コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

食事のじかん

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匿名ユーザー

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 殺し合いという悪辣な催しが行われる地にある街の一角で、街灯に照らされた緑髪の少女がガタガタと震えていた。

「ど……どうしてこんなことに……」

 少女の名は音花羽仁衣。闘球部に入部した、新球川小中一貫校の初等部4年生である。
 人間離れした身体能力を持つ部員の中では身体能力はそこらの小学生女子と変わらないが、蜂型のドローン中心とする最先端の科学技術を駆使した球が持ち味である――のだが。

「は、ハチ型ドローン、どこ……?あ、あれがないとわれは……」

 不運なことに、それらの装備はバトルロワイアルの主催――海馬乃亜に取り上げられてしまっていたのだった。ドローンがなければ、羽仁衣は無力なただの子供でしかない。

「ど、どうすれば……!」

 羽仁衣がここまで強い怯えを見せるのも、無理からぬことであった。支給品を確認することも忘れて、その場にうずくまっていた。

「ねえねえ、そこの君」

 そんな時、羽仁衣に声をかける者がいた。ビクっと震えて、羽仁衣は声がした方へとおそるおそる顔を向ける。

「君も……参加者だよね?」

 そこにいたのは、羽仁衣と似た色の髪をした女の子が、小さな光の点々を纏わせながら佇んでいた。裏地が赤色のマントをしており、頭からは虫の触覚のような2本の角らしきモノが生えている。

「ああ、怖がらないで。この光は蛍の光なんだ。とりあえずお話できたら――」
「ひゃあああああああああっ!!」

 しかし、羽仁衣が取った行動は悲鳴を上げながら逃げることだった。人付き合いがそもそも苦手で、新球川小中一貫校にいた頃も学校から与えられた専用の個室で一人、他の生徒の行動をドローンを通して見ているだけであった。友人らしい友人も闘球部に入るまで存在しない。そんな羽仁衣が殺し合いの場に放り込まれて、見ず知らずの参加者と話せるはずもなかった。

「……逃げちゃったね」

 逃げていく羽仁衣の後ろ姿を、女の子――リグル・ナイトバグは見送っていた。

「――うん、謝らなくっていいよ。きっとあの子も怖かったんだと思う。私も君達がいなければどんなに心細かったか……」

 リグルは自身の周囲を舞う光の粒に向かって話す。この光の粒は、一つ一つが蛍であった。蟲の妖怪であるリグルは、この蛍達と意思疎通を取ることができた。先ほど羽仁衣に話かけたのも、蛍達が『あの人間は虫が好きないい子だ』とリグルに教えていたからだ。

「でも、どうしよう……あの子を探しに行った方がいいのかな?次に会うのが殺し合いに乗ってないとも限らないし……」

 リグルとしては、この殺し合いから脱出して元いた幻想郷に帰ることが最優先事項だ。リグル自身は妖怪であるためか力はそこいらの人間よりかはあるが、やはり大妖怪に比べるとその戦闘力は遥かに劣る。一先ずは危険人物を回避して協力してくれそうな者を見つけたいところではあったが――。

「ん?どうしたの?逃げろって――」

 その時、リグルの周りにいる蛍達が一斉に激しく飛び回る。それはまるで、リグルに危険を伝えているかのようだった。
 そしてリグルが何らかの気配のする方へ向いた時――リグルの首筋に、皮膚を裂くかのような熱の感覚が迸った。


§


「うう、逃げてしまった……」

 しばらく走ってからのこと、羽仁衣はあの女の子から逃げ出してしまったことを後悔していた。

「やっぱり、あの子のところにいる方が……」

 今の羽仁衣には蜂型のドローンはおらず、ドローンによる自動防御システムも機能しない。ならば尚更、自分に友好的に接してくれる人の傍にいた方が安全だ。ドローンがないからといって逃げ出したのは悪手だった、と羽仁衣は考え直した。

「知らない人は怖いけど……われ、死ぬのは、もっと怖い……」

 羽仁衣は踵を返し、先ほどの女の子のいた場所へと戻ることにした。初対面の人話すのは苦手だが、勇気を出して謝ろうと思った。
 羽仁衣が戻ってくると、街灯の下にはあの女の子の足が見えていた。

「あ、あの……さっきは……ごめ……」

 羽仁衣が近づいて歯切れの悪い口調で謝るも、女の子から返答はない。
 聞こえなかったかと思って、羽仁衣がさらに近づくと、何やら様子がおかしかった。

――ぐちゃぐちゃ、ずりゅずりゅ、ごりゅごりゅ、じゃくりじゃくり。

 生理的な不快感を煽るような効果音が、羽仁衣の耳に響く。
 不意に、羽仁衣の足元に硬いモノがあることに気づく。
 それは、あの女の子――リグルの生首だった。すでに生気は失われ、恐怖で硬直した表情のまま、地面に放り出されていた。
 同時に、辺り一面に血の臭いがしていることに気づく。

「っ……っ……」

 これまでにないほどバクバクと羽仁衣の心臓が波を打つ。
 おそるおそる、リグルの足がある場所に視線を移す。

「ぐちゃぐちゃ、ずりゅずりゅ、ごりゅごりゅ、じゃくりじゃくり」

 そこには、袖の長いメイド服を着た少女がいた。そして、その少女はリグルの肉体だったモノを顎の下に刺し込み、咀嚼していたのだ。
 すでにリグルの胴体はなく、街灯に照らされているリグルの足だったモノと、転がっている頭だけが残されていた。

「あれぇ、誰かいるのぉ?食事中なんだけどぉ」

 ぐるりと首を回して、少女が羽仁衣の方を見る。一見可憐に見える顔だが、話しているのに口が動いておらず、顎の下からは血の混じった涎が垂れていた。そして可愛らしいシニヨンヘアーに結っているようなその髪も、妙に艶があり、蟲の足のような節目がある。
 羽仁衣にはなんとなく分かってしまった。目の前にいる少女は、蟲なのだと。それも、人間を主食としてしまうような、危険な肉食蟲だと。

「わあああああああッ!!!!!!!」

 街中に響くような悲鳴を上げながら、羽仁衣は再び逃げ出した。
 涙と鼻水で顔を濡らしながら、あの捕食者から少しでも距離を取るために、夜の暗闇の中を全力で走る。
 運動は苦手だというのに、不思議と足が軽かった。あれが殺された者の末路なのだと思うと、たとえ足が壊れても走り続けられる気がした。



【リグル・ナイトバグ@東方project】 死亡

【音花羽仁衣@炎の闘球女 ドッジ弾子】
[状態]:健康、恐怖(極大)
[装備]:普段着
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況] 基本方針:死にたくない
1:逃げなきゃ……!
[備考]
  • 蜂型のドローンは没収されています。

  • 支給品説明

【蛍@現実】
鞘翅目・ホタル科に属する発光する昆虫。リグル・ナイトバグに支給。
夜に発光するホタルは光の粒のように見える。リグル・ナイトバグもまた、蛍の妖怪である。


「あぁ、逃げちゃったぁ」

 リグルを捕食した少女――エントマ・ヴァシリッサ・ゼータは口惜しそうに言う。
 彼女はナザリック地下大墳墓の戦闘メイド「プレアデス」の一人である。
 そして、羽仁衣も察していたがエントマは人間ではない。蜘蛛人(アラクノイド)であり、人間を食料とする蟲である。

「まぁいっかぁ。ちょうどお腹を満たしているところだしぃ」

 そう言って、エントマは走り去っていく羽仁衣から目を離して再びリグルの肉を口に運ぶ。
 エントマの口元からじゃくり、じゃくりという肉を斬る音が聞こえる。
 そして今の肉を食べ終えると、次はリグルの足を食らい、最後には投げ捨てたリグルの頭を食らう。筋肉も、脂肪も、臓物も、脳も、眼球も、食われる者へ感謝を捧げるかのように丹念にすべてを食らい尽くす。

「けぷっ」

 エントマが食べ終わった時には、そこにはリグルの骨と散らばった体液、そしてリグルに嵌められていた首輪だけが残されていた。
 ちなみに、リグルの周囲に漂っていた蛍の群れもエントマの腹の中だ。しかしその肉はリグルのそれに比べてあまりにも少量だったため、エントマの記憶にも残っていなかった。

「うーん、不思議な味だったねえぇ。人間を食べている感覚なののにぃ、なーんかいつも食べてるおやつの風味があるっていうかぁ」

 間延びした可愛らしい声で、エントマはリグルの肉の味の感想を呟く。頭に思い浮かべているのは、主食としている人間に加え、ナザリックでスナック感覚でつまんでいる恐怖公の眷属(ゴキブリ)だ。

「でもお腹いっぱい食べられたからいいかぁ。ごちそうさまでしたぁ」

 リグルだったモノに向かって、エントマはお辞儀をする。
 エントマの手には、2つの四次元ランドセルがあった。そのうち1つはリグルのもので、「あとで役に立つかもしれない」という判断だ。

「さてぇ、これからどうしようかなぁ」

 エントマはメイド服の袖を頬に当てて考える。
 いきなりこのような場所に連れて来られて、海馬乃亜なる子供に殺し合えと言われた。
 海馬乃亜に対する怒りと殺意は確かにある。至高の御方々以外に自分に命令する権利など決してない。ましてや至高の御方を差し置いて創造主を名乗るなど……!
 だが、それ以上に。

「これじゃあお仕事できないねぇ」

 エントマは、ナザリック地下大墳墓のNPCだ。創造主の命令に沿って生き、その目的を果たすために働くことが至上の喜びである。なのに、このようなよく分からない場所に連れ去られてしまい、殺し合いを強要されてしまった。これでは、至高の御方たるアインズ・ウール・ゴウンの指示を果たすことができない。

「早くナザリックに帰ってぇ、お仕事の続きしなきゃぁ」

 そう言って、エントマは歩き出す。とにかく、ナザリックに帰還する。手段は問わない。なんなら、参加者を全員殺して、お腹いっぱいになってから帰還してもいいが、他に脱出できる手段があるならそっちを選ぶ。
 エントマは同じプレアデス姉妹であるルプスレギナやソリュシャン、ナーベラルのような人間に対する嗜虐心は持ち合わせていない。人間は食料、それだけである。腹さえ減っていなければ、他にやるべきことを優先するのだ。

 その時、エントマの脳裏に、ある少女の姿がチラつく。愚かにも自分のことを『お前のような血の臭いを漂わせるモンスターを傍において喜ぶ者がいるとは思えない』などと罵倒した憎き小娘。名をイビルアイ、と言ったか。
 この殺し合いは、見たところ少年や少女といった幼い外見の者達が中心に参加させられている。ならば、12歳程度の幼い容姿をしたイビルアイであればこちらに来ているかもしれない。

(モシ、ヤツガ来キテイルナラァ……今度コソコロシテソノ声ヲ奪ッテヤルゥ)

 乃亜に対するそれよりも遥かに大きな殺意を、エントマは滲ませていた。


【エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ@オーバーロード】
[状態]:健康、満腹
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3、リグルの四次元ランドセル(ランダム支給品1~2)
[思考・状況]基本方針:ナザリックに帰還するぅ、手段は問わないよぉ
1:とりあえず脱出の手段を探るけどぉ、他の参加者を生かすか殺すかは腹具合によるかなぁ
2:他にナザリック勢がいる場合は協力したいねぇ
3:モシアノ小娘(イビルアイ)ガ参加シテイル場合ハ最優先デ殺スゥ
[備考]
  • アインズ・ウール・ゴウン魔導国建国後からの参戦です。
  • エントマがリグルを捕食した場所にはリグルの骨と首輪が残されています。

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