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トルティニタ・フィーネ(後編)

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いつでも微笑みを/トルティニタ・フィーネ(後編) ◆S71MbhUMlM




スターブライトの背にまたがりながら、考える。
恭介の怪我は、命には関わらないけど、それでも治療しないわけにはいかない。
特に、右のふとももに大きな破片が刺さっているのから、多分歩くのは辛いはず。
私の耳もおかしいし、どこかで休まないといけない。
けど、多分、キャルは私たちを追って来る。
スターブライトに追いつけるとは思わないけど、兎に角しばらくは安全な場所にいかないと……
あの目。
あれは、今の恭介と同じ、憎しみを持った目だから。
かなり距離を取らないといけない。

そう、同じ。

―――私じゃ駄目なの?

頭に浮かんだ言葉は、信じられないくらいに醜い感情だった。
今は、もっと他に考える事はいくらでもあるのに。
恭介に見られているキャルにすら、羨望に近い感情を感じている。

「北…だ……禁止エリアなら、アイツは追ってこれない」

恭介の言葉で、私は禁止エリア侵入アプリの存在を思い出す。
そんな簡単な事柄まで、私は忘れていたのだ。

――恭介の、大事なものになりたい。

「ごめんな、…トルタ。
 俺が、」

その先を、聞きたくない。
聞いてしまえば、私は、こんどこそ全てを失ってしまう気がして。


「仇を、取るんでしょ!」

思わず、叫んだ。
解ってる、私では、変わりになれない事なんか。
私だって、恭介の事をクリスの変わりだなんて思っていない。
でも、願ってしまう。
恭介に、ここまで思われたい。
それがどんなに醜い感情なのかわかっているのに、願わずにいられない。

「あの子を……にしてファントム、いえ玲二って奴に見せ付けてやるんでしょ」

言ってしまったら、何もかもが壊れてしまいそうだから。
今の恭介の信頼も、私がクリスに奉げた時間も。
私は、クリスの事が好きだった。
彼の為に、そう想い暮らしていた。
そうして、彼は真実を見つけた。
王子様は記憶を取り戻し、目をさました眠り姫と手をとってめでたしめでたし。
そう、その結末を、望んでいたはずなのに。

「だったら、その為に出来る事をしようよ」

王子様に邪な思いを抱いてしまった悪いお姫様は、舞台に取り残されてしまいましたとさ。

めでたしめでたし

「私も、手伝うから」

そう、すでに一度、理解したはずなのに。
邪な想いでは、決してどうにもならないのに。

「恭介の、パートナーとして」

パートナーなら、共に居られるから。
私は、恭介を好きになりたい。
でも、この気持ちは本当の気持ちなのか、それすらも解らない。
嘘を付きすぎて、わからなくなってしまった。
私は、恭介が心配だからかれの側にいたいのか?
彼の事を独占したいから彼の側にいたいのか?
私を見て
私を見ないで
私の嘘に気付いて。
私の醜い嘘に気付かないで。
私の思いに気付いて
私の醜い嫉妬を見ないで。

何て醜い嘘。

クリスの為?

違う、私の為。

私が、恭介といたいから。

恭介の心が怖い。

私の心が怖い。

彼を、好きになるのが怖い。

その先に、またあの痛みが待っているのかと思うと。

この想いが怖い。

想いを告げてしまうのが怖い。

「また」拒絶されてしまうのが怖い。

告げてしまえば、また同じ苦しみを味わうことになってしまう。

恭介の側に、居られなくなってしまう。

そして、そうだとわかっているのに、好きになる事をやめられない。



気が付いて、いないんだろうけど、トルタの頬を涙が伝う。
ああ、そういえば、そうだったんだな。
ごめんな、トルタ。

「もう、いいんだ」

そう、もういい。

「復讐を、捨てる気は無い」

これは、おれがやらないといけないことだ。

「けど、それよりも大事なものを、見つけたから」

だけど、一番じゃない。

「今、守らなきゃいけないものを、見つけたから」

本当に、一番守りたいものが、ここにあるから。
だから、俺はもう、迷わない。


かくして、ようやく、男女はあるべき形へと収まった。
もう、彼らが迷う事は無い。
今のこの苦難も、今までのように思い出へと映り行く。

その筈だった。

恭介達の不運は2つ。
繁華街である以上、少し探せばバイクの一台や二台があること。
そして、スプリンクラーによって生じた水滴が、道しるべとして機能したこと。

放たれた業火が、スターブライトの前足を、消し飛ばした。
悲鳴を上げる暇も無く、二人は路上へと放り出されそうになるが、すんでのところでスターブライトは踏ん張る。
だが、無論その速度は見る影も無く落ちている。
慌てて後方を振り返った二人の目に映るのは、バイクを駆る金髪の少女の姿。

そうして、その後は、トルタには嵐のようにしか思えなかった。
どうやって、ドライを一時でも引かせたのかすら、わからない。
気が付けば、辺りは薄暗く、そして、

二人は、地面へと落ちた。


スターブライト……

倒れた巨体、
既に先の無い右の前脚。
すでにうつろになりつつある瞳

「ごめんなさい」

この子に何をしてあげたのか
ただ、一緒にいただけなのに、それでも、守ってくれた。
そして、もう、ここまでなのかもしれない。
禁止エリア
何とかたどりついたその場所は、周囲が、開けていた。
丁度、線路の側にある所為で、とても見通しの良い地形。
建物があれば、ソノ中に隠れる事だって出来たのに。
禁止エリア内の建物は、近いものでも100メートルは離れている。
脚の怪我を追っている私では、とても恭介を連れて逃げられるとは思えない。

……それでも、やるしかない。

キャルが追ってくるまで、もうそれほど時間があるとは思えない。
…その時、響きだす電子音。
それで、私は携帯電話の範囲から出ている事に気が付いた。
寄り添って移動しない限り、簡単に効果範囲とやらから出てしまうらしい。

なので、恭介の近くに移動して、それで電子音が止まり、
そして、
そして、私の目の前に、恭介の銃口があった。

「……どうして」

わからない。
何故、恭介が私に銃を向けるのか。
そんな私に構わず、恭介はデイパックに手を入れ、ソレを取り出す。

「もう、行くんだ」

ポン、と放り投げられる首輪。
それは線路の横の窪みに落ちる。
そして、その首輪からまた電子音が鳴る。

「これで、一つ。
 もう一つ爆発すれば、アイツは俺たちが……君が死んだと思う筈だ」

それは、別れの言葉。


「俺は、まだ動けない」

千羽烏月との接触。
ティトゥスとの二度の戦い。
言峰との賭け。

「君には、まだするべきことがあるだろう?」

何時の時にも、おれの側にはトルタがいた。
トルタがいたから、おれはここまで生き残ってこれた。
そうだ、俺は、何時だって一人じゃなかった。

「いいや、俺は、やるべき事をやった。
 ファントムは憎い、でもそれ以上に、今ここで君を守る事のほうが、遥かに大事だ」

リトルバスターズの皆がいたから、あの奇跡が起きた。
トルタがいたから、ここまでこれた。

簡単な話だったんだ……

俺が一人、勝手にキャルと戦おうとしたから、俺はこうして負けたんだ。

「理樹も鈴も、きっとわかってくれる。 まあ鈴には殴られる、かもだけどな」

ああ、でも、もう間違えない。

トルタなら、きっと間違えない。

「最期に言うと未練がましく思われるかもしれないけど……俺、トルタの事が好きだった。
 どうして、とか言われても、気が付いたら、としか言えないけど、兎に角好きだ。
 ……ああ、それだけは、どうしても言っておきたかったんだ」
トルタが、僅かに驚いたような表情を浮かべる。
「…………ごめん、やっぱ忘れてくれ。
 こんな事言っても、マイナスにしかならないよな」

正直、もう少し器用な男だと思っていたんだけどな…

「……もう、どうしようも無いのかな、……恭介?」
トルタの、責めるような声。
「………………」
「うん、ごめん、……わかってるよ、恭介の所為なんかじゃない」


その時、響く轟音。
先ほどの首輪が、爆発したのだ。
そうして、トルタは、俺から背を向けた。

クリス……一度ぶん殴ってやりたかったけど、それでもお前に任せる、幼馴染を、守ってやれ。

真人、来ヶ谷、今になって思うなんてリーダー失格だけど、どうか、無事でいてくれよ。

アル、羽藤、双七、トルタを守ってくれると嬉しいな。

すまない理樹、リーダー失格だったな俺は。

鈴の敵はとってやれなかった。

ああ、それでも、俺は、最期に守れたんだ。
大事な人を。

さよなら、トルタ。

どうか、最期まで無事で……



一歩、一歩、歩く。
少しずつ、少しずつ私と恭介の間の距離が離れていく。
そして、いつかはその距離が永遠となる。

丁寧に、高い音が残り時間を告げてくる。
別れの時までは、もう時間が無い。

そうして、最期に振り返る。
目から零れそうになる涙を、隠しながら。

「恭介……私は、……私も、恭介の事が好きだったよ。
 何時からか、何て私にもわからないけど、でも、大好きだった」

好きだと、いう気持ちを素直に伝えられる事が、こんなにも嬉しいなんて、思わなかった。

好きな人が、私の事を見てくれる事が、

エゴだって判っていても、恭介が、私だけを見てくれた事が、たまらなく、嬉しい。

うん、胸を張って言おう。

大好きよ、恭介。

出来るなら、もっと貴方と、同じ時を過ごしていたかったけど。

さよなら、恭介。

私が、好きになった人。

私、トルティニタ・フィーネは、棗恭介の事が大好きです。



「…………」

道の先より響く轟音。
確かな、爆発音。
確かに2つ、爆発の音がした。
記憶の中にある爆発音と、同じもの。

とはいえ、間違い無い。

「……訳、わかんねぇな」

逃げるだけ逃げて、禁止エリアに入ってしまいそれで終わり。
正直言って、間抜けとしか言うようが無い。
……だが、死んだ事を疑うだけの材料も無い。
折角のヒントも、これで一から探し直しとなる。

「玲二」
かつて最も大事であった人の名前が口を着く。

いや、今でも、多分最も大事な人。
どうして、切り捨てる事など出来ようか。
姉の敵討ちに協力してくれた事も、初めて着たサラサラの服の感触も、満腹に食べたハンバーガーの味も。
全て、キャルの中で捨てえぬ思い出として存在している。

そう…


誰が、許容できるか。

玲二は、キャルを捨てたのだ。
ファントムの名を捨て、アインと共に。
再び、玲二として現れるなら、キャルを守るというなら、ぶん殴りつつもあるいは許容出来たかもしれない。
ファントム『ツヴァイ』として、追っ手であるファントム『ドライ』を殺すというなら、それもまた理解は出来た。

だが、再び、ファントムの名を名乗り、それでいてドライたるキャルを保護すると。
あの男は、そう言ったのだ。

キャルの苦悩も、ドライはしての誇りも、全て気にせずに。
ただ、守るべきものとして、下に見たのだ。
『ファントム』を名乗りながら。

キャルを置き去りにしながら、ドライを守るなど、そんな事、許せるはずが無い。
それは、ファントム・ドライの全てを否定しているのだから。

(…………玲二。
 もうあたしはキャル・ディヴェンスじゃない。
 ファントム、ドライ。 ……あんたの、敵だ)


【G-6 北/1日目 夜】

【ドライ@Phantom-PHANTOMOFINFERNO-】
【装備】 クトゥグア(0/10)@機神咆哮デモンベイン
【所持品】 支給品一式×2、マガジン(クトゥグア)×1、懐中時計(オルゴール機能付き)@Phantom、噴射型離着陸単機クドリャフカ(耐熱服付き)@あやかしびと、包帯、業務日誌
【状態】 左足首捻挫(治療済み、患部に包帯を巻いている)
【思考・行動】
 基本:玲二(ツヴァイ)を殺す。玲二を取り巻く全てのものを壊す。
 1:もう深くは考えない。殺す。
 2:人間を見つけたら玲二を知っているか尋ね、返答に関わらず殺害する。
 3:謎の追跡者(曜子)を徹底的に利用する。付け入る隙を探し、殺せる、あるいは逃げられる体勢を整える。
 4:後々謎の飛行物体の発射地点に向かう?
【備考】
 ※トルタと恭介は死んだと思っています。 
 ※クドリャフカの操縦を覚えました。(なんとか操縦できる程度です)
 ※クドリャフカの移動速度は1エリアを約5分で通り抜ける程度。
 ※業務日誌の最初のページには「麻婆豆腐の作り方」、最後のページには「怪しげな画」が書かれています。
 ※ただ最後のページは酷い殴り書きなので、辛うじて「ヨグ・ソトース」「聖杯」「媛星」ぐらいが読める程度です。
 ※発電所から伸びる地下通路の存在に気付きました。
 ※支倉曜子の能力のみを信頼、危険性を警戒しつつ、その意図を汲むつもりです。


……けれど、キャル・ディヴェンスは……キャル・ディヴェンスならば、吾妻玲二を許容出来るのだろうか?



衝撃は、感じなかった。
最期の瞬間は、覚悟していたそれよりも、あっさりとしたものだった。

2つ首輪が爆発して、二人が死んだように見せかける。
その計画に、落とし穴は存在しなかった。
事実、恭介が知るよしもないが、ドライは追撃が無駄と悟り、引き返したのだから。
そう、計画に落とし穴は無い。

あるとすれば、唯一つ。

恭介の右足のポケットから、何かが零れ落ちる。
それは、見るまでもない、トルタが持っていた筈の携帯電話。
足に刺さった破片を抜く際に、トルタが忍ばせたもの
トルタが、持っていなければいけなかったもの。

棗恭介は、最期まで、トルティニタ・フィーネの嘘を見抜けなかったのだ。



おれは、 何 を 失ってしまったのだろう?

目の前にある光景が、どこか遠くのものに思える。


教えてくれ、誰か。
俺は、どうすればいい?
どうしたい?


鈴を失った時、俺の側にはトルタが居た。

理樹を失った時、おれの側にはトルタが居た。

トルタを失い、俺の側にはトルタは居ない。

誰も居ない、
誰も、
誰も、

誰か、教えてくれ。

おれは、どうすればいい?

なあ、トルタ

教えてくれよ、
俺はどうすればいい?
君の笑顔が見たい。
まるで歌うかのような声が聞きたい。

たのむ、答えてくれ。

何故君が側にいないのか、答えてくれよ。

憎いという感情すら浮かんでこない。
憎む、という行為すら、俺には分不相応としか感じられなかった。

何も、感じない。

何も。

何も。


【F-6 南(禁止エリア内)/1日目 夜】

【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備】トンプソンコンテンダー(弾数1/1)、防弾チョッキ、刹那の携帯電話
【所持品】:支給品一式×3、SIGSAUERP226の予備弾3@現実、コンテンダーの弾44発、デジタルカメラ@リトルバスターズ!、アサシンの腕、USBメモリ
【状態】:深すぎる喪失感、脇腹に深い切り傷(処置済み)、右足負傷(歩くのに支障あり)、胸部に軽い打撲、肉体的疲労(中)
【思考・行動】
 0:思考停止
【備考】
 ※参戦時期は鈴ルートの謙吾との野球対決後、リフレイン以前です。
  故に、リトルバスターズメンバー、特に謙吾に申し訳なさを感じています。
 ※参加者によっては連れてこられた世界や時代が違うと思ってます。
 ※この殺し合いは、『神々のゲーム』であり、自分達はその駒であると考えました。
  ゲームの終了は、『優勝』『優勝以外の何か』を満たした時だと推測しています。
  ただしゲーム終了後の駒の扱いについては疑念を持っています。
 ※デジタルカメラに収められた画像データのうちの一つは、『首輪の設計図-A』です。
  外見から分かる範囲での首輪の解説が記されていますが、内部構造については一切言及はありません。
  また、デジタルカメラで閲覧した場合画像が縮小され、文字の殆どが潰れて見えます。拡大はできません。
  記されたデータの信憑性は不明です。
  他に首輪の設計図があるかどうかは不明です。
 ※神埼は『優勝以外の条件』に関与していると考えました。
 ※トルタの過去の話を聞きました。
 ※トルタに依存しつつある事を自覚しました。
 ※言峰の誘いに乗るつもりは今の所はありません。
 ※トルタにより称号(イタリア語なので恭介は意味を知らない)を付けられました。

【刹那の携帯電話@School Days L×H】
清浦刹那の持つ携帯電話。何人かの人間の電話番号が登録されている他、禁止エリア進入アプリがインストールされている。
このアプリを作動させた場合、このアプリがインストールされた携帯電話から
半径2mまでに存在する首輪は禁止エリアに反応しなくなる。
ただし、効果の持続時間は1時間、3時間、6時間の3種類あるが、それぞれ1回ずつしか使用できない。
現在、三時間を使用中。

【G-6/カジノ】
※SIGSAUERP226(15/15)@現実が床に落ちています。
※メカコトミは大破しました。
※現在スプリンクラー作動中
※カジノ コントロールルームにて加持の内の監視、隔壁や消火ガスの操作が可能。
※カジノ内では、
 支給品1つ(複数個支給されたものは、250に現在の個数/支給時の個数をかけた枚数):250枚
 首輪1つ:500枚
 のレートでコインの交換ができます。
※景品は自動販売機に酷似した機械によって入手可能です。
※スターブライト@Strawberry Panic! はカジノの裏口に係留されています。

【メカコトミ@ギャルゲ・ロワイアル2ndオリジナル:大破】
【トルティニタ・フィーネ@シンフォニック=レイン:死亡】
【スターブライト@Strawberry Panic!:死亡】

 ※トルタの死体の側にトルタの所持品が落ちています。

193:いつでも微笑みを/トルティニタ・フィーネ(前編) 投下順 194:乙女はDO MY BESTでしょ?~じゅうななさいばーじょん~
時系列順 194:乙女はDO MY BESTでしょ?~じゅうななさいばーじょん~
棗恭介 196:I'm always close to you/棗恭介
トルティニタ・フィーネ
ドライ 198:Jesus Is Calling/我に来よと主は今


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