チク、タク。チク、タク
チク、タク。チク、タク
チク、タク。チク、タク
時刻を刻む時計の針音が鳴り響く。贄を欲する怪物の呼び声の如く
チク、タク。チク、タク
チク、タク。チク、タク
チク、タク。チク、タク
時計の針が刻む度、暗闇に包まれた世界は光に満ち溢れ、人々は自分たちがとある部屋に居ることにようやく気づく
周囲の壁にはアンリ・マティスの絵がずらりと飾られ、部屋の最奥、そこだけ明かりが灯されていない漆黒の空間の両側には、アルベルト・ジャコメッティ作「歩く男Ⅰ」「指差す男」の彫刻が置かれている
絵や彫刻の他、無造作に配置された白い台座の上には様々な物が置かれている。それは宝石箱であったり、衣服等の物品であったり
――最も、それらが元々『誰』であったのか、それを今いる彼ら・彼女らが知る術は存在しない
チク、タク。チク、タク
チク、タク。チク、タク
チク、タク。チク、タク―――
針音が鳴り止み、ゴォーン、ゴォーンと鐘の音が鳴り響く
鐘の音と共に、最奥の闇は光に照らされ、椅子に座った一人の男の姿が顕となった
鐘の音と共に、最奥の闇は光に照らされ、椅子に座った一人の男の姿が顕となった
「グッド・イブニ〜〜〜〜〜〜ング、諸君」
目の前に姿を晒した男の第一印象を言葉で表すならば、異質の一言
手足が異様に長く、服装は赤と黄緑の左右非対称。それはそれで芸術品としてはあり得るかもしれないが、実際に生きた人間として見るならばまさに異質
芸術の世界から飛び出してきた架空の住人、と言っても過言ではない
手足が異様に長く、服装は赤と黄緑の左右非対称。それはそれで芸術品としてはあり得るかもしれないが、実際に生きた人間として見るならばまさに異質
芸術の世界から飛び出してきた架空の住人、と言っても過言ではない
「突然呼び出しちゃって申し訳ないねぇ〜。まあ、でもこれは君たちにとっては特でもあり損でもある、まあ賭け事みたいなものだと思って気軽に行こう」
何が気軽に行こうなどと一部が心のなかで突っ込みたい気分を抑えたのを尻目に、男はペラペラと言葉を続ける
男の言葉に、『賭け事』という言葉にある意味安堵するもの、逆に警戒するものと様々だ。おそらく、ここで日常と『非日常』の差が明確に分かれる。そして
「と言っても、賭けるのは自分の命。そ、此処に居るみんなで殺し合ってもらうバトル・ロワイアル、さ!」
その男の言葉に、『日常』を謳歌していた側の人間は、望まぬして自らが置かれた『非日常』を自覚することとなる
「大まかなルール説明は会場に転移した後に渡しておく支給品袋の中にあるルールブックに載ってるから後で見てね〜。いやだってこれこれ細かいところ説明するのメンドクサイし」
「あ〜でも、特に重要な2つのルールは説明しておかないと」
「あ〜でも、特に重要な2つのルールは説明しておかないと」
割と雑な男の言動に一部が内心呆れ、一部は完全に恐怖に包まれるも、男はその重要な2つのルールについて話し始める
「まずは一つ、この殺し合いは、オークだとかゴブリンだとか、所謂NPCってのがいてね。……そいつらは率先して君たち参加者を性的な意味で襲いかかるように細工しているんだ」
「他にも、これは特定施設に限定されるわけだけど、参加者を淫らに狂わせるような罠も沢山あるのさ。所謂エロトラップダンジョンってやつ」
「あ〜、男性の方々も油断しないでくれない? 多分女体化トラップとかもあるし、なんならNPCに男色連中もいるかも知れないよ」
「他にも、これは特定施設に限定されるわけだけど、参加者を淫らに狂わせるような罠も沢山あるのさ。所謂エロトラップダンジョンってやつ」
「あ〜、男性の方々も油断しないでくれない? 多分女体化トラップとかもあるし、なんならNPCに男色連中もいるかも知れないよ」
男の言葉に、耳を疑う者は多数。仮にも、ただの殺し合いであるならばどれだけ良かったか
『エロトラップダンジョン』という言葉は、一部の人間には聞き覚えがあった。故にその内容を知っている者からすれば、ある者は未知への好奇心、ある者は恐怖から震え座り込む
『エロトラップダンジョン』という言葉は、一部の人間には聞き覚えがあった。故にその内容を知っている者からすれば、ある者は未知への好奇心、ある者は恐怖から震え座り込む
『無残に殺されるか』『拷問にも等しい快楽の渦の中で壊れるか』、どちらがマシか?
そんなもの、誰にもわかるわけがないのだ
そんなもの、誰にもわかるわけがないのだ
「そしてもう一つ――これは実例で説明したほうがわかりやすいからさ……目を離さないで、よぉ〜〜〜〜く焼き付けておくと良い」
1つ目のルール説明の次、2つ目のルール――その説明をしようとした男が指パッチンで軽快な男鳴り響かせれば、天井のパネルの一部がスライドし、空洞から産み落とされるかのように巨大なモニターが出現
モニターの画面が付き、画面の中には一人の褐色肌の少女の姿が映し出される
モニターの画面が付き、画面の中には一人の褐色肌の少女の姿が映し出される
―○―○―
「で、これから私をどうしようってことかしら?」
クロエ・フォン・アインツベルンが目を覚ませば、自らが拘束され、まるで磔刑寸前の聖女の如き状態であることを認識した
クロエが拘束されている部屋は四方にカメラが配置された殺風景な真っ白い小部屋、彼女の正面にはモニターに映る、先程殺し合いの参加者にルールを説明していたのと同一人物
彼女の首には鉄製の首輪が装着されており、不気味に緑の小さなランプが灯っていた
彼女の首には鉄製の首輪が装着されており、不気味に緑の小さなランプが灯っていた
「生憎、エッチなことしたいってなら諦めたほうが良いわよ。これでもそっちの方の知識は十分あるのよね、私」
『まあ確かに、君はそっち方面の知識は豊富そうに見えると思うよ。それにボクからの優しさで痛覚共有は切っておいた。後腐れなく抵抗してみたら良いと思うよ、――出来ればだけど、ね。メスガキちゃん』
「お気遣いどうも。で、これからどうするつもりなのかしら? あんたが私を弄ぼうっていうなら無駄なことだと思うわね。だってあんたのイチモツ見るからにヒョロそうだし。私のほうが主導権握って逆に弄んであげようかしら」
『生意気な口を叩けるのならそれで十分だなぁ。なんてったってそんなメスガキをこれからどうなるのか、それを客人達は楽しみにしてるんだよ。……今日の晩飯すっぽん鍋にしようかな』
『まあ確かに、君はそっち方面の知識は豊富そうに見えると思うよ。それにボクからの優しさで痛覚共有は切っておいた。後腐れなく抵抗してみたら良いと思うよ、――出来ればだけど、ね。メスガキちゃん』
「お気遣いどうも。で、これからどうするつもりなのかしら? あんたが私を弄ぼうっていうなら無駄なことだと思うわね。だってあんたのイチモツ見るからにヒョロそうだし。私のほうが主導権握って逆に弄んであげようかしら」
『生意気な口を叩けるのならそれで十分だなぁ。なんてったってそんなメスガキをこれからどうなるのか、それを客人達は楽しみにしてるんだよ。……今日の晩飯すっぽん鍋にしようかな』
男の『客人』という言葉に、これが見世物であるという可能性に行き着くクロエ。なんとも趣味が悪いと思いながらも、脱出の手段を脳内で模索していた
問題は首輪である。首輪の効力がわからない以上、下手に動くことは出来ない。拘束の方はいつでも脱出できるが、男の真面目なのか巫山戯ているのかよくわからない態度と言動
問題は首輪である。首輪の効力がわからない以上、下手に動くことは出来ない。拘束の方はいつでも脱出できるが、男の真面目なのか巫山戯ているのかよくわからない態度と言動
「さっさとするってなら始めなさい。退屈でこっちは仕方ないのよ」
『そうだねそうだね〜。それじゃあもう―――終わりにしよう』
『そうだねそうだね〜。それじゃあもう―――終わりにしよう』
男の言葉がまるで氷の如く冷たく鋭い音声を発したと同時に、首輪のランプが緑から赤に変わり、『ピーッ!』と警告音を鳴らす
「―――――――おっぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!」
その直後、クロエは発狂した。体中から汗や涙、そして様々な体液や尿を撒き散らし、拘束具を今にも壊さんとするほどに痙攣し、暴れ
「あがっ、あびゃがっががががっががががががっっっっっっっおぼごっがっががががあがびゃがぁぁぁいっっっっっ――――――あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っっっっっ!!!!!!」
呂律が回らず、意味の成さない悲鳴とも言うべき雑音を垂れ流し、汁と言う汁を部屋中に撒き散らす
「あ………ぁ………………ぁー………ぁー………ぁ―――――」
1分ほど経過し、少女が金切り声のごとくか細い雑音を響かせ、少し痙攣して―――二度と動かなくなった
その姿は、魔法少女姿の褐色少女を、白と黄色で汚く彩った、余りにも悍ましい光景なのであった
その姿は、魔法少女姿の褐色少女を、白と黄色で汚く彩った、余りにも悍ましい光景なのであった
【クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤシリーズ 死亡】
―○―○―
「何が起こったのか軽く説明するとね、彼女は首輪からナノマシンを注入されたんだ。それは人間の感度を『3千兆倍』にする媚薬を含めた。埋め込まれれば体中に入り込んだナノマシンが性感を活性化させ、脳が焼き切れるほどの快楽を与える」
「その結果、彼女の脳はあまりの快楽にオーバーヒートして死亡。所謂デスアクメってやつ」
「クロエちゃんは皆に、もうすぐ始まる殺し合いでもしルールを破ったらどうなるかを身を以て教えてくれたのでした、南〜無」
「その結果、彼女の脳はあまりの快楽にオーバーヒートして死亡。所謂デスアクメってやつ」
「クロエちゃんは皆に、もうすぐ始まる殺し合いでもしルールを破ったらどうなるかを身を以て教えてくれたのでした、南〜無」
モニターに手を合わす、男の巫山戯た態度と言葉に一部の参加者は暴れだす、ただ死ぬだけのほうがマシで、あんな事され方なんてまっぴら御免だと
冷静を保っていた参加者も、一部はかなり動揺しており、怒りの感情でそれを隠すのに精一杯な者が多数
ごく一部は興味深いと目線を向け、一部は逆に自分がどうなるかを楽しみ恍惚とした表情を浮かべるものも
冷静を保っていた参加者も、一部はかなり動揺しており、怒りの感情でそれを隠すのに精一杯な者が多数
ごく一部は興味深いと目線を向け、一部は逆に自分がどうなるかを楽しみ恍惚とした表情を浮かべるものも
発狂者たちの行動が煩わしかったのか、男が再度指パッチンを鳴らすと、天井の角から砲口のようなものが出現、そこから部屋中にガスが噴出され、部屋にいた、参加者として呼ばれた哀れなる贄達は次々と眠りこける
「――どうせルールブックに載ってるから説明不要かもしれないけど、念の為。もしこの絶望と性欲に塗れた殺し合いでたった一人生き残れたのなら、どんな願いでも叶えた上で、副賞として20億円プレゼント!」
「それじゃあみんな、頑張ってねぇ〜〜〜〜〜! シー・ユー・アゲイン!」
「それじゃあみんな、頑張ってねぇ〜〜〜〜〜! シー・ユー・アゲイン!」
その言葉を最後に男は去り、部屋の中に光が包まれ、そこにいた大勢の人々は光が止むと共に何処かへ消え去っていた
☆
『実存主義』という言葉が存在する。簡単に説明するならば「人間が中心である」という哲学思想
ジャコメッティの作品を評価した実存主義哲学者サルトルの有名な言葉に「実存は本質に先立つ」という言葉が存在する
キリスト教の世界観に置いて、神様が必然的にこの世のすべてを決めているという「予定説」があり
そのため人間には神様の創造した本質(魂)があって意味があるという宗教思想が根本に存在するのだ
そのため人間には神様の創造した本質(魂)があって意味があるという宗教思想が根本に存在するのだ
この考えと全く逆で否定する思想こそが、実存主義、無神論の概念の一つでもある
「皆様方、わたくしのオープニング・セレモニーはどうだったでしょうか」
何処ともわからぬ暗闇の中で、男は『客人』たちへ話しかける
「皆様の享楽と性癖を満足させられたのであれば、わたくしとしても満足の限りです」
「未だ至らぬ点もありますでしょうが、そこは追々精進していく所存でございます」
「未だ至らぬ点もありますでしょうが、そこは追々精進していく所存でございます」
『客人』たちの姿は見えない。彼らはどこか安全な場所か、ある意味は特等席か、どこかで見下ろしていることは確かなのだ
「―――」
喋り終えた男は、沈黙と静寂の中、新たに映し出されたモニターから会場と参加者を見下ろす
今回の会場はダンジョン『浮遊大陸』、そして浮遊大陸のマッピングは『客人』たちに募集をかけて決めたものだ。どんなマップが募集されたかは男ですらわからない
今回の会場はダンジョン『浮遊大陸』、そして浮遊大陸のマッピングは『客人』たちに募集をかけて決めたものだ。どんなマップが募集されたかは男ですらわからない
だからこそ、それが愉しいの。神はサイコロを振らないが、人はサイコロを振るものだ
この場所に『神』はいない。居るのは『人』か、大いなる力を得た『人』か
もし『神』が実在するとしても、それは参加者として連れてこられた者だ
人間存在こそが最初。神の時代は終わらせ、『人』の時代を到来させようとするは欲望に塗れた『人』
享楽と性欲と混沌に満ちた盤上は今此処に幕を開ける
男は、ヒエール・ジョコマンはその始まりただじっと、笑みを浮かべて見つめるのであった
『主催』
【ヒエール・ジョコマン@劇場版クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望】
【ヒエール・ジョコマン@劇場版クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望】