◆
『ATTACK RIDE BLAST!』
ライドブッカーからカードを引き抜き、ドライバーへ装填。
内包されたデータを読み込む一連の動作に、無駄の二文字は存在しない。
光夏実から受け取ったディケイドライバーで変身し、旅を続けて幾年の歳月が流れたか。
培った戦闘技術、踏んで来た場数。
両方で高水準に君臨する、門矢士の変身したディケイドなればこそ。
内包されたデータを読み込む一連の動作に、無駄の二文字は存在しない。
光夏実から受け取ったディケイドライバーで変身し、旅を続けて幾年の歳月が流れたか。
培った戦闘技術、踏んで来た場数。
両方で高水準に君臨する、門矢士の変身したディケイドなればこそ。
平時でさえ一般普及の自動拳銃を凌駕する威力を、数段階強化。
銃口へ次元エネルギーが付与され、銃一丁とは思えぬ連射性能を発揮。
最初に通りすがったクウガの世界のグロンギを始め、ライダーの敵へ効果的なダメージを与える。
そんなエネルギー弾が殺到したとあっては、ノーダメージといくまい。
銃口へ次元エネルギーが付与され、銃一丁とは思えぬ連射性能を発揮。
最初に通りすがったクウガの世界のグロンギを始め、ライダーの敵へ効果的なダメージを与える。
そんなエネルギー弾が殺到したとあっては、ノーダメージといくまい。
しかし此度の相手は並以上の言葉ですら到底足りない、正真正銘の邪神。
地縛神CcapacApu。
ダークシグナーへ堕ちた鬼柳京介の切札にして、不動遊星すら戦慄させた最上級モンスター。
厳重な制限により、幾分のサイズダウンを余儀なくされたが脅威は健在。
そこいらの民家を軽く踏み潰せる巨体へ、ライドブッカーのエネルギー弾は確かに命中。
但し当たっただけだ、ダメージらしいダメージはロクに確認出来ず。
僅かなりとも怯んだ様子すら、全く見られない。
地縛神CcapacApu。
ダークシグナーへ堕ちた鬼柳京介の切札にして、不動遊星すら戦慄させた最上級モンスター。
厳重な制限により、幾分のサイズダウンを余儀なくされたが脅威は健在。
そこいらの民家を軽く踏み潰せる巨体へ、ライドブッカーのエネルギー弾は確かに命中。
但し当たっただけだ、ダメージらしいダメージはロクに確認出来ず。
僅かなりとも怯んだ様子すら、全く見られない。
「ま、予想は付いたけどな」
敵とのサイズ差が開けば開く程、与えられるダメージ量も必然的に減少。
愛用の可変型武器も、CcapacApuからしたら豆鉄砲になったかどうかも怪しい。
長々と愚痴を零す余裕はない、敵は黙って攻撃を受け止める木偶人形に非ず。
愛用の可変型武器も、CcapacApuからしたら豆鉄砲になったかどうかも怪しい。
長々と愚痴を零す余裕はない、敵は黙って攻撃を受け止める木偶人形に非ず。
大型コンテナよりも太い巨椀が振り被られ、地上の者の危機感を激しく煽る。
大きさとはそれだけで武器だ。
特別な工程を挟まない、シンプルな拳の一撃だとて。
直撃を許せば戦闘不能か、即死も有り得る必殺の威力を叩き出す。
大きさとはそれだけで武器だ。
特別な工程を挟まない、シンプルな拳の一撃だとて。
直撃を許せば戦闘不能か、即死も有り得る必殺の威力を叩き出す。
『KAMEN RIDE KIVA!』
『FORM RIDE KIVA GARURU FORM!』
防御の選択は最初から考えず、選ぶは回避一択。
魔皇力制御の拘束具を纏うのも束の間、ウルフェン族の力を秘めた形態へ変身。
敏捷性に限って言えば、エンペラーフォーム以上。
厳しい野生を生きる狼のさながらの疾さで距離を取る。
魔皇力制御の拘束具を纏うのも束の間、ウルフェン族の力を秘めた形態へ変身。
敏捷性に限って言えば、エンペラーフォーム以上。
厳しい野生を生きる狼のさながらの疾さで距離を取る。
「っ!」
罪人へ下す鉄槌の如き一撃が、降り注いだのは直後の事。
拳が地面を叩き、振動と暴風が発生。
余波だけで吹き飛ばされかねない力だ、僅かに体勢が崩れる。
拳が地面を叩き、振動と暴風が発生。
余波だけで吹き飛ばされかねない力だ、僅かに体勢が崩れる。
「せやああああああっ!!!」
邪神へ慄く戦場の空気を、掻き消さんばかりの気合。
張り上げた声はそのまま勢いへ変換し、巨体の首元まで跳躍。
刀剣型デバイスが横薙ぎに振るわれ、一撃決着の頭部狙い。
対話不要の巨大モンスターが敵とあらば、いらぬ容赦をレイは持ち込まない。
張り上げた声はそのまま勢いへ変換し、巨体の首元まで跳躍。
刀剣型デバイスが横薙ぎに振るわれ、一撃決着の頭部狙い。
対話不要の巨大モンスターが敵とあらば、いらぬ容赦をレイは持ち込まない。
常に自身の命が脅かされる戦場で、磨き上げた閃刀姫の刃だ。
逃れる術なし、終焉を理解する暇すら与えない。
邪神が相手でなければ、という大前提を無視すればだが。
逃れる術なし、終焉を理解する暇すら与えない。
邪神が相手でなければ、という大前提を無視すればだが。
「分かってましたとも!そりゃサイズ不足も良いとこですよええ!」
頭部に刃が走ったとて、決着が付くかは別問題。
敵の反応は微かに頭を振るっただけ、これでは痒みを感じさせた程度。
傷らしい傷がなくとも、大目に見てやる性質は持ち合わせていない。
五月蠅い羽虫を叩き落とすように、巨椀がレイへ急接近。
仲間が掌の染みと化す末路は御免だ、地を蹴りキバが回収へ急ぐ。
間一髪、襟首を掴むや今度は地上へ急降下し難を逃れる。
敵の反応は微かに頭を振るっただけ、これでは痒みを感じさせた程度。
傷らしい傷がなくとも、大目に見てやる性質は持ち合わせていない。
五月蠅い羽虫を叩き落とすように、巨椀がレイへ急接近。
仲間が掌の染みと化す末路は御免だ、地を蹴りキバが回収へ急ぐ。
間一髪、襟首を掴むや今度は地上へ急降下し難を逃れる。
「ゲホッ、ゲホッ。女の子を運ぶにしては雑じゃないですか?」
「緊急事態だからな、大目に見ろ。次はお姫様らしく扱ってやるよ」
「ふふん、私はエスコートに厳しいですよ?」
「緊急事態だからな、大目に見ろ。次はお姫様らしく扱ってやるよ」
「ふふん、私はエスコートに厳しいですよ?」
冗談めかした会話もそこそこに、自分達目掛け振り下ろされた足を回避。
威力もさることながら、サイズに見合った範囲も危険だ。
大袈裟なくらいに離れねば、余波一つで体が宙に浮きかねない。
威力もさることながら、サイズに見合った範囲も危険だ。
大袈裟なくらいに離れねば、余波一つで体が宙に浮きかねない。
『忍者!』『コミック!』
『BEST MATCH!』
『Are You Ready?』
「ビルドアップ!」
『忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!イェーイ!』
邪神へ立ち向かう戦士は二人だけに非ず。
ハイテンションな電子音声を響かせ、異なる二色の形態へ変身。
ベストマッチフォームのビルドも得物片手に、CcapacApuへ果敢に挑む。
ハイテンションな電子音声を響かせ、異なる二色の形態へ変身。
ベストマッチフォームのビルドも得物片手に、CcapacApuへ果敢に挑む。
レイの三つ目のランダム支給品こそ、戦兎が現在使用中のアイテム。
旧世界にて、東都のフルボトル一式を填め込んだパンドラパネルだった。
自分では持っていても仕方なく、仲間の役に立てるならと譲渡。
有難く受け取り、ビルドが最も得意とする戦法が使用可能になったのだ。
旧世界にて、東都のフルボトル一式を填め込んだパンドラパネルだった。
自分では持っていても仕方なく、仲間の役に立てるならと譲渡。
有難く受け取り、ビルドが最も得意とする戦法が使用可能になったのだ。
周囲の瓦礫を吸収し、手裏剣へと再構築し連続発射。
チクチクと小賢しい感触に連続して襲われ、CcapacApuの意識はビルドへ移る。
ダメージにならないからといって、見逃す気は皆無。
叩き潰さんと迫る剛腕を、忍者フルボトルの俊敏さで回避。
辛うじて躱すも、避けた傍から反対の手が襲来。
チクチクと小賢しい感触に連続して襲われ、CcapacApuの意識はビルドへ移る。
ダメージにならないからといって、見逃す気は皆無。
叩き潰さんと迫る剛腕を、忍者フルボトルの俊敏さで回避。
辛うじて躱すも、避けた傍から反対の手が襲来。
『隠れ身の術!』
そう来る事まで予測済だ、得物を操作し大量の黒煙を発生。
CcapacApuの巨椀に掛かればあっという間に霧散だが、晴れた場所にビルドはいない。
ではどこにと、疑問への答えは背後からの電子音声。
CcapacApuの巨椀に掛かればあっという間に霧散だが、晴れた場所にビルドはいない。
ではどこにと、疑問への答えは背後からの電子音声。
『分身の術!』
ニンニンコミックフォーム専用武器、四コマ忍法刀の機能に不調なし。
三体の分身が出現し、本体と合わせて計4人のビルドが戦場を疾走。
全員が同じタイミングで武器を操作。
次なる忍術の発動が、四重奏で響き渡った。
三体の分身が出現し、本体と合わせて計4人のビルドが戦場を疾走。
全員が同じタイミングで武器を操作。
次なる忍術の発動が、四重奏で響き渡った。
『『『『火遁の術!』』』』
四コマ忍法刀の刀身に火炎を付与。
スマッシュの外皮をも焼き斬る威力を、四人一纏めにし更に増大。
スマッシュの外皮をも焼き斬る威力を、四人一纏めにし更に増大。
等身大は勿論、合体ガーディアンですら消し炭へ変える斬撃の嵐を見舞う。
恐れ多くも神を炎で鎮めようと言うのなら、身の程知らず以外に掛ける言葉は無し。
巨大な掌同士を打ち鳴らし、災害同然の暴風が発生。
瞬く間に火炎は消え去り、次は発生させた当人の番だ。
恐れ多くも神を炎で鎮めようと言うのなら、身の程知らず以外に掛ける言葉は無し。
巨大な掌同士を打ち鳴らし、災害同然の暴風が発生。
瞬く間に火炎は消え去り、次は発生させた当人の番だ。
「させるとお思いですか!」
片足へ絶えず感じる不快な感触へ視線を落とす。
連続して斬り付けるレイが、こちらを見上げ挑発的な笑みを零す。
相変わらず、傷の一つも付かないがこれでいい。
神の意識が逸れた時こそ、仲間達が動くベストタイミングなのだから。
連続して斬り付けるレイが、こちらを見上げ挑発的な笑みを零す。
相変わらず、傷の一つも付かないがこれでいい。
神の意識が逸れた時こそ、仲間達が動くベストタイミングなのだから。
『FINAL ATTACK RIDE KI・KI・KI KIVA!』
『『『『風遁の術!』』』』
分身共々、風を纏ったビルドが縦横無尽に宙を駆ける。
鎌鼬を思わせる斬撃の渦に邪神を閉じ込め、やがて後退。
即座に動くのは、ドッガフォームに変身したキバ。
フランケン族のパワーを最大限に乗せ、掌状の大槌を振り下ろす。
雷撃と共にCcapacApuの頭部へ叩き込まれるが、敵も無反応とはならない。
頭上目掛け拳を突き上げ、力任せに打ち消す。
鎌鼬を思わせる斬撃の渦に邪神を閉じ込め、やがて後退。
即座に動くのは、ドッガフォームに変身したキバ。
フランケン族のパワーを最大限に乗せ、掌状の大槌を振り下ろす。
雷撃と共にCcapacApuの頭部へ叩き込まれるが、敵も無反応とはならない。
頭上目掛け拳を突き上げ、力任せに打ち消す。
「コソ泥がロボットでヤンチャした時よりはマシ……いや、どっこいどっこいか?」
「どういう状況だよそれ」
「どういう状況だよそれ」
奇妙な喩えはともかく、ボヤきたい気持ちは三人共同じだ。
巨体に相応しいパワーと耐久力、シンプル故に突破へ梃子摺る。
異様なプレッシャーといい、楽に倒せる相手とは到底見れない。
巨体に相応しいパワーと耐久力、シンプル故に突破へ梃子摺る。
異様なプレッシャーといい、楽に倒せる相手とは到底見れない。
それも当然だろう。
キャルが召喚した地縛神CcapacApuのカードは、空や百雲龍之介に支給されたデッキのように。
デュエルモンスターズが単なるカードゲームとして、大流行を遂げた世界ではない。
遊星やジャックといった決闘者達が、激戦を繰り広げた世界に存在した一枚。
無数の人々の魂を贄に捧げ、ダークシグナーのみが操る事を許された邪神。
カードに記されたテキストも、あくまでデュエルモンスターズへ落とし込んだに過ぎず。
デュエルという枷を解き放たれた以上、数字上の強さでは測れない脅威と化している。
キャルが召喚した地縛神CcapacApuのカードは、空や百雲龍之介に支給されたデッキのように。
デュエルモンスターズが単なるカードゲームとして、大流行を遂げた世界ではない。
遊星やジャックといった決闘者達が、激戦を繰り広げた世界に存在した一枚。
無数の人々の魂を贄に捧げ、ダークシグナーのみが操る事を許された邪神。
カードに記されたテキストも、あくまでデュエルモンスターズへ落とし込んだに過ぎず。
デュエルという枷を解き放たれた以上、数字上の強さでは測れない脅威と化している。
「このずんぐりむっくりを呼び出した本人を、どうにかすれば良いのでしょうけど……」
自分で解決策を言ってなんだが、それも難しいだろう。
チラともう一つの戦闘を見やれば、邪神に負けず劣らず暴れ回る巨獣がいた。
チラともう一つの戦闘を見やれば、邪神に負けず劣らず暴れ回る巨獣がいた。
○
大型の魔物との戦闘経験は、モニカにもある。
ヴァイスフリューゲルが戦いにおいて、ロクに連携出来なかったのは過去の話。
日々の依頼やオーエド町での騒動、ランドソルを揺るがす大事件をも乗り越え。
そんじょそこらのギルドに引けを取らない実力を、メンバー全員が身に着けている。
リーダーを務めるモニカは特に、戦闘技術はトップクラス。
ヴァイスフリューゲルが戦いにおいて、ロクに連携出来なかったのは過去の話。
日々の依頼やオーエド町での騒動、ランドソルを揺るがす大事件をも乗り越え。
そんじょそこらのギルドに引けを取らない実力を、メンバー全員が身に着けている。
リーダーを務めるモニカは特に、戦闘技術はトップクラス。
「ちょこまかしてんじゃないっつーの!」
「ぐっ、デカブツめ……!」
「ぐっ、デカブツめ……!」
しかし、此度の敵は今までに遭遇した魔物を凌駕する強敵。
並外れた巨躯、一発一発が必殺級の攻撃、巨体に見合わぬ俊敏性。
仮にギルド結成直後に遭遇したら、全滅は免れなかったろう。
苛立ち交じりに叩き付けられた巨椀を、地面を転がり回避。
舗装された地面は最早、見る影もない破壊の被害を受けてあった。
並外れた巨躯、一発一発が必殺級の攻撃、巨体に見合わぬ俊敏性。
仮にギルド結成直後に遭遇したら、全滅は免れなかったろう。
苛立ち交じりに叩き付けられた巨椀を、地面を転がり回避。
舗装された地面は最早、見る影もない破壊の被害を受けてあった。
延々と回避を続けた所で、体力ばかりを失うだけ。
攻めに移り無力化しなくては、限界が来るのは自分達が先。
姿勢を低くし疾走、頭上スレスレを通過した鋼鉄の腕に背筋が寒くなる。
攻めに移り無力化しなくては、限界が来るのは自分達が先。
姿勢を低くし疾走、頭上スレスレを通過した鋼鉄の腕に背筋が寒くなる。
「モニカちゃん!私も!」
「ああ!合わせるぞ!」
「ああ!合わせるぞ!」
得物を片手に並走するのは、専用ソードの力を引き出したココア。
パン作りが得意なごく普通の少女を、超人の域にまで押し上げる。
別の世界線のココア程、戦闘に慣れてるとは言い難い。
されど今に至るまで、命懸けの瞬間を複数回潜り抜けて来たのだ。
臆する段階はとうに過ぎ去り、眼前の敵へ意識を集中。
パン作りが得意なごく普通の少女を、超人の域にまで押し上げる。
別の世界線のココア程、戦闘に慣れてるとは言い難い。
されど今に至るまで、命懸けの瞬間を複数回潜り抜けて来たのだ。
臆する段階はとうに過ぎ去り、眼前の敵へ意識を集中。
獲物が自ら狩り場に突っ込むなら好都合。
纏めて潰すべく拳を放つも、モニカ達の仲間が許しはしない。
纏めて潰すべく拳を放つも、モニカ達の仲間が許しはしない。
『ガンガンミロー!ガンガンミロー!オメガスパーク!』
可変型武器、ガンガンハンドはスペクターの手で遠距離形態に変形済。
眼魂のエネルギーを乗せ、高威力の光弾を発射。
巨椀に命中し爆発、ダメージはゼロに等しいがこれでいい。
眼魂のエネルギーを乗せ、高威力の光弾を発射。
巨椀に命中し爆発、ダメージはゼロに等しいがこれでいい。
四本ある脚部を下半身と繋ぐ部分へ、走らせる二振りの剣。
雷と風をそれぞれ宿した少女達の刃が、甲高い音を立てた。
が、所詮はそこまで。
亀裂一つ付かない脚部が跳ね、鬱陶しい連中を蹴り飛ばしに掛かる。
雷と風をそれぞれ宿した少女達の刃が、甲高い音を立てた。
が、所詮はそこまで。
亀裂一つ付かない脚部が跳ね、鬱陶しい連中を蹴り飛ばしに掛かる。
「させるか……!」
『カイガン!フーディーニ!マジイジャン!すげぇマジシャン!』
眼魂の起動と共に、愛機が変形。
脱出王の力を宿したスペクターが、背面ユニットから複数本の鎖を射出。
丸太よりも太い脚へ巻き付け、仲間への攻撃を阻む。
力任せに引き千切られるも、僅かな猶予でモニカ達は距離を取った。
脱出王の力を宿したスペクターが、背面ユニットから複数本の鎖を射出。
丸太よりも太い脚へ巻き付け、仲間への攻撃を阻む。
力任せに引き千切られるも、僅かな猶予でモニカ達は距離を取った。
余計な真似に出たスペクターを睨み、ふと足に小さな違和感を覚える。
握った剣とは不釣り合いに、争いとは一生縁の無いだろう少年。
學が幾度も斬り付け、埃が纏わり付くようなむず痒さがあった。
握った剣とは不釣り合いに、争いとは一生縁の無いだろう少年。
學が幾度も斬り付け、埃が纏わり付くようなむず痒さがあった。
「っとに鬱陶しいのよ!」
蹴り飛ばし肉片へ変えるのは容易い。
だが學の仲間が指を咥えて見てるかと言えば、勿論否。
ドライバーを操作するスペクターに倣い、ココアも大技の発動準備に掛かる。
だが學の仲間が指を咥えて見てるかと言えば、勿論否。
ドライバーを操作するスペクターに倣い、ココアも大技の発動準備に掛かる。
『ダイカイガン!オメガドライブ!』
「これが私の“とっておき”だよ!」
再生成した鎖を一斉射出し、雁字搦めになった巨体目掛け急降下。
強固なボディだろうと突き破らん勢いの、回転蹴りを繰り出す。
ココアもまた、専用ソードに最大までエネルギーを収束。
振り下ろせば暴風が巻き起こり、スペクターと共に巨体へと迫る。
學は既に、モニカに手を引かれ退避が済んだ後。
巻き添えの心配は必要なく、後は倒せるかどうか。
強固なボディだろうと突き破らん勢いの、回転蹴りを繰り出す。
ココアもまた、専用ソードに最大までエネルギーを収束。
振り下ろせば暴風が巻き起こり、スペクターと共に巨体へと迫る。
學は既に、モニカに手を引かれ退避が済んだ後。
巻き添えの心配は必要なく、後は倒せるかどうか。
「ハッ、だからどうだっていうのよ!」
平時のキャルなら危機感を覚えた光景を、取るに足らない悪足掻きと鼻で笑う。
強がりではなく、事実この程度は脅威でも何でもない。
馬鹿正直に殺されに来た事を、後悔させてやる。
強がりではなく、事実この程度は脅威でも何でもない。
馬鹿正直に殺されに来た事を、後悔させてやる。
「ブッ潰れろ蟻んこども!!」
六本の腕を用いて放つ、文字通り鉄拳のラッシュ。
巨体故の鈍重な一撃と侮るのは大間違い。
スタープラチナやザ・ワールドといった、近接最強のスタンドにも全く引けを取らない勢い。
それをよりによもよって、15メートルを優に超す巨兵が放ったのだ。
振動だけで周囲一帯のガラス窓が砕け、コンクリートにも亀裂が生じる。
人間が受けようものなら、数秒とて原形を保てまい。
巨体故の鈍重な一撃と侮るのは大間違い。
スタープラチナやザ・ワールドといった、近接最強のスタンドにも全く引けを取らない勢い。
それをよりによもよって、15メートルを優に超す巨兵が放ったのだ。
振動だけで周囲一帯のガラス窓が砕け、コンクリートにも亀裂が生じる。
人間が受けようものなら、数秒とて原形を保てまい。
「ココア!」
「わっ、きゃあっ!?」
「わっ、きゃあっ!?」
真正面から打ち破れる威力に非ずと、いち早くスペクターが察し。
風の刃を掻き消し、放ったココア本人も鉄拳の餌食と化す寸前。
フーディーニ魂の能力の一つ、脱出マジックを発動。
ココア共々姿を消し、射程距離外へ緊急転移。
ラッシュの被害を受けたのは漂う空気と、周囲の建造物のみで終わった。
小細工によって逃げられたキャルは、忌々し気に舌を打つ。
風の刃を掻き消し、放ったココア本人も鉄拳の餌食と化す寸前。
フーディーニ魂の能力の一つ、脱出マジックを発動。
ココア共々姿を消し、射程距離外へ緊急転移。
ラッシュの被害を受けたのは漂う空気と、周囲の建造物のみで終わった。
小細工によって逃げられたキャルは、忌々し気に舌を打つ。
「ああもう!本当にウザいったらないわね!」
力は確実に自分と、自分が操る邪神が上。
なのに未だ一人も殺せず、小癪な抵抗を許してばかり。
こうしてる間にもコッコロが利用されてると考えるだけで、煮え滾る怒りに脳が爆発しそうだ。
なのに未だ一人も殺せず、小癪な抵抗を許してばかり。
こうしてる間にもコッコロが利用されてると考えるだけで、煮え滾る怒りに脳が爆発しそうだ。
「どうせアンタ達が死んだ後で、メグって女もすぐに後を追うのよ!地獄で仲良く再会するんだから、文句ないでしょ!?」
「あるよ!沢山ある!メグちゃんを殺すなんて、そんなの絶対にダメだよ!」
「ならコロ助がクソ女のメグにこのまま利用されていいってこと?はん!お友達を庇って偉いわね~?クズの周りにはクズが集まるってとこかしら?」
「っ!メグちゃんは、そんな酷いこと言われるような子じゃない!」
「んなもんコロ助だってそうよ!」
「あるよ!沢山ある!メグちゃんを殺すなんて、そんなの絶対にダメだよ!」
「ならコロ助がクソ女のメグにこのまま利用されていいってこと?はん!お友達を庇って偉いわね~?クズの周りにはクズが集まるってとこかしら?」
「っ!メグちゃんは、そんな酷いこと言われるような子じゃない!」
「んなもんコロ助だってそうよ!」
感情的に仲間と友への想いをぶつけ合うが、お互いどこまでいっても平行線。
キャルからするとメグは、コッコロを利用する悪党と断定しており。
ココアにとってメグは、殺し合いに乗ってるのは否定出来なくとも大事な友達。
地縛神のカードさえ使っていなければ、両者の争いは回避出来たろうが後の祭りだ。
キャルからするとメグは、コッコロを利用する悪党と断定しており。
ココアにとってメグは、殺し合いに乗ってるのは否定出来なくとも大事な友達。
地縛神のカードさえ使っていなければ、両者の争いは回避出来たろうが後の祭りだ。
「私だって、メグちゃんが皆を殺そうとするのは間違ってるって思う……!」
マヤの死がメグの心へ影を落とし、誤った道へ走らせたのだとしても。
嘆き悲しむ気持ちはココアにだって理解出来るが、殺し合いに乗って良い理由になるわけがない。
戒を、苺香を、リゼを、小鳩を。
仲間や友達を奪った者達と、動機が違おうと結局やってる事は同じ。
我欲の為に他者へ悲劇を押し付けるのは、たとえメグであっても認められない。
次に会ったらメグも、コッコロだって必ず止めたい。
その為には、キャルとだって本当なら協力出来る筈だ。
嘆き悲しむ気持ちはココアにだって理解出来るが、殺し合いに乗って良い理由になるわけがない。
戒を、苺香を、リゼを、小鳩を。
仲間や友達を奪った者達と、動機が違おうと結局やってる事は同じ。
我欲の為に他者へ悲劇を押し付けるのは、たとえメグであっても認められない。
次に会ったらメグも、コッコロだって必ず止めたい。
その為には、キャルとだって本当なら協力出来る筈だ。
「だからキャルちゃん!お願いだから話を――」
「ンンンンン、でしたらまずは拙僧の声に耳を傾けてくれませぬかな?」
喉まで出掛かった言葉が引っ込み、代わりに発したのは乾いた低い呼吸音。
指先一つ触れられていない、なのにどうしてか。
体中を蛞蝓が、百足が、醜悪な毒虫達が這い回り。
餓鬼の群れに陵辱されるかの如き、おぞましき感覚がココアを襲った。
指先一つ触れられていない、なのにどうしてか。
体中を蛞蝓が、百足が、醜悪な毒虫達が這い回り。
餓鬼の群れに陵辱されるかの如き、おぞましき感覚がココアを襲った。
「貴様……何者だ?」
空気が侵食されるのを感じ取り、モニカと學も凍り付く中。
警戒を一気に引き上げたマコトが、仲間を背に庇い問い質す。
奇怪な出で立ちの怪人物を、己が目で見るのは初。
ニタニタと粘つく笑みに、神経を酷く逆撫でされる。
警戒を一気に引き上げたマコトが、仲間を背に庇い問い質す。
奇怪な出で立ちの怪人物を、己が目で見るのは初。
ニタニタと粘つく笑みに、神経を酷く逆撫でされる。
「あ、あなたは……」
前触れもなく現れた男を、ココアは知っている。
定時放送が流れる前、耳飾りの剣士と戒が死闘を繰り広げた時。
全員無事に生き延びる未来を、塵同然に握り潰した集団。
その中で最も邪悪な気配を漂わせた術師が、ほんの僅か先にいる。
定時放送が流れる前、耳飾りの剣士と戒が死闘を繰り広げた時。
全員無事に生き延びる未来を、塵同然に握り潰した集団。
その中で最も邪悪な気配を漂わせた術師が、ほんの僅か先にいる。
「あの男……!?この忙しい時に来やがりましたね……!」
「空気読むのを期待出来る奴じゃないと、分かってたがな」
「空気読むのを期待出来る奴じゃないと、分かってたがな」
ココアと小鳩を救出した際、男の一団と交戦経験がある二人。
レイと士もよもや今、戦闘の真っ最中に厄介な手合いが姿を見せた為に。
苦い顔を作るのも一瞬のこと、傍らのもう一人に気付き目を見開く。
レイと士もよもや今、戦闘の真っ最中に厄介な手合いが姿を見せた為に。
苦い顔を作るのも一瞬のこと、傍らのもう一人に気付き目を見開く。
「なっ!?桃!?」
紙で作られた獣…式神の背に運ばれ。
体中へ張り付いた札で、自由を奪われた自分達の仲間。
不運にも一人吹っ飛ばされた所を、男に拾われた桃は悔し気に脱出を試みている。
それが上手くいっていないのは、誰の目にも明らかだった。
体中へ張り付いた札で、自由を奪われた自分達の仲間。
不運にも一人吹っ飛ばされた所を、男に拾われた桃は悔し気に脱出を試みている。
それが上手くいっていないのは、誰の目にも明らかだった。
咄嗟に駆け寄ろうとするも、制するように男が顔を向ける。
何を言いたいかは、言葉で聞かされる必要もない。
今の状況、桃を生かすも殺すも相手次第。
下手に動けば躊躇なく首を捩じ切る外道だと、悪辣さを見ただけに理解せざるを得ない。
何を言いたいかは、言葉で聞かされる必要もない。
今の状況、桃を生かすも殺すも相手次第。
下手に動けば躊躇なく首を捩じ切る外道だと、悪辣さを見ただけに理解せざるを得ない。
「何なのアンタ……」
「ご挨拶が遅れました。拙僧はリンボと申します。今しがたの会話が、偶然耳に入りましてな。少々口を挟みに参ったと、こういう次第で」
「盗み聞きの告白にわざわざ顔出した挙句、茶々入れしようっての?」
「ご挨拶が遅れました。拙僧はリンボと申します。今しがたの会話が、偶然耳に入りましてな。少々口を挟みに参ったと、こういう次第で」
「盗み聞きの告白にわざわざ顔出した挙句、茶々入れしようっての?」
殺気立った巨兵に見下ろされても、リンボの余裕は崩れない。
優雅に一礼する姿は様になっているが、警戒を解く効果は無し。
目的一切不明の怪人物を前に、キャルも出方を窺う。
優雅に一礼する姿は様になっているが、警戒を解く効果は無し。
目的一切不明の怪人物を前に、キャルも出方を窺う。
「いえいえ、茶々などとんでもない。拙僧はただ、きゃる殿達へ真実を告げに参ったに過ぎませぬ」
「真実ぅ?」
「然り。聞けば先程から、めぐ殿の話で随分盛り上がってらっしゃるようでしたので。拙僧からも、この目で見た事実をお伝えしようかと」
「なによ、ソイツの居場所でも知ってんの?」
「真実ぅ?」
「然り。聞けば先程から、めぐ殿の話で随分盛り上がってらっしゃるようでしたので。拙僧からも、この目で見た事実をお伝えしようかと」
「なによ、ソイツの居場所でも知ってんの?」
訝しく問うキャルへ、それについては残念ながらと首を横に振り。
しかし決して無視出来ないだろう、毒を少女達の耳に流し込む。
しかし決して無視出来ないだろう、毒を少女達の耳に流し込む。
「お二人の仰るめぐ殿はこっころ殿を言い包め、己が手足としてこき使ったのみならず……優子殿が手を汚す原因まで作り出したのです!」
「え……」
「……へぇ?」
「え……」
「……へぇ?」
片や呆然と、片や興味が引かれたとばかりに。
己の話へ意識が強く向けられ、リンボの笑みは深まる。
己の話へ意識が強く向けられ、リンボの笑みは深まる。
「待って……どういうこと……?」
いつの間にか身動ぎすらも忘れ、桃は震える声を出すのが精一杯。
この男は今、誰が何をやったと言ったのか。
聞こえてしまっただけに、信じられない。
この男は今、誰が何をやったと言ったのか。
聞こえてしまっただけに、信じられない。
「シャミ子……シャミ子がなにを……」
「ま、待って桃ちゃん!シャミ子ちゃんは――」
「っ!?ココア……!」
「ま、待って桃ちゃん!シャミ子ちゃんは――」
「っ!?ココア……!」
この人達に連れて行かれたと、そう言おうとしたココアを遮って。
頭上から鉄拳が襲い掛かり、モニカが咄嗟に抱えて退避。
余波が暴風となって顔を強く叩き、痛みに顔を顰めるも相手の反応はつまらなそうに一瞥するのみ。
妨害に出た自分がどんな目で見られたかなど、キャルの関心を引かない。
頭上から鉄拳が襲い掛かり、モニカが咄嗟に抱えて退避。
余波が暴風となって顔を強く叩き、痛みに顔を顰めるも相手の反応はつまらなそうに一瞥するのみ。
妨害に出た自分がどんな目で見られたかなど、キャルの関心を引かない。
「こっちはまだメグのことなんも聞いてないのに、邪魔すんなっての。で?」
続きを促すキャルへの礼もそこそこに、再び口を開く。
聞きたがってるのは桃も同じだ、説明しろと瞳が激しく訴えかける。
聞きたがってるのは桃も同じだ、説明しろと瞳が激しく訴えかける。
「優子殿にとっては不幸な事故、と言う他ありませぬ。めぐ殿はこっころ殿と、露出癖の気狂いの殿方以外にもう一人。こっころ殿よりも幼い童子を従えておりましてな。恫喝し、時には刃を向け自らの駒に扱われ、童子も恐怖に急かされ――良子殿に手を出したのです」
「良ちゃん、を……?」
「姉として妹を守りたい一心だったのでしょうなぁ。阻止へ動くも、優子殿は余裕がなく――童子の薄い腹をブスリ、と」
「――っ!?」
「良ちゃん、を……?」
「姉として妹を守りたい一心だったのでしょうなぁ。阻止へ動くも、優子殿は余裕がなく――童子の薄い腹をブスリ、と」
「――っ!?」
手刀を動かし、刺し貫く仕草へ桃は顔面蒼白。
金魚のようにパクパクと口を動かすも、肝心の声が出ない。
どうにか絞り出した時には、喉が乾き切っていた。
金魚のようにパクパクと口を動かすも、肝心の声が出ない。
どうにか絞り出した時には、喉が乾き切っていた。
「なに、それ……ま、待って!良ちゃんもシャミ子も今は、連れて行かれて……あ、あなたが二人を……!?」
「そこはまあ、はい。しかし勘違いしないで頂きたい。童子に良子殿を襲わせ、優子殿を追い詰めたのはめぐ殿ですぞ?」
「う、あ、で、でも……」
「そこはまあ、はい。しかし勘違いしないで頂きたい。童子に良子殿を襲わせ、優子殿を追い詰めたのはめぐ殿ですぞ?」
「う、あ、で、でも……」
良子を洗脳し、シャミ子を連れ去った張本人。
そんな男の言葉など、嘘だと断言すればいいのに。
聞く耳なんて、持つ意味がないと分かるのに。
そんな男の言葉など、嘘だと断言すればいいのに。
聞く耳なんて、持つ意味がないと分かるのに。
(メグ、ちゃん……私の足を斬って、風祭さんを殺した人達の、仲間……)
一緒にいた時間は短いけど、冴島邸襲撃を生き延びた仲間を殺し。
今でこそ元に戻ったが、両足欠損の重傷を負わせた。
そんな危険人物達と行動を共にして、彼らの行いに顔色一つ変えない。
ココアの友達で、元は非道な少女でないと分かっていても。
リンボが言った通りの事を本当にやったのでは、そう心の何処かで考えてしまう。
今でこそ元に戻ったが、両足欠損の重傷を負わせた。
そんな危険人物達と行動を共にして、彼らの行いに顔色一つ変えない。
ココアの友達で、元は非道な少女でないと分かっていても。
リンボが言った通りの事を本当にやったのでは、そう心の何処かで考えてしまう。
海神やオーバーロードインベスに植え付けられたトラウマ。
アギトや最凶のホモといった、残虐性の塊のような者達への嫌悪感。
魔法少女の信念がへし折れる原因となった参加者の存在が、メグへの猜疑心も桃に植え付けていた。
アギトや最凶のホモといった、残虐性の塊のような者達への嫌悪感。
魔法少女の信念がへし折れる原因となった参加者の存在が、メグへの猜疑心も桃に植え付けていた。
「とはいえ、この件でこっころ殿まで責めるのは酷でしょうぞ。童子の死へ激しく動揺し、めぐ殿へ非道な行いを改めるよう言い縋っていましたので」
「ま、素直に聞くようなら最初から殺し合いなんざやってないでしょうね」
「ま、素直に聞くようなら最初から殺し合いなんざやってないでしょうね」
コッコロの説得が成功したのなら、小鳩は死んでいない。
つまり、そういうことだろう。
つまり、そういうことだろう。
「違う……違うよ……!メグちゃんはそんなこと!」
「しない、と。断言出来るのですか?」
「でき――」
「しない、と。断言出来るのですか?」
「でき――」
る、たった一文字の続きが言えない。
メグは、自分の大切な友達は。
チマメ隊の一員で、チノにとってもかけがえのない少女はリンボの言うような者じゃない。
ハッキリ否定できれば、どれ程良かっただろうか。
小鳩が殺されたあの時、にこやかに優勝すれば良いと言ったのはメグだ。
人殺しを良しとする者達と平然と手を組む今のメグが、小さな子供を利用しないと何故言い切れる。
自分の目で見た真実なだけに、最悪の可能性を捨て切れない。
メグは、自分の大切な友達は。
チマメ隊の一員で、チノにとってもかけがえのない少女はリンボの言うような者じゃない。
ハッキリ否定できれば、どれ程良かっただろうか。
小鳩が殺されたあの時、にこやかに優勝すれば良いと言ったのはメグだ。
人殺しを良しとする者達と平然と手を組む今のメグが、小さな子供を利用しないと何故言い切れる。
自分の目で見た真実なだけに、最悪の可能性を捨て切れない。
「結局、そういう奴だったってだけのことじゃないのよ」
言い淀むココアをつまらなそうに見やり、吐き捨てる。
キャルとて、リンボの話を一から十まで信じるつもりはない。
様子を見るに、ココア達とは何らかの因縁持ち。
ロクな奴じゃないのは明らかだ。
キャルとて、リンボの話を一から十まで信じるつもりはない。
様子を見るに、ココア達とは何らかの因縁持ち。
ロクな奴じゃないのは明らかだ。
それでも、メグが自分の思った通りの人間だという点に関しては。
絶対に違うと言い切れもしない、ココアの様子が分かり易い答え。
どこぞのガキンチョと同じ末路を、いつコッコロが辿るか分かったもんじゃない。
絶対に違うと言い切れもしない、ココアの様子が分かり易い答え。
どこぞのガキンチョと同じ末路を、いつコッコロが辿るか分かったもんじゃない。
そこまで考え、つい失笑が漏れる。
ああなんだ、あれこれ聞いたがつまり。
ああなんだ、あれこれ聞いたがつまり。
「クソ野郎を庇うアンタ達をぶっ殺すのに、変わりはないってことよね!」
熱砂にも等しい殺気が吹き荒れ、戦闘再開の予感が高まる中。
のんびりと雲を見やるような気安さで、リンボが機械仕掛けの巨兵を見上げる。
言いたい内容は口にし終えたが、退散するには祭りはまだ始まったばかり。
のんびりと雲を見やるような気安さで、リンボが機械仕掛けの巨兵を見上げる。
言いたい内容は口にし終えたが、退散するには祭りはまだ始まったばかり。
「僭越ながらきゃる殿、拙僧が力添えすることを許可願いたく」
「あ?まだ何か用あるの?」
「ここで会えたのも何かの縁、貴女に更なる力を授けましょうぞ」
「あ?まだ何か用あるの?」
「ここで会えたのも何かの縁、貴女に更なる力を授けましょうぞ」
唐突な提案を受け入れるには、信用に大きく欠ける相手だ。
消え失せろの五文字を返したって問題無い。
しかし、地縛神の影響で心の闇が常時増幅し続け。
コッコロを守る為の『力』を、強く欲する今のキャルには。
誘惑を跳ね除けるだけの冷静さも、力への渇望へ飲み込まれた為に。
リンボへの警戒こそあれど、断る選択を取れなかった。
消え失せろの五文字を返したって問題無い。
しかし、地縛神の影響で心の闇が常時増幅し続け。
コッコロを守る為の『力』を、強く欲する今のキャルには。
誘惑を跳ね除けるだけの冷静さも、力への渇望へ飲み込まれた為に。
リンボへの警戒こそあれど、断る選択を取れなかった。
「……妙な真似したら真っ先に殺すわよ」
「ご期待には必ず応えましょう!」
「ご期待には必ず応えましょう!」
承諾を得たリンボは嬉々として、自身の支給品袋へ手を伸ばす。
だが、誰もがこれ以上の好き勝手を許した覚えはない。
リンボの意識が逸れた今こそ、動くチャンス。
優先し囚われた桃を救出しするべく、マコトが鎖を射出し、
だが、誰もがこれ以上の好き勝手を許した覚えはない。
リンボの意識が逸れた今こそ、動くチャンス。
優先し囚われた桃を救出しするべく、マコトが鎖を射出し、
「なに…!?まだ仲間がいたのか!?」
黒い影が飛び出すや、鎖を全て弾き返す。
身の丈以上のサイズを誇る、大斧をあろうことか片手で振り回す。
巨漢さながらのパワーと裏腹に、得物の使い手は端正な顔立ちの青年。
異性の黄色い歓声を一身に浴びるだろうが、それは普通の人間だったらの話。
土気色の肌に加え、肉腫が蠢く左腕。
生気を全く感じられない無機質な乱入者が、リンボを守護すべく降り立つ。
身の丈以上のサイズを誇る、大斧をあろうことか片手で振り回す。
巨漢さながらのパワーと裏腹に、得物の使い手は端正な顔立ちの青年。
異性の黄色い歓声を一身に浴びるだろうが、それは普通の人間だったらの話。
土気色の肌に加え、肉腫が蠢く左腕。
生気を全く感じられない無機質な乱入者が、リンボを守護すべく降り立つ。
「なんで……」
一体自分はほんの数分で、何回声を震わせるのだろう。
思考の片隅に、どうでもいい疑問が現実逃避染みて浮かぶ。
そう思ってしまうのも仕方ないくらい、見ている光景が信じられない。
今現れたばかりの青年が誰か、ココアが忘れるなんて有り得ない。
思考の片隅に、どうでもいい疑問が現実逃避染みて浮かぶ。
そう思ってしまうのも仕方ないくらい、見ている光景が信じられない。
今現れたばかりの青年が誰か、ココアが忘れるなんて有り得ない。
殺し合いに巻き込まれ、最初に会った人。
他人の痛みを我が事のように感じ、共に悲しんでくれた人。
戦い方を教えてくれると約束して、果たされる事無く旅立った人。
もう二度と会える筈がない彼が、たった十数歩先で自分を見ていた。
他人の痛みを我が事のように感じ、共に悲しんでくれた人。
戦い方を教えてくれると約束して、果たされる事無く旅立った人。
もう二度と会える筈がない彼が、たった十数歩先で自分を見ていた。
「戒さん……どうして……」
「感動の再会が叶ってなにより!涙を流さずにはいられませんが、まずは仕事を果たすとしましょう!」
「感動の再会が叶ってなにより!涙を流さずにはいられませんが、まずは仕事を果たすとしましょう!」
わなわなと震えるココアを嗤う間に、リンボは既に準備を済ませた。
先んじて自身へ打ち込んだ2本と、今しがたの3本。
計5本のノロで己の力を引き上げ、制限による出力低下分を補う。
大盤振る舞いでノロを使い切った意味は、誰もが直ぐに思い知るだろう。
先んじて自身へ打ち込んだ2本と、今しがたの3本。
計5本のノロで己の力を引き上げ、制限による出力低下分を補う。
大盤振る舞いでノロを使い切った意味は、誰もが直ぐに思い知るだろう。
「異界の神よ!其方に捧げられた子羊どもの悲鳴、実に心地よいですなぁ!ンンン!しかししかししかしィ、残念なことに貴殿もまた枷を付けられた身。不自由を強いられ不憫でなりませぬ!故に……嘗て神へ仕えたこのリンボめが、ささやかながら助力して差し上げまするぞ!」
宙へ描いた五芒星は瞬く間に巨大化し、一筋の光を放つ。
狙う先には地縛神、巨体を貫くも断じて攻撃を行ったに非ず。
無数の人間達を生贄に捧げ、魂を奪われた者達の嘆きが呪詛と化し渦巻く邪神へ。
珠鋼を奪われた恨みを募らせたノロを、リンボ自身の術で結合した上で一体化。
負の神聖で構成された三つは反発せず、互いを取り込み合い完成へと至る。
狙う先には地縛神、巨体を貫くも断じて攻撃を行ったに非ず。
無数の人間達を生贄に捧げ、魂を奪われた者達の嘆きが呪詛と化し渦巻く邪神へ。
珠鋼を奪われた恨みを募らせたノロを、リンボ自身の術で結合した上で一体化。
負の神聖で構成された三つは反発せず、互いを取り込み合い完成へと至る。
大きさはそのままに、ずんぐりとした巨体が急速に引き締まる。
女体の特徴を持ったスマートな体へ浮かぶは、元々あった紋様だけじゃない。
マグマを思わせる橙色の輝きを放ち、全身各部で結晶化。
ぶら下げた両腕の先に五指はなく、片刃の剣に変化。
女体の特徴を持ったスマートな体へ浮かぶは、元々あった紋様だけじゃない。
マグマを思わせる橙色の輝きを放ち、全身各部で結晶化。
ぶら下げた両腕の先に五指はなく、片刃の剣に変化。
地上の者達を、言葉を発さぬままに睥睨。
召喚者の意思へ従うだけの傀儡なのは、最早過去。
顔のパーツが不足して尚、一度姿を見やれば誰しも理解せざるを得ない。
キャルとリンボ、二名の例外を除き人間達へ向けるのは。
煮え滾る怒り以外の、なにものでもない。
召喚者の意思へ従うだけの傀儡なのは、最早過去。
顔のパーツが不足して尚、一度姿を見やれば誰しも理解せざるを得ない。
キャルとリンボ、二名の例外を除き人間達へ向けるのは。
煮え滾る怒り以外の、なにものでもない。
もしもこの場に、荒魂を祓う刀使達がいたら。
燕結芽が『満たされずに死んだ』世界線、或いは命を落とさなかった世界線の。
衛藤可奈美達が、今の地縛神を目にすれば。
姿形は大きく違えど叩き付けられる絶大な怒りへ、重ねずにはいられず呟いただろう。
燕結芽が『満たされずに死んだ』世界線、或いは命を落とさなかった世界線の。
衛藤可奈美達が、今の地縛神を目にすれば。
姿形は大きく違えど叩き付けられる絶大な怒りへ、重ねずにはいられず呟いただろう。
――タギツヒメ、と。
本来、CcapacApuは相手の魔法・罠の効果を受けない。
しかしデュエルモンスターズのルールが、都合都合で解釈されるのが神主催のゲーム。
信用はせずとも一先ず敵と見なさなかった結果、リンボの術は相手による効果ではない。
キャル側のフィールド上にいる効果モンスター扱いされ、干渉が防がれなかったのだ。
しかしデュエルモンスターズのルールが、都合都合で解釈されるのが神主催のゲーム。
信用はせずとも一先ず敵と見なさなかった結果、リンボの術は相手による効果ではない。
キャル側のフィールド上にいる効果モンスター扱いされ、干渉が防がれなかったのだ。
「キャハハハハハハ!良いじゃない!最っ高じゃない!これよこれ!こういう力が欲しかったのよ!」
数段階上の脅威と化したCcapacApuへ、戦慄を抱く中でただ一人。
邪神の新たな姿を歓迎し、キャルは大はしゃぎだ。
召喚時を超える力が手に入り、どんな敵からもコッコロを守れる自信が湧き上がる。
折角だ、自分ももっと派手にやって邪魔者を消すのも悪くない。
熱に浮かされ、ウルトラゼットライザーへ新たなメダルを装填。
邪神の新たな姿を歓迎し、キャルは大はしゃぎだ。
召喚時を超える力が手に入り、どんな敵からもコッコロを守れる自信が湧き上がる。
折角だ、自分ももっと派手にやって邪魔者を消すのも悪くない。
熱に浮かされ、ウルトラゼットライザーへ新たなメダルを装填。
月光カテゴリの三枚に加え、もう一枚。
仲間から譲渡されたソレを使い、大虐殺を目論む。
仲間から譲渡されたソレを使い、大虐殺を目論む。
『Belial.』
「アンタの力も寄越しなさい!ベリアル!」
多腕多足の機械兵から一変、人間と同じ数の四肢を生やす。
紫色の肌を大胆に晒し、扇情的な衣装で秘部を覆う。
蠱惑的ながらも、しなやかな戦士の肉体の持ち主。
獣の特徴を併せ持ったその名は、月光舞獅子姫。
元アカデミア生にしてランサーズの決闘者、セレナが操るモンスターの一体。
紫色の肌を大胆に晒し、扇情的な衣装で秘部を覆う。
蠱惑的ながらも、しなやかな戦士の肉体の持ち主。
獣の特徴を併せ持ったその名は、月光舞獅子姫。
元アカデミア生にしてランサーズの決闘者、セレナが操るモンスターの一体。
だがシンクロ次元でセレナが召喚した時とは、異なる特徴が複数存在。
胸元の三日月の装飾が消え、邪悪な光を放つ輝石が埋め込まれた。
胴と四肢を走る、血のように濃いラインは常に脈動。
モンスターながらに美女と言う他ない顔は今や、獰猛さが剥き出しの狂戦士そのもの。
胸元の三日月の装飾が消え、邪悪な光を放つ輝石が埋め込まれた。
胴と四肢を走る、血のように濃いラインは常に脈動。
モンスターながらに美女と言う他ない顔は今や、獰猛さが剥き出しの狂戦士そのもの。
悪に堕ちたウルトラ戦士にして、朝倉リクの実の父。
ウルトラマンベリアルを宿す、ベリアル融合獣として君臨。
ウルトラマンベリアルを宿す、ベリアル融合獣として君臨。
「ンンンンンンンンン!!!ではでは皆々様、存分にご堪能くだされ!!!」
絶望的と言う他ない、暗黒神話の如き光景が実現。
地獄の到来へ悪の陰陽師は嗤い、怪物達は死を振り撒く。
地獄の到来へ悪の陰陽師は嗤い、怪物達は死を振り撒く。