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断片集 山辺美希

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断片集 山辺美希



「――そして、私はそこで改めてみんなと”いっしょ”であることを選んだというわけよ。
 筋肉については理解の外にあるものだったけど、彼には感謝することばかりだったと今はそう思うわ」

ホテルの一室の薄明るい照明の下。
ベッドの端に腰かけ、滔々と語っていたファルは一度口を閉じ、小さく開きほぅと息を吐くとそれをピリオドとして語りを終えた。

「はい。真人さんはとてもいい人でした。少しの間だったけど、私も何度も元気付けられて……」
「もう一度、あいつとはバトルしたかったな……」

聞いて、しんみりとした表情を浮かべるのは、彼女と同室で寝泊りするやよいとその右腕にはまったプッチャンだ。
ファルほど長い時間を一緒にいたわけではないが、彼の筋肉に力づけられたということではやよい達もまた変わらない。

「じゃあ、私の話はこれでお終いとして――次は美希さんの番ね」
「……およよ。ドラマティックかつセンシブルなファルさんのお話に比べると、美希のこれまでなんてとてもとても。
 がっかりさせること請け合いですし、ここはいい雰囲気になったところでお布団の中に潜っちゃいましょうよ」

ファルに話を促され、美希は顔に困ったなぁという笑みを浮かべる。

このホテルに到着して初めての日。夕食も終えて割り当てられた部屋へと入った彼女達なのだが、
寝るにも早く、かといって暇をつぶそうにも取り立ててするようなこともなく、ただ時間をもてあましていた。
という訳で、それならば各々がこれまでに経験してきた出来事を話として仲間に語り聞かせることにしようとそうなった訳である。

だが、自分の番が回ってきたところで美希はそれを回避しようとする。あまり人には聞かせたくないというのが彼女の本音なのだ。

「それでも私は美希さんがどうやって生き延びていたのか、すごく興味を引かれるわ」
「はい。私も美希さんのお話を聞いてもっとわかりあいたいと思います」
「……ファルが言ってるのはそういうことじゃないと思うけどな」

ずいと寄られてたじたじ。
ファルの妖しげな好奇の目。やよいのひたむきでまっすぐな瞳。山辺美希の中にそれらを避ける手段は存在しなかった。




     - 『黒曜スペシャル 星詠みの舞に奇跡を見た!! 絶海の孤島で伝説の護身完成少女を追え!!』 -



何処かも知れぬ謎と秘密。それと大きな恐怖に満ちた絶海の孤島。
そこではなんと無理矢理に集められた少年少女らによる殺し合いが行われているという!
闇夜の中。冷たい首輪を嵌められて島中に放り出された哀れな少年少女達。その中に山辺美希という一人の美少女がいた。

鬱蒼と生い茂る深い森。聞こえてくるのは獣の鳴き声か、それとも何者かの断末魔か!?
山辺美希は足を震わせながら恐る恐ると暗闇の中を進んでゆく。ほどなくして現れた一人の青年。彼の正体は何者なのか?
対馬レオ。そう名乗った少年は殺し合いなどはしないと言う。その言葉に安堵の息を漏らす山辺美希。――しかし!

奇怪な白装束に身を包んだ謎の男が刀を振りかざして襲い掛かってくるではないか!?
なんということだろう。早くも彼女の命はここで儚く散ってしまうというのだろうか。
身を掠める白刃。その時! 山辺美希と怪人の間にレオ少年が立ち塞がる! これは己を盾とするから逃げろといいうことなのか!?


 「そ、それでどうなったんですかっ!?」
 「……ははは。それはどうもこうも、レオさんは次の放送で御呼ばれに」
 「レオってやつが庇ったって言うのは本当なのか……? ただ見捨てて逃げたんじゃ……?」
 「いや、実際に迫る刃から助けたのは美希なんですけどね。そこは脚色で。ちなみに逃げろって言ってくれたのは本当です」
 「利用したってことは否定しないのね」

 「手に汗握る展開だね、柚明おねーちゃん」
 「え? ……う、うん。そうだね」
 「ところで桂さんたちはどーしてここ(ラウンジ)に?」
 「うん。部屋の中に篭ってたら息が詰まりそうだったしさ。それにほら、ここからだと海が見下ろせるでしょう?」
 「なるほど。美希たちと同じですね」


西も東もわからずに森の中をただ逃げ惑う山辺美希。
果たして次に闇の中から現れるのは恐ろしい殺人鬼なのか。それとも彼女を救ってくれる正義のヒーローなのか!?


 「――正義の美少女戦士だったんだなこれが」

 「あ。碧せんせー。どうしたんです?」
 「いやー、部屋に氷がなくってさ。それで取りに行って戻ってきたら、なんかみんな集まってるじゃないってことで」


息も絶え絶えになりながらも森の中を走る山辺美希。
倒れ掛からんとする彼女に暗がりより手を差し伸べたのは正義の美少女戦士である杉浦碧鉄乙女の二人だった!
話を聞くや否や、乙女は同胞であったレオを救うべく暗闇の中へと駆け込んでゆく!
彼女とレオの無事を祈ると、山辺美希は浮かんだ涙を拭い杉浦碧と共に近くの温泉宿にへとその身を寄せたのであった……。


 「その後、美希っちは私から逃げちゃったんだよね~」
 「いや、そもそもか弱いミキミキを一人ぼっちにするほうがどうかしてますよ。
  別に逃げたわけじゃあありません。だって碧せんせー出て行ってから全然帰ってこないんだもん」
 「義を見てせざるは勇なきなりって言うじゃない。だから私はてっちんを探しに……」
 「それでどこまで行ってたんですか?」
 「う、海まで……」
 「…………………………」
 「み、みんなが呆れてるっ!? やぶへびだった……!? うぅ、氷も解けるし部屋に戻ろう……」


白湯に身を浸し杉浦碧の帰りを待つ山辺美希であったが、しかし彼女が帰ってくることはなく山辺美希は再び路頭に迷う。
行く当て所なく、放置してあった自転車に跨り山道を街へと降りてゆく山辺美希。
東から登ってくる朝日の美しさに心休まったのも束の間。彼女は街中でとんでもない光景を目撃してしまう!
なんと! 着物姿の女性が全裸の男を刀で刺し殺そうとしているではないかッ!?


 「――全裸じゃねえええええええっ!」

 「あ、九郎さん。
  どうしましたですか? そんなバスケットなんか持って。ハイキングにはもう遅い時間だと思いますけど」
 「これはちょっとウェストに差し入れをだな……って、だから俺は全裸ではなかった。それだけは間違えてもらっちゃ困る」
 「似たようなものだったと思いますけど、ねぇ、柚明さん?」
 「え? あ、いや……その、見てませんよ。ほんとに、あんな……」
 「あ、やっぱり着物姿の女性って柚明おねーちゃんのことなんだ。そか、教会でも言ってたもんね」
 「あの時のことは本当に申し訳なく……」
 「いえいえ、もう過ぎたことですし。お互い気にするのはやめにしましょう、色んな意味で」


更には仮面の大男が現れ大十字九郎へと襲い掛かる! よもや絶体絶命!
彼の命も風前の灯火かに見えたが、なんと美少女である山辺美希が気転を利かせ彼を窮地から救ったのであった!


 「疑問なのだけど」
 「何がですかファルさん?」
 「全裸でしょう。それに殺そうとする人間が二人もいたのに、どうしてわざわざ助けたのかしら?」
 「あぁ、そのことでしたら。
  九郎さんがなすすべなく殺されて美希と危険人物が残されるよりか、一度助けてもいちどぶつけた方が有利じゃないですか」
 「なるほどね。納得がいったわ。それでもリスキーな行動だとは思うけど」
 「なにさらっと非道いこと言ってるんですか君達は!? ていうか、全裸ではなかったって言ってるのに……。
  この不条理。この憤り。どこにぶつけるべきか、アイツにしかないか。じゃあな。あんまり面白おかしく脚色するなよ」
 「この語りは※イメージですってことで。じゃあ、どこかは知りませんがいってらっしゃーい」


仮面男の猛追を振り切り、うらぶれた駅前へと辿りついた山辺美希と大十字九郎はそこで運命の出会いを果たす!
それは、殺し合いを強要する主催者に立ち向かいそれを打ち砕かんとするリトルバスターズの一団であった。


 「理樹さんですかっ?」
 「ええ、昼前ぐらいだったかなー……?」
 「じゃあ俺達と別れてすぐにってことか。けっこうニアミスしてるんだな」
 「かも知れませんねぇ。さっきの温泉だって碧せんせーを待ってたら、クリスさんと会えてたわけですし」

 「――クリスがどうかしたのか?」

 「わ。なつきさんじゃないですか。なつきさんこそクリスさんはどうしたんですか? 一人だなんて珍しい」
 「クリスは大浴場だ。温泉は混浴だって話だったのに、ここはそうじゃないんだな……」
 「それでうろうろしてるんですか」


悪鬼と成り果てて再び姿を現した鉄乙女。リトルバスターズはその猛追を尊き犠牲を払うことでなんとか振り切るのであった。
仲間を失った悲しみに包まれるリトルバスターズの面々。その時、空気を読まない玖我なつきがその場に姿を現した!


 「誰が空気読めないだっ!」
 「いや、だって、本当に空気読めてませんでしたし。なつきさんのせいでみんなバラバラになっちゃったじゃないですか」
 「あ、あれは深優のせいだろうっ!?」

 「――私にどのような落ち度があったのでしょうか」

 「噂をすれば影ね。本当にタイミングよく次から次へと」
 「私は明日の食事で使う食材のチェックを済ませてきただけで、決して出番待ちしていたわけではありません」


深優・グリーアの放った凶弾がリトルバスターズに決定的な亀裂を走らせる。散り散りになってしまうメンバー達。
そして! そこに追い討ちをかけるように現れた悪鬼・鉄乙女! 美少女である山辺美希の命もついにここで絶たれてしまうのか!?
だが、正義の拳がそれを許さない! 加藤虎太郎の鉄拳が悪鬼の身体に突き刺さる! しかし正義とてここでは絶対のものではない。
悪鬼の脅威を退けるまでには至らず、山辺美希は玖我なつきを連れてその場に涙を残して走り去るのであった。


 「……虎太郎先生は、とても立派に戦われました。命は落とされましたが、決してそれは無駄ではなかったと思います」
 「そっか、柚明おねーちゃんもそこにいたんだね……」


仲間とはぐれ再び放浪の身となった山辺美希は、その末にチーム崩壊の要因を作った深優・グリーアと再会するのであった。
彼女を敵と見なし拳銃を突きつける玖我なつき! 一触即発かと思われたが、意外にも彼女の口から出たのは交渉の二文字だった!
しかも! 深優・グリーアの巧みなネゴシエーションの結果。山辺美希は玖我なつきを捨て、彼女とついて行くことになったのだ!


 「それぞれの思惑が明らかになった今なら解るが、お前達二人して私を騙していたろう!?」
 「私はその場面に応じて最適な行動を選択していただけです」
 「ていうか、あの時のなつきさんってなんか”ヘタレ”っぽかったし」
 「…………くっ! いつかギャフンと言わせてやるからな! 覚えていろよッ!」
 「ギャフンという言葉を口にする状況が想定できませんが、私も用事がありますので失礼させてもらいます」
 「こんどはお二方の惚気話も聞かせてくださいね~」


だが、深優・グリーアと如月双七の二人について行ったのは山辺美希にとって裏目となる行動であった。
深夜の公園に現れた謎の改造人間!
強力無比な猛攻撃にただの美少女である山辺美希は逃げ惑うしかなく、気付けば最初の時のようにひとりぼっちとなっていた。
寄る辺もなく、寒空の下をただ迷い子のように放浪する山辺美希。
ここに来て悪運もつきたのか、またしても……そして、これまでの内で最大の修羅場にへと巻き込まれることになる!
なんと、深優・グリーアと冷酷な殺し屋吾妻玲二。そして悪鬼と化した九鬼耀鋼。更には柚明とが三つ巴の戦いを起こしていたのだ!


 「あ。アロハオエ~。お風呂上りですか?」
 「…………」
 「あの。そのアロハ似合ってますね玲二さん」
 「…………」
 「あのー、あの時、撃っちゃったこと怒ってたりします?」
 「…………いや、立場が逆なら俺もそうしていた。元より殺し合いの場だ。いいも悪いもない」
 「そうですか。そう言ってもらえると美希としても気が休まります。
  あ、そうそう。深優さんなら、さっき作戦室に行くって言ってましたよ」
 「そうか、わかった」


ひとつの鉄橋が落ちるほどの激闘。
戦いに加わった者は誰もが命を落とすか瀕死の重傷を負うという様であったが、美少女は未だに怪我らしい怪我もなく健在であった。
殺し合いも収束へと向かっている。最早、先ほどのような激闘はあるまい。昇ってきた太陽にほっとした笑みを見せる美少女。
だが、次に目指した教会で彼女を待っていたのは――……


 「怪獣さんだったのですよねー。オーファンって言いましたっけ?」
 「そして、隠れているところを私に見つかったのよね」
 「ええ。それからは皆さんがご存知のとおりで、わたくしめは心を清く入れ替え悪の打倒の為にご同行させていただいているわけです」
 「はいっ! これからは美希さんもずっと”いっしょ”です」
 「なんかまとめかたに無理あるんじゃねぇか……?」


こうして、一人の美少女の苦難の物語がひとつの終わりを告げた。
しかし、まだ全てが終わったわけではない。彼女に、山辺美希に命がある限り、彼女の物語はずっと続いてゆくのだ――……


 「じゃあ、お風呂入りましょうか。大浴場♪」
 「うっうー♪ ……あ。ごめんなさい。プッチャンはまたお留守番です」
 「……ああ」
 「さぁて、お風呂の中ではやよいさんのお話を聞かせてもらおうかしらね」
 「お話聞いて緊張したら汗かいちゃったよ。私達もいっしょに入ろっか。ね、柚明おねーちゃん?」
 「ええ。それじゃあ、着替えを取りに部屋に戻ろうかしら」

 「では、各自、お着替えを用意してまたここに戻ってくるということで――かいさ~ん♪」




 【黒曜スペシャル 終】



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