真・女神転生if座談会(1995年)

コミックビームってまだあるの?

 1994年、週刊ファミコン通信(この時はまだファミ通という名前ではなかった)増刊号にて、『真・女神転生if...学園の悪魔使い』という漫画が掲載された。

 この漫画はのちに単行本化されたが、この単行本にはオマケで岡田耕始氏、金子一馬氏、柳澤一明氏による特別座談会が収録されている。内容はifの裏話だけでなく、当時まだ開発中であったデビルサマナーについても触れられており、さらにはメガテンならではのあの仕掛けにも話がおよんでいる。今回も誤字以外は収録された原文のまま、ここに全文掲載。それではドーゾ、ご覧あれ。

出席者
プロフィール
岡田耕始
『真・女神転生』シリーズのディレクター。あるいは知を司る天使。
金子一馬
『真・女神転生』シリーズのキャラクター&モンスターデザインを担当する。美を司る天使。
柳澤一明
『真・女神転生if...』を独自の視点からコミック化した漫画家。あるいは創造を司る天使。


序章 天使の終末感

運命の必然であろうか?いや違う。1994年、弊誌『ファミコミ』誌上において『真・女神転生if...』が掲載された瞬間から、セラフィム(セラフの複数形)の計画は始まっていたのである。

そして1995年、東京。

彼らは降臨し、ついに歴史の清算と、未来への啓示を語り始めたのだ。計画は最終段階に突入した。もう、あと戻りはできない。

畏怖の章

柳澤:『真・女神転生if...』の怠惰界の穴掘り(見張りと生徒一人に声をかけて、月が1周しないと穴掘りが進まない。穴掘りが進まないと、つぎのステージに行けないというイベント)なんですけど、かなり辛かったですね。

金子:あれは辛かった。

岡田:制作サイドのお前までそれを言ってどうする!……いや、じつは開発のときはもっと辛かったんですよ。月が12周しないと穴掘りが進まなかった。しかもフラグ(イベントを進めるキッカケ)を管理している人が、怠惰界ではなく、ほかの世界にあったりしたんですよ。

柳澤:ヒントはあったんですか?

岡田:ないです。

一同:……それは酷い……。

岡田:う~ん……。ただ、怠惰界にはニュートラルの悪魔が多く出現するんですよ。ほかの生徒が穴を掘っているあいだ仲魔を増やして、悪魔合体を楽しんでもらうステージだったわけです。あまりに辛くて止めてもらうと困るんですが、『真・女神転生if...』にこういう世界があったな、と思い出してもらえれば成功だと思いますよ。

柳澤:そう言われると、印象に残ってますね。

金子:怠惰界まではサクサク、テンポよく進めましたので、ある意味メリハリはつけたわけです。

柳澤:なるほど。

修行の章

金子:私の場合は序盤でとにかくレベルを上げて上げて、石橋を叩いて叩いてプレーしてますね。『女神転生』をプレーしたときミノタウロス(ゲームオーバー画面)を知らなかったんですよ。それで『女神転生2』では変なシステムが採用されてしまった。

岡田:金子がそうやってレベルを上げていくおかげで『女神転生2』では、経験値の上がる率が低く設定されてしまったんですよ。

金子:私はいまだにそのシステムが嫌いなんですよ。やればやるほど、報いがなくなってくるじゃないですか。酷いですよね。でも先に進めばレベルが上がるようになってるんですが……ね。

岡田:プレーの仕方と言われると困ってしまうな。私はゲームの開発が終わっちゃうと、製品版はやらないんですよ。

柳澤:えっ!?

岡田:デバッグでプレーすることはもちろんあります。デバッグ用のROMですと、ボタンを押すだけで、レベルは上がりますから。

金子:キッタネー。こっちはチマチマとレベル上げしてるのに!でもまあ、『真・女神転生』シリーズはストーリーを終わらせても、悪魔合体で楽しめますからね。

柳澤:私の場合は死ぬまでガンガン進んで、死んだらリセットして、反省するというやりかたですね。

悪魔合体の章

柳澤:『真・女神転生』シリーズは、好きな悪魔を悪魔合体で造るために、レベルを上げることもありますね。たとえば破壊神シヴァとか。

金子:シヴァのレベルって100越えてなかったっけ?

岡田:越えてないって!

金子:ボスとして登場するシヴァのデータはそうだったような……。

岡田:ボスキャラクターのなかには、たしかにレベル100を超える悪魔はいるんですけどね。シヴァは違いますよ。

金子:でもレベル上げるためにニュートラルの悪魔を殺すことはないです。ダーク悪魔しか殺さない。

柳澤:ニュートラルの悪魔でも、殺さないと手に入らないアイテムがありますよね。でも殺すと、仲魔になりにくくなる。……ホント、悩むところですよね。

金子:私は我慢しますけど。

柳澤:たまに殺してしまいます。

金子:キレるときがありますよね。とくに妖鳥は会話に割り込んでくることが多いので、もういい!って感じで……。人が、一生懸命、ほかの悪魔と話しているのに。邪魔しやがって!

岡田:妖鳥はね。『真・女神転生』シリーズは、悪魔が出てきたからといって殺せばいいというゲームではないですから。ただ、ニュートラルの悪魔はすべて殺さないというのも問題なので、今後も調整していきたいと思ってます。

未来への啓示

金子:今度柳澤さんが連載される『真・女神転生』の話を聞いたんですが、いいところをついてくるなぁ~と思いましたよ。

柳澤:『真・女神転生if...』で登場した主人公のノブとユミがハザマの幻想の学校から現実社会に戻ってきた。でも、そこではクーデターが起こったりICBMが落ちたりしますよね。そうしたとき、ユミとノブはどう生き残っていくのか?また二人を導くキャラクターなど、人間ドラマ的な話を創っていこうと思うんですよ。

金子:年末発売の『真・女神転生デビルサマナー』の設定と似ているところがありますね。主人公はもちろんプレーヤーなんですが、ほかのサマナー(召喚師)が登場するんですよ。主人公とどう絡んでいくか?仕掛けを企んでいます。

岡田:サマナーは探偵なんですよ。世の中で不思議なことが起きている。その原因はじつは悪魔だった。

金子:メシア教とは違った団体の人たちも登場して、主人公と絡んだりしますし……。

岡田:いままでと違って、正統派と反対なものになりそうです。

金子:パラレルな世界設定なので、いままでのシリーズとの関連性は薄いかもしれませんね。

柳澤:『真・女神転生デビルサマナー』と私の新作をリンクさせたいと思うのですが、どうでしょう?

金子:ぜひ、やりましょう!


最終更新:2019年04月21日 19:07