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その6

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homuhomu_tabetai

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506 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県)[saga sage] 投稿日:2012/01/11(水) 20:19:23.56 ID:H/yEs9T00




結論から言えば、あのカミジョーとひとひとは、
ある少年音楽家の家で飼われていたかみ種の仔達であった。

共に移動中であった音楽家が事故に遭った事で、彼と離れ離れになり、
街を必死に彷徨い、この公園にたどり着いたのだ。

元々、飼かみ種であった事で栄養状態が良かった事が幸いし、
かつてのあんあんのように衰弱せずに、公園まで辿り着く事が出来たのだ。

もう一つの結論を言えば、彼らにほむ種を害する意志もないし、
まあ、実質、無害なのが本当の所だ。


そんな彼らが、さやさやに依頼したのは、
かつての主が出演していたようなコンサートを開く事だった。

そのコンサートの仕掛け人となる事で、群に早く融け込みたいと言うのが、
彼らの狙いであり、彼らの悲願でもあった。

群に融け込めなければ、いつか生まれて来る仔を育てるには難しい環境になるからでもある。


ともあれ、さやさやは、カミジョーと共に新たな歌のための特訓を続けていた。

野良カミ「カミミィ、カミミカミカミミィィ♪」

野良さや「サヤヤァ、サヤヤサヤサヤヤァァ♪」

音楽家の主から教えられた曲を、カミジョーがさやさやに手ほどきするのが、
特訓の主だった内容である。

特訓は基本的に、子守が終わった後、夕餉の宴までの僅かな時間だけ。

だが、さやさやは驚くべきスピードで、カミジョーの教える曲を学び、吸収して行った。

三度、下世話な話となるが、品評家が見れば、
この白いさやさやは、音楽の天才として一世を風靡していたかもしれない。

飼かみ種であったカミジョーには、それが最初から理解できていた。


野良カミ「カァミィ、カミカミミィ、カミミィ♪」

野良さや「サァヤァ、サヤサヤヤァ、サヤヤァ♪」

特訓は尚も続く。

だが――

野良あん「アンー、サヤカァ~!」

野良さや「サヤッ、キョーコォ///」

野良カミ「カミィ……」

彼女の義姉妹であるあんあんの登場に、カミジョーは肩を落とす。

差し入れらしい木の実を持って現れたあんあんに、嬉しそうに駆け寄るさやさや。

また、か……。

野良カミ「サヤカッ!」

野良さや「サヤン!? サ、サヤサヤァ」アワアワ

勝手に特訓を中断してしまったさやさやに、僅かに怒気を込めた声を投げかけるカミジョー。
さやさやは、ビクリと肩を震わせてから、申し訳なさそうに振り返る。

こちらが頼んでいる身とは言え、今は特訓中で、一応は先生と生徒の間柄だ。
さすがに礼儀を逸する、と言うのはさやさやにも分かったのだろう。

しかし、大切な義姉妹が怒鳴られた事は、あんあんには少々、腹に据えかねる物があったらしい。

野良あん「アンー、アンコッ!」

野良カミ「カ、カミャァ……イ、イジメテルノ……」

彼我に圧倒的な腕力の差がある以上、あんあんに怒鳴られては、カミジョーは引き下がる他ない。

あんあんが怒るのも無理からぬものがある。

何故なら、必死に頼み込んで来たのはカミジョーなのだ。
さやさやは、優しいからカミジョーとひとひとの頼みを聞いているが、
本来、そんな事に付き合う義理はないのだ。

……と言うのは、聞こえの良く、それなりに筋の通った建前で、
本当は大切な義姉妹をカミジョーに独占されているのが許せない、と言うのが本音だ。

野良さや「サヤァ、キョーコ……キョースケ……サヤヤ……」シュン

しかし、さやさやは二人の本音を知ってか知らずか、自分の態度が原因で二人に喧嘩をさせていると思い込み、
申し訳なさそうに肩を落とす。

野良カミ「カミ…サヤカ……カミカミィ」

カミジョーは何かを言いかけたようだが、さやさやがこんな状態では特訓にならないと感じたのか、
“今日の特訓は終わりだ”とだけ言って、その場を辞した。


野良あん「アンコォ…」

少し苛立ったような視線を、去って行くカミジョーの背中に向け続けるあんあん。

野良さや「サヤヤァ、キョーコ……キョースケ、サヤサヤ、ワタシッテホントバカ……」

対して、さやさやはそんなあんあんに、
“悪かったのは自分だから、そんなにカミジョーを責めないで”と告げる。

野良あん「サ、サヤカ……アン……」

あんあんは、さやさやに窘められたのがショックなのか、僅かにたじろぐ。

先に頼み事をして来たのは向こうじゃないか!
何で、あんなヤツの肩を持つんだ!

野良あん「アン……アンコォッ!」ダッ

あんあんは、自分の中で渦巻いたカミジョーへの怒りを口に出せず、
持って来ていた木の実を取り落とし、その場から駆け去ってしまう。

カミジョーへの怒りを口にすれば、優しいさやさやの心を傷つけると分かっていたからだ。

野良さや「キョーコ……サヤ……」シュン

しかし、その行動がさやさやを傷つけてしまう事になってしまい、
あんあんは結局、走り去りながら自分自身を責める他なかった。

野良あん「アンコォォ……!」








野良あん「アン……アンコ……」グスッ

植え込みの外れ近くまで駆けたあんあんは、滲みかけた涙を拭う。

何で、さやさやの事をこんなにも大切に思っているのに、
さやさやを傷つけなければいけないんだ。

こんなにも、胸が苦しい。

こんなにも……こんなにも!

野良あん「アンコォッ! アンコォォ!」ガシッ ガシッ

あんあんはがっくりと膝をついて、何度も地面を叩く。

見苦しい嫉妬と分かっていても、抑えきれない。

その時だった――

野良カミ「カミカミィ……」

野良あん「アン……ロッソ・ファンタズマッ!」

苛立ちの一番の原因とも言える声が背後に聞こえて、あんあんは怒りの形相で振り返る。

しかし、振り返ったあんあんの視線の先で、カミジョーは膝をつき、深く頭を下げていた。

野良あん「ア、アン?」キョトン

てっきり、向こうが文句や皮肉を言いに来たと思い込んでいたあんあんは、
あまりの想像との落差にキョトンとしてしまう。

野良カミ「カミカミィ!」ペコペコ

カミジョーは拍子抜けした様子のあんあんに構わず、何度も頭を下げ、さらに続ける。

野良カミ「サヤカ、カミカミ、カミミ、カミカミカミ、カミミィ!」

さやさやには歌の才能がある。
だけど、彼女の才能を伸ばすには、誰かが技術を教えなければいけない。
それを理解して欲しい。

……と。

野良あん「アン……」

勝手な言い分だと思った。

だが、さやさやの歌が素晴らしいのは、彼女の歌に命を救われた自分が一番分かっている。

だからこそ、あんあんはその事を口には出せなかった。

野良カミ「カミカミ、サヤカ、カミカミカミ」

頭を下げながら、カミジョーはさらに続けた。

さやさやを歌の特訓に集中させて欲しい。
コンサートが終わるまででいい。
それまでに、自分の持てる歌と音楽の技術を、全て彼女に伝えるから。

野良あん「サヤカ……」

さやさやを歌の特訓に集中させる?

何で、そんな事を自分に言いに来るのか。
それがあんあんには不思議だった。

野良あん「アンアン、アン?」

野良カミ「カミ…………カミカミィ、カミカミカミィ」

その事を尋ねると、カミジョーは僅かに言い淀んだ後、申し訳なさそうに呟いた。

君がいると、さやさやは歌以外の事を考えてしまう。

野良あん「アン……コ……」

『サヤカァ、アンアン///』
『サヤヤァ、キョーコォ///』

そう、だった。

どんな時も、たとえ真剣に歌を唄っている時でさえ、さやさやは自分の姿を見付けると幸せそうに微笑んで歌を止めていた。
今日の練習も、声をかけたのが自分だったとは言え、さやさやは歌の途中で自分の元へと駆け寄って来た。

薄々は感づいて……いや、考えないようにしていた事実を耳にして、あんあんは強いショックを受けていた。

野良あん「アン……」

今までも、ずっと、自分は彼女の歌を邪魔して来たのだろう。

野良あん「アン、コォ……」

それを思うと、彼女に申し訳ない思いがして、あんあんは消え入りたい気分になった。

彼女が、もっと素晴らしい歌を唄うためには、自分は邪魔なのではないか、と。

その考えが脳裏を過ぎってから、あんあんの決断は早かった。

野良あん「アンアン、サヤカ……アンアン」

“しばらく、さやさやと距離を置くべきだ”と……。

それは、苦汁の決断だった。




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