(なんとも嫌な役を引き受けさせられたものであるなぁ…)
スラヴィアの
ケンタウロス騎士であるアスボルス伯爵は苦い顔をしながらそう心のなかで呟いた。
「あれあれあれぇ?どうしたんですかぁ?護衛の騎士様。久しぶりに郷里に帰れたんで懐かしさで涙がちょちょ切れそうとかそういうのですかぁ?」
ヒヒヒヒと笑いながら心労の種がそう話しかけてくる。
アスボルスは嫌そうな顔を隠さずため息をついてすこし上を見ながら返す。
「…望郷の念があるかと聞かれればあると言えるが、我は当時でも数の少なかった先史時代の翼を持ったケンタウロスである。今、東西に別れ姿も変わったこの国へ帰っても異国の地に来たのと同じようなものだ。それよりも…」
彼はもう一度、ため息をついてから元凶を見つめる。
そこには子供ほどの背丈で様々な色の混ざった奇妙な髪をざんざらと流し、人種どころか男か女かもよくわからない継ぎ接ぎでできた中性的な奇妙に整いすぎた顔にごついゴーグルを被って白衣を纏った悪魔がいた。
(いや、悪魔というより小さな死神か…)
こいつのやってきたことは死にぞこないが集う国であるスラヴィアでも外道だと判断されるようなことである。しかも、こいつの極めつけはこれでスラヴィアンではないということだろう。
「ヒヒヒヒヒ…このヴィクトリア・シェリー大博士の美しさに見とれましか騎士様?…そんな事をやってる暇があれば周囲の警戒でもしたら如何かと思いますがね?」
「そうではないよ。博士殿…ただ、こういったやり方は我には趣味が合わんというだけだ」
いちいち癇に障る。それを疎ましく思いながらもアスボルスはこれに逆らえない。
なぜなら彼は、自分の大事な生者であるケンタウロスの部下ネッススと自身の領地を人間との戦闘に破れたかどで死神に質に取られているからだ。
(死神があんな小さな戦闘を見逃さずにいたとは…さてはあの小僧、神に関係する何かか?われと同じくパパイドンもついていないであるな…)
全方位子爵ニュース・パパハイドン子爵も彼と同じく、勝手に小
ゲートを使って地球側に人死を出した上に人間に逆襲されて敗北するという大失態から、娘と領土・資産など全てを質に取られて死神に何処かで働かされているという。
(まあ、ヤツの場合も自業自得であるか)
「趣味に合わない?ククク…君等が散々手を焼いていた災厄の騎士様をあそこまでスラヴィアの主である
モルテ神に従順に変えたのがですかぁ?」
いやらしい笑いだ。
しかもこいつは死神モルテの崇拝者ときている。
スラヴィアでのモルテは確かに主神であり信仰の対象であろうが、まともに信仰しているものなど居ないのだ。
どちらかと言えば、我らが国の御大将である屍姫・サミュラの方が信仰や崇拝の対象でモルテの崇拝者はその性質が異端な事が多い。
現にこうやって自分を守護役に命じた対象がこいつである。
アスボルスはその質問には答えず黙って眼下の哀れな同胞の軍勢に目を移した。
そこには今まさに自らの手で亡国の姫君になろうとしている姫騎士とそれを阻止せんとする二人の戦士が会合した所だった。
ドカン!
と、自分の後ろで鎧のひしゃげる音が聞こえた時、マドレーヌは自分が討たれたのだと思って目を瞑ってしまった。
しかし、いつまで経っても最期の時が訪れないことに不審を感じて目を開けると自分を取り囲んでいたスラヴィアンの部隊はみんな自分を無視して違う方を見ており、自分の後ろにいたリヴィングメイルのスラビアン騎兵はめちゃめちゃに破壊されて地面に倒れ伏していた。
彼女は周りの屍徒達が見ている方角を見る。そこには…
「臨悟さ…!?」
マドレーヌは見た。いつもの漆黒のロングコートと帽子を被り、木のてっぺんで左手を斜め上に突き出し右手を腰辺りで引いた奇妙なポーズをした臨悟の姿を!
彼のポーズを残念ながら異世界人であるマドレーヌは理解できなかったが、もし地球の日本人が彼を見たならば、彼が一体『何』であるのかが分かっただろう。すなわち…
「あっはっはっは……『ヒーロー』見参!!」
「本当に厄介な駒ばかり集めるよ君らは…」
「彼のことですかな?彼は我らの駒ではありませんよ。彼は…星神殿の客人ですからな」
「地球生まれの救星主(ヒーロー)ね。はっ…どうだか!都合が良すぎるよ」
突然現れた地球人が仲間の一騎を軽く倒してしまったことで、マドレーヌを囲んだ騎兵の部隊の意識は彼に注がれることになった。
マドレーヌはその隙に空いた穴から囲みの外へ逃げようとする。
それを二騎の屍徒が止めるために得物を振りかぶる。と…
ドガン!ドガン!
凄まじい轟音と共にその二騎がめちゃめちゃに潰されて吹き飛ばされた。
「ひでえなぁ…キュートな女の子がいるからって俺の方無視するなんて!はは!寂しすぎて俺泣いちゃうよ?」
その片手で持つのは不可能に見える拳銃を片手で突き出したままで、ケラケラと笑いながら屍徒の軍勢に向かってそう言う。
また一瞬にして今度は二騎もの仲間を失った事に脅威を感じた屍徒の兵たちはマドレーヌを無視して臨悟の方へ一斉に槍を投げつける。
「おおっと!危ない!しかし…アーイ キャン フラーーーイ!!」
高速で飛来する槍が到達する前に臨悟が木のてっぺんから勢い良く飛ぶ!!
そして彼はまるで体操選手のように前転のような状態で銃を構えて一発、二発…マドレーヌに近い位置の屍徒をその馬鹿でかい拳銃から放たれる象撃ちライフル弾で叩き潰して、逃げるマドレーヌの背中にズドンと着地した。
「ぐえぇ…り、臨悟さ!重いだよ!!」
「あっは!ゴメーン!マドレーヌちゃん、遅くなってさぁ~。面白そうな事してるなと思って付いてきたんだけど思ったより君の足が早かった上に道に迷っちゃってさぁ!あはははは」
臨悟が背に着地した衝撃で苦しがるマドレーヌにケラケラと笑ってリロードをしながらそう言う臨悟。
「いつもの如く話し聞いてねえだな?臨悟さ!」
「あっはっは!それよりもっと飛ばしてよマドレーヌちゃん!すぐ追いつかれそうだぜ?」
彼女が後ろを見ると猛スピードで屍徒たちがこちらを追って来ているのが見えた。
「ひぃ!」
マドレーヌは必死に駆ける。
「はっはっは!頑張ってるねマドレーヌちゃん!俺手伝っちゃおうかなぁ?…ターリ・ホー!」
臨悟の不穏な発言とピンッピンッピンッという音の後に何を?と聞く暇もなくそれが来た。
ドガン!!!!!!
まるで雷が落ちたような音と爆風がマドレーヌを後ろから突き飛ばす。
「ひゃあああ!な、何しただか!?臨悟さーーー!!!」
「KABOOOOOOOOOM!!いいねー爆薬って!ハリウッドの映画みたいだぜヒャッホーーーー!!」
エキサイトしながらリロードの終わったお化け拳銃で、ボロボロになりながら追跡してくるスラヴィアンの騎兵達に止めを刺していく臨悟。
彼が撃つたびに屍徒達は吹き飛ばされて天に返されていくが、マドレーヌの方も彼が撃つたびにその馬鹿げた反動と音を食らって天に返されそうな状態だった。
(す、スラヴィアンじゃなく臨悟さに殺される…)
これ以上、強烈な射撃の反動や爆風を食らって死にたくない一心で彼女は追ってくる屍徒達を引き離してひた走った。
記録には残らなかったがこの時、彼女がいつものルイゼットどころか西
イストモス最速のマリアンヌが走る速度を越えて走った事を星神だけが知っている。
「向こうのカウボーイはなかなか派手にやってるようですね」
「…丘の向こうでいったい何が?」
ルイゼットとガンマンは丘の向こうから聞こえてきた爆発音と光を見て呟いた。
彼女らは今、永き時を経て死地スラヴィアから『返って』来た公国の姫君とその騎士団と対峙している。
しかし、こちらが二人に対して相手の数は500騎近くどう考えてもこちらの分が悪い。
「どうする?銃士殿。モルテに操られた姫様を止めるにしても、そのまま突っ込めば我々が負けるのは目に見えている。ここは、迂回して側面や後方から攻撃するか?」
「いいえ、そのまま寝ぼけたお姫様に向かって突っ込みましょう」
「正気か!!!何を考えている!?向こうは屍徒だぞ!?それも我々の二百倍以上の数だ!正面から行って勝てるわけがないだろう」
異邦人であるガンマンの言葉に驚き問い詰めるルイゼット、しかしガンマンはそれに対して
「大丈夫ですよ。僕と貴女の星神様の加護を信じて下さい……それに、彼等は『何故か』わざわざ行軍を止めてこちらが攻撃してくるのを余裕で待ってるんですから、それに応えて上げないと失礼になってしまうでしょう?
…だから正面突破で眠れるお姫様に目覚めの熱い口づけをしてやりましょう」
と少し不穏な感じのする言葉を返す。
その言葉に呼応するように公国の姫騎士だった者…災厄の騎士、デュラ・ファンタズマールが剣を掲げる。
彼女の騎士団の周りに死神の力で呪縛された精霊が集まり始める。
「さあ、向こうもやる気のようだ…ジョストを始めましょう!!」
「…ッ!もうどうにでもなれだ!!」
ルイゼットはランスと盾を構えて災厄の騎士に向けて突撃を開始する。
ガンマンは構えたレバーアクションライフルを凄まじい速度で速射していく。
弾は狙い違わず、屍徒の騎士団の中でも精霊を扱う者たちを撃ち抜き、呪縛で集めた精霊の加護をかき消していく。
「精霊を無理やり従わすなんて野暮だと思わないんですか?」
銃数発の弾丸を撃ち切った後、ライフルをくるりと回転させると、それは大砲のような異様に大きく長い水平二連の銃に変わった。
「出来れば耳を塞ぎなさい!」「できるか!!」「じゃあ、諦めなさい」
短いやり取りの後、ルイゼットの肩越しに突き出されたソレから ドカン!と耳をろうせんばかりの爆発するような音と衝撃が響き、前面にいた屍徒達が1番ゲージの銃口から放たれた強烈な散弾の群れを食らって吹き飛ばされる。
「…~~ッ!酷いぞ銃士殿!」「もう一発我慢しなさい!」
ズドン!!
二発目の射撃で前面の屍徒たちはあらかた吹き飛ばされて中央の姫騎士が見えてくる。
「道は開けましたよ!ルイゼットさん」「感謝する!!!うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!!」
ルイゼットが姫の前に立つ残りの屍徒に加護を受けた槍を突き出す!
それは狙い違わず屍徒の核部分に命中し、その汚れた身を滅ぼす。
「そこっ!!」
ズガンと凄まじい音を立てて槍が鎧の屍徒をぶち抜き、姫騎士の御前に駆ける!
「姫様!お覚悟を!!」
災厄の騎士は突撃してくるルイゼットを見ても何ら慌てることなく抱えた首を元の場所に載せて向き直った。
「やぁああああああっ!!!」
ルイゼットは渾身の力を込めて槍を突きこんだ。
それは星神の加護を受けて狙い違わず屍徒の急所である核に穂先が叩き込まれる。
はずであった。
ガギン!
非常に耳障りな高い音と共にルイゼットのランスが斬り飛ばされる。
彼女の槍は姫騎士の盾に防がれ、剣で軽くへし折られたのだ。
「っ!!」
ルイゼットはそのままランスを捨て、右に流れて通り抜けようとしたが、その際に姫騎士の持つ長剣で痛烈に斬りつけられる。
「があっ!?」
通り抜ける最中だったがデュラ姫の振りが早すぎ、回避が完全には間に合わずにとっさに盾を構えて切っ先を防いだが、ただかすっただけなのにルイゼットは衝撃で吹き飛ばされる。なんとか崩れた体勢を立て直してみると頑丈な鉄製の盾に大きな切り傷が作られていた。
(これが屍徒の力と大公家に伝わっていた星の武具の一つ、星剣『正義の柱(ボワ・ド・ジュスティース)』の威力か!?)
公国には幾つかの星鉄で作られた武具があり、それらの殆どはスラフ島へ姫君達と渡った後、行方不明となっている。
ゼラ姫の星槍、デュラ姫の星剣、ミラ姫の星盾…それら全てが武具として強力であり、ここに特殊な能力を秘めていると聞く。
(ゼラ姫以外は武具の真の力を使えなかったと聞くが……今もそうであるとは限らないな)
かすっただけでこれ程の威力である星剣で、厄介な星の御業まで使われる可能性があると考えてルイゼットは冷や汗を流す。
「姫様相手だと旗色が悪いですかね?…まあ、こっちもあまり良くはありませんが」
二丁のリボルバーに持ち替えたガンマンがルイゼットにそう囁く。
周りを見ると残りの屍徒達が武器を向けて自分たちを囲んでいた。
自分たちと同じく輪の中央にいる災厄の騎士が目から放つ青い炎のような光と、両方のこめかみに付いた奇妙な突起(地球のボルトのような形)から時折弾ける電流がまるで自分たちを嘲笑っているようだ。
「アッヒャッヒャッヒャ!見てくださいよアスボルスさん!!馬鹿ですよ馬鹿!!」
丘の上で一部始終を見ていたヴィクトリア博士が腹を抱えて下品に笑う。
「モルテ様からご忠告を頂いたからわざわざ戦わせてみたのに…たった二騎がそのまま突撃してきて何ができると思ったんでしょうね!?ヒヒヒヒヒヒ・・あーおかしい!今、逃げてる馬鹿共もすぐにこうなりますよウケケケケケ」
「…」
アスボルスは不快な顔で笑い転げるヴィクトリアを一瞥したあと、気の毒そうに眼下の二騎を見つめる。
彼等は我がスラヴィアの軍によって騎士らしく戦って死ねるだろう、外道仕事の片棒を担いでまで生き長らえることになる自分と比べてそれはなんと羨ましいことなのかとそう切に思う。
しかし、アスボルスは心の底では彼等に自分を倒したあの地球人のような勝利を望んでいた。
それは、何かを守って必死で戦う姿というものは自分から見ても非常に格好の良いものであったからだ。
(願わくば彼等にどなたかの神の加護があらんことを…)
そう彼は心のなかで切に祈った。
「クソ!私は公国の騎士なのに死神に操られた姫様をお止めすることもできず、ここまでなのか…」
ルイゼットはそう吐き捨てるが折れた槍の代わりに抜き放った剣は構えたままだ。
「そう言いながら諦める気は無いでしょ?」
背に乗るガンマンがルイゼットにそう返す。
「当然!…しかし、貴方には悪いことをした。我が国のことなのにこんな状況にまで巻き込んでしまって…」
申し訳なさそうにそう言うルイゼット。
しかし、ガンマンの方は飄々としたもので
「ああ、気にしないでください。これもビジネスですから…
それに、諦めなければ意外となんとかることが多いんですよ?」
こんな風に…とガンマンが言い終わらない内にそれが起こった。
「第一陣、突撃!!第二陣、右側面に回れ!!!畳み掛けろ!!!」
突然鬨の声と共に、屍徒達が出てきた林から100騎程の新たな騎兵が現れる。
「さあ、騎兵隊の登場ですよ」
「な!?どうして皆がここに」
ルイゼットが驚くのも無理はない、現れた彼等は城で防衛戦をするはずだった公国の騎士たちだったのだから。
背を向けていた屍徒達はたちまちの内に星神の加護を受けた騎士たちに屠られ、囲いを解いて後退せざるを得なくなり、ルイゼット達は囲みを難なく通り抜けることができた。
「シュヴァリエール・ギョティーヌ!」
「は、はい!」
騎士たちを指揮している彼女の上役が駆け寄って声を掛けてきた。
「今度から、警戒中の城の城壁の前で大きな声で内緒話をした上に客人を連れて先走りせずにちゃんと上司である私に連絡を入れてから行動しなさい!」
「め、面目次第もありません…」
シュンとなるルイゼット。
「しかし、これは思った以上の戦果が期待できそうだ。君達の話以外でも斥候の屍徒の一団の中に『公国の旗あり』との報告を聞いて、少なくない兵を割いてわざわざ手間を掛けて後ろへ回り込んだかいがある…
銃士殿、貴方には後で問い詰めたいことが山ほどあるが…今は感謝を!我々に我が国の猛る姫君を止める機会を与えてくれてありがとう」
ルイゼットの上司が胸に手を当てて礼をし、ガンマンが「どうか、お手柔らかに」と言いながら帽子を胸に当てて礼を返す。
「さてルイゼットさん。十分休めたでしょうし、そろそろお姫様ともうひと踊りしましょうか」
「…この状況で我々が入り込む間は無いだろう。それに正直な話、今の私では一騎打ちでデュラ姫に勝てないだろう…」
奇襲をかけた公国の騎士たちが、残りの屍徒となった元公国騎士達とせめぎ合っているのを見ながらルイゼットがそう気弱な答えを返す。
しかし…
「おや、諦めてしまうんですか?」
「そう言うわけでは…」
大きな実力の差を見せつけられて消極的な答えを返す彼女にガンマンは笑いながら言う。
「でも、『彼女』は諦めてくれないみたいですよ?」
どっっと凄まじい音がして公国の騎士のみならず屍徒の騎士たちも吹き飛ばされ土煙の中『ソレ』が彼女たちの前に現れる。
左手に古びた大公家の紋章が描かれたカイトシールド、右手に突き出した血塗られた星剣…災厄の姫騎士デュラ・ファンタズマールが、その瞳の青い炎を煌々と燃やして彼女たちを見据えていた。
残った周りの騎士を意に介さず、剣を振るいこちらへ猛進する姫騎士にルイゼットの背に乗ったガンマンが二丁拳銃で連続射撃を叩きこむ。
しかし、姫騎士はその鉛弾の群れを斬撃で薙ぎ払い盾で流しながら、ルイゼットに向かって斬りかかる。
対応が遅れたルイゼットは防御するために壊れかけた盾で身構えることしかできない。
「走れ!!」
横合いからルイゼットの上司が体当たりでデュラの突撃を止める。
が、すぐに弾かれ薙ぎ倒される。
ルイゼットは突進する姫騎士へ向き直り覚悟を決めた。
(神よ…)
カチリ
『止まるな!!前に踏み出せ!前進こそが我らの力だ!!』
その時、ルイゼットの耳にいきなり彼女を鼓舞する声が聞こえてきたのだ。
彼女はいきなり聞こえてきたその声に導かれるように迫る災厄の姫騎士の前へ突進する。
『盾を…』
そのまま盾を今まさに血塗られた正義の柱を振り下ろそうとする姫の右腕の脇に突き込み、腕をこじ開け体の開いた姫の前に滑りこむ。
「うぉおおおおおお!!!」
そのまま右手の長剣で強烈な突きを放つ!
ガン!と鋼を打つ音が響いて、姫の盾に弾かれはしたが鎧の隙間にルイゼットの剣が軽く突き刺さった。
…!?…!!!!!!!
すぐに姫騎士の盾で殴り飛ばされるが初めて傷を付けられたことからなのか、デュラ姫が非常に混乱している様が見て取れた。
「やれば出来るじゃないですか」
ルイゼットの背に必死でしがみついていたガンマンが、疲労困憊した声でそう彼女に呟く。
「今のは一体…?貴方がやったのか?」
未だ混乱するデュラ姫から距離を取り、ルイゼットは先ほど聞こえてきた声を訝しんで聞いた。
「知りませんよ…星神様のお導きじゃないですか?それより…」
ガンマンはそう答えながらエジェクターロッドを使って排莢を行う。
そしてあごを使って周りの騎士たちを示して
「そろそろみんなかけた加護が切れてきてるんじゃないですか?」
ルイゼットが周りを見回すと、今まで加護の力と奇襲のかいもあって数の多い屍徒の騎士たちと互角に戦っていた公国の騎士たちが、先ほどの姫の突撃と加護が切れたせいかあちこちで押され始めている。
そしてルイゼット自身も、自分にかけられた導きの加護がとけて相対する屍徒となった姫の核が何処にあるのかわからなくなっていた。
「不味い!先に向こうを何とかしないと総崩れになるぞ」
「…そうは言ってもお怒りな姫様は僕らを離してくれないみたいですよ?」
立ち直ったデュラ姫が、頭部の奇妙な突起から放電しながら激しく青い光を放つ双眸をこちらへきつく向けている。
「ッ!日の出は…」「あと二時間ほどだと思います…それまで、彼らが踏ん張ってくれる事を信じましょう」
押し負ける公国騎士達を後ろにルイゼットが先祖伝来の愛用の剣を、リロードの終わったガンマンがいつもの大型のリボルバーを青い双眸の姫騎士へ向ける。
そして…
- まさかのアスボルスさんとニュース再登場(ニュースは説明だけだけど)!しかしモルテの企みのために働かされるとか滅びたほうがマシレベルなのは確定的に明らかすぎる・・・ -- (名無しさん) 2012-12-14 07:25:53
- スラヴィアが絡んでくると凄く映画みたいになるというか人生はゲームですが伝播するみたいな -- (とっしー) 2012-12-16 17:58:42
- リンゴ君銃無双!(残弾気になりますが)と平行して進む最早魂無き者の意地と誇りの衝突は怒涛のスピードで脳内展開されていく。しかしリンゴ君はお節介というか首突っ込みたがりというか -- (名無しさん) 2015-07-26 19:40:23
- 空気読むスキルが致命的なんでないかい?臨悟 -- (名無しさん) 2015-07-28 00:44:45
最終更新:2013年01月07日 20:14