死の先にあるモノ ◆CMd1jz6iP2
「やれやれ―――随分と面白い地獄に着いたな」
九鬼耀鋼は、劇場の客席に座りながら独りごちた。
少し寂れてはいたが、参加者の10倍は簡単に入る大きな劇場に、人影は自分のみ。
公演中かのように薄暗い電気しかついていないが、潜むにはちょうどいい。
開始前から3人減ったバトルロイヤルを、どう動くか考えていた?
否。なぜ「生きているのか」という疑問に解こうと考えていたのだ。
九鬼耀鋼は、劇場の客席に座りながら独りごちた。
少し寂れてはいたが、参加者の10倍は簡単に入る大きな劇場に、人影は自分のみ。
公演中かのように薄暗い電気しかついていないが、潜むにはちょうどいい。
開始前から3人減ったバトルロイヤルを、どう動くか考えていた?
否。なぜ「生きているのか」という疑問に解こうと考えていたのだ。
名簿とやらを見てみれば、見知った名前が一つ。
如月双七。本名の武部涼一ではなかったため、同名の別人かとしれない。
「俺がいる時点で、それはないか」
最初にいた場所で起こった顛末からすれば、知り合いが呼ばれているのは確実。
ならば、あの莫迦弟子であると思ったほうが自然だった。
如月双七。本名の武部涼一ではなかったため、同名の別人かとしれない。
「俺がいる時点で、それはないか」
最初にいた場所で起こった顛末からすれば、知り合いが呼ばれているのは確実。
ならば、あの莫迦弟子であると思ったほうが自然だった。
「俺に付いて来るなと言っただろうが……いや、連れて来られたんだったな」
しかし、どうしても理解できない。
間違いなく死んだ自分が、どうしてここにいるのか。
実は、ここが地獄で、あの神父と学生らしき人間は閻魔の子分。
このゲームは、閻魔が余興で地獄の罪人を使い開催した、暇つぶしだったりするのか。
「――違うな。それで涼一……如月双七がいるのは妙だ。そもそも……」
あの首を飛ばされた二人も死人とは、どうにも思えなかった。
さらに、あの学生服の男が、双子を殺したときに口走った言葉。
しかし、どうしても理解できない。
間違いなく死んだ自分が、どうしてここにいるのか。
実は、ここが地獄で、あの神父と学生らしき人間は閻魔の子分。
このゲームは、閻魔が余興で地獄の罪人を使い開催した、暇つぶしだったりするのか。
「――違うな。それで涼一……如月双七がいるのは妙だ。そもそも……」
あの首を飛ばされた二人も死人とは、どうにも思えなかった。
さらに、あの学生服の男が、双子を殺したときに口走った言葉。
『残念ながら今、君達は受肉した存在だ。元来が鬼、そして霊体故の特別な措置と言った所なんだけどね』
鬼という単語には見に覚えがある。何せ自分が鬼そのものだったのだから。
だが、自分が鬼だった時に霊体だった覚えはない。爆弾を喰らえば大怪我もした。
もっと高尚な鬼なら違うのかもしれないが、この言葉で重要なのはそこではない。
「霊体……つまり、死んで魂だけになった人間にも、受肉できるということか?」
だが、自分が鬼だった時に霊体だった覚えはない。爆弾を喰らえば大怪我もした。
もっと高尚な鬼なら違うのかもしれないが、この言葉で重要なのはそこではない。
「霊体……つまり、死んで魂だけになった人間にも、受肉できるということか?」
ならば、答えは出た。
俺のような死人、そもそもが霊体という存在には肉体を与えて参加させている。
そして、そうではない人間。つまり「生きている」人間は、そのまま参加しているだけだ。
俺のような死人、そもそもが霊体という存在には肉体を与えて参加させている。
そして、そうではない人間。つまり「生きている」人間は、そのまま参加しているだけだ。
「やはり、地獄ではなさそうだな」
それだけは理解できた。
「そして……このゲームの関係者の中には、死人に肉体を与える能力を持つ者がいるということか」
壊すことは簡単だが、治すことは難しい。
人妖能力としても規格外すぎる。世界を滅ぼせる力を持つ九尾の鬼にすら不可能な技だ。
それだけは理解できた。
「そして……このゲームの関係者の中には、死人に肉体を与える能力を持つ者がいるということか」
壊すことは簡単だが、治すことは難しい。
人妖能力としても規格外すぎる。世界を滅ぼせる力を持つ九尾の鬼にすら不可能な技だ。
「さて、どうするか」
この制限された体でも、それなりに戦うことに支障はない。
「……まずは、莫迦弟子でも探すか?」
自分と同じく、強制的に現世に戻されたであろう如月双七。
あのお人よしでは、他の参加者に利用された挙句に殺されかねない。
組み手の約束もあるし、探してもいいだろう。
この制限された体でも、それなりに戦うことに支障はない。
「……まずは、莫迦弟子でも探すか?」
自分と同じく、強制的に現世に戻されたであろう如月双七。
あのお人よしでは、他の参加者に利用された挙句に殺されかねない。
組み手の約束もあるし、探してもいいだろう。
……その前に、最終的な目標を定める。
「そう……なにより、俺を生き返らせた能力者を殺さねばな」
暗い口調で九鬼は殺害を宣言した。
霊体を受肉させる能力者。そんな奴がいるなら、生かしてはおかない。
「そう……なにより、俺を生き返らせた能力者を殺さねばな」
暗い口調で九鬼は殺害を宣言した。
霊体を受肉させる能力者。そんな奴がいるなら、生かしてはおかない。
氷鷹一奈……果たせなかった復讐の対象が、蘇るかもしれない。
俊介……何よりも愛しい息子が、蘇るかもしれない。
俊介……何よりも愛しい息子が、蘇るかもしれない。
妙なことを言うと思うか?
それは、どちらも好ましいことではないかと思うか?
それは、どちらも好ましいことではないかと思うか?
「断じて否だ」
それは、復讐の意味を、理由を根底から否定する行為だ。
悪魔のような輩に、愛する者を陰惨に、冷酷に奪われた悲しみに決着をつける大事な儀式だ。
それは、復讐の意味を、理由を根底から否定する行為だ。
悪魔のような輩に、愛する者を陰惨に、冷酷に奪われた悲しみに決着をつける大事な儀式だ。
ただ、自分が行おうとした復讐の方法は、完全に誤ったものだった。
復讐に、満足を、快楽を見出そうとせず……復讐は、淡々と終わらせるべきものだった。
護るべきものは、護れねば終わりだ。復讐すべき相手には、復讐すればそれで終わりだ。
復讐に、満足を、快楽を見出そうとせず……復讐は、淡々と終わらせるべきものだった。
護るべきものは、護れねば終わりだ。復讐すべき相手には、復讐すればそれで終わりだ。
だが、死者の蘇生に近いことが可能な能力を持つ者がいれば……何も終わらない。
どちらも、ただ一度だから喜べる。
愛する者を護り、共に生きていく喜び。愛する者の仇を討ったことの喜び。
どちらにも、全く違う歓喜がある。
愛する者を護り、共に生きていく喜び。愛する者の仇を討ったことの喜び。
どちらにも、全く違う歓喜がある。
しかし。何度でも蘇れる可能性があるなら、きっとこう思うだろう。
――息子が死んでしまったが、また生き返らせればいい。
――復讐する相手を殺したが、どうせまた生き返ってしまうのだろうな。
――こいつ、腹が立つから殺してやろう。どうせ、すくに生き返らせてもらえるだろう。
――息子が死んでしまったが、また生き返らせればいい。
――復讐する相手を殺したが、どうせまた生き返ってしまうのだろうな。
――こいつ、腹が立つから殺してやろう。どうせ、すくに生き返らせてもらえるだろう。
そんな莫迦なことがあっていいはずがない。
死ぬからこそ、時が限られているからこそ愛することも、憎むこともできる。
死ぬからこそ、時が限られているからこそ愛することも、憎むこともできる。
……だが、そこまで頭で理解していても、最愛の息子を蘇生できるのではという誘惑は、あまりに甘く、抗うことが難しい。
どうやら輪廻転生なんて概念はないらしく、息子はあの世で静かに暮しているはずだ。
激しい後悔は、ある。この選択を、永遠に後悔する自信すらある。
だが、その望みを、ある「理由」をもって捨てる。
どうやら輪廻転生なんて概念はないらしく、息子はあの世で静かに暮しているはずだ。
激しい後悔は、ある。この選択を、永遠に後悔する自信すらある。
だが、その望みを、ある「理由」をもって捨てる。
(だが……どうやって殺す?)
問題は二つ。
問題は二つ。
まずは、この首輪。
ドミニオンの人妖能力者に埋め込まれる『手負蛇』と呼ばれる爆弾と似ていた。
『手負蛇』ならば、爆弾の受信装置さえ無効化できれば、一応の自由は手に入る。
ただ、これは首輪の中に内包されているようだから、首輪を外したほうが手っ取り早い。
どちらにしろ、主催者が起爆不可能な状況――例えば遠隔操作の範囲外――でなければ出来ない作業なのだが。
ドミニオンの人妖能力者に埋め込まれる『手負蛇』と呼ばれる爆弾と似ていた。
『手負蛇』ならば、爆弾の受信装置さえ無効化できれば、一応の自由は手に入る。
ただ、これは首輪の中に内包されているようだから、首輪を外したほうが手っ取り早い。
どちらにしろ、主催者が起爆不可能な状況――例えば遠隔操作の範囲外――でなければ出来ない作業なのだが。
首輪か、この島自体に仕掛けがあるのか、人妖能力なのか。
制限の解除は必須ではないが、失敗した場合勝ち目は随分と薄くなる。
制限の解除は必須ではないが、失敗した場合勝ち目は随分と薄くなる。
つまり、必要なのは首輪を外せる技能を持つ人間。
そして、制限の解除が可能な人間。もしくは、失敗した場合でも対抗できるだけの戦力だ。
それを、どうやって集めるか。
(このゲームは「始めて」なのか? もし、死ぬたびに呼ばれている奴でもいれば、その能力者の危険性を伝えやすいんだが)
そして、制限の解除が可能な人間。もしくは、失敗した場合でも対抗できるだけの戦力だ。
それを、どうやって集めるか。
(このゲームは「始めて」なのか? もし、死ぬたびに呼ばれている奴でもいれば、その能力者の危険性を伝えやすいんだが)
これこそが、息子を生き返らせることを諦めた「理由」。
九鬼耀鋼の危惧していることは、死んだから終わりなのか、ということだ。
死者、生者問わず呼び寄せることが出来る、この殺し合い。
最悪の場合、死んでも何度でも呼ばれる可能性がある、ということだった。
生者は攫われ殺しあう。生者は死に、受肉され再び殺し合いに。死者にも次があるならば、受肉され三度殺し合いへ。
魂が磨耗しきるまで呼ばれ続ける可能性を、あまり否定できないのは恐ろしい。
九鬼耀鋼の危惧していることは、死んだから終わりなのか、ということだ。
死者、生者問わず呼び寄せることが出来る、この殺し合い。
最悪の場合、死んでも何度でも呼ばれる可能性がある、ということだった。
生者は攫われ殺しあう。生者は死に、受肉され再び殺し合いに。死者にも次があるならば、受肉され三度殺し合いへ。
魂が磨耗しきるまで呼ばれ続ける可能性を、あまり否定できないのは恐ろしい。
(とりあえず、この考察を伝えて、賛同者でも募ってみるか)
不明な点が多く、自身の考えもどの程度正しいかも不明。考察というより空論に近い。
生き返れる、生き返らせられると喜ぶ、短絡的な思考に走る人間も出てきてしまいそうだが、莫迦にまで構っていられない。
不明な点が多く、自身の考えもどの程度正しいかも不明。考察というより空論に近い。
生き返れる、生き返らせられると喜ぶ、短絡的な思考に走る人間も出てきてしまいそうだが、莫迦にまで構っていられない。
九鬼耀鋼にとっての最重要課題は、たった一つ。
最愛の息子、俊介がこの場に呼ばれる可能性を完全に断つことのみだ。
明らかな一般人も参加している以上、俊介が呼ばれぬという保証など、大本を断たねばありはしない。
最愛の息子、俊介がこの場に呼ばれる可能性を完全に断つことのみだ。
明らかな一般人も参加している以上、俊介が呼ばれぬという保証など、大本を断たねばありはしない。
これが「初めて」の試みなら、手遅れになる前に殺す。
これが幾度も繰り返されていて、既に息子が呼ばれていたなら、殺す。
強かろうが殺す。弱かろうが殺す。子供でも殺す。強制されて協力していても殺す。完殺する。全殺する。
とにかく殺す、絶対に殺す。
これが幾度も繰り返されていて、既に息子が呼ばれていたなら、殺す。
強かろうが殺す。弱かろうが殺す。子供でも殺す。強制されて協力していても殺す。完殺する。全殺する。
とにかく殺す、絶対に殺す。
(ははは……スマンな双七。やはり俺は、地獄に堕ちるが相応しい)
悪鬼の力が失われても、この身に宿る感情は殺意のみ。
所詮自分は鬼。人を殺すことしか考えられぬ外道だと、劇場を後にする。
悪鬼の力が失われても、この身に宿る感情は殺意のみ。
所詮自分は鬼。人を殺すことしか考えられぬ外道だと、劇場を後にする。
しかし、その考えは一瞬で揺らいだ。
外は、夜だというのに人工の明かりで溢れていた。
少し先にはカジノ。すぐ近くには、ネオンの光に溢れた歓楽街。
一見日常の風景でも、もうしばらくすれば自分も戦禍に巻きこまれるだろう。
だから、まずは―――
「酒でも、飲むか」
外は、夜だというのに人工の明かりで溢れていた。
少し先にはカジノ。すぐ近くには、ネオンの光に溢れた歓楽街。
一見日常の風景でも、もうしばらくすれば自分も戦禍に巻きこまれるだろう。
だから、まずは―――
「酒でも、飲むか」
【G-6 劇場外/1日目 深夜】
【九鬼耀鋼@あやかしびと -幻妖異聞録-】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品1~3
【状態】:健康
【思考・行動】
基本: このゲームを二度と開催させない。
1:酒でも探すか。
2:首輪を無効化する方法と、それが可能な人間を探す。
3:制限の解除の方法を探しつつ、戦力を集める。
4:自分同様の死人、もしくはリピーターを探し、空論の裏づけをしたい。
5:如月双七を探す。
【九鬼耀鋼@あやかしびと -幻妖異聞録-】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品1~3
【状態】:健康
【思考・行動】
基本: このゲームを二度と開催させない。
1:酒でも探すか。
2:首輪を無効化する方法と、それが可能な人間を探す。
3:制限の解除の方法を探しつつ、戦力を集める。
4:自分同様の死人、もしくはリピーターを探し、空論の裏づけをしたい。
5:如月双七を探す。
【備考】
※すずルート終了後から参戦です。双七も同様だと思っています。
※今のところ、悪鬼は消滅しています。
※主催者の中に、死者を受肉させる人妖能力者がいると思っています。
その能力を使って、何度もゲームを開催して殺し合わせているのではないかと考察しています。
※すずルート終了後から参戦です。双七も同様だと思っています。
※今のところ、悪鬼は消滅しています。
※主催者の中に、死者を受肉させる人妖能力者がいると思っています。
その能力を使って、何度もゲームを開催して殺し合わせているのではないかと考察しています。
028:ドゥー・ユー・リメンバー・ミー | 投下順 | 030:えきぞちっく・といぼっくす |
026:The Course Of Nature~秒速5メートル~ | 時系列順 | |
九鬼耀鋼 | 039:死を超えた鬼と少女 |