十二国記の世界

十二国記の世界


十二国記の地図

シリーズ名の通り、この物語は12の国がある。
中心に黄海(こうかい/海という字が使われているが海ではない)、内海(青・黒・赤・白海)を挟んで囲むように北から時計回りに「柳(りゅう)・雁(えん)・慶(けい)・巧(こう)・奏(そう)・才(さい)・範(はん)・恭(きょう)」があり、外海(虚海)の四方には北東側から「戴(たい)・舜(しゅん)・漣(れん)・芳(ほう)」と存在する。
東西南北に位置する国を「四大国」、その間に存在する国を「四州国」、外海にある国を「四極国」と呼ぶ。

こんな感じ。

国の特徴などを詳しく書くと、何ページあっても足りないので割愛。

動画を見る分に問題ない程度で、簡単に書くと以下の通り。

総称 国名 国氏 麒麟
四大国 慶国 在(中嶋陽子) 在・麒
範国 在・麟
奏国 在・麟
柳国 在・麒
四州国 雁国 在・麒
才国 在・麟
巧国 不在 不在(塙果はある)■
恭国 在・麒
四極国 戴国 在・麒
漣国 在・麟
舜国 不明
芳国 不在 在・麒(不明)■

生命の誕生で詳しく述べるが、通常、卵果は1年未満で孵るのだが、塙(巧)果は陽子が登極した時には既にあり、三年後の泰麒捜索時にも卵果のままである。
また、卵果から孵った峯麒がいるはずなのだが、蓬山にはいないようだ。
これらについては不明。

王と官吏

十二国には、それぞれに王と麒麟が一人ずつ存在する。また、天命を失い王が不在・両方不在の場合もある。
その場合は、王の下にいた「冢宰(ちょうさい/役人のトップ)」などが「仮王(かおう)」となって国を守ることになるが、飢餓や天災など不安定な状態となる。
また、クーデターによって国に王(または両方)がいない場合も、偽王朝が成り立つこともある。しかし、どちらにしても麒麟によって選ばれていない王の国は、妖魔が現われ荒れ放題となり人々は飢える。
王がいるだけで、まず妖魔が国内に入り込むことはなくなり、国はある程度の安定感がある。そこから繁栄するかどうかは王次第なのだ。
官吏は、首都にいる国の官吏と州にいる州官吏がいて、ほとんどが仙。官吏を辞めたら返上するのが慣例。

王と麒麟

この二人は切っても切れない関係にあり、一蓮托生。と言いたいところだが、王が先に死んでも麒麟には影響ないのが現実。麒麟にしてみれば、王がいなくなったら、次の王を探すまでのこと。
王の政(まつりごと)如何によって麒麟の一生が決まると言っていい。
物語の時点で一番長く生きているのは奏国の麒麟。国自体は600年ほど続いている。もう少し(と言っても約80年ほどあるが)すると史上最長になるらしい。
このように、王の政が安定していればいつまでも生きていられるが、決して「永遠」ではないのが、やはり頂点に立つ者が人である証なのだろう。
王は麒麟が死ねば死ぬ。麒麟が失道の病(王が仁道から外れるとかかる病気)にかかると、王が改心するか王の方が先に死ななければ1年以内に死ぬ。
麒麟が失道の病にかかると、それを憂いて蓬山へ行き「禅譲」する王もいる。
「禅譲」は一般的に「位を他人に譲ること」であるが、十二国記ではこの「禅譲」は「死」。
つまり、蓬山にて儀式を経て、そのままそこの蓬山にて亡くなるのだ。
哀しいことだが、人は王になると末路は「老いることのない哀れな死」しかない。
「天寿を全うする」ということはあり得ないのだ。
麒麟もそういう点で哀しい生き物である。

国氏

王・麒麟の呼び名は、国名の同音異字で表す。それを「国氏」と言う。
例えば、慶国の場合は、国氏は「景」。王は「景王」、麒麟は「景麒」と呼ばれる。
ちなみに。
麒麟は男性・女性(オス・メスw)によって、麒麟の麒と麟に分かれる。
男性は麒麟の「麒」、女性は麒麟の「麟」。それに国氏がついて呼ばれる。
しかし、基本的には麒麟の役職である「宰補(さいほ)」、畏れ敬い「台補(たいほ)」と呼ぶ。国氏+役職で呼び、慶なら「景台補(けいたいほ)」と呼ぶのが普通。

国氏は天命に背く(覿面の罪/てきめんのつみ※)と変更される。
作中でも過去に変わった国に「才(斎→采)」と「戴(代→泰)」があると記されている。
それを決めるのは天帝。
ちなみに、泰に変わった後、黄海にあった「泰山(現在の蓬山)」は「戴」と国氏が同じになるので変更している。

  • ※覿面の罪…軍を持って他国に侵入すること。敵対心がなく戦争行為がなくても、王が軍兵を率いて他国へ「侵入」しただけで数日のうちに王も麒麟も急死する。
    つまり、「戦争」は天が認めないのだ。
    その為、この物語は血生臭い他国との戦争はない(その分自国内のクーデターはより血生臭い)。
    軍事力を利用して他国を支援する場合は、該当国の王から正式な依頼が無い限り許されない。
    陽子も慶国に入る際、囚われた景麒を救出するのと偽王を倒す為に、雁国の延王が「陽子の依頼に基づいて助力」して軍を出している(延王自身も一緒だった)。

十二国記の創世物語


十二国世界の頂点の神、天帝が元々あった違う世界を創り変えている。
それは人が戦争をし、天帝の諫めも聞かず無条理のまま生きていたからであった。

天帝は世界を卵に返し、残ったのは五人の神と十二人の人間のみ。
中央に五山を創り五人の神を住まわせ、黄海と成す。
十二人には蛇が巻きつき三つの実の生った枝を渡した。
実は土地と国と玉座になり、枝は筆となった。
で、十二国となった。
土地は戸籍、国は法、玉座は仁道、筆は歴史を示している。
全てこの世界の根幹を成すもの。
天帝が定めた天の掟である太綱には「天下は仁道をもってこれを治むべし」とあり、玉座に座る王は仁道で国を治めなければならないのだ。それができなければ、麒麟が失道の病にかかり天命を失う。
また、国内は国の法の下に治められ、国自体も天の法に従わなければならない。

生命の誕生

十二国の世界では、創世期に天帝が全て「卵へ返した」とあるように、この世界は全て卵となって出てくる。
その卵を「卵果(らんか)」という。
こんな感じ(これは人の卵果)。
あらゆる動物が木の枝に大きな卵のような実が生って生まれる。
実る木の種類は違うが、魚や家畜、人の子供まで卵から出てくる。
人の子は天に認められた夫婦しか子供を授からず、また未婚の王や麒麟は子を持つことはできない。
里木や野木の下ではあらゆる動物は殺生できず、また妖魔も近寄らない安全な場所。

  • 捨身木 黄海の蓬山にあるたった一本の木。麒麟が生る木で、根には麒麟を守り育てる女怪(にょかい)が生る。
  • 路木 王の宮殿にある。各国つまり十二本しかない。既婚の王が祈れば王の子が生まれる。また、新しい作物が生り、翌年には国内全ての里木(りぼく)に一斉に種の入った実が生る。
  • 里木 里ごとにある。人間の場合、婚姻関係にある夫婦が細帯を枝に結び付けて天に祈る。天に認められたら、その枝に卵果が実り子供が生まれる。家畜は一か月後、子供は十月十日後に生まれる。里木には祈る日が決まっており、「1日」~「6日」は鳥・豚・山羊・馬などの家畜系、「7日」と「9日以降」は人となっている。
  • 野木 里木より小ぶり。人以外の野生動物や植物などが生る。こちらは勝手に実が生り勝手に孵る。魚は水の中の野木から孵る。

十二国と蓬莱(日本)・崑崙(中国)とが繋がる現象のこと。
自然に起こる場合と人為的な場合の二種類がある。

人為的なものには、王などの上位の仙と麒麟や一部の強力な妖魔は、月の呪力を借りて門を開いて蝕を起こす。
こんな感じ。
こういった人為的な蝕は、自然のものに比べれば小規模で被害も少ないが、王が行き来すると十二国の世界と蓬莱・崑崙双方に大きな被害を及ぼす。王は無暗に異世界へ行くなってこと。

蝕が起きると、嵐のような突風が吹く。
その為、実っていた卵果が流されて十二国で生まれるはずだった人間が、蓬莱・崑崙において誕生する。
これらの人間を胎果という。
しかし、当然「胎果」は自身が「別世界」の人間とは分からないので、元の世界に帰れなければ、そこで一生を終えることとなる。
十二国の世界から蝕で「人」が流されたことはない(卵果自体はある)が、日本や中国からは人が蝕で流されてしまうことがある(海客・山客)
日本から流された場合(海客)、外海(虚海)の岸に辿り着くが、蝕で海が荒れる為に辿り着けずに死体となって大陸に打ち寄せられることもあるらしい。
中国の場合(山客)は、黄海の金剛山の麓に辿り着く。

蓬莱と崑崙

十二国の世界では、日本のことを「蓬莱」、中国のことを「崑崙」と呼ぶ。常に繋がっている訳ではなく、「蝕」によって繋がるのみ。人で行き来できるのは王以下のごく一部の高位の仙のみ。
卵のまま十二国世界から流されて蓬莱・崑崙で生まれ、再び十二国の世界へ戻った者を「胎果」という。
逆に蝕によって日本・中国から十二国の世界へ流れ着いた者を「海客(日本人)」・「山客(中国人)」という。

胎果

人の子が入った「卵果(らんか)」は、時折蝕によって流されることがある。それは蓬山の捨身木で麒麟の生る卵果も例外ではない。
流された卵果は、女性の胎内に入り両親に似た殻を被って生まれる。それを「胎殻」という。
十二国の世界へ戻れば、その胎殻は破れ「元の姿」になるが、戻れるのは「王」や「麒麟」などといった国の重要人物がほとんどなことから、大体は流されたまま一生を終えるのだろう。
before(日本での中嶋陽子)


after(十二国での中嶋陽子)


海客・山客

蝕によって日本から流されてきた者を「海客(かいきゃく)」、中国から来た者を「山客(さんきゃく)」と言う。
十二国と日本・中国(蓬莱・崑崙)とは、全く言葉は通じない。
昭和40年代に流された東大生は、初歩的な中国語の知識はあったが、流された当初は何とか筆談が出来た程度だったという。
発する言葉は全く通じない(発音が違うのだろう)。
仙籍(仙)に入っていると(王や麒麟は正式には仙籍とは別の「神籍」)、海客や山客であっても言葉に不自由はしない。

中嶋陽子は海客ではなく、胎果である。
それは十二国の世界へ来て、姿が変わったから分かること。
ただ、胎果であっても「言葉」は通用しない。
それは言語習得に至たったのが、生まれ育った「異国」であるからだ。
しかし、物語の中で中嶋陽子は十二国の世界の人間と問題なく会話ができていた。
流されてきた海客(壁落人/へきらくじん・先述の東大生)から「胎果であろうと言葉は通用しないこと」、そして、「言葉に苦労しないのは「仙」であるから」と言われ、景麒が来たこと、彼が陽子の前で膝をついたことを話すと、陽子は「胎果であり慶国の王」であることが判明する。

海客や山客は、一部の国「雁・奏・漣」などでは、技術・文化・医術において有用なものをもたらすとされ、特に優遇されているが、殆どの国では「言葉が通じない・文化が全く違う」などあり、貧しい暮らしをさせられる。
現在の十二国で一番優遇されているのは雁国(胎果の王)で、海客は役所に届ければ海客としての「身分証明書」を受け取ることが出来、それを使って一定金額の生活費を受け取ることが出来たり、学校や病院を一般に利用することが出来る。
また、身分証明書を発行する際には、「電話番号と郵便番号」を書かなくてはならない。それで、本物の海客と証明されるのである。
郵便番号が5桁から7桁に変わった情報などは、雁国の麒麟が日本に赴き情報を仕入れている。
芳国では、山客によって仏教がもたらされており、その影響で祠廟が寺院風といった文化自体に影響をもたらす場合もある。

一方で、巧国では蝕によって国に被害がもたらされることから、ほとんどの海客は「悪者」とされ、見つかれば「国を滅ぼす」として処刑されることになる。
十二国へ来た陽子も、最初は巧国に流れ着き海客として追われることとなった。
最終更新:2012年09月26日 11:38