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天体観測

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世界が滅んだって、別に構わないと思っていた。
学校も、家族も、生きている事も、ただ息苦しくて、煩わしくて。
少し前までの僕は、確かに世界の破滅を願っていたんだと思う。
だから、だろうか。
だから、僕は殺し合いの参加者なんかに選ばれたんだろうか。
最悪だとは思う。あぁ、実にクソッタレだ。
でも、良いこと…かどうかは分からないが、とてもとても驚いたことが一つ。


「お前は…!?」


深夜の森の中にて。
自分でも信じられない程上ずった声で。
僕は、獣の騎士団のフクロウの騎士、小学六年・茜太陽は。
目の前にいるモノの名前を呼んだ。


「11体目(マイマクテリオン)……!」


遥か未来から、地球を何度もビスケットの様に砕いて。
そのエネルギーで一度割るごとに数百年タイムスリップし。
この宇宙が生まれた一番最初の刻まで遡ろうとする、悪い魔法使いアニムス。
それによって生み出された人類の敵、アニムスの兵士である12体の泥人形。
その十一体目に当たるのが、目の前に立っているマイマクテリオンだった。


「やぁ、太陽。元気そうだな」


惑星破壊を目論む、悪い魔法使いアニムスの作った生きる泥人形。
そして、それらと敵対するのが惑星の守護者アニマが契約した獣の騎士。
つまり、前者がマイマクテリオンで、後者が僕だった。
僕とマイマクテリオンは立場上で言えば敵対関係だ。
しかし、僕は獣の騎士達の寄り合い──獣の騎士団ではなく、アニムスにつくことを決めた。
命の保証と引き換えに、アニムスへの協力者として動く契約をした。
そんな経緯もあって、必然的にアニムスの作る泥人形達に間近で交流する事もあった。
と言っても、人語を介したのは目の前にいるマイマクテリオンだけだったが。



「ありえない…だって、お前は………」
「あぁ、そうだ。お前の認識の通り、私は死んだ…いや破壊されたはずだった」


そう、マイマクテリオンは、僕の前で死んだはずだった。
獣の騎士団と戦い敗れて、握りつぶされたはずだった。
それなのに、そのマイマクテリオンが目の前にいる。
姿形はあの日と一切、変わっていない。
ぼさぼさの茶髪に、無感情そうな目。僕と同じくらいの、小学生程の背丈。
無地で長袖の紺のシャツに、子供用ズボンと、服装まであの日のままだった。


「この殺し合いは、アニムスが仕組んだ事か?」


そう尋ねたのは、僕ではなかった。
アニマと契約した騎士に与えられる、相棒となる獣の精霊。
僕の場合はフクロウ…最も今はアニマの力によって幻獣として強化され、大型の猛禽のようになった、神鳥(フレスベルグ)のロキだった。
契約者である僕が此処に連れてこられた事で、ロキもまた、この殺し合いに巻き込まれたのだろう。
そして、僕も、ロキも自分の知っている知識ではこんな大掛かりな事ができるのはアニムスくらいしか知らなかった。
その為生まれた問いかけだったが──僕たちの予想に対して、マイマクテリオンは首を横に振った。


「生憎だが、私もアニムスから何も聞かされていない。
状況を素直に受け取るなら、完全に別口だと考えるのが妥当だろう」
「……そう、か」


マイマクテリオンは人間じゃない、泥人形だ。
だから、嘘をついている可能性は限りなく低いだろう。
という事は、奴も僕と同じ巻き込まれた被害者と言うわけで……



「…お前、これからどうするんだ?」


不意に、そんな事を尋ねていた。
特に深く考えたわけじゃない問いかけだった。
ただ、マイマクテリオンも僕と同じ状況だという事を認識して。
奴がどう動くのか、純粋に知りたかったのだ。


「……そうだな」


尋ねられたマイマクテリオンは相変わらずの無表情無感情さで腕を組み、考えるそぶりを見せて。
そして、端的に答えた。


「取り合えず、優勝を狙ってみようと思う」


一番、予想できた答えではあった。
何処まで行っても、泥人形は人間の敵なのだから。
そして、その答えを聞けば当然、もう一つ尋ねなければならない事が頭に浮かぶ。


「……じゃあ、僕も、殺すのか?」


尋ねながら、自分でも何を聞いているんだ、と思った。
前提として。
僕とマイマクテリオンは仲間でも友達でもない。
人類の敵と、人類の裏切者。ただ同じ方向を向いていただけだ。
マイアクテリオンの要望を聞いて本を用意したり、一日擬態能力を持つ彼と家族にバレないか入れ替わったりした事もあったけれど。
それでも友達かどうかで言えば、決して友達を言い表せるような関係ではない。
だから、この場でマイマクテリオンが僕を殺そうとしても何ら不思議ではなかった。
しかし。



「……いや、別にその気はないな。優勝を目指すとは言ったが、
何なら最後の二人になった時生きていたら、優勝自体はお前に譲ってもいいぞ、太陽」
「……は?」


マイマクテリオンの二度目の答えは、予想とは違っていた。


「な…何でだよ。優勝を目指してるなら──」
「そうだな、優勝したいというより、戦ってみたいというのがより適当な所か。
別に私の生存自体はどうでもいいし、戦う相手としてお前は不適切だ。
アニムスへの義理もあるしな。お前が私と一騎打ちを望むのであればその限りではないが」


そう、彼は。
僕の予想以上に自己の生存に興味がなかったのだ。
その上で、一騎打ちで僕がマイマクテリオンを倒せるはずもない。
だから、他の参加者を殺しつくした後に僕が残っていれば自害して優勝を譲る。
そう、マイマクテリオンは言いたいのだろう。


「お前達との最後の戦い…あれは愉しかった。全力を存分に受け止め会えた」


そう語るマイマクテリオンの瞳は、さっきまでと同じ無感情な物なのに。
その奥には、確かな熱を帯びているのが、何となく見ていて分かった。


「あの戦いまでは、泥人形とは、私とは何かとずっと考えていたが…一つ分かった事がある」。


語るマイマクテリオンの顔は、既に人間の子供のそれではなかった。
ぎょろぎょろと顔中に複眼が浮かび、口の端は耳元まで裂けそうな程吊り上がり、猛獣の様な牙を覗かせている。
更に背中から屈強で数メートルはありそうな新たな腕を伸ばし──今立っている地面を叩いた。
ボゴン!!!と爆発音の様な音と共に、クレーターが出来上がっていた。
四本になった腕を無造作に振り回せば、メキメキと巨木が倒れる。



「やはり──私にとっては闘いこそが生まれてきた意味なのだろう」


そう言って、マイマクテリオンは今しがた見せていた泥人形本来の姿から、元の子供の姿に戻った。
普通の人間の子供なら一撃で肉が弾け飛び、骨が砕ける暴力。
きっとマイマクテリオンはこれからその暴力を他の子どもに向けるのだろう。
恐ろしい、とは感じなかった。
今しがた、その暴力が自分には向けられないと宣言されたばかりなのもある。
だが、僕は僕が思っていたよりもきっと──ずっとこの怪物を身近に感じていたらしい。
返す返事は「そうか」その一言だけだった。


「……聞きたいことはもう十分だろう。ではな、太陽」


話は此処までだというように、マイマクテリオンが踵を返す。
森の外を目指して歩いていく。
僕は、その背を止めることができなかった。
時間を掻きわして泥人形を崩壊させる因果乱流(パンドラ)は彼奴には通じない。
時間を巻き戻して回復させる時空清流も僕一人では意味が薄い。
幻獣の三騎士の一人と言っても、僕一人が力ずくでマイマクテリオンを止めるのは不可能だ。
でも。


「マイマクテリオン!!」


僕は、何かに突き動かされるように、マイマクテリオンを呼び止めていた。
あいつは振り返り、相変わらず何を考えているのかよく分からない視線を向けてくる。
そんなマイマクテリオンに向けて、僕は声を張り上げた。



「最近…獣の騎士団の皆と一緒に戦ったり…ラーメン食べたりして……」


自分でも、要領の得ない切り出し方だと思った。
特に考えるでもなく、思いついたことをそのまま口に出しているから当然なのだが。


「こういうのも、悪くないって思い始めたんだ………
何ていうのかな…前より、少し…生きる事は、悪いことじゃないんじゃないかって」


頭の奥で、幻獣の三騎士になった時の事を思い出す。
10体目、泥人形の中で三番目に強いピュアノプシオンのを倒した時のこと。
ピュアノプシオンは核となる泥人形を倒さなければ、ずっと再生増殖し続ける泥人形だ。
アニムスはその10体目の核を、騎士団の裏切者である僕の家の押し入れに隠していた。
その泥人形を、僕は倒した。無我夢中だった。
アニムスに逆らう事になる、だとかはあの時考えなかった。
ただ、僕が倒さなければ、最近死人が出たばかりの騎士団からまた脱落者が出る。
そう思ったら、いてもたってもいられなくなった。
誰が死のうが、世界がどうなろうが、どうなってもいいと思っていた筈なのに。



「だから……」


──男前の顔になったな、茜太陽。
──赤ん坊には泥人形が見える。この子が初めて見た戦う男の姿がお前だ。


「僕は…殺し合いなんてしたくない…!
次に会った時…僕は……お前を止める事になる、きっと。獣の騎士団の…一人として」


言葉がこみあげて、止まらなかった。
こんな事を言ったら、マイマクテリオンがどう思うかは分からないのに。
なら今ここで殺しておく、となっても何ら不思議はないのに。
それでも言わずにはいられなかった。
言わなければ、十体目を倒した日に、同じ部屋で十体目の核と取っ組み合いをしているのを見ていた…まだ赤ん坊の弟を裏切るような気がしたから。



「……そうか」


僕に敵意を向けられても、マイマクテリオンは穏やかだった。
むしろ奴にしては本当に珍しいことに、薄く笑って、短い返事を返してきた。


「楽しみにしている」


泥人形と人間は、結局の所相いれない。
一緒の道を歩むことはできない。
ぴしぴしと脚部を変形させ、今度こそマイマクテリオンは僕の前から去ろうとしていた。
そんなマイマクテリオンの背中に、最後にもう一言だけ、言っておきたい事があった。


「マイマクテリオン!!お前の心残りだった本は……僕が返しておいた」
「……あぁ、感謝する。ではな、太陽。精々生き残れよ」


決して変わらないそっけない態度で、マイマクテリオンは跳んだ。
その時のあいつの顔はハッキリと見えなかったけど、どこか満足げな顔をしている気がした。
……生き残れと彼奴は言ったけど、僕は「君もな」とは返せなかった。


「……ロキ」


一人残された後、不意に相棒の名を呼んだ。
最初に出会った時よりもずいぶん大きくなったフクロウが、「何じゃ」と尋ねる。


「僕は…この殺し合いを止めたい、と思う」
「そうか…太陽がそうしたいなら、そうすればええ。
何度でも言うが…ワシはお前の味方じゃ。好きな道を進め、太陽。お前さんは…自由じゃ」
「……うん、ありがとう」



【マイマクテリオン@惑星のさみだれ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:優勝する。
ただ、最後の二人になった時太陽が残っていれば優勝を譲ってもいい
1:他の参加者を見つけて殺す。
[備考]
原作8巻、死亡後より参戦です。

【茜太陽@惑星のさみだれ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:この殺し合いから脱出する。
1:他の参加者と協力して脱出の方法を探す。
2:マイマクテリオンは次に会ったら止めたい。
[備考]
原作8巻、マイマクテリオン戦直後より参戦です。
ロキは他の参加者にも視認することができます。
ロキとの契約時の願いを叶える権利は残っていますが殺し合いに直接的に関わる願いは制限されています。
(例:「殺し合いから脱出したい」「主催に死んで欲しい」など)

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