平安京の街角で、柳瀬舞衣は建物の壁を背に座り込んでいた。
突如として告げられた殺し合い。眼前で無惨にも奪われた命。
荒魂(あらだま)と呼ばれる異形との交戦経験があるとはいえ、まだ中学生の少女が順応できるはずもなかった。
突如として告げられた殺し合い。眼前で無惨にも奪われた命。
荒魂(あらだま)と呼ばれる異形との交戦経験があるとはいえ、まだ中学生の少女が順応できるはずもなかった。
(可奈美ちゃんがいなくなって、今度は殺し合い……)
折神家御前試合の決勝戦で、突如として折神紫に剣を向けた十条姫和と、その十条姫和を庇い逃走を助けた衛藤可奈美。
同じ美濃関学院で親しくしていた可奈美の行動を、舞衣は理解できず困惑していた。
一夜明けても状況は変わらず、その矢先に殺し合いに巻き込まれたのだ。
学院では優等生と評される舞衣でも、即座に答えは出せない。
同じ美濃関学院で親しくしていた可奈美の行動を、舞衣は理解できず困惑していた。
一夜明けても状況は変わらず、その矢先に殺し合いに巻き込まれたのだ。
学院では優等生と評される舞衣でも、即座に答えは出せない。
「いったい、どうしたら……」
「やあ。いい天気だね」
「やあ。いい天気だね」
いきなり声をかけられて、びくりと肩を震わせる。
顔を上げると、舞衣から一メートルほど離れたところに、少年が佇んでいた。
紅い空に照らされて浮かび上がるのは、華奢なシルエットに清潔な白の制服。
美少年と呼んで差し支えない風貌だ。
顔を上げると、舞衣から一メートルほど離れたところに、少年が佇んでいた。
紅い空に照らされて浮かび上がるのは、華奢なシルエットに清潔な白の制服。
美少年と呼んで差し支えない風貌だ。
「えぇっと……そう、ですね?」
このような異常な空間で、やけに落ち着いた少年を不審に思いながら、それでも舞衣は律儀に返答した。
しかし、その直後に明確な恐怖を抱くこととなる。
しかし、その直後に明確な恐怖を抱くこととなる。
「それじゃあ、少し遊ぼうか」
少年の右手首から先が、仄青い細身の剣へと変化していたのだ。
同時に舞衣は気づく。少年の纏う威圧感が、荒魂と遜色ないほど異質であることに。
同時に舞衣は気づく。少年の纏う威圧感が、荒魂と遜色ないほど異質であることに。
「あなた、いったい……ッ!」
誰何の声は最後まで紡がれない。
なぜなら少年は、変形していない側の手で舞衣の喉に触れていたからである。
しなやかで冷たい指先が、ゆっくりと喉元を撫でる。
舞衣の喉が反射的にゴクリと鳴った。
なぜなら少年は、変形していない側の手で舞衣の喉に触れていたからである。
しなやかで冷たい指先が、ゆっくりと喉元を撫でる。
舞衣の喉が反射的にゴクリと鳴った。
「うん。良い声だ……ぜひ心地いいメロディーを奏でて欲しいね」
自分のことを、まるで楽器か何かのように扱う少年。
外見は美しくとも、内面の異常性は火を見るよりも明らかだ。
外見は美しくとも、内面の異常性は火を見るよりも明らかだ。
「っ……離れて!」
少年を押しのけて距離を取り、支給されたデイパックから刀らしきものを掴み出す。
取り出したのは孫六兼元。舞衣の所持する御刀である。
やはり、と舞衣は少しばかりの安堵を得た。
刀を掴んだ瞬間、直感的に慣れ親しんだ自身の刀だと理解したのだ。
取り出したのは孫六兼元。舞衣の所持する御刀である。
やはり、と舞衣は少しばかりの安堵を得た。
刀を掴んだ瞬間、直感的に慣れ親しんだ自身の刀だと理解したのだ。
「おや、まさか僕と真剣勝負でもするのかい?」
刀を正眼に構えた舞衣を見て、嘲る少年。
それに対して、舞衣は油断することなく気合を張り続けた。
少年の口調は軽薄だが、その殺意は確実に高まりを見せていたからだ。
それに対して、舞衣は油断することなく気合を張り続けた。
少年の口調は軽薄だが、その殺意は確実に高まりを見せていたからだ。
(まずは相手の出方を見る――!)
舞衣は「写シ」により身体を霊体へと変質させた。
これにより、わずかな痛みと精神的ダメージを代償に、肉体へのダメージを肩代わりできる。
そして少年を観察する。右手首の剣をもう片方の手で弄ぶ姿は、剣術的には隙だらけだ。
それでも不用意に斬り込めないのは、ひとえに少年の威圧感が常人離れしているため。
そんな舞衣の様子をしばらく眺めた少年は、やがてため息をついた。
これにより、わずかな痛みと精神的ダメージを代償に、肉体へのダメージを肩代わりできる。
そして少年を観察する。右手首の剣をもう片方の手で弄ぶ姿は、剣術的には隙だらけだ。
それでも不用意に斬り込めないのは、ひとえに少年の威圧感が常人離れしているため。
そんな舞衣の様子をしばらく眺めた少年は、やがてため息をついた。
「それじゃあ、聴かせておくれ……」
少年は左の掌を舞衣へとかざした。
悪寒が走る。直感的に、舞衣は回避行動を取ろうとした。
悪寒が走る。直感的に、舞衣は回避行動を取ろうとした。
「断末魔の叫びを!」
しかし直後、舞衣の身体は中空へと吹き飛ばされ、背中から壁に激突していた。
妖力派の衝撃に、写シは解除され、呼吸が大きく乱れる。受け身も取れずに、地面に膝をついた。
いったい何をされたのか、全く分からなかった。
妖力派の衝撃に、写シは解除され、呼吸が大きく乱れる。受け身も取れずに、地面に膝をついた。
いったい何をされたのか、全く分からなかった。
「あぁ、その状態じゃ声が出せないか」
息を整えようとして、勢いよく咳き込む。
骨が折れていないことを幸運に感じつつ、御刀を支柱にして立ち上がる。
しかし、幸運は続かない。舞衣が顔を上げたとき、その胸元には剣先が突き付けられていた。
そして、すでに間合に入り込んでいた少年が、まるで指揮棒を振るように、右手の剣を揺らした。
骨が折れていないことを幸運に感じつつ、御刀を支柱にして立ち上がる。
しかし、幸運は続かない。舞衣が顔を上げたとき、その胸元には剣先が突き付けられていた。
そして、すでに間合に入り込んでいた少年が、まるで指揮棒を振るように、右手の剣を揺らした。
「ああああぁっ!」
顔面に、胴体に、脚部に。
舞衣の身体に数多の傷が付けられていく。
痛みに耐えられず、舞衣は思わず目を閉じた。
じわじわと制服に血が染みて、まだらな模様を描く。
舞衣の身体に数多の傷が付けられていく。
痛みに耐えられず、舞衣は思わず目を閉じた。
じわじわと制服に血が染みて、まだらな模様を描く。
「すばらしい」
自分の喉から、自分のものとは思えない声が出続けている。
頬が削げて、指が千切れて、内臓がはみ出ても、絶え間なく少年は指揮を振る。
そうして、舞衣の喉元で剣筋が閃くまで、演奏は続いた。
頬が削げて、指が千切れて、内臓がはみ出ても、絶え間なく少年は指揮を振る。
そうして、舞衣の喉元で剣筋が閃くまで、演奏は続いた。
「素敵な調べをありがとう。それじゃあ、これで終わりだ」
舞衣は再び膝から頽れて、壁に背中を預ける形となっていた。
もはや声はおろか息も満足に出せず、ただ喉からひゅうひゅうと音が出ていた。
最初から迅移や金剛身のような戦闘術を行使していれば、結果は異なっていたかもしれない。
相手の行動を見極めるだけでなく、回避にも意識を割いておくべきだった。
ぼんやりとした頭で、そんなことを考える。
もはや声はおろか息も満足に出せず、ただ喉からひゅうひゅうと音が出ていた。
最初から迅移や金剛身のような戦闘術を行使していれば、結果は異なっていたかもしれない。
相手の行動を見極めるだけでなく、回避にも意識を割いておくべきだった。
ぼんやりとした頭で、そんなことを考える。
(……あぁ、それにしても)
ここで死ぬということは、もう誰とも会えないということだ。
そのことに気づいて、自然と脳裏に浮かぶのは、親友の姿。
そのことに気づいて、自然と脳裏に浮かぶのは、親友の姿。
(可奈美ちゃん、どうか、無事で……)
【柳瀬舞衣@刀使ノ巫女 死亡】
物言わぬ骸と化した少女から、ゆっくりと剣を引き抜いて、絶鬼はくつくつと笑う。
人間は脆弱な生き物だが、苦痛を与えるとこの上なく心地いい音色を響かせてくれる。
突如としてゲームに巻き込まれて憤慨していたが、なかなかどうして愉快なことになりそうだ。
人間は脆弱な生き物だが、苦痛を与えるとこの上なく心地いい音色を響かせてくれる。
突如としてゲームに巻き込まれて憤慨していたが、なかなかどうして愉快なことになりそうだ。
「もしかしたら、兄さんも来ているかもしれない」
絶鬼は紅く染まる空を見上げた。
その禍々しい紅色は、どこか絶鬼の住処である焦熱地獄を思わせた。
そして、この会場全体に、妖気にも似た空気が渦巻いているのも、肌で感じていた。
地獄に近い会場だ。兄である覇鬼がいても、何ら不思議ではない。
とはいえそれは期待半分。方針は既に決定している。
その禍々しい紅色は、どこか絶鬼の住処である焦熱地獄を思わせた。
そして、この会場全体に、妖気にも似た空気が渦巻いているのも、肌で感じていた。
地獄に近い会場だ。兄である覇鬼がいても、何ら不思議ではない。
とはいえそれは期待半分。方針は既に決定している。
「ま、とりあえず皆殺しかな」
それは開幕のあいさつ。
上機嫌な指揮者は、鼻歌まじりに歩き出す。
これから披露される舞台の演目は、阿鼻叫喚の惨劇に違いない。
上機嫌な指揮者は、鼻歌まじりに歩き出す。
これから披露される舞台の演目は、阿鼻叫喚の惨劇に違いない。
【絶鬼@地獄先生ぬ~べ~】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:とりあえず皆殺し。
1:人間の断末魔の叫びを聴きたい。
[備考]
※参戦時期は本編登場前です。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:とりあえず皆殺し。
1:人間の断末魔の叫びを聴きたい。
[備考]
※参戦時期は本編登場前です。
【孫六兼元@刀使ノ巫女】
柳瀬舞衣に支給。舞衣の所持する御刀。
珠鋼という特殊な金属で作られており、神性を帯びていることから通常は折れたり錆びたりしないとされる。
柳瀬舞衣に支給。舞衣の所持する御刀。
珠鋼という特殊な金属で作られており、神性を帯びていることから通常は折れたり錆びたりしないとされる。
【備考】
※柳瀬舞衣の支給品は、孫六兼元@刀使ノ巫女も含めて死体の周辺に放置されています。
※柳瀬舞衣の支給品は、孫六兼元@刀使ノ巫女も含めて死体の周辺に放置されています。
