♢
橘朔也はチノを探すべく、走り続けていた。
そんな彼が見たのは、涙を流しながらも何かの決意を秘めたような水色髪の可憐な少女。リゼに聞いていた、チノの特徴と一致している。
そしてもう一人の少年は、そんなチノに対してどこか憂いを秘めた瞳で見ている。
おそらく殺し合いに積極的じゃない参加者だろう、と橘は推測した。
しかしエーデルフェルト邸に向かい、しばらく探したがチノの姿はなく――そこから場所を移動した結果、チノを発見出来たのは運が良い。ただの直感だったが、それが的中したというわけだ。
そんな彼が見たのは、涙を流しながらも何かの決意を秘めたような水色髪の可憐な少女。リゼに聞いていた、チノの特徴と一致している。
そしてもう一人の少年は、そんなチノに対してどこか憂いを秘めた瞳で見ている。
おそらく殺し合いに積極的じゃない参加者だろう、と橘は推測した。
しかしエーデルフェルト邸に向かい、しばらく探したがチノの姿はなく――そこから場所を移動した結果、チノを発見出来たのは運が良い。ただの直感だったが、それが的中したというわけだ。
そして橘はチノの肩をとんとん、と叩いて軽く挨拶する。
「ちょっといいかな。君がチノで合ってるか?」
「はい、それはそうですが――って、リゼさん!?」
先程まで涙を流していたチノが、驚きながらも満面の笑みを浮かべる。
まだ涙の一雫こそ残ってるが、それでもとても嬉しそうなのは橘にも、シャークにも伝わる。
たったこれだけで、リゼとチノがどれだけ仲が良いのか痛いほど理解出来た。
だからこそ橘は申し訳なく思い、橘の――いや、リゼの表情が曇る。
まだ涙の一雫こそ残ってるが、それでもとても嬉しそうなのは橘にも、シャークにも伝わる。
たったこれだけで、リゼとチノがどれだけ仲が良いのか痛いほど理解出来た。
だからこそ橘は申し訳なく思い、橘の――いや、リゼの表情が曇る。
「……?どうしたんですか、リゼさん」
「悪いが、チノ……俺はリゼじゃない」
「え――?でもどこからどう見てもリゼさんじゃないですか。声だって、リゼさんそのものです」
「それは――奇跡のようなことが起こって、俺がリゼになったんだ。それにリゼが放送で呼ばれたことは……チノ、君も知ってるだろう」
「たしかにリゼさんは放送で呼ばれていました。でも、奇跡が起こるなんて……」
「……あり得ない話じゃねえな。放送で”奇妙な現象に遭遇した者もいる”なんでわざわざ言うくらいだ、きっとこいつもその一人なんだろう」
シャークが納得したように、口を挟む。
チノはその言葉に疑問がないわけでもないが、本物のリゼならこういう場所でタチの悪い冗談を言うとは思えない。それに放送で嘘の情報を垂れ流すとも思えなかった。
チノはその言葉に疑問がないわけでもないが、本物のリゼならこういう場所でタチの悪い冗談を言うとは思えない。それに放送で嘘の情報を垂れ流すとも思えなかった。
「……わかりました。それにしてもどうしてあなたはリゼさんの見た目で、私のことを知ってるんですか?」
「俺はこの殺し合いでリゼの師匠になった。……リゼはいい弟子だったよ。それで俺はリゼの友達の名前や特徴を聞いていたんだ」
「そうですか……。……それで、リゼさんの最期は……」
「俺や他の参加者を逃すために仮面ライダーに変身して……そして死んだ。俺はリゼを助けたかったのに……何も役に立てなかった……っ!」
「リゼさんも、ロゼさんみたいに……。たしかにリゼさんらしい死に方ですね。最期までリゼさんは、リゼさんでしたか……」
チノはリゼが死んだことを知り、悲しみながらそれでも彼女の死をしっかりと受け止めた。
今のチノは橘を責める気にならない。彼の言い草から、きっと自分のように加勢することが出来ず逃されたと感じたからだ。
似たような境遇の者を責め立てるほど、チノも理不尽ではない。
今のチノは橘を責める気にならない。彼の言い草から、きっと自分のように加勢することが出来ず逃されたと感じたからだ。
似たような境遇の者を責め立てるほど、チノも理不尽ではない。
それから三人は自己紹介と、情報交換をした。
マヤを殺した偉丈夫の死にはチノはもちろんのこと、シャークも胸を撫で下ろした。
そしてチノはロゼについて特に語ることになった。長らく行動し、自分を叱咤激励してくれた大切な――それこそココアほど長時間過ごしたわけじゃないが、まるで姉のような存在だった。
マヤを殺した偉丈夫の死にはチノはもちろんのこと、シャークも胸を撫で下ろした。
そしてチノはロゼについて特に語ることになった。長らく行動し、自分を叱咤激励してくれた大切な――それこそココアほど長時間過ごしたわけじゃないが、まるで姉のような存在だった。
そんな彼女について積極的に話してしまうのは、やはりチノがそれだけロゼを慕っていたからだろう。
「そうか……。チノ、キミも辛い思いをしていたんだな……」
――ぎゅっ。
リゼの姿である橘が、チノを優しく抱き締める。
これは普段の橘ならば、絶対に有り得ない行動だ。そもそも男性が少女を抱き締めるなど、セクハラもいいところ。
しかし今の橘は橘であると同時に、リゼでもある。
生き物の思考回路は脳内のホルモンの比重で変わる――というのは有名な話であるし、それ以上に橘はチノを可哀想だと思った。
そんなチノに今、自分がリゼとしてしてやれることは――こうして彼女を抱き寄せることだったのだ。
これは普段の橘ならば、絶対に有り得ない行動だ。そもそも男性が少女を抱き締めるなど、セクハラもいいところ。
しかし今の橘は橘であると同時に、リゼでもある。
生き物の思考回路は脳内のホルモンの比重で変わる――というのは有名な話であるし、それ以上に橘はチノを可哀想だと思った。
そんなチノに今、自分がリゼとしてしてやれることは――こうして彼女を抱き寄せることだったのだ。
「あ、あの、リゼさん!?……いや、橘さんでしたか……!」
「……大丈夫だ、チノ。今は俺を――いや、私をリゼだと思ってくれてもいい」
「えっ!?きゅっ、急にどうしたんですか!?」
「チノの気持ちは私にも痛いほどわかるよ。私だって……大切な弟子を失ったからさ。それで色々と考えたんだけど……チノの心の傷を少しでも癒すなら、私の出番だろ?」
――橘としては、この判断が正しいかどうかは、わからない。
だがそれでも少しでもチノの心の傷を癒せたら良いと、そう思った。
リゼと過ごした時間はそれほど長いわけじゃない。だが彼女の性格や口調――その在り方は大事な弟子として橘の魂に刻み込まれている。
だがそれでも少しでもチノの心の傷を癒せたら良いと、そう思った。
リゼと過ごした時間はそれほど長いわけじゃない。だが彼女の性格や口調――その在り方は大事な弟子として橘の魂に刻み込まれている。
だから橘はチノを片腕で抱き締めながら、もう片方の手で優しく彼女の頭を撫でてやる。
「……私じゃロゼや私(リゼ)の代わりになれるかわからない。でもこういう時くらい……チノの傷を癒してやりたいんだ」
――きっとリゼなら、そうすると思うから。
「……ありがとう、ございます……。リゼさん……」
チノがギュッとリゼの肉体を抱き締め、顔を埋める。
今まで戦いばかりで、心に擦り傷を幾度となく作ってきた。
それでも殺し合いという場に巻き込まれた関係でひたすら戦い続けて。傷を癒す時間すら、あまり与えられなかった。
しかしそれはチノにとって、これ以上なく辛くて。
誰かが死ぬ度に、心の中で涙を流していたのもまた事実。
マヤの死をロクに悲しむ暇もなく。リゼの死だって、こうして橘から話を聞くまで信じたくなかった。
だから今までは堪えられた。堪えるしかなかった。気を抜けば、その先は死が待っているような状況が多かったから。
しかしロゼの一件はあまりにも大きく。あの状況でロゼが生きてるだなんて、信じたくても信じられない。――現実の無情さを、これでもかというほど見てしまったから。
今まで戦いばかりで、心に擦り傷を幾度となく作ってきた。
それでも殺し合いという場に巻き込まれた関係でひたすら戦い続けて。傷を癒す時間すら、あまり与えられなかった。
しかしそれはチノにとって、これ以上なく辛くて。
誰かが死ぬ度に、心の中で涙を流していたのもまた事実。
マヤの死をロクに悲しむ暇もなく。リゼの死だって、こうして橘から話を聞くまで信じたくなかった。
だから今までは堪えられた。堪えるしかなかった。気を抜けば、その先は死が待っているような状況が多かったから。
しかしロゼの一件はあまりにも大きく。あの状況でロゼが生きてるだなんて、信じたくても信じられない。――現実の無情さを、これでもかというほど見てしまったから。
だからチノは橘に。リゼの肉体に抱きつき、顔を埋めて――「ひっく、ひっく……」と大粒の涙を流しながら、周りの視線も気にしないで大泣きした。
「よしよし。辛かったな、チノ……」
そんなチノを、橘はリゼとして優しい手付きで頭を撫でる。
こんな少女を殺し合いに巻き込んだ主催者達へ怒りが渦巻くと共に、それ以上にチノのことを心から憐れむ。
こんな少女を殺し合いに巻き込んだ主催者達へ怒りが渦巻くと共に、それ以上にチノのことを心から憐れむ。
橘はリゼを失い、チノはロゼを失った。
二人とも、戦いたいのにそれが出来ずに――大切な存在を取り残すことしか出来なかった。
奇しくも似た境遇を味わった二人だからこそ、互いの気持ちがよくわかる。
二人とも、戦いたいのにそれが出来ずに――大切な存在を取り残すことしか出来なかった。
奇しくも似た境遇を味わった二人だからこそ、互いの気持ちがよくわかる。
それなのにこうして“リゼ”として自分を励ましてくれる橘を、チノは本当に優しい人だと思った。
リゼは橘と出会って仮面ライダーというヒーローに憧れたらしいが――その理由がすぐにわかるほどに。
きっと橘だって辛いだろうに。リゼを殺した相手を倒したといっても、未だに引き摺る気持ちもあるし、複雑な想いもあるだろうに――それでも彼は“リゼ”としてチノの傷を癒すことを選んだ。その優しさは自然と周りにも伝わるものだ。
リゼは橘と出会って仮面ライダーというヒーローに憧れたらしいが――その理由がすぐにわかるほどに。
きっと橘だって辛いだろうに。リゼを殺した相手を倒したといっても、未だに引き摺る気持ちもあるし、複雑な想いもあるだろうに――それでも彼は“リゼ”としてチノの傷を癒すことを選んだ。その優しさは自然と周りにも伝わるものだ。
ゆえにこの珍妙とも取れる光景を、シャークとて決して馬鹿にはしない。むしろ橘という男の優しさをこの短時間で思い知った。
なにより今のチノをこの場で最も慰められるのはリゼと交流した結果、彼女の肉体に変化し――そしてチノと同じ痛みを背負う橘が適任だろう。
生憎とシャークは誰かを慰めるとか、そういうことに慣れてるわけじゃない。
なにより今のチノをこの場で最も慰められるのはリゼと交流した結果、彼女の肉体に変化し――そしてチノと同じ痛みを背負う橘が適任だろう。
生憎とシャークは誰かを慰めるとか、そういうことに慣れてるわけじゃない。
「ひっく……。マヤさんも、リゼさんも、零さんもみんな死んでしまって……ロゼさんも死ぬ可能性が高い場所に取り残してしまって……、本当に辛かったです……!」
「ああ、私にも気持ちはわかるよ……。私も二度と会えない後輩や弟子がいる。……もしかしたら私が加勢したら助けられたかもしれないのに、それが出来なかった。そういうのって、辛いよな……」
橘が脳裏に浮かべるのは、剣崎とリゼだ。
永遠の切り札――なんて言えば聞こえは良いが、結局のところ剣崎は橘達の元から消えてしまった。全ては、運命と戦い――勝ってみせるために。
そして相川始という親友を救うために――彼は怪人(ジョーカー)となる道を歩んだ。
それは剣崎の選択であり、他の誰かに強制されたわけじゃない。橘としても決して文句があるわけではない。
……だが、剣崎という仲の良い後輩の仮面ライダーが急に姿を消したのが哀しくないかといえば、嘘になる。
今はまだ手を出していないが、ジョーカーになった剣崎を救うために色々としてみよう――なんて脳裏を過ぎることもあるくらいだ。
剣崎一真は間違いなく正義の味方――ヒーローそのものであり。同時に人間臭い部分もあり、橘としては非常に大切な後輩だった。仲間だった。
だから必然的にこういう場面では、剣崎を頭に浮かべてしまう。
永遠の切り札――なんて言えば聞こえは良いが、結局のところ剣崎は橘達の元から消えてしまった。全ては、運命と戦い――勝ってみせるために。
そして相川始という親友を救うために――彼は怪人(ジョーカー)となる道を歩んだ。
それは剣崎の選択であり、他の誰かに強制されたわけじゃない。橘としても決して文句があるわけではない。
……だが、剣崎という仲の良い後輩の仮面ライダーが急に姿を消したのが哀しくないかといえば、嘘になる。
今はまだ手を出していないが、ジョーカーになった剣崎を救うために色々としてみよう――なんて脳裏を過ぎることもあるくらいだ。
剣崎一真は間違いなく正義の味方――ヒーローそのものであり。同時に人間臭い部分もあり、橘としては非常に大切な後輩だった。仲間だった。
だから必然的にこういう場面では、剣崎を頭に浮かべてしまう。
リゼに関しては言うまでもない。
殺し合いという極限の状況でも友達を守るために、弟子入りを志願してきた勇気ある少女。
マヤという友達を殺されても――それでもへし折れなかった精神の持ち主。恐怖心に怯えてた時の自分なんかよりもよほどすごい、と橘は思う。
そして――こんな自分を一流の仮面ライダーとして認め、仮面ライダーとして在ろうとした少女だ。
バッティングセンターで特訓をしていたことが今では懐かしくも感じる。あの時は平和で、特訓でこそあったが橘にとって楽しい思い出だ。
しかしそんな楽しい時間も――たった一人の危険人物によって全てを壊されてしまった。
殺し合いという極限の状況でも友達を守るために、弟子入りを志願してきた勇気ある少女。
マヤという友達を殺されても――それでもへし折れなかった精神の持ち主。恐怖心に怯えてた時の自分なんかよりもよほどすごい、と橘は思う。
そして――こんな自分を一流の仮面ライダーとして認め、仮面ライダーとして在ろうとした少女だ。
バッティングセンターで特訓をしていたことが今では懐かしくも感じる。あの時は平和で、特訓でこそあったが橘にとって楽しい思い出だ。
しかしそんな楽しい時間も――たった一人の危険人物によって全てを壊されてしまった。
(……ッ!)
思わず、橘は悔しさから歯噛みしてしまう。リゼの端正な顔立ちで。
「リゼさん、どうしましたか?顔が険しいですよ……」
「いや……なんでもない。心配させて悪いな、チノ」
橘はチノの髪を、櫛を解くように丁寧に撫でて、彼女を落ち着かせるように微笑む。
これは自分自身の問題だ。リゼの最期を再び伝えても、チノは嫌な思いをするかもしれない。
結局、橘はリゼと共に鬼舞辻無惨を倒すことは出来たが、それでも当然リゼは蘇らない。死人なのだから。
最期にリゼと会話が出来たことは救いだが――やはりリゼを失った痛恨の思いは消えない。
だが彼女は自分を“最高の弟子”だと言ってくれた。
だから橘はグレたり折れたりせず、仮面ライダーとして生き続けることが出来る。ギャレンに変身出来ずとも、その心は。魂は仮面ライダーだ。
結局、橘はリゼと共に鬼舞辻無惨を倒すことは出来たが、それでも当然リゼは蘇らない。死人なのだから。
最期にリゼと会話が出来たことは救いだが――やはりリゼを失った痛恨の思いは消えない。
だが彼女は自分を“最高の弟子”だと言ってくれた。
だから橘はグレたり折れたりせず、仮面ライダーとして生き続けることが出来る。ギャレンに変身出来ずとも、その心は。魂は仮面ライダーだ。
無惨が乱入してきた時、もしも自分がリゼを助けられたら――なんて何度も思った。師匠なのに弟子を助けられず、あまつさえ救われたことなら何度もある。
しかしリゼが仮面ライダー変身して化け物と勇ましく戦う姿は、橘の脳裏に焼き付いている。あの時のリゼは誰よりも輝いていた。一般人であるにも関わらず、勇気を胸に――これから死ぬであろうことを覚悟して、化け物に挑んだ。
その輝きを橘が忘れることは、未来永劫ないだろう。
しかしリゼが仮面ライダー変身して化け物と勇ましく戦う姿は、橘の脳裏に焼き付いている。あの時のリゼは誰よりも輝いていた。一般人であるにも関わらず、勇気を胸に――これから死ぬであろうことを覚悟して、化け物に挑んだ。
その輝きを橘が忘れることは、未来永劫ないだろう。
リゼを失った無念さはある。自分はそのためにリゼを鍛えたわけじゃないのだから。
だがリゼと再び出会い、共闘し――そして“最高の師匠”と言われたのなら。
橘朔也は天々座理世の最高の師匠として、弟子の輝きに焦がれて正義の道を邁進するのみだ。
だがリゼと再び出会い、共闘し――そして“最高の師匠”と言われたのなら。
橘朔也は天々座理世の最高の師匠として、弟子の輝きに焦がれて正義の道を邁進するのみだ。
「チノ。これはリゼとしてじゃなく俺としての言葉だが……リゼは最高の弟子だった。だから俺もリゼに恥じないように、最高の師匠としてがんばるよ」
「……ありがとうございます、橘さん」
リゼではなく橘としての言葉に、チノは静かに感謝した。
きっとこんなに優しい人が師匠だからこそリゼも命を賭けたのだと――そう思えた。
きっとこんなに優しい人が師匠だからこそリゼも命を賭けたのだと――そう思えた。
「……それにしても強くなったな、チノ。私が守ろうと思ってたけど……今のチノは本当に大きくなった!」
橘はチノについてリゼから色々と聞いている。
最も無力で、こういう場だとあまりにも危険だということも。
これはメグにも言えるが、マヤが死亡して精神的に危ういであろうことも。
だからリゼは“みんなを守る”と余計に意気込んでいたが、どうやらチノはリゼが思っていた以上に成長していたようだ。
だからそんな言葉が橘を通して“リゼの言葉同然”に出てきた。
ゆえにこれは橘の言葉でもあり、リゼの言葉でもある。
最も無力で、こういう場だとあまりにも危険だということも。
これはメグにも言えるが、マヤが死亡して精神的に危ういであろうことも。
だからリゼは“みんなを守る”と余計に意気込んでいたが、どうやらチノはリゼが思っていた以上に成長していたようだ。
だからそんな言葉が橘を通して“リゼの言葉同然”に出てきた。
ゆえにこれは橘の言葉でもあり、リゼの言葉でもある。
「……ロゼさんにも似たようなことを言われましたが、私は強くないですよ」
「そうか?ここまで頑張ってきたチノは十分強いと思うぞ。……強いっていうのは実力だけじゃない。心が伴って初めて強いって言えるんだ」
橘は強さの意味をよく知っている。
剣崎一真だって、最初は実力的にも精神的にも多少は未熟な面があった。しかし彼は仮面ライダーとして戦っていくうちに――心身共に成長して、立派な正義のヒーローになった。
それにリゼもまた、技術こそ強いとは言えなかったが、しかし化け物を相手にみんなを逃すため戦うという心の強さを見せた。
だから、強さとは技術や肉体的なことだけを指すわけじゃない。
剣崎一真だって、最初は実力的にも精神的にも多少は未熟な面があった。しかし彼は仮面ライダーとして戦っていくうちに――心身共に成長して、立派な正義のヒーローになった。
それにリゼもまた、技術こそ強いとは言えなかったが、しかし化け物を相手にみんなを逃すため戦うという心の強さを見せた。
だから、強さとは技術や肉体的なことだけを指すわけじゃない。
「だからさ。強さっていうのは心や魂のことをいうんだと、私は思うんだ」
「心や魂、ですか……」
「そういうこと。だからチノは強い。……今までよく頑張ったな、チノ」
――ギュッ。
リゼの容姿で、橘がチノの顔を再び胸に埋める。
チノは「わ、わわ……」と動揺をしながらも、リゼの肉体の心音を聞いて、少しだけ落ち着いた。
チノは「わ、わわ……」と動揺をしながらも、リゼの肉体の心音を聞いて、少しだけ落ち着いた。
(ああ――これは間違いなく、リゼさんの鼓動です……)
落ち着いた様子のチノを片手で優しく撫でてやると、チノはその小さな背丈で上を向き、リゼの見た目である橘の顔を見る。
チノのその表情は少し幸せで、嬉しそうだった。……照れもあって、頬も染まっているけれど。
チノのその表情は少し幸せで、嬉しそうだった。……照れもあって、頬も染まっているけれど。
「……ありがとうございます。橘さん、リゼさん……。私、お二人とロゼさんの期待を裏切らないようにがんばるので……よろしくお願いします!」
「そんなに畏まらなくてもいいぞ、チノ。それにチノは俺と/私が――守るからな。でも今のチノなら、ただ守るだけじゃなくて……一緒に戦えるかもしれないな!」
「……!はい、がんばります!」
――ぱぁ。
チノの表情に、明るい笑顔が咲いた。
そんなチノの姿を橘は/リゼは優しく微笑み、満足そうに微笑む。
チノの表情に、明るい笑顔が咲いた。
そんなチノの姿を橘は/リゼは優しく微笑み、満足そうに微笑む。
お互いに微笑み、見つめ合うチノと橘を――リゼを眺めて、シャークの頬も自然と緩む。
彼は殺し合いに巻き込まれる前から、何度も仲間を失う経験をしている。命の尊さを理解している。
だからこそ、殺し合いにこんな一幕があっても良いと思う。いつ誰が死ぬかわからないからこそ、だ。
彼は殺し合いに巻き込まれる前から、何度も仲間を失う経験をしている。命の尊さを理解している。
だからこそ、殺し合いにこんな一幕があっても良いと思う。いつ誰が死ぬかわからないからこそ、だ。
「よく言ったな、チノ!でも頑張り過ぎるなよ?」
リゼとなった橘が柔らかな肌でチノを優しく抱き締め、背中を摩ってやる。
チノはその温もりとリゼに背中を摩られる安心感に身を委ね――
チノはその温もりとリゼに背中を摩られる安心感に身を委ね――
「わ、私は子供じゃないですよ。リゼさん」
――ぷくぅ。
今の自分は姉に安らぎを与えられる子供のようだとハッと気付き、頬を膨らますと急いでそんなことを言う。……もっともよっぽど心地好いのか、反論しただけで体勢はそのままなのだが。
「そうだな、中学生は立派な大人だもんな」
橘にとって中学生のチノはまだまだ子供だ。高校生のリゼすら子供だろう。
……中学生がまだ子供だというのはリゼも考えてそうだが、とにかくチノ本人が“子供じゃない”というので話を合わせる。……まあ子供というのは、何かと背伸びをしたがる時期だ。
……中学生がまだ子供だというのはリゼも考えてそうだが、とにかくチノ本人が“子供じゃない”というので話を合わせる。……まあ子供というのは、何かと背伸びをしたがる時期だ。
「でも甘えたい時はいつでも遠慮なく甘えていいからな。こんな殺し合いだし、チノだって辛いことは色々とあるだろうからさ。そういう時は私がハートの包帯になってやる」
「そ……それは、ありがとうございます」
チノが恥ずかしそうに目を逸らし、頬を染める。
その姿は誰がどう見ても、殺し合いの場に相応しくない可愛い少女だった。
その姿は誰がどう見ても、殺し合いの場に相応しくない可愛い少女だった。
そんな二人のやりとりを見てシャークは「フッ……」と静かに笑った。
彼はチノと同じ中学生だが、その過酷な運命が原因なのか、はたまた元からそういう部分があったのか……少し大人びた面がある。不良時代は色々とヤンチャをしていたが、紆余曲折を経て今のシャークはそういう性格に落ち着いたのだ。
彼はチノと同じ中学生だが、その過酷な運命が原因なのか、はたまた元からそういう部分があったのか……少し大人びた面がある。不良時代は色々とヤンチャをしていたが、紆余曲折を経て今のシャークはそういう性格に落ち着いたのだ。
――しかし平和な時間は、そう長く続かない
†
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
三人が居た場所に、突如として巨大な砲撃音が鳴り響き、銃撃の雨が襲う。
「まずい!変身!」
咄嗟に橘はリゼ専用スピアーで変身。
クラススキル“ここは私の見せ場だな!”を使い、スピードを下げる代わりに防御力を大きく上昇。更にスキルの効果で狙われやすくなり、銃撃が全て橘に向かう
クラススキル“ここは私の見せ場だな!”を使い、スピードを下げる代わりに防御力を大きく上昇。更にスキルの効果で狙われやすくなり、銃撃が全て橘に向かう
「橘――!」
「そんな、橘さん――!」
「そんな、橘さん――!」
シャークとチノが橘の心配をして、声をあげる。
せっかく仲良くなれたのに。リゼとして自分を励ましてくれる優しい人だったのに……チノの表情が曇っていく。
せっかく仲良くなれたのに。リゼとして自分を励ましてくれる優しい人だったのに……チノの表情が曇っていく。
「安心しろ、チノ。俺は無事だ」
煙幕が晴れた後――チノの表情を見た橘は彼女の肩を叩いて、微笑んだ。
橘の身体には傷一つ増えてない。片手の盾で銃弾を防ぎ切り、更にクラススキルによって防御力を大きく上昇させていた恩恵だ。
橘の身体には傷一つ増えてない。片手の盾で銃弾を防ぎ切り、更にクラススキルによって防御力を大きく上昇させていた恩恵だ。
それに橘を襲った銃弾は、その轟音の割に威力が低かった。
ゆえに橘はこうして無事なのだ。
ゆえに橘はこうして無事なのだ。
「橘さん……良かったです……っ!」
「ああ。心配をかけて悪かったな、チノ」
橘は抱きついてきたチノの頭を軽く撫でてやると、前方を見据える。
シャークもまた前方を見ていた。
シャークもまた前方を見ていた。
ズドォォン
ズドォォン
ズドォォン
鳴り響く轟音に、思わずチノもそちらを振り向く。
「……もしかしてアイツが俺達を襲ったのか?」
「ああ、そうだろうな。……首輪がないということはNPCの確率も高い」
「えっ、あんなNPCアリですか!?」
「さぁな、それは俺にもわからねえ。だが首輪がないならNPCの確率が高いって橘の考察はあながち間違ってないと思うぜ」
「あの主催者は首輪の解除をまるでゲーム感覚のように語っていた。そんなすぐに外させる気はないだろう。それに普通の参加者にしては図体に反して銃の威力が低過ぎた。……NPCだからあえて弱体化されてるというのが妥当だろうな」
「あくまでこれはプレイヤー同士の殺し合い。NPCはその盛り上げ役に過ぎないってことか」
「なるほど、それならたしかにNPCの可能性が高そうです……」
「それにしても――あのロボット、コアの部分に黒い軍服のような服装の少女が閉じ込められているな。……どういうことだ?」
「よくそんなの見えるな、お前……」
「俺の肉体はリゼそのものだが、スペックは仮面ライダーギャレンと同じなんだ。だからこれくらいの距離なら見える」
「黒い軍服の少女、ですか……」
†
黒い軍服の少女。
その言葉を聞いた時、一人の女性が思い浮かびました。
誰よりも凛々しく、優しくて――血迷っていた私を引き戻してくれた閃刀姫――ロゼさんです。
その言葉を聞いた時、一人の女性が思い浮かびました。
誰よりも凛々しく、優しくて――血迷っていた私を引き戻してくれた閃刀姫――ロゼさんです。
「ああ。何故かその少女は紅い刀を大切そうに抱えているな」
――!
紅い刀。
それは間違いなく、ロゼさんの刀でしょう。
黒い軍服で紅い刀といえば、ロゼさんしか有り得ません!
紅い刀。
それは間違いなく、ロゼさんの刀でしょう。
黒い軍服で紅い刀といえば、ロゼさんしか有り得ません!
「ちなみに髪型はどんな感じですか?髪の色は!?」
「髪型は……一つの髪を二つに分けてる。ツインテールに近い……のか?髪の色は黒に近いが、透き通るような綺麗な灰色だ」
――――!
ここまで聞いて、確信しました。
やはりそのコアに閉じ込められてるのは、ロゼさんです。
私はグッと剣を握る力を強め、NPCのロボットを見据えます。
ここまで聞いて、確信しました。
やはりそのコアに閉じ込められてるのは、ロゼさんです。
私はグッと剣を握る力を強め、NPCのロボットを見据えます。
「……チノ、お前はあのコアの中の女がロゼだと思ってるのか?」
「はい。もしかしたら奇跡的に生き延びて、NPCに取り込まれたのかもしるません」
二人の会話を聞いて、橘さんがハッと気付く。
「ロゼ。チノが熱心に語っていた、あの少女か……!」
そして当然のように橘さんは槍を構える。
ロゼさんのことは情報でしか知らないのに、その瞳に曇りはなかった。
ロゼさんのことは情報でしか知らないのに、その瞳に曇りはなかった。
「橘さん……」
「チノ。俺はリゼの友達を守ると誓った。そしてそんなリゼの友達であるチノが、大切な存在を救おうとしている。俺が戦う理由はそれだけで十分だ」
「ありがとうございます、橘さん!」
「たしかにアイツはロゼかもしれねえが……罠の可能性もあるぜ」
凌牙さんはコアの中に閉じ込められているロゼさんへ、疑うような視線を送る。
たしかに罠の可能性は捨て切れない。ロゼさんが運良く生き残れたなんて、あまりにも都合が良い考えかもしれない。
それでも私は――ロゼさんを手放したくないから。
もう、悔しい思いをするのは嫌だから――!
たしかに罠の可能性は捨て切れない。ロゼさんが運良く生き残れたなんて、あまりにも都合が良い考えかもしれない。
それでも私は――ロゼさんを手放したくないから。
もう、悔しい思いをするのは嫌だから――!
「凌牙さん。あなたはまた、何もしないままそうやって諦めるんですか?ロゼさんを置き去りにしたことを――かっとビング出来なかったことを、繰り返すんですか!?」
“かっとビング”
凌牙さんが語っていたその意志が、まだ凌牙さんの中にあるのなら――きっと私の魂(ことば)も届くはずです!
だから――お願いです、届いてください!
凌牙さんが語っていたその意志が、まだ凌牙さんの中にあるのなら――きっと私の魂(ことば)も届くはずです!
だから――お願いです、届いてください!
「フッ……。かっとビング、か……」
凌牙さんは“かっとビング”という言葉を聞いて、上空を見上げました。
「かっとビング、それは勇気を持って一歩を踏み出すこと。
かっとビング、それはどんなピンチでも決して諦めないこと
かっとビング、それはあらゆる困難にチャレンジすること――だったよな、遊馬」
かっとビング、それはどんなピンチでも決して諦めないこと
かっとビング、それはあらゆる困難にチャレンジすること――だったよな、遊馬」
九十九遊馬さん。
この殺し合いで命を落とした凌牙さんの友達の名前を呼んで――凌牙さんはデュエルディスクを構えました。
この殺し合いで命を落とした凌牙さんの友達の名前を呼んで――凌牙さんはデュエルディスクを構えました。
「わかってるよ、チノ。今度こそ俺は――かっとビングしてみせるぜ!」
私と橘さんと凌牙さんは前方の巨大ロボットを見据える。
そのロボットは、皮肉にもロゼさんと同じ漆黒だった。
まるでロゼさんを取り込むために作られたような、漆黒の巨大ロボット。
そのロボットは、皮肉にもロゼさんと同じ漆黒だった。
まるでロゼさんを取り込むために作られたような、漆黒の巨大ロボット。
……主催者の檀黎斗さんはどう見ても悪趣味な人でしたし、あの人ならこんなNPCを生み出しても不思議ではありません。
それこそあの人なら、ゲーム感覚でこういうNPCを投入するのでしょう。予選だとかテストプレイヤーだとかなんとか言ったり、殺し合いをゲーム扱いしてる時点であの人の印象は最悪です。……まあこんな殺し合いを開いてる時点で最悪といえば、最悪なのですが。
わざわざマヤさんが惨殺される映像を垂れ流すくらいの人です。よっぽど倫理観がないんでしょう。
それこそあの人なら、ゲーム感覚でこういうNPCを投入するのでしょう。予選だとかテストプレイヤーだとかなんとか言ったり、殺し合いをゲーム扱いしてる時点であの人の印象は最悪です。……まあこんな殺し合いを開いてる時点で最悪といえば、最悪なのですが。
わざわざマヤさんが惨殺される映像を垂れ流すくらいの人です。よっぽど倫理観がないんでしょう。
そんな人だからこそ、ロゼさんをピンポイントで狙うNPCなんて嫌がらせ染みた存在を用意しても、違和感はありません。
檀黎斗に対する怒りに、必然的に剣を握る力が強まっていく。
この理不尽を、身勝手なゲームを、悪趣味なNPCを破壊してロゼさんを救いたいという気持ちが昂るのを、感じます。
檀黎斗に対する怒りに、必然的に剣を握る力が強まっていく。
この理不尽を、身勝手なゲームを、悪趣味なNPCを破壊してロゼさんを救いたいという気持ちが昂るのを、感じます。
そして次の瞬間――
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
ロボットの周囲を浮遊している物体が、銃を乱射しました。
狙いは橘さんですが、橘さんは盾を用いてそれらを対処していきます。
狙いは橘さんですが、橘さんは盾を用いてそれらを対処していきます。
そして橘さんの後方に控えた凌牙さんがカードを引き抜きました。
「俺は手札からアクア・ジェットをチノを対象に発動!行け、チノ!」
「ありがとうございます。……わかりました!」
アクア・ジェットの推進力で、私は空を駆ける。
途中でロボットの巨大な刀が私に振り下ろされますが、私はそれをなんとか剣で防ぎます……っ!
途中でロボットの巨大な刀が私に振り下ろされますが、私はそれをなんとか剣で防ぎます……っ!
「……ッ!やっぱり力が強いですね……!」
アクア・ジェットの推進力も加わって私の剣も重みが増しているはずなのに、まるで押し切れない。
このままでは……ッ!
このままでは……ッ!
「まだだ!俺は浮上するビッグ・ジョーズを召喚!更に手札からアビス・シャークを特殊召喚!こいつの効果で手札にカッター・シャークを加えるぜ!
そしてアビス・シャークはNo.をエクシーズ召喚する時、レベル3か4のモンスターとして扱うことも出来る!二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!眠りし大地と海の力が紡がれしとき新たな命の光が噴出する!エクシーズ召喚!目覚めよ、No.37!希望織竜スパイダー・シャーク!」
そしてアビス・シャークはNo.をエクシーズ召喚する時、レベル3か4のモンスターとして扱うことも出来る!二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!眠りし大地と海の力が紡がれしとき新たな命の光が噴出する!エクシーズ召喚!目覚めよ、No.37!希望織竜スパイダー・シャーク!」
――スパイダー・シャーク。
ロゼさんを取り残す状況を作ったモンスターが、皮肉にもまた召喚された
ロゼさんを取り残す状況を作ったモンスターが、皮肉にもまた召喚された
「スパイダー・シャークの効果発動!自分または相手のモンスターの攻撃宣言時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1000ダウンする。NPC、お前の攻撃力を1000下げるぜ!」
凌牙さんが効果宣言をしたと同時に、NPCが刀を振り下ろす力が弱まった……!
これなら……ッ!
これなら……ッ!
「はぁああああ――ッ!」
私はアクア・ジェットの推進力と共に勢い良く刀を弾いた。
♢
「更に俺はアクア・ジェット・サーフェスを発動!墓地の浮上するビッグ・ジョーズを特殊召喚!橘、こいつに乗れ!」
弾幕を塞ぎ切り、相手が次なる銃撃に備えてる間にシャークは既に次の展開を始めていた。
空を飛ぶ鮫を不思議に思い、首を傾げるも橘は迷いなく浮上するビッグ・ジョーズに騎乗。そして槍と盾を構え――
空を飛ぶ鮫を不思議に思い、首を傾げるも橘は迷いなく浮上するビッグ・ジョーズに騎乗。そして槍と盾を構え――
「う、おおおおお――!」
ロボットのNPC――閃刀姫-ジークの周囲を飛び回っている物体に橘は突撃し、次々と槍により撃破していく。
途中で弾の装填が済んだモノが銃撃するが、そこは一流の橘。槍を一度仕舞い、ギャレンラウザーによる銃撃をぶつけることで相殺するとギャレンラウザーを叩き付けて容赦無くぶっ壊す。普通に盾で防げば済む話なのだが、こういう型破りで一流なところも橘の持ち味だ。
途中で弾の装填が済んだモノが銃撃するが、そこは一流の橘。槍を一度仕舞い、ギャレンラウザーによる銃撃をぶつけることで相殺するとギャレンラウザーを叩き付けて容赦無くぶっ壊す。普通に盾で防げば済む話なのだが、こういう型破りで一流なところも橘の持ち味だ。
そうしている間にもシャークの展開は続く。
「アクア・ジェット・サーフェスの効果発動!墓地のこのカードを取り除いて――チノを対象に発動する!」
チノの背中に更にジェット噴射器が装備される。
単純計算、攻撃力2000のプラスだ。
それでもジークを打破出来ないのはこれは普通のデュエルじゃないことや、ジークがロゼを取り込んでいることにある。
下手にジークを破壊したら、ロゼが巻き添えになりかねないからだ。
単純計算、攻撃力2000のプラスだ。
それでもジークを打破出来ないのはこれは普通のデュエルじゃないことや、ジークがロゼを取り込んでいることにある。
下手にジークを破壊したら、ロゼが巻き添えになりかねないからだ。
ガキィィィン!
キィィィィン!
キィィィィン!
チノの剣とジークの剣が、幾度となくぶつかり合う。
橘が銃撃機を破壊しているというのに、銃撃機は次々と復活していく。
幸い、銃撃機は耐久性も攻撃力も低く橘の疲労こそ少ないがあまり良い状況とは言えない。このままでは埒があかない。
そして銃撃機の生成スピードは遂に橘が撃破するスピードを上回り、チノに向かって容赦なく弾丸が降り注ぐ。
橘が銃撃機を破壊しているというのに、銃撃機は次々と復活していく。
幸い、銃撃機は耐久性も攻撃力も低く橘の疲労こそ少ないがあまり良い状況とは言えない。このままでは埒があかない。
そして銃撃機の生成スピードは遂に橘が撃破するスピードを上回り、チノに向かって容赦なく弾丸が降り注ぐ。
「……ッ!く、ぅ……っ!」
NPCの攻撃ゆえに命に別状はない。
不思議とダメージすら皆無だが、それでも痛みは伴う。
なんとも檀黎斗が考えそうな、あまりにも悪辣なNPCだった。
不思議とダメージすら皆無だが、それでも痛みは伴う。
なんとも檀黎斗が考えそうな、あまりにも悪辣なNPCだった。
†
「私、は……」
身体中が痛い。
痛いだけで傷付かないけど、それでもこの激痛に今にも意識を手放してしまいそうだ。
それを強引に意志の力で繋ぎ止める。
気絶しそうなほどの痛みを、なんとかして耐え忍ぶ。
この痛みは強烈だ。身体は何も傷付かないのに、幾つも銃弾が撃ち抜き、その度に激痛が走る。
痛いだけで傷付かないけど、それでもこの激痛に今にも意識を手放してしまいそうだ。
それを強引に意志の力で繋ぎ止める。
気絶しそうなほどの痛みを、なんとかして耐え忍ぶ。
この痛みは強烈だ。身体は何も傷付かないのに、幾つも銃弾が撃ち抜き、その度に激痛が走る。
それでも――
それでも、私は――
それでも、私は――
「私は、まだロゼさんを諦めたくない……ッ!」
巨大なロボットと何度も切り結んで。
銃弾の雨に晒されて。
硝子のような心は今にも砕け散りそうだけど、ハートの包帯でなんとか包み込んで。
銃弾の雨に晒されて。
硝子のような心は今にも砕け散りそうだけど、ハートの包帯でなんとか包み込んで。
「大丈夫か、チノ!」
「はい。私は大丈夫です、橘さん……」
私を心配して大声を出す橘さんに返事をするけれど、激痛で絞り出すような小さな声しか出せない。
凌牙さんも私の方を眺めて――らしくもなく、心配そうな表情をしている。
凌牙さんも私の方を眺めて――らしくもなく、心配そうな表情をしている。
ああ――。
私は私のワガママで、みんなに迷惑をかけちゃってるんですね……。
私は私のワガママで、みんなに迷惑をかけちゃってるんですね……。
でも――。
それでも――。
ロゼさんを救いたいというこのワガママだけは貫きたい気がして――!
それでも――。
ロゼさんを救いたいというこのワガママだけは貫きたい気がして――!
「は、ぁあああああ!!」
私の剣とロボットの巨大な剣が真正面からぶつかり合う。
負けない。負けたくない。ロゼさんを取り戻したい!
負けない。負けたくない。ロゼさんを取り戻したい!
『……チノ。言っていいことと、悪いことがある。チノが自殺なんてしたら、みんなが――私も、悲しむ。だから、やめてほしい』
――貴女がそんなことを言うから、私はこの殺し合いに反抗する道を確固として決めたんです
『こんな地獄みたいな状況でまだ足掻けと、ロゼさんはそう言うんですか!?』
『そう。その代わり――チノやココアやメグは私が守る。約束する』
凌牙さんの言った通り、ロゼさんは約束を守ってくれた。私を守ってくれた。
でも、だからってこんなよくわからないロボットに取り込まれるなんてあんまりじゃないですか……ッ!
でも、だからってこんなよくわからないロボットに取り込まれるなんてあんまりじゃないですか……ッ!
『本当はココアにしてもらいたいだろうけど、今は私で我慢してほしい……』
……我慢?そんなのしていません。
ロゼさんの手は。身体はぽかぽかで暖かくて――クールを気取っていますけど、その太陽のような温もりはココアさんと似ています。だから私はロゼさんを慕ってたんです。信用してたんです。好きだったんです……ッ!
ロゼさんの手は。身体はぽかぽかで暖かくて――クールを気取っていますけど、その太陽のような温もりはココアさんと似ています。だから私はロゼさんを慕ってたんです。信用してたんです。好きだったんです……ッ!
『私も……チノが強くて優しい子で良かった……』
私は自分を“優しい”なんて思いません。増してや強いなんて、有り得ません。
……でも私がロゼさんにそう言われて、嬉しかったのもまた事実です。だから私はロゼさんやココアさん達の前では強くて、優しい子で居たいなんて思いました……!
ロゼさんの言葉は、どれも私にとって特別なんです。
……でも私がロゼさんにそう言われて、嬉しかったのもまた事実です。だから私はロゼさんやココアさん達の前では強くて、優しい子で居たいなんて思いました……!
ロゼさんの言葉は、どれも私にとって特別なんです。
『わわっ!大丈夫ですか!?ロゼさん』
『大丈夫。緊張感が抜けて、よろけただけ』
よろけたロゼさんを私が受け止めた時、不意に私はロゼさんを可愛いなんて思ってしまいました。
……ギャップというものでしょうか。普段は戦士のようにカッコよくてクールなロゼさんが見せた、あまりにも人間らしい行動が何故か可愛くて。やっぱりロゼさんは“戦士”じゃなくて“女の子”なんだと再認識しました。
そしてこれからもカッコよくて、クールで、それなのにたまに可愛い一面がある――そんなロゼさんと一緒に仲良くしたいと思いました。
この殺し合いが終われば、ラビットハウスにお客さんとして来てほしい、とも。……ロゼさんは可愛らしい顔立ちをしているので、意外とラビットハウスの制服が似合って……一緒にラビットハウスで働きたいとも。
……ギャップというものでしょうか。普段は戦士のようにカッコよくてクールなロゼさんが見せた、あまりにも人間らしい行動が何故か可愛くて。やっぱりロゼさんは“戦士”じゃなくて“女の子”なんだと再認識しました。
そしてこれからもカッコよくて、クールで、それなのにたまに可愛い一面がある――そんなロゼさんと一緒に仲良くしたいと思いました。
この殺し合いが終われば、ラビットハウスにお客さんとして来てほしい、とも。……ロゼさんは可愛らしい顔立ちをしているので、意外とラビットハウスの制服が似合って……一緒にラビットハウスで働きたいとも。
だから――だからこんな場所でロゼさんを失うわけにはいかないんです!
どれだけ激痛が走っても、身体さえ大丈夫なら私は諦めずに前を向くことが出来る!――そうですよね、ロゼさん!
どれだけ激痛が走っても、身体さえ大丈夫なら私は諦めずに前を向くことが出来る!――そうですよね、ロゼさん!
瞬間――二つのアクア・ジェットが更に加速。
理由は不明ですが、このチャンスを逃すわけにはいきません……!私は加速したスピードの中──その速さで巨大ロボットの剣を間二つにへし折りました。
理由は不明ですが、このチャンスを逃すわけにはいきません……!私は加速したスピードの中──その速さで巨大ロボットの剣を間二つにへし折りました。
そして私はそのままアクア・ジェットでロゼさんが閉じ込められたコアの部分に向かい――
「……ッ!割れない!?」
コアを割ろうとするも、やたらと頑丈で割れませんでした。
とっておきを使うという手もありますが――中のロゼさんを傷付けてしまう可能性が……。
とっておきを使うという手もありますが――中のロゼさんを傷付けてしまう可能性が……。
「くっ……!一歩でも前へ……!」
私はスキル“一歩でも前へ”を使いましたが、それでもヒビが入った程度。この状況、どうしたら……!
♢
チノが遂にコアの前に辿り着いた……!
だがどうやら、彼女だけではあのコアを割ることは出来ないらしい。
あのコアの中にいるのはロゼ。チノの大切な存在だ。
俺が下手に駆け付けて、槍を刺せばロゼまで巻き添えになる可能性があるし……きっと火力も足りない。
かといって“クラススキル”や“とっておき”は敵全体に対する攻撃だ。ロゼが敵としてカウントされたら、間違いなく巻き添えになるだろう。
あと一歩でロゼを救えるというのに……俺はどうしたらいい……?
俺はなんとしてもロゼを救いたい。……チノに俺のような寂しさを覚えてほしくない。
剣崎はたしかに立派な仮面ライダーだった。紛れもない正義の味方だった。結果的に始が残ったことについても、文句があるわけじゃない。それがアイツの……剣崎の選択だからだ。
きっと今も剣崎はどこかで運命と戦い続けてるんだろうな。ジョーカーという化け物になってしまった、運命と……。
だがどうやら、彼女だけではあのコアを割ることは出来ないらしい。
あのコアの中にいるのはロゼ。チノの大切な存在だ。
俺が下手に駆け付けて、槍を刺せばロゼまで巻き添えになる可能性があるし……きっと火力も足りない。
かといって“クラススキル”や“とっておき”は敵全体に対する攻撃だ。ロゼが敵としてカウントされたら、間違いなく巻き添えになるだろう。
あと一歩でロゼを救えるというのに……俺はどうしたらいい……?
俺はなんとしてもロゼを救いたい。……チノに俺のような寂しさを覚えてほしくない。
剣崎はたしかに立派な仮面ライダーだった。紛れもない正義の味方だった。結果的に始が残ったことについても、文句があるわけじゃない。それがアイツの……剣崎の選択だからだ。
きっと今も剣崎はどこかで運命と戦い続けてるんだろうな。ジョーカーという化け物になってしまった、運命と……。
だがハッキリ言って、やはり俺個人の考えとしては……剣崎と二度と会えないのはあまりにも悲しい。
たとえ剣崎が生きているとわかっていても。不死身のジョーカーだから死なないと理解していても。……やっぱり寂しいものは、寂しいんだ。……リゼや小夜子のように、な。
たとえ剣崎が生きているとわかっていても。不死身のジョーカーだから死なないと理解していても。……やっぱり寂しいものは、寂しいんだ。……リゼや小夜子のように、な。
だからこんな想いをチノにはしてほしくない。リゼや小夜子のように死別することも、剣崎のように出会えなくなることも――経験させたくない。
これはただの俺のワガママだ。こんな危険なNPCは今のうちに倒すのがセオリーだろう。……たとえ犠牲を強いることになっても、そう考える人はいるかもしれない。
だが剣崎なら。アイツなら間違いなくこの運命と戦うと確信出来る。もちろん、リゼも。そして俺は剣崎の先輩で、リゼの師匠だ。だからロゼを犠牲にこのNPCを倒すなんて、有り得ない。
せめて……せめて俺にも何か出来ることがあれば……。
これはただの俺のワガママだ。こんな危険なNPCは今のうちに倒すのがセオリーだろう。……たとえ犠牲を強いることになっても、そう考える人はいるかもしれない。
だが剣崎なら。アイツなら間違いなくこの運命と戦うと確信出来る。もちろん、リゼも。そして俺は剣崎の先輩で、リゼの師匠だ。だからロゼを犠牲にこのNPCを倒すなんて、有り得ない。
せめて……せめて俺にも何か出来ることがあれば……。
なぁ、剣崎。リゼ。お前達ならこんな時にどうする?
『俺はそれでも運命と戦って、ロゼちゃんを救います!それこそが仮面ライダーだと、信じてるから!』
――そうだよな。きっと剣崎ならそういうことを言う。
アイツはそういうやつだ。だから俺は先輩だというのに、後輩のあいつの在り方に影響されて――正義の味方という生き方を教わった
アイツはそういうやつだ。だから俺は先輩だというのに、後輩のあいつの在り方に影響されて――正義の味方という生き方を教わった
『私はなにがなんでもロゼを助ける!なにしろチノの大切な友達だからな。だから意地でもロゼを助けてやる!……って、何かロゼロゼ言うと私が変装してた時と同じ名前だから恥ずかしいな……。
とりあえず、橘さん。橘さんは私にとって最高の師匠だ。それに――橘さんほど優しい“正義の味方”ならもうこの状況を打破する“輝き”を持ってるはずだぞ』
とりあえず、橘さん。橘さんは私にとって最高の師匠だ。それに――橘さんほど優しい“正義の味方”ならもうこの状況を打破する“輝き”を持ってるはずだぞ』
――リゼは本当に最高の弟子だ。今まで平和に暮らしてきたのに、殺し合いに巻き込まれてもなお友達の友達を助けようとする想いを、俺は素直に賞賛するよ。……本当に君が弟子で良かったとすら思える。だが俺は優しくもないし、正義の味方というのも剣崎の受け売りが大きい。……それでも俺を師匠だと慕ってくれるんだろうけどな、キミは。
……それにしても剣崎の声といい、リゼの声といい、何故か俺に聞こえているのはどういうことだ?
それも妙に本人達が言いそうなことを――。
これも檀黎斗が言っていた、俺がリゼになったような“奇妙な現象”の一つなのか……?
それも妙に本人達が言いそうなことを――。
これも檀黎斗が言っていた、俺がリゼになったような“奇妙な現象”の一つなのか……?
それにしてもリゼが言っていた“輝き”とはいったい……?
そんなことを疑問に思った時、またしてもリゼの声が俺の中に響いた。
そんなことを疑問に思った時、またしてもリゼの声が俺の中に響いた。
『がんばれ、橘さん!これでチノに手本を見せてやるんだ!』
瞬間――服装の感触が変わった気がした。
さっきまではスカートを穿いていたのに、今はキュロットパンツを穿いたような締め付けがある。……スカートは締め付けが緩い分、その違いはわかりやすい。
さっきまではスカートを穿いていたのに、今はキュロットパンツを穿いたような締め付けがある。……スカートは締め付けが緩い分、その違いはわかりやすい。
そんな時――凌牙の叫び声が聞こえた。
「橘の服装が急に変わった!?カイトのフォトンチェンジみたいなものか!?」
――俺の服装が変わった?
たしかに何か感触が変わった気がしたが……そういうことなのか?
そして俺の脳裏に一つの“奥義”が浮かび上がる。とっておきとも言える、奥義が。
巨大な銃をコアに放つのはあまりにも過剰火力だが……これなら……ッ!
たしかに何か感触が変わった気がしたが……そういうことなのか?
そして俺の脳裏に一つの“奥義”が浮かび上がる。とっておきとも言える、奥義が。
巨大な銃をコアに放つのはあまりにも過剰火力だが……これなら……ッ!
「チノ、ここは私が戦い方の手本を見せてやる!よく見とけよ!」
そして俺はリゼの口調をあえて真似して――空高くジャンプすると槍の穂先にエネルギーを収束させる。
今はまだ日が昇ってるというのに、不思議と月光のような――そんなエネルギーが穂先に集まるのを感じた。
今はまだ日が昇ってるというのに、不思議と月光のような――そんなエネルギーが穂先に集まるのを感じた。
「これが私の最終兵器――その2だ!」
雄叫びと共に、穂先に集中した月のエネルギーを――解き放つ!
金色のエネルギーは半月型に変化して、ロゼを閉じ込めてるコアに命中!
金色のエネルギーは半月型に変化して、ロゼを閉じ込めてるコアに命中!
――パリンッ!
コアが勢い良くヒビ割れる音が、その場に響いた。
「よし!これでロゼを救えるはずだぞ、チノ!」
俺は着地してガッツポーズすると――この場にいないハズの男の声が耳に入った。
†
『――素晴らしい。レッドプレイヤーとして非常に高い戦力を持つ鬼舞辻無惨の撃破といい、流石は一流の仮面ライダーと呼ばれる実力を秘めているようだな、橘朔也。キミは服装が変わることで違う奥義を発動出来たと思うが……これが“きららファンタジア”の世界の力の片鱗をこのデスゲームに落とし込んだものだ。
ギャレンがジャックフォームやキングフォームになるように、きららファンタジアの世界の力を与えられたプレイヤーもいわゆる“フォームチェンジ”が出来る。そこにはクールタイムも必要ない。ちなみにフォームチェンジに達する条件――それは想いの力、心意か専用武器だ。そしておそらく専用武器すらも心意で生み出すことは出来るだろう。
キミは今、リゼくんのフォームを2つ習得済みだ。一度習得したフォームはクールタイムも必要とせず任意にフォームチェンジも、変身も出来る。ぜひ、その状況に応じて使い分けてくれたまえ。それでは――期待しているよ、橘朔也。ちなみにこの情報を誰かに教えても、デメリットはない。もちろん首輪を爆発したりもしないさ。――キミ達プレイヤーが私たち“ラスボス”と戦うことこそが、このデスゲームに最も期待していることだからね。デスゲーム要素はある意味、ラスボスへ挑むための選別だと考えてくれてもいい』
ギャレンがジャックフォームやキングフォームになるように、きららファンタジアの世界の力を与えられたプレイヤーもいわゆる“フォームチェンジ”が出来る。そこにはクールタイムも必要ない。ちなみにフォームチェンジに達する条件――それは想いの力、心意か専用武器だ。そしておそらく専用武器すらも心意で生み出すことは出来るだろう。
キミは今、リゼくんのフォームを2つ習得済みだ。一度習得したフォームはクールタイムも必要とせず任意にフォームチェンジも、変身も出来る。ぜひ、その状況に応じて使い分けてくれたまえ。それでは――期待しているよ、橘朔也。ちなみにこの情報を誰かに教えても、デメリットはない。もちろん首輪を爆発したりもしないさ。――キミ達プレイヤーが私たち“ラスボス”と戦うことこそが、このデスゲームに最も期待していることだからね。デスゲーム要素はある意味、ラスボスへ挑むための選別だと考えてくれてもいい』
ひとしきり橘の脳内にテレパシーを送ると、茅場は満足そうにモニターの監視を再開した。
ここは仮想空間。いわゆるVRというものに非常に酷似している。……もっとも他の主催者達の思惑もあり、完全なる仮想空間というわけではないのだが。
しかしそういう性質を持つデスゲームだからこそ、ゲームマスター側からプレイヤーにテレパシーを送る、なんてことは造作もないことだ。
そして茅場はあの鬼舞辻無惨を倒し、更なる心意によりきららファンタジアの力を与えられた誰よりも早くフォームチェンジに至った橘に対して非常に興味を持った。
もちろん茅場にとって一番の期待株はキリトなのだが、残念ながら彼は予選以降あまり戦闘をしていない。必然的に他のプレイヤーに目が行きやすくなる。
もっとも同行者の空共々、考察を積み重ねているので完全に期待外れ、というわけではないのだが……。
それにきららファンタジアの力を与えられたプレイヤーは他にもいる。そういうプレイヤーの背中を後押しするためにも、有益な情報を与えてやるのもアリだと思ったのだ。
ここは仮想空間。いわゆるVRというものに非常に酷似している。……もっとも他の主催者達の思惑もあり、完全なる仮想空間というわけではないのだが。
しかしそういう性質を持つデスゲームだからこそ、ゲームマスター側からプレイヤーにテレパシーを送る、なんてことは造作もないことだ。
そして茅場はあの鬼舞辻無惨を倒し、更なる心意によりきららファンタジアの力を与えられた誰よりも早くフォームチェンジに至った橘に対して非常に興味を持った。
もちろん茅場にとって一番の期待株はキリトなのだが、残念ながら彼は予選以降あまり戦闘をしていない。必然的に他のプレイヤーに目が行きやすくなる。
もっとも同行者の空共々、考察を積み重ねているので完全に期待外れ、というわけではないのだが……。
それにきららファンタジアの力を与えられたプレイヤーは他にもいる。そういうプレイヤーの背中を後押しするためにも、有益な情報を与えてやるのもアリだと思ったのだ。
それに橘は何かと爆発力が高い男という情報を得ている。デスゲームのことを“選別”だなんて言い方をしたのは、デスゲームを破壊するという意欲を高めるためだ。橘という男の情報を事前に調査していたし、事実として鬼舞辻無惨を撃破する爆発力を見せたからこそ、茅場は彼に期待した。
このデスゲームで猛威を奮っている野獣先輩がブレイドに変身して他人を殺戮しているという事実もまた、彼が知れば点火するだろうが――生憎と今の野獣先輩だと橘の相手が出来そうにない。だからその情報はあえて伏せた。
このデスゲームで猛威を奮っている野獣先輩がブレイドに変身して他人を殺戮しているという事実もまた、彼が知れば点火するだろうが――生憎と今の野獣先輩だと橘の相手が出来そうにない。だからその情報はあえて伏せた。
†
「ありがとうございます、橘さん!」
橘さんの服装が変わったと思ったら、新しい必殺技でコアのガラスを破壊してくれた。
状況はあまりよくわからないけれど、今はそんなことを考える時間が惜しくて……私はコアに取り込まれていたロゼさんを両手でお姫様抱っこする。
状況はあまりよくわからないけれど、今はそんなことを考える時間が惜しくて……私はコアに取り込まれていたロゼさんを両手でお姫様抱っこする。
「……変身してる影響なのか、不思議とロゼさんが軽く感じますね」
私がコアから地上に降りようとした時――
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
いきなり再生した戦闘機が私を目掛けて大量に乱射を始めました――ッ!
「チノ!」
「だめだ、俺の今の手札じゃ間に合わねえ!」
橘さんと凌牙さんの叫び声。それを掻き消すような、凄まじい銃撃音。
流石に傷が付かないといっても、これだけの弾丸を受けたら――
流石に傷が付かないといっても、これだけの弾丸を受けたら――
「……はな、れて……」
意識を覚醒させたロゼさんは弱々しい声でそう呟きますが、私は断固として首を横に振ります。
そんな私の表情を、不思議そうにロゼさんが眺めます。
そんな私の表情を、不思議そうにロゼさんが眺めます。
「私は絶対に、絶対に――ロゼさんを見捨てません!諦めません!!だから見ていてください――」
今の私に何が出来るかなんて、そんなことはわからない。
それでも――守りたい大切な命があるから!
そう思うだけですごく胸の奥から熱くなって――この“夢”を守ることが出来る気がしました!
だから――
それでも――守りたい大切な命があるから!
そう思うだけですごく胸の奥から熱くなって――この“夢”を守ることが出来る気がしました!
だから――
「私の、更なる変身を!!」
私が声高らかに叫ぶと、それに呼応するように細剣が私の前に突き刺さり、いつの間にか片手には盾を。そして私が細剣を引き抜くと――
「――水着になった!?」
橘さんの服装が急変したように、私の服装もまた急に水着に変わっていました。
「よくわかりませんが……私は、ロゼさんを守りたいです!」
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
ズガガガガッ!
銃弾の雨を盾で防ぎますが、このままでは埒があきません。……というよりも私の不利はきっと変わってないです。
「くっ……!想いだけでは、どうしようもないっていうことですか……!」
私はロゼさんを助けたい。
みんなで最高のハッピーエンドを迎えたいんです!
もうマヤさんやリゼさんは死んでしまいましたが、それでも私は……ッ!
みんなで最高のハッピーエンドを迎えたいんです!
もうマヤさんやリゼさんは死んでしまいましたが、それでも私は……ッ!
「……待たせたな、チノよ。ここからはワシのステージじゃ」
この声は……おじいちゃん!?
でも、どうして!?この殺し合いにおじいちゃんは……ティッピーは……。
でも、どうして!?この殺し合いにおじいちゃんは……ティッピーは……。
「チノ。ワシはお前の新たな“とっておき”によって一時的に生み出された。我が孫が本気で誰かを守りたいのなら――ワシも力を貸そう!」
瞬間――私とロゼさんの前に、巨大な岩の壁が作られました。
そして不思議と少しの時間だけはダメージを受けないという、確信。――私自身もわからない能力なのに、能力の内容がスッと頭の中に入ってきます。
私の想いの力がこの奇跡を起こしたというの、なら――!
そして不思議と少しの時間だけはダメージを受けないという、確信。――私自身もわからない能力なのに、能力の内容がスッと頭の中に入ってきます。
私の想いの力がこの奇跡を起こしたというの、なら――!
「私は――もう二度と誰も失いません!ちぇりゃあああああ!!」
私はロゼさんを岩の後ろにそっと安静に降ろすと、戦闘機に向かってジャンプして――細剣で突き刺します。
変身して身体能力が上がっている影響なのか、ジャンプするだけで戦闘機の上に乗り移り、細剣で破壊して、また次の戦闘機を破壊して――。
変身して身体能力が上がっている影響なのか、ジャンプするだけで戦闘機の上に乗り移り、細剣で破壊して、また次の戦闘機を破壊して――。
そうしているうちに戦闘機は全て破壊されました。
「よくやった、チノ!今すぐロゼを抱えてそのロボから降りろ!トドメは――俺が決める!」
凌牙さんは私を信用してくれていたのか、既に大型モンスター――アビス・スプラッシュをエクシーズ召喚していました。
そして私がロゼさんを抱えて、巨大ロボットから着地すると同時に――
そして私がロゼさんを抱えて、巨大ロボットから着地すると同時に――
「アビス・スプラッシュの効果発動!
オーバーレイ・ユニットを一つ使い、攻撃力を二倍にする!アビス・スプラッシュで敵NPCを攻撃!ファイナル・フォール!!」
オーバーレイ・ユニットを一つ使い、攻撃力を二倍にする!アビス・スプラッシュで敵NPCを攻撃!ファイナル・フォール!!」
凌牙さんの攻撃宣言を受けたアビス・スプラッシュは巨大なロボットを攻撃し――巨大なロボットはガラス細工の破片のように、見事に砕け散りました!
「やりましたね、凌牙さん!橘さん!」
「ああ。チノもよく頑張ったぞ!」
満面の笑みで私を撫でてくれる、橘さん。
リゼさんの姿をした橘さんに撫でられると、不思議とリゼさんに撫でられてる気がしてなんだか嬉しくなります。
……まあもう二度と“本物の”リゼさんと接することは出来ませんが、それでも橘さんの優しさが心地好いです。
リゼさんの姿をした橘さんに撫でられると、不思議とリゼさんに撫でられてる気がしてなんだか嬉しくなります。
……まあもう二度と“本物の”リゼさんと接することは出来ませんが、それでも橘さんの優しさが心地好いです。
「これで俺も少しは遊馬やチノに顔向け出来るか……」
そんなふうに、凌牙さんがボソリと呟く。
きっと凌牙さんはロゼさんを一人にするという苦渋の決断をした挙句、私に色々と言われて……多大な責任感をかけてしまったのかもしれません。
……今思えば、私は凌牙さんに酷いことを言い過ぎてしまいました。
だから……。
きっと凌牙さんはロゼさんを一人にするという苦渋の決断をした挙句、私に色々と言われて……多大な責任感をかけてしまったのかもしれません。
……今思えば、私は凌牙さんに酷いことを言い過ぎてしまいました。
だから……。
「さっきは色々と責めてしまってすいません、凌牙さん」
「フッ、気にするな。別にチノは悪くねえし――結果的にロゼも助かった。それでいいだろ?」
凌牙さんは少しだけ頬を緩めて、私を許してくれました。
あれだけ酷いことを言ったのに……。もしかしたら凌牙さんは態度のせいでわかりづらいだけで、いい人なのかもしれません。……そんな人を責め立てた自分が本当にみっともなくて、申し訳ないです……。
あれだけ酷いことを言ったのに……。もしかしたら凌牙さんは態度のせいでわかりづらいだけで、いい人なのかもしれません。……そんな人を責め立てた自分が本当にみっともなくて、申し訳ないです……。
「ふぅ……ふぅ……」
「ろ、ロゼさん!大丈夫ですか!?」
疲れ切ったように、ゆっくりと息を吐くロゼさんを見て、咄嗟に近寄る。
やっぱりあのNPCはロゼさんにいっぱい負担を掛けてたのでしょうか……。
私はロゼさんにしっかり意識を保ってもらうように、ロゼさんの身体を揺らしました。
やっぱりあのNPCはロゼさんにいっぱい負担を掛けてたのでしょうか……。
私はロゼさんにしっかり意識を保ってもらうように、ロゼさんの身体を揺らしました。
「私です、チノです!しっかりしてください、ロゼさん!」
「チ、ノ……?……私の知らない、名前……」
「え……」
知らない?
ロゼさんが、私を――?
ロゼさんが、私を――?
「こ、こんな時に笑えない冗談はやめてください、ロゼさん。ロゼさんが私を忘れるなんて、そんなこと――」
「……あなた、誰?」
「――――」
ロゼさんの心底困惑するような声に、私は言葉が詰まりました。
……それは私だけじゃなくて。
橘さんも、凌牙さんも――誰もが言葉を、詰まらせていました。
……それは私だけじゃなくて。
橘さんも、凌牙さんも――誰もが言葉を、詰まらせていました。
「ロゼさん……。あなたはロゼさんですよね……?」
「うん。私は閃刀姫-ロゼ。このデスゲームのギミック――つまりNPCとして選ばれた存在」
「お、おかしなことを言いますね。ロゼさんは参加者側だったじゃないですか。ほら、この名簿にも載ってますよ!」
私が名簿をロゼさんに見せると、ロゼさんはふる、ふるとゆっくり首を横に振った。
「それはきっと……違う個体のロゼ。私ではない」
「そ、んな……」
――ガシャン。
私はショックのあまり、思わず握っていた細剣と盾を落下させてしまった。
たしかに目の前の人は、ロゼさんで間違いない。でもこのロゼさんは私達と思い出を積み上げてきたロゼさんじゃなくて、違う個体のロゼさんで――。
私はショックのあまり、思わず握っていた細剣と盾を落下させてしまった。
たしかに目の前の人は、ロゼさんで間違いない。でもこのロゼさんは私達と思い出を積み上げてきたロゼさんじゃなくて、違う個体のロゼさんで――。
「こんなのって……ありですか……」
振り絞るような声しか、私の喉から出てこなくて。
橘さんは心配そうに私を見詰めて――そして凌牙さんはデュエルディスクを構えたまま、ロゼさんを見据える。
橘さんは心配そうに私を見詰めて――そして凌牙さんはデュエルディスクを構えたまま、ロゼさんを見据える。
「……そういう理不尽も、檀黎斗は楽しんでる。あなたが別個体の私と何があったのかわからないけど……私はNPC。NPCには、参加者を襲う義務がある……」
「ふざけるな!それならチノは、この子は何のために戦ったというんだ!全てロゼを取り戻すためにチノはがんばったのに……その言い方はないだろ!!」
橘さんが、本心から怒りを露わにする。
それはまるでこの殺し合いを仕組んだ人たちにぶつけるように――。
それはまるでこの殺し合いを仕組んだ人たちにぶつけるように――。
「それはあなた達の事情。私は知らない」
そしてロゼさんは紅い刀を握り締めて、一歩、一歩と私に近づいて来る。
きっとこの人は本当に私の知ってるロゼさんじゃなくて、NPCなのに。
頭ではそうわかってるのに、それでもやっぱりロゼさんと戦うことには抵抗があって――
きっとこの人は本当に私の知ってるロゼさんじゃなくて、NPCなのに。
頭ではそうわかってるのに、それでもやっぱりロゼさんと戦うことには抵抗があって――
「――させるかよ!ロゼ、俺はもう一人のお前のためにチノを犠牲にさせねえぜ!
俺のターン!バトルフェイズだ!俺の場のアビス・スプラッシュで閃刀姫-ロゼを攻撃!ファイナル・フォール!!」
俺のターン!バトルフェイズだ!俺の場のアビス・スプラッシュで閃刀姫-ロゼを攻撃!ファイナル・フォール!!」
――凌牙さんの攻撃宣言を受けたアビス・スプラッシュがNPCのロゼさんを容赦無く攻撃する。
そしてロゼさんは鮮血を舞い散らせて――その場に倒れた……。
そしてロゼさんは鮮血を舞い散らせて――その場に倒れた……。
「ロゼさん、ロゼさん……っ!」
私は急いでロゼさんに近付いて、祈るように手を握る。
「チノ……」
「離れろ、チノ!そいつは俺達の知ってるロゼじゃねえ!」
橘さんの憐れむような声と、凌牙さんの叱咤が聞こえる。
それでも私は、ロゼさんの手を離さなかった。
それでも私は、ロゼさんの手を離さなかった。