字(あざな)について

[第2話](後半)で馬岱が名前の呼び方で、ガミガミとリオウ達に噛みついている。

このことをもっと詳しく説明しようと思う。

古代中国では、姓(氏)・諱(いみな/名)・字(あざな。じ、ではない)の3つで名前としている。
カッコは呼び方や使われ方。例えば、馬超なら馬氏、名は超。
諱は自分よりも目上の立場、親や主君しか呼べないもので、他の者が呼びかけたら無礼なのだ。
(敵の武将は平気で呼んでいたらしいけどね。無礼も何も関係ないから)
呼べない代わりをしているのが字である。
(だから、紙芝居を作る際に史料に字が残っていない馬岱を呼ぶ時が、制作側(up主さん)にしてみれば一番困る訳である)

実際にどうやって人を呼ぶのか。
主に字。人を呼ぶ時には姓+字はほとんど使わない。

ただ、字は成人をしないと、つけてもらえない。
それまでは幼名というのがある。
有名なのが、劉備の子劉禅の幼名が「阿斗」である。
(ちなみに『阿』は幼児・子供を示す)

官職がある場合は、字より姓+官職で呼ぶことが優先される。
例:馬驃騎将軍・曹丞相

同じ[第2話]で馬超が言っていた「皇帝が同じ名だったら変えなければいけない」というのは、避諱と呼ばれる。
皇帝の諱に関しては、馬超が言うように物凄く厳しい制限がある。
だから、馬超が皇帝になったら、「超」がついている人間は諱を変えなければいけないし、果てには官名なども変えさせられちゃう(例外あり)。歴史書でも皇帝の諱を紹介する時に載せるくらい(後は諡号(死後につける号)で統一)。
日本でもこれほどのことはないが、普段において天皇・皇太子・皇族(男子)を名で呼ぶことはしないだろう。それと同じくらいに諱には威力があると考えれば分かりやすいだろうか。

基本的に日本での表記は、姓+諱か3つ一緒。このページも姓+諱。
ただ、不思議なことに『項羽と劉邦』で有名な項羽の「羽」は字で、名は「籍」だったりする。
姓+諱より姓+字で覚えられている人物も結構いたりするので、一度調べて見ると面白い。

肥から出ている『真・三國無双』というアクションゲームの中で、夏侯淵が夏侯惇を「惇兄(とんにぃ)」と呼んでいるが、夏侯惇の「惇」が諱の為、普通なら呼んだ瞬間に夏侯淵は即「滅麒麟牙(夏侯惇の愛刀)」の餌食になっている。
書籍などで分かりやすいよう3つ一緒に載せる場合があるが、それはあくまで便宜上のことであり、歴史系(ゲーム除く)同人誌のセリフなどでは、3つ一緒や姓+諱を使用しないように気を付けましょう。
最終更新:2010年01月06日 14:12