絆ルール ver2.00(2025/10/13)
目的
絆ルールはキャラクターと社会との関係を表すルーンクエスト3版向けの追加ルールです。絆ルールを導入すると、どうやって収入を得ているのか、日々何をして過ごしているのかなど、キャラクターの日常を鮮やかに立ち上げることができます。
- 絆の作成
- 名声値の価値と消費
- 絆の相互作用
- 貢献ロールと技能成長
- 絆を増やす
- クラスレベルと生活水準
- さまざまな状況
1.絆の作成
キャラクターは【クラス】【カルト】【家族】【憩い】の4つの絆を持ちます。
- クラス:生活基盤となるコミュニティー
- カルト:宗教コミュニティー
- 家族:血縁者コミュニティー
- 憩い:キャラクターの精神状態
- 貢献成功率:絆にコミットする能力
- 名声値:絆からの評価
- 反感値:絆からの敵意
基本的な活動パターン
キャラクターは社会生活の表現として週に3回の貢献ロールを絆に振り分けます。また、各季と年末に名声値と反感値の調整を行います。
非日常の冒険的セッションが混ざった場合、一時的に作られる絆【冒険行】に貢献ロールを振り分けます。絆ルールを採用しても、ゲーム中の経験チェックは重ねて適用できます。
週
キャラクターは週に3回の貢献ロールを行います。1.生活費としてクラス名声が1低下します。クラス名声が尽きれば生活できなくなるため、通常は1回成功するまで【クラス】をロールします。通貨のない社会でも狩りや採集、物々交換、略奪などの行動をクラス名声の獲得と消費と見立てます。
2.憩い反感の増加を防止するため【憩い】を1回ロールします。
3.ロール回数を使い切っていなければ他の絆をロールします。
生活能力の低いキャラクターは、余暇を犠牲にして【クラス】を3回ロールしても生活費が稼げないことがあります。
季 (8週)
各絆の反感反応の確認と適用年 (5季 ※聖祝季の2週間は対象外)
疎遠による名声値、反感値の引き下げ貢献成功率と貢献技能セット
「貢献成功率」は絆にコミットする5つの技能成功率の平均値(切り捨て)です。5つの技能をまとめて「絆Xの貢献技能セット」と呼びます。
意思疎通は集団に所属する必須の能力です。対象とする集団で標準的に使用される〈〇〇語会話〉が30%に満たない場合、貢献技能セットに会話技能を含める必要があります。
5つの技能のうちひとつは能力値で代替することができます。その場合、能力値×5%を技能成功率とみなして計算します。
技能成功率は技能分野修正値と恒常的に使用できる魔術や特殊能力による修正を含みます。一時的に増加する効果は含みません。
貢献ロール
貢献成功率に対して1D100をロールすることを「貢献ロール」と呼びます。技能判定と同じように効果的成功、決定的成功、ファンブルがあります。貢献ロール表
成功度 | 名声値 |
---|---|
決定的成功 | +3 |
効果的成功 | +2 |
成功 | +1 |
失敗 | 0 |
ファンブル | 反感値+1D6 |
貢献ロールにファンブルすると、対象の絆に1D6の「反感値」が加算されます。
各絆に対する名声値や反感値をクラス名声、クラス反感、憩い名声、憩い反感のように省略して呼びます。
名声値
名声値が高まると、絆の示す集団内での評価や地位が上がります。一般的な集団であれば名声値30で仲間と認められ、50で一人前、70で優秀、90でリーダー格と評価されます。
名声値 | 評価 |
---|---|
30 | 正規メンバー |
50 | 一人前 |
70 | 優秀 |
90 | リーダー格 |
反感値
社会集団に対して反感を招く行動をすると反感値が増加します。反感値が名声値を超えると集団から排斥され、反感値が名声値以下になるまで貢献ロールが行えなくなります。
反感値を引き下げるには他の絆の名声を消費して「仲裁」する必要があります。
なにが反感を招くかは絆によって異なります。下記の3パターンが代表的なものです。
妬み(X) | 1季にXポイントを超えて名声値を上昇させた分、反感値が上昇します。 【クラス】【カルト】など。 例えば、妬み8を持つ【クラス】で季の開始時と終了時を比較して、名声が10ポイント増加していたなら、反感値が2ポイント上昇します。 |
貢献ノルマ(X) | 絆に対する1季の貢献ロールがX回に満たない分、反感値が上昇します。 【憩い】など。 |
名声ノルマ(X) | 1季に絆の名声値をXポイント支払う必要があります。足りないポイント分、反感値が上昇します。一部の【カルト】など。 |
絆の初期名声値と性質
クラス
【クラス(名称)】は住居・仕事・親類・友人・市場など、「キャラクターの日常生活を取り囲む社会と人々」を表す特別な絆です。生活費を示す絆でもあります。名称には「サーター自由人」「エスロリア貴族」「ソグシティ乞食」「アガー農民」など、地域と社会階層を含めます。
貢献技能 | 生計に主として使用する技能5つを割り当て、GMにキャラクターの日常を説明し、承認を受けます。 キャラクターの生活費として週に1ポイントの名声値の支払いが必要です。この支払いを避けることはできません。$br() |
初期名声値 | 経歴年数×貢献成功率の1/10(切り捨て) |
反感反応 | 妬み(8) |
カルト
【カルト】は精霊・神聖・魔道を問わず、宗教・思想・魔術によって結びついた集団との絆です。貢献技能 | カルト技能から5つを選択します。 |
初期名声値 | 25+貢献成功率の1/10(切り捨て) |
反感反応 | 妬み(8) |
その他 | 入信者は30、司祭は50、ロードは70の名声値が必要です。聖祝日に名声値が不足する場合、その地位を失います。 |
家族
【家族】は血族、育ての親など、キャラクターの能力ではなく存在を肯定する人々との絆です。貢献技能 | 任意の5つ |
初期名声値 | 50+20歳を下回る1年につき+5(最大50) |
反感反応 | なし |
憩い
【憩い】はキャラクター自身への満足感です。貢献技能 | 憩いの貢献技能セットに割り当てた技能は他の絆に割り当てることができません。 憩いにAPPを割り当てると、10を超えた値を3倍にして計算することができます。APP16ならば、(16-10)*3=18の能力値として扱えます。APP18なら24として扱います。10を下回る場合、同様の計算でペナルティーが発生します。 |
初期名声値 | 100 |
反感反応 | 貢献ノルマ(8)、地位低下 |
その他 | 【憩い】の反感値が名声値を超えるとキャラクターは「オーバーストレス」状態になります |
地位低下ストレス
名声値の急速な低下はキャラクターの心情を不安定にします。【憩い】以外の絆の「前季の名声値-今季の名声値」の差が20を超えると、超過したポイント分、憩い反感が増加します。
複数の名声が同時に低下した場合、地位低下ストレスは個々に適用します。
オーバーストレス
【憩い】の反感値が名声値を超えた値を「オーバーストレス」と呼びます。- キャラクターの疲労の上限値はオーバーストレス分低下します。
- 【憩い】以外への貢献成功率はオーバーストレスと同じ値のペナルティーを受けます。
- 反感が名声を上回ると貢献ロールを行えなくなりますが、貢献ロールを1回放棄することで憩い反感を1引き下げることができます。週に3回の貢献ロールをまったく行わず、3点づつ反感値を下げているキャラクターは、鬱状態のように見えるはずです。
越年処理
疎遠表
名声値・反感値 | 減少量 |
9以下 | 1 |
10~29 | 2 |
30~49 | 3 |
50~69 | 5 |
70~89 | 8 |
90~109 | 13 |
110~ | 20% |
絆の強さを維持するには、キャラクターは集団に一定以上時間を割く必要があります。
【憩い】も例外ではありません。人間は常に自分に対するケアを必要としています。
年に1回、聖祝季に、疎遠表に従って名声値と反感値を低下させます。
名声値・反感値が110以上の場合は20%(切り上げ)低下します。例えば名声値が141であれば141×20%=28.2で、切り上げて29%低下します。
疎遠による低下は誰にも平等で起こるため、地位低下による憩いの反感上昇は起こりません。
グローランサの1年は5季×8週ですから、1年間に120回の貢献ロールがあります。
1年間に貢献を割り振って上昇させた名声値より疎遠による低下が大きければ、キャラクターはその絆に十分にコミットしていなかったということです。
(ルールの簡素化のため聖祝季の2週間は貢献ロールの対象外となります。)
長期一括処理
1季(8週間)を1単位として扱うことで、長期間の変化を一括で処理することができます。8週間連続で貢献を割り振ることにした絆は自動的に名声値が貢献成功率の1/10(切り捨て)上昇します。
加えて、貢献ロールを1回行ってその成功度を加えることができます。
例:8週間をひとつの絆に割り振って貢献成功率が60であれば、名声値は60÷10=6で6ポイント+貢献ロール1回分上昇します。
もし同じ絆に3回の貢献ロールすべてを割り当てたなら、18ポイント+貢献ロール3回分上昇することになります。
反感反応は通常通り算出します。
激務
キャラクターは休息の間さえない環境に置かれると貢献回数が増加し、その分の負荷を受けます。いつ襲撃を受けるかわからない冒険行や、食料の入手困難なサバイバル、奴隷労働などが典型です。
ここでは激務の一種になることが多い【冒険行】を例として取り上げます。
激務表
貢献回数 | 負荷 |
4 | 憩い反感+1 |
5 | 憩い反感+2、CONのEXP-1 |
6 | 憩い反感+3、CONのEXP-2 |
【冒険行】
【冒険行】は危険な非日常を表す一時的な絆です。また、貢献技能にPOWを追加できる特別な絆でもあります。想定される難易度をGMと相談し、内容に応じて貢献回数を1から5で定めます。
内容に応じた貢献技能セットを作成し、貢献成功率を計算します。
必要な貢献回数が3に満たない場合、他の絆に貢献ロールを行うことができます。
冒険行のファンブルはカルトミッションであればカルト名声、それ以外であればクラス名声を1D6点低下させます。
名声値は適切な報酬、反感値は適切な被害として清算します。
経験チェックによる技能上昇があった場合、貢献成功率への適用は次の季からになります。
自己の欠損による憩い反感の上昇
一回限りの神性呪文の消費、呪付、病気、老化など、自分の一部が失われたと感じた場合、【憩い】反感が上昇します。能力値を喪失した1ポイントにつき、キャラクターの【憩い】反感は+5されます。
神聖呪文の取得や自分の物品への呪付など「自分と強く結びついたもの」は能力値の喪失とは感じません。
一回限りの呪文を消費したり、呪付が破壊されたり、呪付物を他人に譲り渡した場合は【憩い】反感が上昇します。
技能を喪失する状況はレアですが、技能5%の低下でも【憩い】反感が+5されます。
2.名声値の価値と消費
絆ルールを使用する場合、通貨は使用しません。名声値が通貨の代わりをします。物品の獲得や交換、サービスの受益やキャラクターの地位、獲得した価値はすべて名声値に変換します。
なぜ通貨ではなく名声値なのか
集権的な権力や警察能力のない世界では、通貨は価値を担保できません。物資も生命も常に他者からの略奪の危険にさらされています。足元を見られれば価格は何倍にもなりますし、安全を維持するにはコストがかかります。
人望があれば、物品や貨幣を所持していなくてもサービスを得ることができます。
名声値はこうした表現をGMが考慮する作業を簡素化し、交換や安全のコストを織り込んだ、キャラクターの信用資産の数値として使用できます。
生活費
クラス名声1ポイントはキャラクターの1週間の生活費に相当します。名声値30の人間が病気で倒れたとき、所属クラスは名声が0になるまでの30週間はどうにか面倒を見てくれます。
クラス集団内で生活する場合、衣食住や仕事の有無を考慮せず、キャラクターは標準的な生活を送れているものとして扱います。
名声値の消費
標準的な生活以上に何らかの物資やサービスを必要とする場合、名声値を消費して入手する必要があります。その地域で一般的に売買されている物品やサービスであれば、クラス名声を通貨として使用できます。
絆の名声値1点は、その絆の標準的な構成員による一週間分の労働です。
絆の構成員が提供できるものであれば、クラス以外の絆からでもサービスを受けることができます。
例えば、【カルト(チャラーナ・アローイ)】は癒しを施してくれますが、剣の訓練を依頼することはできません。
絆ルールではキャラクターが入手した貨幣や財宝はクラス名声に換算してから使用します。
サービスに必要な名声値の目安は「サービス表」を参照します。
名声判定
絆の名声値-反感値を成功率としてD100をロールすること。名声判定とサービス
成功度 | 評価 |
---|---|
決定的成功 | 2段階向上 |
効果的成功 | 1段階向上 |
成功 | サービス表通り |
失敗 | ストック |
ファンブル | 反感値+1D6 |
成功すれば名声が消費され、値に相当するサービスが受けられます。
効果的成功はサービスの質・量・速度のいずれかを1段階向上させます。決定的成功は2段階向上させます。
失敗すると名声値は消費されますが、「ストック」状態となり、その週にサービスは獲得できません。以降、毎週、成功するまで名声判定を繰り返す必要があります。その場合、サービスに必要な名声値がすでにストックされていれば、追加の消費をせずに名声判定だけを行うことができます。
ファンブルすると失敗の結果に加え、反感値が1D6増加します。
絆にアクセスできる環境であれば、特に行動消費なく、いつでも、何度でも名声判定を行えます。
ただし1度失敗したサービスに対してロールできるのは翌週以降です。別の調達先があれば同種の物品に対して別の判定として行うことは可能です。その場合失敗時にストックした名声値はそのまま残ります。
入手の確率が限られるサービスは、1ポイントであっても名声判定を必要とすることがあります。
名声値を1ポイントを余分に消費するごとに、名声判定の成功率に+20のボーナスを受けることができます。判定へのボーナスに消費した名声はサービスの内容には反映されません。
高額な取引とサービスポイントのストック
高価なサービスの入手には長期間かかります。家や車の購入などを想像するとわかりやすいでしょう。ひとつの絆につき、1週間に消費できるのは名声値の1/10(切り捨て)ポイントまでです。最低でも1ポイントは使用できます。この上限を超えて名声値を消費するには名声判定が必要です。
入手までの間、キャラクターシートにサービスの名称とにストックしたポイントを記入しておきます。
ストックが目標のサービスポイントに達し、かつ名声判定に成功した週にサービスを享受することができます。
対象を定めずにストックすることはできません。
ストックは名声値と同じように、聖祝季に疎遠ルールに従って低下します。
サービス表
判定 | 消費 | サービス |
- | 1 | 一般的な技能30%までの8週間の訓練(40trp) |
- | 1 | 一般的な技能50%までの4週間の訓練(20trp) |
- | 1 | 専門家(技能30%)一人の3行動の協力 |
- | 1 | 中級専門家(技能50%)一人の1行動の協力 |
- | 1 | 自分のカルトの神性呪文1個を回復 |
- | 3 | 3週間かけて3ポイントの一般的な物品を買う |
- | 1 | 自分のカルトの精霊呪文強度1を取得 |
- | 3 | 自分の氏族の祈禱師から3週間かけて精霊呪文強度1を取得 |
- | 6 | 6週間かけて自カルトの精霊呪文強度6を取得 |
要 | 1 | 一般的な技能70%までの2週間の訓練(10trp) ※70%まで教えられる教官は珍しい。 |
要 | 1 | 一般的な技能90%までの1週間の訓練(5trp) |
要 | 1 | 珍しい技能30%までの4週間の訓練(20trp) ※極端に珍しいものは個別に判断。 |
要 | 1 | 専門家(技能30%)から8週間の訓練(40trp) |
要 | 2 | 中級専門家(技能50%)一人の3行動の協力 |
要 | 2 | 上級専門家(技能70%)一人の1行動の協力 |
要 | 3 | 最上級専門家(技能90%)一人の1行動の協力 |
要 | 2 | 1週間で2ポイントの物品を買う |
要 | 2 | 1週間で2ポイントの神性呪文を回復 |
要 | 1 | 再使用可の神性呪文1強度の投射 |
要 | 10 | 1回限りの神性呪文1強度の投射 |
マ | 5 | 上級専門家(技能70%)一人の3行動の協力 |
マ | 8 | 最上級専門家(技能90%)一人の3行動の協力 |
- | 3 | 3週間かけて3ポイントの物品を買う |
収入のクラス名声への加算
キャラクターが冒険により大金や高額な物品・貴重な情報を獲得し、”入手が公知”となった場合、価値に相当するクラス名声が加算されます。しかしクラスは妬み(8/季)の反感反応を持つため、名声値+30の物品を入手してなにも対策しなければ、その季の終わりに反感値も+22されてしまいます。
名声値100の物品を入手したとすると、反感値は92も増加してしまいます。
宝くじのように、短期間に名声を大きく上昇させることは、キャラクターの社会的立場を不安定にします。
情報・知識・地位の価値
絆ルールでは情報・知識・地位も価値(名声値)として扱えます。非常に珍しい知識も価値を持ちますし、希少なツテも価値を持ちます。
キャラクターが達成した名声値の積み上げによって地位を得るのではなく、なんらかの幸運で地位を得てしまったのなら、名声値と同じだけの反感値が加算されます。
キャラクター達が得た情報によって有力者が失脚するのであれば、その情報は有力者の低下する名声値に相当する価値を持ちます。そして、同等の反感値を持つことも明らかです。
情報・知識は物品や地位より扱いが困難です。キャラクターが価値を推定することが難しく、どこに開示するかによって価値が大きく変動します。知っている人数が増えるほど価値は下がります。
物品と違い手離す(忘れる)こともできません。望まず入手してしまった莫大な反感値持つ情報は、秘匿し続けるのか、交渉して名声値とするのか、公知にして価値を薄めるのか、判断が必要です。
価値の部分消費
大きな収入があった場合、公知にせず、少しずつ消費することで、クラス名声の上昇と反感値の上昇を抑えることができます。これを価値の部分消費と呼びます。分割できない物品であっても契約などによる抽象的な権利の移転を行っているとみなし、部分消費することができます。
部分消費には名声判定が必要です。
物品の持つ価値(名声値)から消費するポイントを宣言し、クラスの名声値-反感値を成功率としてD100をロールします。
成功すれば宣言したポイント分、クラス名声が上昇します。
ファンブルすると、その時点で残っている価値が”公知”となります。残っているポイントをすべてクラス名声に加算し、季の終わりに反感反応を計算します。
クラス以外の絆に加算する
獲得した価値はクラス以外の絆に加算することもできます。複数の絆に分割して価値を振り分けてもかまいません。特にカルティストは【カルト】に奉納することで、カルト内での地位を高めることができます。
カルトミッションで獲得した価値はキャラクターが個人で獲得したものとみなされないのが通例です。
カルトはミッションの難易度に応じた名声値をキャラクターに与えますが、価値はカルトに帰属します。
ただ、他の信徒よりも優先して「借り入れ」を行うことができるでしょう。
【憩い】に加算する
獲得した価値がキャラクターの憩いに関わる者であれば、【憩い】に名声を加算することもできます。ただし”公知”となった場合、反感値は憩いではなく、クラスに加算されます。
憩い名声は、どんな高額な物品であっても、1回の獲得では+100までしか加算できません。
絆からの借り入れ
集団から一定の信用を得ているキャラクターは、物品等を借りることができます。貸し出された物品等は、貸出ポイントを持っています。
貸出ポイントは絆の反感値に足される固定の反感値として扱います。仲裁で減らすことはできません。
反感値が名声値を超えた場合、貸し出された物品は没収されます。
物品等 | 貸出ポイント | 貸出基準 |
---|---|---|
物品 | 名声値1相当につき1 | 名声値30 |
魔術物品 | POW1相当につき5 | 名声値50 |
同盟精霊 | 20+同盟精霊の経歴年数1年あたり1 | 名声値70 |
名声値譲渡の制限
基本的にキャラクター間の名声値のやりとりはできません。名声値の移動には必ず反感値が伴うのが絆の基本ルールです。もしキャラクターAからキャラクターBにクラス名声を1ポイント譲渡したなら、キャラクターAのクラス反感とキャラクターBの【憩い】もしくは【仲間】反感が1ポイント上昇します。
ただし、パーティーで獲得した物品をパーティー内で分配することは自由です。
いったん公知となったアイテムの移動は名声/反感の移動を伴います。
3.絆の相互作用
絆の関連係数
氏族と主神のカルト、パンテオン内の友好神殿、警察と裁判所のように、集団は相互に影響を及ぼし合います。この影響を絆Aと絆Bの「関連係数」と呼びます。
キャラクターはサービスを受けたい集団に対する直接の絆を持っていなくても、自分の持つ絆を使用してサービスを要求できます。
キャラクターが名声判定で獲得できるサービスポイントは関連係数を乗じたポイント(切り捨て)になります。
一般的に、強い関係を持つ集団同士が80%、【憩い】が40%を基準に、20%刻みで関連係数が決まります。
例え敵対的な絆であっても20%の関連係数が保証されます。敵対的な集団に所属するキャラクターの名声が低下することは、敵対集団にとって利益だからです。
定められていない関連係数は必要になった時点でマスターが決定します。
関連係数の指針
係数 | 絆の関係性の例 |
80% | 互いの帰趨が存続に直結する。氏族とその主神カルト。 |
60% | 利害がほぼ一致する。家族と氏族、友好カルト、君主国家とその役所等。 |
40% | 利害が相反することもあるが、一致しうる。友好的な氏族。隣国の貴族クラス等。 【憩い】は全ての絆にこの係数を持つ。 |
20% | 無関係か敵対関係 |
関連する絆の名声値を引き上げる
関連係数を利用して、絆Aの名声値を消費して絆Bの名声値を引き上げることができます。絆Aの名声判定を行って生成したサービスポイントに関連係数を乗じた分、絆Bの名声値が上昇します。
通常通り、季の終わりに絆Bの反感反応を計算する必要があります。
仲裁:関連する絆の反感値を引き下げる
絆には名声値を上げる手段はありますが、その絆自身の反感値を下げる手段はありません。他の絆からであれば、絆Aの名声判定を行って生成したサービスポイントに関連係数を乗じた分、絆Bの反感値を低下させることができます。
ただし、絆Aと絆Bの貢献技能セットに同じ技能が含まれる場合、同じ技能ひとつにつき関連係数が20%低下します。技能が類似しているということは、反感を持った人物が絆A側に所属している可能性も高いということです。修正によって関連係数が20%を下回る場合でも、20%は保証されます。
4.貢献ロールによる技能上昇
キャラクターは貢献ロール1回ごとに、貢献技能セットに含まれる技能1つに1経験値(EXP)を加算します。
貢献ロールに失敗していても経験値は獲得できます。
1EXPはルーンクエストのルールにおける研究10時間と等価です。
キャラクターが現在の技能値に必要なEXPを獲得すると、技能値は+5%されます。
余ったEXPはそのままその技能に残ります。
ひとつの絆ではひとつの貢献技能には週に1EXPしか振り分けられません。
同じ絆に3回貢献ロールをするなら、3つの技能にEXPを割り当てます。
絆Aと絆Bの両方に技能Xが入っている場合、絆Aと絆Bの貢献ロールで獲得したEXPを技能Xに割り当てることで2EXPを加算できます。
長期一括処理では、ひとつの絆の同一技能に8週間を割り当てます。
キャラクターは貢献ロールを1回放棄して、貢献技能セット以外の技能に1EXPを獲得することもできます。
訓練
1TRPはルーンクエストのルールにおける訓練10時間と等価です。TRPを獲得するには、1TRPにつき貢献ロールを1回放棄する必要があります。
キャラクターが現在の技能値に必要なTRPを獲得すると、技能値は+5%されます。
余ったTRPはそのままその技能に残ります。
訓練したい技能を保持している人物と同じ絆を保持しているならば、その絆の貢献ロールによる5EXPを1TRPとして使用できます。
絆で主として使用される〈〇〇語会話〉は、その絆の貢献ロールによる1EXPを1TRPとして使用できます。
30%未満のカルト技能は、【カルト】の貢献ロールによる1EXPを1TRPとして使用できます。
POWの上昇
【冒険行】の貢献技能にPOWが含まれる場合、経験値表のPOWの欄を使用してPOWを上昇させることができます。経験値表
技能値 | 必要EXP | 必要TRP | POW | 必要EXP |
---|---|---|---|---|
0 | 400 | 5 | - | - |
5-9 | 3 | 3 | 1 | 4 |
10-14 | 5 | 5 | 2 | 4 |
15-19 | 7 | 5 | 3 | 4 |
20-24 | 10 | 10 | 4 | 4 |
25-29 | 13 | 8 | 5 | 8 |
30-34 | 16 | 10 | 6 | 8 |
35-39 | 21 | 16 | 7 | 8 |
40-44 | 25 | 13 | 8 | 8 |
45-49 | 30 | 15 | 9 | 16 |
50-54 | 40 | 21 | 10 | 16 |
55-59 | 45 | 18 | 11 | 16 |
60-64 | 55 | 19 | 12 | 16 |
65-69 | 70 | 27 | 13 | 32 |
70-74 | 90 | 23 | 14 | 32 |
75-79 | 120 | 23 | 15 | 32 |
80-84 | 150 | 34 | 16 | 32 |
85-89 | 200 | 26 | 17 | 40 |
90-94 | 400 | 28 | 18 | 40 |
95-99 | 400 | 40 | 19 | 40 |
+5 | +400 | +40 | +1 | +40 |
研究・訓練への集中
クラスの義務を放棄して技能の習得に没頭することは、グローランサの余剰生産力では一般的ではありません。しかし社会生活を顧みずに自分の課題だけを追求する狂信的な個人はたびたび現れます。
1週間の3回の行動すべてを放棄して研究もしくは訓練に集中することで、ひとつの技能に5ポイントのEXP/TRPを加算することができます。
時間が完全に拘束されるため、クラス名声が-1、憩い反感が+1されます。
5.絆を増やす(拡張ルール)
GMが認めれば、キャラクターは最大10個まで絆を増やすことができます。ふさわしい貢献技能セットを設定し、GMに許諾を得ます。
名声値と反感値は0で開始します。反感反応や集団から得られる利益はGMが設定します。
通常、追加した絆が【クラス】【カルト】【家族】【憩い】と比較して有利になることはありません。
週の貢献ロールの回数は増えないため、むやみに絆を増やすことは推奨されません。
個人的な絆
基本的な絆の対象は社会性をもった一定規模以上の集団です。しかしGMの裁量で、特定の個人や物品、思想などに絆を設定することもできます。
こうした絆は影響範囲が小さく、独特な挙動を持つことがあります。
個人的な絆では【憩い】以外との関連係数が下限が20%ではなく0%になることがあります。
また、【憩い】に入っている技能を貢献技能セットに含めることもできます。その場合通常のルールに従い、技能1個の重複につき、関連係数が20%低下します。
仲間
キャンペーンではPCのパーティーが短期間で濃密な関係を築くことが多いため、絆として【仲間】を設定することができます。1セッションに1回、名声値を技能値とみなした上昇ロールが行えます。GMの裁量で、シーンごとに上昇ロールを行うこともあります。
貢献技能 | メンバーの指定する技能/能力値2つ以上 |
初期名声値 | 0 |
反感反応 | なし |
関連係数 | 【クラス】40%、その他20% |
恋慕
恋人を【家族】として扱うこともできますが、より焦燥的な恋愛感情を表現することもできます。恋慕の初期名声値はランダムで決めるのであれば相手のAPP×5をロールし、30+成功度×20とします。
ファンブルであれば、反感値が1d6*5加算されます。
もちろんAPP以外の要素を鑑みて、意図的に設定してもかまいません。
ただし、恋慕の初期名声値は憩いの反感値にも加算します。
恋慕名声が憩い反感より高い間は、恋慕への貢献ノルマは憩いの貢献ノルマを兼ねることが可能です。
恋慕は非対称の関連係数を持ちます。
恋慕から憩いへは80%、憩いから恋慕へは20%。クラスから恋慕へは80%、恋慕からクラスへは20%です。
貢献技能 | 相手の指定する技能/能力値3つ以上 |
初期名声値 | 30%+APP×5の成功度×20%。憩い反感に同値加算 |
反感反応 | 貢献ノルマ(8) |
関連係数 | 恋慕→憩い80、憩い→恋慕20、クラス→恋慕80、恋慕→クラス20 |
復讐
キャラクターが囚われた復讐の衝動を表現する絆です。名声値の低下を放置して風化させてもよいですし、名声値を積み上げて永遠の炎に焼かれ続けても構いません。
ノルマによって憩い反感を上昇させることで、キャラクターの行動に説得力を与えます。
復讐の貢献ロールをできなかった週は復讐を4回目の貢献ロールとして行えます。その場合、冒険行と同様に【憩い】反感が1点上昇します。
復讐名声が憩い反感より高い間は、復讐への貢献ノルマは憩いの貢献ノルマを兼ねることが可能です。
貢献技能 | 復讐に繋がる技能 |
初期名声値 | 復讐の対象によって失った名声値。憩い反感に同値加算 |
反感反応 | 貢献ノルマ(8)、満たせない分は【憩い】反感が上昇する。 |
関連係数 | すべてに40%、復讐系カルト60% |
個人的な絆のロールプレイ指針
個人への名声値が氏族への名声値より高いということは、個人を殺すことと氏族全員を殺すことを天秤にかけたときに、氏族全員を殺すことを選択したくなるということです。他の絆と比較してみて、より優先する個人か、どうかよく吟味したうえで設定してください。同じように、キャラクターが特定の物品や知識に拘ることを表現しようとして、気軽に絆を割り当ててしまうことがあります。他の絆と二者択一で考えてみると、実際にはそれほど重視していないことも多いため、集団以外に絆を割り当てるときは慎重に検討します。
キャラクターが特定の技術・知識・思想に対して絆を割り当てようとしたとき、実際にはそれを重視する集団からの評価が重要だということもよくあります。この場合、絆は集団に対して割り当て、技能セットで表現するのがよいでしょう。同盟精霊やペットも同様です。
6.クラスレベルと生活水準(拡張ルール)
絆ルールは大多数の人々は自分と同じ経済階層の相手とだけ交流することを前提にしています。実際には食べているもの、身に着けているもの、住んでいる場所はクラスごとに異なります。
これを「クラスレベル(略記はLV)」と呼び、下記の表に準じます。
クラスレベルと生活水準
LV | 名声値1点の価値(L) | 年収など | クラスの例 |
---|---|---|---|
1 | 4 | 賤民24万円/年=6L/週 | 奴隷、乞食、流民、ごろつき |
2 | 20 | 下流120万円/年=30L/週 | 小作、牛飼い、職人 |
3 | 100 | 中流600万円/年=150L/週 | 蛮族の貴族、司祭、名士。君主国家の裕福な平民 |
4 | 500 | 上流3,000万円/年=750L/週 | 君主国家の官庁、大地主、下級貴族 |
5 | 2500 | 貴族1億5,000万円/年=5000/週 | 君主国家の貴族 |
6 | 12500 | 王族7億5,000万円/年=25,000L/週 | 君主国家の王族 |
サーター程度しか階層分化していない社会であれば、クラスは通常【氏族名】で表され、LV2を適用します。
奴隷・流民はLV1、有力な司祭や族長の家系などはLV3かもしれません。LV4は本当にまれです。ルナーやエスロリアなどではLV6以上のクラスも見られるでしょう。
クラスレベルが異なるクラスは同じ氏族であっても別の集団として扱います。例えば同一氏族であれば【コリマー(LV2)】【コリマー貴族(LV3)】のように表現します。
絆ルールを用いる場合はルールブックの物品やサービスの価格はLV2相当の参考価格とみなし、キャラクターたちは自分のクラスのLVに合った価値のものを身に着け、食べるものとします。
収入だけでなく支出もクラスレベルに応じて上昇します。クラスLV3のブロードソードはクラスLV2のブロードソードの5倍の価格です。貴族が平民の服を着たり質素な食事をしていては、クラス名声を保つことは難しいのです。
LVの異なる絆
通常、キャラクターが保持する絆はすべて【クラス】と同じLVを持ちます。例えばカルトで【コリマー自由人(LV2)】は【オーランス(LV2)】に、【コリマー貴族(LV3)】は【オーランス(LV3)】に所属します。
異なるLVの絆に対してサービスを求める場合、常に名声判定が必要になります。
名声値の消費、貢献ロールへの修正、効果はLV差修正表に従って変化します。
1LV下位への名声判定の効果は5倍になりますが、成否にかかわらず自身のクラスの反感値1ポイントか、対象とした絆の反感値5ポイントが上昇します。どちらを選ぶかはキャラクターが決めます。
1LV上位への名声判定は名声値を5ポイント消費しなければ効果が出ません。
差が2LV以上になると現実的ではない悪影響が出ます。
4LVの貴族一人が死んだなら1LVの賤民100人が殺されます。傷をつけただけでも5人が死ぬのかもしれません。
愚か者でなければ関わろうとは思わないでしょう。
LV差修正表
LV差 | 名声判定 | 消費 | 効果 | 対象の絆の反感値 | クラスの反感値 |
---|---|---|---|---|---|
-3 | +60 | 1 | ×100 | +100 | +20 |
-2 | +40 | 1 | ×20 | +20 | +5 |
-1 | +20 | 1 | ×5 | +5 | +1 |
0 | 0 | 1 | ×1 | - | - |
+1 | -20 | 5 | 1 | - | - |
+2 | -40 | 20 | 1 | - | - |
+3 | -60 | 100 | 1 | - | - |
クラス集団から長期間離れる
長期の旅行などでクラス集団から離れる場合、キャラクターは旅行中の生活のための一時的なクラス【長期旅行】を設定します。通常、長期旅行では生活レベルが1段階低下します。クラス名声1点を長期旅行名声5点に変換し、初期名声値として設定します。
準備期間のない状況では、名声判定をして変換しなくてはなりません。地元から離れた土地では関連係数に「距離補正」がかかります。
旅程の間、【クラス】の名声値と【長期旅行】の名声値の両方を消費する必要があります。名声の維持にはコストがかかるのです。
生活水準を下げているあいだ、毎週LV差と同じポイントの【憩い】反感値が上昇します。
長期の移動を前提とした【クラス】(遊牧民、行商、芸能、傭兵等)にはこのペナルティーは適用されません。
距離による関連係数
集団から距離が離れるほどに絆へのアクセスは困難になります。離れた場所から絆を利用しようとする場合、距離は関連係数の低下として挙動します。
距離の単位はコミュニティーのサイズによって異なります。
例えば氏族の名声値はその氏族の中では100%の効果を持ちますが、隣の氏族に対しては関連係数を80%として効果を計算します。
クラスは通常、行政区として税収を管理する地域を一単位と見なします。
カルトであれば叙任や破門に対して組織の対応が一枚岩である地域が一単位となります。
国の重要な機関のメンバーであれば、国全体が一単位で、隣国に対して関連係数が80%ということになります。
犯罪者であっても反感値を持つ組織から距離を大きく取れば、実質的に影響を無視することができます。
長期旅行等でキャラクターのいる場所からどの程度減衰するかはGMが裁定します。
グローランサの知的生物であれば最低20%は保証されます。
上位クラスの絆の獲得
クラス名声が100を超えている場合、キャラクターは1LV上位の【クラス】を獲得するチャレンジができます。名声判定(5点消費、成功率-20)を行って、判定に成功したならば、1LV上位の【クラス】の名声値を1ポイント獲得します。効果的なら2ポイント、決定的成功なら3ポイントです。
いったん上位クラスを獲得したならば、以降貢献ロールを行うことで、通常通り名声値を積み上げることができるようになります。貢献技能セットはGMの許諾を得て任意に選択することができます。
例:LV2のクラス名声が112に達したので、5ポイントを消費し、名声判定を-20で行います。成功率は92%で、1d100は12。効果的成功なのでLV3のクラス名声が0から2に上昇します。LV2のクラス名声は107として残ります。
クラス以外の絆のLVは変化しません。上位LVの絆に下位LVの絆から働きかけることは難しいため、クラスが上がった場合、新たにクラスと同LVの家族、カルトなどの名声を積み上げることが推奨されます。
貢献ロールの回数は決まっているため、上位クラスに貢献ロールを振り向けていれば、下位LVの絆の名声値は疎遠表に従って減少していきます。
付き合うべきでない相手との縁を早期に切るために、LV差修正表を使用して名声値を新たな絆に移すのも推奨されます。例えばLV2の名声が105、反感値が20であれば、名声値-反感値-20%(LV差補正)=65%をロールして、LV2の名声値を85消費してLV3の名声値を17獲得することができます。ただしLV4の絆の反感反応や急速な名声値低下によるLV3の憩い反感の増加に注意する必要があります。
階層移動はキャラクターにとって人生の大転換となるでしょう。
個人的な絆はその内容に応じてGMがLVを判断します。
没落
クラス反感がクラス名声を超えた場合、キャラクターはその【クラス】で生活を維持することはできなくなり、新たに下位の【クラス】を作る必要があります。クラス以外の絆のLVは変化しません。そのため他の絆に対して階層表の適用が必要になります。
栄達と同様に、下位のクラスと同じLVの家族、カルトなどの名声を積み上げることが推奨されます。
【憩い】も例外ではなく、キャラクターは落ちぶれた生活水準に見合った自分を見つける必要があります。
キャラクターはその地域から離れて新たにクラスを獲得する道を選ぶことも可能です。
この場合、一定量の財産を持ち出せれば、【憩い】と同じレベルのクラスに所属できる可能性があります。
この処理はGMの裁量に従います。
7.さまざまな状況(オプションルール)
名声値の境界変化
名声値が境界値(30、50、70、90、100)に達すると、その集団の中でキャラクターの扱われ方が明確に変わります。GMはイベントとして下記の二つのロールを行わせることができます。
1.名声値を成功率としてD100をロールし、成功度分を名声値に加算します。
2.反感値を成功率としてD100をロールし、成功度分を名声値から引き下げます。
クリティカルやファンブルは絆に所属するメンバーとキャラクターの関係を表現する絶好の機会です。GMは積極的に物語を展開してください。
特に反感値ロールの成功による名声値の引き下げは、絆に所属するメンバーとキャラクターにドラマチックな確執をもたらすでしょう。
貢献技能の入れ替え
貢献技能はGMに許可を取った上り、季ごとに自由に入れ替えることができます。ただし、季の終了時に「前季の最終成功率-当季の最終成功率」分の名声値が低下します。貢献成功率が上がった場合、とくにボーナスはありません。信用は勝ち取るのは難しく、失うのは容易です。
ただし年が変わる場合(嵐の季から海の季)、このペナルティーは発生しません。信念に心機一転。技能の入れ替えはこのタイミングで行うとよいでしょう。
【憩い】の貢献技能は1季に1個しか入れ替えられません。
混沌を隠して絆に所属する
隠しきれない外見や性質を持つキャラクターは、混沌を受け入れない社会の絆を取得することはできません。どうにかごまかせる混沌の生物が混沌を受け入れない社会で暮らす場合、その痕跡を隠すのに大きくコストを支払います。
毎季の終了時に下記の値を加算します。
- 混沌の諸相一つにつきクラス反感+1
- 生来的な混沌生物の能力一つにつきクラス反感+1
既存キャラクターへの絆ルール適用
名声値の初期値に従って絆を設定します。反感値は作成時の標準から引き下げた年数に従います。司祭等に必要な名声値を満たせない場合、通常は【憩い】や【クラス】を支払います。
所有している金銭や物品などを社会やカルトなどの社会資産とし、借り出していることにすることで、対象の絆の名声値と反感値を同じ値で上昇させて条件を満たすことも可能です。
どうしても満たせない場合、マスターに相談します。
魔術体系に関わる知識を持っていないキャラクターは下記の表に下がって技能を獲得します。
いずれも、すでにキャラクターが持っている技能値を下回ることはありません。
精霊 | 〈伝承知識(トーテム)〉を30%で獲得します。祈禱師は50%で獲得します。 |
神聖 | 神性呪文を持っている一種につき〈カルト知識(神)〉5%を獲得します。(最低で30%保障) |
魔道 | 〈経典知識(経典)〉を持っている呪文の個数に必要なだけ獲得します。 |
祈祷師
魔精を持つ祈禱師は絆【精霊界】が必要です。【精霊界】
貢献技能:自分のPOW+魔精のPOW、魔精〈召喚〉〈伝承(カルト)〉、精霊に関わる技能2個
名声ノルマ:1季に本人のPOW+魔精のPOW5につき1。ノルマとして消費した名声は精霊に交換することができます。
その他:祈祷師カルトでは【精霊界】は技能の構成条件を満たせば【カルト】と一本化することができます。
精霊の種類 | 名声 | 備考 |
---|---|---|
意図した一般的な精霊呪文 | 強度 | |
知力 | 1 | ×5で+1ランク |
気 | 1 | ×5で+1ランク |
ゴースト | 2 | ×5で+1ランク |
病 | 5 | |
レイス | 10 | |
ニンフ | 10 | |
エレメンタル | 10 | |
ヘリオン | 15 | |
魔術 | 20 | |
感情 | 20 |
魔導の常備呪文
魔導呪文を継続的に維持するのは毎日の繊細な管理が必要でコストの高い行為です。1季に1セットの呪文を維持するには、【常備呪文】に貢献ノルマ1と名声ノルマ1が必要です。
1セットには7単位の呪文を含めることができます。
1単位:フリーINTで-11(2週間継続)で投射する呪文(強度を下げることで個数を増やせます)。
煩雑さを避けるため、7単位未満であっても消費する名声値は1点です。
ゲーム中に魔導師が保有できるMPは常に「常備MP(維持する最大MPの呪文+3)」を引いた値になります。従って、1日のMP回復量が常備MPを上回っている必要があります。
維持できる呪文の総個数は【常備魔導】の名声値-反感値以下です。
名声値と反感値の差が常備呪文数を下回った場合、強度の低い呪文から順に呪文が消えます。
複数のセットを維持する
貢献ノルマと名声ノルマと常備MPを増加させて、2セット、3セットと維持するセット数を増やせます。複数のセットを維持するには、MPコストもすべて合算して適用します。
自分の所有物以外への適用
術者以外、もしくは術者以外が保持している物品に常備呪文をかける場合、一定期間内に術者と接触する必要があるため、適用される人物か物品の保有者が名声を消費する必要があります。1単位の呪文を維持するには1季に1名声が必要です。キャラクター同士が同一のコミュニティに所属している場合(通常は【氏族】【家族】【カルト】【バンド】など)、その名声値を使用します。同一のコミュニティに所属していない場合、通常通り関連係数を乗じて消費します。クラスLVの異なる絆は同一とはみなされません。
ゲーム中でMPを消費して投射した呪文に対して名声消費は必要ありません。その代わり、シチュエーションが終了すると効果が終了したものとして扱います。
子供の集団
子供の集団では技能に差が少ないため、年齢が下がるほどに技能の代わりに能力値を技能セットに入れられる数が多くなります。16歳以下2個。12歳以下3個。8歳以下4個。4歳以下5個。
また会話技能も30%ではなく「その集団の平均的な言語能力」に達していない場合のみ入れる必要があります。
質疑応答
Q.名声値を多く消費するのに判定が必要なのはなぜ?
A.名声判定には価格の妥当性の検証も含まれています。自分の週の収入を超えるような買い物ですから、年収500万の人の10万円です。100万の車を買うならじっくり時間をかけて雑誌を読んでディーラーをまわり、10週間ぐらいは車の購入に1点づつ割り当てましょう、ということです。住宅ローンは……名声判定してますよね……。
Q.週に2ポイントのサービスを受けたい。名声値2ポイントの消費を宣言して効果的成功が出た。消費を1ポイントにして2ポイントの提供を受けてよいか。
A.必ず2ポイントが消費され、3ポイントのサービスが提供されます。高い成功度は偶然や相手の忖度なので、キャラクターがコントロールすることはできません。
Q.2ポイントのサービスを受けたい。1ポイントを自動成功扱いで受けて、もう1ポイントを名声判定することができるか。
A.できます。成功率を1%高くするために、成功するまで名声判定を行ってから、最後に1ポイントを自動消費することもできます。
Q.名声値32、反感値11で30ポイント分のサービスを受けたい。30ポイントを消費すると宣言できるか。
A.できます。成功率21%で名声判定に成功すれば30ポイント分のサービスが提供された上で、名声値2/反感値11となり、絆から排斥されます。
Q.名声値50、反感値6で10ポイント分のサービスを受けたい。いきなり10ポイントを消費するとリスクが高いので5ポイントづつ判定できるか。
A.できます。途中の効果的成功や決定的成功に期待して1ポイントづつ判定してもかまいません。判定を分割したことで時間が余分にかかることはありません。
Q.高価な宝物を入手したときのリスクが高すぎませんか。
A.捨てればリスクはないので、捨てましょう。身の丈に合わない話に首を突っ込まないようにしよう。
Q.上位クラスの反感を招く情報のリスクが高すぎませんか。
A.冒険とかせず、目と耳をふさいで、平穏な日常から出かけないようにしましょう。
事例集
例:貴族のジョーンズは庶民の娘エマに恋をし、【エマ(LV3)】として15点の名声値を積み上げました。クラスの差があるため名声判定の成功率は+40されて55%です。
この段階で名声判定が必要なアプローチを行うならば、自身のクラスから冷たい目で見られる(クラスの反感値+5)か、エマが困って逃げ出してしまう(エマの反感値+25)かの選択になります。
クラスの名声を失わないためには、せめてエマの名声値を50程度まで積み上げてからプロポーズしたいところです。
LVの違う絆へのサービス要求例
上位クラスへのサービス要求は名声判定にペナルティーを受け、名声値をクラス差×5倍消費します。
- 1ポイントで1クラス下(+20)の上級専門家(技能70%)一人の1週間の協力。判定+20、反感値+1。
- 2ポイントで2クラス下(+40)の最上級専門家(技能90%)一人の3週間の協力。判定+40、反感値+4。
- 1ポイントで関連係数80の1クラス下(+20)の反感値を4点引き下げる。反感値+1。
- 5ポイントで1クラス上(-20)の専門家(技能30%)一人の1週間の協力。
- 25ポイントで関連係数60の1クラス上(-20)の反感値を3点引き下げる。
ユーライジル・トラジェディ
ユーライジルの【クラス】と【監察庁】は関連係数60です。ユーライジルは【監察庁】に対する名声判定が必要になったならば、【クラス:名声48-1消費-反感20=27%】に+20して47%で行うことができます。
しかし成功しても失敗しても【クラス】の反感値+1か【監察庁】の反感値+5のいずれかを選択しなくてはなりません。【監察庁:名声52-1消費-反感40=11%】でまっとうにロールするのとどっちが良いか、思案のしどころです。
名声判定は消費し続ければ繰り返し行えるため、ユーライジルは11%に賭けました。ファンブルで-1D6%!
D6で6をロールしたため、なんと名声値は46%まで下がってしまいました。
そして、ユーライジルの【憩い】による1週間の名声低下ストレスは4点なので、消費した名声値6ポイントとの差、2ポイントが【憩い】の反感値に加算されてしまいました。
ユーライジルは自分の不甲斐なさを嘆き、失点を取り戻すべく次の手を考えます。
ユーライジル・トラジェディ
ユーライジルはスポルに調査活動に赴くことになりました。二重生活で生活水準を維持するのは難しいのでLV4に落とします。
1週間かけて準備し、【クラス(LV5)】1ポイントを【長期旅行(LV4)】4ポイントに変換します。生活レベルは落ちますが4週間程度の旅程は過ごせるはずです。
【長期旅行】の名声値は週に1点下がりますが、【クラス(LV5)】の名声も下がり続けるので、レポートを書くなどして毎週1回はクラスへの貢献ロールを振り続けます。
ところが4週目にトラブルに巻き込まれ、帰り着くことが難しくなりました。
準備時間がないために【クラス(LV5)】を【長期旅行】に変換するには名声判定が必要です。泣く泣く4週目の最後に名声判定を行い、2回失敗したあと、3回目に決定的成功をロール。
【クラス(LV5)】が3ポイント低下し、【長期旅行】12ポイント(1点×クラス差5倍×関連係数80%×決定的成功3倍)を獲得します。
5週目にどうにか帰り着き、【長期旅行】が11ポイント余った状態です。これは資産とみなせるので、10ポイント【長期旅行】を2ポイントの【クラス(LV5)】として戻すこともできます。土産物としてLV4の絆に対して配って名声値を上げるのもいいでしょう。
デザイナーズノート
絆ルールはキャラクターと社会との関係をシミュレートするルールですが、二つの大きな嘘を含んでいます。ひとつは努力が報われるということ、もう一つは階層によってゲーム的に有利不利がないということです。
ここをリアルに描写しようとするとゲームとして成立しなくなりますので、ツッコミは野暮というものです。
絆ルールを作成した動機の一つは、貴族に匹敵するようなキャラクターが「戦闘ルールで有利になる物品」は買うのに、「社会的に有利になる物品」は買わないことへの違和感です。
冒険で入手する宝物をPC間で均等に分配する限り、収入レベルが圧倒的に異なるキャラクター達をパーティーに混在させるのは難しく、階層の高いキャラクターに階層の低いキャラクターがたかる構造ができがちです。
また、ダンジョンや戦争しか描画しないセッションなら問題ありませんが、キャンペーンのバリエーションを増やすには立場や視点の広さが必要でした。
「キャラクターが努力しすぎる」ことにも違和感がありました。
訓練と研究のルールがある場合、プレイヤーは幕間にできるだけキャラクターを強化しようとします。
だらだらする時間。「やらなきゃ」と思って「今日もやれなかった」と思う人間性。ついつい役にも立たない消費をしてしまう快楽への耽溺。同じことに忙殺される間に過ぎ去る日々。
絆ルールはそうしたロールをプレイヤーが数値から引き出すことも意図しています。
ケイオシアムはルーンクエストグローランサでプレイヤーキャラクターを「特別な人間」として、世界をルールで描画することを一定棄却しました。
しかし3版の世界をルールで描画することによる物語への没入感・納得感はやはり魅力的です。
絆ルールは英雄を描くためのルールではなく、等身大の人間を描くためのルールです。
いま目の前にあるグローランサに、プレイヤーがキャラクターとして降り立って歩く。
足元の地面、風の匂い、街のざわめき、人々の体温。
それを感じながら、異世界と物語のセンス・オブ・ワンダーを楽しめるように設計したつもりです。
ルールバランス
絆ルールは冒険に出ず、地位の上昇を狙わす、堅実に社会生活を送っていれば概ね幸せな人生を送れる数値バランスになっています。裏を返せば、冒険に出たり、能力に見合わない地位を求めるのであれば、うまく立ち回らなければ破綻します。
物語とは障害の克服です。求めるものがあるキャラクターにとって、絆ルールの荒波そのものが冒険となるようデザインしています。
絆ルールの数値は相関が多く、シンプルな成功を満たし難い作りになっています。
数値を求めて使うのではなく、キャラクターの実際の生活や心の動きによって、どう変わっていくのかを描写するめのツールとして使うのをお勧めします。
ゲームデザインの根幹
1.絆を複数にすることで、人が常に複数の所属の間で揺れ動く構造をそのまま再現した。
(所属を一つに固定せず、立場や役割の重なりを扱えるようにした)
2.関係性を「良い⇔悪い」の一軸ではなく、「名声」と「反感」の二軸に分けて4象限で扱えるようにした。
(好かれている/嫌われている/期待されている/負担になっている、など)
3.絆同士に関連係数を設定し、絆の数がnなら関係性のパターンがn²まで広がるようにした。
(一つの所属で得た信用を別の所属へ影響させる、といった横断的な関係操作を可能に)
4.絆と技能を接続し、「貢献」という社会行動をそのままRQの技能成長へ変換できるようにした。
(冒険と日常を分断せず、どちらもゲーム的価値を持つようにした)
メタ視点
絆ルールで本当に特別な絆は【クラス】と【憩い】だけです。これ以外の絆は省略することができます。身体的な健康を保証するのは【クラス】、精神的な健康を保証するのは【憩い】です。
評価の共有
集団内でキャラクターの評価が均等に共有されるのはゲーム的な都合です。実際には、集団の構成員がリアルタイムで個人の評価を入手することはなく、通常、評価日は8週間に1回程度で、集団の合議がなされるタイミングになります。カルトであれば聖祝日でしょう。
GMにはNPCがどう対応するかを調整する余地があります。
【クラス】の反感値と貢献値が逆転した場合、キャラクターは家、衣服、食事など、日常生活に必要な状況・物資を調達できなくなります。
これは金銭を持っていたとしても、交換を拒否される、奪われる、渡されるものが適正でない(腐っている、実は盗品、詐欺)などをを意味します。一度や二度は適正なものを貰えることはあるでしょうが、継続的に暮らしていくことはできません。