ガキィィィン!
キィィィィン!
キィィィィン!
鋼同士が力強く衝突する金属音が、響き渡る。
方や人間を遥かに超える巨大な機械。手には漆黒の大剣を握り、その大きさは直撃したらただの人間ならばミンチのように砕け散るだろう。
方や水色髪の剣を構えた少女。この場で“剣士”となったばかりの見習いながらも、意地と想いだけで巨体と戦っている。
巨体の周りには無数の機械が浮上し、それらが水色髪の少女へ銃撃を向ける。
方や人間を遥かに超える巨大な機械。手には漆黒の大剣を握り、その大きさは直撃したらただの人間ならばミンチのように砕け散るだろう。
方や水色髪の剣を構えた少女。この場で“剣士”となったばかりの見習いながらも、意地と想いだけで巨体と戦っている。
巨体の周りには無数の機械が浮上し、それらが水色髪の少女へ銃撃を向ける。
「くっ……!」
少女は苦悶の声をあげながらも、なんとか大剣で弾き返す。
どう考えても状況は少女が不利。
それでも少女が互角に戦えてるのは、相手がNPCであり本来の実力より大幅に弱体化していること。そして少女の想いが限界以上の力を引き出していることが大きい。
どう考えても状況は少女が不利。
それでも少女が互角に戦えてるのは、相手がNPCであり本来の実力より大幅に弱体化していること。そして少女の想いが限界以上の力を引き出していることが大きい。
ロボットのような巨体の紫の箇所――クリアで透けて見える場所には、一人の少女が囚われていた。
軍服のような黒衣を身に付けた、ただ一人の少女。
それは水色髪の少女――チノにとって大切な存在で、絶対に救わなければならぬ者。
軍服のような黒衣を身に付けた、ただ一人の少女。
それは水色髪の少女――チノにとって大切な存在で、絶対に救わなければならぬ者。
ゆえに――その姿を見た瞬間から、なんとしてでも救い出さなければならないと思った。
『……チノ。言っていいことと、悪いことがある。チノが自殺なんてしたら、みんなが――私も、悲しむ。だから、やめてほしい』
『こんな地獄みたいな状況でまだ足掻けと、ロゼさんはそう言うんですか!?』
『そう。その代わり――チノやココアやメグは私が守る。約束する』
――ロゼさん。
約束、したじゃないですか。
私やココアさんやメグさんを守るって――約束して、指切りまでしたじゃないですか。
だから私はロゼさんを信じたのに。ロゼさんとなら、この殺し合いをなんとか出来ると思ったのに……っ!
どうして――。どうしてロゼさんは真っ先に自分が犠牲になるような道を選んだんですか!
約束、したじゃないですか。
私やココアさんやメグさんを守るって――約束して、指切りまでしたじゃないですか。
だから私はロゼさんを信じたのに。ロゼさんとなら、この殺し合いをなんとか出来ると思ったのに……っ!
どうして――。どうしてロゼさんは真っ先に自分が犠牲になるような道を選んだんですか!
「ハァ、ハァ、ハァ――。ロゼ、さん……」
色々と思うところはあります。
私は――私はロゼさんと、一緒に居たかった!
だからこのロボットに取り込まれたロゼさんだけは絶対に――!
私は――私はロゼさんと、一緒に居たかった!
だからこのロボットに取り込まれたロゼさんだけは絶対に――!
「――私がロゼさんを救います。約束です!」
チノは自分を奮い立たせるように、魂なき存在に想いを届かせるように――雄叫びをあげた。
†
どうしてこうなったのかと、いうと。
時はチノとシャークが逃げ出したところまで、遡る。
時はチノとシャークが逃げ出したところまで、遡る。
†
凌牙さんがロゼさんを見捨てた。
厳密には――それがロゼさんの選んだ道だったけど、私にはとても許容出来るものじゃなかった。
ロゼさんと過ごした時間は……それほど長くないかもしれない。でもこの殺し合いが始まって、私を支えてくれたのはロゼさんや零さんだった。
私が危うい状態の時も……ロゼさんはそんな私を止めて、落ち着かせてくれました。
厳密には――それがロゼさんの選んだ道だったけど、私にはとても許容出来るものじゃなかった。
ロゼさんと過ごした時間は……それほど長くないかもしれない。でもこの殺し合いが始まって、私を支えてくれたのはロゼさんや零さんだった。
私が危うい状態の時も……ロゼさんはそんな私を止めて、落ち着かせてくれました。
『本当はココアにしてもらいたいだろうけど、今は私で我慢してほしい……』
そうやって私を撫でてくれたロゼさんの手は暖かくて。私を優しく抱き締めてくれたロゼさんは――まるで月のようで。……ココアさんがみんなを明るく照らす太陽なら、ロゼさんは優しく照らしてくれる月だと思いました。
だから――。
だからこそ――ロゼさんを一人きりにして置いて行くのは、嫌だった。
だからこそ――ロゼさんを一人きりにして置いて行くのは、嫌だった。
『凌牙……チノを連れて、逃げて……ッ。』
ロゼさんの最後の言葉を、私は鮮明に覚えている。
自分だけで相手をすると決めたのは。自分が犠牲になると決意したのは、紛れもなくロゼさんです。……それは否が応でも、理解しています。
自分だけで相手をすると決めたのは。自分が犠牲になると決意したのは、紛れもなくロゼさんです。……それは否が応でも、理解しています。
でも。
だからって――。
ロゼさんを取り残すという行為が、私は嫌でした。
だからって――。
ロゼさんを取り残すという行為が、私は嫌でした。
『ロゼも言っていたが、あれは一対多を想定した広範囲の戦闘モードみたいなもんだ。
俺達がいたらアイツは全力で戦えねえ上に巻き添えになる、俺らにはこれしかねえんだよ……!!』
俺達がいたらアイツは全力で戦えねえ上に巻き添えになる、俺らにはこれしかねえんだよ……!!』
凌牙さんの言葉は、たしかにその通りだと思います。ロゼさんが全力で戦うには、私達は邪魔だったかもしれない。
でも。
もしかしたら。
私達三人で戦えば、勝ち目があった、と――そんな淡い可能性も抱いてしまって……。
もしかしたら。
私達三人で戦えば、勝ち目があった、と――そんな淡い可能性も抱いてしまって……。
本当に凌牙さんの言葉は正しかったのか。
ロゼさんを見捨てたことにならないのか、と――考えてしまいます。
ロゼさんを見捨てたことにならないのか、と――考えてしまいます。
「ロゼさん……」
無意識に喉からロゼさんの名前が出てきました。
ロゼさんは――無事でしょうか?
ロゼさんは――無事でしょうか?
……。
そんなこと……考えるだけ無駄ですよね。
ただでさえ重傷を負っていたロゼさんが運良く勝てるなんて、そんなお伽話のようなことがこの殺し合いで起こるわけがありません。
そんなこと……考えるだけ無駄ですよね。
ただでさえ重傷を負っていたロゼさんが運良く勝てるなんて、そんなお伽話のようなことがこの殺し合いで起こるわけがありません。
私はこの殺し合いで何度も、何度も、見てきました。
人が死ぬ姿を。死体を……。
だから、だから……っ!
ロゼさんの死ぬ姿も想像出来てしまって……っ!
人が死ぬ姿を。死体を……。
だから、だから……っ!
ロゼさんの死ぬ姿も想像出来てしまって……っ!
「お゛、ゔぇぇ……」
私は水上で、吐いてしまいました……。
ロゼさんが死ぬ姿を考えただけで……私は……っ!
ロゼさんが死ぬ姿を考えただけで……私は……っ!
「おい、大丈夫か?チノ」
「はい。……私は、大丈夫です」
そう。私なら、大丈夫。
でも――――。
でも――――。
「そうか。それなら――」
「私は大丈夫ですが……ロゼさんは、大丈夫じゃないと思います」
「ッ――!」
凌牙さんは苦虫を潰したような表情で、軽く舌打ちをしました。
……どうしてロゼさんを見捨てたこの状況で、舌打ちなんて……。
……どうしてロゼさんを見捨てたこの状況で、舌打ちなんて……。
「どうして、ですか……」
「……」
「どうして、凌牙さんはロゼさんを見捨てたんですか……!」
「だから……言っただろ。あの場に俺達が居たらロゼの足手纏いにしか――」
「でも、三人で実際に挑んでみなきゃわからないじゃないですか!凌牙さんは逃げたんです、ロゼさん見捨てて逃げ出したんです……!」
「……否定はしねぇよ。たしかにロゼを見捨てた――と思われても仕方ねぇ。……こんな時、遊馬のヤツならいつもみたいにかっとビングでなんとか出来ちまった可能性もあるが……残念ながら俺の取れる選択はこれしかなかった。……少なくともアイツなら、手札が無い絶望的な状況でもロゼを見捨てるなんて選択はしなかっただろうな」
凌牙さんは非を認めた上で、よくわからないことを言い出した。
その声には悔しさが込められている。……それくらい、私にもわかります。
でも……だからといって、凌牙さんを許す気にはなれませんでした。
ですが1つだけ気になったので、そこだけ質問します。
その声には悔しさが込められている。……それくらい、私にもわかります。
でも……だからといって、凌牙さんを許す気にはなれませんでした。
ですが1つだけ気になったので、そこだけ質問します。
「凌牙さん。かっとビングってなんですか?」
「かっとビング……それは諦めない心だ。俺の友はどんな逆境でも諦めずに、かっとビングを胸に戦ってきた」
「そんな人が友達なのに、凌牙さんは逃げたんですか……!?」
「ああ。……あの場ではそうするしかないと思った。それにチノが死ねばロゼも悲しむ。……だからお前を守るためには。ロゼの想いを守るためにはそれしかなかったんだよ」
「そんなの……っ!ロゼさんが死んだら悲しいのは、私も同じです!!」
「……悪かったな。手札さえあれば俺が残っても良かったが……生憎とあの状況では足止めすら無理だ。決闘者にとって手札が0枚って状況は……もう取れる手段がねえんだよ……!……だからロゼがああするしか、チノが生き残る道は――」
「それなら、三人で挑めば良かったじゃないですか。私だって……っ!私だって、戦えます!」
「それは無謀な賭けだ。万が一にお前が死んで、ロゼが喜ぶと思うか?それに手札が0枚の俺じゃ何も戦力になれねえ。お前とロゼで戦うことになる」
「それは……そうかもしれません。でも……っ!私は、ロゼさんを取り残したくなかった。あんな重傷なロゼさんがまともに戦えるわけないなんて、凌牙さんもわかるはずです」
「……そうだな。ロゼが都合良く無事に帰ってくるなんて、思ってねぇよ」
「じゃあ、どうして!私はロゼさんと一緒に居たかった!逝かせたくなかったんです……!」
「……それは悪かったな、チノ」
「“悪かった”で済むと思うんですか?人の命がかかってるんですよ……!」
「ああ……。だが俺にはこれくらいしか出来ねぇ……」
「そうですか。……見損ないましたよ、凌牙さん」
「……そうか」
凌牙さんを責めても意味がない。ロゼさんは帰ってこない。
それに凌牙さんは最善の選択をしたのかもしれない。そんなこと理解(わかっ)てます……。
でも、理解と納得は違います。
私は凌牙さんやロゼさんの決断を理解しながらも、納得が出来ずに――やり場のない怒りを凌牙さんにぶつけていました。
それに凌牙さんは最善の選択をしたのかもしれない。そんなこと理解(わかっ)てます……。
でも、理解と納得は違います。
私は凌牙さんやロゼさんの決断を理解しながらも、納得が出来ずに――やり場のない怒りを凌牙さんにぶつけていました。
「……」
「……」
暫く沈黙が続き、その間にもロゼさんのことが頭を離れません。
『チノ。あなたはココアが好き?』
『えっ!?きゅ……急に何を言ってるんですか、ロゼさん!』
『えっ!?きゅ……急に何を言ってるんですか、ロゼさん!』
ロゼさんに出会ってばかりの頃、いきなりロゼさんに図星を言い当てられて動揺したのが――今では随分と懐かしくすら思えます。まだ一日も経ってないことなのに不思議と……。
『チノ。無事にあなたをココアの元へ帰して私とレイも日常に帰るために――まずはこいつらを倒す』
ロゼさんはレイさんと日常に帰るために、この殺し合いで戦ってきました。それなのに、それなのに……っ!
「どうして自分を捨て駒にするようなことをしたんですか、ロゼさん……」
ロゼさんの日常に帰りたいという気持ちは、痛いほどわかる。私も同じだから。
だからこそ――あの場面では私を頼ってほしかった。一人だけで戦おうとしないでほしかった……っ!
あんな人と単独で戦えばどうなるかなんて――考えるまでもありません。
だからこそ――あの場面では私を頼ってほしかった。一人だけで戦おうとしないでほしかった……っ!
あんな人と単独で戦えばどうなるかなんて――考えるまでもありません。
――そんなことを考えているうちに、私達は陸地まで辿り着いていました。
「……ここから先は歩くことになる。大丈夫か、チノ?」
「……」
「……チノ。俺もお前の気持ちはわからないでもねぇ。だが今は――」
「――ロゼさんを見捨てた凌牙さんが言っても、説得力はありませんよ」
「……そうかよ」
「はい。だから今後は別行動をしませんか?」
「そうはいかねぇ。お前はロゼが命懸けで守っ――が、っ!?」
凌牙さんが言い終えるよりも早く、私は“せんし”に変身して凌牙さんのお腹に拳を当てました。
……命を奪うつもりはありません。でも凌牙さんのような冷たい人とは……もう一緒に行動したくないです。
突然の攻撃に対処出来なかった凌牙さんは地面に転がっていました。
……命を奪うつもりはありません。でも凌牙さんのような冷たい人とは……もう一緒に行動したくないです。
突然の攻撃に対処出来なかった凌牙さんは地面に転がっていました。
「チノ……テメェ……」
「さようなら、凌牙さん。あなたとは、ここまでです」
「待て……。ロゼが命懸けで守ったお前まで……手放して、たまるかよ……!」
凌牙さんは無様に地面に転がり、お互いの身体能力の差を理解したはずなのに――それでも両手をついて、私を真っ直ぐと見据えてきました。
この人は、ロゼさんを見捨てたというのに。
ロゼさんを捨て駒にした、酷い人なのに。
それなのに何故か、凌牙さんは希望を捨て去っていないような真っ直ぐとした瞳で立ち上がり、デュエルディスクを構えました。
ロゼさんを捨て駒にした、酷い人なのに。
それなのに何故か、凌牙さんは希望を捨て去っていないような真っ直ぐとした瞳で立ち上がり、デュエルディスクを構えました。
……この人は。凌牙さんは何を考えているのでしょうか……。
「デュエルだ、チノ!俺が勝ったら――俺はお前を手放さねぇ!」
「……わけがわからないです。凌牙さん、あなたはロゼさんを見捨てた冷たい人のはずなのに――何を企んでるんですか!?」
デュエル?
今後に及んで何を言ってるんですか、この人は。
私は呑気にそんな遊びをしてる暇がありません。
それにこのタイミングでデュエルなんて、何を考えてるのかサッパリです……。
今後に及んで何を言ってるんですか、この人は。
私は呑気にそんな遊びをしてる暇がありません。
それにこのタイミングでデュエルなんて、何を考えてるのかサッパリです……。
「……ああ。俺は確かにロゼを見捨てちまったかもしれねぇ。俺のダチなら――絶対にロゼを諦めようとしなかった。そんなアイツの姿を見てきたのに――俺は“合理的”に判断しちまって、ロゼだけを置いてきた。……もちろんこの判断はロゼの意志だし、俺たち三人であのまま戦っても勝ち目は限りなく低い。
……だけどな、チノ。お前の言葉を思い返してるうちに――俺の判断は合理的だしロゼの意志を尊重してるとしても……それが全てじゃないって気付いたんだよ。なにより……チノ、お前の意志は完全に無視してたからな」
……だけどな、チノ。お前の言葉を思い返してるうちに――俺の判断は合理的だしロゼの意志を尊重してるとしても……それが全てじゃないって気付いたんだよ。なにより……チノ、お前の意志は完全に無視してたからな」
◯
「……ようやくわかりましたか。でも、今更そんなことに気付いても、もう遅いです……!凌牙さんがロゼさんを見捨てた事実は、変わりません!」
――チノは怒り狂ったような形相で、俺を睨んできた。
……そうだ。俺はロゼを置き去りにした。それがロゼ自身の望みであろうとも、俺がやらかしたことは変わらねぇ。きっと遊馬(アイツ)ならかっとビングして三人で挑む道を選んでた、なんて。今更そんなことを思っても、もう遅い。――俺がロゼを犠牲にして生き残ることを選んだという事実は変わらないからな。
もし遊馬なら、俺と違って全員が生き残る道を切り拓けたかもしれない。アイツはそういう奴だ。
そんなアイツのことをずっと見てきたのに……俺は、ロゼを取り残すなんて判断に走っちまった……っ!
だから……ロゼの件に関して俺がチノに言い返す言葉はない。
……だがそれならせめて、ロゼが命懸けで逃したチノくらいは守ってやりたい。……俺が遊馬やロゼのようになれるなんて――そんなことは思わねえけど、それでも俺は……っ!
……そうだ。俺はロゼを置き去りにした。それがロゼ自身の望みであろうとも、俺がやらかしたことは変わらねぇ。きっと遊馬(アイツ)ならかっとビングして三人で挑む道を選んでた、なんて。今更そんなことを思っても、もう遅い。――俺がロゼを犠牲にして生き残ることを選んだという事実は変わらないからな。
もし遊馬なら、俺と違って全員が生き残る道を切り拓けたかもしれない。アイツはそういう奴だ。
そんなアイツのことをずっと見てきたのに……俺は、ロゼを取り残すなんて判断に走っちまった……っ!
だから……ロゼの件に関して俺がチノに言い返す言葉はない。
……だがそれならせめて、ロゼが命懸けで逃したチノくらいは守ってやりたい。……俺が遊馬やロゼのようになれるなんて――そんなことは思わねえけど、それでも俺は……っ!
「……ああ、そうだ。自分のしたことを都合の良いように書き換える――なんてことは俺には出来ねぇ。でもヤケクソ気味になってるお前を無駄死にさせないことくらいは俺にも出来るぜ」
今のチノはどう見てもヤケクソだ。
この殺し合いの場で単独行動をすることの恐ろしさを何もわかっちゃいねぇ。……いや、怒りでそんな気持ちすら塗り潰されてるのかもしれない。……それこそ俺がかつてベクターの野郎に向けてたような怒りが、チノの中に渦巻いてる可能性もある。
この殺し合いの場で単独行動をすることの恐ろしさを何もわかっちゃいねぇ。……いや、怒りでそんな気持ちすら塗り潰されてるのかもしれない。……それこそ俺がかつてベクターの野郎に向けてたような怒りが、チノの中に渦巻いてる可能性もある。
「ゴチャゴチャうるさいですね。……ロゼさんを見捨てたくせに、正義の味方気取りですか……!」
チノが鋭い眼光で語気を荒げる。
まだ知り合ってからそんなに時間は経ってないが……こいつらしくねぇなんて、思う。
それにしても、正義の味方――か。
そんな言葉を聞いて思い浮かぶのは、やはり遊馬だった。
アイツこそ、その言葉に相応しいと思った。
そして、ナッシュとして人間の心を捨て去るためにかつて殺した男――Ⅳ。
どう考えても正義の味方なんてガラじゃねえのに。ギミックパペットなんて気色悪いデッキを使って、性格もお世辞にも褒められたものじゃない。俺にとっては色々と因縁のある奴だっていうのに。
それなのに遊馬だけじゃなくてアイツの顔まで思い浮かぶのは――ナッシュとしての俺を命懸けで神代凌牙に戻そうとしてきたあのデュエルが。二人で魂を分かり合ったあの瞬間が原因か……?
まだ知り合ってからそんなに時間は経ってないが……こいつらしくねぇなんて、思う。
それにしても、正義の味方――か。
そんな言葉を聞いて思い浮かぶのは、やはり遊馬だった。
アイツこそ、その言葉に相応しいと思った。
そして、ナッシュとして人間の心を捨て去るためにかつて殺した男――Ⅳ。
どう考えても正義の味方なんてガラじゃねえのに。ギミックパペットなんて気色悪いデッキを使って、性格もお世辞にも褒められたものじゃない。俺にとっては色々と因縁のある奴だっていうのに。
それなのに遊馬だけじゃなくてアイツの顔まで思い浮かぶのは――ナッシュとしての俺を命懸けで神代凌牙に戻そうとしてきたあのデュエルが。二人で魂を分かり合ったあの瞬間が原因か……?
まあそれはともかく――俺はあいつらとは違う。
この俺が正義の味方?それはとんだロマンチストだぜ。
この俺が正義の味方?それはとんだロマンチストだぜ。
「フッ、俺は正義の味方なんかじゃねぇよ。むしろ俺はその真逆だった存在だ。過去にバリアン世界のためにバリアンのナッシュとして――俺を元の道に戻そうとした腐れ縁の奴まで殺した。バリアンとして――世界や友の敵になった男だ」
俺は自分の過去を偽るつもりはねえ。
こんなことを言えばチノが動揺するのはわかりきってるが――だからといって正義の味方ぶったり、取り繕っても仕方ない。――そうだろ、遊馬。Ⅳ。
こういうのは、魂でぶつかり合わねえと意味がないんだって――お前達が俺に教えてくれたことだ。
こんなことを言えばチノが動揺するのはわかりきってるが――だからといって正義の味方ぶったり、取り繕っても仕方ない。――そうだろ、遊馬。Ⅳ。
こういうのは、魂でぶつかり合わねえと意味がないんだって――お前達が俺に教えてくれたことだ。
「そうですか。……凌牙さんの言ってることは、この殺し合いに巻き込まれる前なら、信じなかったと思います。でもこの殺し合いで色々な世界を知り、能力というものが存在する世界があることもわかりました。……カードゲームが色々な用途で使える世界があることも」
チノは険しい表情で俺を睨み付け――
「だから私は凌牙さんの言葉を信じます。あなたがそういう存在なら、ロゼさんを見捨てたことにも納得がいきますからね」
――そうだ。俺はかつて、世界を敵に回した。Ⅳを殺して人間の心に別れを告げたバリアン――ナッシュだ。
結果的に遊馬と全力のデュエルでぶつかり合って――そして俺は死んだ。
死んだはず、だった。
だが俺は遊馬の親友――アストラルによってヌメロン・コードで生き返り……人間、神代凌牙として復活した。
……きっとこれをチノが知ったら、キレ散らかすか――最悪ヌメロン・コードを知ったことで優勝したら願いが叶うっていうのに真実味が増すから、そこはあえて伏せる。
結果的に遊馬と全力のデュエルでぶつかり合って――そして俺は死んだ。
死んだはず、だった。
だが俺は遊馬の親友――アストラルによってヌメロン・コードで生き返り……人間、神代凌牙として復活した。
……きっとこれをチノが知ったら、キレ散らかすか――最悪ヌメロン・コードを知ったことで優勝したら願いが叶うっていうのに真実味が増すから、そこはあえて伏せる。
そんな俺だが……あろうことか遊馬の野郎が先に逝きやがった。
アイツが長生き出来る……なんて能天気なことは思ってねえ。遊馬は致命的に殺し合いなんかに向いてない。
だが……アイツを失って複雑な気持ちになったのは事実だ。……未だにアイツの死に対して納得出来ない部分もある。
だからチノの気持ちは痛いほどわかる。……俺は殺し合いの前から仲間を失ってばかりだった。だから大切な奴らが死ぬ気持ちは、それなりに理解出来るつもりだったが……強引にロゼからチノを引き離した辺り、やっぱり俺は遊馬みたいにはなれないのかもしれねえ。
アイツが長生き出来る……なんて能天気なことは思ってねえ。遊馬は致命的に殺し合いなんかに向いてない。
だが……アイツを失って複雑な気持ちになったのは事実だ。……未だにアイツの死に対して納得出来ない部分もある。
だからチノの気持ちは痛いほどわかる。……俺は殺し合いの前から仲間を失ってばかりだった。だから大切な奴らが死ぬ気持ちは、それなりに理解出来るつもりだったが……強引にロゼからチノを引き離した辺り、やっぱり俺は遊馬みたいにはなれないのかもしれねえ。
もしあの場に居たのが俺じゃなくて遊馬なら、きっと希望の未来を掴み取ってチノもロゼも無事だった――なんてそんなふうにすら思えちまう。……本当に不思議なヤツだ、アイツは。
そんな遊馬のかっとビングを散々見てきたってのに……なんだよ、今の俺のこの有り様は……っ!
たしかにロゼの意志は尊重したし、きっとロゼには悔いがないはずだとは思う。……だから俺は、ロゼを取り残すことにした。
だが、そこにチノの意志は一切含まれてない。むしろチノはロゼと離れることを嫌がっていた。
状況的にどうしようもねえところだが……あそこで遊馬みたいにかっとビング出来なかった自分自身に、イラッとするぜ!
たしかにロゼの意志は尊重したし、きっとロゼには悔いがないはずだとは思う。……だから俺は、ロゼを取り残すことにした。
だが、そこにチノの意志は一切含まれてない。むしろチノはロゼと離れることを嫌がっていた。
状況的にどうしようもねえところだが……あそこで遊馬みたいにかっとビング出来なかった自分自身に、イラッとするぜ!
だからせめてチノだけは守ってやりたいが……生憎とチノは俺と同行することを嫌がってる。
それならデュエルをして、アイツの心に俺の魂を響かせるしかねえ!Ⅳがナッシュだった頃の俺にそうしたようにな!
……だが普通にデュエルを挑んでも、わざわざそれをチノが受ける義理はない。だから俺はあえてアイツを逃さないために、かつてナッシュとしてやってきたことをわざわざ口に出してやった。
それならデュエルをして、アイツの心に俺の魂を響かせるしかねえ!Ⅳがナッシュだった頃の俺にそうしたようにな!
……だが普通にデュエルを挑んでも、わざわざそれをチノが受ける義理はない。だから俺はあえてアイツを逃さないために、かつてナッシュとしてやってきたことをわざわざ口に出してやった。
結果的にチノは俺に対して更に苛立ちを感じてる。
……自分の大切な仲間を見殺しにしたのが元々世界の敵だったヤツなんて知れば、そうなるのが当然だろうな。ここまでは俺の想定通りだ。
……自分の大切な仲間を見殺しにしたのが元々世界の敵だったヤツなんて知れば、そうなるのが当然だろうな。ここまでは俺の想定通りだ。
「凌牙さん。……いや、ナッシュさんでしたか。きっとロゼさんのような優しい参加者を利用して生き残るつもりかもしれませんが……これ以上、犠牲者が増える前に――あなたは私が殺します」
「いくつか訂正するが俺はもうナッシュじゃねえ、神代凌牙だ!そして他の奴らを利用する気もねえ。この殺し合いは――友やロゼの想いを引き継いで俺がぶっ潰す。だから――チノ、お前はロゼの想いを無駄にしないために死なせるわけにはいかねえ!そういうことでチノ、お前にデュエルを挑むぜ!」
――ここまでは想定通り。
そしてチノはきっと俺のデュエルを受けるはずだ。
元々が世界の敵でロゼを見捨てた――なんて考えてるなら俺を放置出来るわけねえからな。
だから俺は今から――デュエルでチノの魂に俺の想いを届かせる!
そしてチノはきっと俺のデュエルを受けるはずだ。
元々が世界の敵でロゼを見捨てた――なんて考えてるなら俺を放置出来るわけねえからな。
だから俺は今から――デュエルでチノの魂に俺の想いを届かせる!
◯
「ロゼさんを見捨てた世界の敵が、よくそんなこと言えますね……!わかりました、ナッシュさん。それならあなたの好きなデュエルで、私があなたを倒します!ロゼさんの敵討ちです!」
私はナッシュさんに対して、もう怒りしかありませんでした。
このままナッシュさんを放置したら、ロゼさんのような犠牲者は増え続けるだけ。最悪、ココアさんやメグさんが巻き添えになる可能性もあります。
それなら今ここで、確実に倒せるうちに私が倒します。
ナッシュさんの手の内はさっきの戦いで多少はわかりました。身体能力も高いようですが、流石に変身した私やロゼさんほどでもありません。
そして武器はカードくらい。つまり前衛がいないこの状況こそ、ナッシュさんを倒すチャンスです……!
このままナッシュさんを放置したら、ロゼさんのような犠牲者は増え続けるだけ。最悪、ココアさんやメグさんが巻き添えになる可能性もあります。
それなら今ここで、確実に倒せるうちに私が倒します。
ナッシュさんの手の内はさっきの戦いで多少はわかりました。身体能力も高いようですが、流石に変身した私やロゼさんほどでもありません。
そして武器はカードくらい。つまり前衛がいないこの状況こそ、ナッシュさんを倒すチャンスです……!
――たっ!
私が駆け出すと同時にナッシュさんはカードを5枚、デッキから引き抜いたのが見えました。
あまりナッシュさんのことは知りませんが、さっきの戦いからしてかなりの実力者であることはわかります。
ですが武器をカードにするということは、必然的に隙が生まれる。カードを出して、セットして、色々と工夫して――そういうことは私やロゼさんのような前衛が居たから出来たことであって、単独ならただの生身の人間。バリアンだかなんだか知りませんが、さっきの戦いから察するに身体能力は普通の人間とそこまで変わらない――少なくとも変身した私やロゼさんほどじゃありません。
あまりナッシュさんのことは知りませんが、さっきの戦いからしてかなりの実力者であることはわかります。
ですが武器をカードにするということは、必然的に隙が生まれる。カードを出して、セットして、色々と工夫して――そういうことは私やロゼさんのような前衛が居たから出来たことであって、単独ならただの生身の人間。バリアンだかなんだか知りませんが、さっきの戦いから察するに身体能力は普通の人間とそこまで変わらない――少なくとも変身した私やロゼさんほどじゃありません。
だからナッシュさんがカードを展開する前に、倒してしまえばいいだけです!
一撃で倒すのが無理でも、デュエルディスクさえ破壊してしまえばナッシュさんの取れる手段は――
一撃で倒すのが無理でも、デュエルディスクさえ破壊してしまえばナッシュさんの取れる手段は――
「チノ。お前は俺がカードを使う前に倒し切ればいい――なんて考えたんだろうな」
「それが、どうしたっていうんですか!」
ナッシュさんは何故か余裕の態度を取ってますが、私は渾身の力で剣を横薙ぎに振り抜きます!
これさえ当たれば、ナッシュさんは――!
これさえ当たれば、ナッシュさんは――!
「甘いぜ、チノ!そんな怒りに任せた攻撃は俺に当たらねえ!それに俺はオービタルなんてロボットとやり合った経験もあるからな!」
――!?
手応えがない、感触。気付けば私の剣は空振りに終わり、ナッシュさんはバックステップすることで難なく私の一撃を避けていました……!
身体能力は私の方が上なのに……どういうことですか!?
手応えがない、感触。気付けば私の剣は空振りに終わり、ナッシュさんはバックステップすることで難なく私の一撃を避けていました……!
身体能力は私の方が上なのに……どういうことですか!?
「俺は浮上するビッグ・ジョーズを召喚!」
――浮上するビッグ・ジョーズ。
ロゼさんと共闘した時にナッシュさんが召喚したモンスター。
巨大な鮫は空中を駆け抜けて――きっとナッシュさんはこれに乗って逃げるつもりでしょうが……
ロゼさんと共闘した時にナッシュさんが召喚したモンスター。
巨大な鮫は空中を駆け抜けて――きっとナッシュさんはこれに乗って逃げるつもりでしょうが……
「逃しません!」
「誰が逃げるなんて言った?これはお前を守るための。手放さないためのデュエルだ!俺は手札からアビス・シャークを特殊召喚!更に効果で手札にカッター・シャークを加えるぜ!」
ナッシュさんのモンスターが二体!?
もしかしてこれは――
もしかしてこれは――
「アビス・シャークはNo.をエクシーズ召喚する時、レベル3か4のモンスターとして扱うことも出来る!二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!眠りし大地と海の力が紡がれしとき新たな命の光が噴出する!エクシーズ召喚!目覚めよ、No.37!希望織竜スパイダー・シャーク!」
あの、モンスターは……!
さっきの戦いでナッシュさんが召喚してどんなことに使ったのか――忘れもしません。
さっきの戦いでナッシュさんが召喚してどんなことに使ったのか――忘れもしません。
「スパイダー・シャーク、ですか――」
「ああ。チノ、お前にとっては最悪なモンスターだろうな」
「そうですね……。そのモンスターはナッシュさんがロゼさんを置き去りにするために使ったモンスターなので……二度と見たくもありませんでした!」
「……だろうな」
「ナッシュさん。あなたは、そうやって私をからかってるんですか……!“希望”なんて名前のついたモンスターで私の希望を――ロゼさんを奪い取る!それがナッシュさんのやり方ですか!」
斬ッ!
怒りに任せて、スパイダー・シャークを剣で斬り裂きました。
たしかな手応えを感じ、スパイダー・シャークを破壊したと確信。
次はナッシュさんを――
怒りに任せて、スパイダー・シャークを剣で斬り裂きました。
たしかな手応えを感じ、スパイダー・シャークを破壊したと確信。
次はナッシュさんを――
「……え?」
斬ったはずのスパイダー・シャークが破壊されてない!?
しっかりと手応えを感じたのに……どういうことですか……!?
しっかりと手応えを感じたのに……どういうことですか……!?
「残念だったな、チノ。No.はNo.でしか倒せねえ。No.じゃないお前がスパイダー・シャークを破壊するのは無理だ」
――は?
なんですか、そのわけのわからない効果は。
なんですか、そのわけのわからない効果は。
「そんなの、ただのインチキじゃないですか!」
私はナッシュさんの言葉を否定するように、スパイダー・シャークに何度も攻撃を仕掛けます。
ナッシュさんがロゼさんを取り残すために召喚したモンスター――スパイダー・シャーク。
この蜘蛛と魚が合体したようなモンスターだけは……私は許せません……!何が希望ですか、何が……!
ナッシュさんがロゼさんを取り残すために召喚したモンスター――スパイダー・シャーク。
この蜘蛛と魚が合体したようなモンスターだけは……私は許せません……!何が希望ですか、何が……!
私は幾度となく、ガムシャラにスパイダー・シャークを斬りつけます!
「チノ。お前が俺やスパイダー・シャークを恨む気持ちはわかる。だが仮に俺を倒した後に何がしたい?お前だけでこの殺し合いを終わらせるのか?それとも――以前、お前がロゼに言ってたように優勝してロゼやお前の友でも生き返らせるのか?」
「私はナッシュさんと違って自分勝手じゃないので、優勝はしません。それはロゼさんと約束しました!」
――そう、私はロゼさんと約束した。
あの時、ロゼさんが抱き締めてくれた温もりを……私はずっと忘れません。
あの時、ロゼさんが抱き締めてくれた温もりを……私はずっと忘れません。
――でも、ロゼさんは約束を破った
「約束、したんです……。それなのにロゼさんは約束を破った……!」
「……あの時の約束、か」
『こんな地獄みたいな状況でまだ足掻けと、ロゼさんはそう言うんですか!?』
『そう。その代わり――チノやココアやメグは私が守る。約束する』
私達はそうやって、ゆびきりげんまんして約束した。
ロゼさんなら絶対にその約束を守ってくれると信じていた。
ロゼさんならずっと私と一緒に居てくれるって……っ!
それなのにロゼさんはその数時間後に、一人だけ残って私とナッシュさんを逃した。大切な約束を破った……!
ロゼさんなら絶対にその約束を守ってくれると信じていた。
ロゼさんならずっと私と一緒に居てくれるって……っ!
それなのにロゼさんはその数時間後に、一人だけ残って私とナッシュさんを逃した。大切な約束を破った……!
それが、どうしても納得いかなくて。
ロゼさんを取り残したという事実がどうしようもなく嫌で……!
だから私はロゼさんを取り残す決断をした凌牙さんが……いや、ナッシュさんを受け入れられません。
ナッシュさんが過去に仲の良い人を殺して、世界の敵になったことがあるなら尚更です!
私達を逃すように言ったのはロゼさんですが……私の意志を無視して逃げるという決断を取ったのはナッシュさんで。
彼の過去を知れば保身のためにそうしたと、余計に考えるのは当たり前じゃないですか?
ロゼさんを取り残したという事実がどうしようもなく嫌で……!
だから私はロゼさんを取り残す決断をした凌牙さんが……いや、ナッシュさんを受け入れられません。
ナッシュさんが過去に仲の良い人を殺して、世界の敵になったことがあるなら尚更です!
私達を逃すように言ったのはロゼさんですが……私の意志を無視して逃げるという決断を取ったのはナッシュさんで。
彼の過去を知れば保身のためにそうしたと、余計に考えるのは当たり前じゃないですか?
「それにチノ、お前は一つ間違えてる」
「私が何を間違ってるって、言うんですか!」
悔しいですがスパイダー・シャークを破壊出来ないという事実は覆せないようです。
それならナッシュさんを狙います……!
とりあえずデュエルが出来なくなるようにデュエルディスク目掛けて剣を――
それならナッシュさんを狙います……!
とりあえずデュエルが出来なくなるようにデュエルディスク目掛けて剣を――
「あめえぜ!アクア・ジェットを俺自身を対象に発動!」
――アクア・ジェット。
これもさっきの戦いで私がナッシュさんに使われたので、わかります。
ナッシュさんはきっとこれで猛スピードで後ろに――
これもさっきの戦いで私がナッシュさんに使われたので、わかります。
ナッシュさんはきっとこれで猛スピードで後ろに――
「――が、は!」
――私が痛みを感じた時には、既にナッシュさんの飛び蹴りが私のお腹を目掛けて放たれていました。
変身した結果、視力も強化されていたのか――私の眼にはナッシュさんが凄まじい速さであえて前に突き進み、私に飛び蹴りを放つ姿が見えたので……なんとか剣を盾にしましたがその反動は凄まじく、私の体は吹き飛んでしまいました……!
変身した結果、視力も強化されていたのか――私の眼にはナッシュさんが凄まじい速さであえて前に突き進み、私に飛び蹴りを放つ姿が見えたので……なんとか剣を盾にしましたがその反動は凄まじく、私の体は吹き飛んでしまいました……!
「これでも今の俺の攻撃力は最低でも1000はある。変身したお前は守備力もそれなりあるだろうが、少しは効いただろ」
「くっ……!」
私の体が吹き飛んだことで両者の間に距離が空きました。それは決闘者を相手にする場合は、最悪の状況です。
ナッシュさんはデッキからカードを引き抜き、私に近寄ってきます。……何を仕掛けてくるつもりですか?
ナッシュさんはデッキからカードを引き抜き、私に近寄ってきます。……何を仕掛けてくるつもりですか?
「お前が警戒するのもわかるが、俺はお前をどうこうする気はねえ。お前がまた暴れない限り――な」
「……わかりませんね。ナッシュさんは私をどうしたいんですか」
「言ったはずだぜ。俺はロゼの意志を引き継いでチノを守るってな」
「ロゼさんを見捨てたあなたが……ですか?笑えない冗談ですね」
「ああ、俺はたしかにロゼを置き去りにした。……そうするしかなかったのは否定しねえし、それがロゼの意志を尊重するってことだと思った。だが……その判断が結果的にロゼと仲良かったお前を傷付けた」
「そこまでわかってるなら、どうして……っ!あなただけが生き残りたいなら、私も置いて行けば良かったじゃないですか!」
「……いや、俺だけが生き残りたいなんて思ってねえよ。だから俺もチノ――お前に悔いが残るなら遊馬みたいにかっとビングして三人で挑んでおけば良かったかもしれねえ、なんて今更思う気持ちもある」
「……世界の敵が今更偽善者気取りですか?」
「……事情を話せば長くなるが、俺は世界の敵といっても仲間のためにそうならざるを得なかった。そんな俺を救ったのがこの殺し合いにも呼ばれてる九十九遊馬だ。……もう死んじまったけどな」
仲間のために世界の敵になった。
そんなことを言われても、スケールが大き過ぎてイマイチ現実味がありません。
ですが“九十九遊馬”さんの名前を呼ぶ時のナッシュさんの瞳は、僅かに憂いを秘めていました。
……ナッシュさんと遊馬さんの関係性は、嘘じゃないのかもしれません。
そんなことを言われても、スケールが大き過ぎてイマイチ現実味がありません。
ですが“九十九遊馬”さんの名前を呼ぶ時のナッシュさんの瞳は、僅かに憂いを秘めていました。
……ナッシュさんと遊馬さんの関係性は、嘘じゃないのかもしれません。
ですが――
「それなら……っ!大切な人が死ぬ気持ちがわかるなら、どうしてあなたはロゼさんを置き去りにしたんですか!私の意志を無視したんですか!!」
私はついナッシュさんの胸ぐらを掴んで、彼を責め立てる。
「……わりぃ。あんな状況に追いやられて、俺は遊馬に教えられた“かっとビング”を見失ってたかもしれねえ。だから悪いのは……俺だ。そこは否定しねえ。――何を言っても合理的に判断した結果、ロゼを置いてきたのは俺自身なんだからな」
「……そうですか。でもあなたは私達三人で戦うことを“無謀な賭け”だとも言いましたよね」
「あの時は俺もまだ落ち着いてなかった。……そしてしばらくお前と無言で居た時に思ったんだよ。そういう状況でも諦めないことこそが“かっとビング”だってな。……あの場面でソレは無謀だったかもしれねえが、少なくとも俺の友ならロゼを一人にしなかったはずだ」
「そう、ですか……」
ナッシュさんの胸ぐらを掴む力が弱まる。
ナッシュさん――いや、凌牙さんは本気でロゼさんや私のことを考えてるのかもしれない。
あの状況で私の心情まで汲み取れ――なんていうのは、烏滸がましい話なのかもしれません。
ナッシュさん――いや、凌牙さんは本気でロゼさんや私のことを考えてるのかもしれない。
あの状況で私の心情まで汲み取れ――なんていうのは、烏滸がましい話なのかもしれません。
でもやっぱり、私は凌牙さんを完全に許すつもりにはなれなくて。
今後どうしたらいいのか、迷ってしまいます。
今後どうしたらいいのか、迷ってしまいます。
「事情はわかりました。……でも私はまだ凌牙さんを完全に許すつもりはありません。信じ切ったつもりも……ありません」
だから私は――正直に本心を打ち明けました。
すると凌牙さんは「フッ……」と笑い――
すると凌牙さんは「フッ……」と笑い――
「それでいい。俺はロゼの一件で勝手に責任感を背負って、お前を守るだけだ。……ロゼが生き残ってたら、そうしてただろうからな」
「そうですか……。ところで凌牙さんの言っていた、一つ間違えてるってなんですか?」
「ロゼが約束を破ったってことだ。アイツは命を賭けてお前を守り切った。そしてアイツの約束はチノ達を守ることだ。……それなら約束は立派に守ってるんじゃねえのか?」
――――。
『そう。その代わり――チノやココアやメグは私が守る。約束する』
ぽろ、ぽろ――。
あれ――雨でも降ってるのでしょうか?
ロゼさんの『約束』を思い出すと、目から水が出てきて――止まりません。
あれ――雨でも降ってるのでしょうか?
ロゼさんの『約束』を思い出すと、目から水が出てきて――止まりません。
「チノ――お前はそれでいい。人は大抵、成長する中で大事なものを忘れちまう。……こんな殺し合いだと尚更だろうな。だからその大切な“絆”を信じる力を――絶対に捨てるんじゃねえぞ」
「……はい。ありがとうございます、凌牙さん……」
雨はまだ、止まらない。
溢れ出した涙は、ひたすらに流れ続ける。
――それでも、いい。
私はこの涙の意味を。ロゼさんとの絆を忘れません。
この涙を抱えて――私は前に進みます。
溢れ出した涙は、ひたすらに流れ続ける。
――それでも、いい。
私はこの涙の意味を。ロゼさんとの絆を忘れません。
この涙を抱えて――私は前に進みます。