◆
体が痛い、意識を取り戻しまず最初に思ったのがそれだった。
散々掻き回された腹部だけじゃなく、腕や足も。
そこら中が痛みを訴え、どれくらい傷を負ってるのかが分からない程だ。
立ち上がろうと地面に手を付けるけど、力がロクに入らない。
だけどじっと待っていても、状況が好転するとは全く思えない。
うつ伏せで這い、蛞蝓のように緩慢な速度で進む。
散々掻き回された腹部だけじゃなく、腕や足も。
そこら中が痛みを訴え、どれくらい傷を負ってるのかが分からない程だ。
立ち上がろうと地面に手を付けるけど、力がロクに入らない。
だけどじっと待っていても、状況が好転するとは全く思えない。
うつ伏せで這い、蛞蝓のように緩慢な速度で進む。
(みんな、は……)
自分が捕まって、泣きたいくらいに痛みを与えられてる最中も。
仲間達が必死に戦っていたのは知っている。
迷惑と心配を掛けて申し訳ない、今の自分を見たらもっと慌てさせてしまうかもしれない。
仲間達が必死に戦っていたのは知っている。
迷惑と心配を掛けて申し訳ない、今の自分を見たらもっと慌てさせてしまうかもしれない。
「……っ」
ここに来てから何も出来ていない自分へ、不甲斐なさを覚える。
操り人形扱いが大半で、他にやった事と言えば。
助けられたかもしれない少女に手が届かず、挙句悪い人に捕まった。
これでは、エトワリアで自分を見失った時と何も変わってない。
操り人形扱いが大半で、他にやった事と言えば。
助けられたかもしれない少女に手が届かず、挙句悪い人に捕まった。
これでは、エトワリアで自分を見失った時と何も変わってない。
「諦め、ない、よ……!」
でももう、絶望に閉じ籠るのは止めだ。
姉としては全然モカに敵わないと、受け入れた上で。
それでも自分は自分、「お姉ちゃん」から逃げないと決めた。
間違った事へ手を貸しはせず、殺し合いに抗う。
姉としては全然モカに敵わないと、受け入れた上で。
それでも自分は自分、「お姉ちゃん」から逃げないと決めた。
間違った事へ手を貸しはせず、殺し合いに抗う。
「チノちゃんに、もう一度……」
何より、大好きな妹に会いたい気持ちに嘘はつきたくない。
こっちへ来いと手招きする死へ、モカの劣化版と嗤われた苦い記憶へ。
絶対に嫌だと振り切って、暖かい光の方へ進み、
こっちへ来いと手招きする死へ、モカの劣化版と嗤われた苦い記憶へ。
絶対に嫌だと振り切って、暖かい光の方へ進み、
『残念だがコンティニューは無しだ。ゲームオーバー確定だよ、お前は』
振って来た声が誰のものかを、考えるよりも早く。
首筋に刺すような痛みが走り、直後体が動かなくなった。
進まないといけないのに、止まってなどいられないのに。
指先にまで痺れが遅い、すぐに瞬きも出来なくなる。
首筋に刺すような痛みが走り、直後体が動かなくなった。
進まないといけないのに、止まってなどいられないのに。
指先にまで痺れが遅い、すぐに瞬きも出来なくなる。
見開いた目の先で、伸ばした手がボロボロと崩れ落ちた。
ふかふかで美味しいパンを作る為の手は、可愛いラテアートを描く為の手は。
チノの小さな手を引き、繋いで歩く為の手はもうない。
ふかふかで美味しいパンを作る為の手は、可愛いラテアートを描く為の手は。
チノの小さな手を引き、繋いで歩く為の手はもうない。
「いや……いやだよ……」
『ここまでご苦労さん。まあそう落ち込むな、お前が死んでもチノ達は別のココアと仲良くやるだろうからなァ』
『ここまでご苦労さん。まあそう落ち込むな、お前が死んでもチノ達は別のココアと仲良くやるだろうからなァ』
絞り出した否定の言葉も、悪意を煮詰めた軽口に掻き消される。
手を伸ばしても掴む相手はいない、掴んでもらえる手はない。
朧気になる視界に映る、綺麗な水色の髪の女の子。
その娘が微笑む先に自分がいるけど、自分ではない。
保登心愛であっても、散り行く保登心愛じゃなかった。
手を伸ばしても掴む相手はいない、掴んでもらえる手はない。
朧気になる視界に映る、綺麗な水色の髪の女の子。
その娘が微笑む先に自分がいるけど、自分ではない。
保登心愛であっても、散り行く保登心愛じゃなかった。
「や……だ…………」
灯った再起の光はまるで、ロウソクの炎のように吹き消される。
少女が最後に何を見たのかへ、欠片も興味を抱かず。
唯一存在した証で残った首輪を拾い、もう誰もいない場所を眺めた。
少女が最後に何を見たのかへ、欠片も興味を抱かず。
唯一存在した証で残った首輪を拾い、もう誰もいない場所を眺めた。
『ラブ&ピースの強さってのは否定しないが、毎度毎度都合良く奇跡が起きてりゃ安売りと変わらないだろ?』
覇瞳皇帝の暗示を脱し、その後に友好的な参加者と会えた。
ココアの幸運はそこで売り切れ(ソールドアウト)、後は悪意の持ち主に使い潰される。
結局最初と同じ末路が訪れるという、ただそれだけの呆気ない幕切れだ。
ココアの幸運はそこで売り切れ(ソールドアウト)、後は悪意の持ち主に使い潰される。
結局最初と同じ末路が訪れるという、ただそれだけの呆気ない幕切れだ。
『で、お前さんも無意味な延命はオススメしないぜ?』
「あら……嬉しくもないアドバイスをありがとう……」
「あら……嬉しくもないアドバイスをありがとう……」
振り返った先には、ココアを利用していた張本人。
怪物の内部に取り込まれ、マナの供給元として散々こき使われた末に。
よりにもよって道具と見なした少女と同じく、ウワサが絶大なダメージを受けた影響で解放。
但し微塵も無事とは言い難く、満身創痍の四文字がここまで似合う者もそういないだろう。
立ってるだけでも奇跡に等しいが、カイザーインサイトには何の慰めにもならない。
怪物の内部に取り込まれ、マナの供給元として散々こき使われた末に。
よりにもよって道具と見なした少女と同じく、ウワサが絶大なダメージを受けた影響で解放。
但し微塵も無事とは言い難く、満身創痍の四文字がここまで似合う者もそういないだろう。
立ってるだけでも奇跡に等しいが、カイザーインサイトには何の慰めにもならない。
『もうちょい付き合ってやっても良かったんだがなァ。道具に手を噛まれるようじゃ、生かす旨みも探す方が難しいってもんだ』
勿体ぶった言い方で切り捨てを伝えられても、驚きは一切ない。
自分だって相手が同じ状況に陥ってたら、迷わずそうしただろう。
だからといって、はいそうですかと投げ出すのはお断り。
自分だって相手が同じ状況に陥ってたら、迷わずそうしただろう。
だからといって、はいそうですかと投げ出すのはお断り。
「余裕の態度はそこまでよ……私はまだ、終わりじゃあない……!」
残ったマナを掻き集め、砲撃に変え叩き付ける。
命は繋がっている、生きてさえいれば巻き返しは不可能じゃない。
終わってたまるかと、己の生存を懸けた戦いに臨み。
命は繋がっている、生きてさえいれば巻き返しは不可能じゃない。
終わってたまるかと、己の生存を懸けた戦いに臨み。
『少し前の俺なら、ちったあ危機感を持ってやったんだがねぇ。お遊戯はもうお終いの時間だ』
笑ってしまうくらい簡単に、拳一発で掻き消された。
決死の反撃を消し去った勢いのままに、己へ迫る圧倒的な力を。
恐れるでも、ヒステリックに喚くでもなく。
冷静に受け入れてる自分自身が、カイザーインサイトには妙に可笑しかった。
決死の反撃を消し去った勢いのままに、己へ迫る圧倒的な力を。
恐れるでも、ヒステリックに喚くでもなく。
冷静に受け入れてる自分自身が、カイザーインサイトには妙に可笑しかった。
そうなるだろうと、予想は安易に付いた。
この状況で勝てると思える程、自惚れる図太さはない。
懇切丁寧に説明を受けなくたって、うんざりするくらいに理解している。
この状況で勝てると思える程、自惚れる図太さはない。
懇切丁寧に説明を受けなくたって、うんざりするくらいに理解している。
神の座へ手は届かず。
真に倒すべき者に終ぞ牙は届かず。
秘め続けた誰にも明かせない願いは、塵よりも惨めに消え失せ。
カイザーインサイト…千里真那はここで終わる。
真に倒すべき者に終ぞ牙は届かず。
秘め続けた誰にも明かせない願いは、塵よりも惨めに消え失せ。
カイザーインサイト…千里真那はここで終わる。
(ああ……)
未練も後悔も山ほどある中で、最後にふと思い浮かべたのは。
路地裏で荒み切った所を拾ってやった、小汚い獣人の少女。
道具として接し、されど常に傍へ置き続けた彼女は。
自分の死に、一体何を感じるのだろうか。
路地裏で荒み切った所を拾ってやった、小汚い獣人の少女。
道具として接し、されど常に傍へ置き続けた彼女は。
自分の死に、一体何を感じるのだろうか。
何も為せず、何も残せず滅ぶというのに。
よりにもよって、幕切れの際に思うのが道具のことだなんて。
よりにもよって、幕切れの際に思うのが道具のことだなんて。
(本当に……無様ね)
【保登心愛@きららファンタジア 死亡】
【カイザーインサイト@プリンセスコネクト!Re:DIVE 死亡】
【カイザーインサイト@プリンセスコネクト!Re:DIVE 死亡】
○
思考が再び叶うまでに掛かった正確な時間を、黒死牟は知らない。
鬼の存在も知らぬ頃、真夏の熱気に充てられたのに似た頭痛を覚え。
帳を落とした視界が徐々に、元の景色を露わにする。
睡眠機能こそ不要の身なれど、気を失うのまで叶わぬ肉体に非ず。
意識が飛んでいたとようやく気付き、跳ね上がるかの勢いで立ち上がった。
鬼の存在も知らぬ頃、真夏の熱気に充てられたのに似た頭痛を覚え。
帳を落とした視界が徐々に、元の景色を露わにする。
睡眠機能こそ不要の身なれど、気を失うのまで叶わぬ肉体に非ず。
意識が飛んでいたとようやく気付き、跳ね上がるかの勢いで立ち上がった。
戦場で気絶に陥るなど、好きに殺せと言うのと同じ。
人間を捨てて早数百年、生前はおろか此度の屠り合いでも常に意識は健在へ保った筈が。
みっともなく手放す程の事態が今、この身へ降り掛かったらしい。
人間を捨てて早数百年、生前はおろか此度の屠り合いでも常に意識は健在へ保った筈が。
みっともなく手放す程の事態が今、この身へ降り掛かったらしい。
最後に記憶したものを思い出す。
巨体へ剣を振るい、直に決着が付こうかという正にその瞬間。
耳障りな笑い声の持ち主は間違いなく、弟を騙った化生で――
巨体へ剣を振るい、直に決着が付こうかという正にその瞬間。
耳障りな笑い声の持ち主は間違いなく、弟を騙った化生で――
「痛ぇ……」
呻きながら頭を振り、傍らで身を起こす気配が一つ。
変身を解かれた万丈は、顰めた顔で周囲を見回す。
後ろでは少女達も各々意識を取り戻し、状況把握に努めようとしている。
誰が何をやったのか、当然の疑問が一同の頭に浮かぶも長ったらしく考え込む必要はない。
変身を解かれた万丈は、顰めた顔で周囲を見回す。
後ろでは少女達も各々意識を取り戻し、状況把握に努めようとしている。
誰が何をやったのか、当然の疑問が一同の頭に浮かぶも長ったらしく考え込む必要はない。
「よっ!」
飲み屋の暖簾を潜るような、殺し合いには不釣り合いの軽々しさで。
正解の方から顔を出す。
正解の方から顔を出す。
40を超えたろう年齢ながら肉体は引き締まり、モデルと見紛う高身長。
緊張を解きほぐし心を開かせる笑みの裏へ潜む正体を、この場の全員が知っていた。
緊張を解きほぐし心を開かせる笑みの裏へ潜む正体を、この場の全員が知っていた。
「テメェ……エボルト!」
「元気そうだな万丈。キルバスの時以来か?あん時はお互い苦労したよなぁ」
「元気そうだな万丈。キルバスの時以来か?あん時はお互い苦労したよなぁ」
行きつけの喫茶店のマスターと、全く同じ外見であれど。
あくまで人間の皮を被っただけで、中身は完全に別物。
旧世界で引き起こされた数多の悲劇の元凶にして、断ち切れぬ因縁で繋がった宿敵。
エボルトの登場に万丈が敵意を剥き出し、殺伐とした空気が流れ始める。
あくまで人間の皮を被っただけで、中身は完全に別物。
旧世界で引き起こされた数多の悲劇の元凶にして、断ち切れぬ因縁で繋がった宿敵。
エボルトの登場に万丈が敵意を剥き出し、殺伐とした空気が流れ始める。
「放送は聞いた。まっさか戦兎がくたばっちまうとはな。愛と平和だけじゃどうにもならない事もあるってか?現実ってのは厳しいもんだなぁおい」
「うるせぇ!テメェが戦兎をどうこう言うんじゃねぇよ!」
「そう怒るなよ~。俺だってあいつが死んだのには、それなりにショックを受けたんだぞ?」
「うるせぇ!テメェが戦兎をどうこう言うんじゃねぇよ!」
「そう怒るなよ~。俺だってあいつが死んだのには、それなりにショックを受けたんだぞ?」
相棒の死を引き合いに舐め腐った態度をされ、平然と受け流す程寛容じゃない。
隠す気も無い怒りで噛み付く万丈と反対に、相手は至って涼しい顔。
視線を外し他の面々を見るも、友好的とは程遠い。
嫌われちまったもんだと、微塵も悲しんでない軽薄な笑みを貼り付ける。
隠す気も無い怒りで噛み付く万丈と反対に、相手は至って涼しい顔。
視線を外し他の面々を見るも、友好的とは程遠い。
嫌われちまったもんだと、微塵も悲しんでない軽薄な笑みを貼り付ける。
「よういろは、そっちも災難だったな?折角やちよと会えたってのにもうお別れなんざ、これじゃあお前を必死に探してやった甲斐もありゃしない」
「……っ」
「……っ」
気遣いの意図を宿らせない軽口へ、ぎゅっと唇を噛む。
続けてエボルトが口を開く前に、睨み付ける六眼の威圧感が上昇。
鬱陶しい戯言を延々耳に入れる気はないと、殺気立った視線で貫く。
「おっかないボディーガードだねぇ」とヘラヘラ笑う様に、反省の二文字は当て嵌まらなかった。
続けてエボルトが口を開く前に、睨み付ける六眼の威圧感が上昇。
鬱陶しい戯言を延々耳に入れる気はないと、殺気立った視線で貫く。
「おっかないボディーガードだねぇ」とヘラヘラ笑う様に、反省の二文字は当て嵌まらなかった。
『おちょくりタイムは終わりにして、とっとと本題に入って頂けませんかね?』
「っ!そうだよ……さっき何を……!」
「っ!そうだよ……さっき何を……!」
軽蔑を混ぜて話を進めるルビーに続き、問い質すイリヤの表情は険しい。
気が付けばリンボも怪物も姿を消しており、代わりに出て来たのがこの男。
何の目的があってのことかと問うも、相手は怯まずあっけらかんと言う。
気が付けばリンボも怪物も姿を消しており、代わりに出て来たのがこの男。
何の目的があってのことかと問うも、相手は怯まずあっけらかんと言う。
「焦らなくてもちゃんと教えるさ。ま、ざっくり言うと俺は今首輪を集めてる真っ最中でな」
コツコツと音を立てて、自身の首元を指で小突く。
首輪の回収は、別段珍しい行動でもない。
解析用のサンプル以外に、NPCと交換し道具や情報を得られると既に放送で伝えられた。
だからそれ自体に不審点は見当たらないが、次の言葉は違う。
首輪の回収は、別段珍しい行動でもない。
解析用のサンプル以外に、NPCと交換し道具や情報を得られると既に放送で伝えられた。
だからそれ自体に不審点は見当たらないが、次の言葉は違う。
「丁度二つ手に入るチャンスが巡ったんだが、ちょいと力加減を間違えちまってなぁ。首輪ごと消し飛ばしちまったんだよ。いやぁ、参った参った」
わざとらしく肩を落とし、指に引っ掛けたプレイヤーへの枷を揺らす。
首輪が手に入った、エボルトの口から語られた事実に嫌な予感を覚えたのは気のせいではあるまい。
首輪が手に入った、エボルトの口から語られた事実に嫌な予感を覚えたのは気のせいではあるまい。
「エボルト、さん。あの、その首輪は誰の……」
「気になるか?お前らも知ってる奴だよ。ヒントは……『チノちゃーん!お姉ちゃんはここだよー!』」
「っ!?」
「気になるか?お前らも知ってる奴だよ。ヒントは……『チノちゃーん!お姉ちゃんはここだよー!』」
「っ!?」
擬態の応用で声を変え、真似た内容は。
誰を指すか、これ以上ないくらいの答えだった。
怪物に囚われ、仲間達に最期を知られる事もなく。
蛇の毒牙に掛かり、一人寂しく保登心愛はこの世を去った。
誰を指すか、これ以上ないくらいの答えだった。
怪物に囚われ、仲間達に最期を知られる事もなく。
蛇の毒牙に掛かり、一人寂しく保登心愛はこの世を去った。
「そんな……ココアさんが……!」
「ふざけんじゃねぇぞ……!エボルトォッ!!」
「まあ聞けって。俺が見付けた時、あいつはもう死に掛けだったんだ。下手に延命して苦しませるより、一思いに楽にしてやる方が人道的だろ?案外チノ達も俺に感謝するんじゃねぇか?」
「いい加減にして……!どこまで皆を馬鹿にすれば気が済むの!?」
「ふざけんじゃねぇぞ……!エボルトォッ!!」
「まあ聞けって。俺が見付けた時、あいつはもう死に掛けだったんだ。下手に延命して苦しませるより、一思いに楽にしてやる方が人道的だろ?案外チノ達も俺に感謝するんじゃねぇか?」
「いい加減にして……!どこまで皆を馬鹿にすれば気が済むの!?」
仲間を殺しておきながら悪びれず、嘲笑う態度を止めない。
堪らず怒声を浴びせるも、向こうは軽く聞き流す。
ココアの死にショックを受けているようだが、生憎まだ本題が残ってる。
首輪を一つ消してしまった、しかし代わりは目の前に複数あるじゃあないか。
堪らず怒声を浴びせるも、向こうは軽く聞き流す。
ココアの死にショックを受けているようだが、生憎まだ本題が残ってる。
首輪を一つ消してしまった、しかし代わりは目の前に複数あるじゃあないか。
「ココアの首輪は有効に使ってやるとして、だ。もう少し数を揃えておきたくてねぇ。運良く俺の前に四つも見付かったってわけだ」
「あなたは……!」
「新世界で馬鹿兄貴を一緒に始末したよしみだ、万丈だけは見逃してやるよ。後の連中は――」
「あなたは……!」
「新世界で馬鹿兄貴を一緒に始末したよしみだ、万丈だけは見逃してやるよ。後の連中は――」
言い切るのを待たず、茶番は終わりとばかりに走る剣筋。
勿体ぶった言い回しだがつまり、この男は敵で相違ない。
となると、何時までも耳を傾けてやる義理は無し。
妖刀を抜き放ち、黒死牟が毒にも薬にもならない会話を強制的に中断。
勿体ぶった言い回しだがつまり、この男は敵で相違ない。
となると、何時までも耳を傾けてやる義理は無し。
妖刀を抜き放ち、黒死牟が毒にも薬にもならない会話を強制的に中断。
「危ねぇ危ねぇ、肝が冷えるってのはこういうのを言うのか?」
しかし人間を超越する力を持つのは、エボルトにも当て嵌まる。
擬態を解き、一瞬だけブラッド族としての力を発揮。
強固な外皮で守られた腕を盾に使い、最速の刃を防ぐ。
次なる剣が走る前に後方へ跳べば、今の僅かな攻防で全員対話の段階が終わったと察したのだろう。
それぞれ変身を終え戦闘に臨まんとする、であればこちらも相応しい方法を取るまで。
擬態を解き、一瞬だけブラッド族としての力を発揮。
強固な外皮で守られた腕を盾に使い、最速の刃を防ぐ。
次なる剣が走る前に後方へ跳べば、今の僅かな攻防で全員対話の段階が終わったと察したのだろう。
それぞれ変身を終え戦闘に臨まんとする、であればこちらも相応しい方法を取るまで。
『OVER THE EVOLUTION!』
「やっぱそれかよ……!」
再び石動惣一に擬態し、右手に持ったデバイスを起動。
グリモワールのウワサとの激突時に、薄々気付いていたとはいえ。
最悪の予想が現実になると分かれば、万丈も戦慄を隠せない。
旧世界で幾度となく、自分達を追い詰めたアレが。
グリモワールのウワサとの激突時に、薄々気付いていたとはいえ。
最悪の予想が現実になると分かれば、万丈も戦慄を隠せない。
旧世界で幾度となく、自分達を追い詰めたアレが。
エボルトの真の力が、解放される。
『COBRA!』『RIDER SYSTEM!』
『REVOLUTION!』
デバイスを突き刺しただけでは終わらず、二本のエボルボトルを装填。
ハッと自身の所持品を確認する万丈を、今更だと鼻で笑う。
腹部の機械はクローズが使用中のものと、細部に至るまで変わらない。
だが同じと思ってもらっては困る、何せこっちがオリジナルだ。
ハッと自身の所持品を確認する万丈を、今更だと鼻で笑う。
腹部の機械はクローズが使用中のものと、細部に至るまで変わらない。
だが同じと思ってもらっては困る、何せこっちがオリジナルだ。
レバーの回転に合わせ接続済のデバイス、『エボルトリガー』のメーターが急上昇。
内部に格納した活性強化剤タンクと、ボトルの成分が反応を示す。
周囲へ複数展開されるは、破滅の箱を思わせる物体。
人間達の不安を大いに煽る音楽が奏でられる中、合図となる言葉が紡がれた。
内部に格納した活性強化剤タンクと、ボトルの成分が反応を示す。
周囲へ複数展開されるは、破滅の箱を思わせる物体。
人間達の不安を大いに煽る音楽が奏でられる中、合図となる言葉が紡がれた。
『Are You Ready?』
「変身」
『BLACK HOLE!BLACK HOLE!BLACK HOLE!REVOLUTION!』
『フハハハハハハ……!!!』
複数の箱は一つとなり、エボルトを閉じ込める。
宙へ浮かんだ黒穴に吸い込まれ、消失も僅か一瞬のこと。
遥か地の底より響くかの低い笑いと共に、帰還を果たす。
全ての工程を終えた時、星を狩る者が真の姿へ変身を完了した。
宙へ浮かんだ黒穴に吸い込まれ、消失も僅か一瞬のこと。
遥か地の底より響くかの低い笑いと共に、帰還を果たす。
全ての工程を終えた時、星を狩る者が真の姿へ変身を完了した。
魔法少女は、幸福な魔女を取り込んだ狂気の芸術家を重ねた。
カレイドライナーは、腐り果てた世界を捨て新天地を目指した魔術師を重ねた。
上弦の壱は、平安の世に始まり歴史の影を蹂躙し続けた始祖を重ねた。
カレイドライナーは、腐り果てた世界を捨て新天地を目指した魔術師を重ねた。
上弦の壱は、平安の世に始まり歴史の影を蹂躙し続けた始祖を重ねた。
血よりも濃いボディスーツや、四肢へ張り付く金の装飾は以前までと変わりないが。
胸部を覆う分厚い装甲は、白と黒を基調にし無機質さが顕著に表れる。
肩部アーマーを始め、全身各所に降着円盤状のパーツを追加。
ローブを靡かせ、鋭利なフェイスモジュールも相俟って滅びを齎す悪魔のよう。
胸部を覆う分厚い装甲は、白と黒を基調にし無機質さが顕著に表れる。
肩部アーマーを始め、全身各所に降着円盤状のパーツを追加。
ローブを靡かせ、鋭利なフェイスモジュールも相俟って滅びを齎す悪魔のよう。
仮面ライダーエボル・ブラックホールフォーム。
旧世界の地球を消滅手前まで追い込んだ、悪夢の再来である。
旧世界の地球を消滅手前まで追い込んだ、悪夢の再来である。
「な、に、この魔力……魔女やウワサよりもずっと……!」
危害はまだ加えられてない。
指先一本触れておらず、相手はただそこへ立っているに過ぎない。
だというのにいろはは冷や汗が止まらず、寒さを感じなくとも震えが治まらなかった。
指先一本触れておらず、相手はただそこへ立っているに過ぎない。
だというのにいろはは冷や汗が止まらず、寒さを感じなくとも震えが治まらなかった。
『いやー……ちょっと冗談キツ過ぎますねこれ。イリヤさん、大丈夫ですか?』
「な、なんとか……でも、こんなの……!」
「な、なんとか……でも、こんなの……!」
おちゃらけた口調でジョークの一つでも言えれば良いが、今度ばかりはルビーも声が硬い。
人間と同じ顔があったら、間違いなく眩暈を覚えたろう。
殺し合いに巻き込まれ、何度も強敵にぶつかって来たとはいえ。
異論を挟む余地無しに、別格と呼べる存在が目の前に現れてしまった。
対峙するだけで息が上がり、イリヤも緊張で神経がささくれ立つ。
人間と同じ顔があったら、間違いなく眩暈を覚えたろう。
殺し合いに巻き込まれ、何度も強敵にぶつかって来たとはいえ。
異論を挟む余地無しに、別格と呼べる存在が目の前に現れてしまった。
対峙するだけで息が上がり、イリヤも緊張で神経がささくれ立つ。
「…………」
無言のままに睨み付ける黒死牟なれど、敵の力量が理解出来ぬ愚鈍でもなし。
弟が沈まぬ太陽であるなら、此度の相手は底の見えぬ孔か。
屠り合いを謳う以上当然の事実として、始祖をも超える化け物が名を連ねると。
改めて、思い知らされた気分だった。
弟が沈まぬ太陽であるなら、此度の相手は底の見えぬ孔か。
屠り合いを謳う以上当然の事実として、始祖をも超える化け物が名を連ねると。
改めて、思い知らされた気分だった。
『フェーズ4、復活。自分の力だってのに、随分と手間を掛けさせられたもんだねぇ』
パンドラタワーでの決戦以来、久方ぶりに変身した形態だ。
ここに来るまで回り道をさせられたと苦笑いを浮かべるも、こうして戻ったのだから一先ずは良しとしよう。
ついでに言うと、幾つかの運に恵まれたのも大いにあった。
ここに来るまで回り道をさせられたと苦笑いを浮かべるも、こうして戻ったのだから一先ずは良しとしよう。
ついでに言うと、幾つかの運に恵まれたのも大いにあった。
エーデルフェルト邸で密かに回収しておいたデイパック。
白鳥司の三つ目の支給品こそ、エボルト本来の装備。
オリジナルのエボルドライバーと、エボルトリガーがセットで仕舞われていた。
見付けた時は流石に驚いたが、幸運への感謝はあっという間に不満顔へ早変わり。
というのも、即座の変身が不可能だったのだ。
白鳥司の三つ目の支給品こそ、エボルト本来の装備。
オリジナルのエボルドライバーと、エボルトリガーがセットで仕舞われていた。
見付けた時は流石に驚いたが、幸運への感謝はあっという間に不満顔へ早変わり。
というのも、即座の変身が不可能だったのだ。
変身に必須のエボルボトルは入っておらず、別個で複製品のエボルドライバーと共に滅へ支給。
おまけにエボルトリガーも、ベルナージュに手痛い反撃を受けた時と同じ状態。
つまり石化したままなせいで、首尾良くボトルを取り返してもどの道真の力は発揮出来ない。
最初からフェーズ4に到達させないよう、ゲームマスターどもが小細工したのだろう。
よってデイパックの奥底に眠らせ、後回しにする他なかった。
おまけにエボルトリガーも、ベルナージュに手痛い反撃を受けた時と同じ状態。
つまり石化したままなせいで、首尾良くボトルを取り返してもどの道真の力は発揮出来ない。
最初からフェーズ4に到達させないよう、ゲームマスターどもが小細工したのだろう。
よってデイパックの奥底に眠らせ、後回しにする他なかった。
転機が訪れたのは二回目の放送後、一足先に桜ノ館中学校に到着し間もない頃。
職員室でインスタントコーヒーを淹れ口を付けた時、リンボが操るグリモワールのウワサが見えた。
更に万丈達まで現れ戦闘へ発展、近場で起きるドンパチを見物の最中にふと思ったのだ。
繰り広げられるこの状況は使えると。
職員室でインスタントコーヒーを淹れ口を付けた時、リンボが操るグリモワールのウワサが見えた。
更に万丈達まで現れ戦闘へ発展、近場で起きるドンパチを見物の最中にふと思ったのだ。
繰り広げられるこの状況は使えると。
乱入のタイミングを息を潜めて窺い、両者激突の瞬間に思い描いた策を実行。
花家大我から奪ったクロノスの力を使って、戦場一帯の時間を停止。
どういった経緯か、複製品のエボルドライバーとボトル一式が万丈の手に渡ってるのも都合が良い。
手早く万丈の持つエボルボトルを奪い、エボルトリガーに彼らの放った技を吸収。
旧世界で使った手と同じだ、大量のエネルギーを直接取り込み石化を解除。
復活時の衝撃波に合わせ、自身もブラッド族の波動放射を広範囲に行った。
これによりただでさえ不安定だったグリモワールのウワサは、リンボ諸共吹き飛ばされたのである。
花家大我から奪ったクロノスの力を使って、戦場一帯の時間を停止。
どういった経緯か、複製品のエボルドライバーとボトル一式が万丈の手に渡ってるのも都合が良い。
手早く万丈の持つエボルボトルを奪い、エボルトリガーに彼らの放った技を吸収。
旧世界で使った手と同じだ、大量のエネルギーを直接取り込み石化を解除。
復活時の衝撃波に合わせ、自身もブラッド族の波動放射を広範囲に行った。
これによりただでさえ不安定だったグリモワールのウワサは、リンボ諸共吹き飛ばされたのである。
(プレゼントを二つも寄越したのは太っ腹だな。陛下殿の方はちょいと加減を間違えたが)
死に掛けのココアに毒を流し、首輪を手に入れた直後。
抵抗に出たカイザーインサイトには、試運転がてらフェーズ1のエボルでトドメを刺した。
万全の状態、若しくはクロスセイバーへ変身中ならまだしも。
満身創痍ではオリジナルのエボルドライバーを使い、尚且つパンドラパネルを取り込んだエボルトに敵わず塵へ還ったのが起きた全て。
抵抗に出たカイザーインサイトには、試運転がてらフェーズ1のエボルでトドメを刺した。
万全の状態、若しくはクロスセイバーへ変身中ならまだしも。
満身創痍ではオリジナルのエボルドライバーを使い、尚且つパンドラパネルを取り込んだエボルトに敵わず塵へ還ったのが起きた全て。
「クソッ!またそれになりやがって……!」
諸々の背景を細かく知らない万丈だが、マズい事態になったとは流石に分かる。
仲間が殺されたのみならず、エボルトが力を取り戻した。
旧世界で猛威を振るった形態を前に、悪態は一つ二つじゃ足りないが愚痴ってる場合でもない。
キルバス襲来時のような例外的な状況でない限り、ここから先の展開は決まったも同然。
仲間が殺されたのみならず、エボルトが力を取り戻した。
旧世界で猛威を振るった形態を前に、悪態は一つ二つじゃ足りないが愚痴ってる場合でもない。
キルバス襲来時のような例外的な状況でない限り、ここから先の展開は決まったも同然。
『さぁて……ウォーミングアップがてら、首輪を頂くとしますかね』
肩を軽く解し、あっさり告げる死刑宣告。
闘争が避けられると、有りもしない希望に縋ればゲームオーバーへ一直線。
標的に選ばれた者がやれる事は、一つを置いて他に無し。
戦わなければ、誰も生き残れない。
闘争が避けられると、有りもしない希望に縋ればゲームオーバーへ一直線。
標的に選ばれた者がやれる事は、一つを置いて他に無し。
戦わなければ、誰も生き残れない。
「テメェの好きになんざ、させるわけねぇだろうが!」
『Ready Go!』
『GREAT DRAGONIC FINISH!』
戦闘開始の合図を切ったのはクローズだ、迷わずレバーを回し成分を活性化。
フェーズ4に至ったエボルの強さは、嫌という程に味わって来た。
様子見に徹する余裕はない、一瞬の油断が確実な死へ繋がる。
先手必勝で腹部のドライバーを操作、高出力のエネルギーを右拳に付与。
遠慮なく盛大に殴り飛ばし、これ以上は何一つさせてやるものか。
フェーズ4に至ったエボルの強さは、嫌という程に味わって来た。
様子見に徹する余裕はない、一瞬の油断が確実な死へ繋がる。
先手必勝で腹部のドライバーを操作、高出力のエネルギーを右拳に付与。
遠慮なく盛大に殴り飛ばし、これ以上は何一つさせてやるものか。
「うおらあああああっ!!」
エボルドライバーを使ってるのは敵だけじゃない、条件は同じ。
足りない分は迸る気合で補うだけだ。
狙う先は唯一の弱点、エボルトリガーにダメージを与える。
パンドラタワーの頂上で、幻徳が決死の覚悟でそこを攻撃したのはハッキリ覚えているのだ。
再会叶わず逝った友への感傷に、今だけ蓋をして。
蒼炎が勢いを増し急加速、一撃必殺を実現させるべき鉄拳が、
足りない分は迸る気合で補うだけだ。
狙う先は唯一の弱点、エボルトリガーにダメージを与える。
パンドラタワーの頂上で、幻徳が決死の覚悟でそこを攻撃したのはハッキリ覚えているのだ。
再会叶わず逝った友への感傷に、今だけ蓋をして。
蒼炎が勢いを増し急加速、一撃必殺を実現させるべき鉄拳が、
パシリ、と。
笑ってしまう程簡単に、それが当然と言うように受け止められた。
笑ってしまう程簡単に、それが当然と言うように受け止められた。
「なっ……!?」
『いい一撃だな。それに複製とはいえエボルドライバーを使いこなすとは、流石と言ってやるよ』
「離しやが――っ!」
『いい一撃だな。それに複製とはいえエボルドライバーを使いこなすとは、流石と言ってやるよ』
「離しやが――っ!」
押せども引けどもびくともせず、突き出したままで固定される。
なればと左拳を握り締め、殴り付けて拘束を緩めるまで。
胴体へフックが叩き込まれんとするも、片手が自由なのは敵もそう。
クローズの反応を追い越す拳速で、胸部へ衝撃が襲った。
なればと左拳を握り締め、殴り付けて拘束を緩めるまで。
胴体へフックが叩き込まれんとするも、片手が自由なのは敵もそう。
クローズの反応を追い越す拳速で、胸部へ衝撃が襲った。
「がぁっ……!」
装甲の耐久性は下げられておらず、負傷軽減の機能は正常に働いている。
その事実を加味して尚も、呼吸が数秒止まり掛ける痛みが来た。
同じエボルドライバーだというのに、ここまで差が生じるのか。
たった一撃で理解させられ、空気の抜けた風船のように吹き飛ぶ。
その事実を加味して尚も、呼吸が数秒止まり掛ける痛みが来た。
同じエボルドライバーだというのに、ここまで差が生じるのか。
たった一撃で理解させられ、空気の抜けた風船のように吹き飛ぶ。
『次はお前か?是非とも剣術の手解きを期待したいねぇ』
クローズと入れ替わりに前へ出たのは黒死牟。
軽口には一切耳を貸さず、妖刀の柄に手を掛ける。
呼吸と魔皇力を併用し、身体機能はとうに引き上げた。
瞬きを終える程度の極僅かな時すら必要無い、文字通りの一瞬で懐へ潜り込む。
軽口には一切耳を貸さず、妖刀の柄に手を掛ける。
呼吸と魔皇力を併用し、身体機能はとうに引き上げた。
瞬きを終える程度の極僅かな時すら必要無い、文字通りの一瞬で懐へ潜り込む。
――月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮
抜き放つは月の呼吸最速の剣。
魔皇力の恩恵も加算された影響で、速度も数段階上昇。
生前は霞柱の腕を奪ったが、今なら一刀で魂をも刈り取れるだろう。
顔面に驚愕を貼り付ける暇もなく、己が死を理解出来ず現世へ別れを告げる。
鮮血色へ染まった刀身が、逃れる事叶わぬ最期を届けんと疾走。
魔皇力の恩恵も加算された影響で、速度も数段階上昇。
生前は霞柱の腕を奪ったが、今なら一刀で魂をも刈り取れるだろう。
顔面に驚愕を貼り付ける暇もなく、己が死を理解出来ず現世へ別れを告げる。
鮮血色へ染まった刀身が、逃れる事叶わぬ最期を届けんと疾走。
装甲諸共叩き割るべく振るった刀はしかし、エボルが翳した剣に阻まれ停止。
ヒヒイロカネ以上の強度を誇る兵器、パーフェクトゼクターは矛にして盾。
加えて使い手自身が黒死牟の剣技を正確に見切り、簡単に防いでみせた。
ヒヒイロカネ以上の強度を誇る兵器、パーフェクトゼクターは矛にして盾。
加えて使い手自身が黒死牟の剣技を正確に見切り、簡単に防いでみせた。
「――っ」
己が剣が届かぬ現実以上に、黒死牟の意識を引き付けるのは振り被った敵の拳。
こちらへ迫り来る打撃の脅威を視界に閉じ込め、瞬時に判断を下す。
今の自分を以てしても回避は間に合わない、と。
故に取った選択は防御、ザンバットソードを引き抜いた直後に衝撃が走った。
刀身の震えが腕まで駆け巡り、気を張らねば得物を取り落としかねない。
こちらへ迫り来る打撃の脅威を視界に閉じ込め、瞬時に判断を下す。
今の自分を以てしても回避は間に合わない、と。
故に取った選択は防御、ザンバットソードを引き抜いた直後に衝撃が走った。
刀身の震えが腕まで駆け巡り、気を張らねば得物を取り落としかねない。
「……っ!」
視界が安定せずエボルが遠ざかるのはつまり、殴り飛ばされたのだ。
オーバーロードインベスの剛剣とも互角に打ち合った鬼の膂力が、力負けした。
屈辱に悶える暇もなく、壁を突き破り校舎内へ身を転がす。
オーバーロードインベスの剛剣とも互角に打ち合った鬼の膂力が、力負けした。
屈辱に悶える暇もなく、壁を突き破り校舎内へ身を転がす。
『そんでお次は、っと』
エボルへ殺到するは桜色の矢と、亡き仲間の槍。
貫通力強化の装備に加え、やちよの魔力を受け継ぎ出力も上昇。
大型の魔女が複数相手でも、纏めて的と化すいろはの一斉射出が直撃。
オーバーキルを疑う光景だが、エボルにはまるで効果無し。
適当に腕で払い除け、打ち漏らした矢が当たってもダメージゼロだ。
貫通力強化の装備に加え、やちよの魔力を受け継ぎ出力も上昇。
大型の魔女が複数相手でも、纏めて的と化すいろはの一斉射出が直撃。
オーバーキルを疑う光景だが、エボルにはまるで効果無し。
適当に腕で払い除け、打ち漏らした矢が当たってもダメージゼロだ。
『弾幕を張りたいんなら、もうちっと気合入れなきゃ痒いとも思えないぜ?』
――STEAM BREAK!COBRA!――
軽口を叩く傍ら、自身の得物を取り出す。
血濡れの暗躍者だった頃から使い慣れた、今や愛銃に等しい武器。
トランスチームガンにボトルを装填し、トリガーを引く。
絶大な自身の力を流し込んだ影響で、ブラッドスタークの時を凌駕する威力だ。
エネルギー体の大蛇がいろはの魔法を片っ端から飲み込み、大爆発を引き起こす。
血濡れの暗躍者だった頃から使い慣れた、今や愛銃に等しい武器。
トランスチームガンにボトルを装填し、トリガーを引く。
絶大な自身の力を流し込んだ影響で、ブラッドスタークの時を凌駕する威力だ。
エネルギー体の大蛇がいろはの魔法を片っ端から飲み込み、大爆発を引き起こす。
「きゃあああああっ!?」
重量を誇るライダーの装甲があっても、留まるのが困難を極める衝撃だ。
いろはの意志を無視し足が地面に別れを告げ、宙でもみくちゃにされる。
受け身を取れるだけの余裕も奪われ落下、激突箇所を鈍痛が襲う。
魔法少女の打たれ強さが無ければ骨折は確実、そして何もせずにいたら骨が砕ける程度じゃ済まない。
よろける体を起こす間にも、エボルは悠々と近付きつつあった。
いろはの意志を無視し足が地面に別れを告げ、宙でもみくちゃにされる。
受け身を取れるだけの余裕も奪われ落下、激突箇所を鈍痛が襲う。
魔法少女の打たれ強さが無ければ骨折は確実、そして何もせずにいたら骨が砕ける程度じゃ済まない。
よろける体を起こす間にも、エボルは悠々と近付きつつあった。
「夢幻召喚(インストール)――バーサーカー!」
仲間に危機が迫っているなら、退けない選択を選ぶ気は最初から無し。
この地で創造し、魔女との一戦で引き出した力を再度使用。
半神半巨人の狂戦士、マグニの力を降ろす。
大槌片手に殴り掛かる様は、年相応の少女にあるまじき迫力。
神腕と化した右腕で繰り出される怪力は、正しく神の領域へ踏み込んだもの。
悪意を撒き散らす相手に加減は一切無用、躊躇を抱ける段階でないとイリヤもとっくに理解してる以上。
豪快に殴り飛ばされる以外の末路が、あるか否か。
この地で創造し、魔女との一戦で引き出した力を再度使用。
半神半巨人の狂戦士、マグニの力を降ろす。
大槌片手に殴り掛かる様は、年相応の少女にあるまじき迫力。
神腕と化した右腕で繰り出される怪力は、正しく神の領域へ踏み込んだもの。
悪意を撒き散らす相手に加減は一切無用、躊躇を抱ける段階でないとイリヤもとっくに理解してる以上。
豪快に殴り飛ばされる以外の末路が、あるか否か。
答えは前者。
キャッチボールさながらの気安い動作で、いとも容易く大槌が止められた。
キャッチボールさながらの気安い動作で、いとも容易く大槌が止められた。
「そんな……っ!?」
『けったいな玩具じゃねぇかよ。パパとママに誕生日プレゼントで買ってもらったか?』
『けったいな玩具じゃねぇかよ。パパとママに誕生日プレゼントで買ってもらったか?』
強引に引き剥がすか、いや得物を手放す方が早い。
動揺を無理やり飲み込み実行、大槌を振るうのから素手の殴打に変更。
砲撃に並ぶか或いはそれ以上の神拳を叩き込むも、狙った先に標的の姿は見当たらない。
動揺を無理やり飲み込み実行、大槌を振るうのから素手の殴打に変更。
砲撃に並ぶか或いはそれ以上の神拳を叩き込むも、狙った先に標的の姿は見当たらない。
『イリヤさん!』
「っ!!」
「っ!!」
相棒の感知に従い迎撃の体勢を取るも遅い。
殴られた、痛みと共にそう分かった時には宙を泳ぐ後。
だがマグニのタフネスならまだ耐えられる範囲、歯を食い縛り地面へ拳を突き刺し留まる。
9歩の後退で理性を削ぎ落し、制御不能に陥るのだけは避けねば。
再び地面に足を付けた所へ大槌を投げ返され、掴むも勢いの強さで腕ごと引っ張られそうになった。
殴られた、痛みと共にそう分かった時には宙を泳ぐ後。
だがマグニのタフネスならまだ耐えられる範囲、歯を食い縛り地面へ拳を突き刺し留まる。
9歩の後退で理性を削ぎ落し、制御不能に陥るのだけは避けねば。
再び地面に足を付けた所へ大槌を投げ返され、掴むも勢いの強さで腕ごと引っ張られそうになった。
『ULTIMATE MATCH BREAK!』
――月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り
追撃はさせない、やらせる前に倒す。
二方向より、クローズと黒死牟が同時に仕掛ける。
片や旧世界での死闘を制した戦士の一人、片や十二鬼月最強の剣鬼。
実力に裏打ちされたが故の、合図無くともタイミングを見極めた攻撃だった。
二方向より、クローズと黒死牟が同時に仕掛ける。
片や旧世界での死闘を制した戦士の一人、片や十二鬼月最強の剣鬼。
実力に裏打ちされたが故の、合図無くともタイミングを見極めた攻撃だった。
フルボトル四本の成分をエネルギーに変換、極大の光刃を振り下ろす。
反対方向から迫るは二連並べた斬撃波と、不規則に設置された月輪の罠。
焼き斬られるか細切れか、惨たらしい末路を鼻で笑いエボルも慌てず手元を操作。
自力で跳ね除ける手段は腐る程ある。
反対方向から迫るは二連並べた斬撃波と、不規則に設置された月輪の罠。
焼き斬られるか細切れか、惨たらしい末路を鼻で笑いエボルも慌てず手元を操作。
自力で跳ね除ける手段は腐る程ある。
『HYPER AX』
『同時に襲えば倒せると思ったか?考えが甘過ぎだ』
強制招集機能を用いて、ドレイクゼクターを召喚。
タキオン粒子のみならず、自身のエネルギーも多大に付与。
迸る真紅が光斧を形成、回転斬りの要領で振り回す。
復讐に燃える魔女を相手取った時以上の熱で、纏めて斬撃を薙ぎ払う。
タキオン粒子のみならず、自身のエネルギーも多大に付与。
迸る真紅が光斧を形成、回転斬りの要領で振り回す。
復讐に燃える魔女を相手取った時以上の熱で、纏めて斬撃を薙ぎ払う。
「ぐあっ!?」
「ぬぅ……っ!」
「ぬぅ……っ!」
拡散したエネルギー波は、仕掛けた当人らをも襲った。
膨大な熱量を叩き付けられ、マトモに立つのすら困難を極める。
追撃すべくパーフェクトゼクターの操作を試みた時、装甲部へ矢が連続で命中。
少しでも気を逸らし仲間の支援に繋げようと、クロスボウを射るいろはだ。
ボディスーツも装甲も、地球外の物質を素材とするだけあって破壊は不可能に近い。
かといってこのままチクチクと刺されても目障りだ、やれやれと言うかのように首を振り、
膨大な熱量を叩き付けられ、マトモに立つのすら困難を極める。
追撃すべくパーフェクトゼクターの操作を試みた時、装甲部へ矢が連続で命中。
少しでも気を逸らし仲間の支援に繋げようと、クロスボウを射るいろはだ。
ボディスーツも装甲も、地球外の物質を素材とするだけあって破壊は不可能に近い。
かといってこのままチクチクと刺されても目障りだ、やれやれと言うかのように首を振り、
「がふっ!?」
ワープ能力を使い、いろはの背後へ移動。
無意味な抵抗も許さず、蹴りが腹部に突き刺さる。
吹っ飛び壁に激突した痛み以上に、胴体の方が深刻だ。
骨だけでなく、内臓も幾つか潰された。
手放しそうになる意識を必死に繋ぎ止め、固有魔法を使用。
肉体が元の形を取り戻すも、完治を待ってやるエボルじゃない。
武器を取り出し狙いを付けた時、頭上の気配を察知。
無意味な抵抗も許さず、蹴りが腹部に突き刺さる。
吹っ飛び壁に激突した痛み以上に、胴体の方が深刻だ。
骨だけでなく、内臓も幾つか潰された。
手放しそうになる意識を必死に繋ぎ止め、固有魔法を使用。
肉体が元の形を取り戻すも、完治を待ってやるエボルじゃない。
武器を取り出し狙いを付けた時、頭上の気配を察知。
「これ以上はさせない……っ!」
招雷スキルと主霊石の二重効果で、イリヤが振り下ろす大槌は激しく帯電。
直撃を許せば付近の地面諸共、消し飛ぶ衝撃が起こるだろう。
下手な宝具を凌駕する威力を見上げるエボルの反応は、危機感とは程遠い。
気だるそうに首を回し、直撃の寸前で消失。
標的が消えた事への反応より先に、頭部を走る痛みにイリヤの意識は持って行かれた。
死角へワープし、万力の如き握力でエボルに頭を鷲掴みにされたのだ。
直撃を許せば付近の地面諸共、消し飛ぶ衝撃が起こるだろう。
下手な宝具を凌駕する威力を見上げるエボルの反応は、危機感とは程遠い。
気だるそうに首を回し、直撃の寸前で消失。
標的が消えた事への反応より先に、頭部を走る痛みにイリヤの意識は持って行かれた。
死角へワープし、万力の如き握力でエボルに頭を鷲掴みにされたのだ。
「こ、の……!」
大槌で殴り付け脱しようにも、一手早いのは敵の方。
真下目掛け放り投げ、仰向けに倒れた所で腹部に足を乗せ固定。
クラスカード使用中故にその気になれば、退かせるのは可能だろうがしかし。
行動を待ってやるかは別、いろは相手に使う気だった得物を突き付ける。
真下目掛け放り投げ、仰向けに倒れた所で腹部に足を乗せ固定。
クラスカード使用中故にその気になれば、退かせるのは可能だろうがしかし。
行動を待ってやるかは別、いろは相手に使う気だった得物を突き付ける。
『放任主義のパパとママに代わって、悪戯のお仕置きをしてやるよ』
――FULL BOTTLE!STEAM ATTACK!――
「っ、ああああああああああっ!?」
二種の装備を組み合わせた狙撃銃、トランスチームライフルを至近距離で連射。
万丈から奪った内の一つ、ラビットエボルボトルで火力を強化済の銃撃だ。
急ぎ耐性をルビーが底上げするが、威力が高過ぎる故に痛みを殺し切れない。
足元で少女の悲鳴が流れても、お構いなしで引き金を引き続ける。
万丈から奪った内の一つ、ラビットエボルボトルで火力を強化済の銃撃だ。
急ぎ耐性をルビーが底上げするが、威力が高過ぎる故に痛みを殺し切れない。
足元で少女の悲鳴が流れても、お構いなしで引き金を引き続ける。
「いい加減に……しろよテメェ……!!」
『Ready Go!』
『GREAT DRAGONIC FINISH!』
度重なる蛮行に歯止めを掛けるべく、負傷も二の次でクローズが勝負に出た。
エボルドライバーを操作し、ボトルのエネルギーを蒼炎に変換。
全身に纏い、地を蹴り天高く跳躍。
視線をようやっとクローズへ移すも、最早止められない。
銃を投げ捨て受け止めんと構えると同時に、靴底が叩く。
エボルドライバーを操作し、ボトルのエネルギーを蒼炎に変換。
全身に纏い、地を蹴り天高く跳躍。
視線をようやっとクローズへ移すも、最早止められない。
銃を投げ捨て受け止めんと構えると同時に、靴底が叩く。
『こいつは……!』
最初の時の焼き直しで阻むつもりが、予想以上の勢いに押し出さる。
イリヤからは強制的に引き離され、地面をガリガリと削りながら更に後退。
防御を完全に突き破り一撃食らわせるまで、決して止まらぬとクローズは更にレバーを回す。
既に必殺の域へ入ったが、星狩り相手にはまるで足りない。
過剰供給に等しい量のエネルギーを送り込み、蒼炎は一層燃え上がる。
イリヤからは強制的に引き離され、地面をガリガリと削りながら更に後退。
防御を完全に突き破り一撃食らわせるまで、決して止まらぬとクローズは更にレバーを回す。
既に必殺の域へ入ったが、星狩り相手にはまるで足りない。
過剰供給に等しい量のエネルギーを送り込み、蒼炎は一層燃え上がる。
「このままぶっ潰してやる!!エボルトォッ!!!」
『威勢が良くて結構だ!だが……』
『威勢が良くて結構だ!だが……』
潰す、その言葉を実現させかねないクローズの気迫を前にし尚も余裕は健在。
万丈の爆発力は自身も認める所にあれど、勝負を焦り過ぎだ。
視覚センサー越しにしかと見た、火花を散らす複製品のエボルドライバーを。
力を授ける大元に異変が生じ、当然の流れで勢いにも陰りが表れ出す。
万丈の爆発力は自身も認める所にあれど、勝負を焦り過ぎだ。
視覚センサー越しにしかと見た、火花を散らす複製品のエボルドライバーを。
力を授ける大元に異変が生じ、当然の流れで勢いにも陰りが表れ出す。
「んなっ!?」
『お前は仮にも俺の一部!人間用のエボルドライバーじゃあ、先に限界が来るのは当たり前だァッ!』
『お前は仮にも俺の一部!人間用のエボルドライバーじゃあ、先に限界が来るのは当たり前だァッ!』
それ以上はエボルを押せず、遂に止められた。
振り上げた拳が打ち上げ、クローズは天高くを不格好に泳ぐ。
落下したとて装甲の耐久性を思えば、軽症で済むだろう。
オリジナルのエボルドライバーを操作する星狩りが、いなかったらだが。
振り上げた拳が打ち上げ、クローズは天高くを不格好に泳ぐ。
落下したとて装甲の耐久性を思えば、軽症で済むだろう。
オリジナルのエボルドライバーを操作する星狩りが、いなかったらだが。
『Ready Go!』
『BLACK HOLE FINISH!』
「ぐぁああああああああああああああああああああっ!!!??!」
エボルトリガーのメーターが急上昇。
地球外の未知の物質を破壊のエネルギーに変換し、片足へ収束。
クローズの落下に合わせ蹴りが炸裂、防御機能を無視し激痛が全身を駆け巡った。
地球外の未知の物質を破壊のエネルギーに変換し、片足へ収束。
クローズの落下に合わせ蹴りが炸裂、防御機能を無視し激痛が全身を駆け巡った。
『CIAO!』
「がはっ……」
嘲りを多大に含んだ電子音声が、技の発動完了を知らせる。
限界に達した複製品のエボルドライバーが外れ、部品をそこら中に散らし沈黙。
指一本動かすだけでも息が上がる今の万丈に、装備の破壊へ気を回す余裕はない。
焦ったように飛び回るクローズドラゴンへ向けて、言葉を返すのも億劫だ。
限界に達した複製品のエボルドライバーが外れ、部品をそこら中に散らし沈黙。
指一本動かすだけでも息が上がる今の万丈に、装備の破壊へ気を回す余裕はない。
焦ったように飛び回るクローズドラゴンへ向けて、言葉を返すのも億劫だ。
『おっとっと、またやり過ぎちまったか』
利用価値を見出しており、万丈だけはまだ生かすつもりなのは最初に言った通り。
なのについつい高威力の攻撃を繰り出し、自身の行いへ苦笑い。
カイザーインサイトの時といい、久方ぶりの変身もあって加減を忘れそうになる。
取り敢えずは、すぐには動けないだけ良しとしよう。
残った連中を手早く始末し、首輪を纏めて手に入れる。
なのについつい高威力の攻撃を繰り出し、自身の行いへ苦笑い。
カイザーインサイトの時といい、久方ぶりの変身もあって加減を忘れそうになる。
取り敢えずは、すぐには動けないだけ良しとしよう。
残った連中を手早く始末し、首輪を纏めて手に入れる。
『そういう事情だからなァ、手間を掛けさせないでくれると有難いんだが?』
余裕たっぷりの仕草で振り返るも、相手の返答は言葉じゃなく刀だ。
力の差は理解した、だからといって闘争に背を向ける黒死牟ではない。
屠り合い開始当初以上に、命を投げ捨てる気は失せた。
己が剣で以て生きる術を切り開く他ないのならば、愚直と嘲笑われようとも振るい続けよう。
力の差は理解した、だからといって闘争に背を向ける黒死牟ではない。
屠り合い開始当初以上に、命を投げ捨てる気は失せた。
己が剣で以て生きる術を切り開く他ないのならば、愚直と嘲笑われようとも振るい続けよう。
――月の呼吸 拾参ノ型【極】
妖刀と魔剣が描くは、この地で三度目となる鬼の牙。
必ずや打ち砕く、殺されてはやれぬ理由が生まれたが故に。
突き立てられた牙を、星狩りは暫し沈黙を貫き見つめ、
必ずや打ち砕く、殺されてはやれぬ理由が生まれたが故に。
突き立てられた牙を、星狩りは暫し沈黙を貫き見つめ、
『これがお前の全力だとすりゃ、肩透かしもいいところだなおい』
心底つまらなそうに、冷え切った声色で。
魔皇の真紅に染め上げた牙をへし折り、三日月が砕け散る。
回避は許さない、防御は無意味、迎撃など言わずもがな。
微塵の足掻きすら認めぬ、音を優に超えた速さの一撃が捻じ込まれた。
魔皇の真紅に染め上げた牙をへし折り、三日月が砕け散る。
回避は許さない、防御は無意味、迎撃など言わずもがな。
微塵の足掻きすら認めぬ、音を優に超えた速さの一撃が捻じ込まれた。
「っ……!?」
胴体へ拳が突き刺さり、苦悶の声と血を吐き出す。
引き抜くと黒死牟は膝を折り、まるで自ら頸を差し出すような体勢へ。
すぐにでも立ち上がり敵を睨み付ける筈が、動けない。
引き抜くと黒死牟は膝を折り、まるで自ら頸を差し出すような体勢へ。
すぐにでも立ち上がり敵を睨み付ける筈が、動けない。
「なん、だ……これは……」
傷の痛みが一向に消えない、肉体の再生が始まらない。
内側でナニカが渦巻き、破壊されていく感覚は。
赫刀を突き刺された時とはまた別種の、ともすればあれ以上に激しい。
刻一刻と侵食を広める苦痛が、多大な重しを付けた。
内側でナニカが渦巻き、破壊されていく感覚は。
赫刀を突き刺された時とはまた別種の、ともすればあれ以上に激しい。
刻一刻と侵食を広める苦痛が、多大な重しを付けた。
物理的な傷であれば、鬼を絶命に追いやるのは不可能。
しかしエボルが鉄拳と共に打ち込んだのは、ブラッド族が操る破壊のエネルギー。
地球に存在する毒素とは比べるのも烏滸がましい、地球外の未知の力だ。
上弦の再生能力すら無視し、尋常ならざるダメージで蝕む。
しかしエボルが鉄拳と共に打ち込んだのは、ブラッド族が操る破壊のエネルギー。
地球に存在する毒素とは比べるのも烏滸がましい、地球外の未知の力だ。
上弦の再生能力すら無視し、尋常ならざるダメージで蝕む。
『折角だ。お前のご主人と同じく、お天道様の下でお陀仏ってのも粋な計らいだろ?』
『BLACK HOLE FINISH!』
鬼を殺す為の最適解は、始祖の最期を聞いたのもあって把握済。
高出力のエネルギーを使用し、フェーズ4の代名詞とも言える技を発動。
掌に生成した黒塊を頭上に放り、ブラックホールが出現。
桜ノ館中学を巻き添えに、戦場一帯を覆う闇も吸い込まれていく。
フィールド魔法の効果時間経過を待たずして、鬼の天敵を遮断する暗幕を除去。
高出力のエネルギーを使用し、フェーズ4の代名詞とも言える技を発動。
掌に生成した黒塊を頭上に放り、ブラックホールが出現。
桜ノ館中学を巻き添えに、戦場一帯を覆う闇も吸い込まれていく。
フィールド魔法の効果時間経過を待たずして、鬼の天敵を遮断する暗幕を除去。
「がっ……あぁ……っ!?」
となれば次に起こる光景は、誰にとっても予想通り。
未だ日が沈まず、月の出る幕には早い以上。
降り注ぐ暖かき陽光は、鬼を殺す灼熱の業火と化す。
着物で隠した肌が瞬く間に焼け爛れ、皮も筋肉も焦げ落ちる。
日陰となり得る建造物は最早、跡形もなく消え失せた。
駆け回るだけの力も、体内へ沈殿する地球外の猛毒が奪い去る。
未だ日が沈まず、月の出る幕には早い以上。
降り注ぐ暖かき陽光は、鬼を殺す灼熱の業火と化す。
着物で隠した肌が瞬く間に焼け爛れ、皮も筋肉も焦げ落ちる。
日陰となり得る建造物は最早、跡形もなく消え失せた。
駆け回るだけの力も、体内へ沈殿する地球外の猛毒が奪い去る。
『##%$++!』
資格者の危機を察知し、デイパックの奥底より人工生命体が飛び出す。
エボルドライバーと違って、サガークは所謂意思を持った変身ツール。
自身の判断で鎧を纏わせんと試みるが、無情にも刃が突き刺さった。
エボルドライバーと違って、サガークは所謂意思を持った変身ツール。
自身の判断で鎧を纏わせんと試みるが、無情にも刃が突き刺さった。
『主想いのペットで泣かせるじゃねぇか。先にあの世で出迎える準備でもしてるんだな』
――ELECTLIC STEAM――
バルブを回し、スチームブレードの切っ先が電撃を放出。
旧ファンガイア語で悲鳴らしき絶叫を上げた後、ピクリとも動かなくなる。
旧ファンガイア語で悲鳴らしき絶叫を上げた後、ピクリとも動かなくなる。
「……っ、……っ!」
逃れる術は無し。
下手人こそ違えど、始祖と同じ末路を辿るのも時間の問題だ。
下手人こそ違えど、始祖と同じ末路を辿るのも時間の問題だ。
「黒死牟さん……!!」
しかしその最後を、決して認めない者がここにはいた。
自身の傷も完治せぬ状態で、そんなものは後回しとばかりに駆け出す少女。
響く体の痛みよりも、視線の先で消えかかる命の方が。
黒死牟が死に瀕している事の方が、いろはには重要だった。
自身の傷も完治せぬ状態で、そんなものは後回しとばかりに駆け出す少女。
響く体の痛みよりも、視線の先で消えかかる命の方が。
黒死牟が死に瀕している事の方が、いろはには重要だった。
「今わたしが……!」
近付くやその手を取り、躊躇なく魔法を発動。
じゅうじゅうと煙を上げる肉体は、ブラッド族のエネルギーも後押しし崩壊の一途を辿る。
間もなく訪れる終焉を否定せんと、己の持つ力を行使。
崩れる速さが僅かに翳りを見せ、無意味と嗤われるように再び焼き潰された。
じゅうじゅうと煙を上げる肉体は、ブラッド族のエネルギーも後押しし崩壊の一途を辿る。
間もなく訪れる終焉を否定せんと、己の持つ力を行使。
崩れる速さが僅かに翳りを見せ、無意味と嗤われるように再び焼き潰された。
「なんで……」
固有魔法に不調が生じたのではない、これまでだって問題無く発動出来た。
だが自分達を取り巻くのは神浜市での戦いに非ず、ゲームマスターが支配下に置く殺戮遊戯。
参加者への制限は単純な強さ以外に、脱落者の発生を著しく阻害する類も含まれる。
別の世界線では亀裂の入ったソウルジェムをも修復してみせた、いろはの固有魔法であっても。
ここに来て枷が働きを見せ、黒死牟を引き戻せない。
消滅の瞬間を大人しく見ていろと、神の高笑いが聞こえてきそうだ。
だが自分達を取り巻くのは神浜市での戦いに非ず、ゲームマスターが支配下に置く殺戮遊戯。
参加者への制限は単純な強さ以外に、脱落者の発生を著しく阻害する類も含まれる。
別の世界線では亀裂の入ったソウルジェムをも修復してみせた、いろはの固有魔法であっても。
ここに来て枷が働きを見せ、黒死牟を引き戻せない。
消滅の瞬間を大人しく見ていろと、神の高笑いが聞こえてきそうだ。
「……っ」
どうあっても覆せない現実を突き付けられた。
何をやろうと無意味に過ぎない、自身の無力さを思い知らされた。
悔しさがこみ上げ、叫び出したい衝動に駆られ、
何をやろうと無意味に過ぎない、自身の無力さを思い知らされた。
悔しさがこみ上げ、叫び出したい衝動に駆られ、
「……絶対に、諦めない!」
手遅れと嘆く選択を壊し、抗う道へ大きく踏み出す。
両手で黒死牟の手を強く握り、魔法の発動を止めない。
喪う痛みは今も覚えている、助けられなかった後悔は一生忘れられない。
手を届かせられなかった自分を、無かった事には出来ない。
両手で黒死牟の手を強く握り、魔法の発動を止めない。
喪う痛みは今も覚えている、助けられなかった後悔は一生忘れられない。
手を届かせられなかった自分を、無かった事には出来ない。
だけどそれでも、自分の生き方を曲げたくなかった。
無謀だ何だと言われようと、届かせる為の手が自分にあるのなら。
何度でも伸ばし続け、掴むまで諦めてなどやるものか。
無謀だ何だと言われようと、届かせる為の手が自分にあるのなら。
何度でも伸ばし続け、掴むまで諦めてなどやるものか。
「黒死牟さん……」
名を呼んでも返事は返って来ない。
鍛え抜いた体は見る影も失せ、原形を保つ箇所を探す方が難しい。
死ぬ、目の前で死んでしまう彼を前に。
自身の頬を雫が伝うと気付きながら、幾度となく呼びかける。
鍛え抜いた体は見る影も失せ、原形を保つ箇所を探す方が難しい。
死ぬ、目の前で死んでしまう彼を前に。
自身の頬を雫が伝うと気付きながら、幾度となく呼びかける。
「戻ってきてください……!」
切な祈りを聞き届ける神は、囚われの身となり。
いるのは悪意を振り撒く邪神と、神を騙る命の冒涜者。
いるのは悪意を振り撒く邪神と、神を騙る命の冒涜者。
『健気にやってるとこ悪いが、お涙頂戴は趣味じゃあない。仲良く心中させてやるよ』
そして、生命を踏み躙る星狩り。
一人殺すのが二人一遍に変わっただけに過ぎず、結末は同じ。
パーフェクトゼクターを振るい、それで何もかもお終い。
仲間達の声も遠く、急ぎ駆け付けたところで間に合う段階は失せた。
一人殺すのが二人一遍に変わっただけに過ぎず、結末は同じ。
パーフェクトゼクターを振るい、それで何もかもお終い。
仲間達の声も遠く、急ぎ駆け付けたところで間に合う段階は失せた。
『CIA~O』
軽薄な別れの言葉を背に、いろはの瞳に映るのは。
枷を付ける為の肉体を失い、地面に落ちた首輪と。
握り締めた彼の手が――
枷を付ける為の肉体を失い、地面に落ちた首輪と。
握り締めた彼の手が――
☆☆☆
――信じろ。諦めない限り、願いは必ず叶う