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アダバナイッセン(下) 黄昏の奏鳴曲

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アダバナイッセン(下) 黄昏の奏鳴曲 ◆MobiusZmZg


【Coda: Allegro moderato】

 イヤ。
 イヤだ。
 イヤだった。
 あれだけ大口をたたいたのに、こんな。こんなところで終わりたくなかった。
 アイドルを目指している自分は、普通の女の子になんて、まだ戻れはしない、のだ。
 なのにどうして。どうしてこんなにも、白いはずの羽根をひたしていくものが赤、い――?
 いいや。本当に、これは、赤いのだろうか? 血? 天使の血を引いていても、自分の血は赤いはずなのに。
 あ、あは、……そう。そうか。もう、ものの色も見えない。い、き。息、が……凍ってしまったみたいだ。
 息を吐くたびになにか、形のないもの、あたたかいものが流れ出して“リ=リリ”が冷たくなっていく。

 それで、もう、彼女には分かった。
 息を吸えば、あんまりにも、このからだは痛いから。
 落とした視線のさきで、ぱっくりと開いた傷口が、逆巻く風に痛いから。
 それで、もう、先に見える結果を分かるしかなかった。
 息を吐いたら、もう吸えなくなりそうなほど、からだが苦しいから。
 苦しい。苦しさを訴えられる誰かも、苦しみを癒せる誰かもいなくて苦しいから。

 だったらもう、自分はここで、終わるしかない。
 終わる。さっと、幕が引かれるように死ねたら良かったのに。
 終わる。終わり。分かっている死をこのまま待つのは痛くて怖い。
 ちゃんと胸も斬られたはずなのに、脳みそに血が届かなくなるまでの数瞬は長すぎる。
 何もない。なくなっていく感覚がつらい。濃密に時が流れるなか、何もできなくてしんどい。
 飽和した感覚、情報のかたまりに付き合うのもおっくうだった。なのに逃げることだって出来ない。
 渋面をつくって体を固めても、無駄だ。ずくん。陸風が傷をうずかせた。詰めていた息が前歯を乾かす。
 何か。こうなった自分に、いったい何ができるのか。何をすれば、この痛みを、寒気を忘れられるだろう。
 ぎゅっと手をにぎりしめる。しっかり意識していないと、指だってばらばらに離れそうだ――

 ……ああ。これ、だ。
 そう。そうだった。自分にはまだ、これがあった。
 ううん。もうこれしかない。だけどこれなら、できる。

 弛緩したのか、緊張したのか。
 よく分からないながらも、ふと口角がゆるむ。
 少しくリリを微笑ませたものは、けして希望ではなかった。
 暗がりのなかにひと筋の光が差し込む。それでも、彼女が迎える結果は変わらない。
 ここにいた自分の結果を変えられない。それでも、相手が迎える経過は変えられる。

 そこに思い至ったから、彼女は笑えていた。
 それを思い出したから、彼女は息を吸った。

 この自分だから出来るやり方で、これから、自分が行くところに。
 あんたのことも、ちからいっぱい――


 引きずり下ろしてやる。


 *  *  *

 彼女は、彼の肩にと手を置いていた。
 そこに込めた意図は、力添えか。はたまた、無謀な仲間を引き留めんとしてか。
 アイドルを目指す天使の瞳は輝き澄みわたって、他者に邪推を許さない。
 ぱち、ぱち、ぱち。間を持たせたリズムで、くぐもった響きで、拍手が行われた。
 空いた片手をもう一方に打ち付けて起こるつたない音が、山あいの一角をつと満たす。
 もと天使が冷めた目をして行った行為は、けして、リリの顔つきに向けられたものではない。

「こうして、破壊神を破壊した男は殺し合いの地に倒れたのでした。
 ただ、べつにめでたくないし昨日の敵は今日も敵で、幕が降りた後でももうちょっとだけ続くんだけどね」
「分かってるさ、そんなことは……ッ」

 ロランの遺骸から少し離れた場所で、タムラが憤りに満ちた声を発した。
 少女のつむぐ、皮肉と悪意をたっぷりと込めた言葉のつらなりに、彼は心底からの怒りを覚えている。
 逃げるわけにはいかない。あの剣士が命を落としたがゆえに、探検家の決意は固いだろう。
 なのに、彼は撃たなかった。ロランが落命してもなお、彼は対等な戦いを望んでいるとでもいうのか。
 おそらくは、ロランに……彼の人となりに報いるために。明らかに強者と分かってしまった相手に対して。

(ま、銃は鎧より強いなんて“常識”を、魔法が知れた状態でゴリ押ししないだけマシですか。
 天使さんの鎧はどう見ても鉄ですが……神秘的なんて石言葉がつくだけあって、水晶は魔力と相性がいいですもん。
 それに、こんな状況では背中を向けて逃げるわけにもいかないといいますか――)

 逃がしてくれそうにないというのが、この場における正しい表現だろう。
 紫。本来ならば対極にある闘気と魔力が一体となって、眼前に立つもと天使を包んでいる。
 “そう”。鷹揚なそぶりで行われた彼女の首肯は、リリもタムラもひと括りに見下げたものだ。

「じゃあ……せっかくだから最後まで見ていけば? 特等席も、そこに作ってあげるよ」

 そして彼女は、横溢する力を左腕の一閃に込めた。
 剣を持たない腕は当然無手の状態だが、ひらめくさまは風よりも速い。
 次の刹那、風が吹き払われて生まれた空間が、リリとタムラの目前に広がる地面を深々と裂いた。
 圧倒的な破壊力。それが夢まぼろしであったかのように、カマイタチは吹き込んだ風に解けて消える。

「ああ、そこから一歩でも下がったら死ぬから。だけど、復讐するからには、少しでも苦しんでみて欲しいなあ」

 後半についてはともかく、前半は言われるまでもないことだった。
 切り崩されたような下り坂。山岳特有の足場の悪さから、いまだ二人は逃れ得ていない。
 加えて、下り坂という点がまずい。感覚的には難所とされる上り坂よりも、あれは人に負担を強いるものだから。
 容易に止まれない。たったそれだけの要素は、膝関節に強い衝撃を与え、ともすれば精神も揺さぶられる。
 剣士に気をやりながら、いつ途切れるとも知れない坂で後退りを続けるなど……自殺行為に他ならない。

 しかし、ここで引かなくとも、遠くないうちに自分たちは死んでしまうのだ。
 もと天使の少女と、闇の力を持つ戦士。彼らは細部こそ違えど、ともに“殺すこと”を許容している。
 剣に、あるいは風の刃に、刺されるか斬られるか。叩き切る種類の得物なら、撲殺の線もありうるのか。
 想像するほど醜怪で、本気を出しただけ滑稽で、さりとて笑えない絶望感が天使の胸を衝いた。
 胃へじかに氷を叩き込まれたような感覚が嫌というほど、嫌と言っても叩き込まれる。

 ――嫌。
 そんな結末を迎えることだけは、絶対に嫌だと思えるほどに。

「勝つ方法を考えましょう。ふたりで。ロランさんに言った、切り抜けるだけのスキは……きっと見つかります」

 だからこそ、もと天使が自分たちに背を向けるさまを視界におさめたリリは、タムラにささやく。
 タムラの首肯から少しの間を置いて、幕間の静けさは、剣風がひといきに吹き散らした。

 *  *  *

 予想どおり、相手の初撃は刺突であった。
 闇の戦士はロラン、もと天使はタムラ達――
 双方が下り坂の付近にいる者に、すなわち低地に近づいていたのだ。
 それならば、奪うべきは高所である。実力が拮抗していようといまいと、命がかかっているのだ。
 自分だけでなく、世界すべての命を背負っているからには、少しでも優位に立てるだけの努力はする。

「あなたは、正直っていうより甘いんだねえ」

 努力するはずであったのに回復魔法を唱えた戦士を、もと天使は鼻で笑った。
 殺し合いをする者もしない者も、彼女にとって、人間は等しく憎いものであるらしい。

「私、ああしてる間に三回はあなたを斬れたと思うよ」
「たわごとをッ!」

 それならそれで、闇の戦士は構わなかった。
 少なくとも、今ここに立つ彼女には、ロランのような光がないからだ。
 もと天使は、火を放つ魔物とともども、嬉々として破壊活動を行っていた者に――
 あの男よりも腕は立つようだが、他者を“汚物”を言い切ってしまえる手合いに近いと言えるからだ。
 彼女の目的は“復讐”。ここに来るまでの来歴は別としても、それならば無駄なことを考えてしまわずにすむ。
 別の次元にいたらしい破壊神を破壊したあとだと聞いて、どこかで安心するようなことも、もうないだろう。

 そうして、戦いに注力すると決めてからの数合目。
 火吹きの技によって、さらに間合いを離された先で見えたのは、オリハルコンのきらめきだった。
 脇に流されたロトの剣。攻撃に偏重した構えより繰り出された一閃を、闇の戦士は最低限の動作で避ける。
 牽制の末に、お互い斜面に対して90度を保つ姿勢となっていたが、脚甲を強く斜面にあてて体勢を崩さない。
 石つぶてからの刺突は割り切って飛びすさり、離れた間合いで予想されたカマイタチには懐に飛び込んで対処する。
 先ほど、戦線離脱してすぐに重症を癒してみせた手といい、もと天使の繰り出す技は、たしかに多彩といえた。

「お前……剣に必要なものは、技術だと言ったな」
「そうだけど? あの王様みたいに、説教でもする気?」

 “これだけ押されてるくせに”。
 あくまで十歩強の間合いを保ち続ける闇の戦士に対して、相手は近付くも離れるも自在だった。
 彼女が近づいて斬れば、闇の戦士は剣にて応じた。斬撃をいなしきれない場合は、ナイフが補助となった。
 リリに使ってみせた多段攻撃に対しても、片手半剣と逆手に持った短剣のふたつで対処した。
 剣の基本を守りつつ重心を整え、返礼とばかりに返す一撃は、もと天使の盾に対抗された。
 防御ではなく、ロランにも見せたシールドアタック……面の攻撃でもって、斬撃ごと押し返されるのだ。

「でも、あっちを相手にした時みたいに、油断はしないみたいだねえ」

 先刻のやり取りは、彼女にも聞こえていたらしい。
 剣を繰り出したもと天使の揶揄を、闇の戦士は無言でいなした。
 押し返されても、まったくとよろけないのは不可能だが、体勢を維持する努力は可能だ。
 それを実行するためには、体幹・腰椎・足許の三箇所……最悪でも、体幹さえ整っていれば十分だ。
 ロランの時には体勢を整えきれず、いささか腰も引けていたが、今の状態なら鍛錬で培った脚力で対応出来る。
 そうするだけの余裕を、多彩な技をもつ少女は、闇の戦士に与えうる戦い方をしていたから。

「そちらも――全力で戦えているようで重畳だ。入り乱れていた時と違ってな。
 だが、剣は技術。ならば“いかに全力で打ち込むか”としか考え得ぬ者に、果たして技術は備わっているか」

 重心を崩しきれなかった、もと天使の舌打ちに、闇の戦士は静かな言葉を返す。
 剣だけではなかった。彼女が扱う戦技は、そのすべてにおいて“技術”と“技”が乖離している。
 より正確に言うのなら、効率的に傷を負わせられるように、ある一面において類型化がなされているのだ。
 たとえば火吹きのわざ。初見ではその見た目に驚かされたものだが、その用途は無用なまでに絞られている。
 彼女があれや、石つぶてのような技に定めている使い方は――概して“間合いを整える”ことであった。
 その上で、脇構えから繰り出す払いや、唐竹割りのような全力攻撃を、自分の得意とする間合いで打ち込む。
 それが読めているからこそ、闇の戦士は余裕をもって守勢にまわることが出来た。
 強力な力を秘める剣の間合いより近づき、素手のそれに入られれば対応も困難だったろうが、それはない。
 いかにして最大の攻撃力をとおすか。それを最優先においた少女は、弱い攻撃を“強くする”発想に至れない。
 自身の力を活かすという一点においては、彼女が選んでいる手法は正しい考え方のひとつだった。
 しかし、非常に計算された戦い方であるがゆえに、魔物に対する戦術から抜け出せていない。
 たいていは攻撃一辺倒である相手を、いかにいなして封殺するか。そこからの発展が見られない。

「だから、……こうなる」

 ひたすらに強く打ち込み続ける少女の一撃に、闇の戦士が“合わせた”のは、これが初めてだった。
 しかして、彼の動作は奇跡がもたらされたように輝く剣の、逆落しにも似た袈裟懸けに応ずるものではない。
 彼は――格闘由来のそれだろう、練磨された素早さと踏み込みでもって間合いを詰める“彼女の体”に対応していた。
 ドレインの術式にも似た力を持つ剣の輝きが、刃の根元に滑らせたミスリルナイフの生む火花と重なって消える。
 同時に、合わせたというより“置いた”という状態に近いバスタードソードが、少女の右腕に食い込んだ。
 基本的な能力の高さゆえに、相手を袈裟に払うべく押し出した体のほうが、戦士の刃に勢いをもたらす。

 むろん、ただ置いただけの剣、それも叩き切るための剣で生まれた傷は、浅かった。
 それでも、重症をやり過ごしてなお、新たに流れ出す血は、相手に乾きをもたらすはずだった。
 闇の四戦士たる仲間と繰り返し行った修練――模擬戦において、その感覚は彼とも親しくなっている。

「お前の“復讐”とやらは、その道を進んだ後に何かを生むものか。
 闇と光の均衡が未来を生み出すように、お前が見ている光は、ほんとうに輝かしいものなのか!」

 それゆえに、彼は自分には分からないことを問いかけていた。
 これほどの力がありながら、どうして復讐などという行いにはしったのか。
 これほどの技をもちながら、どうして愚直にすぎる破壊しか出来ないのか。
 半分は自分と真逆であり、もう半分は自分の鏡を見ているようであったから、問いかけていた。
 もと天使の体から即座に剣を離し、青眼に構え直しながらも、問わずにはいられなかった。


「ああ……そうなんだ。そういえばあなたも、そっち側の人間なんだよねえ……。
 しかも、世界とか、人とか、守って救うべき存在を、まだ救い切れてもいないんだっけ」


 けれど、もと天使は、闇の戦士の問いに応じなかった。
 自分の体から、ふたたび流れ出した血。赤い流体を見る双眸は、どこか遠くのほうを見ている。
 空間ではなく時間に向かって、闇の戦士やロランなどいない、“いなかった”場所にと向けられている。
 “じゃあ”。ぽつりとこぼれた言葉の欠片からは、先ほどまでの戦意がまったくと感じられない。
 ロトの剣。勇者の剣なのだと言われた剣の刃が下げられているからこそ、闇の戦士は警戒を強めた。
 あれほど積極的な攻め手が、なにを狙って攻めないことを選んだのか。
 嘲弄より粘った悪意は、いったいどこから湧き出してきたのか。
 敵意を上回るほどの悪意が、どうして殺意と両立しないのか。
 殺せる側であった者が、なにゆえに殺意を収め得たのか。
 裏を読めないものほど、意図が見えないものほど、不可解なものほど恐ろしいものはない。
 だから、警戒を続ける闇の戦士の動きは、この瞬間、これ以上なく単純化されていた。

「――それじゃあ、もう、いいよ。ここでの勝ちは、あなたに譲ってあげてもいいかなあ」
「な、お前……は……!」

 もう面倒だし。呪文じゃあ、なくした血までは戻らないし。
 それに、これ以上ここで頑張ってみるより、“このほうが面白そうだから”。
 饒舌で冷然とした言葉を耳にせざるを得ない闇の戦士は、なにも面白くはなかった。
 肉を切り裂く感触など、闇の戦士とて好きにはなれないものだった。だからこそ、覚悟が要った。
 心を凍らせ、脳髄と腕とを切り離す努力を行い、身体感覚に過剰反応しすぎないための時間が要った。
 そんな、人が人としてあるためのいとまも与えることもなく、もと天使は前傾の姿勢をとっている。

  ――まるで、ではない。
  まさに彼女は、闇の戦士の構える剣に、胸を貫かれにいったのだ。
  そうすると決めた側は、すでに覚悟など決めていた。
  ゆえに、戦士へと向けた言葉は、一切のよどみもなく、続く。


「私が許してあげるから、私が認めてあげるから、早く戻って、頑張って故郷を救ってみせなよ。
 ……それで、それがどれだけ無駄だったか、救えた世界を見ながら、こんどはあなたが思い知ればいいんだ。
 どれだけ人間が同じようなことで悩むか、愚かなことを繰り返し続けるか。あなたがそこに生きるかぎり」


  ずっとずっと、あなたの望んだ世界を見続けていればいい。
  未来は簡単に色を変えないんだと、分かってしまえばいい。

  それでも、あなたはみんなを救えるのかな。
  それとも、いつかは見捨ててしまうのかな。

 少女の口からつむがれたのは、無駄に壮大な問いかけだった。
 大きすぎて実態が見えなかった。だからこそ、聞くしかない相手を縛りえた。
 かた。かた、かた。バスタードソードが細かくふるえて、鉄の鎧とぶつかっている。
 もとは天使だったという少女の血が、赤く、あかく、闇の戦士の構え続ける刀身をつたった。
 ねえ、と、もと天使は闇の戦士に水を向ける。彼女は、自身に叩きつけられた痛みも、苦しみも捨てない。
 外的要因からくる痛みは、感じるものの顔を醜くゆがめる。苦しみは、感じるものの声を低く押さえる。
 それらの反応は反射といってもよいのだろうが、少女になれない戦士には、その内情は推し量れない。
 善性とはかけ離れたものを、ありありと浮かべた相手の顔が、どうやって出来ているのか分かれない――


  “それ”が分かるもと天使は、自分の腹から胸を貫いた戦士の前で、最大限にもだえてみせる。
  真にせまらざるを得ない顔と声色で、人に失望した自分と同じ道に、相手を引きずり込まんとする。
  ねえ。呼び声をもういちど繰り返せば、闇の戦士のこめかみがひきつり、ぴくりと動いた。
  ひとの命を脅かしながら、そんな反応の出来る相手をさらに揺らせると知れて、少し楽しかった。


 むろん、戦士の側にしてみれば、この状況は楽しくもなんともない。
 死の淵にあるとは思えないほど弾んだ声を聞いて楽しむ趣味など、彼は持ち合わせていない。

「私のあとは、ほかの二人も殺すんだよね。原因からしたらあの王様もだし、他にも誰かいたのかなあ。
 ねえ。これだけやっちゃったんだから、あなたの救えるものや救いたいものは、きっちり掬いあげなよ?」
「言うな……もう、だまれ。貴様は――」

 なのにどうして、まだ生きているんだ。
 なのにどうして、もう死んでくれない。
 鉄で出来た鎧、その胸甲と胴部にあるつなぎ目に、刃は通しているのに。
 片手半剣の刀身が埋れた分だけ、彼女の体の、もっと奥まで貫いているのに。
 これから命を落とすのだから、お前も同じだけなにかを支払えとばかりに、

 少女の声が、やむことなどない。
 少女の笑顔も、収められはしなかった。
 主導権を握っているのは、こちらで相違ない。
 相違がなくとも、引きずり込まれてしまいそうだ――


「なんで? 本当のことくらい受け止めなよ、闇の」
「……世迷い言、を……死人の口がさえずるなッ!!」


 そんな状況に覚えたのは怒りと、不安と、不満。
 感情の激発を咆哮で示した、次の刹那――。
 精神的な苦痛と衝撃をやりすごすべく、肩で息をしたいと、闇の戦士は真から思った。
 だが、そうしようにも彼自身の体勢が許してくれないという事実に気付く。
 身長差ゆえに、少女を見下ろしていたはずの彼は、いま、彼女の体を見上げている。
 貫いて、最後まで貫きとおした剣が鎧を貫通し、そのまま相手を持ち上げていたがために。
 刀身が申し訳程度にのぞく状態で、柄にかかった重みこそが、闇の戦士の感覚を満たしていく。

 闇の、“勇者様”。

 汚泥のように吐き捨てられた、輝かしい呼び名が、彼のなかに満ちてゆく。
 誇れるはずの使命に泥を被せていいのは、自分だけだ。自分だけでよかったのだ。
 だのに彼女は、もう喋らない。闇の戦士が望んだとおりに、なにもさえずることはない。
 場に沈黙が落ちて、どれほど経ったか。いかな言葉も行為も、彼女だったものは受け付けない。

 息を吐く。闇の戦士の体がふるえた。
 息を吸う。もと天使は揶揄しなかった。
 息を吐く。闇の戦士が腕を少し下ろした。
 息を吸う。もと天使はぐったりとしていた。
 息を吐く。闇の戦士のうめき声が喉に沈んだ。
 息を吸う。もと天使は瞳をうつろに開いていた。
 息を吐く。闇の戦士が相手の目を見て腕を止めた。
 息を呑む。もと天使の背中に鋼の雨が撃ち込まれた。


 十拍たらず、呼吸にして四つと半。
 もと天使の体ごしに受けた衝撃をうけて、闇の戦士は弾かれたように視線を前へやった。
 だらだらと行き過ぎるばかりであった時は、砲声とともに転回をはじめ――

 残り三人の戦場には、新たな展開が訪れる。

 *  *  *

 乱戦。
 敵味方の入り乱れた状況で、銃は剣よりも弱かった。
 弱いというよりも、その長所を活かす機会が、ことごとく失われていた。
 最初の交錯、剣士主体の急速な展開においては、確実な狙いをつける猶予が与えられなかった。
 ロランが落命してからは、味方への誤射が潰れた代わりに、射撃の際の反動に耐えうる足場が奪われた。
 祖先である天使のそれより退化したセレスティアの、リリの羽根では、二人分の体重を長くは支えきれない。

「そ、んな」

 それゆえに、彼らがあざかえせるチャンスは、一度きりだったのだ。
 互いのことにしか集中できない者たちのあいだで、勝敗が決したそのときだけ――。
 すなわち、鉄と水晶、二種類の障壁を前に散弾を叩き込むべき相手が、ただひとりになったときだけだった。
 だが、一瞬だけでいい。タムラを抱えて浮遊したリリが、射撃を行う彼の足場となれるのは、もとより一瞬だけだ。
 その一瞬で、最後のひとりを倒せればいい。勝ちたいなら、どんな屈辱にも耐えて、勝てる時を待てばいい。
 この戦場には不要であると、最後に残った余力でも殺すに十分だと判断された二人は、そう、考えていたというのに。

「リリ――」

 絶望。今度こそ、ぬぐいようのなくなった絶望のためでなく、探検家の視界が崩れる。
 支えをなくしたタムラの、声が間延びしていた。目を見開いた彼に応じるべき、リリの腕も伸びていた。
 アイドル志望と語っていた少女の細腕では、大の男の体を、これ以上支えきれないのだ。

 ……少女の吐息に色が交じる。

 リリの声も聞き取れぬまま、タムラは浮遊から落下へと転じた。
 彼女に抱えられていた探検家は、仲間のひとりであった者の顔など見られなかった。
 その代わりと言わんばかりに、彼の視界の左半分には、精霊銀の輝きがいっぱいに映り込んでいる。
 ミスリルナイフ。射撃のために静止していたからこそ、リリに抱えられ、リリの盾となっていたからこそ――
 飛び道具をもつ彼は、敵には比較的狙いやすく、それでいて優先すべき“的”と認識されたのだ。
 それゆえに、戦士が投擲したナイフは、歪みの微塵もみられない輪郭を描いて迫る。
 直撃。鈍い音があらわすとおりに、左目を抜けた刃は、脳髄にまで到達した。
 どさり、と。砂の詰まった袋が落ちたかのような鈍い音には、たしかな水気が混じっていた。

「それが君のやり口か」
「はい。私を信頼してもらって、二人で生き延びるのが最良でしたけど……これじゃ、贅沢は言えません」

 致命の投擲を切り抜けて微笑むリリと、涙袋に力を入れた闇の戦士。
 残り二人となった者たちのうち、前者は十数歩の間合いを維持などしなかった。
 いまや全力で、自分のためだけに飛べるセレスティアは、相手と視線をぶつけつつも後ろへ下がる。
 攻撃魔法ではなく、ナイフを使ってタムラを屠った……戦技に偏重しているとはいえ、相手は魔法を使えるから。
 相手が口を動かした瞬間、術式を払うべく精神を集中したリリは、己がくだした戦士への評価を信じた。
 魔力や精霊力の扱いは、こちらのほうに分がある。このまま離れれば、戦士に自分をおびやかせる手はないと。
 乾いた風に耳朶を叩かれる彼女には、ふたふりの剣を見る彼のこぼしたつぶやきなど、聞こえていなかった。

「まだ、こちらにも手はある」

 彼女に見えたのは、闇の戦士が腕を引いて構えた得物だけだ。
 両手持ちの可能な柄と、左右対称かつ細い刀身を持つバスタードソード。
 儀礼用として使われていても不思議はない見目の得物を、闇の戦士は腕を伸ばして投擲する。
 先ほど行ったナイフの投擲とは違って、今度は槍投げの手法にならっているようだ。
 山なりの曲線を描いたとはいえ、剣はいびつに回転することもなく、ただただ真っ直ぐな軌道を描いた。
 真っ直ぐ後ろに飛んでいたからこそ、彼女はそれを見るしかなかった。旋回しようにも慣性が許さなかった。
 そして、軌道が頂点に達した瞬間。あっけないほど速やかに、剣は運動の質を落下へと変えた。
 もともとアンバランスである重心を崩した刃は、凝視を続けるリリの体の上に影を落とし、

「い、たぁあ……! あぁ、ぁぁああああッ!!」

 天使の混血、その証左たるセレスティアの翼から、白い羽根を散らせしめた。
 重力と重心に従って回転を始めていた刃は、自身の重みでもってリリの翼の腱を裂く。
 振り払おうとしても、もう遅い。人型の体を支えるセレスティアの羽根は、けして大きなものではない。
 こうなれば、浮遊も飛行も落下も同じだった。いちど崩れた少女の体幹こそが“彼女の軌道”をねじ曲げる。
 つかんだ風を離してしまった、それを痛感したときにはもう、リリの平衡感覚など乱れきっていた。
 ゆえにこそ、立て直すいとまもなく落ちて墜ちておちて……乾いた大地に、堕とされてしまった。
 どさり。先ほどタムラが落ちた音と、リリのたてたそれは、変わらずに重く水気を含んでいる。
 全身を支配する、鈍くて熱い痛みを前にすれば、その事実を悔しく思う気力も失せていた。


 ……いま、自分の名前を呼んだのは、タムラだろうか。
 あんなふうにされたのに、彼はまだ、生きていたというのだろうか。
 それからすぐに、『ぱん』と『ばん』の中間にある音が天使の鼓膜を叩いた。


 言葉を失ったリリの体へ、生暖かいものが振りかかる。
 金気と塩気を煮詰めたような臭いが強制的に感覚を満たして、胃が裏返りそうになった。
 びしゃり。にごりきった音の飛沫を跳ね上げるのは、タムラの頭から生まれた流体だ。
 散弾をまともに受け、頭蓋の中身を跳弾に蹂躙された彼の肉は、すでに原型を留めていない。
 頬を流れながら乾いていく血と体液と脳髄の混成には、微塵に砕けた歯の欠片さえ混ざっている。

「どう、して。さっきのナイフで……このひとはもう、死……死ぬ、って――」
「君にはもう、翼を支える力はない。ロランとやらへの対応からして、すでに魔力も尽きたろう」

 いちど声をあげてしまえば、吐き出すように、リリの口から言葉があふれた。
 死。“これからお前もこうなる”とばかりの示威行為を働いた戦士の瞳に、色はない。
 だが、君は他者を利用出来る者だ。弱者のふりをして、臆面も無く仲間に馴染める手合いの人間だ。
 紙の上に筆記したものを読み上げているかのように、淡々とした抑揚で言葉がつむがれつづけていても、

「その口で、言っていたな? タムラという男に、君の護衛を頼んだ者がいたと」
「あ……は、――っは、は……ッ」

 のどをひくつかせるばかりのリリには、もう届かない。
 相手が何を言っているのか、相手が何を意図しているのか。
 生き延びるために考えるべきことの何もかもが、もう、なにも浮かばない。


「それゆえだ。自分の盾を作り続ける君が生きる目は、ここで……“潰させてもらった”」


 そして何よりも――
 もと天使の落とした剣による一閃を受けたリリには、なにかを聴かせる必要もない。
 自身が“貫かされた”少女と、闇の戦士は真逆だった。一閃のあとは、リリに目をくれることもない。
 つとめて平静な顔をつくろいながら、ただ、相手の身になにが起こったか。それだけは言葉にした。
 口をつぐんだ彼は、きびすを返した先の大地で、ロランの携えていた太陽の意匠をもつ得物を手にとる。
 エクスカリバー。禁断の地に眠ったといわれる聖剣は、かつてはナイトとしてあった彼にも扱えるはずだ。
 扱う、という言葉の意味を、しいて“能力を引き出す”ことに絞った戦士は、嘆息とともにまぶたを閉じる。
 眉間を揉みほぐす彼の背後では、虫の息となったリリが、魔力の欠片もない身で、メガホンに手を伸ばしていた。

 *  *  *


「……あぁあああああぁぁあああああああああああぁぁぁぁぁあッ!!」


 *  *  *

 聞き苦しい、意味も魔力もない絶叫。シャウトになりきれない悲鳴。
 しかしてあまりに大きな音響に対して、残ったひとりは『サイトロ』を選んだ。
 白魔法の初歩たるわざで周囲の地形を確認した闇の戦士は、作業と同時に黙考を始める。
 あたり一帯は、地図で見ていたとおりの山間部。しかし、北西には森が、南には祠があった。
 乱戦のあとでも目につき、なおかつ、他人には渡したくない武具をデイパックに放り込みつつ――
 考える。人がいてもいなくてもおかしくない地形と、リリが最期の最期に残した叫びとの相関について。
 考えながらも、乱戦のきっかけとなった山羊に配されたデイパックだけは、自分のデイパックの中に入れた。
 周囲に閃光を放つ手投げ弾。あれがエリクサーのように複数個支給されているなら、戦術の幅は確実に広がる。

(何者かを利用することを良しとする人間――いや。彼女は天使だったか。
 この際、それはどちらでもいい。そうした類の人物が、最も恐れることは、いったいなんだ)

 誰かに侮られること? いいや違う。
 誰かの愛をうけること? これも違う。
 誰かの憎しみをうけること? 近いが違う。
 誰かに情けをかけられること? 的外れだ――!

(誰かから、見放されてしまうことだ。他者との間に築いたラインが切れてしまったと知ることだ。
 利用価値の有無で相手をはかる手合いは、わが身のことも、究極的には利用価値でしかはかれない)

 くるくると。ぐるぐると。ぐちゃぐちゃと。
 思考を巡らせ、幾度も迂回して、かりそめの猶予期間をもらいながらも、彼は止まらない。
 最終的には、正答に限りなくちかい答えを予測する。予測を終えたあとは、それを行動に移す。
 実行力が、闇の戦士の強さだった。強くあらねばならないのが、クリスタルに選ばれた戦士だった。
 サイクロン号を起こして、再度またがる。無理矢理にでも風を切れば、この鬱屈もおさまるだろうか。
 考え込む部分が、闇の戦士の甘さだった。甘さがなければ守ろうとも思えないものが、世界だった。

(あの天使が利用出来るとみたなら、まず間違いなく、近くには仲間がいる。
 だが……良かったよ、トードが使える魔剣士を極めておいて……)

 森の向こうに広がる水域に満ちるものは、おそらくC-3エリアを水源としている“真水”だ。
 トード。禁を破った魔道士の懲罰に使う白魔法、人を蛙にするわざの存在を、今ほど感謝したこともない。
 人の脚では追いつけない乗り物と、常人ならば容赦なく体温を奪われてしまう水のかたまり――
 自分には、リリの呼んだであろう障害を切り抜け、能力を活かすための手段と地の利が、確かにある。
 その事実だけを噛みしめて、闇の戦士はサイクロン号のグリップを握る右手に力を込めた。


 終幕より間断などなく、アクセルが――開く。


【C-4 D-4との境界部・山岳地 / 一日目 夕方】
【■■■(闇の四戦士の一人)@FINAL FANTASY 3】
[状態]:大きく疲労、魔力消費(中)、クリスタルメイルを除く衣服に損傷、サイクロン号に搭乗中
[装備]:エクスカリバー@FF5、ミスリルナイフ@FF3、クリスタルメイル@FF5、うろこの盾@DQ3
[道具]:基本支給品×3、新サイクロン号(一号)@仮面ライダー、エリクサー×2@FFT、
 メガトンハンマー@DQ9、ロトの剣@DQ9、バスタードソード@DQ3、モスバーグ M500@現実(残弾2/8・装弾数6/8)
 《山羊さんのデイパック:基本支給品、閃光手榴弾、サングラス、不明支給品×0~1》
[思考]:いち早く帰還
1:戦闘領域から西方面に離脱。可能であれば、一時休息する
2:サイクロン号で会場を巡り、全参加者を殺害する
[参戦時期]:封印中、光の戦士を待っている頃
[備考]:ジョブは魔剣士。名前は忘れてしまっています。

【戦闘領域の放置アイテム】
ナインのデイパック:基本支給品×2
リ=リリのデイパック:基本支給品×2、濃縮メチル@METAL MAX RETURNS
ロランのデイパック:基本支給品、不明支給品×0~2
タムラのデイパック:支給品一式、スズメバチの巣の袋(未開封)@現実、核爆弾@魔界塔士Sa・Ga
 宝の地図(D-2砂場に印、裏面にZ-G-N-A-と書かれている)、動きが素早くなる薬@スペランカー

【戦闘領域の状況】
※D-4/C-4との境界部より、拡声器を通したリ=リリの叫びが響きわたりました。
 平常時の到達範囲は同一エリア一帯。メガホン=拡声器の描写は5話を参照。
※D-4とC-4境 山岳地にロラン、ナイン、タムラ(頭部飛散)、リ=リリの遺体が転がっています。
※鉄の鎧@DQ3(胸甲部の直下に刺傷による歪み、背部に無数の凹み・穴あり)は、ナインの遺体が着用しています。
※髑髏の稽古着@真・女神転生if...(血まみれ)は、タムラの遺体が着用しています。
※リボン@FF3は、リ=リリの遺体が着用しています。側にメガホン@現実が落ちています。


 *  *  *

【Recapitulazione della prima parte: Lento】

 は? ……誰が一番儲かるかって?
 こいつはまた、分かりきったことを聞くもんだ。
 その質問に、俺が返せる答えはひとつきりしかありゃしねぇ。

 なにを賭けさせるにしろ、胴元が一番儲かるように出来てるのさ。
 ポーカー、ブラックジャック、バカラ、ルーレット、スロットにクラップス……。
 道具がカードだろうとダイスだろうと関係はない。唯一、ブラックジャックだけは儲けが手数料を超えうるが――
 どだい無理だな。カジノも慈善事業じゃねぇ、レートを操れる権利がある以上、あっちの有利に“する”んだよ。

 ……そりゃあ、何事にも例外はあるけどな。ブラックジャックの“奇跡”が良い例か?
 デッキに残ったカードが全部8なら、ディーラーが確実に負ける。全部6なら、プレイヤーが泣きを見る。
 そこまでの偶然に頼らなくても、基本的な戦略を守り続けるだけで、こっちの損は減らせるからな。
 ああ、ポーカーじゃないがポーカーフェイスでだ。こっちの平常心を全力で崩すのがディーラーの役目なんでね。
 熱くなってゲームに飲まれちまったら、そこで終わりだ。バトルロイヤルだって、そのあたりは同じだろうよ。
 いくら“いい戦い”をしたところで、負けがくれば笑うのは仕掛け人や無関係の観客。そんなものさ。

 だったら“戦わないことが正解”ときたか。
 なるほどな。そいつはまた、たいそうな極論だが……。
 確かにそうだ、そのとおりだよ。命さえありゃ、いつだって勝負には出られるんだからな。
 それに、賭け事が好きな奴にだって、似たようなことを考えて動く奴はけっこういるもんでね。
 まぁ、そうだな……俺が例え話をするなら、ブラックジャックが似合いと言えば似合い、か。

 たとえば、カウンティングやイカサマなしで、“普通に”ブラックジャックをやるとする。
 そこでディーラーが21を作りそうなら、サレンダーでゲームを降りるか、インシュアランスで保険をかける。
 自分に21がきたらイーブンマネーをかけて、払い戻しの額を減らす代わりにディーラーとの引き分けを防ぐ。
 カジノ側が決めるハウスルールにもよるが、こんなやり方を続けていけば、負ける額は絶対に減るんだ。
 で、山のようにコインをかっさらう馬鹿勝ちがなくなる代わりに、自分のメンツは保てるってわけさ。
 人前でブザマに負けはしねぇ。他の誰かの食い物にされねぇってのは、賭け事で食ってくには大事なことで――
 ああ、そうだな。ギャンブルで自分を魅せてぇと思ってる奴にとっても、メンツどうこうは一大事なんだろうよ。

 そんな例を見てきたからこそ、俺も頭でなら『戦わない』ことに同意は出来るんだがね……。
 保険をかけて、予防線を引いて、そんなやり方で本当に“ゲームをやってる”と思えるもんなのか。
 もちろん、運命の女神サマにたくさん貢いどけば、それだけコインが戻って来るなんて保証はないぜ。
 胴元以外が儲けられるブラックジャックだって、ハウスエッジがゼロ未満になる時はそうそう来やしねぇ。
 だから賭けに出ると決めて、参加料を払っちまった時点で、ギャンブラーはどこかで負けたようなもんなのさ。
 長いゲームのうちに大勝ちが一回きたとしても、それまでの負け分を取り戻せなきゃ焼け石に水。負けは負けだ。
 “負け”が出ないようにしたいなら、ハナから戦わずに負け分も出さない。その考えはある意味じゃ正しい。


 それで……だ。
 こういう“生き方”が正しいと分かったところで、アンタは満足できるのかい?


【ロラン(ローレシア王子)@ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々 死亡】
【ナイン(主人公・女)@ドラゴンクエストⅨ 死亡】
【タムラ(主人公)@スペランカー 死亡】
【リ=リリ(セレスティア:アイドル:♀)@剣と魔法と学園モノ。2 死亡】
【残り 30人】


056:アダバナイッセン(上) 破壊の遁走曲 投下順に読む 057:Andante
056:アダバナイッセン(上) 破壊の遁走曲 時系列順に読む 057:Andante
056:アダバナイッセン(上) 破壊の遁走曲 ■■■(闇の四戦士の一人) 064:『無名』2
ナイン GAME OVER
ロラン GAME OVER
タムラ GAME OVER
リ=リリ GAME OVER



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