◆
二度目の感覚だった。
腕が動かせなくなり、動かす為の部位が崩れ落ち。
自分の体なのに、自由が微塵も利かなくなって。
不思議と意識だけはハッキリする、奇怪な状態に黒死牟は覚えがある。
腕が動かせなくなり、動かす為の部位が崩れ落ち。
自分の体なのに、自由が微塵も利かなくなって。
不思議と意識だけはハッキリする、奇怪な状態に黒死牟は覚えがある。
一度目がどんなだったか。
思い出したくもないのに、脳へ刻み込まれている。
忘れてしまえば楽であっても、忘れられぬから鬱屈とした思いを抱え込んだままだ。
思い出したくもないのに、脳へ刻み込まれている。
忘れてしまえば楽であっても、忘れられぬから鬱屈とした思いを抱え込んだままだ。
あれだけ執着し捨てられなかったものを、愚かにも自ら捨て去り。
自覚した時には後の祭り、ただ落ちていくのみ。
鉄球に潰され、暴風に斬り刻まれ。
己の生は何もかもが無意味に過ぎぬと、思い知った末に。
四百年以上続いた男の妄執は、線香が落ちるように呆気なく終わりを迎えた。
自覚した時には後の祭り、ただ落ちていくのみ。
鉄球に潰され、暴風に斬り刻まれ。
己の生は何もかもが無意味に過ぎぬと、思い知った末に。
四百年以上続いた男の妄執は、線香が落ちるように呆気なく終わりを迎えた。
そして何の因果か、異界の屠り合いに招かれて。
あるべき形へ戻るかの如く、幕切れとなった。
当然の話だ、所詮我が身は神が気まぐれで地獄から拾い上げたに過ぎない。
何も為せず、二度目の生に意味を見出せず。
地獄行を先延ばしにされた男が、今度こそ獄卒達の責め苦を受ける時が来ただけ。
何ともつまらない、初めから決められた結末。
あるべき形へ戻るかの如く、幕切れとなった。
当然の話だ、所詮我が身は神が気まぐれで地獄から拾い上げたに過ぎない。
何も為せず、二度目の生に意味を見出せず。
地獄行を先延ばしにされた男が、今度こそ獄卒達の責め苦を受ける時が来ただけ。
何ともつまらない、初めから決められた結末。
縁壱に斬られ、赤き月夜の再演により滅ぶでもない。
傀儡となった縁壱を前に、答えへ辿り着くなど以ての外。
始祖をも超える化生の手で、塵を掃うように蹴散らされる。
そんなものが、終わりか。
傀儡となった縁壱を前に、答えへ辿り着くなど以ての外。
始祖をも超える化生の手で、塵を掃うように蹴散らされる。
そんなものが、終わりか。
生きた全部が虚無の鬼には、似合いの最期ではなかろうか。
何を思おうと、屠り合いと自分は最早無関係。
僅かな微睡に身を委ね、目が覚めれば閻魔が物知り顔で罪状を並べ立てる。
だがもうどうだっていい、如何なる灼熱地獄が待っていようとも。
あの憎たらしい日輪の熱さに及ぶものなど――
何を思おうと、屠り合いと自分は最早無関係。
僅かな微睡に身を委ね、目が覚めれば閻魔が物知り顔で罪状を並べ立てる。
だがもうどうだっていい、如何なる灼熱地獄が待っていようとも。
あの憎たらしい日輪の熱さに及ぶものなど――
「終われる、ものか……!」
終われない、終わってたまるか。
こんな最後を受け入れて、納得出来る筈がない。
こんな最後を受け入れて、納得出来る筈がない。
憎まなかった瞬間は一度もない。
死を願った数なんて、覚えていられない。
頼むから消えろと頭を掻き毟り、存在そのものを消し去りたくてたまらなかった。
それでも、決して忘れはしなかった。
弟の存在は死した後でも、黒死牟から離れなかった。
死を願った数なんて、覚えていられない。
頼むから消えろと頭を掻き毟り、存在そのものを消し去りたくてたまらなかった。
それでも、決して忘れはしなかった。
弟の存在は死した後でも、黒死牟から離れなかった。
いいや、捨てられなかった。
善悪どちらへ断じるかと言うなら、誰が見ても後者。
正しき在り方と程遠いことくらい、理解出来ない自分じゃあない。
永劫終わらぬ地獄での日々が待ち受けても、当然だと黒死牟自身が思っている。
正しき在り方と程遠いことくらい、理解出来ない自分じゃあない。
永劫終わらぬ地獄での日々が待ち受けても、当然だと黒死牟自身が思っている。
だとしても、これが己だ。
憎しみも、嫉妬も、劣等感も。
焦がれ続けてやまない、灰すら残らぬ程に熱いあの日輪を。
弟の背に追い付きたいと手を伸ばした自分は、偽りではない。
憎しみも、嫉妬も、劣等感も。
焦がれ続けてやまない、灰すら残らぬ程に熱いあの日輪を。
弟の背に追い付きたいと手を伸ばした自分は、偽りではない。
何度愚かと吐き捨てられようと、間違いだと侮蔑を投げられようと。
この憎悪/羨望こそが、己なのだ。
この憎悪/羨望こそが、己なのだ。
黒死牟を黒死牟たらしめる、何者にも奪わせない心火なれば。
終わりになど、させてたまるものか。
終わりになど、させてたまるものか。
冥界へを引き摺る魔手が伸びるなら、斬り裂き振り払おう。
この身を蝕む熱さがなんだという、ここで膝を付く程度の者が縁壱に指先だけでも触れられる訳があるか。
この身を蝕む熱さがなんだという、ここで膝を付く程度の者が縁壱に指先だけでも触れられる訳があるか。
“たかが”始祖の呪いで止められる程、縁壱へ抱く魂の熱は小さなものだったか?
否、断じて否。
滅んで尚も纏わり付く枷が、地の底へ落とさんと引っ張られる。
ここで死ねと嘯く亡者どもが、道を阻み一歩たりとも行かせまいとし、
滅んで尚も纏わり付く枷が、地の底へ落とさんと引っ張られる。
ここで死ねと嘯く亡者どもが、道を阻み一歩たりとも行かせまいとし、
――『黒死牟さん』
か細くも、確かに鼓膜が拾った声に。
頼りない細い指で、手を掴まれる感触に。
こんな状況でありながら、呆れを籠めてため息を零す。
頼りない細い指で、手を掴まれる感触に。
こんな状況でありながら、呆れを籠めてため息を零す。
声色へ滲ませたのは、己を喪いたくない懇願であり。
決して死なせないと籠めた決意であると、分かってしまった。
鬼狩りどもが見れば、心まで囚われた故に殺す他救う手立て無しと。
そう言い切るのが安易に想像出来るくらいには、やはり正気の沙汰とは思えない。
決して死なせないと籠めた決意であると、分かってしまった。
鬼狩りどもが見れば、心まで囚われた故に殺す他救う手立て無しと。
そう言い切るのが安易に想像出来るくらいには、やはり正気の沙汰とは思えない。
ああしかし、理解出来ぬと煩わしさが燻る一方で。
この局面でそういった真似に出るのが、この娘であると。
迷わず救いの手を伸ばせる、それこそがこの娘だと。
この局面でそういった真似に出るのが、この娘であると。
迷わず救いの手を伸ばせる、それこそがこの娘だと。
環いろはなら、そうするだろうなと。
納得を抱いた己も全く以て、理解の遥か遠くに感じられてならない。
納得を抱いた己も全く以て、理解の遥か遠くに感じられてならない。
放って置けば延々と泣き続けるだろう娘へ、もう一度呆れを抱き。
ただ不思議と苛立ちは薄い、そんな黒死牟自身にも不可解な顔を作り。
ただ不思議と苛立ちは薄い、そんな黒死牟自身にも不可解な顔を作り。
幕切れを飾るのが小娘の涙では、締まらんだろうと。
どこか言い訳染みた言を、己の内に閉じ込めて。
どこか言い訳染みた言を、己の内に閉じ込めて。
伸ばされた手を、握り返した。
○
『はぁ?』
間の抜けた一言が口から出るも、こんなものを見たら当たり前だと。
内心で反論する声を余所に、エボルは自分自身の目を疑った。
視覚センサーは故障しておらず、突然幻覚を見た訳でもあるまいに。
レンズを通じ視界に映る光景は間違いなく、現実であり。
余計に飲み込むのへ、少しばかりの時間を要した。
内心で反論する声を余所に、エボルは自分自身の目を疑った。
視覚センサーは故障しておらず、突然幻覚を見た訳でもあるまいに。
レンズを通じ視界に映る光景は間違いなく、現実であり。
余計に飲み込むのへ、少しばかりの時間を要した。
「黒死牟さん……?」
信じられないのはいろはも同じだ。
片腕で自分を抱き、もう片方の手で魔皇剣を振るった彼は。
エボルの放った一撃を弾き返し、またしても自分を助けてくれた彼は。
黒死牟が変わらぬ姿で、崩壊の末路より復活を果たした。
片腕で自分を抱き、もう片方の手で魔皇剣を振るった彼は。
エボルの放った一撃を弾き返し、またしても自分を助けてくれた彼は。
黒死牟が変わらぬ姿で、崩壊の末路より復活を果たした。
いや、全てが先までと同じというのは語弊がある。
結んだ黒髪も、身に纏った古風な着物も、火炎を思わせる痣も。
彼が鬼である何よりの証、三対六つの眼も変わらない。
しかし今や、最後の上弦だと示す漢数字は消え失せ。
屠り合いの参加者を縛り、神に命を握られた証拠。
首輪は肉体の崩壊に伴い支えを失い、地面へ転がったままだ。
結んだ黒髪も、身に纏った古風な着物も、火炎を思わせる痣も。
彼が鬼である何よりの証、三対六つの眼も変わらない。
しかし今や、最後の上弦だと示す漢数字は消え失せ。
屠り合いの参加者を縛り、神に命を握られた証拠。
首輪は肉体の崩壊に伴い支えを失い、地面へ転がったままだ。
決闘者や守りし者は絆を信じ、超人類が憎悪を滾らせたように。
善悪の垣根を飛び越え、想いを貫いた者にこそ心意システムは微笑む。
消滅寸前に陥った黒死牟が抱いたのは、弟への執着。
憎悪はある、嫉妬もある、しかし何より――誰よりも羨望を抱くが故に。
正しさだけでは測れない、自分自身を形作るものを今一度再認識し。
弟の背を追う道を阻むものを、振り払う為の体を心意は齎した。
始祖が千年掛かっても終ぞ手に入らなかった、太陽の克服。
鬼との因縁を終わらせる歯車となった兄妹の、妹が辿り着いた始祖の呪縛からの完全な解放を遂げた。
善悪の垣根を飛び越え、想いを貫いた者にこそ心意システムは微笑む。
消滅寸前に陥った黒死牟が抱いたのは、弟への執着。
憎悪はある、嫉妬もある、しかし何より――誰よりも羨望を抱くが故に。
正しさだけでは測れない、自分自身を形作るものを今一度再認識し。
弟の背を追う道を阻むものを、振り払う為の体を心意は齎した。
始祖が千年掛かっても終ぞ手に入らなかった、太陽の克服。
鬼との因縁を終わらせる歯車となった兄妹の、妹が辿り着いた始祖の呪縛からの完全な解放を遂げた。
陽光では死なぬ身となり、更にその寸前。
肉体が崩れ落ちた事で首輪も外れたが、つまりそれは。
上弦の生命力に掛けられた、制限も必然的に解除。
完全に塵と還る前に太陽を克服したならば、再生能力は瞬時に効果を表す。
肉体が崩れ落ちた事で首輪も外れたが、つまりそれは。
上弦の生命力に掛けられた、制限も必然的に解除。
完全に塵と還る前に太陽を克服したならば、再生能力は瞬時に効果を表す。
とはいえ如何に心意システムと言えど、消滅間近の者にまで確実に作用する保障はない。
だが黒死牟の死を望まぬ者、いろはが固有魔法の発動を止めなかったことが。
消えゆく命を1秒でも長く繋ぎ止め、諦めなかった事実が。
終焉の運命(さだめ)を、粉微塵に砕いたのだ。
だが黒死牟の死を望まぬ者、いろはが固有魔法の発動を止めなかったことが。
消えゆく命を1秒でも長く繋ぎ止め、諦めなかった事実が。
終焉の運命(さだめ)を、粉微塵に砕いたのだ。
「何を惚けている……」
六眼で星狩りを射抜きつつ、言葉は魔法少女へ向けられる。
頬を濡らし、信じられないように見上げる彼女へ。
ぶっきらぼうに告げた。
頬を濡らし、信じられないように見上げる彼女へ。
ぶっきらぼうに告げた。
「戻って来いと……お前が言ったのだろう……」
「――!はい……!」
「――!はい……!」
彼を死なせなかったこと、今度は間に合ったこと。
自分の声を黒死牟が聞き届けてくれたこと、全部が合わさり。
先程までとは違う意味の涙が、頬を伝う。
込み上げる想いへ委ねそうになるも、状況は好転したとは言い難い。
当然黒死牟も理解しており、いろはが自分で立つと得物を構える。
自分の声を黒死牟が聞き届けてくれたこと、全部が合わさり。
先程までとは違う意味の涙が、頬を伝う。
込み上げる想いへ委ねそうになるも、状況は好転したとは言い難い。
当然黒死牟も理解しており、いろはが自分で立つと得物を構える。
ホオオオと独自の音を響かせ、呼吸により指先まで力が漲る。
頬へ浮かぶは痣以外に、ステンドグラス状の模様。
細胞一つ一つへ魔皇力を張り巡らせ、生前を超える領域に足を踏み入れた。
抜き放つは妖刀・虚哭神去、魔皇剣・ザンバットソード。
頬へ浮かぶは痣以外に、ステンドグラス状の模様。
細胞一つ一つへ魔皇力を張り巡らせ、生前を超える領域に足を踏み入れた。
抜き放つは妖刀・虚哭神去、魔皇剣・ザンバットソード。
『おいおい!一体どんな手品を使った?』
「戯言を吐き散らすだけの頭で……考えてみろ……」
「戯言を吐き散らすだけの頭で……考えてみろ……」
戦闘再開は言葉でなく、刃に乗せて伝える。
袈裟斬りを仕掛けた妖刀は、数ミリ身を捩り回避。
続けて魔剣による突きを放つも、敵の刃が妨害。
パーフェクトゼクターと弾き合い、互いに休む暇を与えず得物を振るう。
袈裟斬りを仕掛けた妖刀は、数ミリ身を捩り回避。
続けて魔剣による突きを放つも、敵の刃が妨害。
パーフェクトゼクターと弾き合い、互いに休む暇を与えず得物を振るう。
『ちったあ楽しく会話しようって気がないのかねぇ』
軽薄な口調と裏腹に、エボルの動きは澱みがない。
四方八方より襲い掛かる刃を、装甲へ掠らせもせず。
躱し、受け流し、時に自身の得物で防ぐ。
鬼が繰り出す双剣は嵐の如く苛烈極まるも、星狩りに届く気配は未だ無し。
一刀振るう毎に生み出す月輪は、先程から敵の全身を砕かんと削っているが。
現実に装甲が受けた損傷はゼロ、効かない攻撃は捨て置いて構わない。
そう軽く見られ、精々が小蝿のように鬱陶しい程度に過ぎない。
四方八方より襲い掛かる刃を、装甲へ掠らせもせず。
躱し、受け流し、時に自身の得物で防ぐ。
鬼が繰り出す双剣は嵐の如く苛烈極まるも、星狩りに届く気配は未だ無し。
一刀振るう毎に生み出す月輪は、先程から敵の全身を砕かんと削っているが。
現実に装甲が受けた損傷はゼロ、効かない攻撃は捨て置いて構わない。
そう軽く見られ、精々が小蝿のように鬱陶しい程度に過ぎない。
届かぬと、改めて力の差を真正面よりぶつけられる。
陽光を克服したとて、劇的な強化を受けたのに非ず。
弐以下の上弦を寄せ付けない強さを持とうと、星狩りを前にすれば等しく塵芥。
振るって、振るって、剣を振るい続けて。
いつかは勝機が見出せる、お優しい相手な訳があるか。
陽光を克服したとて、劇的な強化を受けたのに非ず。
弐以下の上弦を寄せ付けない強さを持とうと、星狩りを前にすれば等しく塵芥。
振るって、振るって、剣を振るい続けて。
いつかは勝機が見出せる、お優しい相手な訳があるか。
覆した終焉は、もう間もなく二度目の牙を剥く。
首に掛けられた死神の鎌が、今度こそはと引かれ。
結局はほんの少し、先延ばしにしていた末路が追い付くのだ。
最初から決まっていた、予定調和の決着。
首に掛けられた死神の鎌が、今度こそはと引かれ。
結局はほんの少し、先延ばしにしていた末路が追い付くのだ。
最初から決まっていた、予定調和の決着。
「知ったことか……!」
押し付けられる運命(さだめ)へ、ありったけの否定を返す。
ここで死ねと嘯く声へ、消え失せろと吐き捨てる。
終われない理由なら見付けた、思い出した。
足を絡める鎖があらば、踏み砕いて突き進む。
死を跳ね除ける力が足りないのだったら、必ずそこに辿り着く。
ここで死ねと嘯く声へ、消え失せろと吐き捨てる。
終われない理由なら見付けた、思い出した。
足を絡める鎖があらば、踏み砕いて突き進む。
死を跳ね除ける力が足りないのだったら、必ずそこに辿り着く。
己の終わりはここじゃないと、何度だって言ってやろう。
枷が外れる、道を塞ぐ壁が崩れる。
数百年掛けて黒死牟に打ち込まれた楔が、壊れ出す。
数百年掛けて黒死牟に打ち込まれた楔が、壊れ出す。
鬼舞辻無惨は不変を求めた。
陽光を克服し、生物の頂点に立つ完璧な肉体の持ち主であり続け、
自身の生存が脅かされない、変わらぬ生こそが全てだった。
しかし、黒死牟は変わる事無く留まる選択を投げ捨てる。
首輪と陽光、肉体に付けられた枷は共に外れた。
それだけではなく、精神を縛る鎖も今この時亀裂が走る。
陽光を克服し、生物の頂点に立つ完璧な肉体の持ち主であり続け、
自身の生存が脅かされない、変わらぬ生こそが全てだった。
しかし、黒死牟は変わる事無く留まる選択を投げ捨てる。
首輪と陽光、肉体に付けられた枷は共に外れた。
それだけではなく、精神を縛る鎖も今この時亀裂が走る。
黒死牟は長きに渡り上弦の壱の座に君臨したが、言い換えれば己が強さを揺るがす存在に出会えなかった。
縁壱亡き後、かの日輪を超える剣士は終ぞ現れず。
見事と称賛を送るに値する柱はいても、黒死牟を凌駕するには至らない。
上弦の壱は余りにも長い間、最強であり過ぎた。
なればこそ屠り合いは、平坦な歩みに嵐を巻き起こすのへ十分と言えよう。
オーバーロードインベス、創世の剣士、地縛神。
そして再会を果たした弟と、星狩り。
自分と並ぶか、凌駕する強者達との闘争が糧となった。
生死の狭間で剣を振るわねばならない感覚が、次なる領域(ステージ)へ鬼を誘う。
縁壱亡き後、かの日輪を超える剣士は終ぞ現れず。
見事と称賛を送るに値する柱はいても、黒死牟を凌駕するには至らない。
上弦の壱は余りにも長い間、最強であり過ぎた。
なればこそ屠り合いは、平坦な歩みに嵐を巻き起こすのへ十分と言えよう。
オーバーロードインベス、創世の剣士、地縛神。
そして再会を果たした弟と、星狩り。
自分と並ぶか、凌駕する強者達との闘争が糧となった。
生死の狭間で剣を振るわねばならない感覚が、次なる領域(ステージ)へ鬼を誘う。
加えて現在の黒死牟は勝利を求めてこそいるも、嘗ての在り方とは違う。
勝ち続けねばならぬと焦燥に駆られたソレと異なり、もっと単純で我武者羅に。
勝ちたい、勝ってやると譲れぬ意地を貫くような。
けれどどこか、以前と違い錆の剥がれたかの戦意で以て死闘へ臨んでいる。
勝ち続けねばならぬと焦燥に駆られたソレと異なり、もっと単純で我武者羅に。
勝ちたい、勝ってやると譲れぬ意地を貫くような。
けれどどこか、以前と違い錆の剥がれたかの戦意で以て死闘へ臨んでいる。
知らぬ内に自らを押し留め、同じ場所で藻掻く以外に出来ない枷は。
紺色の剣士との斬り合いで小さな傷を付け、地縛神を喰い千切った際に縛る力を弱め。
消滅に瀕し、今一度己の譲れぬものを確かめたことで遂に砕ける。
終着点だと強いられた限界を突破、迷いの欠片も宿らない足取りで駆け出す。
紺色の剣士との斬り合いで小さな傷を付け、地縛神を喰い千切った際に縛る力を弱め。
消滅に瀕し、今一度己の譲れぬものを確かめたことで遂に砕ける。
終着点だと強いられた限界を突破、迷いの欠片も宿らない足取りで駆け出す。
『なに?』
短く呟いたエボルに言葉は返さず、答えは全て剣に乗せるまで。
肺へ取り入れる空気の総量が増加、呼吸の精度がこれまで以上に研ぎ澄まされる。
一刀に籠めた膂力が、速度が、生み出される半月の数と強度をも引き上げてみせた。
肺へ取り入れる空気の総量が増加、呼吸の精度がこれまで以上に研ぎ澄まされる。
一刀に籠めた膂力が、速度が、生み出される半月の数と強度をも引き上げてみせた。
――月の呼吸 肆ノ型【極】
未練がましく纏わり付く鎖を消し去るように放つは、双剣乱舞。
一振りで数十の斬撃が一斉に襲うに等しい、刃の暴風。
炸裂弾の連続着弾を思わせる衝撃が絶えず襲い掛かり、それを二本の剣で行うのだ。
鬼狩りが相手であれば、悪鬼滅殺の四文字共々欠片も残さず死するだろう。
一振りで数十の斬撃が一斉に襲うに等しい、刃の暴風。
炸裂弾の連続着弾を思わせる衝撃が絶えず襲い掛かり、それを二本の剣で行うのだ。
鬼狩りが相手であれば、悪鬼滅殺の四文字共々欠片も残さず死するだろう。
パーフェクトゼクターと、時に腕部装甲を使い双剣を捌く度にエボルの抱く違和感は膨れ上がる。
敵の剣は自分に、僅かでも触れていないというのに。
少しずつ、だが確実に近付きつつある。
剣を弾き隙へ捻じ込むまでの感覚が狭まり、自身の速さに喰らい付かんと踏み込まれていた。
そして遂に、鬼の牙が星狩りへ届く。
構えた黄金の大剣を弾き飛ばし、足りぬとばかりに双剣が胸部装甲より火花を散らした。
敵の剣は自分に、僅かでも触れていないというのに。
少しずつ、だが確実に近付きつつある。
剣を弾き隙へ捻じ込むまでの感覚が狭まり、自身の速さに喰らい付かんと踏み込まれていた。
そして遂に、鬼の牙が星狩りへ届く。
構えた黄金の大剣を弾き飛ばし、足りぬとばかりに双剣が胸部装甲より火花を散らした。
『うおっと!?』
予想外のダメージに後方へとよろけ、足がもつれる。
致命傷には程遠いも、この戦闘中初めて傷を受けた。
意外そうに黒死牟を見やるが、当然これが最初で最後な訳がない。
鬼が届かせた一撃は正に、反撃の狼煙となる。
致命傷には程遠いも、この戦闘中初めて傷を受けた。
意外そうに黒死牟を見やるが、当然これが最初で最後な訳がない。
鬼が届かせた一撃は正に、反撃の狼煙となる。
「力を貸してくれ……カズミン……!変身……!!」
『潰れる!流れる!溢れ出る!』
『DRAGON IN CROSS-Z CHARGE!』
全身が訴える痛みを気合一つで黙らせ、万丈も復帰を果たす。
戦っている奴が、宿敵の星狩り相手に諦めない者がいる。
だったらいつまでも寝てる場合じゃない、心火は消えずに燃え上がる真っ最中。
仲間の遺品を腰に付け、変身シークエンスを実行。
フラスコ型のファクトリーが展開、ボディスーツの上からヴァリアブルゼリーを纏い装甲へ変化。
旧世界で北都との戦争時に手に入れた力だが、本来の蒼いドラゴンと違い。
鮮血色の龍を象った意匠という、未知の姿への疑問も今は切り捨てる。
戦っている奴が、宿敵の星狩り相手に諦めない者がいる。
だったらいつまでも寝てる場合じゃない、心火は消えずに燃え上がる真っ最中。
仲間の遺品を腰に付け、変身シークエンスを実行。
フラスコ型のファクトリーが展開、ボディスーツの上からヴァリアブルゼリーを纏い装甲へ変化。
旧世界で北都との戦争時に手に入れた力だが、本来の蒼いドラゴンと違い。
鮮血色の龍を象った意匠という、未知の姿への疑問も今は切り捨てる。
『ディスチャージクラッシュ!潰れな~い!』
『Ready Go!』
『Let's Break!』
腹部の機械、スクラッシュドライバーへフェニックスフルボトルを差し込む。
不死鳥を思わせる炎の翼を背に生やし、更に腕部へ取り付けた得物にはクローズドラゴンを装填。
パイル部分の回転数を一気に最大まで高め、ロケット噴射もかくやの勢いで突撃。
不死鳥を思わせる炎の翼を背に生やし、更に腕部へ取り付けた得物にはクローズドラゴンを装填。
パイル部分の回転数を一気に最大まで高め、ロケット噴射もかくやの勢いで突撃。
「負ける気が……しねぇっ!!!」
『ぬぅぅっ!?』
『ぬぅぅっ!?』
片腕を盾に使い防ぎ、押し返そうにも突進力は馬鹿に出来ない。
今更スクラッシュドライバーを使ったとて、エボルドライバーの足元にも及ばない。
所詮は人間同士の戦争に使うのが関の山、自分と戦うには力不足もいい所と。
鼻で笑おうにも、直に感じるパワーで認識を変えざるを得ない。
同時に気付く、外見が変わっている点も含めて。
敵がどうやってここまでの力を引き出したか、成程気付けば納得しかなかった。
今更スクラッシュドライバーを使ったとて、エボルドライバーの足元にも及ばない。
所詮は人間同士の戦争に使うのが関の山、自分と戦うには力不足もいい所と。
鼻で笑おうにも、直に感じるパワーで認識を変えざるを得ない。
同時に気付く、外見が変わっている点も含めて。
敵がどうやってここまでの力を引き出したか、成程気付けば納得しかなかった。
『エボルボトルの成分を使ったか……!戦兎の真似事で、創造(ビルド)ごっこでもしたようだなァッ!』
「ごっこじゃねぇ……!テメェをぶっ潰すのに、アイツらの力を借りたんだよ!」
「ごっこじゃねぇ……!テメェをぶっ潰すのに、アイツらの力を借りたんだよ!」
仮面ライダーグリスに変身するツール、ロボットスクラシュゼリーはクローズドラゴンが噛み付いた影響で。
グレートドラゴンエボルボトルの成分を付与、真紅の龍が描かれたアイテムに再創造(リ・ビルド)。
ドラゴンエボルスクラッシュゼリーとでも呼ぶべき力を使い、万丈は変身を実行。
星狩りの遺伝子故の真紅の装飾が特徴の、仮面ライダークローズチャージの新たな形態がここに誕生。
闘争心は直接クローズチャージの力に変換され、エボルへ再び挑みかかったのである。
グレートドラゴンエボルボトルの成分を付与、真紅の龍が描かれたアイテムに再創造(リ・ビルド)。
ドラゴンエボルスクラッシュゼリーとでも呼ぶべき力を使い、万丈は変身を実行。
星狩りの遺伝子故の真紅の装飾が特徴の、仮面ライダークローズチャージの新たな形態がここに誕生。
闘争心は直接クローズチャージの力に変換され、エボルへ再び挑みかかったのである。
「上書き夢幻召喚(オーバーライド・インストール)――ライダァアアアアアアアアッ!!!」
星狩りを討つ者がまた一人、諦めを踏み越え眼前に立つ。
用いるカードは滅の支給品から見付かり、万丈を経由し戻って来た一枚。
バーサーカークラスを継承し、幼き身にイリヤが降ろすは女神メドゥーサに非ず。
怪物には怪物の力で対抗せんと現れる、魔獣の女王ゴルゴーン。
巨大な尾が揺れ動き、鱗状になった四肢を用いて疾走。
回転を加えた踵落しを叩き込む。
用いるカードは滅の支給品から見付かり、万丈を経由し戻って来た一枚。
バーサーカークラスを継承し、幼き身にイリヤが降ろすは女神メドゥーサに非ず。
怪物には怪物の力で対抗せんと現れる、魔獣の女王ゴルゴーン。
巨大な尾が揺れ動き、鱗状になった四肢を用いて疾走。
回転を加えた踵落しを叩き込む。
右はクローズチャージが、左はイリヤが攻める。
両手を塞いだつもりだろうが無意味、ワープし背後を取って蹴り付けた。
が、死角からの打撃程度で今更誰が怯むものか。
龍と蛇が雄叫びを上げ、二方向より猛攻を繰り出す。
両手を塞いだつもりだろうが無意味、ワープし背後を取って蹴り付けた。
が、死角からの打撃程度で今更誰が怯むものか。
龍と蛇が雄叫びを上げ、二方向より猛攻を繰り出す。
『揃いも揃って野蛮だねぇ!』
拳と蹴りが休む間もなく打ち込まれるが、それぞれ片腕ずつで対処。
クローズチャージの一撃を受け流し、イリヤが爪で斬り裂こうとすれば腕部装甲で防御。
隙を掻い潜ってエボルの鉄拳が痛め付けるも、呻き声を出す暇すら惜しいと攻撃に専念。
ならばと二度目のワープ使用を試みた時、頭上から仕掛ける者が参戦。
大罪人へ裁きを下すギロチンの如く、振り下ろされる双剣。
油断を突いた気だろうが甘い、ワープし剣は虚しく地面を叩き――
クローズチャージの一撃を受け流し、イリヤが爪で斬り裂こうとすれば腕部装甲で防御。
隙を掻い潜ってエボルの鉄拳が痛め付けるも、呻き声を出す暇すら惜しいと攻撃に専念。
ならばと二度目のワープ使用を試みた時、頭上から仕掛ける者が参戦。
大罪人へ裁きを下すギロチンの如く、振り下ろされる双剣。
油断を突いた気だろうが甘い、ワープし剣は虚しく地面を叩き――
『うおっ!?背中に目玉でも付いてるのかよ!』
死角へ転移する所までが黒死牟の予想通りだ。
現れた気配の方へ視線を向けず、魔皇剣を突き出す。
咄嗟に首を捻って躱すも、僅かなりとも硬直は避けられない。
瞬間、撃ち込まれるのは魔力を束ねた数本の槍。
相手がウワサなら串刺し確実でも、エボルを貫く力は無し。
腕の一振りで薙ぎ払えば済むと見て、
現れた気配の方へ視線を向けず、魔皇剣を突き出す。
咄嗟に首を捻って躱すも、僅かなりとも硬直は避けられない。
瞬間、撃ち込まれるのは魔力を束ねた数本の槍。
相手がウワサなら串刺し確実でも、エボルを貫く力は無し。
腕の一振りで薙ぎ払えば済むと見て、
『っ!!』
自身が触れるよりも先に爆発、魔力が飛散し衝撃が一斉に叩き付けられた。
額に汗を浮かべながら、目論見の成功にいろはは小さく頷く。
矢も槍も自身の魔力で作った以上、手を離れても干渉は可能な筈。
そう考えエボルに砕かれる寸前、遠隔で魔力を破裂させたのだ。
矢も槍も自身の魔力で作った以上、手を離れても干渉は可能な筈。
そう考えエボルに砕かれる寸前、遠隔で魔力を破裂させたのだ。
慣れない魔力操作に相応の集中を要したが、結果はこの通り。
倒せるなどと期待してない、多少なりとも隙が生まれれば問題無し。
今のはあくまで繋ぎ、時間は無駄に出来ないと駆け出す。
倒せるなどと期待してない、多少なりとも隙が生まれれば問題無し。
今のはあくまで繋ぎ、時間は無駄に出来ないと駆け出す。
「イリヤちゃん!」
「うん!もう一回お願いします!」
『キタキタ来ましたよおおおおおおおおっ!ルビーちゃんトランスフォーム!』
「うん!もう一回お願いします!」
『キタキタ来ましたよおおおおおおおおっ!ルビーちゃんトランスフォーム!』
意図を即座に察したイリヤと掌を合わせ、コネクトを発動。
流れ込むいろはの魔力は、毒蛇状の毛先と一体化したルビーに変化を齎す。
桜色の輝きを放つ光刃で斬り裂く標的は、言わずもがな。
宝具に等しいゴルゴーンの怪力で地面を蹴りつけ猛加速、着込んだ装甲諸共真っ二つにしてやる。
流れ込むいろはの魔力は、毒蛇状の毛先と一体化したルビーに変化を齎す。
桜色の輝きを放つ光刃で斬り裂く標的は、言わずもがな。
宝具に等しいゴルゴーンの怪力で地面を蹴りつけ猛加速、着込んだ装甲諸共真っ二つにしてやる。
『SCRAP BREAK!』
『Let's Break!』
「心火、つったよな。マジに燃え上がってるからよ、燃やしまくってぶっ潰す!」
語彙力を纏めて放り投げた言葉は、亡き仲間達が聞けば筋肉馬鹿呼ばわりされるに違いない。
しかし勝つ気概は嘘じゃない、友の力を己が身に宿す。
スクラッシュドライバーを操作し、パウチ状のアイテム内の成分を活性化。
噴き出す蒸気が充填完了を伝え、更にもう一度相棒のドラゴンを装備のスロット部分へ装填。
溜め込んだ力を解き放つ瞬間を見極め、その時が来た。
放出したエネルギーは紅い龍の形を取り、大口を開けエボルへ襲い掛かる。
怪物には怪物を、ブラッド族にはブラッド族の遺伝子をだ。
しかし勝つ気概は嘘じゃない、友の力を己が身に宿す。
スクラッシュドライバーを操作し、パウチ状のアイテム内の成分を活性化。
噴き出す蒸気が充填完了を伝え、更にもう一度相棒のドラゴンを装備のスロット部分へ装填。
溜め込んだ力を解き放つ瞬間を見極め、その時が来た。
放出したエネルギーは紅い龍の形を取り、大口を開けエボルへ襲い掛かる。
怪物には怪物を、ブラッド族にはブラッド族の遺伝子をだ。
人間達に決着を押し付け、一足先に得物を納める気は毛頭ない。
血液の沸騰に伴い筋肉が盛り上がり、一撃の威力を底上げ。
加えて自身が操る魔皇力のみならず、魔剣に宿る力までもを黒死牟は感じ取る。
紅渡が安定して戦えるよう、手を貸した幻影怪物。
三体の魔族の力を結集させ生まれた存在の中に、今なお根付く熱き魂の欠片。
血液の沸騰に伴い筋肉が盛り上がり、一撃の威力を底上げ。
加えて自身が操る魔皇力のみならず、魔剣に宿る力までもを黒死牟は感じ取る。
紅渡が安定して戦えるよう、手を貸した幻影怪物。
三体の魔族の力を結集させ生まれた存在の中に、今なお根付く熱き魂の欠片。
姿形を目で捉えずとも、もっと深い部分でハッキリと視た。
青き衣を纏う、誇り高き一匹の獣。
ウルフェン族最後の生き残りが秘めた魔皇力を引き出し、ザンバットバットの瞳がサファイアブルーに染まる。
振り被った双剣は牙であり爪、人間への愛と友情を知った蒼狼が鬼に宿った。
青き衣を纏う、誇り高き一匹の獣。
ウルフェン族最後の生き残りが秘めた魔皇力を引き出し、ザンバットバットの瞳がサファイアブルーに染まる。
振り被った双剣は牙であり爪、人間への愛と友情を知った蒼狼が鬼に宿った。
――月の呼吸 拾伍ノ型【極】
月が群れを為して駆ける。
一度狙った獲物を仕留めるまで、喰らい付いたら決して離れない。
牙群と化した刃が襲い来る様は、津波の如き脅威。
一度狙った獲物を仕留めるまで、喰らい付いたら決して離れない。
牙群と化した刃が襲い来る様は、津波の如き脅威。
光刃が、灼熱の龍が、牙の大群がたった一人を相手に殺到。
退けるべくエボルは両手を突き出し、鮮血の波動を放射。
取り戻した力と、取り込んだ黒い破滅の板。
両方が影響し、デスゲーム開始直後以上の出力を弾き出す。
退けるべくエボルは両手を突き出し、鮮血の波動を放射。
取り戻した力と、取り込んだ黒い破滅の板。
両方が影響し、デスゲーム開始直後以上の出力を弾き出す。
だというのに押し切れない。
生意気にも自身を燃やし、斬り裂き、喰らい潰さんと迫る光景をゼロへ戻せない。
星狩りの進撃に歯止めを掛け、打ち倒さんと距離を詰め出す。
絶対的な高みへ居座った己を引き摺り下ろす為の魔手が、徐々に近付きつつあるのは気のせいじゃない。
生意気にも自身を燃やし、斬り裂き、喰らい潰さんと迫る光景をゼロへ戻せない。
星狩りの進撃に歯止めを掛け、打ち倒さんと距離を詰め出す。
絶対的な高みへ居座った己を引き摺り下ろす為の魔手が、徐々に近付きつつあるのは気のせいじゃない。
(懐かしい感覚、って言うのは我ながらちょいと呑気かねぇ?)
叩いても叩いても立ち上がり、しつこく食い下がり続け。
僅か一本の剣を突き刺す為に命まで懸け、こちらの予想を上回る。
そういったしぶとさの権化染みた連中には、呆れるくらいに覚えがあった。
僅か一本の剣を突き刺す為に命まで懸け、こちらの予想を上回る。
そういったしぶとさの権化染みた連中には、呆れるくらいに覚えがあった。
今だってそう。
遥かに上回った己へ恐怖し諦めるのではなく、終わりを自ら乗り越え足掻くのを止めない。
諦めの悪さ、それもまた人間が持つ強さだと嘗て味わった消滅で思い知らされた。
おまけに此度の敵が『4人』というのは、はてさて偶然で片付けるには出来過ぎな気がしないでもない。
いつかの再演とふと頭によぎり、らしくなく浸る自分に小さく笑いが漏れる。
これも芽生えた感情が、いやさ人間が少なからず影響を残したが故とすれば。
憎たらしくも興味深い、面白おかしい生命体だと改めて思う。
遥かに上回った己へ恐怖し諦めるのではなく、終わりを自ら乗り越え足掻くのを止めない。
諦めの悪さ、それもまた人間が持つ強さだと嘗て味わった消滅で思い知らされた。
おまけに此度の敵が『4人』というのは、はてさて偶然で片付けるには出来過ぎな気がしないでもない。
いつかの再演とふと頭によぎり、らしくなく浸る自分に小さく笑いが漏れる。
これも芽生えた感情が、いやさ人間が少なからず影響を残したが故とすれば。
憎たらしくも興味深い、面白おかしい生命体だと改めて思う。
血染めの壁に亀裂が生まれ、目に見えて勢いが弱まる。
魔法少女か、鬼か、因縁で繋がったヒーローの誰が最初に到達してもおかしくない。
魔法少女か、鬼か、因縁で繋がったヒーローの誰が最初に到達してもおかしくない。
『まあ、それを受け入れるかは別だがなァッ!!』
一度目の敗北は認めよう。
二度目の敗北も無かった事にする気はない。
だが三度目の到来に何もしないでいると、誰が言った。
人間は強い、かといって素直に負けてやるのは癪だ。
毎度飽きずにラブ&ピースの礎になるなどという、思い上がりを抱いてるんだったら。
二度目の敗北も無かった事にする気はない。
だが三度目の到来に何もしないでいると、誰が言った。
人間は強い、かといって素直に負けてやるのは癪だ。
毎度飽きずにラブ&ピースの礎になるなどという、思い上がりを抱いてるんだったら。
『礼を言うぜ』
何度だって、現実を叩き付けるまで。
敗北を退け勝ちを望む、闘争心に火が付く。
揺れ動く感情を強さに変えられるのは、人間だけの専売特許に非ず。
戦意が燃え盛り、ハザードレベルが急上昇。
結束し星狩りを打ち破る、絆の力で勝利を掴む。
そんな陳腐極まる三流以下の決着は覆された。
敗北を退け勝ちを望む、闘争心に火が付く。
揺れ動く感情を強さに変えられるのは、人間だけの専売特許に非ず。
戦意が燃え盛り、ハザードレベルが急上昇。
結束し星狩りを打ち破る、絆の力で勝利を掴む。
そんな陳腐極まる三流以下の決着は覆された。
『お前らのおかげで、俺はまだまだ強くなる!!』
「――――――っ!?」
形勢逆転は正に一瞬だった。
光刃は砕け、龍は掻き消され、牙は残らず粉砕。
美しくもおぞましき破壊の真紅が炸裂、対峙中の戦士達を吹き飛ばす。
誰が呻き悲鳴を上げたかを、一々気にしていられるものか。
網膜を焼きかねん程の光が治まり、圧倒的な存在感で立つのは星狩りのみの有様。
光刃は砕け、龍は掻き消され、牙は残らず粉砕。
美しくもおぞましき破壊の真紅が炸裂、対峙中の戦士達を吹き飛ばす。
誰が呻き悲鳴を上げたかを、一々気にしていられるものか。
網膜を焼きかねん程の光が治まり、圧倒的な存在感で立つのは星狩りのみの有様。
「クソ……」
「あ、ぐ……」
「……」
「あ、ぐ……」
「……」
背後で倒れ伏した者達の、苦悶の声を耳が拾いながら。
黒死牟は得物を手放さず膝も屈さずに、エボルを睨み付け離さない。
戦意は未だ吹き消せぬ苛烈さなれど、肉体に負った傷は軽くなかった。
クローズチャージに変身していた万丈や、ゴルゴーンの力を降ろすイリヤ。
比較的自分達よりは距離が離れてあった、いろははともかく。
ブラッド族のエネルギー波に生身を焼かれ、忘れ得ぬ激痛が黒死牟の体内を蝕んでいる。
黒死牟は得物を手放さず膝も屈さずに、エボルを睨み付け離さない。
戦意は未だ吹き消せぬ苛烈さなれど、肉体に負った傷は軽くなかった。
クローズチャージに変身していた万丈や、ゴルゴーンの力を降ろすイリヤ。
比較的自分達よりは距離が離れてあった、いろははともかく。
ブラッド族のエネルギー波に生身を焼かれ、忘れ得ぬ激痛が黒死牟の体内を蝕んでいる。
苦痛は現在も進行中だが、欠片も表情に出さない。
無傷で乗り越えられる敵に非ずと、とうに理解へ至った以上。
一々痛みへ思考を割くだけ、無駄に他ならない。
陽光一つ克服し終えたとて、鬼を滅ぼす存在は幾らでもいるだろう。
異界の屠り合いで未知の強者と刃をぶつけ合い、ここまで生き残った故に。
驚愕へ値するものでないと、当たり前のように受け止める。
無傷で乗り越えられる敵に非ずと、とうに理解へ至った以上。
一々痛みへ思考を割くだけ、無駄に他ならない。
陽光一つ克服し終えたとて、鬼を滅ぼす存在は幾らでもいるだろう。
異界の屠り合いで未知の強者と刃をぶつけ合い、ここまで生き残った故に。
驚愕へ値するものでないと、当たり前のように受け止める。
冷静さを保っていても、戦況の有利には何ら効果を齎さない。
万丈とイリヤは変身を解かれ、いろはも消耗に苛まれる真っ最中。
かくいう己も万全は遥か遠い地点に置いて来たが、戦闘続行は不可能じゃない。
激痛如きで足を止める道理も無いと、未だ揺るがぬ絶対的存在へ挑まんとし、
万丈とイリヤは変身を解かれ、いろはも消耗に苛まれる真っ最中。
かくいう己も万全は遥か遠い地点に置いて来たが、戦闘続行は不可能じゃない。
激痛如きで足を止める道理も無いと、未だ揺るがぬ絶対的存在へ挑まんとし、
建造物が消え失せた戦場にて、自分達の足元に影が出現。
頭上をナニカが覆ったと気付き、見上げれば知らぬとは言わない異形が浮遊。
神話の中でのみ生きる大蛇が現実へ飛び出し、口から炎弾を吐き出す。
ククルカンの登場へ思わず視線を移すと、弱々しくも瞳を発光させるサガークが映った。
頭上をナニカが覆ったと気付き、見上げれば知らぬとは言わない異形が浮遊。
神話の中でのみ生きる大蛇が現実へ飛び出し、口から炎弾を吐き出す。
ククルカンの登場へ思わず視線を移すと、弱々しくも瞳を発光させるサガークが映った。
サガの資格者へ仕える怪物に飛び乗り、撤退しろと言いたいのか。
それをやるのは、動けずにいる人間達だけでいい。
自分はここでエボルとの戦闘を続ける、剣を振るう余力を残しながら逃げ出すなど出来るものか。
勝ち目は薄いと理解しており、敵は全くと言って良い程本気を出してないだろう。
だからといって、おめおめと背を向けるのは抵抗を感じ当然だ。
下らない意地と言われれば全くその通りでしかなく、だがそれでも――
それをやるのは、動けずにいる人間達だけでいい。
自分はここでエボルとの戦闘を続ける、剣を振るう余力を残しながら逃げ出すなど出来るものか。
勝ち目は薄いと理解しており、敵は全くと言って良い程本気を出してないだろう。
だからといって、おめおめと背を向けるのは抵抗を感じ当然だ。
下らない意地と言われれば全くその通りでしかなく、だがそれでも――
――『黒死牟さんが一人でいなくなったら嫌ですし……』
――『ありがとうございます。…一緒に、来てくれることも』
――『いろはをお願い、あの子の力になってあげて』
「……」
屠り合いが始まってすぐに出会い、今も離れない娘が。
人に仇為す鬼へ、己が半身に等しい娘を託した女が。
真っ先に切り捨てるべき、どうでもいい筈のそれらが逸る闘争心に息吹を拭き掛け。
熱を冷ますばかりか、花弁が折り重なった鎖となって絡み付く。
人に仇為す鬼へ、己が半身に等しい娘を託した女が。
真っ先に切り捨てるべき、どうでもいい筈のそれらが逸る闘争心に息吹を拭き掛け。
熱を冷ますばかりか、花弁が折り重なった鎖となって絡み付く。
ああ本当に、枷を取り除いたかと思えば。
新たな枷が顔を覗かせ、寄り添うように魂へ触れる。
鬱陶しいことこの上なく、何より不可解で腹立たしいのは。
小突けば散る脆きソレらを振り解かず、戦意を仕舞い込む自分自身だった。
新たな枷が顔を覗かせ、寄り添うように魂へ触れる。
鬱陶しいことこの上なく、何より不可解で腹立たしいのは。
小突けば散る脆きソレらを振り解かず、戦意を仕舞い込む自分自身だった。
――月の呼吸 拾肆ノ型 兇変・天満繊月
『っとと、嬉しくもない追加サービスだなァおい!』
降り注ぐ火炎弾へ腕を振るい掻き消すエボルに向けて、虚哭神去を一閃。
斬撃が幾重にも束なり渦を巻き、竜巻を生み出す。
時間を掛けずに対処されるとは承知の上、僅かな猶予で迅速に動く。
転がる万丈とイリヤの襟首を掴み、困惑の視線を無視し頭上高くへ放り投げた。
斬撃が幾重にも束なり渦を巻き、竜巻を生み出す。
時間を掛けずに対処されるとは承知の上、僅かな猶予で迅速に動く。
転がる万丈とイリヤの襟首を掴み、困惑の視線を無視し頭上高くへ放り投げた。
「ばっ、おま、何してえええええええええええええええええええええええええええええっ!!??!」
「えっ、待っ、なんでわたしもおおおおおおおおおおおおおおっ!!!??!」
「えっ、待っ、なんでわたしもおおおおおおおおおおおおおおっ!!!??!」
暴挙と捉えられても文句の言えない行動への悲鳴が、遠ざかるも問題無い。
器用に口でキャッチし、背に乗せるククルカンがその証拠。
予想してなかった絵面に固まるいろはへ近付き、何か言う前に抱き上げる。
器用に口でキャッチし、背に乗せるククルカンがその証拠。
予想してなかった絵面に固まるいろはへ近付き、何か言う前に抱き上げる。
「わわっ!?」
「退くぞ……」
『何ですかその扱いの差!お気に入りの女の子には助平心丸出しですかこのヒモざむら――痛だだだだだだ!?もうちょっとソフトに持ってくださいよ!?』
「退くぞ……」
『何ですかその扱いの差!お気に入りの女の子には助平心丸出しですかこのヒモざむら――痛だだだだだだ!?もうちょっとソフトに持ってくださいよ!?』
いろはを抱えるのとは反対の手にルビーを掴み、心なしか力が籠ったのが気のせいかはともかく。
鬼の身体能力へ二重の強化を加えた影響で、跳躍力も人間の限界を余裕で追い抜く高さだ。
地面を蹴りつけククルカンの背に着地、急ぎこの場から可能な限り遠ざかるよう指示を出す。
怪物なりに義理を果たす気があるのか、サガークが破壊されても命令に従い全速力で空を駆ける。
鬼の身体能力へ二重の強化を加えた影響で、跳躍力も人間の限界を余裕で追い抜く高さだ。
地面を蹴りつけククルカンの背に着地、急ぎこの場から可能な限り遠ざかるよう指示を出す。
怪物なりに義理を果たす気があるのか、サガークが破壊されても命令に従い全速力で空を駆ける。
星狩りが猛威を振るった戦場はあっという間に見えなくなり、ふと視線を落とす。
無意味と理解しつつも回収したサガークは、相変わらずこちらの理解出来ぬ言語を囁く。
何を言ってるかは知らない、所詮は日を避ける道具に過ぎなかった。
無意味と理解しつつも回収したサガークは、相変わらずこちらの理解出来ぬ言語を囁く。
何を言ってるかは知らない、所詮は日を避ける道具に過ぎなかった。
「……眠れ」
なのに、そんな一言を投げ掛けたのは。
黒死牟自身、何の意味があったか分からぬまま。
王の鎧を授ける生命体は、まるで小さく笑うように言葉を発し。
それっきり動かなくなった。
黒死牟自身、何の意味があったか分からぬまま。
王の鎧を授ける生命体は、まるで小さく笑うように言葉を発し。
それっきり動かなくなった。