空虚 ◆OmtW54r7Tc



黒岩省吾天道あかねを見逃したゴ・ガドル・バは、北へ進路を進めていた。
自分に屈辱を味わわせてくれた石堀光彦がどこへ向かったのかも分からず、向かうべき道を見失っている所だった。
そこで彼は、かねてから気になっていた、グロンギ遺跡に向かうことにした。
グロンギ遺跡。
おそらくは自分達グロンギが一度は封印され、そして再び復活を遂げた場所だ。
別に郷愁の念などない。ただ、やはり気になる場所ではあった。
それに、もしかすればダグバも自分と同じようにそちらに向かっているかもしれない。


「ダグバ…」


跨る鉄馬、サイクロン号を走らせながらガドルは宿敵の名を呼ぶ。
本来なら自分にまだ彼と戦う資格はないはずだったが、こうして戦う機会を与えられた。
一度は再会したものの結局別れ、未だ戦うには至っていない。
あの時は強敵との戦いを台無しにされた怒りからその場を去ったが、今度は逃がさない。
ン・ダグバ・ゼバ
『ン』の名を持つ我らが王は、この破壊のカリスマの手で必ず倒す。

その後ガドルは約2時間、サイクロン号を走らせ続けた。
その間にも疲労やダメージは少しずつ癒えていき、かつて霧彦から受けた右脇の傷はすっかりと消えていた。
途中焦土となった場所へ訪れ、そこで激しい戦いがあったことを知り、自分がその場に居合わせなかったことを残念に思ったりもしたが、すぐにまたその場を離れて遺跡を目指した。
そうして、グロンギ遺跡が既に眼前にまで見えてきたその時、


『参加者のみんなー、こんばんはー!!』


三度目の放送が訪れた。



ガドルは放送に耳を傾ける為、一度サイクロン号を止める。
放送を行うゴハットの独特のテンションには、特に気を留めた様子はなかった。


それは、最初の殺し合いが宣言された場で、本郷猛と共に加頭の前に立ちはだかった男だった。
ガドルも多少興味を持ったが、最初の放送で呼ばれた本郷同様、こんなところで敗退してしまう弱者であったか。

西条凪

それは、少し前に交戦した女の名であった。
あの女は、自分に興味深いことを教えてくれた。
「受け継がれる力」――もしもそんな存在に出会ったとしても、叩き潰すだけだ。

次々と名前が呼ばれるが、さして興味のある名前が呼ばれることはない。
どうやら石堀光彦も死んでいないようだ。
クウガである五代雄介が既に死んだ今、彼が関心があるのは自分を倒した石堀と、ダグバくらい…


『ン・ダグバ・ゼバ』


…………………。
……………………………………。
今、こいつはなんといった。
誰の名を呼んだ。


『ン・ダグバ・ゼバ』


頭の中でその言葉がリピートされる。
間違いない。
ンから始まる名前など、この場には他にいない。
ダグバが…自分の倒すべき相手が、死んだ。



その後、放送が終わった。
ダグバの死に衝撃を受けつつも、ガドルは放送を聞きのがすことはなかった。
しかし、その表情は未だ衝撃から抜けきってはいなかった。


「ダグバ…」


分かってはいた。
この場にいるリントたちが、いずれも一筋縄ではいかない力を持っていることは。
しかし、だがしかし、ダグバが、あのダグバが死んだなど、ガドルには到底受け入れがたいことであった。
彼が放送にその名を刻むのは、自分の手で倒された時だと、心のどこかで思っていた。
あのダグバが、自分の預かり知らぬところで死ぬなど、思ってもみなかった。
それだけガドルは、ダグバの強さというものにある種の信頼をしていた。


「何故だ…」


続いて放たれたその言葉には、わずかな怒気が含まれている。
ガドルの、破壊のカリスマの顔が、怒りの表情で歪む。


「何故だ!何故死んだダグバ!貴様は、この破壊のカリスマによって倒されるべき存在だというのに!」


ガドルは、ダグバをこの手で倒したかった。
ダグバは、自分達グロンギの頂点に立つ存在だった。
その頂点を、自分は越えたかった。
例えゴのままであっても、力に圧倒的な差があったとしても、彼に劣らぬ実力をつけ、倒してやるつもりだった。
それなのに、ダグバは死んでしまった。
自分に倒されるよりも前に、他の誰かによって倒されてしまった。

「フ……」

しばらくたち、心に平静を取り戻したガドルは、再びサイクロン号に乗りグロンギ遺跡へと向かった。
そう、ダグバが死んだなら、ダグバを殺した者を自分が殺せばいい。
そうすれば、自分はダグバを越えたことになる。
故に、こんなところで立ち止まっている暇などない。


「…………………」


そう心を納得させようとしても、ガドルの心は不思議と空虚を感じていた。





「ここは…」

そこは、ガドルのよく知る遺跡ではなかった。
グロンギの遺跡と明記してあったために自分が封印されていた九郎ヶ岳遺跡のことだと思っていたが、どうやら別の遺跡だったらしい。

「あれは…」

一つの、棺桶が目についた。
サイクロン号をその場に置き、ガドルはその棺桶に近づく。
そこには、一人の男性の死体があった。

「この男は…」

見知らぬ男ではある。
しかし、同族ではないことは確かだ。
この男は間違いなくリントだ。
そして棺の中にいることを考えると、おそらくはこの遺跡の封印を守っていた…

「先代のクウガか」

見たところ、封印は解かれている。
最初から解けていたのか、それともここに来た参加者によって解かれたのか。
しかし、封印が解けたならば今頃同族が目を覚ましているのではないだろうか。
もっとも、この遺跡自体が形を模しただけの偽物である可能性が高いが。

ガドルは遺跡の中を歩いてみる。
誰かがいる様子はない。
この殺し合いの参加者も。
封印が解かれたかもしれない同族も。
そして…当然ながらダグバも。

「ダグバ…貴様はいったい誰にやられたというのだ?」

力を五代から受け継いだ新たなクウガだろうか。
それとも自分を倒した石堀だろうか。
しかし考えても答えなど出るはずもなく、ガドルの胸には先ほども感じたやるせない空虚感に包まれた。
ダグバを殺した者を殺す。
そう納得させようとしても、その感情を抑えることは出来なかった。
ガドルは、自分の手でダグバを倒したかったのだから。
もしこの遺跡の封印が解かれたことによって、ダグバが、いや、ダグバでなくてもいい。
ダグバのような『ン』の戦士が蘇ってくれていたらどんなに良かっただろう。
そうすればガドルは、その戦士と戦い、この空虚な心を満たすことができただろう
しかし、ガドルの見た限りでは同族が蘇ったような痕跡などない。
封印が解けても、蘇りなどしなかったのだ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


ガドルは、満たされぬ自分の心に喝を入れるように、雄叫びをあげる。
自分の戦いはまだ終わっていない。
例え『ン』を倒すという目標が失われたとしても、ガドルは戦いをやめるつもりなどない。
ダグバすら倒されるこの殺し合いの場で、自分は優勝する。
真の頂点に立つために。
それしか、今のガドルにはこの空虚を、渇きを満たすことは出来ない。


「ボバゴセンザゾグンギギズゲドバセ、リントゾロ!(この俺の覇道の礎となれ、リントども!)」




「む?」

どこからか戦いの音が聞こえる。
音源は少し遠いようだったが、しかし今の爆発音はかなりのものであった。
ガドルはすぐさまサイクロン号に乗る。
音は、南から聞こえてきた。
新たな戦いを求め、ガドルはバイクに乗って走った。





ガドルがたどり着いたときには、既に戦いは終わっていた。
辺りには、誰もいない。

「ビガグロボバ(逃がすものか)」

そう遠くには行っていないはずだ。
ガドルはすぐさま射撃体へと変身し、その視力と聴力を頼りに辺りを探る。
そして見つけた。
その見覚えのある背中を。


「クウガ…!」


そう、紛れもなくそれはかつて自分を倒した戦士の後ろ姿であった。
ちなみにガドルが聞いた爆発音はその戦士と、もう一人の仮面ライダーによるダブルライダーキックの音であった。


「どうやらあのフクタイチョウの言っていたことは真実であったようだな」


そう、おそらくあれはかつて自分を倒した五代雄介とは別人だ。
何者かが、五代から新たにクウガの力を受け継いだのだ。
ガドルは、離れていくクウガを逃がすまいと、サイクロン号を走らせる。
クウガは自分と同じく鉄馬に乗っているが、同行者と足並みをそろえる為か、そこまで移動速度は速くない。
充分に追いつくことができる。


「この破壊のカリスマの挑戦、受けてもらうぞクウガ!」


【1日目/夜】
【E―7/荒れ地】

【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(小)、全身にダメージ(小)(回復中) 、肩・胸・顔面に神経断裂弾を受けたダメージ(回復中)、胸部に刺傷(回復中)、ダグバの死への空虚感、サイクロン搭乗中、射撃体に変身中
[装備]:サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS、スモークグレネード@現実×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガ、京水のムチ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×8(スバル、ティアナ、井坂(食料残2/3)、アクマロ、流ノ介、なのは、本郷、まどか)、東せつなのタロットカード(「正義」を除く)@フレッシュプリキュア!、ルビスの魔剣@牙狼、鷹麟の矢@牙狼
[思考]
基本:殺し合いに優勝し真の頂点に立つ。
0:クウガを追い、殺す。
1:参加者を探す。
1:石堀と再会したら殺す。
2:強者との戦いで自分の力を高める。その中で、ゲームとしてタロットカードの絵に見立てた殺人を行う。
4:体調を整え更なる力を手に入れたなら今まで取るに足らんとしてきた者とも戦う。
※死亡後からの参戦です。
※フォトンランサーファランクスシフトにより大量の電撃を受けた事で身体がある程度強化されています。
※フォトンランサーファランクスシフトをもう一度受けたので、身体に何らかの変化が起こっている可能性があります。(実際にどうなっているかは、後続の書き手さんにお任せします)
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※ナスカ・ドーパント、ダークメフィストツヴァイを見て、力を受け継ぐ、という現象を理解しました。


時系列順で読む

投下順で読む


Back:確認 ゴ・ガドル・バ Next:冒険者の物語


最終更新:2014年03月25日 15:27