ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

Jesus Is Calling/我に来よと主は今

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Jesus Is Calling/我に来よと主は今 ◆I9IoWegESk


 ドライはカジノのセキュリティルームで休息をとった後、ホールへと足を運んだ。
床は所々に水溜りを作り、マスコットが無残な残骸を晒している。

 彼女は徐にクトゥグアを取り出し、灼熱の弾丸を撃ち込んだ。
会場は以前と同じようにスプリンクラーを起動させ、しばし白の空間を作り出す。

「まっ、そこまで甘ちゃんじゃないわな」
 彼女は熱で溶解したスロットマシーンを覗き込んで、舌打ちした。
スロットの中には一枚のメダルも見当たらない。メダルは例の転送技術でやり取りするのだろう。

 あらかじめ、自販機の方は壊しても無駄と予測がついている。
なぜなら、景品の中に、大型バスや打ち上げロケット(1人乗り)や果ては宇宙船といった規格外が存在していたからだ。
こんなものは施設の外に転送しない限り、景品を選んだ瞬間に大惨事になってしまう。

 それにしても、首輪をつけておきながら、宇宙のフロンティア精神を煽るのは悪趣味としか言いようがない。
もっとも、宇宙船に到っては購入不能なまでに桁が違うので、実在するかも怪しいのだが。

 最も安価な銃はルガー P08(装填済)のメダル500枚。
第一次世界大戦でドイツ軍が使用したもので、いけ好かないサイスも愛用していた。

 とはいえ、今のドライにとっては、この程度の拳銃でも価値はある。
彼女の現在の武器、クトゥグアは威力は高いものの扱いが厄介。カジノの戦いでも思わぬ手間を掛けてしまった。

 ただし、換金レートは支給品1つにつき250枚、首輪1つにつき500枚。
そして、現在所持する支給品は『噴射型離着陸単機クドリャフカ』、『クトゥグア(9/10)』、
『懐中時計(オルゴール機能付き)』の3つ。正直、割の良い取引とは思えない。

 ドライは不機嫌にブーツで床を打ち鳴らした。水しぶきが膝の高さまであがった時、何者かの視線を感じた。
彼女はすばやくクトゥグアを構え、周囲の気配を探る。単なる気のせいだったようだ。

 ドライは殺しの最中にスロットに遊びをする気にはなれなかった。ただし、彼女なりの賭けはしていた。
 カジノの二人は誰かと待ち合わせをしている様子だった。そこでドライは休憩中に来客があれば、殺して根こそぎ奪おうと考えていた。

(こんなことにグダグダ時間かけても仕方ねえな)

 彼女はひとつの決断をし、カジノを後にした。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「そうじゃないだろ。ちゃんと死神の顔をしておけよ」
ドライはバイクのバックミラーを見つめて、自分の顔に檄を飛した。

 十分ではないが装備は整えた。二挺拳銃は自分の得意な戦闘スタイルだ。だが、心は未だにモヤモヤしている。


――カタギの少女を殺したせいか?

 自分は考えずに殺すこと決めていた。その筈が半裸の男を生かし、少女を殺した。あれは本当にただの遊び心、気まぐれだったのか。


――伊藤誠が死んだせいか?

 彼が菊池真を庇って死んだのか、彼女が彼を守り切れなかったのかはどうでも良い。
彼の甘ちゃんな理想は、生温い故郷か映画の中でしか通用しない。そう、当たり前のことが起きただけ、それだけなのだ。


――どんな形でも玲二が自分を探していたせいか?

 だが、いまさらキャルに戻ることはできない。あの男は彼女の苦しみを理解しようとしないのだから。

――玲二に捨てられ、己の存在に疑念を抱き、孤独に耐えてきたことも

――憎しみを愉悦し、それに駆り立てられて狂犬のように人を殺したことも

――果てた死体を見つめ、自分の中の獣に怯えて一人すすり泣いたことも

――そして、その虚無感を紛らわせるために……

 彼女は過去を振り返りながら、懐中時計を取り出した。

 懐中時計を売り払う気は初めからなかった。むしろ、自分を値踏みされているようで気分が悪い。

 諦めた支給品は『噴射型離着陸単機クドリャフカ』。夜間は着陸が難しくなるので当分利用できない。
多少、未練はあるが背に腹は代えられまい。足はこのバイクがあれば十分だ。

 これと『業務日誌』を換金してメダル500枚だ。どうやら、支給品以外にも換金可能な物はあるようだ。
メモ帳はセキュリティールームにあったコピー用紙で代替、戯れで日誌の最終ページをコピー機に掛けてみた。

 彼女は懐中時計をじっと見つめ、あの男への憎しみをかき集める。

 懐中時計は玲二が土産物屋で自分に買ってくれたもの。決して高価ではないが丁寧に作られた匠の品だ。
 キャルは鼓膜に刻まれるほどに、幾度となく時計のオルゴールを聴いていた。

 そして、ドライになった後もこれを決闘のギミックに利用していた。それは曲の終わった瞬間に互いに撃ち合うというものだ。


――この音色を聞かせてやる

――キャルにこれを買い与えた男に

――ドライの流儀で殺すべき男に

――最大の侮辱をした男に、最大の絶望を与えよう

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ドライはバイクのスロットルを回し風を切る。本来は慎重に歩くべきなのだろうが、心がざわついてその気になれない。
背後のカジノの喧騒はだんだんと小さくなっていく。


彼女は未だ、オルゴールの奏でる曲の名を知らない。



【G-6/中央/1日目 夜中】

【ドライ@Phantom-PHANTOMOFINFERNO-】
【装備】ルガー P08(9/8+1)@Phantom、クトゥグア(9/10)@機神咆哮デモンベイン、バイク
【所持品】支給品一式×2、懐中時計(オルゴール機能付き)@Phantom、包帯、業務日誌最終ページのコピー
【状態】 左足首捻挫(治療済み、患部に包帯を巻いている)
【思考・行動】
 基本:玲二(ツヴァイ)を殺す。玲二を取り巻く全てのものを壊す。
 1:もう深くは考えない。殺す。
 2:玲二を見つけたら、できれば懐中時計を使って決闘を挑む。
 3:人間を見つけたら玲二を知っているか尋ね、返答に関わらず殺害する。
【備考】
 ※トルタと恭介は死んだと思っています。 
 ※クドリャフカの操縦を覚えました(なんとか操縦できる程度です) 。
 ※業務日誌の最終ページは殴り書きなので辛うじて「ヨグ・ソトース」「聖杯」「媛星」ぐらいが読める程度です。
 ※発電所から伸びる地下通路の存在に気付きました。
 ※カジノのメダルや景品は転送技術でやり取りされていると考えています。
 ※業務日誌とクドリャフカを換金しました。カジノの景品として並んでいます。


197:PERFECT COMMUNICATION 投下順 199:幕間~吹き始める波乱の風~
196:I'm always close to you/棗恭介 時系列順 201:エージェント夜を往く
193:いつでも微笑みを/トルティニタ・フィーネ(後編) ドライ


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