「冷えてるかぁ~?バッチェ冷えてますよ~」
一面の銀世界、雪が積もり白く染まったエリアにて。
美しさの正反対に位置する存在が、クッソ寒々しい一人芝居を行っていた。
人類史における汚さを煮詰め、画像越しだろうと悪臭を想起せざるを得ない男。
見る者全ての語彙力を、「きたない」だの「くさそう」だのと小学生レベルにまで低下させる唯一無二のプレイヤー。
目を背けたくて堪らない、なのに誰もが目を奪われてしまう矛盾性の塊。
美しさの正反対に位置する存在が、クッソ寒々しい一人芝居を行っていた。
人類史における汚さを煮詰め、画像越しだろうと悪臭を想起せざるを得ない男。
見る者全ての語彙力を、「きたない」だの「くさそう」だのと小学生レベルにまで低下させる唯一無二のプレイヤー。
目を背けたくて堪らない、なのに誰もが目を奪われてしまう矛盾性の塊。
あの夏の申し子、アジア代表エンターテイナー、ミスター昏睡レイプ、淫夢で一番くせぇヤツ。
そして、ホモビに出ただけで愛した者の記憶を失う男。
野獣先輩がクッソ呑気な語録とは裏腹に、力強い足取りで雪道を踏みしめている。
そして、ホモビに出ただけで愛した者の記憶を失う男。
野獣先輩がクッソ呑気な語録とは裏腹に、力強い足取りで雪道を踏みしめている。
進行方向を睨む瞳は、嘗て後輩の体に狙いを定めた時以上に鋭い。
迂闊に近寄ろうものなら、純潔だけでなく命まで奪われかねない迫力。
否、野獣先輩の前に現れる者がいれば殺されるのは確実だ。
後輩の惨たらしい末路を目の当たりにし、優勝へと舵を切った時以上に。
愛しい者の記憶が抜け落ち、帰れる場所を自ら捨てたと再認識し。
尚も突き進むと決めた事で一層の覚悟が定まった、正真正銘の殺戮者(マーダー)。
それこそが今の野獣先輩である。
迂闊に近寄ろうものなら、純潔だけでなく命まで奪われかねない迫力。
否、野獣先輩の前に現れる者がいれば殺されるのは確実だ。
後輩の惨たらしい末路を目の当たりにし、優勝へと舵を切った時以上に。
愛しい者の記憶が抜け落ち、帰れる場所を自ら捨てたと再認識し。
尚も突き進むと決めた事で一層の覚悟が定まった、正真正銘の殺戮者(マーダー)。
それこそが今の野獣先輩である。
「すっげぇ白くなってる、ハッキリ分かんだね」
見渡す限り雪に覆われたエリアは必然的に、気温も他と比べ著しく低い。
真夏の蒸し暑い市街地を歩くような薄着では、体温があっという間に奪われる。
しかし野獣先輩にとってはむしろ、程よく思考を冷やすのもあり好都合。
一時の衝動に身を任せ昏睡レイプを目論む、純愛もクソもない小悪党の仮面はとうに捨てた。
たった一つの目的に全てを捧げる、悪逆非道な愛の殉教者。
外道と罵りたくば好きにしろ、鬼畜呼ばわりも受け入れよう。
ネットの玩具扱いして来た貴様らに、俺が本当の悪が何かを教えてやる(迫真)。
真夏の蒸し暑い市街地を歩くような薄着では、体温があっという間に奪われる。
しかし野獣先輩にとってはむしろ、程よく思考を冷やすのもあり好都合。
一時の衝動に身を任せ昏睡レイプを目論む、純愛もクソもない小悪党の仮面はとうに捨てた。
たった一つの目的に全てを捧げる、悪逆非道な愛の殉教者。
外道と罵りたくば好きにしろ、鬼畜呼ばわりも受け入れよう。
ネットの玩具扱いして来た貴様らに、俺が本当の悪が何かを教えてやる(迫真)。
「ん?」
暫く移動を続け、やがて見える景色に変化が表れた。
錆の付着した門を抜けたずっと先、一軒家へ辿り着く。
地図上には記されてないが、会場には参加者と縁のある施設が複数設置されてるのは全員の知る所。
ここ、白井邸もその一つ。
自身が住まう家程ではなくとも、中々の広さとホモ特有のマウントを内心で取りつつ。
警戒を怠らず侵入、土足で部屋をざっと見て回る(お邪魔しますも言わない人間の屑)。
錆の付着した門を抜けたずっと先、一軒家へ辿り着く。
地図上には記されてないが、会場には参加者と縁のある施設が複数設置されてるのは全員の知る所。
ここ、白井邸もその一つ。
自身が住まう家程ではなくとも、中々の広さとホモ特有のマウントを内心で取りつつ。
警戒を怠らず侵入、土足で部屋をざっと見て回る(お邪魔しますも言わない人間の屑)。
「誰もいない……いなくない?」
人が立ち寄った形跡こそ見られるも、自分以外に気配は皆無。
よもや自分と幾度も戦闘を繰り返した、憎たらしいメスガキ一行が訪れたとは露知らず。
ついでに言うと、エーデルフェルト邸の時のような首輪付の死体も無し。
よもや自分と幾度も戦闘を繰り返した、憎たらしいメスガキ一行が訪れたとは露知らず。
ついでに言うと、エーデルフェルト邸の時のような首輪付の死体も無し。
「しょうがねぇなぁ(GKU)。ま、多少はね?」
誰に対してか不明な言い訳もそこそこに、家内の探索を終了し外へ出る。
肩透かしな結果とはいえ、完全に収穫が得られなかった訳でもない。
玄関を出たその足で向かったのは、近くに停車中の車。
年代物のクラシックカーだが、移動手段で使わぬ手はない。
肩透かしな結果とはいえ、完全に収穫が得られなかった訳でもない。
玄関を出たその足で向かったのは、近くに停車中の車。
年代物のクラシックカーだが、移動手段で使わぬ手はない。
「おっ!開いてんじゃーん!」
まるでカーセックス中のカップルを襲撃し、彼氏の強姦を目論んだKBSトリオのようにドアを開ける。
用意の良い事に鍵も刺さったままで、運転技術さえあれば誰でも即座に使用可能。
遠慮は無用と乗り込み、エンジンを吹かす。
法定速度を守る必要はなく、免停を恐れる不安もない。
不幸にも黒塗りの高級車に激突しようと、運転手を跳ね飛ばしてでも進むまで。
用意の良い事に鍵も刺さったままで、運転技術さえあれば誰でも即座に使用可能。
遠慮は無用と乗り込み、エンジンを吹かす。
法定速度を守る必要はなく、免停を恐れる不安もない。
不幸にも黒塗りの高級車に激突しようと、運転手を跳ね飛ばしてでも進むまで。
「エンジン全開!行きますよー、行きますよーイクイク……ヌッ!(発進)」
最優先は生きた願望器たるメスガキ、次点でそいつの親友だという銀髪のメスガキ。
一般的感性の持ち主なら庇護欲を誘う少女であっても、己が愛の礎に変えるまで。
平成を代表する最低最悪のホモビ男優と、後ろ指を差されても構うものか。
顔も名前も、思い出すらも失って。
それでも残ったこの愛だけは、間違いじゃないと断言出来るのだから。
一般的感性の持ち主なら庇護欲を誘う少女であっても、己が愛の礎に変えるまで。
平成を代表する最低最悪のホモビ男優と、後ろ指を差されても構うものか。
顔も名前も、思い出すらも失って。
それでも残ったこの愛だけは、間違いじゃないと断言出来るのだから。
◆◆◆
殺し合いが始まり既に10時間以上が経ったが、会場全域を把握出来た者はまずいない。
舞草の里を出発し、A-5エリアに辿り着いた一行もそう。
地図を見れば街が存在しており、だだっ広いだけの草原等に比べれば人が集まる可能性はゼロに非ず。
となると近辺に美遊が送り込まれた、との予想も否定し切れまい。
当てが外れても、何らかの特別な施設が見付からないとも限らない。
各々探し人はいるが、現在位置の正確な情報は持っておらず。
こういう時に限って情報売買も行う、魔導雑貨商人は現れないと来た。
異論は飛ばず、道中でトラブルもなく辿り着いたのだった。
舞草の里を出発し、A-5エリアに辿り着いた一行もそう。
地図を見れば街が存在しており、だだっ広いだけの草原等に比べれば人が集まる可能性はゼロに非ず。
となると近辺に美遊が送り込まれた、との予想も否定し切れまい。
当てが外れても、何らかの特別な施設が見付からないとも限らない。
各々探し人はいるが、現在位置の正確な情報は持っておらず。
こういう時に限って情報売買も行う、魔導雑貨商人は現れないと来た。
異論は飛ばず、道中でトラブルもなく辿り着いたのだった。
一行を迎えた閑静な住宅街は今や、見るも無残な有様だ。
建築士によって設計された建造物は悉く、瓦礫の山に変わり。
交通安全を遵守し通勤通学に使われる道路は、砕けた煎餅のよう。
半ば程でへし折れた道路標識がまるで、墓標のようだと。
言葉に出さずに思ったのは、さて誰が最初か。
建築士によって設計された建造物は悉く、瓦礫の山に変わり。
交通安全を遵守し通勤通学に使われる道路は、砕けた煎餅のよう。
半ば程でへし折れた道路標識がまるで、墓標のようだと。
言葉に出さずに思ったのは、さて誰が最初か。
『これはまた派手にやりましたねぇ。怪獣映画のロケ地か何かで?』
人間による暴動の被害とは明らかに異なる、深く刻まれた破壊の痕跡。
怪獣、フィクションの世界でお馴染みの存在も。
デスゲームでは現実に存在するのを全員が知っている。
正確に言うと、怪獣へ変身可能な者の存在を把握していた。
怪獣、フィクションの世界でお馴染みの存在も。
デスゲームでは現実に存在するのを全員が知っている。
正確に言うと、怪獣へ変身可能な者の存在を把握していた。
「この場所……そうだ。確かキャルちゃんがみふゆさん達に会ったっていう……」
聖都大学附属病院での情報開示で、まだ自分達に敵意を向ける前のキャルの話を思い出す。
ゲーム開始宣言から間もなく、会場北部の街で二人の参加者に会ったと。
いろはの記憶に間違いが無ければ、該当するのは自分達がいる場所。
敵対的な者に遭遇したとは言っておらず、明確な戦闘の痕跡がある理由に首を傾げるも。
NPCを相手取っただけなのでわざわざ言うまでもなかった、或いはキャルとは別の者がここで暴れた等々。
納得のいく理由は幾らでも思い浮かぶ為、あえて深く疑念も持たない。
ゲーム開始宣言から間もなく、会場北部の街で二人の参加者に会ったと。
いろはの記憶に間違いが無ければ、該当するのは自分達がいる場所。
敵対的な者に遭遇したとは言っておらず、明確な戦闘の痕跡がある理由に首を傾げるも。
NPCを相手取っただけなのでわざわざ言うまでもなかった、或いはキャルとは別の者がここで暴れた等々。
納得のいく理由は幾らでも思い浮かぶ為、あえて深く疑念も持たない。
「幻さん、こっちに来てたのか……」
「はい、みふゆさんも一緒だったらしいです……」
「はい、みふゆさんも一緒だったらしいです……」
既に亡き仲間達の軌跡、その一端を知り表情に影が差す。
自分達のスタート地点を考えれば、どの道早期の合流は不可能だったろう。
会場の様子全てを把握し、尚且つ望むエリアへ一瞬で移動。
そんな芸当が出来るのは運営側のみ、いろはにも万丈にもやれる筈がない。
分かっていても、仲間と会えないまま死に別れたのは。
喪失を幾度味わっていようと、到底慣れそうもなかった。
自分達のスタート地点を考えれば、どの道早期の合流は不可能だったろう。
会場の様子全てを把握し、尚且つ望むエリアへ一瞬で移動。
そんな芸当が出来るのは運営側のみ、いろはにも万丈にもやれる筈がない。
分かっていても、仲間と会えないまま死に別れたのは。
喪失を幾度味わっていようと、到底慣れそうもなかった。
「……なあ、ここも調べてくのか?」
『まあ街全体が崩壊してるって感じでは、なさそうですからねー。完全に無駄足かどうかは、何とも言えません」
『まあ街全体が崩壊してるって感じでは、なさそうですからねー。完全に無駄足かどうかは、何とも言えません」
破壊されてるとはいえ、無事な箇所もチラホラ見受けられる。
ルビーの言う通り、端に立って眺めるだけで全体像を把握出来る狭さにも非ず。
暫し考えるも、ややあって念の為に探索を決定。
4人全員が戦闘慣れしており、今更並大抵の相手が現れたところで遅れは取らない。
時間を長々と使い過ぎないようにと、二手に分かれる。
ルビーの言う通り、端に立って眺めるだけで全体像を把握出来る狭さにも非ず。
暫し考えるも、ややあって念の為に探索を決定。
4人全員が戦闘慣れしており、今更並大抵の相手が現れたところで遅れは取らない。
時間を長々と使い過ぎないようにと、二手に分かれる。
『それじゃあお二人は東側をお願いします。いろはさんも彼をしっかり見張っていてくださいね!一人にしたら、まーた新しいヒロインを増やしますよきっと!』
「え、えっと、何の話ですか……?」
「…………」
「え、えっと、何の話ですか……?」
「…………」
釘を刺されるも、一体何を言っているのか分からない。
曖昧な笑みで聞き返すいろはの横で、黒死牟はルビーの軽口を聞き流す。
一々耳を傾けても得は無し、黙殺が正しい選択と理解するのに時間は掛からなかった。
尤も、毎度の如く揶揄いを受けて愉快になる性質でもなく。
眉間へ僅かに皺が寄り、不機嫌な空気を身に纏う。
曖昧な笑みで聞き返すいろはの横で、黒死牟はルビーの軽口を聞き流す。
一々耳を傾けても得は無し、黙殺が正しい選択と理解するのに時間は掛からなかった。
尤も、毎度の如く揶揄いを受けて愉快になる性質でもなく。
眉間へ僅かに皺が寄り、不機嫌な空気を身に纏う。
「あ、あの!本当にすみません!ウチのステッキには後でちゃんと言っておくので……!」
「言い聞かせるだけで……黙る類でもないだろう……」
「うっ、それはもう仰る通りで……」
「言い聞かせるだけで……黙る類でもないだろう……」
「うっ、それはもう仰る通りで……」
悪戯っ子に手を焼かされる保護者の気分で、イリヤはひたすら平謝り。
敵対しておらず、味方と言って良い男なのは分かっているが。
傍らで膨れ上がる威圧感には、緊張を抑えられないのも確かで。
自身の方を見ずに淡々と正論を返され、同意する他なかった。
敵対しておらず、味方と言って良い男なのは分かっているが。
傍らで膨れ上がる威圧感には、緊張を抑えられないのも確かで。
自身の方を見ずに淡々と正論を返され、同意する他なかった。
和やかなのかそうでないのか、判別不能の一幕を挟み。
いろはと黒死牟が街の奥へ向かうのを見送ると、残る二人も探索を始める。
いろはと黒死牟が街の奥へ向かうのを見送ると、残る二人も探索を始める。
「そんじゃあ俺らも見て回るか。もしかすりゃ、知ってる奴がいるかもしれねぇ」
「遊戯さん達、本当に何処まで飛ばされたのかな……」
「遊戯さん達、本当に何処まで飛ばされたのかな……」
流石にエーデルフェルト邸から、これ程に離れたエリアへ吹き飛んだとは思えない。
一方でキャルの起こした暴風に巻き込まれた面々が、付近に落ちた可能性もゼロじゃあない。
行方知れずの仲間達が運良くこの場所で見つかる、なんてのは流石に都合が良過ぎるか。
仮に参加者と出会えても、向こうが殺し合いに乗ってないと断言も出来まい。
襲われても即座に対処出来るよう気を張り、いろは達とは反対方向へ進む。
一方でキャルの起こした暴風に巻き込まれた面々が、付近に落ちた可能性もゼロじゃあない。
行方知れずの仲間達が運良くこの場所で見つかる、なんてのは流石に都合が良過ぎるか。
仮に参加者と出会えても、向こうが殺し合いに乗ってないと断言も出来まい。
襲われても即座に対処出来るよう気を張り、いろは達とは反対方向へ進む。
瓦礫を避けながら奥へ奥へと歩き、やがて景色に変化が表れる。
アスファルトは綺麗に舗装されており、建造物には亀裂一つ見当たらない。
キャルがメルバーの姿で暴れた区域を抜け、原形を保つ場へ到達。
多数の民家が続いており、間にポツポツと飲食店や雑貨店が点在。
万丈とイリヤ、両名にとって見慣れた現代日本の市街地以上の何かはなかった。
アスファルトは綺麗に舗装されており、建造物には亀裂一つ見当たらない。
キャルがメルバーの姿で暴れた区域を抜け、原形を保つ場へ到達。
多数の民家が続いており、間にポツポツと飲食店や雑貨店が点在。
万丈とイリヤ、両名にとって見慣れた現代日本の市街地以上の何かはなかった。
しかしふと、視線が一点で止まる。
周辺の家々と比べても一回り大きい、邸宅と言っても良いサイズ。
屋根を見上げると屋上を確認、相応の収入を得ている者でなければ所有不可能だろう。
エーデルフェルト邸並の規格外さではないが、周囲から少々浮いているようにも感じられた。
周辺の家々と比べても一回り大きい、邸宅と言っても良いサイズ。
屋根を見上げると屋上を確認、相応の収入を得ている者でなければ所有不可能だろう。
エーデルフェルト邸並の規格外さではないが、周囲から少々浮いているようにも感じられた。
『こ↑こ↓、なんだか気になりません?』
「はぇ~、すっごい大きい……え?今イントネーションちょっとおかしくなかった?」
「……気になるなら一応入ってみっか?」
「はぇ~、すっごい大きい……え?今イントネーションちょっとおかしくなかった?」
「……気になるなら一応入ってみっか?」
別に無視しても問題ないが、立ち寄って大きな損が発生するでもない。
反対意見も飛ばず、階段を上がって中へ足を踏み入れる。
外観に違わず立派なリビングが視界に飛び込むも、特別不審な点は見当たらない。
キッチンへ足を運んだ万丈が何と無しに冷蔵庫を開けると、アイスティーが常備してあった。
何故他の食材は選ばず、冷えたドリンクのみなのか。
理由に見当は付かないが然程不自然でもなく、まして水分は支給品の飲料で間に合ってる。
扉を閉じてイリヤの元へ戻った時、ルビーが何かに気付く素振りを見せた。
反対意見も飛ばず、階段を上がって中へ足を踏み入れる。
外観に違わず立派なリビングが視界に飛び込むも、特別不審な点は見当たらない。
キッチンへ足を運んだ万丈が何と無しに冷蔵庫を開けると、アイスティーが常備してあった。
何故他の食材は選ばず、冷えたドリンクのみなのか。
理由に見当は付かないが然程不自然でもなく、まして水分は支給品の飲料で間に合ってる。
扉を閉じてイリヤの元へ戻った時、ルビーが何かに気付く素振りを見せた。
『むむっ!?注意してくださいお二人共、私達以外に誰かいます』
「っ!いろはさん達、じゃないよね……」
「っ!いろはさん達、じゃないよね……」
別行動中の仲間は反対方向を調べに向かったのだ。
いろは達でないとすると、先んじてこの邸宅を訪れた正体不明の参加者。
殺し合いへ抗う善良な者か、ひょっとすれば美遊か。
或いはエボルトを始め、敵対する内の誰かかもしれない。
即座に戦闘へ発展しても問題ないよう、魔法少女(カレイドライナー)へ手早く転身。
万丈もまたスクラッシュゼリーを取り出し、何時でもドライバーへ叩き込めるよう構える。
いろは達でないとすると、先んじてこの邸宅を訪れた正体不明の参加者。
殺し合いへ抗う善良な者か、ひょっとすれば美遊か。
或いはエボルトを始め、敵対する内の誰かかもしれない。
即座に戦闘へ発展しても問題ないよう、魔法少女(カレイドライナー)へ手早く転身。
万丈もまたスクラッシュゼリーを取り出し、何時でもドライバーへ叩き込めるよう構える。
警戒する二人の耳へ、床を軋ませ近付く音が届いた。
来る、そう思った瞬間に目の前の扉が開く。
敵か味方か、どちらを見極めんとし、
来る、そう思った瞬間に目の前の扉が開く。
敵か味方か、どちらを見極めんとし、
「Foo~↑ビール!ビール!冷えてるか~?」
殺し合いを全く理解していないような、風呂上がりの飲酒を要求する能天気さ。
逞しくも汚らしい肉体を大胆に晒し、茶色い肌もチリチリした体毛も全て丸見え。
湯気の立ち込める様は入浴直後と分かるも、クッソ汚い印象は全く拭えない。
数多のホモガキに植え付けられた、「くさそう」というレッテルは永遠に消えないのだろう。
逞しくも汚らしい肉体を大胆に晒し、茶色い肌もチリチリした体毛も全て丸見え。
湯気の立ち込める様は入浴直後と分かるも、クッソ汚い印象は全く拭えない。
数多のホモガキに植え付けられた、「くさそう」というレッテルは永遠に消えないのだろう。
明日を生きる希望、神の最高傑作にして最大の過ち、やじうのおにいちゃん、ンニャピウス・イキスギウス810世。
そして、ホモビに出ただけで愛に体を喰い千切られた男。
説明不要の汚物ステロイダー、野獣先輩が一糸纏わぬ姿で現れた。
秘部を隠すべきタオルは、肩に掛けられ役目を放棄。
恥じる箇所など何一つないと言わんばかりに、全てが曝け出されてイリヤも硬直。
石像同然に動けずにいる事数秒、我に変えるや怯えを露わに後退る。
そして、ホモビに出ただけで愛に体を喰い千切られた男。
説明不要の汚物ステロイダー、野獣先輩が一糸纏わぬ姿で現れた。
秘部を隠すべきタオルは、肩に掛けられ役目を放棄。
恥じる箇所など何一つないと言わんばかりに、全てが曝け出されてイリヤも硬直。
石像同然に動けずにいる事数秒、我に変えるや怯えを露わに後退る。
「ファッ!?き、汚い……!」
『なんですかこのオッサン!?(驚愕) どこに需要あるんですかこの絵面は!前回のサービスシーンに戻してくださいよ!』
「お、おい早く隠せって!」
『なんですかこのオッサン!?(驚愕) どこに需要あるんですかこの絵面は!前回のサービスシーンに戻してくださいよ!』
「お、おい早く隠せって!」
義兄と浴室で鉢合わせたり、英雄王の雄の象徴をうっかり握ったりと。
ハプニングに度々見舞われたイリヤなれど、決して慣れた訳じゃあない。
必死に両手で顔を覆い、視界に映らないよう自己防衛に努める。
ルビーもルビーで、全く嬉しくない光景に憤慨を隠せない。
こんなことなら舞草の里にいた時、女湯へ意地でも突入するべきだったか。
明後日の方向に後悔を募らせる一方、万丈も焦り気味だ。
せめて股間部分だけでも、隠して欲しいものである。
ハプニングに度々見舞われたイリヤなれど、決して慣れた訳じゃあない。
必死に両手で顔を覆い、視界に映らないよう自己防衛に努める。
ルビーもルビーで、全く嬉しくない光景に憤慨を隠せない。
こんなことなら舞草の里にいた時、女湯へ意地でも突入するべきだったか。
明後日の方向に後悔を募らせる一方、万丈も焦り気味だ。
せめて股間部分だけでも、隠して欲しいものである。
「なんだこいつら!?不法侵入ですよ不法侵入!(AMMHRK) 勝手に人の家に上がり込むとか常識なさ過ぎィ!証拠物件として押収するからなぁ~?」
しかし怒りを見せるのは野獣先輩も同じだ。
白井邸で車を手に入れ、エリアを跨ぎ走らせて数時間が経過。
一向に誰とも会えないまま数時間が過ぎ、到着したのはA-5エリアの市街地。
大半の参加者にはTDN街としか思わないだろうが、野獣先輩には違う。
何とこの場所は自身の故郷にして淫夢ファミリーの聖地、下北沢の街並みに相違なかったのだ。
もしやと思い、記憶にあるのと寸分違わぬ道を抜け。
やって来てみれば案の定、自宅まで再現されていた。
白井邸で車を手に入れ、エリアを跨ぎ走らせて数時間が経過。
一向に誰とも会えないまま数時間が過ぎ、到着したのはA-5エリアの市街地。
大半の参加者にはTDN街としか思わないだろうが、野獣先輩には違う。
何とこの場所は自身の故郷にして淫夢ファミリーの聖地、下北沢の街並みに相違なかったのだ。
もしやと思い、記憶にあるのと寸分違わぬ道を抜け。
やって来てみれば案の定、自宅まで再現されていた。
ホモガキ達には野獣邸の名で親しまれる我が家を前に、胸中を駆け巡るは複雑に絡み合う感情。
勝手に自分の家を殺し合いに利用された、至極当然の怒り。
二度と帰れない可能性もあった自宅を、もう一度我が目で見た安堵。
愛しき相手と野獣邸で育んだ思い出も忘れてしまった事実への、耐え難い苦痛。
勝手に自分の家を殺し合いに利用された、至極当然の怒り。
二度と帰れない可能性もあった自宅を、もう一度我が目で見た安堵。
愛しき相手と野獣邸で育んだ思い出も忘れてしまった事実への、耐え難い苦痛。
自宅を指差し、独自のイントネーションで語録を口にしたことも。
屋上へ日焼けに誘い、オイルを塗りながら後輩の体を色欲一色の眼光で見定めたことも。
睡眠薬をサーッと入れたアイスティーで、眠りに誘ったことも。
地下室へ運び、想いの全てを性欲と共にぶつけたことも。
何もかも、思い出す事が出来ない。
これが恋人と結ばれた日の光景ってマジ?失望しました、五等分の花嫁全巻売って来ます…。
屋上へ日焼けに誘い、オイルを塗りながら後輩の体を色欲一色の眼光で見定めたことも。
睡眠薬をサーッと入れたアイスティーで、眠りに誘ったことも。
地下室へ運び、想いの全てを性欲と共にぶつけたことも。
何もかも、思い出す事が出来ない。
これが恋人と結ばれた日の光景ってマジ?失望しました、五等分の花嫁全巻売って来ます…。
愛しているのに、愛以外を失った。
改めて圧し掛かる現実に、胸を掻き毟られる痛みを感じ。
優勝を一層の覚悟で固めつつ、これまでの戦闘で散々な目に遭ったのを思い出す。
魔導雑貨商人との取引で得た道具の恩恵により、負傷と疲労は問題ないが。
精神的な意味でも一度切り替え、リスタートを切るのは悪手じゃない。
自宅へ堂々と入り、その足で浴室へ向かい汗と汚れを落としリフレッシュ。
清潔感に気を遣うのは女の子の特徴、ハッキリ分かんだね。
改めて圧し掛かる現実に、胸を掻き毟られる痛みを感じ。
優勝を一層の覚悟で固めつつ、これまでの戦闘で散々な目に遭ったのを思い出す。
魔導雑貨商人との取引で得た道具の恩恵により、負傷と疲労は問題ないが。
精神的な意味でも一度切り替え、リスタートを切るのは悪手じゃない。
自宅へ堂々と入り、その足で浴室へ向かい汗と汚れを落としリフレッシュ。
清潔感に気を遣うのは女の子の特徴、ハッキリ分かんだね。
熱いシャワーを浴びる間、遅れて下北沢を訪れたのがイリヤ達だった。
まさか一戦交えた男の自宅とは知る由もなく、双方にとって予想外の再会を果たし今に至る。
まさか一戦交えた男の自宅とは知る由もなく、双方にとって予想外の再会を果たし今に至る。
『イリヤさん!ドン引きする気持ちは分かりますが気を付けてください!このオッサン、何をしでかすか分かったもんじゃないですよ!』
「はっ!そ、そうだよね……!」
『龍我さんも用心を。このオッサンこそ、私達を放送前に襲った相手ですので』
「こいつが……!?」
「はっ!そ、そうだよね……!」
『龍我さんも用心を。このオッサンこそ、私達を放送前に襲った相手ですので』
「こいつが……!?」
警戒を促され、イリヤも慌てて気を引き締め直す。
相手は変質者の類と思っていた万丈だが、大間違いだ。
エーデルフェルト邸での戦闘時、複数の姿を使い分けイリヤを苦戦させた汚い男。
それが目の前にいると知れば、呑気に構えてはいられない。
相手は変質者の類と思っていた万丈だが、大間違いだ。
エーデルフェルト邸での戦闘時、複数の姿を使い分けイリヤを苦戦させた汚い男。
それが目の前にいると知れば、呑気に構えてはいられない。
「おじ↑さん↓だと!?ふざけんじゃねぇよオラァ!お兄さんだルォ!?」
「うおっ!?急にキレ始めたぞこのオッサン……」
「24歳、学生です(全ギレ)」
「あっ(察し)。……いやこの流れ前にもうやってるから!」
「うおっ!?急にキレ始めたぞこのオッサン……」
「24歳、学生です(全ギレ)」
「あっ(察し)。……いやこの流れ前にもうやってるから!」
ピチピチ(死語)の学生たる自分を悉く中年呼ばわりされ、さしもの野獣先輩もご立腹。
激おこうんこと化し身分を明かせば、何かをイリヤが察するも。
気楽に軽口を交わせる間柄でない以上、おふざけは早々に終わらせる。
事前の情報開示で敵がライダーの変身ツールを持つと、万丈も聞いていた。
であればこちらも相応の姿になるべく、変身を実行。
激おこうんこと化し身分を明かせば、何かをイリヤが察するも。
気楽に軽口を交わせる間柄でない以上、おふざけは早々に終わらせる。
事前の情報開示で敵がライダーの変身ツールを持つと、万丈も聞いていた。
であればこちらも相応の姿になるべく、変身を実行。
「あっ、おい待てい(江戸っ子)。勝手に動かないでくれよな~頼むよ~(懇願)」
「っ!?」
「っ!?」
しかし万丈と違い、野獣先輩は素で超人的な身体能力を持つ淫夢王。
片足を軸に回転し宙を舞い、勢いを乗せた蹴りを放つ。
BB素材によって会得した、竜巻旋風脚を慌てて回避。
リビング内の調度品があちこちに散らばる中、イリヤが魔力弾を撃ち込もうと狙いを付ける。
片足を軸に回転し宙を舞い、勢いを乗せた蹴りを放つ。
BB素材によって会得した、竜巻旋風脚を慌てて回避。
リビング内の調度品があちこちに散らばる中、イリヤが魔力弾を撃ち込もうと狙いを付ける。
『イリヤさん!回避を!』
「うぇっ!?」
「うぇっ!?」
寸前、ルビーの声に驚きつつも言われた通り動く。
跳び退いたのは正解だ、自分が立っていた場所の床に銃弾が降り注いだ。
あっという間に蜂の巣へ変えた物体の正体は、野獣先輩に非ず。
何時の間にか天井付近に浮遊する、小型飛行機。
精巧なラジコンなどではない、放った銃弾はイリヤの柔肌をボロキレに変えるだけの殺傷力を持つのだから。
跳び退いたのは正解だ、自分が立っていた場所の床に銃弾が降り注いだ。
あっという間に蜂の巣へ変えた物体の正体は、野獣先輩に非ず。
何時の間にか天井付近に浮遊する、小型飛行機。
精巧なラジコンなどではない、放った銃弾はイリヤの柔肌をボロキレに変えるだけの殺傷力を持つのだから。
野獣先輩ナランチャ・ギルガ説。
ジョジョの奇妙な冒険に登場するキャラクターにして、ブチャラティチームの一員。
ナランチャ・ギルガこそ、野獣先輩なんじゃあないかとする説だ。
全世界に星の数いるジョジョラーからは、「アバ茶の飲み過ぎで脳まで腐っちまったのかオメェはよォ~~~~~~?」と支持されている。
野獣先輩であると同時にナランチャでもある為、当然の如くスタンド能力も使用可能。
戦闘機型のヴィジョンを持つスタンド、エアロスミスでイリヤを銃撃したのだった。
ジョジョの奇妙な冒険に登場するキャラクターにして、ブチャラティチームの一員。
ナランチャ・ギルガこそ、野獣先輩なんじゃあないかとする説だ。
全世界に星の数いるジョジョラーからは、「アバ茶の飲み過ぎで脳まで腐っちまったのかオメェはよォ~~~~~~?」と支持されている。
野獣先輩であると同時にナランチャでもある為、当然の如くスタンド能力も使用可能。
戦闘機型のヴィジョンを持つスタンド、エアロスミスでイリヤを銃撃したのだった。
「変身しますよ~するする!変身!(迫真)」
『TURN UP』
エアロスミスの銃撃を躱す際に生じた隙で、野獣先輩も戦闘準備を終える。
ブレイバックルを装着し、すかさず操作。
カテゴリーAの力が解放され、オリハルコン製の鎧を装着。
仮面ライダーブレイドに姿を変えるも、まだ終わりじゃない。
既に強化形態の時間制限は解かれた、十全の殺意で以て此度の戦闘に臨む。
ブレイバックルを装着し、すかさず操作。
カテゴリーAの力が解放され、オリハルコン製の鎧を装着。
仮面ライダーブレイドに姿を変えるも、まだ終わりじゃない。
既に強化形態の時間制限は解かれた、十全の殺意で以て此度の戦闘に臨む。
『Absorb Qeen』
『Evolution King』
白銀から一変、黄金の鎧で全身を覆い隠す。
各部へ配置された意匠は、13体の不死の生物を象ったレリーフ。
右手に握る得物もまた、今の姿に相応しい重厚な大剣。
ブレイドの最終形態にして、剣崎一真の覚悟の証。
戦えない全ての人々に変わり、自らが剣を取る。
本来の変身者が抱いた決意は最早、己の愛以外全てを犠牲にしても構わない真逆さへ歪んだ。
各部へ配置された意匠は、13体の不死の生物を象ったレリーフ。
右手に握る得物もまた、今の姿に相応しい重厚な大剣。
ブレイドの最終形態にして、剣崎一真の覚悟の証。
戦えない全ての人々に変わり、自らが剣を取る。
本来の変身者が抱いた決意は最早、己の愛以外全てを犠牲にしても構わない真逆さへ歪んだ。
「全員俺の為に死んで、どうぞ(無慈悲)」
「そんなもん聞けるわけねぇだろ!」
「そんなもん聞けるわけねぇだろ!」
キングフォームの降臨を目の当たりにし、敵が一筋縄ではいかないと理解した上で。
万丈に臆した様子は無く、上等と拳同士をぶつけ合う。
因縁で結ばれた星狩りを始め、強敵を相手取るのはこれが最初でもない。
戦いに勝って切り抜けねばならないと分かれば、ビクビク震える暇すら惜しい。
中断を余儀なくされたが、改めてこちらも戦装束を身に纏わせてもらう。
万丈に臆した様子は無く、上等と拳同士をぶつけ合う。
因縁で結ばれた星狩りを始め、強敵を相手取るのはこれが最初でもない。
戦いに勝って切り抜けねばならないと分かれば、ビクビク震える暇すら惜しい。
中断を余儀なくされたが、改めてこちらも戦装束を身に纏わせてもらう。
「変身!」
『潰れる!溢れる!流れ出る!』
『DRAGON IN CROSS-Z CHARGE!』
ボディスーツを纏い、頭部から噴射したヴァリアブルゼリーが装甲を形成。
本来の蒼とは異なる、鮮血色の龍の意匠を胸部へ刻む。
正史おいては実現しなかった、ブラッド族の遺伝子を組み込んだ新形態。
クローズチャージに変わるや戸惑う素振りも見せず、ブレイド目掛け拳を放つ。
本来の蒼とは異なる、鮮血色の龍の意匠を胸部へ刻む。
正史おいては実現しなかった、ブラッド族の遺伝子を組み込んだ新形態。
クローズチャージに変わるや戸惑う素振りも見せず、ブレイド目掛け拳を放つ。
「テメェにこれ以上、仮面ライダーの力は使わせねぇっ!!」
「うるさいんじゃい!俺が優勝する道具で良いんだよ上等だルォ!?」
「うるさいんじゃい!俺が優勝する道具で良いんだよ上等だルォ!?」
愛と平和を胸に戦う戦士、愛の為だけに殺戮へ身を投じる野獣。
相容れない両者が用いる手段は、力以外にない。
相容れない両者が用いる手段は、力以外にない。
◆◆◆
静かだった。
草鞋と靴が一定間隔で地面を叩き、時折吹く風が錆びた看板を揺らす。
街を行く二人の耳に届く音は極僅か、互いに一言も発さず前へ進む。
探索を始めて早十数分、和気藹々と弾ませる会話は一切ない。
第三者が同行していれば、居心地の悪さを覚えたろうが。
両者の間に流れる空気へ、今更気まずそうに縮こまりもせず。
並んで歩き、点在する建造物を視界に収めていた。
草鞋と靴が一定間隔で地面を叩き、時折吹く風が錆びた看板を揺らす。
街を行く二人の耳に届く音は極僅か、互いに一言も発さず前へ進む。
探索を始めて早十数分、和気藹々と弾ませる会話は一切ない。
第三者が同行していれば、居心地の悪さを覚えたろうが。
両者の間に流れる空気へ、今更気まずそうに縮こまりもせず。
並んで歩き、点在する建造物を視界に収めていた。
双方を知る者が見れば、動機は違えど相応に我が目を疑う組み合わせだ。
宝崎中学でも、神浜指定校に転入してからも。
元々遠慮しいな性格もあって、いろはとクラスメイトには一定の距離がある。
同性は勿論、特別仲を深めた男子生徒など以ての外。
最も親しい異性の父親も、母と共に海外へ赴任中。
そんないろはが年上の男を連れ立って歩くのを目撃されては、明日は質問攻めの嵐だろう。
宝崎中学でも、神浜指定校に転入してからも。
元々遠慮しいな性格もあって、いろはとクラスメイトには一定の距離がある。
同性は勿論、特別仲を深めた男子生徒など以ての外。
最も親しい異性の父親も、母と共に海外へ赴任中。
そんないろはが年上の男を連れ立って歩くのを目撃されては、明日は質問攻めの嵐だろう。
黒死牟の方はもっと単純に、日の沈まぬ時間に歩くこと自体が最大級の異常。
天に座す太陽は徐々に西へ傾き、地上を照らす茜色も濃さを増しているが。
未だ完全に沈まず、月の出る幕へ待ったを掛けるとあっては。
光の届かぬ影に潜み、身動ぎせず息を殺し夜の到来を待つ。
それこそ鬼にとっての正しい生体、我が物顔で出歩くには自ら命を投げ捨てるに等しい時間帯だ。
天に座す太陽は徐々に西へ傾き、地上を照らす茜色も濃さを増しているが。
未だ完全に沈まず、月の出る幕へ待ったを掛けるとあっては。
光の届かぬ影に潜み、身動ぎせず息を殺し夜の到来を待つ。
それこそ鬼にとっての正しい生体、我が物顔で出歩くには自ら命を投げ捨てるに等しい時間帯だ。
人間と鬼、長きに渡る因縁を加速的に決着へ近付けた兄妹。
その妹が太陽を克服し、図らずも始祖の悲願を叶えるに足る鍵となったのは。
人としての正しき怒りと誠実さを抱え続けた、兄との絆があってこそ。
必然か、偶然か、美しき物語と見るか、皮肉な構図と捉えるか。
弟の存在無くして、黒死牟は陽光で死なぬ体を得られなかったろう。
慈しみなどとんでもない、愛や情など虫唾が走る。
煮詰めに煮詰めた負の念、幾年の歳月が経とうと捨てられぬ執着心。
なれど、そこには確かに継国縁壱への強い想いがあった。
燃ゆる神への神楽を受け継ぎ、悲しくも優しい鬼退治へ臨んだ兄妹と同じく。
家族の縁が始祖の呪いを断ち切った事実は、誰にも否定出来ない。
その妹が太陽を克服し、図らずも始祖の悲願を叶えるに足る鍵となったのは。
人としての正しき怒りと誠実さを抱え続けた、兄との絆があってこそ。
必然か、偶然か、美しき物語と見るか、皮肉な構図と捉えるか。
弟の存在無くして、黒死牟は陽光で死なぬ体を得られなかったろう。
慈しみなどとんでもない、愛や情など虫唾が走る。
煮詰めに煮詰めた負の念、幾年の歳月が経とうと捨てられぬ執着心。
なれど、そこには確かに継国縁壱への強い想いがあった。
燃ゆる神への神楽を受け継ぎ、悲しくも優しい鬼退治へ臨んだ兄妹と同じく。
家族の縁が始祖の呪いを断ち切った事実は、誰にも否定出来ない。
(黒死牟さん、本当に……)
少しだけ前を先に行く彼の顔を、そっと見つめる。
日陰を抜け、陽の下へ出ても肉の焼け焦げる音はなく。
晒した肌と着物で隠れた肉体、両方が無傷のまま。
二度、彼が太陽の熱で炙られる瞬間を目の当たりにした。
降り注ぐ灼熱に生命力を急速に奪われ、黄泉へ誘う魔の手に絡め取られる。
消滅の危機に瀕する様を見る度、焦燥と恐怖を掻き立てられた。
死なないで、そっちに行かないでと強く願った時の己自身は忘れられない。
日陰を抜け、陽の下へ出ても肉の焼け焦げる音はなく。
晒した肌と着物で隠れた肉体、両方が無傷のまま。
二度、彼が太陽の熱で炙られる瞬間を目の当たりにした。
降り注ぐ灼熱に生命力を急速に奪われ、黄泉へ誘う魔の手に絡め取られる。
消滅の危機に瀕する様を見る度、焦燥と恐怖を掻き立てられた。
死なないで、そっちに行かないでと強く願った時の己自身は忘れられない。
だからこうして、黒死牟が陽光に晒されても無事でいるのが。
天が齎す輝きは滅する為でなく、彼に暖かさも齎してくれるのが。
安堵と嬉しさをを抱かせ、
天が齎す輝きは滅する為でなく、彼に暖かさも齎してくれるのが。
安堵と嬉しさをを抱かせ、
(あっ…………)
前方へ六眼を向け、自身を一瞥もしない彼の貌。
感情を分かりやすく面に出さず、内心を探るのは困難だろうけど。
いろはの目に映る彼は、浴びせられる太陽の熱を――
感情を分かりやすく面に出さず、内心を探るのは困難だろうけど。
いろはの目に映る彼は、浴びせられる太陽の熱を――
「私に言いたいことがあるのか……」
不意に足を止め、訝しく振り返る。
進行方向を見やっていた眼は、同行者の少女を射抜く。
怒気は含んでいなくとも、眉間へ僅かに皺が寄っており上機嫌とは言い難い。
進行方向を見やっていた眼は、同行者の少女を射抜く。
怒気は含んでいなくとも、眉間へ僅かに皺が寄っており上機嫌とは言い難い。
「えっ、あ、あの……」
「文鳥のように凝視していれば……気付かぬ訳がなかろう……」
「ご、ごめんなさい……」
「文鳥のように凝視していれば……気付かぬ訳がなかろう……」
「ご、ごめんなさい……」
熱心に見ていたつもりはなかったが、恥ずかし気に目を逸らす。
不躾な視線と思われて、不愉快にさせてしまっただろうか。
仏頂面でこちらを見下ろし、責め立てる内容は口にして来ない。
話があるなら早く言えと、無言のままに六眼で伝える。
聞くこと自体は構わないらしく、感謝と申し訳なさが混じりつつも思い切って尋ねた。
不躾な視線と思われて、不愉快にさせてしまっただろうか。
仏頂面でこちらを見下ろし、責め立てる内容は口にして来ない。
話があるなら早く言えと、無言のままに六眼で伝える。
聞くこと自体は構わないらしく、感謝と申し訳なさが混じりつつも思い切って尋ねた。
「痛い、ですか?太陽を浴びて、何だか苦しそうだったから……」
彼にとってはもう、自らを滅ぼす灼熱ではなくなって。
恐れる必要のなくなった今、あえて光を避ける意味も無い。
陽の当たる場所を平然と歩くのに、何の疑問もない筈が。
顰めるでも喜ぶでもない、感情を削ぎ落したが如き彼の貌がいろはには。
どこか苦しく、苛立っているように見えた。
恐れる必要のなくなった今、あえて光を避ける意味も無い。
陽の当たる場所を平然と歩くのに、何の疑問もない筈が。
顰めるでも喜ぶでもない、感情を削ぎ落したが如き彼の貌がいろはには。
どこか苦しく、苛立っているように見えた。
馬鹿げた目の錯覚と、誰ぞに嘲りを投げられても。
首を横に振り、否定を返すくらいには確信を持てる。
月光が照らす下で初めて会い、現在に至るまでの十数時間。
言葉数は少なくとも、彼が感情を揺さぶられる瞬間を傍らで見て来たが故に。
面に出さぬ素顔を、気付けたのだった。
首を横に振り、否定を返すくらいには確信を持てる。
月光が照らす下で初めて会い、現在に至るまでの十数時間。
言葉数は少なくとも、彼が感情を揺さぶられる瞬間を傍らで見て来たが故に。
面に出さぬ素顔を、気付けたのだった。
「…………」
沈黙を返すのは、これが初めてという訳じゃあない。
見当違いの問いを投げられたが故の呆れ、とも言えず。
馬鹿正直に明かさず閉じ込めていた胸中を、小娘に言い当てられたこと。
幾重にも錠を掛けたにも関わらず、触れた指先一つで開錠を果たしたいろはへの。
苛立ちが肯定を阻み、下らぬ問いを突っ撥ねる為の内容が喉奥より這い出て、
見当違いの問いを投げられたが故の呆れ、とも言えず。
馬鹿正直に明かさず閉じ込めていた胸中を、小娘に言い当てられたこと。
幾重にも錠を掛けたにも関わらず、触れた指先一つで開錠を果たしたいろはへの。
苛立ちが肯定を阻み、下らぬ問いを突っ撥ねる為の内容が喉奥より這い出て、
「………………今になり、天の恵みだと有頂天になるとでも思ったのか……?」
紡いだのとは全く異なる言葉を吐き捨てる。
会話を打ち切ろうとしても、食い下がって聞かぬ娘だと諦めがあるからか。
いっそ煩わしさを直接ぶつけてやれば、少しは黙ると期待してか。
理由に判断の付かぬまま、苦き毒を掻き出すように鬱屈した言がいろはを刺す。
会話を打ち切ろうとしても、食い下がって聞かぬ娘だと諦めがあるからか。
いっそ煩わしさを直接ぶつけてやれば、少しは黙ると期待してか。
理由に判断の付かぬまま、苦き毒を掻き出すように鬱屈した言がいろはを刺す。
「我が物顔で居座る様が目障りだ……素知らぬ顔で光を浴びせ……殺意を抱かぬ筈がなかろう……」
肉も皮も、骨だって傷付けられていない。
黒死牟に滅びを与える熱は存在せず、感じるのは暖かさのみ。
それが余計に鬱陶しく、苛立ちを募らせずにはいられない。
照らしてくれと頼んだ覚えはない、輝きが欲しいと誰が言った。
黒死牟に滅びを与える熱は存在せず、感じるのは暖かさのみ。
それが余計に鬱陶しく、苛立ちを募らせずにはいられない。
照らしてくれと頼んだ覚えはない、輝きが欲しいと誰が言った。
「死を否定したことに……悔いなどない……だが……」
日輪の熱さを喜び好んで受け入れる程、我を忘れてはいない。
継国巌勝にとって、日の下を歩く人生は捨て去るべき弱さだった。
黒死牟にとって、日の下を歩いた記憶は捨て去った過去だった。
弟を超える、それだけの為に全てを捧げた男には何の価値も見出せない。
妻子、家、子孫、誇り。
不要と断じたそれらと然して変わらない、何の役にも立たない残骸。
それが今になって、自分の元へ戻って来た。
継国巌勝にとって、日の下を歩く人生は捨て去るべき弱さだった。
黒死牟にとって、日の下を歩いた記憶は捨て去った過去だった。
弟を超える、それだけの為に全てを捧げた男には何の価値も見出せない。
妻子、家、子孫、誇り。
不要と断じたそれらと然して変わらない、何の役にも立たない残骸。
それが今になって、自分の元へ戻って来た。
「死なぬだけで……苦痛であるのに変わりはない……」
捨てて久しく、振り返り見向く事もしなかった光景は。
己が考える以上に、心中へざわめきを立てている。
自ら終焉を否定したが故の結果だと、当然の如く理解してはいるも。
これ程に神経がささくれ立つのは――
己が考える以上に、心中へざわめきを立てている。
自ら終焉を否定したが故の結果だと、当然の如く理解してはいるも。
これ程に神経がささくれ立つのは――
「黒死牟さん」
春風が桜の花弁を優しく撫でるような、強張りがまるで宿らない。
こそばゆさすら感じる声が、耳元へ届く。
人間の小娘相手に恥部を暴露する己自身を、恥じる思いは健在だったのか。
気付けば六眼はあらぬ方を向いており、視界に娘を入れずにいる時。
何時の間にやら声は間近で聞こえ、頬を触れられる感触があった。
視線を戻せば、爪先立ちで手を伸ばす桜色の少女を捉える。
こそばゆさすら感じる声が、耳元へ届く。
人間の小娘相手に恥部を暴露する己自身を、恥じる思いは健在だったのか。
気付けば六眼はあらぬ方を向いており、視界に娘を入れずにいる時。
何時の間にやら声は間近で聞こえ、頬を触れられる感触があった。
視線を戻せば、爪先立ちで手を伸ばす桜色の少女を捉える。
「黒死牟さんが痛いって思うこと、太陽を嫌いだって思うことも。間違ってるとかおかしいとか、そんな風には言いません」
彼の過去も、日輪(おとうと)へ想うことだって。
一から十まで全て知ってはおらず、教えても良いとは思われてない。
一から十まで全て知ってはおらず、教えても良いとは思われてない。
「でもきっと、黒死牟さんが苦しく感じることにも意味があるって思うんです。だってあなたが……生きようと頑張ったから。まだ生きたいって、諦めなかったから」
救えなかった少女達がいた。
自分のせいで、絶望へ追いやった少女がいた。
良い思い出なんて口が裂けても言えない、今でも後悔と無力感の激痛はいろはを苛む。
けれど、喪失を経て今の自分がある。
必要な犠牲などと思いたくないが、彼女達に手を届かせられなかった過去も含めて。
自分らしく生きようと思えたのは本当だ。
自分のせいで、絶望へ追いやった少女がいた。
良い思い出なんて口が裂けても言えない、今でも後悔と無力感の激痛はいろはを苛む。
けれど、喪失を経て今の自分がある。
必要な犠牲などと思いたくないが、彼女達に手を届かせられなかった過去も含めて。
自分らしく生きようと思えたのは本当だ。
「今こうしてわたしに教えてくれたことは、あなたが生きてるから感じられた想いなんですよ?」
星狩りとの戦いで、彼が消滅を受け入れず。
生きる事を投げ出さなかったのが、自分の声を聞き届けてくれたのが。
彼と言葉を交わす、この瞬間にまで繋がった。
日輪の熱さに苛立つ彼を、全く悲しく思わないとは言えないけど。
生きようと足掻かなければ、そんな風に考える事すら不可能だった。
今は、痛いとしか感じられなくても。
抱いたそれらにはきっと、意味があると気付く時が来る筈だから。
生きる事を投げ出さなかったのが、自分の声を聞き届けてくれたのが。
彼と言葉を交わす、この瞬間にまで繋がった。
日輪の熱さに苛立つ彼を、全く悲しく思わないとは言えないけど。
生きようと足掻かなければ、そんな風に考える事すら不可能だった。
今は、痛いとしか感じられなくても。
抱いたそれらにはきっと、意味があると気付く時が来る筈だから。
「それでも、すぐに苦しくなくなるのは難しいから……」
痣の浮かんだ頬を、細い指がそっと撫でる。
鬼への憎悪も嫌悪もない、傷付けないようにと力を入れず。
日を浴びて、何より生命が宿るが為の熱さを手のひらで感じる。
直に太陽は一日の役目を終え、月が再び顔を出し。
やがて日の出と共に明日を迎える、彼が久しく見る景色は。
苦痛だけが全てではないと、それを知らないままでいるのは悲し過ぎるから。
鬼への憎悪も嫌悪もない、傷付けないようにと力を入れず。
日を浴びて、何より生命が宿るが為の熱さを手のひらで感じる。
直に太陽は一日の役目を終え、月が再び顔を出し。
やがて日の出と共に明日を迎える、彼が久しく見る景色は。
苦痛だけが全てではないと、それを知らないままでいるのは悲し過ぎるから。
「あなたが見てる太陽は辛いだけじゃない、そう気付けるように頑張りたいって。わたしが黒死牟さんにしてあげたいことの一つに、新しく決めました」
恐いものなんてない、大丈夫だよ。
あなたが思うよりもきっと、世界は優しいからと。
手を引いて、そう教えられたらと思わずにはいられなかった
あなたが思うよりもきっと、世界は優しいからと。
手を引いて、そう教えられたらと思わずにはいられなかった
「………………」
邪気の宿る余地が欠片もない微笑みに、鬼は言葉を詰まらせ喉が小さく鳴る。
こいつは一体何を言い出す、どうすればこうも生温い戯言を口に出せるのかと。
自身の理解を遥か遠くへ置き去りにされ、柄にもなく眩暈に襲われる錯覚すら覚えたが。
こいつは一体何を言い出す、どうすればこうも生温い戯言を口に出せるのかと。
自身の理解を遥か遠くへ置き去りにされ、柄にもなく眩暈に襲われる錯覚すら覚えたが。
「………………………お前、は」
口にした全ては、即座に撤回するその場限りの出まかせではなく。
自身に媚び諂い、庇護下へと腰を落ち着ける算段もなく。
必ずや果たさんという、本気の決意であり。
一度決めた以上は断固として譲らず、己の手を引いて行くのだと。
それをやってのける娘だと、分かってしまう程には。
環いろはという少女を、黒死牟も間近で見て来た。
自身に媚び諂い、庇護下へと腰を落ち着ける算段もなく。
必ずや果たさんという、本気の決意であり。
一度決めた以上は断固として譲らず、己の手を引いて行くのだと。
それをやってのける娘だと、分かってしまう程には。
環いろはという少女を、黒死牟も間近で見て来た。
出すべき言葉が、思い付かない。
呆れれば良いのか、腹立たしさをぶつければ良いのか。
何を言ったとて、いろは相手には暖簾に腕押し。
小娘相手に意地を張り、却って恥を更に塗りたくるので終わるんじゃあないか。
或いは、こう考える時点で自分もどこか狂い始めているのか。
呆れれば良いのか、腹立たしさをぶつければ良いのか。
何を言ったとて、いろは相手には暖簾に腕押し。
小娘相手に意地を張り、却って恥を更に塗りたくるので終わるんじゃあないか。
或いは、こう考える時点で自分もどこか狂い始めているのか。
何度目か数えてもいられないが、黒死牟が沈黙を貫くのはこれが最初でもない。
慣れてしまった反応へ、いろはが困ったような笑みを浮かべるのも。
二人にとっては、デスゲームで繰り返して来たやり取り。
ただ今回はいろはの方から、ほんのちょっぴり強気に出る。
慣れてしまった反応へ、いろはが困ったような笑みを浮かべるのも。
二人にとっては、デスゲームで繰り返して来たやり取り。
ただ今回はいろはの方から、ほんのちょっぴり強気に出る。
「勝手にしろって黒死牟さんに言われましたから、その……勝手にします」
「…………」
「…………」
意趣返し、と言うには控え目な仕草が離れていない。
とはいえ毒気を削ぎ落とすだけの効果は、見事に発揮された。
煩わしさは相も変わらず燻っているが、何ぞ口に出すのも億劫になり。
向けられたままの微笑みから視線を逸らすべく、天を仰げば未だ沈まぬ太陽。
とはいえ毒気を削ぎ落とすだけの効果は、見事に発揮された。
煩わしさは相も変わらず燻っているが、何ぞ口に出すのも億劫になり。
向けられたままの微笑みから視線を逸らすべく、天を仰げば未だ沈まぬ太陽。
(そうか……)
ああと、一つ合点がいった。
継国巌勝が捨てた光景は、上弦の壱たる黒死牟が見る事は出来ず。
そこへ何の不満も後悔も抱かずに、刀を振るって来たが。
始祖の呪縛から完全に解放され、さりとて人間の肉体に戻る訳でもなく。
十二鬼月でも何でもない、ただの鬼の黒死牟として日輪の光を浴びるのは。
継国巌勝が捨てた光景は、上弦の壱たる黒死牟が見る事は出来ず。
そこへ何の不満も後悔も抱かずに、刀を振るって来たが。
始祖の呪縛から完全に解放され、さりとて人間の肉体に戻る訳でもなく。
十二鬼月でも何でもない、ただの鬼の黒死牟として日輪の光を浴びるのは。
(過去に追い付かれたか……)
不要と切り捨てた過去を、そんなことはないと拾い上げられ。
差し出されたばかりか、自身の両手に無理やり持たせられたような。
過去の己が間違っていたと、突き付けられるかの不快さがあったのだろう。
むざむざ殺されるつもりはない、星狩り相手に否を叩き付けた己を悔いる気は皆無。
始祖の呪い如きに足を取られてたまるかと、あの時は我武者羅に足掻いたが。
再び日輪の下へ我が身を晒す意味を、ようやく思い知り憮然と空を睨み付けた。
差し出されたばかりか、自身の両手に無理やり持たせられたような。
過去の己が間違っていたと、突き付けられるかの不快さがあったのだろう。
むざむざ殺されるつもりはない、星狩り相手に否を叩き付けた己を悔いる気は皆無。
始祖の呪い如きに足を取られてたまるかと、あの時は我武者羅に足掻いたが。
再び日輪の下へ我が身を晒す意味を、ようやく思い知り憮然と空を睨み付けた。
と、未だ顔へ手を添えられたままだと気付き。
いつまで続けるのかと視線を下ろせば、向こうもハッとし慌てて離す。
陽光の熱さとはまた異なる温もりが、微かに頬へ残っていた。
後にも先にも、鬼への敵意を宿らせず触れる人間など。
この娘くらいだろうと、恥ずかし気に微笑むいろはを見つめる。
いつまで続けるのかと視線を下ろせば、向こうもハッとし慌てて離す。
陽光の熱さとはまた異なる温もりが、微かに頬へ残っていた。
後にも先にも、鬼への敵意を宿らせず触れる人間など。
この娘くらいだろうと、恥ずかし気に微笑むいろはを見つめる。
「はいはい、仲良しこよしで結構なことやで」
「でもいい加減終わりで良いのよね?あんまり待たせないでくれる?」
「でもいい加減終わりで良いのよね?あんまり待たせないでくれる?」
緩み掛けた空気は、聞き覚えの無い声で急激に引き締められた。
驚き肩が跳ねるいろはの横で、黒死牟も弾かれたように得物へ手を掛ける。
気配をまるで感じなかった。
長年の闘争で磨き抜いた感覚にも、魔皇力の影響で得た感知能力にも引っ掛からない。
巧妙に身を隠し、息を潜めていたというよりは。
前触れなくこの場へ現れたような、唐突さ。
驚き肩が跳ねるいろはの横で、黒死牟も弾かれたように得物へ手を掛ける。
気配をまるで感じなかった。
長年の闘争で磨き抜いた感覚にも、魔皇力の影響で得た感知能力にも引っ掛からない。
巧妙に身を隠し、息を潜めていたというよりは。
前触れなくこの場へ現れたような、唐突さ。
覚えのある現象だ。
先の戦闘で星狩りが度々見せた転移能力、或いは嘗ての同胞たる琵琶弾きの血鬼術。
空間へ干渉する力の持ち主かと、相手の姿を視界へ閉じ込める。
先の戦闘で星狩りが度々見せた転移能力、或いは嘗ての同胞たる琵琶弾きの血鬼術。
空間へ干渉する力の持ち主かと、相手の姿を視界へ閉じ込める。
正装を身に纏った男女は、いろはにも黒死牟にも見覚えがない。
一般的な会社勤めの装いではなく、政府関係者だろうか。
しかし服装や容姿以上に、目を引く特徴が二人にはあった。
ゲームの参加者全員へ強制的に装着し、生与殺奪の権利を運営側に握られた証。
黒死牟と千代田桃を除き、未だプレイヤー達の命を握る悪趣味な装飾。
一般的な会社勤めの装いではなく、政府関係者だろうか。
しかし服装や容姿以上に、目を引く特徴が二人にはあった。
ゲームの参加者全員へ強制的に装着し、生与殺奪の権利を運営側に握られた証。
黒死牟と千代田桃を除き、未だプレイヤー達の命を握る悪趣味な装飾。
「首輪がない……!?」
「そない驚く程でもあらへんやろ。そっちの目玉のお兄ちゃんかて、巻いてないんやから」
「そない驚く程でもあらへんやろ。そっちの目玉のお兄ちゃんかて、巻いてないんやから」
首輪を未装着の二人組への驚きも、軽口であっさり流される。
大して重要じゃあないとでも言いた気な態度に、いろはの困惑は益々深まるばかり。
一体彼らは何者なのか。
首輪がないということは何らかの方法で外せたのか、だとすれば自分達の前に姿を見せた理由は何か。
問うべき内容が次々浮かぶも、口に出す必要はなくなる。
見計らったかのタイミングで、向こうが口を開いた。
大して重要じゃあないとでも言いた気な態度に、いろはの困惑は益々深まるばかり。
一体彼らは何者なのか。
首輪がないということは何らかの方法で外せたのか、だとすれば自分達の前に姿を見せた理由は何か。
問うべき内容が次々浮かぶも、口に出す必要はなくなる。
見計らったかのタイミングで、向こうが口を開いた。
「どうやって首輪を外せたか、なんて質問されても答えられないわ。だって私達、参加者じゃないもの」
「……えっ?」
「NPCっておるやろ?僕らはその辺うろついてるのと違って、特別な個体やけどなぁ」
「……えっ?」
「NPCっておるやろ?僕らはその辺うろついてるのと違って、特別な個体やけどなぁ」
NPCの存在はいろは達も知っている。
放送前、護送車で移動中に襲って来た集団。
ショッカーライダーと違い、目の前の二人は意思疎通が取れる上に見た目は普通の人間。
しかもポッピーのように特別移動を制限された様子もなく、却って疑問が増えた。
放送前、護送車で移動中に襲って来た集団。
ショッカーライダーと違い、目の前の二人は意思疎通が取れる上に見た目は普通の人間。
しかもポッピーのように特別移動を制限された様子もなく、却って疑問が増えた。
「ほぉ……聞いとった通り、ほんまに首輪外しとるやんけ」
男の視線は黒死牟へ向かい、枷の無い首を無遠慮に見回す。
値踏みされているようで、当然良い気はしない。
少なくともポッピー同様に友好的、と期待するだけ無駄だろう。
自身の態度が与える印象へ興味はないのか、男はヘラヘラと笑みを貼り付ける。
見れば女も同じであり、見下す意図があからさまに視線へ籠めてあった。
値踏みされているようで、当然良い気はしない。
少なくともポッピー同様に友好的、と期待するだけ無駄だろう。
自身の態度が与える印象へ興味はないのか、男はヘラヘラと笑みを貼り付ける。
見れば女も同じであり、見下す意図があからさまに視線へ籠めてあった。
「まっ、首輪解除を先に言い出したんはこっちや。そこは文句あらへん。ただ、不公平なのは否定出来んわな」
「なに……?」
「せこせこ必死に首輪集めて、機械いじりが得意な奴が分解して調べて、試行錯誤を繰り返してようやっと解除に漕ぎ付ける。それがポピュラーな外し方やろ?
なのにお兄ちゃんか、後はあの吸血鬼くらいか?そいつらしかやれへん方法で外すんは、頑張ってる他の連中が不憫や」
「だから私達がペナルティを与えに来たってこと」
「なに……?」
「せこせこ必死に首輪集めて、機械いじりが得意な奴が分解して調べて、試行錯誤を繰り返してようやっと解除に漕ぎ付ける。それがポピュラーな外し方やろ?
なのにお兄ちゃんか、後はあの吸血鬼くらいか?そいつらしかやれへん方法で外すんは、頑張ってる他の連中が不憫や」
「だから私達がペナルティを与えに来たってこと」
首輪を外した、それはいい。
だが肝心の解除方法が鬼の肉体と心意システムの合わさった、偶発的な方法というのは。
運営側も流石に想定外だったのか、こうして遣いを寄越すに至った。
舞草の里にいた時、黒死牟が危惧した可能性が今になって現実になったらしい。
受け入れられるかどうかは、別だが。
だが肝心の解除方法が鬼の肉体と心意システムの合わさった、偶発的な方法というのは。
運営側も流石に想定外だったのか、こうして遣いを寄越すに至った。
舞草の里にいた時、黒死牟が危惧した可能性が今になって現実になったらしい。
受け入れられるかどうかは、別だが。
「待ってください!そんなの納得出来る訳ないじゃないですか!」
「このゲームは運営側が絶対や。僕に文句言われても困るで」
「このゲームは運営側が絶対や。僕に文句言われても困るで」
一方的な言い分に、さしものいろはも黙っていられない。
眉を吊り上げ当然の抗議をぶつけるが、相手は聞く耳持たず。
葛葉絋汰の乱入の代償をアユミに支払わせ、命を奪う連中だ。
正論が通じるならそもそも、殺し合いを始めてなどいない。
納得させる気が最初からないペナルティの対象へ、選ばれた黒死牟本人は沈黙を挟み、
眉を吊り上げ当然の抗議をぶつけるが、相手は聞く耳持たず。
葛葉絋汰の乱入の代償をアユミに支払わせ、命を奪う連中だ。
正論が通じるならそもそも、殺し合いを始めてなどいない。
納得させる気が最初からないペナルティの対象へ、選ばれた黒死牟本人は沈黙を挟み、
「下らん……」
心底の軽蔑を籠めた、冷え切った声色で短く吐き捨てる。
どういった目的で裁定者、黎斗がこの者達を動かしたのか。
彼らが今言った通り、正規の方法以外で首輪を外すのは認めていないから。
などと、それらしい理由は障子紙よりも薄っぺらい建前。
どういった目的で裁定者、黎斗がこの者達を動かしたのか。
彼らが今言った通り、正規の方法以外で首輪を外すのは認めていないから。
などと、それらしい理由は障子紙よりも薄っぺらい建前。
「童の双六遊びにも劣る遊戯で……盤面の支配者を気取るつもりか……」
本当に自分へ罰を下す為の干渉を試みるなら、禁止区域を一人で訪れた際にでも起きてるだろうに。
数時間遅れで発生するのは、幾ら何でも運営側の動きとして稚雑過ぎる。
であれば、辿り着いた答えは実に単純。
一種の抜け道に等しい首輪解除の罰へかこつけた、ちょっとしたお遊び。
現代日本のゲームに関する知識など、黒死牟の記憶にある筈もないが。
黎斗が遊戯へ並々ならぬ拘りを持つとは、既に気付いている。
此度は参加者同士の戦闘とまた違う、ほんの悪ふざけ(サブクエスト)に過ぎない。
数時間遅れで発生するのは、幾ら何でも運営側の動きとして稚雑過ぎる。
であれば、辿り着いた答えは実に単純。
一種の抜け道に等しい首輪解除の罰へかこつけた、ちょっとしたお遊び。
現代日本のゲームに関する知識など、黒死牟の記憶にある筈もないが。
黎斗が遊戯へ並々ならぬ拘りを持つとは、既に気付いている。
此度は参加者同士の戦闘とまた違う、ほんの悪ふざけ(サブクエスト)に過ぎない。
「貴様が直接顔を出せと……引き返して奴に伝えろ……」
殺戮遊戯を彩る一環、ただその為だけに弟を傀儡へ変えた男。
長年縁壱に向けた憎悪とは異なる、抑える気もない憤怒を抱く神。
檀黎斗への殺意を宿す低い声で告げるや、話は終わりだと背を向ける。
小間使いが何人現れた所で、知った事ではない。
長年縁壱に向けた憎悪とは異なる、抑える気もない憤怒を抱く神。
檀黎斗への殺意を宿す低い声で告げるや、話は終わりだと背を向ける。
小間使いが何人現れた所で、知った事ではない。
「いやぁ、そらアカンわ。そない舐めた態度取られてすごすご引き下がったら、僕らもええ笑いもんやで」
但し、向こうも素直に頷きはしない。
所詮はサブイベであっても、ゲームマスター直々の命令。
予定変更で帰還は無し、さっき言った通りにさせてもらう。
所詮はサブイベであっても、ゲームマスター直々の命令。
予定変更で帰還は無し、さっき言った通りにさせてもらう。
懐から取り出したキャップ付きの容器を軽く振り、成分を自身へ取り込む。
人間の姿が一変、白黒の縞模様を持つ異形の肉体に変化。
所々に青の装飾を走らせ、頭部は柱を思わせる縦長の形状。
シマウマの足部を模したナックルダスターを打ち鳴らし、金属音を発生。
人間の姿が一変、白黒の縞模様を持つ異形の肉体に変化。
所々に青の装飾を走らせ、頭部は柱を思わせる縦長の形状。
シマウマの足部を模したナックルダスターを打ち鳴らし、金属音を発生。
ゼブラロストスマッシュ、怪人の名を知る由もなく。
なれど戦闘回避が不可能であるとは、誰の目にも明らかだった。
軽快にアスファルトを蹴るや、縦長の頭部を振り下ろす。
真横へ黒死牟が躱した直後、音を立てて地面を粉砕。
頭突き一つで重機もかくやの破壊力を叩き出すが、標的に命中させねば満足には程遠い。
なれど戦闘回避が不可能であるとは、誰の目にも明らかだった。
軽快にアスファルトを蹴るや、縦長の頭部を振り下ろす。
真横へ黒死牟が躱した直後、音を立てて地面を粉砕。
頭突き一つで重機もかくやの破壊力を叩き出すが、標的に命中させねば満足には程遠い。
「あなたとは私が遊んであげる。い・ろ・は・ちゃん?」
「っ!」
「っ!」
黒死牟の援護に出るべく、魔法少女へ急ぎ変身。
クロスボウを向けるも、敵はゼブラロストスマッシュ単体ではない。
蠱惑的に微笑む女の手にもやはり、男と同じ容器。
キャップを外し成分を自身へと注入、瞬く間に異形へ変わる。
クロスボウを向けるも、敵はゼブラロストスマッシュ単体ではない。
蠱惑的に微笑む女の手にもやはり、男と同じ容器。
キャップを外し成分を自身へと注入、瞬く間に異形へ変わる。
黒みがかった灰色の体に加え、両腕にはハサミを装備。
頭部のブレードは嘴を思わせる形状をしており、鋭角的なフォルムが特徴の怪人。
シザーズロストスマッシュが、いろはと対峙する。
頭部のブレードは嘴を思わせる形状をしており、鋭角的なフォルムが特徴の怪人。
シザーズロストスマッシュが、いろはと対峙する。
嘗て、旧世界の地球でビルド殲滅計画を行ったブラッド族。
その内の二体、郷原光臣と才賀涼香の精巧な模造体(コピー)こそ今回黎斗が用意したボスクラスのNPC。
香風智乃達へ宛がったジーク以外にも、運営側が保有する特別個体である。
その内の二体、郷原光臣と才賀涼香の精巧な模造体(コピー)こそ今回黎斗が用意したボスクラスのNPC。
香風智乃達へ宛がったジーク以外にも、運営側が保有する特別個体である。
「心配せんでも殺しはせえへんで。ただちょいと、キツい目に遭ってもらうだけや」
「そっちの魔法少女ちゃんを痛め付ければ、あなたも少しは抵抗を止めてくれるでしょう?」
「そっちの魔法少女ちゃんを痛め付ければ、あなたも少しは抵抗を止めてくれるでしょう?」
鉄拳と刃をそれぞれの標的に突き付け、有無を言わせず私刑を宣言。
ルールで覆い隠した凄惨な暴力を実現させるのに、躊躇は生じない。
ルールで覆い隠した凄惨な暴力を実現させるのに、躊躇は生じない。
だが、思い通りに事を進ませてなるものか。
向かって来るなら話は早い、真っ向から叩き潰すまで。
鬼と魔法少女、共に戦意へ翳り無し。
向かって来るなら話は早い、真っ向から叩き潰すまで。
鬼と魔法少女、共に戦意へ翳り無し。