劣等感から目を逸らすために手に入れた力で人を傷つけずにはいられない。
あぁ、殺し合いの促進のためにはこれ以上ない人材と言えるだろう。
だからこそ乃亜は彼を招き、彼に身の丈に合わない力を与えたのだ。
ただひたすらに、愚かで弱いのだ。
想像力も思考力も無いから、悪人でもやらないような合理性を欠いた真似に手を染め。
自分の弱さを認める事ができず、常に他人に責任を擦り付ける。
そして、自分の劣等感から目を逸らすために手に入れた力で人を傷つけずにはいられない。
あぁ、殺し合いの促進のためにはこれ以上ない人材と言えるだろう。
だからこそ乃亜は彼を招き、彼に身の丈に合わない力を与えたのだ。
「安心しろよ、龍亞はああ言ったが……
お前があの時仲間にしてくれって頼んだ所で、結局こうなってたさ、何でか分かるか?」
お前があの時仲間にしてくれって頼んだ所で、結局こうなってたさ、何でか分かるか?」
嫌だ、と思った。
見下されるのも、蔑まれるのも。失望したような顔を向けられるよりはマシだ。
龍亞にデパートで自分が悪いと突き付けられた時は心の底からそう思っていた。
でもこれはダメだ。だってきっとシカマルがこれから言おうとしている事は。
藤木茂が、それ以外のif何て最初からなかったと突き付けるモノだから。
もしかしたら、これ以外の道もあったかもしれないという夢想すら奪うものだから。
口をふさがなければ、そう思うモノの、身体は鉛になったかのように動いてくれない。
それを猛禽の様に鋭い視線で睨みながら、シカマルは容赦なく言葉を放つ。
見下されるのも、蔑まれるのも。失望したような顔を向けられるよりはマシだ。
龍亞にデパートで自分が悪いと突き付けられた時は心の底からそう思っていた。
でもこれはダメだ。だってきっとシカマルがこれから言おうとしている事は。
藤木茂が、それ以外のif何て最初からなかったと突き付けるモノだから。
もしかしたら、これ以外の道もあったかもしれないという夢想すら奪うものだから。
口をふさがなければ、そう思うモノの、身体は鉛になったかのように動いてくれない。
それを猛禽の様に鋭い視線で睨みながら、シカマルは容赦なく言葉を放つ。
「ネモがお前の事を信用しなかったのはお前がイケてねー奴だからじゃねぇ……
テメーの薄汚い性根のせいだよ。恩を仇で返して、弱い奴を真っ先に狙う。
そんなクズ野郎をどうやって信用しろってんだ。よく被害者面できたもんだな、あぁ?」
テメーの薄汚い性根のせいだよ。恩を仇で返して、弱い奴を真っ先に狙う。
そんなクズ野郎をどうやって信用しろってんだ。よく被害者面できたもんだな、あぁ?」
その言葉に、藤木は目を見開いて、違うと叫んだ。
ネモがフランやしおを贔屓してたのは事実だ、そうでなくてはいけない。
全部彼奴が悪いんだ。そもそも彼奴が悟空を独り占めして無ければ永沢君も───
そう吼えた。だが、そんな詭弁はシカマルには全く効果が無かった。
ネモがフランやしおを贔屓してたのは事実だ、そうでなくてはいけない。
全部彼奴が悪いんだ。そもそも彼奴が悟空を独り占めして無ければ永沢君も───
そう吼えた。だが、そんな詭弁はシカマルには全く効果が無かった。
「仮にそうだとしても、ここまで一貫してマーダーやってるテメーが言えた義理かよ。
第一、テメーが永沢って奴を生き返らせようとしてるとは俺には思えないね」
第一、テメーが永沢って奴を生き返らせようとしてるとは俺には思えないね」
ぎくり、と。
そんなことは無いと否定できるはずの台詞を、否定できなかった。
図星を突かれた様に押し黙ってしまう。違うの三文字が喉から出てこない。
さっきは、あんなに簡単に口にすることができたのに。
代わりに出てきたのは、何でそう思うんだと言う暗に認める様な台詞だった。
そんなことは無いと否定できるはずの台詞を、否定できなかった。
図星を突かれた様に押し黙ってしまう。違うの三文字が喉から出てこない。
さっきは、あんなに簡単に口にすることができたのに。
代わりに出てきたのは、何でそう思うんだと言う暗に認める様な台詞だった。
「取り合えず真っ先に言える一番大きな理由は……お前、偽俊國の事信じ切ってるだろ?」
「え………?」
「え………?」
予想外の名前が出てきたことに困惑し、やはり反論の言葉は紡げない。
いやむしろ、今のシカマルの話は聞き逃すべきではないと第六感が告げていた。
耳を傾ける体勢となった藤木を見て、シカマルは更に弁舌を振るう。
何故なら、彼にとってもこれは後々の為に行っておかなければならない仕事だから。
いやむしろ、今のシカマルの話は聞き逃すべきではないと第六感が告げていた。
耳を傾ける体勢となった藤木を見て、シカマルは更に弁舌を振るう。
何故なら、彼にとってもこれは後々の為に行っておかなければならない仕事だから。
「本物の俊國が言ってたよ、お前と一緒にいた方の俊國は食った相手の能力を奪える。
つまり、奴がお前といるのはお前と友達になりたいからじゃない、お前を利用して……
用済みになった頃合いでお前を殺して、その雷の力を奪うためだよ、賭けてもいい」
「で、デタラメ────」
「デタラメだって言うなら、何で偽俊國はお前を一人で特攻させた?
案の定お前は返り討ちに遭って、あの妙な黒い渦に呑まれなきゃそのまま死んでた。
あの黒い渦が偽俊國の狙ってやったことなら、お前まで飛ばす理由がねぇ」
「……………!!」
つまり、奴がお前といるのはお前と友達になりたいからじゃない、お前を利用して……
用済みになった頃合いでお前を殺して、その雷の力を奪うためだよ、賭けてもいい」
「で、デタラメ────」
「デタラメだって言うなら、何で偽俊國はお前を一人で特攻させた?
案の定お前は返り討ちに遭って、あの妙な黒い渦に呑まれなきゃそのまま死んでた。
あの黒い渦が偽俊國の狙ってやったことなら、お前まで飛ばす理由がねぇ」
「……………!!」
藤木の顔が驚愕に染まる。
それを見て、狙い通りだとシカマルは心中で笑みを浮かべた。
彼に残された最も大きな仕事、それは偽俊國に藤木の能力が渡らない様楔を打ち込む事だ。
何しろ、藤木程度の三下が振るっても強力に過ぎる能力。
それが素でブラックと渡り合える偽俊國に渡ってしまえば……
対主催に未来はない。故に、それだけは絶対に阻止しなければならない。
だから彼は藤木茂の臆病さ、屑さを利用する。疑心暗鬼を引き起こす。
その為に決定的な、決め手となる一言を、躊躇することなく口にする。
それを見て、狙い通りだとシカマルは心中で笑みを浮かべた。
彼に残された最も大きな仕事、それは偽俊國に藤木の能力が渡らない様楔を打ち込む事だ。
何しろ、藤木程度の三下が振るっても強力に過ぎる能力。
それが素でブラックと渡り合える偽俊國に渡ってしまえば……
対主催に未来はない。故に、それだけは絶対に阻止しなければならない。
だから彼は藤木茂の臆病さ、屑さを利用する。疑心暗鬼を引き起こす。
その為に決定的な、決め手となる一言を、躊躇することなく口にする。
「何より───乃亜の奴も言ってただろ?生き残れるのは一人だって。
立場が逆なら、態々乃亜に逆らってまでお前は偽俊國の奴を生かそうと思うか?」
「ぁ………ッ!!」
立場が逆なら、態々乃亜に逆らってまでお前は偽俊國の奴を生かそうと思うか?」
「ぁ………ッ!!」
その言葉が決め手となった。
自分ならどうするかと言う話になった事で、藤木も想像せざるを得ない。
自分が最後の二人になったら、どうする?
乃亜に逆らってまで、俊國を生かそうとするだろうか?
提案するくらいなら、してみるかもしれない。だが、できてそこまでだろう。
もし乃亜が生き残れるのはあくまで一人と言えば……その後の事は考えるまでも無い。
余り考えたくない事だが、俊國もきっと最後に一人になる事を目指すだろう。
だって彼は、シュライバーの様に何も約束はしてくれていないのだから。
そして、もしそうなった時に…自分は俊國に勝って優勝する事ができるのか?
あの怖い怖い俊國を相手に?
自分ならどうするかと言う話になった事で、藤木も想像せざるを得ない。
自分が最後の二人になったら、どうする?
乃亜に逆らってまで、俊國を生かそうとするだろうか?
提案するくらいなら、してみるかもしれない。だが、できてそこまでだろう。
もし乃亜が生き残れるのはあくまで一人と言えば……その後の事は考えるまでも無い。
余り考えたくない事だが、俊國もきっと最後に一人になる事を目指すだろう。
だって彼は、シュライバーの様に何も約束はしてくれていないのだから。
そして、もしそうなった時に…自分は俊國に勝って優勝する事ができるのか?
あの怖い怖い俊國を相手に?
「ようやく気付いたみたいだな。そうだよ、能天気に偽俊國をアテにしてるお前は…
本気で優勝しようなんて思っちゃいない。成り行き任せで考えなしに流されてるだけ。
自分はダチの為に何かやってる…そう誤魔化すために、ダチの名前を利用してるのさ」
本気で優勝しようなんて思っちゃいない。成り行き任せで考えなしに流されてるだけ。
自分はダチの為に何かやってる…そう誤魔化すために、ダチの名前を利用してるのさ」
本当に永沢の事を生き返らせようなんて、思っちゃいない。
藤木茂が力を振るうのはただ単に、他人を攻撃せずにはいられない臆病さと。
手に入れた力を振るいたいという幼稚な自己顕示欲を満たすための建前。
そうシカマルは断じ、追い打ちをかけるように更に畳みかける。
藤木茂が力を振るうのはただ単に、他人を攻撃せずにはいられない臆病さと。
手に入れた力を振るいたいという幼稚な自己顕示欲を満たすための建前。
そうシカマルは断じ、追い打ちをかけるように更に畳みかける。
「あと、お前はフランや龍亞に電撃を撃つのを躊躇ってたが……
それはお前が良い奴だからなんかじゃねぇ、単に手を汚す覚悟も無い臆病者だからだ」
それはお前が良い奴だからなんかじゃねぇ、単に手を汚す覚悟も無い臆病者だからだ」
否定、できなかった。反論は不可能だった。
古畑任三郎で、古畑に犯行を暴かれた犯人の様に。
人は、後ろめたい部分を全て暴かれると固まってしまうのだ。
そんな藤木に、シカマルはトドメとなる一言を用意し。
完全に、現状の藤木茂を否定する言葉を言い放つ。
古畑任三郎で、古畑に犯行を暴かれた犯人の様に。
人は、後ろめたい部分を全て暴かれると固まってしまうのだ。
そんな藤木に、シカマルはトドメとなる一言を用意し。
完全に、現状の藤木茂を否定する言葉を言い放つ。
「ネモ達はお前に同情的だったが、俺から言わせりゃテメーはタダのクズ野郎だよ。
ヒーローでも神でもない、ただの短絡的で他責思考でビビリのクソガキだ」
「……………ッ!!!!!」
ヒーローでも神でもない、ただの短絡的で他責思考でビビリのクソガキだ」
「……………ッ!!!!!」
結局、藤木が最後までシカマルの言葉できることは無かった。
ただのクズ野郎、そう言われるまでその場に立ち尽くして。
暫しの間、二人の間に緊迫感を伴った沈黙が漂う。
ただのクズ野郎、そう言われるまでその場に立ち尽くして。
暫しの間、二人の間に緊迫感を伴った沈黙が漂う。
「フ、フフフフフ………君の言う通り、俊國君も信用できない。参考にさせてもらうよ」
やがて藤木は、嗤った。
俊國の事については一理ある。
生き残る為に精々参考にさせてもらおうと思える意見だ。
だがもう一つの罵倒については、藤木自身当に自覚していた事だった。
自分が卑怯者のクズだなんてことは、この島に来る前から知っていた。
今更突き付けられた所で、大した痛痒はない。それに何より。
俊國の事については一理ある。
生き残る為に精々参考にさせてもらおうと思える意見だ。
だがもう一つの罵倒については、藤木自身当に自覚していた事だった。
自分が卑怯者のクズだなんてことは、この島に来る前から知っていた。
今更突き付けられた所で、大した痛痒はない。それに何より。
「い、言いたい事はそれだけかい…?そういうの、負け犬の遠吠えって言うんだよ?
ぼ、僕がクズだとしても……その僕に殺される君はそれ以下のゴミって事だね!!」
ぼ、僕がクズだとしても……その僕に殺される君はそれ以下のゴミって事だね!!」
何を言われようと、自分には響かない。
だって、自分は既にシカマルよりも遥かに強いのだから。
これからシカマルは、自分にやっつけられるのだから。
本当にシカマルが正しいのなら、シカマルが勝つはずなのだから。
だが、今のボロボロのシカマルを見ればそんな大逆転は夢物語だ。
だから、正しいのは自分で、出鱈目をほざいているのはシカマルの方。
そう藤木茂は結論付けて、嘲笑を浮かべながら嘲りの言葉を口にする。
だって、自分は既にシカマルよりも遥かに強いのだから。
これからシカマルは、自分にやっつけられるのだから。
本当にシカマルが正しいのなら、シカマルが勝つはずなのだから。
だが、今のボロボロのシカマルを見ればそんな大逆転は夢物語だ。
だから、正しいのは自分で、出鱈目をほざいているのはシカマルの方。
そう藤木茂は結論付けて、嘲笑を浮かべながら嘲りの言葉を口にする。
「────ククッ」
しかし、シカマルはそんな藤木の開き直りにも動じない。
ただ、余裕を示す様な、不敵な笑みを浮かべて。
それがどうしようもなく、藤木には不気味に映った。
上ずった声で、もう一度何が可笑しいと尋ねる藤木。
そんな彼に対し、シカマルは不敵な笑みを保ったまま藤木の認識の間違いを指摘する。
ただ、余裕を示す様な、不敵な笑みを浮かべて。
それがどうしようもなく、藤木には不気味に映った。
上ずった声で、もう一度何が可笑しいと尋ねる藤木。
そんな彼に対し、シカマルは不敵な笑みを保ったまま藤木の認識の間違いを指摘する。
「てめぇが、俺より強いって思ってる所さ」
は?と呆けた声が出る。
藤木にはシカマルの言っている事の意味が理解できなかった。
あんなにボロボロで何もしなくても死んじゃいそうに見える身体で。
それが、僕より強い?
電撃で、ご自慢の頭までイカれたのか?
まず、そう考えて───直ぐに、嫌らしい笑みを形作る。
藤木にはシカマルの言っている事の意味が理解できなかった。
あんなにボロボロで何もしなくても死んじゃいそうに見える身体で。
それが、僕より強い?
電撃で、ご自慢の頭までイカれたのか?
まず、そう考えて───直ぐに、嫌らしい笑みを形作る。
「ウ、ウフフフフフ……そ、それじゃあ、証明して貰おうじゃないか」
脅かす様に、嬲る様にシカマルの目前に手を翳す。
今の消耗しきったシカマルでは、自分の電撃を躱すのは不可能だろう。
直ぐには殺さない。散々偉そうに言った事を「ごめんなさい」と土下座して謝るまで
電撃を浴びせ続け、嬲ってやる。
そう決意して、電撃を放とうとした時───シカマルに「周りを見て見ろ」と促される。
誘導されるままに周囲を見渡してみると、締め切った教室内に異変が現れていた。
いつの間にか、二人の足元に煙が満ちていたのだ。
出所を探ると、シカマルの足元に隠れる様に細長い缶ジュースの様な筒が転がっており。
筒からは何かの煙が溢れ、それを起点として教室内に広がっている様子だった
まさか、毒?藤木は戦慄を禁じ得ない。
今の消耗しきったシカマルでは、自分の電撃を躱すのは不可能だろう。
直ぐには殺さない。散々偉そうに言った事を「ごめんなさい」と土下座して謝るまで
電撃を浴びせ続け、嬲ってやる。
そう決意して、電撃を放とうとした時───シカマルに「周りを見て見ろ」と促される。
誘導されるままに周囲を見渡してみると、締め切った教室内に異変が現れていた。
いつの間にか、二人の足元に煙が満ちていたのだ。
出所を探ると、シカマルの足元に隠れる様に細長い缶ジュースの様な筒が転がっており。
筒からは何かの煙が溢れ、それを起点として教室内に広がっている様子だった
まさか、毒?藤木は戦慄を禁じ得ない。
「な、何だよこれ!」
「気化爆弾イグニスっつってな───1度周囲に満ちれば、火種と反応してドカンだぜ」
告げられた言葉を聞いた瞬間、藤木が俄かに覚えたのは安堵。
なんだ、その程度の秘策なら問題ない、と。
だって、一度雷になってしまえば物理攻撃は自分には通用しないのだから。
バズーカ砲を浴びた時だって無傷だったのだから。
だが、当然彼程度の脳みそで思いつくことをシカマルが考えていない筈もなく。
なんだ、その程度の秘策なら問題ない、と。
だって、一度雷になってしまえば物理攻撃は自分には通用しないのだから。
バズーカ砲を浴びた時だって無傷だったのだから。
だが、当然彼程度の脳みそで思いつくことをシカマルが考えていない筈もなく。
「どうかな?この爆弾は俺達忍者の使う術みたいな特殊能力にも通じるらしいぜ。
それに火花が散った瞬間爆発すんだから──果たして全身雷になるまでに間に合うかな」
「………っ!?う、嘘だ!嘘に決まってる!!」
「だったら、試して見ればいい。負けた時はお前も吹き飛んでるだろうけどな」
それに火花が散った瞬間爆発すんだから──果たして全身雷になるまでに間に合うかな」
「………っ!?う、嘘だ!嘘に決まってる!!」
「だったら、試して見ればいい。負けた時はお前も吹き飛んでるだろうけどな」
藤木の表情から、余裕と嘲りの色が消えた。
シカマルの顔を見れば、覚悟を決めた表情を浮かべていて。
まさか、自分ごと吹き飛ぶつもりなのか?そう思ってしまう。
爆死。その未来を想像すると、電撃を放てない。火花すら上げられない。
でも、爆死しなくても、今影を出されて、デパートの時みたいに刺されたら。
どうする?どうすればいい?
人生最大級の緊張の中で、藤木は必死に低能な頭脳を総動員し知恵を絞る。
そして、一つの単純な解に辿り着いた。
シカマルの顔を見れば、覚悟を決めた表情を浮かべていて。
まさか、自分ごと吹き飛ぶつもりなのか?そう思ってしまう。
爆死。その未来を想像すると、電撃を放てない。火花すら上げられない。
でも、爆死しなくても、今影を出されて、デパートの時みたいに刺されたら。
どうする?どうすればいい?
人生最大級の緊張の中で、藤木は必死に低能な頭脳を総動員し知恵を絞る。
そして、一つの単純な解に辿り着いた。
「フフフフッ!な、なら……こうだ!!」
脱兎のごとく駆けだし、目指す先は、締め切った教室の外。
ガスは部屋の外までは広がっていないだろう。
つまり、部屋の外にさえ逃げれば爆死の心配はない。
いや、部屋の外に出たら電撃を放り込んでやるのもいいかもしれない。
そうすれば自分より絶対に後に部屋を出る事になるシカマルは自爆。自業自得だ。
勝てる。勝てるぞ。思わず笑みを零しながら、教室の扉に手をかける。
だがシカマルの事だ。何か罠を仕掛けているかもしれない。
念のため、部屋の外に出たらすぐさま体を雷に変えて身を守らなければ。
保身の2文字を常に最優先で思考しながら、横開きの扉を勢いよくスライドさせた。
扉はあっけなく開き、身体を雷化させながら安全地帯である教室の外へと乗り出す。
直後の事だった。何かピンが抜ける様な音が響いて、其方に顔を向ける。
ガスは部屋の外までは広がっていないだろう。
つまり、部屋の外にさえ逃げれば爆死の心配はない。
いや、部屋の外に出たら電撃を放り込んでやるのもいいかもしれない。
そうすれば自分より絶対に後に部屋を出る事になるシカマルは自爆。自業自得だ。
勝てる。勝てるぞ。思わず笑みを零しながら、教室の扉に手をかける。
だがシカマルの事だ。何か罠を仕掛けているかもしれない。
念のため、部屋の外に出たらすぐさま体を雷に変えて身を守らなければ。
保身の2文字を常に最優先で思考しながら、横開きの扉を勢いよくスライドさせた。
扉はあっけなく開き、身体を雷化させながら安全地帯である教室の外へと乗り出す。
直後の事だった。何かピンが抜ける様な音が響いて、其方に顔を向ける。
轟音と閃光が、藤木の耳と目を灼いた。
──────うああああああッッッ!?!?!?!?
どうッと地面に倒れ伏す。
視界が真っ白になって、何も見えない、聞こえない。
何が起こったのか分からない。何故、部屋の外に出た瞬間体を雷に変えた筈なのに。
どんな物理攻撃も、自分には通じない筈なのに。
廊下の床に突っ伏しながら、うねうねと芋虫の様にはい回る。
視界が真っ白になって、何も見えない、聞こえない。
何が起こったのか分からない。何故、部屋の外に出た瞬間体を雷に変えた筈なのに。
どんな物理攻撃も、自分には通じない筈なのに。
廊下の床に突っ伏しながら、うねうねと芋虫の様にはい回る。
「な、何だよ何だよ何だよこれぇええええぇえええええええッ!!!!」
「聞こえねーだろうし、教えてもやらねぇが、お前の能力は無敵でも何でもねぇ
防御面じゃただ単に物理攻撃を無効化するだけだ。なら、いくらでもやり様はあるのさ」
「聞こえねーだろうし、教えてもやらねぇが、お前の能力は無敵でも何でもねぇ
防御面じゃただ単に物理攻撃を無効化するだけだ。なら、いくらでもやり様はあるのさ」
まずしっかりと藤木の状態を確認してから、敵手の直線上にシカマルは位置取り。
藤木の耳が潰れたのをいい事に、自分が何をやったのかを述べ始める。
今のシカマルにとって、舌を動かすことが意識を保つための最後のよすがだった。
藤木の耳が潰れたのをいい事に、自分が何をやったのかを述べ始める。
今のシカマルにとって、舌を動かすことが意識を保つための最後のよすがだった。
「見えない、聞こえないよぉおおおおお!!!何でだよクソッ!!クソオオオッ!!」
「まず弱点その1、テメーの頭が悪すぎる。簡単に誘導に引っかかる。
一度守りに入るとネモやフランがいい様にやられたのが不思議な位だぜ」
「まず弱点その1、テメーの頭が悪すぎる。簡単に誘導に引っかかる。
一度守りに入るとネモやフランがいい様にやられたのが不思議な位だぜ」
少なくとも、藤木茂は命のやり取りをするにあたって駆け引きなどやった事が無い。
デパートを襲撃した時は優位に立ったが、あれは偽俊國の入れ知恵あってこそだ。
もう一度戦えば、ネモもフランも対応するのはそう難しくは無いだろう。
デパートを襲撃した時は優位に立ったが、あれは偽俊國の入れ知恵あってこそだ。
もう一度戦えば、ネモもフランも対応するのはそう難しくは無いだろう。
「肝心な所で命を張れねぇ臆病者な所も弱点その2だな。
気化爆弾イグニスなんてもんはハッタリで、正体は窒素ガスさ。爆発なんかしねーよ」
「あああああああああああああああああ!!!!!!」
気化爆弾イグニスなんてもんはハッタリで、正体は窒素ガスさ。爆発なんかしねーよ」
「あああああああああああああああああ!!!!!!」
そう、かつて藤木と同じ電撃能力者である学園都市の第3位の能力者。
彼女がとある暗部の少女から受けたのとまったく同じブラフだった。
もし藤木にもう少し度胸があって、イグニスなどハッタリだと攻撃を仕掛けられれば。
シカマルに打つ手はなく、そのまま勝者は藤木となっていただろう。
だが、それを考慮してなおシカマルは藤木が勝負から背を向けると睨み。
果たして、戦闘の推移は彼の想定通りの結果となった。
彼女がとある暗部の少女から受けたのとまったく同じブラフだった。
もし藤木にもう少し度胸があって、イグニスなどハッタリだと攻撃を仕掛けられれば。
シカマルに打つ手はなく、そのまま勝者は藤木となっていただろう。
だが、それを考慮してなおシカマルは藤木が勝負から背を向けると睨み。
果たして、戦闘の推移は彼の想定通りの結果となった。
「そして、テメェの弱点その3─────」
印を組み、身体に残った最後の身体エネルギーを振り絞ってチャクラを練る。
藤木は今、何も視界に映せていないだろうが。
シカマルもまた、視界が霞んで、既に藤木の姿は殆どシルエットと化していた。
しかしまだ倒れる訳にはいかない。未だ生き残っている龍亞や、ナルト達のためにも。
藤木は今、何も視界に映せていないだろうが。
シカマルもまた、視界が霞んで、既に藤木の姿は殆どシルエットと化していた。
しかしまだ倒れる訳にはいかない。未だ生き残っている龍亞や、ナルト達のためにも。
「てめぇが雷化の術でも絶対無効化できねぇもんがある。それは…音と光だ。
この2つだけは、遮断しちまったら何も聞こえねぇし、何も見えなくなるからな」
「や、やめろ……やめて………殺さないで」
この2つだけは、遮断しちまったら何も聞こえねぇし、何も見えなくなるからな」
「や、やめろ……やめて………殺さないで」
シカマルは早々にその事実に当たりをつけた。
締め切った部屋に立てこもれば、藤木は体を雷に変えて壁抜けを行ってくるだろうし。
ハッタリで揺さぶりを掛ければまず間違いなく保身を選ぶ。
であれば、保身を選んだ際に逃走に使うと見られるルートに罠を張ればいい。
例えば、扉を勢いよく開いた時にフラッシュバンのピンが抜ける仕掛けだとか。
メリュジーヌや偽俊國の様な相手には使うだけ無駄な、龍亞の支給品だったが。
閃光と轟音で軍人をも無力化する閃光手榴弾は、藤木に対して覿面の効果を発揮した。
締め切った部屋に立てこもれば、藤木は体を雷に変えて壁抜けを行ってくるだろうし。
ハッタリで揺さぶりを掛ければまず間違いなく保身を選ぶ。
であれば、保身を選んだ際に逃走に使うと見られるルートに罠を張ればいい。
例えば、扉を勢いよく開いた時にフラッシュバンのピンが抜ける仕掛けだとか。
メリュジーヌや偽俊國の様な相手には使うだけ無駄な、龍亞の支給品だったが。
閃光と轟音で軍人をも無力化する閃光手榴弾は、藤木に対して覿面の効果を発揮した。
「そして、これが最後の弱点────!!」
ごふりと血を吐きながら、生涯最後の術を行使する。
選ぶのはデパートで効果を発揮していた、影縫いの術。
今の藤木なら一撃で脳天か首をぶち抜く事ができる筈だ。
何故なら今の藤木に周囲の情報を知る術はないし、それに何より。
選ぶのはデパートで効果を発揮していた、影縫いの術。
今の藤木なら一撃で脳天か首をぶち抜く事ができる筈だ。
何故なら今の藤木に周囲の情報を知る術はないし、それに何より。
「雷化の術はオートで発動せず、脆くてお粗末なお前の手動でしか発動しねぇって事だ」
そう、藤木自身の耐久力が脆過ぎるのだ。
無効化できない攻撃に耐える肉体も忍耐も精神力も彼は持ち合わせていない。
だから今のパニックに陥っている、彼では雷に姿を変えて逃げる事は出来ない。
だからこそシカマルも冷徹に、最後の勝負をかける。
卑劣の徒へと、漆黒の槍を突き出す─────!!!
無効化できない攻撃に耐える肉体も忍耐も精神力も彼は持ち合わせていない。
だから今のパニックに陥っている、彼では雷に姿を変えて逃げる事は出来ない。
だからこそシカマルも冷徹に、最後の勝負をかける。
卑劣の徒へと、漆黒の槍を突き出す─────!!!
「ヴあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」
「────これで、詰み……だ」
「────これで、詰み……だ」