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Tarot No.XX(逆位置)

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Tarot No.XX(逆位置) ◆MUMEIngoJ6



 エリアD-5に位置する祠内に、二つの人影があった。
 知的な印象を抱かせる面構えをした少年に、腰まで伸ばした紫色の髪が印象的な少女。
 両者ともに口を固く結び、一切の会話が交わされていない。
 殆ど光が差し込んでこないせいでも、鼻腔を刺激してくる黴臭さのせいでもない。
 アクセルという名の少年は、優れたメカニックとしてのセンスゆえに、自身にかけられた首輪を解除する過程の困難さを知ってしまったため。
 一方、人の姿を模る地球外生命体である赤根沢玲子はというと――

 アクセルにより聞かされた首輪の解説、その誤りに気付いてしまっているから。

『コイツの認識する温度が極端に変化した場合にノアに死亡通知が行き届くんだろう』

 少し前にアクセルが玲子に伝えた言葉である。
 これが、ありえない。ありえるはずがないのだ。
 ワームにしてみれば、有機生命体の死を演じるなど容易いこと。
 心拍数をゼロとしたままで、呼吸を行うことなく、そして――――体温を低く保つ。
 そう、ワームが参加している以上は『体温で生死を確認』などではお粗末もいいとこなのである。
 殺し合いを破綻させようとする輩に対してならば、死したと偽ることへのペナルティとも受け取れる。
 けれども本来ワームとは、人間を排除していく存在だ。ペナルティなどを科す道理がない。
 仮に、ノアがワームをワームと知らず参加させたとしよう。
 だとしても、おかしな話である。

『温度が極端に変化した場合にノアに死亡通知が行き届く』

 これまた、アクセルの言葉。
 フィクションの影響もあって多くの人が勘違いしていることであるが、ヒトを含む恒温動物の体温とは落命して即座に変動するものではない。
 ヒトほどのサイズがあるのなら、尚更のことである。
 機械工学に生涯を捧げたアクセルは知らなかったが、生態系に関する演算を命ぜられたノアが知らぬとは思えない。
 また、ウカワームの下で人間を始末してきた玲子にとっても常識。
 だからこそ、玲子には言い切れるのだ。

 ――――『生死確認は温度センサーによって行われているのではない』と。

 その結論を導き出すための証拠は、まだまだある。
 元々玲子のいた世界の医療技術ならば、死に至る体温からの蘇生だって可能。
 迅速な対処と大きな運が必要となるが、それでも無理な話ではない。
 他にも玲子が奪ったルーナの記憶にあった魔法を使えば、全身凍傷からの復活だってできる。

 だいたい、体温だけの確認では不十分すぎる。
 ルーナとともに旅をした二人ならば、首輪を綺麗に外しての斬首だって成し遂げるだろう。
 そのまま体温の抜け切っていない死体ごと、常人の平熱に近い水へと首輪を突っ込む。
 もしも体温だけで生死判断をしているのなら、その首輪の主は生存していることになる。
 魔法による炎に身体が覆われたとする――大きな温度変動により、その首輪の主は死亡していることになる。
 夜中に足を滑らせて海に落ちたとする――首輪の隙間入り込んだ水の温度により、その首輪の主は死亡していることになる。
 参加しているワームが成虫となり、クロックアップが発動できるようになったとする――摩擦熱により、その首輪の主は死亡していることになる。

(…………ない、わね)

 前を行くアクセルに届かないようにして、玲子は乾いた笑いを零した。
 一つや二つの判別ミスなら、殺し合いの主催には放置するだけの余裕がある。
 とはいえ、あまりにも判別ミスのでる可能性が多すぎる。
 ただの人間同士の殺し合いならばともかく、魔法使いやワームを呼んでおいてこんなにいい加減であるはずがない。
 アクセルが温度センサーと思ったのは、おそらく全く別の装置。
 あるいは実際に温度センサーであるが、それによって生死を確認していると思わせるブラフ。
 どちらかは分からないものの、どちらにせよ厄介なことに変わりはない。

 前者であるのならば、少なくとも現在の玲子たちには手を出せない物体だ。
 メカニックであるアクセルにも、科学の結晶であるマスクドライダーシステムの知識がある玲子にも、魔法を極めたルーナにも分からないのだから。
 ほぼ確実に、三人の世界にあった技術によるものではないだろう。
 となればノアの言う『異なる次元』の住人とコンタクトを取り、情報を集めるしかない。
 そして、後者であるのなら――
 ワームを参加者としているので、脈拍も呼吸も生死判断の決定打とはなりえない。
 だとすれば首輪にマイクやカメラが仕掛けられていて、そこから観測しているのか。
 映像は激しく揺れ動き、音声は大小が激しく可変しそうだが、機械であるノアなら問題はないかもしれない。
 はたまた、会場各地にカメラが仕掛けられているのか。
 まだどちらかは判断できない。しかしそのような観測を行っているとすれば、一つの可能性が浮かぶ。

 会場内かはおいといて、『ノアは参加者と同じ次元にいる』のではないだろうか。

 マイクやカメラによる情報が次元を越えて、ノアの下へと届くとは思えない。
 ノア自身や他者の次元移動が可能でも、会場に仕掛けた機械からの電波が次元を超越できるものだろうか。
 玲子には、まだ断定することができない。
 あくまで可能性にすぎない。
 会場に仕掛けられている機械が、彼女の知る物であった場合の話だ。
 もしかしたら彼女の知らぬ世界には、次元の壁を越える電波が存在するのかもしれない。
 そしてノアがそれを使用しているのかもしれない。
 でもあくまで現在の玲子は、ひとまずノアが同じ次元にいるという仮説を捨て去ることはしなかった。

「だいぶ、陽が落ちたな」
「え、あっ、うん、そうね!」

 唐突にかけられた言葉に、玲子は祠から抜け出したことに気付く。
 思考の渦から出てきてみれば、肌に触れる風はすでに冷たいものになっていた。
 依然として歩む速度を緩めないアクセルの後頭部を見つめながら、玲子は自身の考えを告げるべきか思案する。
 生死確認は温度センサーによって行われていない、と。
 暫し思考しつつも、彼女は結局口を開くことができなかった。
 そう確信した理由は何なのかと尋ねられたら、いったいどう答えたらいいのだろう。
 真実を話してしてしまえば、警戒されるのは目に見えている。
 偽ろうにも、この殺し合いの舞台で体のいい虚構に騙されてくれるとは思えない。
 かつてのルーナのように魔法により姿を変えられたことにしようにも、魔法の存在を知らないのに納得するものか。
 結論として、話したところで信用されることはない。
 この殺し合いを破綻させたいからこそ、玲子はアクセルの過ちを指摘することができなかった。

(二人とも、無事でいて欲しいけど……)

 ワームとしての優れた感覚が大地の揺れを感じ取り、胸中で先に行った二人の安全を願う。
 その思いは、はたして単に戦力の喪失を気にしてゆえか、はたまたまた別の――――


【一日目 夕方/D-5祠周辺 森林】

【アクセル(メカニック)@METAL MAX RETURNS】
[状態]:焦り
[装備]:メカニックキット@METAL MAX RETURNS、SMGグレネード@METAL MAX RETURNS、インテリめがね@DRAGON QUEST3
[道具]:支給品一式、V100コング@METAL MAX RETURNS、サイバネティックアーム@女神転生2、195mmバースト@METAL MAX RETURNS、やる夫の首輪
[思考]
基本:首輪解除。(兵器の位置が確実に判明できる、か分子分解や超速度で動ける人間を探す
1:タムラ達と合流する。
2:はんた、ダイナマと合流。
3:コトのついでに戦車探し
※参戦時期はED後、ノアを倒しはんたと別れた後です。


【赤根沢玲子(ワーム)@仮面ライダーカブト】
[状態]:健康、サナギ体、ルーナの容姿に擬態中
[装備]:白のローブ@FF3、いかづちの杖@DRAGON QUEST2、フレアの書@魔界塔士Sa・Ga
[道具]:基本支給品×2
[思考]
基本:仲間を集めてノアを打倒
1:タムラ達と合流する。
2:首輪解除に協力。
3:仲間に告げるべきか――――
[備考]
※ルーナ(ムーンブルクの王女)の記憶を手に入れました。
※魔法が使えるかとかその辺は、次に任せます。
※赤根沢玲子@真・女神転生ifとは関係がありません。多分。


※参加者の生死確認方法について考察しました。

 温度センサーによる生死判別はありえない。
 → アクセルが温度センサーと思っているのは、温度センサーではない? / 温度センサーであるが、生死確認は別の物で行っている?
 → カブト世界、DQ2世界、MMR世界の知識では分からない。 / ならばどのようにして判別しているのか。脈拍、呼吸、体温、ではない。
 → 上記三つの世界以外のものである。 / 盗聴か盗撮か、会場全体を見据えているか。
 → 異なる次元の住人と協力関係を結ぶ。 / どちらにせよ、ノアは殺し合いの舞台と同じ次元にいる?


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044:Tarot No.XX アクセル 064:『無名』2
赤根沢玲子(ワーム)



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