「――――のび太や、ドラえもん達がいれば頼りになると思うんだ」
骨川スネ夫は、殺し合いが始まってから出会った同じ参加者達に自分の大雑把な知り合いと、それまでのちょっとした境遇を語っていた。
「へえ、未来から来た猫型ロボットなんて……トランクスさんみたいだなあ」
スネ夫の話を聞いて、感慨深そうにしたのは孫悟飯という少年だった。
10歳前後の体格に見合わぬ逞しい肉体を持っていたが、内面は礼儀正しい真面目な子供だった為、すぐにこの集団に打ち解けた。
10歳前後の体格に見合わぬ逞しい肉体を持っていたが、内面は礼儀正しい真面目な子供だった為、すぐにこの集団に打ち解けた。
「ヤミさんも居たら、力になってくれるかも……居て欲しくはないけど」
髪を頭の上で束た少し大人びた雰囲気の少女、結城美柑も頼りになりそうな人物に友人である黄金の闇の名を上げた。
「未来とか、ロボットとか……何言ってるんだよ……」
一人だけ、ユーイン・エッジバーグという少年はドラえもんを始めとしたスネ夫の話に付いて行けず、困惑していた。
「まあ、私もララさんが居なかったらこんなこと信じなかったと思うし……ユーインくんが信じないのも無理ないよね」
「でもあの乃亜って奴も死んだ奴を……生き返らせてたし……」
「死んだ人でも、生き返らせる事は出来るよ。ドラゴンボールというのがあって、どんな願いも……」
「待って、今なんて言ったの? ドラゴンボール……?」
「え、ど、ドラゴンボールが……どうかしたんですか、ルサルカさん?」
「でもあの乃亜って奴も死んだ奴を……生き返らせてたし……」
「死んだ人でも、生き返らせる事は出来るよ。ドラゴンボールというのがあって、どんな願いも……」
「待って、今なんて言ったの? ドラゴンボール……?」
「え、ど、ドラゴンボールが……どうかしたんですか、ルサルカさん?」
最後にこの中で一番歳が上に見えるルサルカ・シュヴェーゲリンという赤髪の少女が食い気味に悟飯に問いかける。
「いえ、ただ願いが何でも叶うなんて……不思議だなって……何なのそのドラゴンボールって言うのは」
「七つ集めると、神龍ってドラゴンを呼んでなんでも願いが叶うんです……。だから、乃亜ももしかしてドラゴンボールを持ってて、こんな殺し合いを開いたんじゃないかって」
「参考までに聞きたいんだけど、それは例えば不老不死なんかも叶えられるのかしら?」
「う…うん……そうですけど……」
「七つ集めると、神龍ってドラゴンを呼んでなんでも願いが叶うんです……。だから、乃亜ももしかしてドラゴンボールを持ってて、こんな殺し合いを開いたんじゃないかって」
「参考までに聞きたいんだけど、それは例えば不老不死なんかも叶えられるのかしら?」
「う…うん……そうですけど……」
悟飯は怪訝そうな顔をしながらルサルカの問いに答えた。
(なんだろう……この人、なんか凄く嫌な気を感じる)
彼女が口にした不老不死というワードもそうだが、彼女から感知できる気は何か今まで相対した存在とは違う感じがした。
まるで、何人もの人間が内に捕らえられているかのような。
まるで、何人もの人間が内に捕らえられているかのような。
「いやだぁ、そんな怖い顔しないでよ。悟飯くん?」
「あ、いや……」
気のせい、だろうか。
「あの、みんな……先にスネ夫くんとユーインくんのお友達を探してあげようと思うんだけど……いいかな?」
「え、僕の友達が先で良いの!?」
「ダミアン様達を探してくれるのか!?」
「ダミアン様達を探してくれるのか!?」
「うん、ヤミさんは強いし……悟飯くんとルサルカさんは、多分ここに連れて来られそうな歳の知り合いはいないんでしょ?
だから、皆が良ければ……だけどね。バラバラになるより、みんな一緒の方がきっと良いよ」
だから、皆が良ければ……だけどね。バラバラになるより、みんな一緒の方がきっと良いよ」
「僕は賛成です。ルサルカさんは?」
ルサルカは年齢を偽っていたが、実年齢は優に100を超える魔女だ。戦闘力も年齢に見合ったモノを誇り、一人でも早々殺し合いで死ぬこともない。
ゆえに、こんな子供の集団に付き合う義理も暇もメリットもなく、今すぐ全員殺してから支給品でも奪って武器を手に入れるのも悪くはない。
ゆえに、こんな子供の集団に付き合う義理も暇もメリットもなく、今すぐ全員殺してから支給品でも奪って武器を手に入れるのも悪くはない。
(でも、気になるのよね。この悟飯って子が言ってたドラゴンボール……本当に不老不死が叶うのなら……)
「ルサルカさん?」
「いいわ。私も貴方達に付き合ってあげる」
僅かな思考の末、悟飯から情報をもっと引き出すために同行を快諾した。
黄金錬成も捨てきれないが、かの黒円卓の中で策謀を巡らすより、ドラゴンボールという手段で不老不死が手に入るのなら、リスクは少なく魅力のある手段にも見えたからだ。
黄金錬成も捨てきれないが、かの黒円卓の中で策謀を巡らすより、ドラゴンボールという手段で不老不死が手に入るのなら、リスクは少なく魅力のある手段にも見えたからだ。
「……な、なあ、本当に宇宙人っているのか?」
「ユーインくん?」
「宇宙飛行士になるのが夢なんだ……だから、宇宙人がいるんだったら会ってみたいなって。
ナメック星ってところに行ったことがあるって言うから……」
ナメック星ってところに行ったことがあるって言うから……」
「うん、僕の友達にデンデって宇宙人がいるんだ。今は神様だけど。
この殺し合いから抜け出せたら、紹介するよ。僕もダミアンって人に会ってみたいな」
この殺し合いから抜け出せたら、紹介するよ。僕もダミアンって人に会ってみたいな」
「そ、そうだろ!? ダミアン様は本当に男らしい人なんだ」
殺し合いと聞いて、悟飯はずっと身構えていたが少しほっとしていた。
少なくともここに居る人たちは悪い人たちじゃない。こうやって話し合って、仲間を増やしていけば、乃亜を倒して殺し合いから脱出することも出来るかもしれないと。
少なくともここに居る人たちは悪い人たちじゃない。こうやって話し合って、仲間を増やしていけば、乃亜を倒して殺し合いから脱出することも出来るかもしれないと。
「へえ、僕も仲間に入れて欲しいなあ。ねえ、アンナ?」
「え?」
ルサルカの背筋が凍った。
まるで、最初からそこに居たかのような自然さで、その少年は無邪気な笑みを彼らに向ける。
多少のデザインの差異はあれど、ルサルカと同じ軍服を纏い、右目の眼帯についた十字架を揺らしながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。
多少のデザインの差異はあれど、ルサルカと同じ軍服を纏い、右目の眼帯についた十字架を揺らしながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。
「な…なんだ……こいつ……」
ルサルカに次の驚嘆したのは悟飯だ。
「み…みんな……さ…下がるんだ……!!」
ルサルカに近しい気だ。だが、その禍々しさは比較にすらならない。
あの少年の中身は地獄のようだ。数多の人間が閉じ込められ、未来永劫苦しみ続けている。
それがルサルカの時より、もっとはっきり明確に感じ取れる。
あの少年の中身は地獄のようだ。数多の人間が閉じ込められ、未来永劫苦しみ続けている。
それがルサルカの時より、もっとはっきり明確に感じ取れる。
「お…お前……い…一体……」
「おや? なるほどね。面白い技術を身に着けてるようだ。僕達の中を感知しているのかな?」
「しゅ…シュライバー……あ…貴方、どうしてここに?」
「どうしてって、それは僕が聞きたいよ。あの乃亜って子供に聞いて欲しいな。
でも、最初に会えたのがアンナ……キミで良かったよ」
でも、最初に会えたのがアンナ……キミで良かったよ」
二つの銃口が弾ける。シュライバーが二丁の銃を構え、引き金を引いた。
たったそれだけの動作だが、それが人の域を超えた神速で行われたのだ。それだけの動作で、音をも置いていくほどの超高速。
そして、弾丸もまた魔弾。ルサルカ程度では、まともに何発も喰らえば致命傷を負いかねない程の。
その弾丸は迷いも淀みもなく、ルサルカへと吸い寄せられていった。
この場にいる全員が、呆気に取られる間もなく、ルサルカ本人も全く身動きも取れぬまま、二つの鉛の死は彼女を貫こうとする。
たったそれだけの動作だが、それが人の域を超えた神速で行われたのだ。それだけの動作で、音をも置いていくほどの超高速。
そして、弾丸もまた魔弾。ルサルカ程度では、まともに何発も喰らえば致命傷を負いかねない程の。
その弾丸は迷いも淀みもなく、ルサルカへと吸い寄せられていった。
この場にいる全員が、呆気に取られる間もなく、ルサルカ本人も全く身動きも取れぬまま、二つの鉛の死は彼女を貫こうとする。
「な…なにを……するんだ……!」
「……へえ」
意外と言いたげな顔で、シュライバーは僅かに眉を潜めた。
誰もが反応できなかったシュライバーの動きを、この悟飯という少年はただ一人、唯一見切っていた。
ルサルカの前で強く固められた拳の中には、確かにシュライバーが放った弾丸が握られていた。
誰もが反応できなかったシュライバーの動きを、この悟飯という少年はただ一人、唯一見切っていた。
ルサルカの前で強く固められた拳の中には、確かにシュライバーが放った弾丸が握られていた。
「僕は遊佐司狼に敵討ちをしたいんだよ。だから、アンナが生きていたら駄目だろ? いい? か・た・き・う・ちっ!
アンナが生きてたらカタキにならないだろォォォ!!」
アンナが生きてたらカタキにならないだろォォォ!!」
「何言ってるのよ。シュライバー……どうしてそんな話になってるのよ!!」
これは二人が殺し合いに招かれた時系列の違いに誤差がある為に、話に齟齬が生じている。
シュライバーは遊佐司狼をルサルカの仇討ちで殺す為に、アンナには死んでいて貰わなければならない時系列から。
逆にルサルカはそれとはまったく別の時系列から呼び出されたが為に、話が食い違っていた。もっとも―――。
シュライバーは遊佐司狼をルサルカの仇討ちで殺す為に、アンナには死んでいて貰わなければならない時系列から。
逆にルサルカはそれとはまったく別の時系列から呼び出されたが為に、話が食い違っていた。もっとも―――。
「みんな、逃げてくれ……こいつは僕が倒す!!」
「僕を、倒す……? フフ、久しぶりだなァ、そんなこと言う相手なんていつぶりだろう。
いいよ。アンナの仇討ちを邪魔するなら、まずはキミから殺そうか!」
いいよ。アンナの仇討ちを邪魔するなら、まずはキミから殺そうか!」
聖槍十三騎士団黒円卓第十二位。
ウォルフガング・シュライバー、二つ名はフローズヴィトニル。
狂乱の白騎士。
ウォルフガング・シュライバー、二つ名はフローズヴィトニル。
狂乱の白騎士。
「形成
Yetzirah―」
Yetzirah―」
18万5731人を殺害したその禍々しき殺人狂に、元より話など通じる筈もないが。
「───Lyngvi Vanargand暴嵐纏う破壊獣」
ドイツの軍用バイク、ZundappKS750。それを素体として、シュライバーが殺戮した者たちの血と怨念により聖遺物に昇華させた血塗られた愛機。
彼の詠唱により出現したそれは血の匂いを充満させ、その咆哮は圧倒的恐怖と狂気を伴い相対者にプレッシャーを与える。
彼の詠唱により出現したそれは血の匂いを充満させ、その咆哮は圧倒的恐怖と狂気を伴い相対者にプレッシャーを与える。
「はあっ!!!」
悟飯の髪が金色へと変化し、黄金のオーラが発生する。
宇宙の帝王すら一方的に圧倒し、屠り去る。宇宙最強の戦士スーパーサイヤ人が降臨した。
宇宙の帝王すら一方的に圧倒し、屠り去る。宇宙最強の戦士スーパーサイヤ人が降臨した。
拳を握りしめた悟飯がシュライバーの顔面を捉えた。だが、次の瞬間、高速でバイクを後退させ、物理法則を捻じ曲げた動きで回避される。
そのまま前進したシュライバーの突撃が悟飯に直撃し、その衝撃が全身を駆け巡る。
そのまま前進したシュライバーの突撃が悟飯に直撃し、その衝撃が全身を駆け巡る。
「ぐ、ううう!!」
「やるじゃないか!!」
「やるじゃないか!!」
そのあまりの速さに悟飯は驚嘆し、聖遺物の使徒ですらない純粋な肉体の強度のみで己の加速した一撃を容易く受け止めた相手に、シュライバーは賞賛を送る。
「大したものだよ。エイヴィヒカイトもなしに、生身の肉体でこの僕と最低限戦いを成り立たせるなんてさ!」
縦横無尽に走り回り、バイクによる突撃が、シュライバーの放つ数千を超える弾丸が、その高速移動による衝撃波の刃が。
白の狂獣が引き起こす、殺戮の暴風雨の中心に居ながら、悟飯は黄金の輝きを絶やすことなく、シュライバーへと反撃を放つ。
その反撃は当たりこそしないが、形として戦いにはなっている。
シュライバーの所属する黒円卓でも、こうも攻防をやり取り出来るほどの相手となれば大隊長クラス以上の相手位だろう。
それがまさか、黒円卓はおろかツァラトゥストラでもない。全く異質の力の保持者で存在するとは、シュライバーにしても驚きだった。
白の狂獣が引き起こす、殺戮の暴風雨の中心に居ながら、悟飯は黄金の輝きを絶やすことなく、シュライバーへと反撃を放つ。
その反撃は当たりこそしないが、形として戦いにはなっている。
シュライバーの所属する黒円卓でも、こうも攻防をやり取り出来るほどの相手となれば大隊長クラス以上の相手位だろう。
それがまさか、黒円卓はおろかツァラトゥストラでもない。全く異質の力の保持者で存在するとは、シュライバーにしても驚きだった。
「でもね」
シュライバーが銃撃を止める。
「時間を稼ごうと言うのなら、それは無意味だ」
「なっ!?」
シュライバーの視線は悟飯より後方、背を向け逃げ出しているルサルカ達に向けられていた。
銃口をそちらに向け、照準を合わせる。
銃口をそちらに向け、照準を合わせる。
「分かるさ。キミがここで攻撃に耐えている内に彼らを逃がそうとしたんだろ?
駄目じゃないか? 僕を倒すって言ったのに、僕以外を気に掛けるようじゃさ」
駄目じゃないか? 僕を倒すって言ったのに、僕以外を気に掛けるようじゃさ」
「やめろォ!!」
悟飯は気を高め爆発的に加速する。シュライバーは涼しい顔で回避し射撃を開始する。
掌に気を集め、弾丸に気弾を当て消失させる。だが、シュライバーの銃撃はそれだけに留まらない。
更に引き金を人外の力で連続して引き、たかが二丁の拳銃でマシンガンのような銃弾の弾幕と、それ以上の精密性を以てルサルカ達に襲い掛かる。
掌に気を集め、弾丸に気弾を当て消失させる。だが、シュライバーの銃撃はそれだけに留まらない。
更に引き金を人外の力で連続して引き、たかが二丁の拳銃でマシンガンのような銃弾の弾幕と、それ以上の精密性を以てルサルカ達に襲い掛かる。
「ぁ……!?」
スネ夫の左肩が弾け飛んだ。
「ま、まァ……ァあああああああ!!」
「す、スネ夫くん……?」
恐怖と激痛からパニックに陥ったスネ夫が血だらけになり、地べたで藻掻く。
両手で口を抑え、声にならない悲鳴を上げる美柑、腰を抜かし逃げることも出来なくなるユーイン。
そして焦りながらも、特に何の感情も湧かないままスネ夫を見下ろすルサルカ。
両手で口を抑え、声にならない悲鳴を上げる美柑、腰を抜かし逃げることも出来なくなるユーイン。
そして焦りながらも、特に何の感情も湧かないままスネ夫を見下ろすルサルカ。
「ふふははははははは!!」
「やめろ……やめてくれェ!!」
「やめろ……やめてくれェ!!」
これ以上の犠牲を出さない為に、駆け回る悟飯をあざ笑いながらシュライバーはその猛攻を潜り抜けながら、更に銃撃を行う。
「がっ、ごっ!?」
丁寧に残った右腕、左足、右足、全てを魔弾で吹き飛ばしていく。
なるほど、常人なら一撃で肉塊に伏す攻撃が当たり所が良ければ、そこそこには生きられる程度には制限されていると確認していく。
そこで苦しみスネ夫の事など、考えもしない。
なるほど、常人なら一撃で肉塊に伏す攻撃が当たり所が良ければ、そこそこには生きられる程度には制限されていると確認していく。
そこで苦しみスネ夫の事など、考えもしない。
「や、だ……ぼ、くちゃん、、まだ……ぶっ」
最後に頭が弾け飛び、胴体だけが血だらけで残された無惨な死体だけが残された。
「あっァああ……」
スネ夫のその悲惨な末路を目の当たりにし、悟飯の動きは止まった。
目を見開き、口は呻き声を漏らし、体は小刻みに震えていく。
目を見開き、口は呻き声を漏らし、体は小刻みに震えていく。
「うわあああああああああッッ!!!!」
そして、世界が揺れた。
「!?」
異変に気付いたシュライバーが止まった。
大気は震え、大地は軋み、海は波立つ。
悟飯の放つ黄金の気が、更に膨大に膨れ上がった。
悟飯の放つ黄金の気が、更に膨大に膨れ上がった。
「――――お前、もう許さないぞ」
爆風が悟飯を中心に巻き起こり、その髪が完全に逆立つ。
金色の光に蒼銀のスパークを纏わせ、悟飯はシュライバーを睨む。
金色の光に蒼銀のスパークを纏わせ、悟飯はシュライバーを睨む。
「ふーん、良い顔になったじゃないか。さっきよりh「ウスノロ」
眼前に悟飯が迫っていた。
その拳がシュライバーを捉え、目と鼻の先にまで迫る。
形成まで使用したシュライバーですら、その速度に反応することは叶わず、ここまでの接近を許して尚も動くことが出来ない。
いや、動けないのではなく、速すぎて行動が間に合わない。どんなに物理法則を捻じ曲げた動きをしようとも、いまこの魔拳を避ける術がない。
その拳がシュライバーを捉え、目と鼻の先にまで迫る。
形成まで使用したシュライバーですら、その速度に反応することは叶わず、ここまでの接近を許して尚も動くことが出来ない。
いや、動けないのではなく、速すぎて行動が間に合わない。どんなに物理法則を捻じ曲げた動きをしようとも、いまこの魔拳を避ける術がない。
―――避け、いや……負け、死?
その拳はシュライバーに触れる寸前で止まった。
一瞬で飛び退き、シュライバーは悟飯から距離を取る。
一瞬で飛び退き、シュライバーは悟飯から距離を取る。
「な、なに……なにやってるのよ!! 悟飯!! 早く殺しなさい!!!」
「殺す……? 何を言っているんですか、ふふ……まだ早いよルサルカさん」
「……は?」
「こんな奴は、もっと苦しめてから殺してやらなくちゃ……」
「殺す……? 何を言っているんですか、ふふ……まだ早いよルサルカさん」
「……は?」
「こんな奴は、もっと苦しめてから殺してやらなくちゃ……」
ルサルカは悟飯のことを知らない。だが、少なくとも話していて温厚な人物ではあった。
だからこそ、今の過激な発言に対し、恐怖を覚えた。
いや、良くある話か。力を得たからこそ、その精神が歪められていくというのは。
だからこそ、今の過激な発言に対し、恐怖を覚えた。
いや、良くある話か。力を得たからこそ、その精神が歪められていくというのは。
「馬鹿、相手はシュライバーよ! そんなこと言ってる場合じゃ!」
絶叫しながら、沈黙していたルサルカが悟飯を糾弾した。
その糾弾を聞いて、シュライバーは理解する。自分は今、舐められている。加減されている。泳がされている。遊ばれている。
この、己があんな劣等如きに。
その糾弾を聞いて、シュライバーは理解する。自分は今、舐められている。加減されている。泳がされている。遊ばれている。
この、己があんな劣等如きに。
「悟飯、早く! 殺して―――」
「調子に、乗るな。劣等がァ!!!」
「調子に、乗るな。劣等がァ!!!」
ルサルカの表情から焦りが消え、そして恐怖により歪んでいく。
「さらばヴァルハラ 光輝に満ちた世界
Fahr' hin, Waihalls lenchtende Welt」
Fahr' hin, Waihalls lenchtende Welt」
響き渡る詠唱。
「聳え立つその城も 微塵となって砕けるがいい
Zarfall' in Staub deine stolze Burg」
Zarfall' in Staub deine stolze Burg」
「……それがお前の本気か。でも」
「さらば 栄華を誇る神々の栄光
Leb' wohl, prangende Gotterpracht
Leb' wohl, prangende Gotterpracht
神々の一族も 歓びのうちに滅ぶがいい
End' in Wonne, du ewig Geschlecht」
End' in Wonne, du ewig Geschlecht」
ただ悟飯はそれを見つめながら不敵に笑みを浮かべる。
「創造
Briah――
Briah――
死世界・凶獣変生
Niflheimr Fenriswolf」
Niflheimr Fenriswolf」
「勝てんぜ、お前は……」
次の瞬間、悟飯は上空に吹き飛ばされていた。
「がっ……!」
同じく空中に飛んだシュライバーのバイクの車輪に殴打され、今度は地面に殴打される。
さらに突進してくるバイクが直撃し、吹き飛ばされた。
さらに突進してくるバイクが直撃し、吹き飛ばされた。
「な、なんだ一体……」
動くだけで、周辺の木々を薙ぎ倒し、大地に亀裂を入れ、巻き上げた衝撃波だけで常人ならば八つ裂きにされる。
形成段階のシュライバーとは、比較にならないパワースピード。
だがそれだけではない。
形成段階のシュライバーとは、比較にならないパワースピード。
だがそれだけではない。
「ぐっ!!」
完全に動きを見切ったとしても。
確実に先に動けたとしても。
シュライバーは必ず、その先手を打ってくる。打てている。
因果律を捻じ曲げ、何よりも早く動き、如何な攻撃よりも先制する。
それが、シュライバーの創造、死世界・凶獣変生。
確実に先に動けたとしても。
シュライバーは必ず、その先手を打ってくる。打てている。
因果律を捻じ曲げ、何よりも早く動き、如何な攻撃よりも先制する。
それが、シュライバーの創造、死世界・凶獣変生。
「はははははははははッ、泣き叫べ劣等―――」
誰にも触れられたくないという渇望を具現化し、何者をも追いつ着けぬ最速の境地。
「その程度か」
だが、相手もまた規格外の戦士。
幾度となく地球を救い、宇宙の帝王すら下した偉大なる父から最強の名を継ぐ者。
幾度となく地球を救い、宇宙の帝王すら下した偉大なる父から最強の名を継ぐ者。
シュライバーの突撃で辺り周辺が焼け野原になったなかで、悟飯はその戦意を保ったまま気を高める。
奴の能力の詳細は分からない。だが、相手より絶対に早く動き先手を打つという事は理解した。
ならばシュライバーの攻撃時、武器として使うバイクを掴み、ありったけの気を溜めた一撃で確実に葬り去る。
通常ならば、シュライバーの突撃を受けた時点で肉体は耐え切れず消し飛ぶが、悟飯ならば耐えきれる。
そして、それだけの肉体強度があれば、銃による射撃ではダメージはろくに通らない。ゆえに、いずれシュライバーは突撃による攻撃を選択する。
ならばシュライバーの攻撃時、武器として使うバイクを掴み、ありったけの気を溜めた一撃で確実に葬り去る。
通常ならば、シュライバーの突撃を受けた時点で肉体は耐え切れず消し飛ぶが、悟飯ならば耐えきれる。
そして、それだけの肉体強度があれば、銃による射撃ではダメージはろくに通らない。ゆえに、いずれシュライバーは突撃による攻撃を選択する。
「来い、シュライバー!!!」
「図に乗るなよォ劣等ォォ!!!」
黄金の戦士と、白銀の狂犬が激突する。
「た、たすけ……ご、は……だみ、あん、さ……」
小さく、弱弱しい、縋るような声が悟飯の耳に響いた。
血の気が引き、先ほどまでの怒りが消し飛ぶ。
血の気が引き、先ほどまでの怒りが消し飛ぶ。
「ユーインくん……?」
それは、全身を八つ裂きにされた血まみれのユーインから放たれたものだった。
どうして、と言いかけて察する。
シュライバーの戦い方は自身の高速移動を活かしたもの。既にこの辺は、その移動による衝撃波で破壊され尽くされている。
どうして、と言いかけて察する。
シュライバーの戦い方は自身の高速移動を活かしたもの。既にこの辺は、その移動による衝撃波で破壊され尽くされている。
「ま…まさか……」
頭に血が上り、悟飯は自分が守るべき人たちの事を失念していた。
こんな戦いにただの子供が巻き込まれれば、命がいくつあっても足りないことを。
それだというのに、シュライバーを殺すことだけを考え、守れたはずの命を取りこぼしてしまった。
こんな戦いにただの子供が巻き込まれれば、命がいくつあっても足りないことを。
それだというのに、シュライバーを殺すことだけを考え、守れたはずの命を取りこぼしてしまった。
「た…戦いの、ま…巻き添えで……」
自分の慢心と驕りが、一人の命を。
友人を紹介すると約束し、そして将来は宇宙飛行士になりたいと言っていた、将来の可能性は潰えた。
友人を紹介すると約束し、そして将来は宇宙飛行士になりたいと言っていた、将来の可能性は潰えた。
「はははははは!!」
「しま―――」
「しま―――」
そして、ユーインに気を取られた悟飯の首元には、バイクのタイヤがギロチンのように吸い寄せられている。
弾けんばかりのシュライバーの笑みが、悟飯を嘲笑うように、脳裏にこびり付く。
弾けんばかりのシュライバーの笑みが、悟飯を嘲笑うように、脳裏にこびり付く。
「「!?」」
だが次の瞬間、シュライバーの創造は強制的に解除され、悟飯の変身も解ける。
再度能力を発言しようにも、お互いに力が発揮できない。
二人はとっさに飛び退き、相手の様子を視認する。
再度能力を発言しようにも、お互いに力が発揮できない。
二人はとっさに飛び退き、相手の様子を視認する。
「……なるほどね。あの乃亜とかいう奴、つまらない真似をしてくれたみたいだね」
「なんだと?」
「忘れたのかい? 圧倒的強者にはハンデも与えるって。
普通に考えたら、僕達とその転がってるキミが見殺しにした彼で、殺し合いなんか成り立たないだろ?」
「……うっ」
「なんだと?」
「忘れたのかい? 圧倒的強者にはハンデも与えるって。
普通に考えたら、僕達とその転がってるキミが見殺しにした彼で、殺し合いなんか成り立たないだろ?」
「……うっ」
確かに自覚する範囲でも、悟飯のパワーは非常に低下していた。それは恐らくシュライバーもだろう。
そして、スーパーサイヤ人や形成、創造といった力も時間制限を設け、常に使用できないようにさせている。
そして、スーパーサイヤ人や形成、創造といった力も時間制限を設け、常に使用できないようにさせている。
「さて、どうしようか? このままキミと最後までやり合っても良いんだけどね……。
でもやっぱりキミは全力を出させて、僕が殺す。多分時間の経過で力は戻るだろうしね」
でもやっぱりキミは全力を出させて、僕が殺す。多分時間の経過で力は戻るだろうしね」
「くっ……」
「取り合えず、僕はアンナを探すよ。ほら、僕達が戦っている間に遠くに逃げたみたいだ。
あとは、そうだなあ……。キミの為に屍の城を築いてあげるよ」
あとは、そうだなあ……。キミの為に屍の城を築いてあげるよ」
「なに!?」
「全員、ただでは死なせない。苦しめて甚振って嬲って、殺す。全部キミのせいさ。
あの拳で僕を殺さなかったこと、後悔させてあげるよ」
あの拳で僕を殺さなかったこと、後悔させてあげるよ」
「き、貴様……!」
悟飯が拳を振りぬいた時には、既にシュライバーは遥か後方にいた。
「さて、確か……悟飯といったかな? いずれまた雌雄を決しよう。ここに呼ばれた生贄共の骸を踏み越えてね」
もう追いつけない。それは戦った悟飯だからこそ分かったことだ。
一瞬の瞬きに間に、シュライバーは姿を消していた。
一瞬の瞬きに間に、シュライバーは姿を消していた。
「……ご…ごめん、ユーインくん、スネ夫くん。
ほ…ほんとうに……」
ほ…ほんとうに……」
惨い姿で死に絶えた二人の遺体を前に、悟飯は簡素ながら気弾で地面に穴を空けて、埋葬した。
「美柑さん……大丈夫ですか」
鼻を付くアンモニア臭。
股の間を濡らし、土が締めりっけを帯び、少し蒸気が沸いている。
彼女は腰を抜かし、失禁していた。
シュライバーの衝撃波に巻き込まれなかったのは、運が良かっただけなのだろう。
そっと、悟飯は手を伸ばす。
股の間を濡らし、土が締めりっけを帯び、少し蒸気が沸いている。
彼女は腰を抜かし、失禁していた。
シュライバーの衝撃波に巻き込まれなかったのは、運が良かっただけなのだろう。
そっと、悟飯は手を伸ばす。
「ひっ、来ないでっ……!」
手を叩かれてしまった。
「あ、ちが……悟飯くん……」
「……い、良いんです。僕は……何処か、着替えがある場所を探しましょう。
ルサルカさんも、探してあげないと」
「……い、良いんです。僕は……何処か、着替えがある場所を探しましょう。
ルサルカさんも、探してあげないと」
どうしようもない後悔を抱えながら、悟飯は美柑に手を貸し支えながら、ゆっくりと歩き出した。
【ユーイン・エッジバーグ@SPY×FAMILY】死亡
【骨川スネ夫@ドラえもん】死亡
【骨川スネ夫@ドラえもん】死亡
【孫悟飯(少年期)@ドラゴンボールZ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(小)、激しい後悔(極大)、SS(スーパーサイヤ人)、SS2使用不可
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:美柑を連れて安全な場所まで移動する。
2:スネ夫、ユーインの知り合いが居れば探す。ルサルカも探すが、少し警戒。
3:シュライバーは次に会ったら、殺す
[備考]
セル撃破以降、ブウ編開始前からの参戦です。
殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
SSは一度の変身で12時間使用不可、SS2は24時間使用不可
[状態]:疲労(大)、ダメージ(小)、激しい後悔(極大)、SS(スーパーサイヤ人)、SS2使用不可
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:美柑を連れて安全な場所まで移動する。
2:スネ夫、ユーインの知り合いが居れば探す。ルサルカも探すが、少し警戒。
3:シュライバーは次に会ったら、殺す
[備考]
セル撃破以降、ブウ編開始前からの参戦です。
殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
SSは一度の変身で12時間使用不可、SS2は24時間使用不可
【結城美柑@To LOVEる -とらぶる- ダークネス】
[状態]:疲労(中)、強い恐怖
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない。
1:ヤミさんや知り合いを探す。
[備考]
本編終了以降から参戦です。
[状態]:疲労(中)、強い恐怖
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない。
1:ヤミさんや知り合いを探す。
[備考]
本編終了以降から参戦です。
【ウォルフガング・シュライバー@Dies Irae】
[状態]:疲労(中)、形成使用不可、創造使用不可
[装備]:ルガーP08@Dies irae、モーゼルC96@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~0
[思考・状況]基本方針:皆殺し。
1:敵討ちをしたいのでルサルカ(アンナ)を殺す。
2:いずれ、悟飯と決着を着ける。その前に大勢を殺す。
[備考]
マリィルートで、ルサルカを殺害して以降からの参戦です。
殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
形成は一度の使用で12時間使用不可、創造は24時間使用不可
[状態]:疲労(中)、形成使用不可、創造使用不可
[装備]:ルガーP08@Dies irae、モーゼルC96@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~0
[思考・状況]基本方針:皆殺し。
1:敵討ちをしたいのでルサルカ(アンナ)を殺す。
2:いずれ、悟飯と決着を着ける。その前に大勢を殺す。
[備考]
マリィルートで、ルサルカを殺害して以降からの参戦です。
殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
形成は一度の使用で12時間使用不可、創造は24時間使用不可
【ルサルカ・シュヴェーゲリン@Dies Irae】
[状態]:健康、シュライバーに対する恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:今は様子見。
1:シュライバーから逃げる。悟飯に倒されていて欲しい。無理そうだけど。
2:ドラゴンボールに興味。
[備考]
少なくともマリィルート以外からの参戦です。
[状態]:健康、シュライバーに対する恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:今は様子見。
1:シュライバーから逃げる。悟飯に倒されていて欲しい。無理そうだけど。
2:ドラゴンボールに興味。
[備考]
少なくともマリィルート以外からの参戦です。
OP:オープニング | 投下順に読む | 006:兄弟の絆 |
時系列順に読む | ||
START | 孫悟飯 | 009:さぁ誰かを、ここへ誘いなさい |
START | 結城美柑 | |
START | ウォルフガング・シュライバー | 001:壊れた幻想 |
START | ルサルカ・シュヴェーゲリン | 021:追い付けない キミはいつでも |
START | ユーイン・エッジバーグ | GAME OVER |
START | 骨川スネ夫 | GAME OVER |