油断した。
気付かぬ内に殺し合いに巻き込まれ、この世界で最初に恵羽千が頭の中で発した言葉はそれだった。
彼女は仲間と「辺獄」を冒険していた途中、突然更なる異世界へ飛ばされ、気付いたら良く知っている双子に殺し合いを命じられていた。
気付かぬ内に殺し合いに巻き込まれ、この世界で最初に恵羽千が頭の中で発した言葉はそれだった。
彼女は仲間と「辺獄」を冒険していた途中、突然更なる異世界へ飛ばされ、気付いたら良く知っている双子に殺し合いを命じられていた。
「中々いい道具を貰ったぜ~。」
スーツに緑のネクタイをした、軽薄そうな男が不愉快にニヤつきながら、千を舐めまわすように眺める。
男の右手には光る杖。
下肢に不自由がある人のための道具ではなく、魔法の力を秘めた道具だ。
スーツに緑のネクタイをした、軽薄そうな男が不愉快にニヤつきながら、千を舐めまわすように眺める。
男の右手には光る杖。
下肢に不自由がある人のための道具ではなく、魔法の力を秘めた道具だ。
「おっとっと、動くんじゃね~ぞ~。」
緑ネクタイの整った顔が、嗜虐で歪む。
そう言われなくても、千は瞬き一つできない。
男、伊藤大祐が後生大事に持っているのは、「マヒの杖」。
神経を痺れさせることで、身動きを封じることの出来る魔法を飛ばせる道具だ。
緑ネクタイの整った顔が、嗜虐で歪む。
そう言われなくても、千は瞬き一つできない。
男、伊藤大祐が後生大事に持っているのは、「マヒの杖」。
神経を痺れさせることで、身動きを封じることの出来る魔法を飛ばせる道具だ。
大祐は挙動からして、戦いをほとんど経験していないはずの素人。
もし悪人だとしても、襲ってくれば瞬時に支給品の剣で串刺しにできる。
そう思っていた千だが、災難は大祐が彼女の見知らぬ道具を持っていたことだ。
もし悪人だとしても、襲ってくれば瞬時に支給品の剣で串刺しにできる。
そう思っていた千だが、災難は大祐が彼女の見知らぬ道具を持っていたことだ。
「そう嫌な顔するなよな。つーか、右肩に変な刺青彫ってるし、
肩やら副乳やら簡単に見える服着てるってことは、誘ってたんじゃねーの?」
肩やら副乳やら簡単に見える服着てるってことは、誘ってたんじゃねーの?」
表情一つ動かせない千とは対照的に、大祐の表情はコロコロ変える。
とはいえ、どの表情も人の神経を逆なでしそうなものだが。
とはいえ、どの表情も人の神経を逆なでしそうなものだが。
「知らない場所に呼ばれたと思ったら、これまた別の知らない場所で殺し合いしろと言われたけど、こんないい道具と、いいオンナを手に入れたなんて大ラッキーだぜ!!」
なおも千の体は動かない。
そうこうしているうちに大祐はパーソナル・スペースまで距離を詰めて来る。
この場所からなら、身体を少し動かすだけで相手をめった刺しに出来る。
だが、運動神経は愚か、詠唱のための舌まで軒並み痺れている状況で、剣を振るうことは叶わない。
なおも千の体は動かない。
そうこうしているうちに大祐はパーソナル・スペースまで距離を詰めて来る。
この場所からなら、身体を少し動かすだけで相手をめった刺しに出来る。
だが、運動神経は愚か、詠唱のための舌まで軒並み痺れている状況で、剣を振るうことは叶わない。
完全に予想外の危機を、如何にして逃れようかとしていた所、室内の木製の天井が破れた。
「「!!?」」
天井を突き破って入ってきたのは、人間ではなく、狼だった。
天井を突き破って入ってきたのは、人間ではなく、狼だった。
「この……犬っころの分際で!!俺のお楽しみを邪魔すんじゃねええええ!!」
妄想が現実になる瞬間を邪魔され、麻痺の杖を狼目掛けて振りかざす大祐。
当たれば、人だろうが、狼だろうが動けなくなることは間違いない。
当たれば、人だろうが、狼だろうが動けなくなることは間違いない。
「うげえええ!?何しやがんだ!!」
しかし魔法弾が放たれる前に、狼は大祐の腕を鋭く引っ掻く。
痛みのあまり、大事な杖を落としてしまう大祐。
しかし魔法弾が放たれる前に、狼は大祐の腕を鋭く引っ掻く。
痛みのあまり、大事な杖を落としてしまう大祐。
なおも狼は大祐を睨み続ける。
「や、やだなあ。ちょっとした冗談だよ。俺たち3人、殺し合いに巻き込まれた者同士……ぎあーーっ!!」
「や、やだなあ。ちょっとした冗談だよ。俺たち3人、殺し合いに巻き込まれた者同士……ぎあーーっ!!」
大祐が言いたいことを全部言う前に狼は大祐の喉笛に噛みついた。
どくどく流れる血を止めることは出来ず、ドサリと地面に倒れこむ。
どくどく流れる血を止めることは出来ず、ドサリと地面に倒れこむ。
【伊藤大祐@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage 死亡】
「ウウウウ……」
続いて狼は千にも襲い掛かるかと思いきや、急に何か起こったかのように苦しみ始める。
みるみるうちに狼は、人間の姿になった。
みるみるうちに狼は、人間の姿になった。
「あ……」
ようやく痺れが引いていき、言葉を発せるようになる。
「オオカミ……男!?」
「そうよばれるんなら……そうなんです。」
ようやく痺れが引いていき、言葉を発せるようになる。
「オオカミ……男!?」
「そうよばれるんなら……そうなんです。」
狼から人間に戻った少年は、少し前にやらかしたことは全く知らないかのように、気さくに話しかけた。
「そうなんですどころじゃないだろう。」
「そうなんですどころじゃないだろう。」
千は自らの視線を、動かなくなった男の方に流した。」
「やっぱり……ぼくがやったんですね。」
少年は千の反応を見て、項垂れてしまった。
「やっぱり……ぼくがやったんですね。」
少年は千の反応を見て、項垂れてしまった。
「狼になると、人間の記憶も人格も無くなるのか?」
千がかつて辺獄へ来る前に読んだ本に出ていた狼男も、変身すると見境なく襲っていた。
「まあ……そんな所ですね……。オオカミになると、憎んだ相手をかみ殺してしまうのです。」
千がかつて辺獄へ来る前に読んだ本に出ていた狼男も、変身すると見境なく襲っていた。
「まあ……そんな所ですね……。オオカミになると、憎んだ相手をかみ殺してしまうのです。」
平然と恐ろしいことを述べる少年だが、千もまた辺獄という未知の世界での経験を積み重ねている。
いきなり狼男を目にしたことは驚いたが、冷静に言葉を返す。
「そうか……何にせよ助かった。ありがとう。」
「いえ、お礼を言われることではありません。正義とか……誰かのためにやったことではないです。」
いきなり狼男を目にしたことは驚いたが、冷静に言葉を返す。
「そうか……何にせよ助かった。ありがとう。」
「いえ、お礼を言われることではありません。正義とか……誰かのためにやったことではないです。」
変に真面目な所があるな、と思った千を前にして、少年は話を続ける。
だがそれ以上に彼女が不思議に感じたのは、少年が正義という言葉を口にしたからだ。
正義を生きる基盤してきた千には、自らの正義を否定したのは奇妙に思えた。
「空の月を見てオオカミになって、すぐ近くから耳に障る声が聞こえてきて、衝動的にやったことです。」
だがそれ以上に彼女が不思議に感じたのは、少年が正義という言葉を口にしたからだ。
正義を生きる基盤してきた千には、自らの正義を否定したのは奇妙に思えた。
「空の月を見てオオカミになって、すぐ近くから耳に障る声が聞こえてきて、衝動的にやったことです。」
千には知る由もないが、少年、トッペイが狼になるトリガーは2つ。
1つは月を見た時、もう1つは怒りや憎しみに駆られた時。
「そんな所まで狼男そっくりだな……まあそんなことはどうでもいい。お前が言ったことが本当ならば、なぜあたしまで殺さなかった。」
千は申し訳なさそうにしている少年に対し、新たな質問を投げる。
1つは月を見た時、もう1つは怒りや憎しみに駆られた時。
「そんな所まで狼男そっくりだな……まあそんなことはどうでもいい。お前が言ったことが本当ならば、なぜあたしまで殺さなかった。」
千は申し訳なさそうにしている少年に対し、新たな質問を投げる。
「なぜって……。あなたがぼくを嫌な気持ちにさせなかったからじゃないですか?」
「だとするなら、それもまた正義じゃないのか?」
「だとするなら、それもまた正義じゃないのか?」
―――もし、なにか事件が起こって、あたしが犯人だって証拠が見つかったら、父さんはどうするの?
―――法に従い、罰を求刑するだろうな。それが、自分の信じた正義だからだ。
―――法に従い、罰を求刑するだろうな。それが、自分の信じた正義だからだ。
検事であった、亡き父が口にした言葉。
千は父との思い出の奥底にもあった、正義を重んずる。
それが自分にとって不利を被るものであっても。
そして、この世界はかつて千がいた世界の法は存在しない。
ならば、自らで正義を定義し、それを歪めることなく生き続けることが正しいのではないか。
千は父との思い出の奥底にもあった、正義を重んずる。
それが自分にとって不利を被るものであっても。
そして、この世界はかつて千がいた世界の法は存在しない。
ならば、自らで正義を定義し、それを歪めることなく生き続けることが正しいのではないか。
「動機がどうであれ、自分の信念に従って殺すか否かを決めた。ただあたしとの正義の定義が異なるだけだ。」
「あなたは面白い人ですね。」
「あたしは自分の正義に従ってお前を評価しただけなのに、そう言われるとは心外だな。」
「あなたは面白い人ですね。」
「あたしは自分の正義に従ってお前を評価しただけなのに、そう言われるとは心外だな。」
トッペイの表情には、僅かながら緩みが生まれた。
この少年は漫画家になりたいがために故郷を一人で出るほど、好奇心旺盛な性格である。
この少年は漫画家になりたいがために故郷を一人で出るほど、好奇心旺盛な性格である。
「お前に話しても良さそうだ。信じられないかもしれないが、あたしはあの双子に会ったことがある。」
「最初の場所にいた、あいつらのことですか?」
「最初の場所にいた、あいつらのことですか?」
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恵羽千は、かつて冒険していた辺獄で起こったことを話した。
ヨミガエリのことや幽鬼のこと、あの双子は辺獄の管理人であったこと。
自分は仲間と共にメフィスとフェレスに示された指標に従い、仲間の妹がいるはずの辺獄の最奥を目指していたこと。
ヨミガエリのことや幽鬼のこと、あの双子は辺獄の管理人であったこと。
自分は仲間と共にメフィスとフェレスに示された指標に従い、仲間の妹がいるはずの辺獄の最奥を目指していたこと。
「東京に来てから色んな経験をしたぼくでも、信じられない話ですね……。」
「だろうな。でもこれを見れば、嫌でも分かるはずだ。」
「だろうな。でもこれを見れば、嫌でも分かるはずだ。」
千は支給品袋から剣を取り出し、振りかざした。
その程度ならありふれた人間でも出来るが、驚きなことはそれからだった。
その程度ならありふれた人間でも出来るが、驚きなことはそれからだった。
「刀影直射!!」
背後から光る剣が現れ、地面に突き刺さった。」
背後から光る剣が現れ、地面に突き刺さった。」
「今のは……」
まるで僕の先生が書いた漫画見たいですね、と言い損ねてしまった。
まるで僕の先生が書いた漫画見たいですね、と言い損ねてしまった。
「辺獄では、こういった特別な力が使えたんだ。この格好も、辺獄に入った時の衣装だ。」
まさか力のみならず衣装まで変わるとは、狼に姿を変えられるトッペイも開いた口が塞がらなかった。
まさか力のみならず衣装まで変わるとは、狼に姿を変えられるトッペイも開いた口が塞がらなかった。
「じゃあここは千さんが言っている「辺獄」ということですか?」
トッペイとしては、風景からしてここは自分が本で読んだことのある「京の町」だと思っていた。
トッペイとしては、風景からしてここは自分が本で読んだことのある「京の町」だと思っていた。
「いや、その辺獄とも少し雰囲気が違う。おまけにあの双子は殺し合いをしろなんて言ってこなかった。」
「そうなんですか?」
幾分かイメージの違うメフィスとフェレスのことを聞き、驚くトッペイ。
「そうなんですか?」
幾分かイメージの違うメフィスとフェレスのことを聞き、驚くトッペイ。
「あいつらは嫌な態度を取りながらも、あたしたちに辺獄で何をすればいいか教えてくれた。
でも願いのために人を殺すなんて、あたしの正義が許さない。協力して欲しい、トッペイ。」
でも願いのために人を殺すなんて、あたしの正義が許さない。協力して欲しい、トッペイ。」
「僕でよろしければ……と、その前に待って下さい。」
トッペイは破れた大祐の服の布地を使い、即興で目隠しを作る。
「僕は月を見ると狼になってしまうので、その対処です。」
「え……それは見えないんじゃないのか?」
「大丈夫です。こういうのに慣れているので。」
トッペイは破れた大祐の服の布地を使い、即興で目隠しを作る。
「僕は月を見ると狼になってしまうので、その対処です。」
「え……それは見えないんじゃないのか?」
「大丈夫です。こういうのに慣れているので。」
事実、トッペイは東京で漫画家手塚治虫のアシスタントとして働いていた時、夜はいつも目隠しをして外を歩いていた。
確かにこの場は、赤い月が空に昇っている。
月を見ると狼になって我を忘れてしまうのなら、確かに重要な道具だ。
しかしそれが分かっていても、目隠しをしながら歩くのはどうにもシュールに見える。
確かにこの場は、赤い月が空に昇っている。
月を見ると狼になって我を忘れてしまうのなら、確かに重要な道具だ。
しかしそれが分かっていても、目隠しをしながら歩くのはどうにもシュールに見える。
(バンパイヤのトッペイ……か。)
千は頭の中を回す。
最初に私を襲ってきた男と、獣になった時のトッペイと、どこが違うのだろうと。
衝動に任せて罪を犯したというのなら、男もトッペイも同じではないかと。
先程それは違うということを話したが、そんな違いはトッペイという都合の良い人物に助けてもらった自分への正当化ではないかと。
千は頭の中を回す。
最初に私を襲ってきた男と、獣になった時のトッペイと、どこが違うのだろうと。
衝動に任せて罪を犯したというのなら、男もトッペイも同じではないかと。
先程それは違うということを話したが、そんな違いはトッペイという都合の良い人物に助けてもらった自分への正当化ではないかと。
これは千が知る由もないことだが、トッペイがいた世界でこのような仮説を立てた学者がいた。
獣には規則やエチケットや正義、そういった人の行動を縛るものが無いから、獣になることを望む人間、そして本当に獣になるミュータントが生まれるはずである。
そうした人間を、私はバンパイヤと呼ぶ。
そうした人間を、私はバンパイヤと呼ぶ。
正義の代行者と、自由を求めるバンパイヤの同盟は、まだ始まったばかり。
【恵羽千@CRYSTAR -クライスタ-】
[状態]:健康 自分への疑問
[服装]:代行者の服装
[装備]:疾風のレイピア@ドラゴンクエスト8
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2 麻痺の杖4@少年ヤンガスと不思議なダンジョン、伊藤大祐の不明支給品0~2
[思考]
基本:自分の正義を貫く
1:トッペイと共に殺し合いを止める。
2:仲間(零、小衣、777)がいるか探す。
[備考]
第五章、愚問愚塔クリア後の参戦です。
※ソクラテスを出せるかどうかは、お任せします。
[状態]:健康 自分への疑問
[服装]:代行者の服装
[装備]:疾風のレイピア@ドラゴンクエスト8
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2 麻痺の杖4@少年ヤンガスと不思議なダンジョン、伊藤大祐の不明支給品0~2
[思考]
基本:自分の正義を貫く
1:トッペイと共に殺し合いを止める。
2:仲間(零、小衣、777)がいるか探す。
[備考]
第五章、愚問愚塔クリア後の参戦です。
※ソクラテスを出せるかどうかは、お任せします。
【立花特平/トッペイ@バンパイヤ】
[状態]:健康
[装備]:目隠し@現地調達
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:恵羽千とともに、殺し合いを止める
1:まずは千に付いていき、その仲間を探す。
[備考]
※参戦時期は第一部終了後
[状態]:健康
[装備]:目隠し@現地調達
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:恵羽千とともに、殺し合いを止める
1:まずは千に付いていき、その仲間を探す。
[備考]
※参戦時期は第一部終了後
[支給品紹介]
【疾風のレイピア@ドラゴンクエスト8】
恵羽千に支給された武器。
細身の剣で、敵を刺すのに特化している。
また、装備すると攻撃力だけでなく、スピードも上がる。
恵羽千に支給された武器。
細身の剣で、敵を刺すのに特化している。
また、装備すると攻撃力だけでなく、スピードも上がる。
【マヒの杖@少年ヤンガスと不思議なダンジョン】
伊東大祐に支給された杖。振ると魔法弾を飛ばすことが出来て、相手を一定時間動けなくさせることが出来る。
使い切ると魔法弾を出せなくなるが、相手に投げることでもう1度だけ使うことが出来る。
投げたそれを外すのはご愛敬。
伊東大祐に支給された杖。振ると魔法弾を飛ばすことが出来て、相手を一定時間動けなくさせることが出来る。
使い切ると魔法弾を出せなくなるが、相手に投げることでもう1度だけ使うことが出来る。
投げたそれを外すのはご愛敬。