日本国憲法

日本国憲法(にほんこくけんぽう)は、1946年8月1日成立、1947年1月1日施行の日本国における最高法規である。

前文

日本国民は、法の下において選任された、国会における代表者を通じて、我らの子々孫々における幸福と平和を実現する。諸国民との協和によって、我が国全体の政府の好意によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意し、ここに国家の主権が国民に存することをこの憲法が定める。国政は、国民の厳粛な信託によるものとして、その権威は国民に由来する。その権力自体は国民の代表者たるに行使され、その福祉は国民がこれを行使するものである。

条文

第一章 天皇

第1条 日本国は、天皇によってこれを統治する
第2条 皇位は、世襲のものであって、皇室典範の定めるところこれを継承する
第3条 天皇及びその国事に関するすべては、神聖にして侵すべからず
第4条 天皇は、その国事を法律の定めるところに委任することができる
第5条 天皇は、憲法の定める内閣総理大臣を任命する
第6条 天皇は、憲法の定める最高裁判所の長たる裁判官を任命する
第7条 天皇は、憲法の定める軍官の長たる大本営議長を任命する
第8条 天皇は、下の国事に関する行為を行う
憲法改正、法律政令及び条約を公布すること
国会議員の総選挙の施行を公示すること
大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること
栄典を授与すること
批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること
外国の大使及び公使を接受すること
儀式を行うこと

第二章 国民の権利及び義務

第9条 日本国民たる要件は、下に定める
日本国で出生し、届け出たもの
日本国民の下に生まれ、届け出たもの
日本に十年以上居住し、裁判所により届け出を認可されたもの
前規定とともに、他国の国籍を持たない若しくは破棄されたもの
第10条 この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、全国民に与えられる
第11条 憲法が保障する自由及び権利は、これを保持しなければならない
第12条 すべて国民は、個人として尊重される
第13条 生命、自由及び幸福追求への権利については、最大の尊重を必要とする
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、社会的関係において差別されない
第15条 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない
第16条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない
第17条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、憲法によりこれを保障する
高度に政治的な表現の自由に関しては、国民保護を目的としてこれを法律により規制する
第18条 検閲及び通信の自由は、国民保護を目的としてこれを法律により統制する
第19条 何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する
第20条 学問の自由は、これを保障する
第21条 何人も、法律の定めるところにより、ひとしく教育を受ける権利を有する
第22条 何人も、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う
第23条 何人も、勤労の権利を有し義務を負う
第24条 何人も、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する
第25条 憲法による人権の保護は、公共の福祉による範囲を逸脱しない

第三章 資産及び財政

第26条 財産権は、これを侵してはならない
第27条 何人も、納税の義務を負う
第28条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いてこれを行使する
第29条 租税を課すためには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする
第30条 国費の支出又は国が債務を負担するためには、国会の議決に基くことを必要とする
第31条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会の議決を受けなければならない
第32条 年度予算の執行は、内閣において的確に運用されなければならない
第33条 年度予算には、予備費による臨時的支出の枠を設け、内閣の権限でこれを支出する

第四章 首相及び内閣

第34条 内閣総理大臣は、国会の首班指名によりこれを選任する
2 選任された内閣総理大臣は、天皇によって任命される
3 内閣総理大臣は、四親等に由来する日本国民でなければならない
第35条 内閣総理大臣は、国民の信託と天皇の任命により行政を総攬する
2 内閣総理大臣は、国会による弾劾を受けない限り、任期中その職務を執行する
3 内閣総理大臣は、その任期中において不逮捕特権を有する
第36条 内閣総理大臣のもと、行政権は内閣に属する
第37条 内閣は、内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する
第38条 国務大臣は、内閣総理大臣による任命を受ける
2 国務大臣は、その過半数を国会に由来する国民でなければならない
第39条 国務大臣の罷免は、内閣総理大臣によらなければならない
第40条 内閣は、一般行政事務の外、下の事務を行う
法律を誠実に執行し、国務を総理すること
外交関係を処理すること
条約を締結すること
法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること
予算を作成して国会に提出すること
この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること
大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること
第41条 法律及び政令には、すべて内閣総理大臣、主任の国務大臣が連署することを必要とする
2 内閣総理大臣および内閣は、国会の議決を経た法律案に対して再審議の要請を行うことができる
第42条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない
第43条 内閣は、閣議による主任の国務大臣によって議案を国会に提出する
2 一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する
第44条 内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う

第五章 国会

第45条 国会は、国唯一の立法機関である
第46条 国会は、これを運用する組織を以下に定める
衆議院
参議院
衆議院調査局
参議院調査局
衆議院事務局
参議院事務局
国立国会図書館
第47条 衆議院及び参議院は、全国民を代表する選挙によって選出された国会議員によりこれを組織する
2 国会議員の定数は、法律でこれを定める
3 国会議員及びその選挙人の資格は、全国民に平等に付与される
第48条 国会議員の任期は、法律によってこれを定める
第49条 総選挙は、公示日及び投票日について、法律によってこれを定める
2 総選挙は、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律によってこれを定める
第50条 国会議員は、国庫から相当額の歳費を受ける
2 国会議員の歳費は、徴税の対象としない
3 国会議員の歳費は、全国民及び議院事務局に公表する義務を負う
第51条 国会議員は、国会の会期中逮捕されず、その議院の要求に応じて会期中これを釈放しなければならない
第52条 国会議員は、議院で行ったすべての行為について、院外責任を問われない
第53条 国会の通常会は、毎年1月4日にこれを召集する
2 常会は、その会期を100日と定め、院内の規定に応じて最長20日の延長を認める
第54条 国会の臨時会は、内閣の要請に基づいて招集される
2 総議員の四分の一以上の要求によって、内閣は臨時会の招集を行わなければならない
3 臨時会は、その会期を年間で60日以内としなければならない
第55条 国会の解散後、国に緊急の必要がある場合は、内閣に立法を含めた全権を委譲する
2 前項において定められた立法は、内閣特別立法を呼称する
3 内閣特別立法は、次の国会において事後の承認を必要とする
4 内閣特別立法は、国会での否決又は決議の放棄があった場合、はいあんとして効力を喪失する
第56条 国会の特別会は、総選挙後10日以内にこれを招集する
2 特別会は、その会期を20日と定める
3 特別会では、議長、副議長、各委員長及び各副委員長を指名する
4 特別会では、内閣総理大臣の求める内閣の人事について承認のための議決を行う
5 特別会は、国会解散中に内閣が行った立法を議決する
6 特別会は、その議決において、会期中にすべてを行わなければならない
第57条 議事は、特別会を除いて、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる
2 委員会で通過した法律案は、本会議提出後30日以内に議決されなければならない
3 内閣により再審議を請求された法律案は、委員会の審議を経て本会議に提出されなければならない
第58条 両議院は、本会議の下、委員会を設置し法案の個別審議を行う
2 委員会は、本会議の会期に寄らず、所属議員の過半数の出席によって開会できる
3 各委員長は、多数決によりこれを選任する
4 各副委員長は、多数決によりこれを選任する
第59条 議長は、院内の警察権を有する
2 院内において、その治安を維持する目的で院内警察権を発動することができる
3 院内警察は、院内においてのみ、その効力を発揮することができる
第60条 予算案は、内閣より予算委員会に提出される
2 予算委員会により議決された予算案は、本会議提出後10日以内に議決されなければならない
第61条 内閣総理大臣及び国務大臣は、議院の求めに応じて、本会議及び委員会に出席しなければならない
第62条 国会は、内閣総理大臣及び国務大臣に対して弾劾決議を行うことができる
2 内閣委員会により過半数以上の可決をもって弾劾決議案を本会議に提出できる
3 本会議に提出された弾劾決議案は、10日以内に議決を行う
4 弾劾決議案が可決された場合、内閣は当該閣僚を10日以内に交代する
第63条 罷免の訴追を受けた裁判官は、衆議院に組織される弾劾裁判所により弾劾裁判を受ける

第六章 司法

第64条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する
第65条 すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される
第66条 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない
第67条 裁判官は、心身の故障、定期の年齢若しくは公の弾劾によらなければ罷免されない
2 裁判官の弾劾処分は、国会がこれを専任として行う
第68条 最高裁判所は、最高裁判所長官及び最高裁判事で構成し、内閣がこれを任命する
第69条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所長官が指名した者の名簿によって、内閣がこれを任命する
2 全て裁判官は、10年を最長の任期として定める
第70条 全て裁判官は、特別職の公務員として相当額の報酬を受ける
2 この報酬は、在任中、これを減額することができない
第71条 最高裁判所は、憲法に適法するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である
第72条 全て裁判所は、憲法に反する法律、法規及び条例を違憲とする判決を行う
2 前項の判決は、最高裁判所の判決において違憲判決として国会に提出する

第七章 国防

第73条 すべて国防に関する事項は、これを民主主義の名のもとに厳格に運用される
第74条 民主主義の名のもとに運用される国防指揮権限は、文民に由来する
2 本事項を文民統制によるものとする
第75条 日本の国防は、世界の恒久的な平和と安定に寄与するものでなければならない
第76条 国防の指揮命令は、文民たる内閣総理大臣大本営に由来する
第77条 日本国は、大本営組織をもって軍政及び軍令を統率する
第78条 大本営は、大本営政府連絡会議をもって日本国行政府たる内閣との連携を図る
第79条 大本営は、平和のための軍隊たるとして世界の恒久平和を受領する
第80条 大本営は、指揮命令の及ぶすべての軍隊員に軍人勅諭を宣誓さる

第八章 地方

第81条 都道府県は、それぞれ首長として民選の知事を置く
第82条 民選知事は、首長として下の事務を行う
1 管轄地方における警察権の最高指揮
2 管轄地方における徴税の監督
3 管轄地方における行政権の運用監督
第83条 都道府県知事は、その任期を4年と定める

第九章 公務員

第84条 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない
第85条 国家機関に属する公務員は、下に記する高等文官制度の適用者及び国家公務員試験を経た者とされる
高等文官は、行政科、外交科、司法科の枠を定める
国家公務員試験は、一般職、外交職の枠を定める
公務員は採用を受けた後、内閣人事局において採用される
第86条 国家機関以外に属する公務員は、各組織が定める試験を経て採用を受ける

第十章 栄典及び爵位

第87条 すべて国民は、等しく栄典及び爵位を授与する権利を有する
第88条 栄典は、法律によってこれを定める
第89条 爵位は、下のこれを定める
爵位は、高位より、公爵侯爵伯爵子爵及び男爵の五階級を定める
爵位の保持者は、これを華族と呼称する権限を持つ
各爵位の細則については法律によってこれを定める

第十一章 日本国憲法

第90条 この憲法は、日本国民の総意によって定めるところの、我が国の最高法規である
第91条 この憲法の改正は、内閣総理大臣の名の下で国会に発議されなければならない
2 憲法改正の発議は、本会議により3分の2以上の賛成をもって改正案を可決する
3 改正案は、国民全体の投票による投票者の過半数の賛同をもって決議される
4 憲法の改正案は、可決後、天皇の名の下で公布される
最終更新:2025年07月11日 13:28