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その3

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homuhomu_tabetai

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仔あんあんが公園の群に連れて来られてから、七日が経過した――

野良若あん「アンアン!」

力強く成長した仔あんあん……いや、若あんあんは、群の大人達に混じって餌集めを手伝うようになった。

持って生まれた槍を用いて、小さな虫達から命を譲り受け、公園の雑草や芝生を僅かに刈る。
そして、大きな植え込みの中にある、群の拠点へと持ち帰る。

言葉にしてみれば簡単な、だが、力のいる作業。

野良親さや「サヤサヤッ、キョーコ、サヤサヤ!」

野良若あん「アンアン」

その作業を教えてくれたのは、あの日から自分の親代わりをしてくれている、白い仔さやさやの母だった。

親代わり――いや、最早、自分の親と言っても過言ではない親さやさやを、若あんあんは尊敬していた。

彼女は、強いさやさやだった。

勿論、力が、ではなく、心が、だ。


群の中でも、一際病弱なめがほむのつがいとなり、彼女との間に一匹の仔を設けた。
それが、あの白いさやさやだ。

言ってみれば、彼女は偶然と言う悲劇の末に生まれた、虚弱種であった。

彼女の力は、さやさやにしてみればとても弱く、めがほむのそれに等しく、足も速いとは言えない。
その証拠に、七日前のあの日、彼女は自分を支えて歩くのでさえ一苦労と言った様子だった。

本来、めがほむ以外のほむ種は仲間一匹、力の強い種ならば数匹を抱えて動く事くらいは容易い。
つまり、彼女の腕力は本当にめがほむ程度なのだ。

そして何より、彼女はいわゆる“奇形”でもあった。

ほむ種にはそれぞれ、外骨格化した様々な武器がある。
品種、格により盾、弓、鎚など様々な武器を持つほむ種。

さやさやは、生まれ持って剣を持つ種だ。

だが、あの白いさやさやは、不幸な事に剣型の外骨格を持たずに生まれた。

別に、剣を持たないさやさやは、珍しい事には珍しいが、いないワケでもない。
さやさやに限らず、親となった別のほむ種の遺伝子を受け継ぎ、
通常とは異なる外骨格を持って生まれるほむ種も、稀少ながら観測されている。

但し、その場合は、“奇形”ではなく“稀少亜種”である。

あの白いさやさやは、ほむ種が必ず持って生まれるべき、外骨格を持っていなかったのだ。
だからこそ、“奇形”なのである。

野良親さや「サヤサヤッ」

野良若あん「アン……」

尊敬する義母を見上げながら、若あんあんは思いを馳せた。

力が弱く、外骨格すら持たぬ、虚弱奇形種だった我が仔を見て、彼女はどう思っただろう。

拾われっ仔に過ぎない自分に、その事を聞く勇気はない。

だが、彼女が生まれた時の想像は、何となく出来る。



おそらく、群の大人達は困り果てただろう。

虚弱種、奇形種と言うだけでも群にとってはお荷物になり兼ねないのに、
あの仔は、その両者の弱点を併せ持って生まれてしまったのだ。

これを不幸と言わずに何と言うべきか……。


そして、きっと、自らの病弱な体質が祟って、我が子に虚弱体質を遺伝させてしまったもう一人の母、
あの優しい優しいめがほむも、我が子の哀しい姿に涙していただろう。



野良親さや「サヤヤ」

胸を張って歩く義母。

野良若あん「アン……」

これはあくまで想像に過ぎない。

だがきっと、この義母ならこう言ったハズだ。



――私達の仔は、私達が責任を持って育てて見せる!
           他の仲間達に、決して、迷惑はかけない!――



それは、彼女が、いや、彼女達が白いさやさやに注ぐ愛情を間近で見続けていた自分には痛いほど理解できていた。

あの日、自分が群に連れて来られた日も、それは心配そうに駆け寄って来た。
姿の見えない我が子を、ずっと心配していたのだろう。

勿論、義母達だけを過大評価をしているワケではない。

群の大人達も、つがいの決意を受けて、その力を貸してくれている。
それは、まだ新参者に過ぎない自分にだって分かる。

野良親さや「? キョーコ、サヤサヤ?」

憧憬の視線に気付いた義母が、若あんあんに怪訝そうな視線を向ける。

野良若あん「ア、アンアン!///」

何でもない!

不意に視線が合った事が恥ずかしくて、若あんあんは顔を背けた。

野良親さや「サヤァ?」クビカシゲ

義娘の様子に、親さやさやは首を傾げるばかりだ。

そんな時だった。


サヤヤ~♪


群の拠点となっている植え込みの方から、微かな歌声が聞こえた。

野良親さや「サヤァ」ニコッ

その歌声を聞いて、怪訝そうな表情を浮かべていた親さやさやは、嬉しそうに頬を緩めた。


サヤッササヤッ、サヤサヤッ♪


野良若あん「アン……サヤカ……///」

心が躍るような楽しそうな歌声に、若あんあんも頬を紅潮させる。

若あんあんは、居ても立ってもいられない、と言った様子で走り出す。

野良親さや「キョ、キョーコ! ……サヤァ、ホントサヤサヤ」

呼び止めようとした義母も、やれやれと言いたげに肩を竦めてから、嬉しそうに目を細めた。

若あんあんが植え込みの中に駆け込む。

群の守りを任せられたまみまみ、まどまど、めがほむ達が昼餉の準備をしており、
その奥では若いめがほむや、仔供達が、さらに幼い仔供達の子守をしていた。


その中央――

ホミュミュ~♪ ミャロロ~♪

群の幼仔達の楽しそうな大合唱。

そんな幼仔達に囲まれるようにして、キャンディの空き缶の蓋をステージで、
一匹のほむ種が楽しそうに唄っている。

野良若さや「サヤヤァ、サヤサヤ、サヤヤン、サヤヤァ♪」

白い、若さやさやだ。

幼き日、失いかけた命をつなぎ止めてくれた妙なる歌声は、あの時以上に美しく、
そして、彼女自身も、歌声に負けないほど美しく成長していた。

下世話な話だが、人間の品評家が彼女を見れば、白まどやりぼほむ以上の値を付けるに違いないだろう。


しかし、そんな人間達の評価など、若あんあんには関係なかった。

野良若あん「アンアン、サヤカァ///」

野良若さや「サヤ? ……キョーコ、サヤァ///」

朝ぶりとなる再会が嬉しくて、思わず声を上げてしまった若あんあんに、若さやさやも応える。

野良仔りぼ「ホミュゥ……」ションボリ
野良仔ゆま「ユミャァァ」ウルウル
野良仔さや「チャヤ、ホンチョバカ!」プンスカ

野良若あん「ア、アンアン」アセアセ

歌声が止まってしまった事に消沈する幼仔達にジト目で睨まれ、若あんあんはたじろぐ。

野良若さや「サヤヤァ」クスクス

たじろぐ義姉妹の様子に、いたずらっ子のような笑みを浮かべる若さやさや。

野良若あん「ア、アン……サ、サヤカァ!」

そして、そんな若さやさやに、助けを求める若あんあん。

群の仲間達は、微笑ましそうに笑いながら若い二匹と幼仔達の様子を見ていた。


今朝は少し難しい事を考えたが、義母達の決意は間違っていなかっただろう。
それだけは、若あんあんにも分かっている。

だって、こうして幼仔達の子守をする若さやさやは、決して、群の足手まといではないのだから。


ホミャミャ! ミャロォッ!

野良若あん「アンアン、アンコォッ!?」アセアセ アワアワ

野良若さや「サヤサヤァ」クスクス

怒った幼仔達に囲まれて慌てふためく若あんあん、それを楽しそうに見守る若さやさや。



ホムム? マドマドォ…… マミマミ!

彼女達は、まだ知らない。
植え込みの外れが、ざわついている事を。

そして、そのざわめきの原因が――

野良若カミ「カミカミィ……」
野良若ひと「ヒトヒトォ……」

――彼女達の間に、大きな波紋を投げかける事を………。



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